(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】表面修飾ナノダイヤモンド、ナノダイヤモンド分散組成物、及び表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/28 20170101AFI20240809BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20240809BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240809BHJP
【FI】
C01B32/28
B82Y30/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2021530626
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025693
(87)【国際公開番号】W WO2021006120
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019127636
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】柏木 健
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202458(JP,A)
【文献】ZHANG Xiaoyong et al.,PEGylation and polyPEGylation of nanodiamond,Polymer,2012年,Vol. 53,pp. 3178-3184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B82Y 30/00
B82Y 40/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基又は下記式(2)で表される基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
【化1】
[式(1)中、R
1は、
直鎖C
1-22
アルキレン基、置換若しくは無置換のアルケニレン基、置換若しくは無置換のアルキニレン基、置換若しくは無置換の二価の脂環式炭化水素基、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基、又はこれらが2以上結合した基を示す。R
2は、脱離性基又は[-X
1-R
3]を示し、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は、同一又は異なって、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化2】
[式(2)中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。X
2は、単結合又は-O-を示す。R
6は脂肪族炭化水素基を示す。]
【請求項2】
ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(1)で表される基とを含み、前記式(1)中、R
1は、置換又は無置換C
2-10の二価の炭化水素基を示し、X
1は-NH-、-NR
3-、又は-O-を示し、R
3は、同一又は異なって、炭素数15以上の置換又は無置換の炭化水素基を示す、請求項1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【請求項3】
ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(2)で表される基とを含み、前記式(2)中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数が10以上である置換又は無置換の炭化水素基を示す、請求項1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【請求項4】
分散媒と、
前記分散媒中に分散している請求項1~3のいずれか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドと、
を含むナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項5】
表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(3-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化3】
[式(3-1)中、R
Iは、
直鎖C
1-22
アルキレン基、置換若しくは無置換のアルケニレン基、置換若しくは無置換のアルキニレン基、置換若しくは無置換の二価の脂環式炭化水素基、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基、又はこれらが2以上結合した基を示す。Y
1はハロゲン原子を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化4】
[式(3-2)中、R
I及びY
2は、それぞれ、前記に同じ。]
【請求項6】
ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子と、下記式(3-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化5】
[式(3-2)中、R
Iは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化6】
[式(3-3)中、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は一価の有機基を示す。R
IIは、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化7】
[式(3-4)中、R
I、X
1、及びR
IIは、それぞれ、前記に同じ。]
【請求項7】
表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(4-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化8】
[式(4-1)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。Y
3は、ハロゲン原子を示す。]
【化9】
[式(4-2)中、X
2及びR
IIIは、それぞれ、前記に同じ。]
【請求項8】
ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子と、下記式(4-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化10】
[式(4-2)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。]
【化11】
[式(4-3)中、Y
4は、ハロゲン原子を示す。R
IVは、一価の有機基を示し、Y
4と結合する原子が炭素原子である。]
【化12】
[式(4-4)中、X
2、R
III、及びR
IVは、それぞれ、前記に同じであり、R
IV’は、水素原子又はR
IVを示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面修飾ナノダイヤモンド、ナノダイヤモンド分散組成物、及び表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法に関する。本願は、2019年7月9日に日本に出願した特願2019-127636号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ナノ炭素粒子などのナノサイズの微細な物質は、バルク状態では発現し得ない新しい特性を有することが知られている。例えば、ナノダイヤモンド粒子(=ナノサイズのダイヤモンド粒子)は、機械的強度、高屈折率、熱伝導性、絶縁性、酸化防止性、樹脂等の結晶化を促進する作用等を有する。しかし、ナノダイヤモンド粒子は、一般に、表面原子の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きく、凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、ナノダイヤモンド粒子の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。そのため、ナノダイヤモンド粒子を一次粒子の状態で有機溶媒や樹脂中に分散させることは非常に困難であった。そこで、ナノダイヤモンド粒子の表面を修飾することによりナノダイヤモンド粒子に分散性を付与し、凝集を抑制することが行われている。
【0003】
表面が修飾されたナノダイヤモンドとしては、例えば、ナノダイヤモンド粒子表面のヒドロキシ基に第三級ブロモ化アルキル基を導入し、これにポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)を反応させて得られる表面修飾ナノダイヤモンドが知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Polymer Chemistry 3 (2012) 2716-2719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の表面修飾ナノダイヤモンドは、有機溶媒に対する分散性が劣っていた。
【0006】
従って、第一の本開示の目的は、有機溶媒に対する分散性に優れる表面修飾ナノダイヤモンド、又は当該表面修飾ナノダイヤモンドを得るための中間体である表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。
【0007】
また、非特許文献1に記載の表面修飾ナノダイヤモンドにさらに表面修飾基を導入しようとする場合、導入されたPEGMAにおけるメタクリレート基を用いたラジカル反応による方法しか行うことができず、導入可能な表面修飾基が制限されていた。
【0008】
従って、第二の本開示の目的は、ナノ炭素粒子に様々な表面修飾基を導入することができる表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の発明者らは、上記第一の目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒に対する分散性に優れることを見出した。また、本開示の発明者らは、上記第二の目的を達成するため鋭意検討した結果、一旦特定の表面修飾基を導入することにより、その後求核剤又は求電子剤を用いて、ナノ炭素粒子に様々な表面修飾基を導入することができることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0010】
本開示は、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基又は下記式(2)で表される基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【化1】
[式(1)中、R
1は、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。R
2は、脱離性基又は[-X
1-R
3]を示し、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は、同一又は異なって、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化2】
[式(2)中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。X
2は、単結合又は-O-を示す。R
6は脂肪族炭化水素基を示す。]
【0011】
上記表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する上記式(1)で表される基とを含み、上記式(1)中、R1は、置換又は無置換C2-10の二価の炭化水素基を示し、X1は-NH-、-NR3-、又は-O-を示し、R3は、同一又は異なって、炭素数15以上の置換又は無置換の炭化水素基を示す表面修飾ナノダイヤモンドであることが好ましい。
【0012】
また、上記表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する上記式(2)で表される基とを含み、上記式(2)中、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数が10以上である置換又は無置換の炭化水素基を示す表面修飾ナノダイヤモンドであることが好ましい。
【0013】
また、本開示は、分散媒と、上記分散媒中に分散している上記表面修飾ナノダイヤモンドと、を含むナノダイヤモンド分散組成物を提供する。
【0014】
また、本開示は、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(3-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
【化3】
[式(3-1)中、R
Iは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。Y
