(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】運転時間が改善された脱水素プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 5/333 20060101AFI20240809BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20240809BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240809BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240809BHJP
【FI】
C07C5/333
C07C11/06
C07C11/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021520324
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(86)【国際出願番号】 US2019056052
(87)【国際公開番号】W WO2020081421
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-31
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】セプラ、アラン、イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジアビス、ゲイリー、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】セルバン、マニュエラ
(72)【発明者】
【氏名】メネツェス、ルイ、ド
(72)【発明者】
【氏名】カンタレリ、マッシミリアーノ
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0198428(US,A1)
【文献】特表2016-517794(JP,A)
【文献】特表2004-531361(JP,A)
【文献】特表2004-514552(JP,A)
【文献】特開2002-355546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスであって、
少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、
前記炭化水素供給流を、脱水素条件下で前記反応器中の、公称粒径の25%以内である通常の動作範囲内の粒径を有する触媒と
径方向の流動様式で接触させることと、
少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を前記反応器から除去することと、
前記反応器を継続して動作させながら、動作時間の45日乃至180日毎に前記脱水素ユニットの前記触媒の総量の5重量%乃至50重量%を除去し、前記除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換すること、を含み
前記除去した触媒の部分が、公称粒径の25%以内である前記通常の動作範囲内の粒径を有する、
プロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炭化水素の脱水素は、洗剤、ハイオクタンガソリン、酸素化ガソリンブレンド成分、医薬製品、プラスチック、合成ゴム、及び当業者に周知の他の製品などの様々な化学製品を製造するための脱水素炭化水素に対する既存の需要及び成長需要のため、重要な商業的な炭化水素転化プロセスである。このプロセスの一例として、プロパンの脱水素によりプロピレンを生成し、これを重合して、調理用具、衣類、ラグ、包装、並びに車両電池及びバンパーを含む多種多様な製品に使用される材料を提供することが挙げられる。このプロセスの別の例として、イソブタンの脱水素によりイソブチレンを生成し、これを重合して、接着剤、モータオイル用の粘度指数添加剤、並びにプラスチック用の耐衝撃及び抗酸化添加剤のための粘着付与剤を提供することができることが挙げられる。イソブチレンに対する成長需要の別の例として、自動車の排出ガスからの空気汚染を低減するために、政府により命じられている酸素含有ガソリンブレンド成分の生成が挙げられる。
【0002】
炭化水素転化処理の当業者は、パラフィン系炭化水素の触媒脱水素によるオレフィンの生成について十分熟知している。加えて、一般的な炭化水素の脱水素を教示かつ議論する多くの特許が発行されている。例えば、米国特許第4,430,517号(Imaiら)は、脱水素プロセス及びそれに使用するための触媒について論じている。
【0003】
脱水素ユニットの性能は、触媒の失活によって悪影響を受ける。反応器の環状領域に触媒床を含有する反応器スクリーンは、脱水素反応の炭素質副生成物で汚染する傾向にある。触媒が数ヶ月又は数年にわたる運転で失活するにつれて、触媒の動作温度が上昇し、副生成物の形成が悪化する。汚染速度は、触媒が劣化するにつれて加速する傾向があることが観察されている。これは、脱水素ユニットの性能が、最初の年よりも複数年の運転の最後の年に、より急速に低下することを意味する。
【0004】
スクリーンの汚染はまた、所望の脱水素反応に好ましくない平均反応器圧力の増加を引き起こし、これが、一定の反応器入口温度での転化の低下を引き起こす。脱水素反応によりモル数が増加するため、脱水素反応は、圧力の増加によって悪影響を受ける。典型的な運転では、性能の低下が経時的に見られ、これは、従来、触媒活性の損失に起因していた。しかしながら、より詳細な分析により、性能低下の一部のみが触媒の活性に直接起因し、反応器の圧力プロファイルが他の有意な要因であることが明らかになる。運転中経時的に、反応物を脱水素反応器に循環させるプロセスガス循環ループにおける圧力降下の増加は、一定の反応器入口温度での所望の脱水素反応からの最大限のプロパン転化の低減をもたらす。これにより、プロピレン生成速度の低減、及びトン毎のプロピレン生成物を生成する際に消費されるプロパンの量の増加が引き起こされる。
