(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】セサミン類及びPQQを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240809BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240809BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240809BHJP
A61K 31/36 20060101ALI20240809BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240809BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240809BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/105
A61K31/36
A61K31/4745
A61P3/02
A61P43/00 107
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021567395
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047425
(87)【国際公開番号】W WO2021132077
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019238782
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】阿部 千絵
(72)【発明者】
【氏名】八木田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】小野 佳子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/025247(WO,A1)
【文献】特開2012-019739(JP,A)
【文献】特開2015-096494(JP,A)
【文献】‘☆中華風なっとう☆’, クックパッド, [online],2011年04月19日,[検索日 2021年1月18日], Retrieved from the Internet:<URL: https://cookpad.com/recipe/1411011>
【文献】‘実はスゴい!!納豆の栄養素’, [online],2016年05月24日,[検索日 2021年1月18日], Retrieved from the Internet:<URL: https://web.archive.org/web/20160524083114/https://www.yamadafoods.co.jp/library/nutrient/>
【文献】‘疲労感に悩むあなたに’, [online],2012年12月15日,[検索日 2021年1月19日], Retrieved from the Internet:<URL: https://web.archive.org/web/20121215160206/http://mcm-www.jwu.ac.jp/-maruyama/onayami-hirou2.html>
【文献】'そのサプリ、本当に必要ですか?', [online],2015年04月29日,[検索日 2021年1月18日], Retrieved from the Internet:<URL: https://recipe.seikatsuclub.coop/news_story_detail.html?NTC=0000150049>
【文献】‘PQQを含む食品|ピロロキノリンキノン“なるほどPQQ”|三菱ガス化学’, [online],2015年03月08日,[検索日 2021年1月18日], Retrieved from the Internet:<URL: https://web.archive.org/web/20150308115005/http://www.mgc.co.jp/seihin/h/pqq/food/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/FSTA/AGRICOLA(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を含有
し、
セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンであり、
セサミン類に対するPQQ又はその塩の重量比(PQQ又はその塩/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100である、組成物。
【請求項2】
ミトコンドリア機能を向上、低下抑制又は維持させる請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持させる請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
活力の向上、低下抑制又は維持のために使用される請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
抗疲労用組成物である請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
経口用組成物である請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
飲食品である請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
「疲労感の軽減」、「疲労を感じにくい」、「活力の維持」、「活力の向上」、「エネルギー産生を助ける」及び「エネルギーに溢れている」からなる群から選択される1以上の表示を付した請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩
を含有する組成物を投与する、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持する方法
であって、
セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンであり、
セサミン類に対するPQQ又はその塩の重量比(PQQ又はその塩/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100である、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項10】
セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩
を含有する組成物を投与する、疲労の抑制、軽減又は改善方法
であって、
セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンであり、
セサミン類に対するPQQ又はその塩の重量比(PQQ又はその塩/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100である、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項11】
ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持のための、セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩
を含有する組成物の使用
であって、
セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンであり、
セサミン類に対するPQQ又はその塩の重量比(PQQ又はその塩/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100である、使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項12】
抗疲労のための
、セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩
を含有する組成物の使用
であって、
セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンであり、
セサミン類に対するPQQ又はその塩の重量比(PQQ又はその塩/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100である、使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セサミン類及びピロロキノリンキノン(PQQ)を含有する組成物に関する。また、本発明は、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー産生とは、生命活動を維持するために必要なエネルギーを産生することを示す。