1はハロゲン原子を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化4】
[式(3-2)中、R
I及びY
2は、それぞれ、上記に同じ。]
【0015】
また、本開示は、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子と、下記式(3-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
【化5】
[式(3-2)中、R
Iは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化6】
[式(3-3)中、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は一価の有機基を示す。R
IIは、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化7】
[式(3-4)中、R
I、X
1、及びR
IIは、それぞれ、上記に同じ。]
【0016】
また、本開示は、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(4-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
【化8】
[式(4-1)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。Y
3は、ハロゲン原子を示す。]
【化9】
[式(4-2)中、X
2及びR
IIIは、それぞれ、上記に同じ。]
【0017】
また、本開示は、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子と、下記式(4-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
【化10】
[式(4-2)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。]
【化11】
[式(4-3)中、Y
4は、ハロゲン原子を示す。R
IVは、一価の有機基を示し、Y
4と結合する原子が炭素原子である。]
【化12】
[式(4-4)中、X
2、R
III、及びR
IVは、それぞれ、上記に同じであり、R
IV'は、水素原子又はR
IVを示す。]
【発明の効果】
【0018】
本開示の表面修飾ナノダイヤモンドは、有機溶媒に対する分散性に優れるか、又は、当該表面修飾ナノダイヤモンドを得るための中間体として有用である。当該中間体は、さらに求核剤又は求電子剤と反応させることで有機溶媒に対する分散性に優れる表面修飾ナノダイヤモンドを得ることができる。また、本開示の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法によれば、ナノ炭素粒子に様々な表面修飾基を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例4で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図3】実施例5で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[表面修飾ナノダイヤモンド]
本開示の一実施形態に係る表面修飾ナノダイヤモンド(以後、ナノダイヤモンドを「ND」と称する場合がある)は、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基又は下記式(2)で表される基とを少なくとも含む。式(1)及び(2)において、酸素原子から左に伸びる結合手はND粒子に結合する。
【化13】
[式(1)中、R
1は、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。R
2は、脱離性基又は[-X
1-R
3]を示し、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は、同一又は異なって、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化14】
[式(2)中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。X
2は、単結合又は-O-を示す。R
6は脂肪族炭化水素基を示す。]
【0021】
なお、本明細書において、上記式(1)で表される基を「表面修飾基(1)」、上記式(2)で表される基を「表面修飾基(2)」とそれぞれ称する場合がある。また、表面修飾基(1)及び(2)を総称して「表面修飾基(X)」と称する場合がある。上記表面修飾NDは、表面修飾基(X)を一種のみ有していてもよいし、二種以上を有していてもよい。
【0022】
上記式(1)中、R1は、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。上記二価の炭化水素基としては、二価の脂肪族炭化水素基、二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0023】
上記二価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基などが挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、イソオクチレン基、デシレン基、ドデシレン基等の直鎖又は分岐鎖状C1-22アルキレン基(好ましくはC2-10アルキレン基、より好ましくはC3-8アルキレン基)などが挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、エチニレン基、1-プロペニレン基、イソプロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、3-ペンテニレン基、4-ペンテニレン基、5-ヘキセニレン基等の直鎖又は分岐鎖状C2-22アルケニレン基(好ましくはC2-10アルケニレン基、より好ましくはC3-8アルケニレン基)などが挙げられる。
【0024】
上記二価の脂肪族炭化水素基としては、中でも、二価の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは直鎖又は分岐鎖状アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状アルキレン基である。
【0025】
上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロドデシレン基等のC3-12シクロアルキレン基;シクロヘキセニレン基等のC3-12シクロアルケニレン基;ビシクロヘプタニレン基、ビシクロヘプテニレン基等のC4-15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等のC6-14アリーレン基(特に、C6-10アリーレン基)などが挙げられる。
【0027】
上記二価の炭化水素基は、C1-22炭化水素基が好ましく、より好ましくはC2-10ア炭化水素基、さらに好ましくはC3-8炭化水素基である。上記炭素数が上記範囲内であると、有機溶媒に対する分散性がより優れる。
【0028】
上記二価の炭化水素基は置換基を有していてもよい。上記炭化水素基における置換基の炭素数は0~20が好ましく、より好ましくは0~10である。上記置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基、より好ましくはC1-4アルコキシ基);アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基(好ましくはC2-6アルケニルオキシ基、より好ましくはC2-4アルケニルオキシ基);フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくはC6-14アリールオキシ基);ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基(好ましくはC7-18アラルキルオキシ基);アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(好ましくはC1-12アシルオキシ基);メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基(好ましくはC1-6アルキルチオ基、より好ましくはC1-4アルキルチオ基);アリルチオ基等のアルケニルチオ基(好ましくはC2-6アルケニルチオ基、より好ましくはC2-4アルケニルチオ基);フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくはC6-14アリールチオ基);ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基(好ましくはC7-18アラルキルチオ基);メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(好ましくはC1-6アルコキシ-カルボニル基);フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(好ましくはC6-14アリールオキシ-カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(好ましくはC7-18アラルキルオキシ-カルボニル基);ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基(好ましくはジ-C1-6アルキルアミノ基);アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基(好ましくはC1-11アシルアミノ基);グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
【0029】
上記式(1)中、R2は、脱離性基又は[-X1-R3]を示す。上記脱離性基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基等のアシルオキシ基などが挙げられる。R2が脱離性基である場合、求核剤との反応により、有機溶媒に対する分散性に優れる表面修飾NDなど、様々な表面修飾基をND粒子に導入することができる。上記脱離性基としては、ハロゲン原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0030】
R2が[-X1-R3]である場合、上記表面修飾NDは有機溶媒に対する分散性に優れる。上記X1は、-NH-、-NR3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示す。中でも、製造容易性及び有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、-NH-、-NR3-、-O-が好ましく、より好ましくは-NH-、-NR3-である。なお、上記X1が-NR3-を示す場合のR3は、一価の有機基を示し、上記R2中の複数のR3は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0031】
上記R3([-X1-R3]及び-NR3-におけるR3)は、一価の有機基を示す。[-X1-R3]におけるR3は、X1と結合する原子が炭素原子である。上記一価の有機基としては、例えば、置換又は無置換の炭化水素基(一価の炭化水素基)、置換又は無置換の複素環式基(一価の複素環式基)、上記一価の炭化水素基及び/又は上記一価の複素環式基が2以上結合した基などが挙げられる。上記結合した基は、直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。上記連結基としては、例えば、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、ホスフィン酸基、スルフィド結合、カルボニル基、有機基置換アミド基、有機基置換ウレタン結合、有機基置換イミド結合、チオカルボニル基、シロキサン結合、これらの2以上が結合した基などが挙げられる。
【0032】
上記一価の有機基における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0033】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖又は分岐鎖状アルキル基(好ましくはC2-20アルキル基、より好ましくはC3-18アルキル基)が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基(好ましくはC4-20アルケニル基、より好ましくはC8-18アルケニル基)が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基(好ましくはC4-20アルキニル基、より好ましくはC8-18アルキニル基)が挙げられる。
【0034】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12シクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12シクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0035】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0036】