【0005】
加えて、触媒失活自体によっても、更なる転化の低下が引き起こされ、動作温度の上昇が必要となる。これにより、熱分解に起因する供給物消費が増加し、オレフィン生成速度が低下する。その結果、スクリーン汚染の速度が加速し、最終的に、脱水素ユニットを停止してスクリーンを洗浄することが必要になる。これは、生成損失及びより高い維持費用により、動作の経済性に悪影響を及ぼす。
【0006】
触媒失活に対する1つの解決策は、触媒インベントリ全体を交換することであったが、活性の有意な低下後のみになる。スクリーン汚染の速度を低減し、かつ生成及びプロパン消費を改善するために、操作者は、より頻繁に、かつ触媒が上述の有害な結果をもたらす臨界閾値未満に低下する前に、触媒の装填全体を交換する。しかしながら、この選択肢によって、より頻繁な触媒交換の費用のため、動作費用がより高くなる。また、水簸を介して循環触媒から触媒微粒子又は破砕粒子を連続的に除去することも通常の慣行である。しかしながら、水簸を介して除去されて、その後新鮮な触媒と交換されるこれらの小粒子の量は、上述の有害な結果をもたらす臨界閾値を上回る触媒活性を維持するには少なすぎる。この水簸システムは、通常/公称触媒粒径の75%未満の粒径を除去するように最適化される。例として、水簸は、公称触媒粒径が1.6mmの直径であるとき、1.2mm以下の粒子の除去を標的とするであろう。
【0007】
したがって、スクリーン汚染を低減し、反応器の停止間の時間を増加させることが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
新たなプロセスでは、脱水素ユニットを動作させながら、連続的又は半連続的に、新たな/新鮮な触媒を脱水素ユニットに添加し、劣化した触媒を脱水素ユニットから除去する。1回以上の「オンザフライ触媒」変更を、連続する反応器の停止間の間隔で実施して、炭素質材料による汚染の速度を低減し、結果として、連続する転換間の間隔を延長することを視野に入れる。従来技術のプロセスとは異なり、新たなプロセスは、小さい粒径に起因する触媒除去を標的としないが、代わりに、典型的な/公称サイズの範囲内の触媒を除去し、同じサイズの新鮮な/新たな触媒と交換する。
【0009】
新たなプロセスは、複数の有益な利益を提供するのに十分高い活性レベルを上回る脱水素触媒インベントリを経済的に維持する。反応器スクリーンの汚染速度は遅くなり、それにより、反応器スクリーンを洗浄するための停止間の時間が延長される。より高い活性の触媒により達成される転化によって、オレフィン生成物(例えば、プロピレン又はイソブチレン)の生成速度が、より長い間、より遅い低下速度で、ほぼ運転開始時の生成に維持される。また、より高い活性の触媒は、オレフィン生成物のユニット毎の供給物消費を低減させる。これはまた、新鮮な触媒の費用を最小限に抑える。
【0010】
除去して新鮮な触媒と交換した触媒の部分は、一般的に、ユニット中の触媒の総量の5%~50%の範囲である。交換の頻度は、一般的に、約45日毎に1回~約180日毎に1回である。この範囲外の交換速度は、無効であるか、又は経済的ではないかのいずれかである。
【0011】
定期的な保守及び完全な触媒の取り換えのための脱水素ユニットの計画された停止のおよそ6~12ヶ月前に、触媒交換は中断される。これにより、触媒費用が低減される一方で、依然として、脱水素ユニットの保守の前の所望の時間に操作者が到達することが可能である。
【0012】
早期の触媒交換によって、炭素質汚染の速度が低減し、結果として、反応器の外側スクリーンにわたる圧力降下の増加の速度が低下する。下流反応器の外側スクリーンにわたる圧力降下が、典型的には、転換頻度を決定するため、この変化は、連続する転換間のより長い動作時間を可能にする。触媒寿命を決定するために、通過当たりのプロピレン収率(例えば、5%)の任意の降下を使用するのではなく、触媒交換頻度は、経済最適を標的にすることに基づいて決定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの実施形態では、触媒交換の速度は、60~120動作日毎に新鮮な触媒と交換される触媒インベントリ全体の10~20重量%である。いくつかの実施形態では、15重量%が、90動作日毎に交換されるべきである。この速度により、触媒活性指数が所望の範囲内に維持され、スクリーンの汚染速度が大幅に遅くなり、スクリーン洗浄のための停止間の時間の20~100%の延長が達成される。
【0014】
交換される触媒は、その特定の触媒の通常の動作範囲内の粒径を有する。「通常の動作範囲内の粒径」とは、粒径が触媒の公称粒径の25%以内、又は20%以内、又は15%以内、又は10%以内、又は5%以内であることを意味する。
【0015】
本発明の一態様は、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。一実施形態では、プロセスは、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することを含む。供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させ、触媒は、通常の動作範囲内の粒径を有する。少なくとも1つのオレフィンを含む流出流は、反応器から除去される。触媒の一部分は、反応器を継続して動作させながら、定期的に除去されて新鮮な触媒と交換され、除去した触媒の部分は、通常の動作範囲内の粒径を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、除去した触媒の部分は、脱水素ユニット中の触媒の総量の5重量%~50重量%である。