エネルギー産生の大部分は、細胞内小器官の一つであるミトコンドリア内で行われる。食事から摂取された栄養源である糖、脂質、アミノ酸などが、解糖系、ペントースリン酸経路、クエン酸回路で代謝され、NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換される。次いで、NADHの電子がミトコンドリア呼吸鎖タンパク質(電子伝達系)に受け渡され、ATP(アデノシン三リン酸)の形でエネルギーを産生する。
ATP産生量が低下すると、代謝能低下による肥満、糖尿病発症リスク増加、筋力の低下、疲労増加、無気力・集中力の低下、うつ病などさまざまな問題が引き起こされることが知られている。
【0003】
ATP産生量を維持することは、疲労軽減、集中力維持、筋肉を用いた運動、心身の活力維持に重要である。
【0004】
これまでに、ATP産生に必要な基質である糖質やアミノ酸、脂質を含む様々なエネルギー産生増加剤が知られている(特許文献1)。
【0005】
上述したように、ATP産生に必要な基質は、ミトコンドリアの電子伝達系を介して、ATPへと変換されるが、基質が増加してもミトコンドリアの機能が低下していれば、ATPを産生することはできない。
ミトコンドリアの機能低下は、加齢や酸化ストレスにより引き起こされ、ATP産生量が低下することが知られている(非特許文献1、4)。
【0006】
ところで、ミトコンドリアの機能低下を抑制する成分をサプリメントとして摂取する場合、消費者が継続して服用しやすい形状であることが望まれる。特に高齢者の場合、嚥下機能が衰えてくることから、錠剤やカプセル剤は小型であることが望ましい。特に複数の成分を含む場合は体積が大きくなりがちであることから、錠剤やカプセル剤の体積を抑えるため、少量でも効果の高い成分、またはこのような成分の組合せを用いることが望ましい。
【0007】
ここで、セサミンは、ゴマに含まれるリグナン化合物であり抗酸化作用を有することが報告されている。セサミンは、糖尿病モデルマウスにおいて、抗酸化作用によるミトコンドリア機能低下抑制作用を有することが報告されている(非特許文献5)。また、セサミンの抗酸化作用により、ミトコンドリアの活性酸素産生抑制やミトコンドリアの膜電位低下抑制作用を発揮することが知られている(非特許文献2)。また、ミトコンドリアの生合成に関与するPGC1αを活性化することが報告されている(特許文献2)。
【0008】
また、ピロロキノリンキノン(PQQ)は、PGC1αを介したミトコンドリア機能の活性化作用を有することが報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-215170号公報
【文献】国際公開WO2018/079717
【非特許文献】
【0010】
【文献】Conley, Kevin E., Sharon A. Jubrias, and Peter C. Esselman. “Oxidative capacity and ageing in human muscle.” The Journal of physiology 526.1 (2000): 203-210.
【文献】Maharjan, Sunita, et al. “Mitochondrial impairment triggers cytosolic oxidative stress and cell death following proteasome inhibition.” Scientific reports 4 (2014): 5896.
【文献】Chowanadisai, Winyoo, et al. “Pyrroloquinoline quinone stimulates mitochondrial biogenesis through cAMP response element-binding protein phosphorylation and increased PGC-1α expression.” Journal of Biological Chemistry 285.1 (2010): 142-152.
【文献】Kudryavtseva, Anna V., et al. “Mitochondrial dysfunction and oxidative stress in aging and cancer.” Oncotarget 7.29 (2016): 44879.
【文献】Takada, Shingo, et al. “Sesamin prevents decline in exercise capacity and impairment of skeletal muscle mitochondrial function in mice with high-fat diet-induced diabetes.” Experimental physiology 100.11 (2015): 1319-1330.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
エネルギーは生命活動を維持するために常に必要とされるため、副作用の心配がなく継続摂取可能な、安全性の高いエネルギー産生の促進方法が望まれている。従来、エネルギー産生の基質を摂取することでエネルギー産生量を増加させる方法が提案されているが、ミトコンドリア機能が低下している状態ではその効果を充分に享受できない。また、エネルギー産生向上作用をもつ食品成分は知られているが、継続摂取する場合の服用のしやすさや安全性の観点から、少量でも効果を発揮する成分または成分の組合せであることが望ましい。
【0012】
本発明は、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持するために使用することができ、副作用の心配がなく、服用しやすく継続摂取可能な安全性の高い組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持する方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討し、服用しやすく継続摂取可能とする手段として、低用量で効果を発揮させることが有効であると考え、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を、向上、低下抑制又は維持するために使用できる成分について検討した。そして、ミトコンドリア機能の維持及び活性化成分であるセサミン類と、ミトコンドリア機能活性化成分であるピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩とを組み合わせることにより、セサミン単独、又は、ピロロキノン又はその塩を単独で処理するよりも効果的に(相乗的に)、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー生産能を、向上、低下抑制又は維持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下の組成物に関する。
〔1〕セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を含有する組成物。
〔2〕セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンである上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕セサミン類に対するPQQ又はその塩の重量比(PQQ又はその塩/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100である上記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕ミトコンドリア機能を向上、低下抑制又は維持させる上記〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔5〕ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持させる上記〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔6〕活力の向上、低下抑制又は維持のために使用される上記〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔7〕抗疲労用組成物である上記〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔8〕経口用組成物である上記〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔9〕飲食品である上記〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔10〕「疲労感の軽減」、「疲労を感じにくい」、「活力の維持」、「活力の向上」、「エネルギー産生を助ける」及び「エネルギーに溢れている」からなる群から選択される1以上の表示を付した上記〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の組成物。