上記複素環式基を形成する複素環としては、芳香族性複素環、非芳香族性複素環が挙げられる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも一種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)を有する3~10員環(好ましくは4~6員環)、これらの縮合環が挙げられる。具体的には、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環等の3員環;オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ-ブチロラクトン環等の5員環;4-オキソ-4H-ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4-オキソ-4H-クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3-オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン-2-オン環、3-オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン-2-オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4-オキソ-4H-チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)などが挙げられる。
【0037】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール-C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
【0038】
上記一価の炭化水素基及び/又は上記一価の複素環式基が連結基を介して2以上結合した基としては、例えば、上記一価の炭化水素基及び/又は上記一価の複素環式基と、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、オキセタニル基含有基、カルバモイル基、又はこれらの2以上が結合した基とが結合した基などが挙げられる。
【0039】
上記一価の有機基は置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;イソシアナート基;イソチオシアナート基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基などが挙げられる。
【0040】
上記一価の有機基としては、中でも、有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、一価の置換又は無置換の炭化水素基が好ましい。
【0041】
上記一価の有機基(特に、一価の置換又は無置換の炭化水素基)は、炭素数が10以上(例えば10~22)であることが好ましく、より好ましくは15以上(例えば15~20)である。上記炭素数が10以上であると、有機溶媒に対する分散性がより優れる。
【0042】
R2が[-X1-R3]を示す場合、有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、R1とR3における炭素数(特に、炭化水素基を構成する炭素数)の合計(X1が-NR3-を示す場合はR1と2つのR3における炭素数の合計)は10以上であることが好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは18以上である。上記炭素数の合計は、例えば30以下、好ましくは25以下である。上記炭素数が30以下であると、表面修飾基同士が絡まり合うのを抑制し、分散媒中で分散しやすい。
【0043】
上記式(2)中、R4及びR5は、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。R4及びR5のうちの少なくとも一方が水素原子である場合、求電子剤との反応により、有機溶媒に対する分散性に優れる表面修飾NDなど、様々な表面修飾基をND粒子に導入することができる。
【0044】
R4及びR5における一価の有機基としては、上記式(1)で表される基におけるR3として例示及び説明されたものが挙げられる。上記一価の有機基としては、中でも、有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、一価の置換又は無置換の炭化水素基が好ましい。
【0045】
上記一価の有機基(特に、一価の置換又は無置換の炭化水素基)は、炭素数が10以上(例えば10~22)であることが好ましく、より好ましくは15以上(例えば15~20)である。上記炭素数が10以上であると、有機溶媒に対する分散性がより優れる。
【0046】
上記式(2)中、上記X2は、単結合又は-O-を示す。
【0047】
上記式(2)中、R6は脂肪族炭化水素基を示す。上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基などが挙げられる。中でも、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましい。また、上記脂肪族炭化水素基は、C1-4脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0048】
表面修飾NDを構成するND粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子を含むことが好ましい。その他、上記一次粒子が数個~数十個程度凝集(凝着)した二次粒子を含んでいてもよい。また、表面修飾NDの表面には、表面修飾基(X)以外にも、その他の表面官能基を一種又は二種以上有していてもよい。
【0049】
上記表面修飾NDにおける、表面修飾基(X)に対するNDの質量比[ND/表面修飾基(X)]は、特に限定されないが、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上である。上記質量比が0.5以上(特に、2.5以上)であると、ナノダイヤモンド材料としての特性を損ないにくい。また、上記質量比[ND/表面修飾基(X)]は、特に限定されないが、15.0以下であることが好ましく、より好ましくは7.0以下である。上記質量比が15.0以下(特に、7.0以下)であると、表面修飾基(X)の修飾度が充分となり、有機溶媒における分散性により優れる。上記質量比は、熱重量分析により測定される重量減少率に基づき、減少した重量を表面修飾基(X)の質量として求められる。
【0050】
上記表面修飾NDは、有機溶媒に対する分散性に優れ、また、表面修飾基(1)におけるR1、R3、及びX1の調整や、表面修飾基(2)におけるR4、R5、R6、及びX2の調整などによりND粒子の構造をコントロールすることで、様々な有機溶媒に対する分散性と樹脂に対する親和性が実現される。このため、CMP向け研磨剤やドレッサー用材料、燃料電池向け耐腐食性電極メッキ材料、切削工具等の高硬度表面コーティング層形成材料、高耐熱・高熱伝導材料など、工学応用分野で使用できる。
【0051】
上記表面修飾NDの粒子径(D50)は、例えば400nm以下であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。表面修飾NDの粒子径(D50)の下限は、例えば5nmである。また、粒子径(D90)は、例えば500nm以下であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは170nm以下である。表面修飾NDの粒子径(D90)の下限は、例えば50nmである。表面修飾NDの粒子径が小さいほど、後述の複合材料において高い透明性が得られる点で好ましい。なお、表面修飾NDの(平均)粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0052】
上記表面修飾NDは、後述の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法により製造することができる。
【0053】
[表面修飾ナノ炭素粒子(A)及び(B)の製造方法]
本開示の一実施形態(第一実施形態)に係る表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法は、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(3-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程(「反応工程(A)」と称する場合がある)を少なくとも有する。第一実施形態により得られる表面修飾ナノ炭素粒子は、各種求核剤と反応させることにより様々な表面修飾基を導入することができる中間体として有用である。また、表面修飾基(1)を有する表面修飾ND又は当該表面修飾NDを製造するための中間体として使用することもできる。なお、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を「表面修飾ナノ炭素粒子(A)」と称する場合がある。
【化15】
[式(3-1)中、R
Iは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。Y
1はハロゲン原子を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化16】
[式(3-2)中、R
I及びY
2は、それぞれ、上記に同じ。]
【0054】
上記反応工程(A)では、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と上記式(3-1)で表される化合物とを反応させ、上記ナノ炭素粒子におけるヒドロキシ基の酸素原子と上記式(3-1)で表される化合物におけるカルボニル炭素とが結合してエステル結合を形成し、表面修飾ナノ炭素粒子(A)が得られる。
【0055】
上記ナノ炭素粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノオーダーの炭素材料(ナノ炭素材料)の粒子を用いることができる。上記ナノ炭素粒子におけるナノ炭素材料としては、例えば、ナノダイヤモンド、フラーレン、酸化グラフェン、ナノグラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィラメント、オニオンライクカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、カーボンブラック、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルなどが挙げられる。上記ナノ炭素粒子としては、中でも、ナノダイヤモンド粒子(ND粒子)が好ましい。上記ナノ炭素粒子は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0056】
上記ND粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノダイヤモンド粒子を用いることができる。ND粒子は本来的に製造過程で生じるカルボキシ基やヒドロキシ基を有している。ND粒子は、一種のみを用いてもよいし二種以上を用いてもよい。
【0057】
上記ND粒子としては、例えば、爆轟法ND(すなわち、爆轟法によって生成したND)や、高温高圧法ND(すなわち、高温高圧法によって生成したND)を使用することができる。中でも、分散媒中の分散性がより優れる点で、すなわち一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法NDが好ましい。
【0058】
上記爆轟法NDには、空冷式爆轟法ND(すなわち、空冷式爆轟法によって生成したND)と水冷式爆轟法ND(すなわち、水冷式爆轟法によって生成したND)が含まれる。中でも、空冷式爆轟法NDが水冷式爆轟法NDよりも一次粒子が小さい点で好ましい。
【0059】
上記式(3-1)で表される化合物は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0060】
上記式(3-1)中、RIは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。上記置換又は無置換の二価の炭化水素基としては、上記式(1)におけるR1として例示及び説明された置換又は無置換の二価の炭化水素基が挙げられる。
【0061】
上記二価の脂肪族炭化水素基としては、中でも、二価の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは直鎖又は分岐鎖状アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状アルキレン基である。
【0062】
上記二価の炭化水素基は、C1-22炭化水素基が好ましく、より好ましくはC2-10ア炭化水素基、さらに好ましくはC3-8炭化水素基である。上記炭素数が上記範囲内であると、有機溶媒に対する分散性がより優れる。
【0063】