【0017】
いくつかの実施形態では、触媒の部分は、所定の時間スケジュールで除去される。
【0018】
いくつかの実施形態では、除去及び交換した触媒の部分は、脱水素ユニット中の触媒の総量の10重量%~20重量%である。
【0019】
いくつかの実施形態では、触媒は、動作時間の60~120日毎に除去及び交換される。
【0020】
いくつかの実施形態では、触媒の部分を除去し、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することは、反応器の計画された停止の所定の時間前に中断される。
【0021】
いくつかの実施形態では、所定の時間は、反応器の計画された停止の6~12ヶ月前である。
【0022】
いくつかの実施形態では、反応器の動作時間は、触媒の部分を除去して、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することのない反応器の動作時間に対して少なくとも20%増加する。
【0023】
いくつかの実施形態では、除去した触媒の部分は、少なくとも1つのオレフィンの生成速度を測定すること、炭化水素供給物の消費速度を測定すること、交換した新鮮な触媒の費用を測定すること、反応器にわたる温度低下を測定すること、又は少なくとも1つのパラフィン若しくは少なくとも1つのオレフィン若しくはその両方の濃度を、反応器の出口で測定すること、のうちの1つ以上によって決定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセスは、プロセスの少なくとも1つのパラメータを検知して、その検知から信号又はデータを生成すること、信号を生成して送信すること、又はデータを生成して送信すること、のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0025】
本発明の別の態様は、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。一実施形態では、プロセスは、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を脱水素ユニットから除去することと、反応器を継続して動作させながら、反応器中の触媒の総量の5重量%~50重量%を、動作時間の60~120日毎に定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換することと、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、除去及び交換した触媒の部分は、脱水素ユニット中の触媒の総量の10重量%~20重量%である。
【0027】
いくつかの実施形態では、触媒の部分を除去し、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することは、反応器の計画された停止の所定の時間前に中断される。
【0028】
いくつかの実施形態では、所定の時間は、反応器の計画された停止の6~12ヶ月前である。
【0029】
いくつかの実施形態では、反応器の動作時間は、触媒の部分を除去して、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することのない反応器の動作時間に対して少なくとも20%増加する。
【0030】
いくつかの実施形態では、除去した触媒の部分は、少なくとも1つのオレフィンの生成速度を測定すること、炭化水素供給物の消費速度を測定すること、又は交換した新鮮な触媒の費用を測定すること、のうちの1つ以上によって決定される。
【0031】
本発明の別の態様は、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。一実施形態では、プロセスは、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去することと、反応器を継続して動作させながら、脱水素ユニット中の触媒の総量の10重量%~20重量%を、動作時間の60~120日毎に定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換することと、を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、触媒の部分を除去し、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することは、反応器の計画された停止の6~12ヶ月前に中断される。
【0033】
本発明の別の態様は、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。一実施形態では、プロセスは、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去することと、反応器を継続して動作させながら、反応器中の触媒の一部分を定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換することと、供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上を検知することと、供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上をプロセッサに送信することと、供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上を分析して、活性速度を決定することと、触媒の活性速度及び費用を分析して、除去及び交換する触媒の量、又は触媒の除去及び交換の開始時間のうちの少なくとも1つを決定することと、除去及び交換した触媒の部分を、決定された量の触媒に調整するか、又は触媒を決定された時間に除去及び交換することと、を含む。