上記式(3-1)中、Y1はハロゲン原子を示す。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。上記ナノ炭素粒子と上記式(3-1)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、Y1は塩素原子であることが好ましい。
【0064】
上記式(3-1)中、Y2は脱離性基を示す。上記脱離性基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基等のアシルオキシ基などが挙げられる。得られる表面修飾ナノ炭素粒子と求核剤との反応性がより良好となる観点から、Y2はハロゲン原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0065】
反応工程(A)は、上記ナノ炭素粒子と上記式(3-1)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、上記ナノ炭素粒子が分散媒中に分散した状態で行うことが好ましい。上記分散媒としては、有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素(特に、直鎖状飽和脂肪族炭化水素);ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;メタノール等のアルコール;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン;アセトニトリル等のニトリルなどが挙げられる。中でも、上記ナノ炭素粒子、上記式(3-1)で表される化合物、及び表面修飾ナノ炭素粒子(A)の分散性に特に優れる観点から、芳香族炭化水素が好ましく、より好ましくはトルエンである。
【0066】
上述のように、反応工程(A)はナノ炭素粒子が有機溶媒にナノ分散した状態、すなわちナノ炭素粒子の分散組成物中で行われることが好ましい。上記分散組成物におけるナノ炭素粒子のメディアン径(D50)は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは1~50nmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、ナノ炭素粒子表面のヒドロキシ基の量が多く、上記式(3-1)で表される化合物との反応がより多く進行する。また、得られる表面修飾ナノ炭素粒子(A)の分散性に優れる。
【0067】
反応工程(A)に供する上記ナノ炭素粒子と上記式(3-1)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)は、例えば1:25~1:1である。また、分散組成物中における上記ナノ炭素粒子の濃度は、例えば1~10質量%であり、分散組成物中における上記式(3-1)で表される化合物の濃度は、例えば1~60質量%である。
【0068】
上記ナノ炭素粒子と上記式(3-1)で表される化合物の反応条件は、例えば、温度0~150℃、反応時間1~48時間、圧力1~5atmの範囲内から適宜選択できる。
【0069】
反応工程(A)における反応により、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子(A)が得られる。上記式(3-2)中、RI及びY2は、それぞれ、上記式(3-1)におけるものと同様である。具体的には、RIは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示し、Y2は脱離性基を示す。式(3-2)において、酸素原子から左に伸びる結合手はナノ炭素粒子に結合する。
【0070】
反応工程(A)後、得られた表面修飾ナノ炭素粒子(A)を精製工程に付してもよい。例えば、上記精製工程として、表面修飾ナノ炭素粒子(A)を遠心分離に付して沈殿させ、デカンテーションやろ過等により沈殿した表面修飾ナノ炭素粒子(A)を分離し(分離工程)、その後メタノールやアセトン等の洗浄溶媒で洗浄すること(洗浄工程)が好ましい。その後、さらに乾燥工程を設けてもよい。乾燥工程を経ることにより、粉末状の表面修飾ナノ炭素粒子(A)を得ることができる。
【0071】
本開示の他の一実施形態(第二実施形態)に係る表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法は、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子(表面修飾ナノ炭素粒子(A))と、下記式(3-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程(「反応工程B」と称する場合がある)を少なくとも有する。第二実施形態により得られる表面修飾ナノ炭素粒子として、下記式(3-3)で表される化合物を適宜選択して反応させることにより様々な表面修飾基を導入して得ることができる。なお、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を「表面修飾ナノ炭素粒子(B)」と称する場合がある。
【化17】
[式(3-3)中、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は一価の有機基を示す。R
IIは、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化18】
[式(3-4)中、R
I、X
1、及びR
IIは、それぞれ、上記に同じ。]
【0072】
上記反応工程(B)では、表面修飾ナノ炭素粒子(A)と上記式(3-3)で表される化合物とを反応させ、表面修飾ナノ炭素粒子(A)におけるY2に結合した炭素原子と上記式(3-3)で表される化合物におけるX1とが結合して、RI及びRIIがX1を介して結合した表面修飾ナノ炭素粒子(B)が得られる。
【0073】
上記式(3-3)で表される化合物としては、具体的には、例えば、第一級アミン、第二級アミン、アルコール、チオール、カルボン酸が挙げられる。上記式(3-3)で表される化合物は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0074】
上記式(3-3)中、X1は、-NH-、-NR3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示す。中でも、製造容易性及び有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、-NH-、-NR3-、-O-が好ましく、より好ましくは-NH-、-NR3-である。なお、上記X1が-NR3-を示す場合のR3は、一価の有機基を示す。上記一価の有機基としては、上記式(1)におけるR3として例示及び説明された一価の有機基が挙げられる。
【0075】
上記式(3-3)中、RIIは、一価の有機基を示す。上記一価の有機基としては、上記式(1)におけるR3として例示及び説明された一価の有機基が挙げられる。
【0076】
上記R3及び上記RIIにおける一価の有機基としては、それぞれ、有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、一価の置換又は無置換の炭化水素基が好ましい。上記R3と上記RIIは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0077】
上記一価の有機基(特に、一価の置換又は無置換の炭化水素基)は、炭素数が10以上(例えば10~22)であることが好ましく、より好ましくは15以上(例えば15~20)である。上記炭素数が10以上であると、有機溶媒に対する分散性がより優れる。
【0078】
RIIである上記一価の有機基は、有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、RIとRIIにおける炭素数(特に、炭化水素基を構成する炭素数)の合計は10以上となるように選択されることが好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは18以上である。上記炭素数の合計は、例えば30以下、好ましくは25以下である。上記炭素数が30以下であると、表面修飾基同士が絡まり合うのを抑制し、分散媒中で分散しやすい。また、X1が-NR3-を示す場合はRI、RII、及びR3における炭素数の合計が上記範囲内であることが好ましい。
【0079】
反応工程(B)は、表面修飾ナノ炭素粒子(A)と上記式(3-3)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、表面修飾ナノ炭素粒子(A)が分散媒中に分散した状態で行うことが好ましい。上記分散媒としては、有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、上述の反応工程(A)において使用可能な有機溶媒として例示及び説明されたものが挙げられる。中でも、表面修飾ナノ炭素粒子(A)、上記式(3-3)で表される化合物、及び表面修飾ナノ炭素粒子(B)の分散性に特に優れる観点から、芳香族炭化水素が好ましく、より好ましくはトルエンである。
【0080】
上述のように、反応工程(B)は表面修飾ナノ炭素粒子(A)が有機溶媒にナノ分散した状態、すなわち表面修飾ナノ炭素粒子(A)の分散組成物中で行われることが好ましい。上記分散組成物における表面修飾ナノ炭素粒子(A)のメディアン径(D50)は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは1~50nmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、表面修飾ナノ炭素粒子(A)表面の反応性基の量が多く、上記式(3-3)で表される化合物との反応がより多く進行する。また、得られる表面修飾ナノ炭素粒子(B)の分散性に優れる。
【0081】
反応工程(B)に供する表面修飾ナノ炭素粒子(A)と上記式(3-3)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)は、例えば1:25~1:1である。また、分散組成物中における表面修飾ナノ炭素粒子(A)の濃度は、例えば1~10質量%であり、分散組成物中における上記式(3-3)で表される化合物の濃度は、例えば1~60質量%である。
【0082】
表面修飾ナノ炭素粒子(A)と上記式(3-3)で表される化合物の反応条件は、例えば、温度0~150℃、反応時間1~48時間、圧力1~5atmの範囲内から適宜選択できる。
【0083】
反応工程(B)における反応により、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(3-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子(B)が得られる。上記式(3-4)中、RI、X1、及びRIIは、それぞれ、上記式(3-2)及び上記式(3-3)におけるものと同様である。具体的には、RIは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示し、X1は、-NH-、-NR3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、RIIは、一価の有機基を示す。式(3-4)において、酸素原子から左に伸びる結合手はナノ炭素粒子に結合する。
【0084】
以上のようにして、表面修飾ナノ炭素粒子(A)及び(B)が得られる。
【0085】
[表面修飾ナノ炭素粒子(C)及び(D)の製造方法]
本開示のさらに他の一実施形態(第三実施形態)に係るの表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法は、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(4-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程(「反応工程(C)」と称する場合がある)を少なくとも有する。第三実施形態により得られる表面修飾ナノ炭素粒子は、各種求電子剤と反応させることにより様々な表面修飾基を導入することができる中間体として有用である。また、表面修飾基(2)を有する表面修飾ND又は当該表面修飾NDを製造するための中間体として使用することもできる。なお、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を「表面修飾ナノ炭素粒子(C)」と称する場合がある。
【化19】
[式(4-1)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。Y
3は、ハロゲン原子を示す。]
【化20】
[式(4-2)中、X
2及びR
IIIは、それぞれ、上記に同じ。]
【0086】
上記反応工程(C)では、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と上記式(4-1)で表される化合物とを反応させ、上記ナノ炭素粒子におけるヒドロキシ基の酸素原子と上記式(4-1)で表される化合物におけるY3に結合したカルボニル炭素とが結合してエステル結合を形成し、表面修飾ナノ炭素粒子(C)が得られる。
【0087】
上記ナノ炭素粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノオーダーの炭素材料(ナノ炭素材料)の粒子を用いることができる。上記ナノ炭素粒子におけるナノ炭素材料としては、上述の反応工程(A)で使用されるナノ炭素材料として例示及び説明されたものが挙げられる。上記ナノ炭素粒子としては、中でも、ND粒子が好ましい。上記ナノ炭素粒子は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0088】
上記ND粒子としては、中でも、分散媒中の分散性がより優れる点で、すなわち一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法NDが好ましく、より好ましくは空冷式爆轟法NDである。
【0089】
上記式(4-1)で表される化合物は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0090】
上記式(4-1)中、上記X2は、単結合又は-O-を示す。
【0091】
上記式(4-1)中、RIIIは脂肪族炭化水素基を示す。上記脂肪族炭化水素基としては、上記式(2)におけるR6として例示及び説明された脂肪族炭化水素基が挙げられる。中でも、RIIIとしては、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましい。また、上記脂肪族炭化水素基は、C1-4脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0092】
上記式(4-1)中、Y3は、ハロゲン原子を示す。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。上記ナノ炭素粒子と上記式(4-1)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、Y3は塩素原子であることが好ましい。
【0093】
反応工程(C)は、上記ナノ炭素粒子と上記式(4-1)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、上記ナノ炭素粒子が分散媒中に分散した状態で行うことが好ましい。上記分散媒としては、有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、上述の反応工程(A)において使用可能な有機溶媒として例示及び説明されたものが挙げられる。中でも、上記ナノ炭素粒子、上記式(3-1)で表される化合物、及び表面修飾ナノ炭素粒子(C)の分散性に特に優れる観点から、芳香族炭化水素が好ましく、より好ましくはトルエンである。
【0094】
上述のように、反応工程(C)はナノ炭素粒子が有機溶媒にナノ分散した状態、すなわちナノ炭素粒子の分散組成物中で行われることが好ましい。上記分散組成物におけるナノ炭素粒子のメディアン径(D50)は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは1~50nmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、ナノ炭素粒子表面のヒドロキシ基の量が多く、上記式(4-1)で表される化合物との反応がより多く進行する。また、得られる表面修飾ナノ炭素粒子(C)の分散性に優れる。
【0095】
反応工程(C)に供する上記ナノ炭素粒子と上記式(4-1)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)は、例えば1:25~1:1である。また、分散組成物中における上記ナノ炭素粒子の濃度は、例えば1~10質量%であり、分散組成物中における上記式(4-1)で表される化合物の濃度は、例えば1~60質量%である。
【0096】
上記ナノ炭素粒子と上記式(4-1)で表される化合物の反応条件は、例えば、温度0~100℃、反応時間1~48時間、圧力1~5atmの範囲内から適宜選択できる。
【0097】
反応工程(C)における反応により、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子(C)が得られる。上記式(4-2)中、X2及びRIIIは、それぞれ、上記式(4-1)におけるものと同様である。具体的には、X2は、単結合又は-O-を示し、RIIIは、脂肪族炭化水素基を示す。式(4-2)において、酸素原子から左に伸びる結合手はナノ炭素粒子に結合する。
【0098】
反応工程(C)後、得られた表面修飾ナノ炭素粒子(C)を精製工程に付してもよい。例えば、上記精製工程として、表面修飾ナノ炭素粒子(C)を遠心分離に付して沈殿させ、デカンテーションやろ過等により沈殿した表面修飾ナノ炭素粒子(C)を分離し(分離工程)、その後メタノールやアセトン等の洗浄溶媒で洗浄すること(洗浄工程)が好ましい。その後、さらに乾燥工程を設けてもよい。乾燥工程を経ることにより、粉末状の表面修飾ナノ炭素粒子(C)を得ることができる。
【0099】
本開示のさらに他の一実施形態(第四実施形態)に係る表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法は、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子(表面修飾ナノ炭素粒子(C))と、下記式(4-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る工程(「反応工程D」と称する場合がある)を少なくとも有する。第四実施形態により得られる表面修飾ナノ炭素粒子として、下記式(4-3)で表される化合物を適宜選択して反応させることにより様々な表面修飾基を導入して得ることができる。なお、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を「表面修飾ナノ炭素粒子(D)」と称する場合がある。
【化21】
[式(4-3)中、Y
4は、ハロゲン原子を示す。R
IVは、一価の有機基を示し、Y
4と結合する原子が炭素原子である。]
【化22】
[式(4-4)中、X
2、R
III、及びR
IVは、それぞれ、上記に同じであり、R
IV'は、水素原子又はR
IVを示す。]
【0100】
上記反応工程(D)では、表面修飾ナノ炭素粒子(C)と上記式(4-3)で表される化合物とを反応させ、表面修飾ナノ炭素粒子(C)におけるメチレン基の炭素原子と上記式(4-3)で表される化合物におけるY4に結合した炭素原子とが結合して炭素-炭素結合が形成された表面修飾ナノ炭素粒子(D)が得られる。
【0101】
上記式(4-3)で表される化合物は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0102】
上記式(4-3)中、RIVは、一価の有機基を示す。上記一価の有機基としては、上記式(1)におけるR3として例示及び説明された一価の有機基が挙げられる。
【0103】
上記一価の有機基としては、有機溶媒に対する分散性により優れる観点から、一価の置換又は無置換の炭化水素基が好ましい。
【0104】
上記一価の有機基(特に、一価の置換又は無置換の炭化水素基)は、炭素数が10以上(例えば10~22)であることが好ましく、より好ましくは15以上(例えば15~20)である。上記炭素数が10以上であると、有機溶媒に対する分散性がより優れる。
【0105】
上記式(4-3)中、Y4は、ハロゲン原子を示す。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。表面修飾ナノ炭素粒子(C)と上記式(4-3)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、Y4は臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましい。
【0106】
反応工程(D)は、塩基性触媒の存在下で行うことが好ましい。上記塩基性触媒は、求核置換反応に用いられる公知乃至慣用の塩基性触媒を用いることができる。上記塩基性触媒としては、例えば、ピペリジン、N-メチルピペリジン、ピロリジン、N-メチルピロリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミン(第2級アミン、第3級アミン等);ピリジン等の含窒素複素環化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;酢酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物;ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミドなどが挙げられる。
【0107】
反応工程(D)は、表面修飾ナノ炭素粒子(C)と上記式(4-3)で表される化合物との反応性がより良好となる観点から、表面修飾ナノ炭素粒子(C)が分散媒中に分散した状態で行うことが好ましい。上記分散媒としては、有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、上述の反応工程(A)において使用可能な有機溶媒として例示及び説明されたものが挙げられる。中でも、表面修飾ナノ炭素粒子(C)、上記式(4-3)で表される化合物、及び表面修飾ナノ炭素粒子(D)の分散性に特に優れる観点から、芳香族炭化水素が好ましく、より好ましくはトルエンである。
【0108】
上述のように、反応工程(D)は表面修飾ナノ炭素粒子(C)が有機溶媒にナノ分散した状態、すなわち表面修飾ナノ炭素粒子(C)の分散組成物中で行われることが好ましい。上記分散組成物における表面修飾ナノ炭素粒子(C)のメディアン径(D50)は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは1~50nmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、表面修飾ナノ炭素粒子(C)表面の反応性基の量が多く、上記式(4-3)で表される化合物との反応がより多く進行する。また、得られる表面修飾ナノ炭素粒子(D)の分散性に優れる。
【0109】
反応工程(D)に供する表面修飾ナノ炭素粒子(C)と上記式(4-3)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)は、例えば1:25~1:1である。また、分散組成物中における表面修飾ナノ炭素粒子(C)の濃度は、例えば1~10質量%であり、分散組成物中における上記式(4-3)で表される化合物の濃度は、例えば1~60質量%である。
【0110】
表面修飾ナノ炭素粒子(C)と上記式(4-3)で表される化合物の反応条件は、例えば、温度0~150℃、反応時間1~48時間、圧力1~5atmの範囲内から適宜選択できる。
【0111】
反応工程(D)における反応により、ナノ炭素粒子と上記ナノ炭素粒子を表面修飾する上記式(4-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子(D)が得られる。上記式(4-4)中、X2、RIII、及びRIVは、それぞれ、上記式(4-2)及び上記式(4-3)におけるものと同様である。具体的には、X2は、単結合又は-O-を示し、RIIIは、脂肪族炭化水素基を示し、RIVは、一価の有機基を示す。式(4-4)において、酸素原子から左に伸びる結合手はナノ炭素粒子に結合する。
【0112】
上記式(4-4)中、RIV'は、RIV又は水素原子を示す。RIV'が水素原子である場合、得られる表面修飾ナノ炭素粒子(D)はさらに上記式(4-3)で表される化合物と反応することができる。その結果、RIV'がRIVである表面修飾ナノ炭素粒子(D)が得られる。なお、RIV'がRIVである場合、二つのRIVは同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0113】
以上のようにして、表面修飾ナノ炭素粒子(C)及び(D)が得られる。
【0114】
表面修飾ナノ炭素粒子(A)~(D)における、上記表面修飾基に対するナノ炭素粒子の質量比[ナノ炭素粒子/表面修飾基]は、特に限定されないが、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上である。上記質量比が0.5以上(特に、2.5以上)であると、ナノ炭素材料としての特性を損ないにくい。また、上記質量比[ND/表面修飾基(X)]は、特に限定されないが、15.0以下であることが好ましく、より好ましくは7.0以下である。上記質量比が15.0以下(特に、7.0以下)であると、上記表面修飾基の修飾度が充分となる。上記質量比は、熱重量分析により測定される重量減少率に基づき、減少した重量を上記表面修飾基の質量として求められる。
【0115】
表面修飾ナノ炭素粒子(A)~(D)の粒子径(D50)は、例えば400nm以下であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。表面修飾ナノ炭素粒子の粒子径(D50)の下限は、例えば5nmである。また、粒子径(D90)は、例えば500nm以下であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは170nm以下である。表面修飾ナノ炭素粒子の粒子径(D90)の下限は、例えば50nmである。表面修飾ナノ炭素粒子の粒子径が小さいほど、後述の複合材料において高い透明性が得られる点で好ましい。なお、表面修飾ナノ炭素粒子の(平均)粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0116】