【0034】
パラフィン系炭化水素の脱水素は、炭化水素処理の当業者に周知である。脱水素可能な炭化水素を、脱水素条件下で維持された脱水素ゾーンで、上述の触媒組成物と接触させる。この接触は、固定触媒床システム、移動触媒床システム、流動床システムなど、又はバッチ式の動作で達成され得る。脱水素ユニットは、所望の反応温度を各反応器への入口で確実に維持することができるように、反応器の間に加熱手段を含む1つ以上の別個の反応器を含んでもよい。脱水素ユニットはまた、使用済み触媒を再生するための再生ゾーン、並びにパイプ、容器、及びゾーンなどの触媒移送装備を含んでもよい。炭化水素は、上方、下方、又は径方向のいずれかの流動様式で触媒床と接触してもよい。触媒床を通る炭化水素の径方向の流動は、商業規模の反応器に好ましい。炭化水素は、触媒と接触するとき、液相、混合蒸気液相、又は気相であってもよい。
【0035】
脱水素され得る炭化水素には、パラフィン、アルキル芳香族、ナフテン、及びオレフィンを含む、2~30個以上の炭素原子を有する脱水素可能な炭化水素が含まれる。触媒で脱水素することができる炭化水素の1つの群は、2~30個以上の炭素原子を有するノルマルパラフィンの群である。触媒は、特に、2~15個以上の炭素原子を有するパラフィンの、対応するモノオレフィンへの脱水素、又は3~15個以上の炭素原子を有するモノオレフィンの、対応するジオレフィンへの脱水素に有用である。触媒は、特に、C2~C6パラフィン、主にプロパン及びブタンのモノオレフィンへの脱水素に有用である。
【0036】
脱水素条件には、400°~900℃の温度、0.01~10絶対気圧の圧力、及び0.1~100時間-1の液空間速度(liquid hourly space velocity,LHSV)が含まれる。一般的に、ノルマルパラフィンでは、分子量が低いほど、同等の転化に必要な温度が高くなる。脱水素ゾーンの圧力は、装備制限と一致して、実用可能な限り低く維持して、化学平衡の利点を最大化する。
【0037】
脱水素ゾーンからの流出流は、一般的に、未転化の脱水素可能な炭化水素、水素、及び脱水素反応の生成物を含有する。この流出流は、典型的には冷却され、水素分離ゾーンを通過して、水素に富む気相を炭化水素に富む液相から分離する。一般的に、炭化水素に富む液相は、好適な選択的吸着剤、選択的溶媒、選択的反応(複数可)のいずれかによって、又は好適な分画スキームによって更に分離される。未転化の脱水素可能な炭化水素は、回収され、脱水素ゾーンに再利用され得る。脱水素反応の生成物は、最終生成物として、又は他の化合物の調製における中間生成物として回収される。
【0038】
脱水素可能な炭化水素は、脱水素ゾーンを通過する前、その間、又はその後に、希釈剤材料と混合されてもよい。希釈剤材料は、水素、蒸気、メタン、エタン、二酸化炭素、窒素、アルゴンなど、又はそれらの混合物であってもよい。水素及び蒸気は、好ましい希釈剤である。通常、水素又は蒸気を希釈剤として利用する場合、0.1:1~40:1の希釈剤対炭化水素のモル比を確実にするのに十分な量で利用され、モル比範囲が0.4:1~10:1であるときに最良の結果が得られる。脱水素ゾーンを通過する希釈剤流は、典型的には、分離ゾーンにおける脱水素ゾーンからの流出物から分離された再利用希釈剤である。
【0039】
蒸気などの希釈剤の水素との組み合わせを採用してもよい。水素が一次希釈水である場合、又は脱水素条件で分解してアルコールなどの水を形成する材料である場合、例えば、アルデヒド、エーテル、又はケトンが、同等の水に基づいて計算して、1~20,000重量ppmの炭化水素供給流を提供する量で、連続的又は断続的のいずれかで脱水素ゾーンに添加されてもよい。1~10,000重量ppmの水の添加は、脱水素パラフィンが6~30個以上の炭素原子を有するときに、最良の結果をもたらす。
【0040】
炭化水素の脱水素は、吸熱プロセスである。脱水素触媒のみを採用するシステムでは、典型的には、プロセス中の様々な点で過熱蒸気を添加するか、又は触媒床間の反応流を断続的に除去及び再加熱することが必要である。脱水素触媒又は選択的酸化触媒の個別の床又は反応器を有する二触媒システムを利用するいくつかのプロセスが開発されてきた。選択的酸化触媒の目的は、酸化ゾーンに添加された酸素との脱水素反応の結果として生成された水素を選択的に酸化して、プロセス中に内部で熱を発生させることである。発生した熱は、典型的には、反応混合物を次の脱水素工程の所望の脱水素温度に到達させるのに十分である。本プロセスは、この前述のシステムにおいて達成されてもよい。このようなプロセスを採用する場合、本触媒は、少なくとも脱水素触媒を含み、別の特定の触媒を使用して酸化反応を達成する。
【0041】
選択的酸化工程は、利用する場合、プロセスの脱水素工程で生成された水素を使用して、次の脱水素反応区画に熱を供給する。これを達成するために、酸素含有ガスは、最初に、好ましくは選択的酸化触媒区画に隣接する点で反応器内に導入される。酸素含有ガス中の酸素は、反応流に含有される水素を酸化するために必要である。存在する水素の選択的酸化をもたらすために利用され得る酸素含有ガスの例としては、空気、酸素、又は蒸気、二酸化炭素、及び窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスなどの他のガスで希釈された空気若しくは酸素が挙げられる。プロセス流に接触させるように導入される酸素の量は、プロセス流に酸素が添加される時点で、プロセス流に含有される水素のモル当たり0.01:1~2:1モルの酸素の範囲であり得る。選択的酸化反応では、未反応の脱水素可能な炭化水素、脱水素炭化水素、及び水素を含むプロセス流を、選択的蒸気酸化/脱水素触媒の存在下で酸素と反応させ、それによって、水素が選択的に酸化されて、炭化水素と反応するごく少量の酸素を含む水及び熱エネルギーを生成する。