上記製造方法は、上記反応工程以外のその他の工程を有していてもよい。例えば、上記ナノ炭素粒子がナノ分散した状態の分散組成物を得るために、上記反応工程(A)又は(C)の前に解砕工程を行ってもよい。また、上記ナノ炭素粒子がND粒子である場合、上記その他の工程として、上記反応工程又は上記解砕工程の前に、爆轟法によりND粒子を生成する工程(生成工程)、酸処理工程、酸化処理工程を有していてもよい。
【0117】
[ナノ炭素粒子分散組成物]
上記表面修飾ND或いは上記製造方法により得られた表面修飾ナノ炭素粒子を分散媒に分散させることにより、分散媒と、上記分散媒中に分散している表面修飾ナノ炭素粒子とを含む、ナノ炭素粒子分散組成物が得られる。なお、上記反応工程後にナノ炭素粒子の凝着体が残存する場合には、反応工程後の液を静置した後にその上清液を採取し、これをナノ炭素粒子分散組成物としてもよい。また、上記製造方法により得られた分散組成物を得た後で、エバポレーターなどで分散組成物中の反応溶媒を留去する前或いはした後、新たな分散媒を混合して撹拌する、すなわち溶媒の交換によっても上記ナノ炭素粒子分散組成物を製造することができる。
【0118】
なお、本明細書において、上記製造方法により得られた表面修飾ナノ炭素粒子及び上記表面修飾NDを総称して「表面修飾ナノ炭素粒子(Y)」と称する場合がある。
【0119】
上記分散媒は、表面修飾ナノ炭素粒子を分散させるための媒体であり、水、有機溶媒、イオン液体などが挙げられる。中でも、表面修飾ナノ炭素粒子(Y)は有機溶媒に対する分散性に優れる観点から、有機溶媒であることが好ましい。上記分散媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0120】
上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素(特に、直鎖状飽和脂肪族炭化水素);ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;メタノール等のアルコール;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン;アセトニトリル等のニトリルなどが挙げられる。中でも、芳香族炭化水素が、表面修飾ナノ炭素粒子(Y)の分散性に特に優れる点で好ましく、特に好ましくはトルエンである。
【0121】
上記ナノ炭素粒子分散組成物中のナノ炭素粒子の含有割合は、特に限定されないが、例えば0.1質量ppm~10質量%である。
【0122】
上記ナノ炭素粒子の含有割合は、350nmにおける吸光度より算出することができる。なお、表面修飾ナノ炭素粒子の含有割合が低濃度(例えば2000質量ppm以下)である場合、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)によりナノ炭素粒子を表面修飾している化合物を検出し、その検出量に基づき求めることもできる。
【0123】
上記ナノ炭素粒子分散組成物中の分散媒の含有割合は、例えば90~99.9999質量%である。なお、上限は100質量%である。
【0124】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、表面修飾ナノ炭素粒子(Y)及び分散媒のみからなるものであってもよく、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、分散剤、防錆剤、腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色料などが挙げられる。上記その他の成分の含有割合は、上記ナノ炭素粒子分散組成物総量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。従って、表面修飾ナノ炭素粒子(Y)及び分散媒の合計の含有割合は、上記ナノ炭素粒子分散組成物総量に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
【0125】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、表面修飾ナノ炭素粒子(Y)を高分散状態で含有する。上記ナノ炭素粒子分散組成物中におけるナノ炭素粒子の平均分散粒子径(D50)は、例えば100nm以下であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。上記ナノ炭素粒子の平均分散粒子径の下限は、例えば5nmである。
【0126】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、ヘイズ値が5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。上記ナノ炭素粒子分散組成物は表面修飾ナノ炭素粒子(Y)の分散性に優れるため、上記ヘイズ値のナノ炭素粒子分散組成物を得ることができる。上記ヘイズ値は、JIS K 7136に基づいて測定することができる。
【0127】
上記ナノ炭素粒子分散組成物は、例えば、微細なナノ炭素粒子が有する特性(例えば、機械的強度、高屈折率、熱伝導性、絶縁性、酸化防止性、結晶化促進作用、デンドライト抑制作用等)を樹脂など(例えば、熱若しくは光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)に付与する、複合材料の添加剤として好ましく使用することができる。そして、上記ナノ炭素粒子分散組成物を樹脂に添加して得られる組成物は、例えば、機能性ハイブリッド材料、熱的機能(耐熱、蓄熱、熱電導、断熱等)材料、フォトニクス(有機EL素子、LED、液晶ディスプレイ、光ディスク等)材料、バイオ・生体適合性材料、コーティング材料、フィルム(タッチパネルや各種ディスプレイ等のハードコートフィルム、遮熱フィルム等)材料、シート材料、スクリーン(透過型透明スクリーン等)材料、フィラー(放熱用フィラー、機械特性向上用フィラー等)材料、耐熱性プラスチック基板(フレキシブルディスプレイ用基板等)材料、リチウムイオン電池等材料として好ましく使用することができる。また、上記ナノ炭素粒子分散組成物は、その他、医療用途や、機械部品(例えば、自動車や航空機等)の摺動部などに適用する減摩剤又は潤滑剤としても使用できる。
【0128】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0129】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0130】
実施例1
下記工程を経て、表面修飾ND粒子及び分散組成物を製造した。
【0131】
ND粒子水分散液(ND粒子のメディアン径6.0nm)を、エバポレーターを使用して水を留去し100℃にて8時間減圧乾燥させ、黒色の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体(100mg)にトルエン1mL及び6-ブロモヘキサノイルクロリド1.5gを加え、撹拌しつつ、100℃で8時間反応させた。反応終了後、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たND含有溶液から粉末状NDを回収し、メタノール及びアセトンで洗浄し、乾燥させた。
【0132】
次に、粉末状ND0.04gに対し、トルエン0.5mL及び1-オクタデシルアミン0.7gを加え、撹拌しつつ、100℃で8時間反応させた。反応終了後、トルエンを加えて希釈し、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たND含有溶液の上清10mlを回収した。このようにして、ND粒子のトルエン分散組成物を得た。得られた表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は23nm、熱重量分析により求められる質量比[ND/表面修飾基]は12.5であった。
【0133】
実施例2
6-ブロモヘキサノイルクロリド1.5gの代わりに3-ブロモプロピオニルクロリド1.2gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてND粒子のトルエン分散組成物を得た。得られた表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は27nm、熱重量分析により求められる質量比[ND/表面修飾基]は9.5であった。
【0134】
実施例3
1-オクタデシルアミン0.7gの代わりにオレイルアミン0.7gを使用したこと以外は実施例2と同様にしてND粒子のトルエン分散組成物を得た。得られた表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は26nm、熱重量分析により求められる質量比[ND/表面修飾基]は8.0であった。
【0135】
実施例4
1-オクタデシルアミン0.7gの代わりに1-オクタデカノール0.8gを使用したこと以外は実施例1と同様にしてND粒子のトルエン分散組成物を得た。得られた表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は24nm、熱重量分析により求められる質量比[ND/表面修飾基]は14.1であった。
【0136】
実施例5
ND粒子水分散液(ND粒子のメディアン径6.0nm)を、エバポレーターを使用して水を留去し100℃にて8時間減圧乾燥させ、黒色の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体(100mg)にトルエン1mL及びエチルマロニルクロリド0.6gを加え、撹拌しつつ、100℃で8時間反応させた。反応終了後、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たND含有溶液から粉末状NDを回収し、メタノール及びアセトンで洗浄し、乾燥させた。
【0137】
次に、粉末状ND0.02gに対し、トルエン中に1-ヨードドデカン1mmol及びジアザビシクロウンデセン2mmolを加え、撹拌しつつ、50℃で8時間反応させた。反応終了後、トルエンを加えて希釈し、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たND含有溶液の上清10mlを回収した。このようにして、ND粒子のトルエン分散組成物を得た。得られた表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は29nm、熱重量分析により求められる質量比[ND/表面修飾基]は6.8であった。
【0138】
実施例6
1-ヨードドデカン1mmolの代わりに1-ヨードオクタデカン1mmolを使用したこと以外は実施例5と同様にしてND粒子のトルエン分散組成物を得た。得られた表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は20nm、熱重量分析により求められる質量比[ND/表面修飾基]は6.6であった。
【0139】
<粒径D50>
上述のようにして得られた実施例のND分散組成物におけるND粒子のメディアン径(粒径D50)は、動的光散乱法によって得られたナノダイヤモンドの粒度分布から測定した体積基準の値である。上記粒度分布は、具体的には、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、ナノダイヤモンドの粒度分布を動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。
【0140】
<熱重量分析>
TG/DTA(熱重量測定・示差熱分析)装置(商品名「EXSTAR6300」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、試料(約3mg)を、空気雰囲気下、昇温速度20℃/分にて加熱して重量減少を測定した。なお、基準物質には、アルミナを用いた。
【0141】
<FT-IR分析>
実施例1、4、及び5で得られた表面修飾ナノダイヤモンドについて、フーリエ変換赤外分光光度計「IRTracer」(株式会社島津製作所製)に、加熱真空撹拌反射「Heat Chamber Type-1000℃」(株式会社エス・ティ・ジャパン製)を取り付けた装置を用いてFT-IR測定を行った。なお、ND粒子の吸着水を除去するために、真空度2×10-3Pa下、150℃、10分間加熱を行った後に、FT-IR測定を実施した。
【0142】
実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図1に、実施例4で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図2に、実施例5で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図3にそれぞれに示す。実施例1では、3390cm
-1付近にアミノ基由来のピークが確認でき、2926cm
-1付近及び2855cm
-1付近にオクタデシル基由来のピークが確認でき、1759cm
-1付近にエステル結合由来のピークが確認できた。実施例4では、2928cm
-1付近及び2855cm
-1付近にオクタデシル基由来のピークが確認でき、1767cm
-1付近にエステル結合由来のピークが確認でき、1123cm
-1付近にエーテル結合由来のピークが確認できた。実施例5では、2926cm
-1付近及び2855cm
-1付近にドデシル基及びエチル基由来のピークが確認でき、1744cm
-1付近にエステル結合由来のピークが確認できた。
【0143】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する下記式(1)で表される基又は下記式(2)で表される基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
【化1】
[式(1)中、R
1は、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。R
2は、脱離性基又は[-X
1-R
3]を示し、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は、同一又は異なって、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化2】
[式(2)中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。X
2は、単結合又は-O-を示す。R
6は脂肪族炭化水素基を示す。]
[付記2]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(1)で表される基とを含み、前記式(1)中、R
1は、二価の脂肪族炭化水素基(好ましくは直鎖又は分岐鎖状アルキレン基、より好ましくは直鎖状アルキレン基)である、付記1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記3]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(1)で表される基とを含み、前記式(1)中、R
1は、置換又は無置換C
1-22炭化水素基(好ましくは置換又は無置換C
2-10炭化水素基、より好ましくは置換又は無置換C
3-8炭化水素基)である、付記1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記4]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(1)で表される基とを含み、前記式(1)中、R
2は、脱離性基(好ましくは、ハロゲン原子、スルホニルオキシ基、又はアシルオキシ基、より好ましくはハロゲン原子、さらに好ましくは臭素原子)である、付記1~3のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記5]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(1)で表される基とを含み、前記式(1)中、R
2は、[-X
1-R
3]を示す、付記1~3のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記6]前記式(1)中、X
1は、-NH-、-NR
3-、又は-O-(好ましくは-NH-又は-NR
3-)である、付記5に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記7]前記式(1)中、R
3は、同一又は異なって、一価の有機基(好ましくは一価の置換又は無置換の炭化水素基、より好ましくは炭素数が10以上(例えば10~22)の一価の置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくは15以上(例えば15~20)の一価の置換又は無置換の炭化水素基)である、付記5又は6に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記8]前記式(1)中、R
1とR
3における炭素数(特に、炭化水素基を構成する炭素数)の合計(X
1が-NR
3-を示す場合はR
1と2つのR
3における炭素数の合計)が10以上(好ましくは15以上、より好ましくは18以上)である、付記5~7のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記9]前記式(1)中、R
1とR
3における炭素数(特に、炭化水素基を構成する炭素数)の合計(X
1が-NR
3-を示す場合はR
1と2つのR
3における炭素数の合計)が30以下(好ましくは25以下)である、付記5~8のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記10]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(1)で表される基とを含み、前記式(1)中、R
1は、置換又は無置換C
2-10の二価の炭化水素基を示し、X
1は-NH-、-NR
3-、又は-O-を示し、R
3は、同一又は異なって、炭素数15以上の置換又は無置換の炭化水素基を示す、付記1~9のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0144】
[付記11]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(2)で表される基とを含み、前記式(2)中、R4及びR5は水素原子である、付記1~10のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記12]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(2)で表される基とを含み、前記式(2)中、R4及びR5は、一方が水素原子であり、他方が一価の有機基(好ましくは炭素数が10以上(例えば10~22)(好ましくは15以上(例えば15~20))である置換又は無置換の炭化水素基)である、付記1~10のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記13]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(2)で表される基とを含み、前記式(2)中、R4及びR5は、同一又は異なって、一価の有機基(好ましくは炭素数が10以上(例えば10~22)(好ましくは15以上(例えば15~20))である置換又は無置換の炭化水素基)である、付記1~10のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記14]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(2)で表される基とを含み、前記式(2)中、R6は、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である、付記1~13のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記15]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する前記式(2)で表される基とを含み、前記式(2)中、R6は、C1-4脂肪族炭化水素基である、付記1~14のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記16]前記表面修飾ナノダイヤモンドにおける、前記式(1)で表される基又は先記式(2)で表される基に対する前記ナノダイヤモンド粒子の質量比が0.5以上(好ましくは2.5以上)である、付記1~15のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記17]前記表面修飾ナノダイヤモンドにおける、前記式(1)で表される基又は先記式(2)で表される基に対する前記ナノダイヤモンド粒子の質量比が15.0以下(好ましくは7.0以下)である、付記1~16のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記18]粒子径(D50)が400nm以下(好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下)である、付記1~17のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記19]粒子径(D50)が5nm以上である付記1~18のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記20]粒子径(D90)が500nm以下(好ましくは180nm以下、より好ましくは170nm以下)である、付記1~19のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[付記21]粒子径(D90)が50nm以上である、付記1~20のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
【0145】
[付記22]分散媒と、前記分散媒中に分散している付記1~21のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンドと、を含むナノダイヤモンド分散組成物。
[付記23]前記分散媒は、有機溶媒(好ましくは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール、ハロゲン化炭化水素、鎖状又は環状エーテル、エステル、鎖状ケトン、又はニトリル、より好ましくは芳香族炭化水素、さらに好ましくはトルエン)を少なくとも含む、付記22に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記24]前記ナノダイヤモンド分散組成物中のナノダイヤモンドの含有割合が0.1質量ppm~10質量%である、付記22又は23に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記25]前記ナノダイヤモンド分散組成物中の分散媒の含有割合が90~99.9999質量%である、付記22~24のいずれか1つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記26]前記表面修飾ナノダイヤモンド及び分散媒の合計の含有割合が、前記ナノダイヤモンド分散組成物総量に対して、70質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上)である、付記22~25のいずれか1つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記27]前記ナノダイヤモンド分散組成物中におけるナノダイヤモンド粒子の平均分散粒子径(D50)が100nm以下(好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下)である、付記22~26のいずれか1つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
[付記28]前記ナノダイヤモンド分散組成物のヘイズ値が5以下(好ましくは3以下、より好ましくは1以下)である、付記22~27のいずれか1つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【0146】
[付記29]表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(3-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る反応工程(A)を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化3】
[式(3-1)中、R
Iは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。Y
1はハロゲン原子を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化4】
[式(3-2)中、R
I及びY
2は、それぞれ、前記に同じ。]
[付記30]前記式(3-1)及び前記式(3-2)中、R
Iは、二価の脂肪族炭化水素基(好ましくは直鎖又は分岐鎖状アルキレン基、より好ましくは直鎖状アルキレン基)である、付記29に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記31]前記式(3-1)及び前記式(3-2)中、R
Iは、置換又は無置換C
1-22炭化水素基(好ましくは置換又は無置換C
2-10炭化水素基、より好ましくは置換又は無置換C
3-8炭化水素基)である、付記29又は30に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記32]前記式(3-1)中、Y
1は塩素原子である、付記29~31のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記33]前記式(3-1)中、Y