【0042】
選択的蒸気酸化/脱水素触媒は、炭化水素の存在下での水素の選択的酸化に有用なものであり得る。このような触媒の例は、米国特許第4,418,237号に開示されている。代替的に、選択的酸化工程のために使用される触媒は、脱水素工程に利用される触媒と同一であってもよい。このような触媒又はその使用のためのプロセスは、米国特許第4,613,715号及び同第3,670,044号に開示されている。
【0043】
酸素含有反応物は、酸素を比較的冷却された炭化水素供給流又は蒸気希釈剤と混合することなどの様々な方式で、本プロセスに添加してもよいか、又は供給炭化水素又は蒸気希釈剤とは独立して、反応器に直接添加してもよい。加えて、酸素含有反応物は、水素に対する酸素の局所濃度を最小限に抑えるように、反応器における1つ以上の点に添加して、脱水素ユニットの全長にわたって選択的水素酸化によって生成される有益な温度上昇を分散させることができる。複数の注入点の使用は、水素の量に対する酸素の濃度の局所的蓄積の機会を最小限に抑え、それによって、供給又は生成炭化水素のいずれかとの酸素含有ガスの望ましくない反応の機会を最小限に抑える。
【0044】
いくつかのプロセスでは、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供する。供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させ、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去する。反応器を継続して動作させながら、反応器中の触媒の一部分を定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換する。供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上を検知する。供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上をプロセッサに送信する。供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上を分析して、活性速度を決定する。触媒の活性速度及び費用を分析して、除去及び交換する触媒の量、又は触媒の除去及び交換の開始時間のうちの少なくとも1つを決定する。除去及び交換した触媒の部分を、決定された触媒の量に調整するか、又は触媒を、決定された時間に除去及び交換する。
【0045】
各反応器にわたる転化は、各反応器の入口及び/又は出口において供給物及び生成物(例えば、プロパン及びプロピレン)を監視することによって、測定及び/又は検出され得る。代替的に又は追加的に、各反応器における反応器出口温度を測定することができ、及び/又は各反応器にわたる差温を測定することができる。別の代替案として、各反応器にわたる差圧を監視して、スクリーン汚染の速度を決定することができる。これらの信号及び/又はデータ、並びに追加の信号及び/又はデータは、プロセッサに送信することができ、システムへの新鮮な触媒の添加の最適な量及びタイミングは、1つ以上のアルゴリズムを使用して決定することができる。変更の最適な量及び/又はタイミングは、操作者によって手動で実行することができ、又はシステムは、触媒弁出力を変更して、触媒の除去及び新鮮な触媒の添加の頻度及び/又は量を調整することによって、触媒添加及び除去システム上の設定点を自動的に変更することができる。
【0046】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、この説明は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲を例示するものであり、限定するものではないことが理解されるであろう。
【0047】
本発明の第1の実施形態は、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることであって、触媒が、通常の動作範囲内の粒径を有する、接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去することと、反応器を継続して動作させながら、触媒の一部分を定期的に除去し、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することであって、除去した触媒の部分が、通常の動作範囲内の粒径を有する、交換することと、を含む、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、除去した触媒の部分が、脱水素ユニット中の触媒の総量の5重量%~50重量%である。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、触媒の部分が、所定の時間スケジュールで除去される。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、除去及び交換した触媒の部分が、脱水素ユニット中の触媒の総量の10重量%~20重量%である。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、触媒が、動作時間の60~120日毎に除去及び交換される。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、触媒の部分を除去し、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することが、反応器の計画された停止の所定の時間前に中断される。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、所定の時間が、反応器の計画された停止の6~12ヶ月前である。