2は、ハロゲン原子(好ましくは臭素原子)である、付記29~32のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記34]前記反応工程(A)を、前記ナノ炭素粒子が分散媒(好ましくは有機溶媒、より好ましくは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール、ハロゲン化炭化水素、鎖状又は環状エーテル、エステル、鎖状ケトン、またはニトリルを少なくとも含む有機溶媒、さらに好ましくは芳香族炭化水素を含む有機溶媒、特に好ましくはトルエンを含む有機溶媒)中に分散した状態で行う、付記29~33のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記35]前記反応工程(A)を、前記ナノ炭素粒子が前記分散媒にナノ分散した分散組成物中で行う、付記34に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記36]前記分散組成物における前記ナノ炭素粒子のメディアン径(D50)が、1~100nm(好ましくは1~50nm)である、付記35に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記37]前記分散組成物中における前記ナノ炭素粒子の濃度が1~10質量%である、付記35又は36に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記38]前記分散組成物中における前記式(3-1)で表される化合物の濃度が1~60質量%である、付記35~37のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記39]前記反応工程(A)に供する前記ナノ炭素粒子と前記式(3-1)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)が1:25~1:1である、付記29~38のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0147】
[付記40]ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子と、下記式(3-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(3-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る反応工程(B)を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化5】
[式(3-2)中、R
Iは、置換又は無置換の二価の炭化水素基を示す。Y
2は脱離性基を示す。]
【化6】
[式(3-3)中、X
1は、-NH-、-NR
3-、-O-、-S-、又は-O-(C=O)-を示し、R
3は一価の有機基を示す。R
IIは、一価の有機基を示し、X
1と結合する原子が炭素原子である。]
【化7】
[式(3-4)中、R
I、X
1、及びR
IIは、それぞれ、前記に同じ。]
[付記41]前記式(3-3)及び前記式(3-4)中、X
1は、-NH-、-NR
3-、又は-O-(好ましくは-NH-又は-NR
3-)である、付記40に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記42]前記式(3-3)及び前記式(3-4)中、R
IIは、炭素数が10以上(例えば10~22)(好ましくは15以上(例えば15~20))である置換又は無置換の炭化水素基を示す、付記40又は41に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記43]前記式(3-4)中、R
IとR
IIにおける炭素数(特に、炭化水素基を構成する炭素数)の合計が10以上(好ましくは15以上、より好ましくは18以上)である、付記40~42のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記44]前記式(3-4)中、R
IとR
IIにおける炭素数(特に、炭化水素基を構成する炭素数)の合計が30以下(好ましくは25以下)である、付記40~43のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記45]前記反応工程(B)を、前記表面修飾ナノ炭素粒子が分散媒(好ましくは有機溶媒、より好ましくは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール、ハロゲン化炭化水素、鎖状又は環状エーテル、エステル、鎖状ケトン、またはニトリルを少なくとも含む有機溶媒、さらに好ましくは芳香族炭化水素を含む有機溶媒、特に好ましくはトルエンを含む有機溶媒)中に分散した状態で行う、付記40~44のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記46]前記反応工程(B)を、前記表面修飾ナノ炭素粒子が前記分散媒にナノ分散した分散組成物中で行う、付記45に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記47]前記分散組成物における前記表面修飾ナノ炭素粒子のメディアン径(D50)が、1~100nm(好ましくは1~50nm)である、付記46に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記48]前記分散組成物中における前記表面修飾ナノ炭素粒子の濃度が1~10質量%である、付記46又は47に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記49]前記分散組成物中における前記式(3-3)で表される化合物の濃度が1~60質量%である、付記46~48のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記50]前記反応工程(B)に供する前記表面修飾ナノ炭素粒子と前記式(3-3)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)が1:25~1:1である、付記40~49のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0148】
[付記51]表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子と下記式(4-1)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る反応工程(C)を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化8】
[式(4-1)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。Y
3は、ハロゲン原子を示す。]
【化9】
[式(4-2)中、X
2及びR
IIIは、それぞれ、前記に同じ。]
[付記52]前記式(4-1)及び前記式(4-2)中、R
IIIは、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である、付記51に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記53]前記式(4-1)及び前記式(4-2)中、R
IIIは、C
1-4脂肪族炭化水素基である、付記51又は52に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記54]前記式(4-1)中、Y
3は、塩素原子である、付記51~53のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記55]前記反応工程(C)を、前記ナノ炭素粒子が分散媒(好ましくは有機溶媒、より好ましくは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール、ハロゲン化炭化水素、鎖状又は環状エーテル、エステル、鎖状ケトン、またはニトリルを少なくとも含む有機溶媒、さらに好ましくは芳香族炭化水素を含む有機溶媒、特に好ましくはトルエンを含む有機溶媒)中に分散した状態で行う、付記51~54のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記56]前記反応工程(C)を、前記ナノ炭素粒子が前記分散媒にナノ分散した分散組成物中で行う、付記55に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記57]前記分散組成物における前記ナノ炭素粒子のメディアン径(D50)が、1~100nm(好ましくは1~50nm)である、付記56に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記58]前記分散組成物中における前記ナノ炭素粒子の濃度が1~10質量%である、付記56又は57に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記59]前記分散組成物中における前記式(4-1)で表される化合物の濃度が1~60質量%である、付記56~58のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記60]前記反応工程(C)に供する前記ナノ炭素粒子と前記式(4-1)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)が1:25~1:1である、付記51~59のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0149】
[付記61]ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子と、下記式(4-3)で表される化合物とを反応させて、ナノ炭素粒子と前記ナノ炭素粒子を表面修飾する下記式(4-4)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子を得る反応工程(D)を有する表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【化10】
[式(4-2)中、X
2は、単結合又は-O-を示す。R
IIIは脂肪族炭化水素基を示す。]
【化11】
[式(4-3)中、Y
4は、ハロゲン原子を示す。R
IVは、一価の有機基を示し、Y
4と結合する原子が炭素原子である。]
【化12】
[式(4-4)中、X
2、R
III、及びR
IVは、それぞれ、前記に同じであり、R
IV'は、水素原子又はR
IVを示す。]
[付記62]前記式(4-3)及び前記式(4-4)中、R
IVは、一価の置換又は無置換の炭化水素基(好ましくは炭素数が10以上(例えば10~22)、より好ましくは15以上(例えば15~20)である一価の置換又は無置換の炭化水素基)である、付記61に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記63]前記式(4-3)中、Y
4は、臭素原子又はヨウ素原子である、付記61又は62に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記64]前記反応工程(D)を、塩基性触媒(好ましくはアミン、含窒素複素環化合物、アルカリ金属アルコキシド、カルボン酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属水素化物、又はアルカリ金属アミド)の存在下で行う、付記61~63のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記65]前記反応工程(D)を、前記表面修飾ナノ炭素粒子が分散媒(好ましくは有機溶媒、より好ましくは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール、ハロゲン化炭化水素、鎖状又は環状エーテル、エステル、鎖状ケトン、またはニトリルを少なくとも含む有機溶媒、さらに好ましくは芳香族炭化水素を含む有機溶媒、特に好ましくはトルエンを含む有機溶媒)中に分散した状態で行う、付記61~64のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記66]前記反応工程(D)を、前記表面修飾ナノ炭素粒子が前記分散媒にナノ分散した分散組成物中で行う、付記65に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記67]前記分散組成物における前記表面修飾ナノ炭素粒子のメディアン径(D50)が、1~100nm(好ましくは1~50nm)である、付記66に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記68]前記分散組成物中における前記表面修飾ナノ炭素粒子の濃度が1~10質量%である、付記66又は67に記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記69]前記分散組成物中における前記式(4-3)で表される化合物の濃度が1~60質量%である、付記66~68のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記70]前記反応工程(D)に供する前記表面修飾ナノ炭素粒子と前記式(4-3)で表される化合物との比率(前者:後者、質量比)が1:25~1:1である、付記61~69のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記71]前記ナノ炭素粒子はナノダイヤモンド粒子(好ましくは爆轟法ナノダイヤモンド粒子、より好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンド)を含む、付記29~69のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子の製造方法。