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、反応器の動作時間が、触媒の部分を除去して、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することのない反応器の動作時間に対して少なくとも20%増加する。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、除去した触媒の部分が、少なくとも1つのオレフィンの生成速度を測定すること、炭化水素供給物の消費速度を測定すること、交換した新鮮な触媒の費用を測定すること、反応器にわたる温度低下を測定すること、又は少なくとも1つのパラフィン若しくは少なくとも1つのオレフィン若しくはその両方の濃度を、反応器の出口で測定すること、のうちの1つ以上によって決定される。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、プロセスの少なくとも1つのパラメータを検知し、その検知から信号又はデータを生成すること、信号を生成して送信すること、又はデータを生成して送信すること、のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0048】
本発明の第2の実施形態は、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去することと、反応器を継続して動作させながら、脱水素ユニット中の触媒の総量の5重量%~50重量%を、動作時間の60~120日毎に定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換することと、を含む、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、除去及び交換した触媒の部分が、脱水素ユニット中の触媒の総量の10重量%~20重量%である。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、触媒の部分を除去し、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することが、反応器の計画された停止の所定の時間前に中断される。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、所定の時間が、反応器の計画された停止の6~12ヶ月前である。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、反応器の動作時間が、触媒の部分を除去して、除去した触媒の部分を新鮮な触媒と交換することのない反応器の動作時間に対して少なくとも20%増加する。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、除去した触媒の部分が、少なくとも1つのオレフィンの生成速度を測定すること、炭化水素供給物の消費速度を測定すること、交換した新鮮な触媒の費用を測定すること、反応器にわたる温度低下を測定すること、又は少なくとも1つの分子の濃度を反応器の出口で測定すること、のうちの1つ以上によって決定される。
【0049】
本発明の第3の実施形態は、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去することと、反応器を継続して動作させながら、脱水素ユニット中の触媒の総量の10重量%~20重量%を、動作時間の60~120日毎に定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換することと、を含む、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。本発明のある実施形態は、本段落の先の実施形態から本段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、触媒の部分を除去し、除去した触媒の部分を交換することが、反応器の計画された停止の6~12ヶ月前に中断される。
【0050】
本発明の第4の実施形態は、少なくとも1つのパラフィンを含む炭化水素供給流を、移動床反応器を含む脱水素ユニットに提供することと、供給流を、脱水素条件下で反応器中の触媒と接触させることと、少なくとも1つのオレフィンを含む流出流を反応器から除去することと、反応器を継続して動作させながら、反応器中の触媒の一部分を定期的に除去し、除去した触媒を新鮮な触媒と交換することと、供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上を検知することと、供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上をプロセッサに送信することと、供給流の流量、又は流出物の流量のうちの1つ以上を分析して、活性速度を決定することと、触媒の活性速度及び費用を分析して、除去及び交換する触媒の量、又は触媒の除去及び交換の開始時間のうちの少なくとも1つを決定することと、除去及び交換した触媒の部分を、決定された量の触媒に調整するか、又は触媒を決定された時間に除去及び交換することと、を含む、炭化水素供給物の脱水素のためのプロセスである。
【0051】
更に説明することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明を最大限に利用し、本発明の本質的な特性を容易に確認でき、本発明の様々な変更及び修正を行い、様々な使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0052】
上記では、全ての温度は摂氏度で記載され、全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。