〔11〕セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を投与する、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持する方法。
〔12〕セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を投与する、疲労の抑制、軽減又は改善方法。
〔13〕ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持のための、セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩の使用。
〔14〕抗疲労のためのセサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩の使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を、向上、低下抑制又は維持するために使用することができ、副作用の心配がなく、服用しやすく継続摂取可能な安全性の高い組成物を提供することができる。また、本発明の組成物を摂取することにより、効果的かつ副作用の心配がなく継続的にミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー生産能の向上作用、低下抑制作用又は維持作用が発揮され、抗疲労効果が得られる。また、本発明によると、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持する方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は100nMセサミン・エピセサミン混合物(SE)(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))を含む組成物(比較例2)とPQQを含む組成物(比較例5~9)、100nMSEとPQQとを含む組成物(実施例1~5)のATP産生量に対する効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組成物は、セサミン類の1種以上を含む。
セサミン類は、胡麻の主要なリグナン類化合物の一種で、胡麻中に0.5~1.0重量%程度含まれている。人工的に合成された化合物の長期的摂取は、予期せぬ副作用等の観点から好ましくない一方で、安全性の担保されたセサミン類は、長期的摂取に最適である。
【0018】
(セサミン類)
本発明において、セサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む化合物の総称である。セサミンは、ゴマに含まれる主要なリグナン化合物の一種である。セサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4-9331号公報に記載されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が挙げられる。セサミン類の1種以上として、これらの化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。セサミン類の具体例としては、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモール、セサモリン等を例示でき、これらの立体異性体又はラセミ体を単独で、または混合して使用することができる。また、セサミン類の代謝物(例えば、特開2001-139579号公報に記載)も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。本発明においては、セサミン類の1種以上として、セサミン及び/又はエピセサミンを好適に用いることができ、セサミン及びエピセサミンをより好適に用いることができる。セサミン及びエピセサミンを用いる場合、これらの比率は特に限定されないが、例えば、セサミン:エピセサミン(重量比)が1:0.1~1:9が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。
【0019】
本発明で使用されるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミンの場合は、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4-9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることができる。また、市販のゴマ油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ゴマ油を用いた場合には、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、ゴマ油から抽出された無味無臭であるセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。また、ゴマ油を用いた場合、セサミン含有量が低いため、好ましい量のセサミンを配合しようとすると、処方される組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもゴマ油からのセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。合成によりセサミン類を得ることもできる。その方法としては、例えば、セサミン、エピセサミンについては、Berozaらの方法(J.Am.Chem.Soc.,78,1242(1956))で合成することができる。セサミン、エピセサミンの代謝物についてはUrataらの方法(Chem.Pharm.Bull.(Tokyo),56(11)1611-2(2008))で合成することができる。
【0020】
セサミン類は、天然物や飲食品に含まれ、食経験が豊富であり、その安全性の高さが認められている化合物である。人工的に合成された化合物の長期的摂取は、予期せぬ副作用等の観点から好ましくない一方で、安全性の担保されたセサミン類は、継続摂取及び長期的摂取に最適である。
【0021】
(ピロロキノリンキノン(PQQ))
本発明の組成物は、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を含む。
PQQは、酸化還元補酵素である。PQQ又はその塩は、植物、細菌、動物等の種々の生物体内に存在するため、種々の生物から抽出して調製することができる。PQQ又はその塩は、市販品を使用することもできる。本発明においては、本発明の効果を奏することになる限り、PQQ又はその塩を豊富に含む植物由来原料等を本発明の組成物に含有させてもよい。
【0022】
PQQの塩として、飲食品、医薬品等に使用可能な塩が好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。PQQの塩としては、具体的には、例えば、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛等のリン酸塩、塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩等から選ばれた1種または2種以上を使用することもできる。塩の中では、ナトリウム塩が好ましい。
PQQの塩における塩の置換数は、1~3であり、好ましくは2である。PQQの塩として、PQQの二ナトリウム塩が好ましい。
【0023】
なお、PQQは、様々な食品、例えば、納豆、豆腐、みそなどの発酵食品を始め、パセリ、ピーマン、ホウレンソウなどの野菜、キウイフルーツ、パパイヤなどの果物に含まれている。人工的に合成された化合物の長期的摂取は、予期せぬ副作用等の観点から好ましくない一方で、安全性の担保されたPQQは、継続摂取及び長期的摂取に最適である。
【0024】
(セサミン類、及び、PQQ又はその塩を含有する組成物)
本発明の組成物は、上記セサミン類と上記PQQ又はその塩とを含有する。本発明の組成物において、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上作用、低下抑制作用又は維持作用を相乗的に高める観点から、セサミン類に対するPQQの重量比(PQQ/セサミン類)がPQQ換算で、0.01~100であることが好ましく、0.1~10であることがより好ましく、0.2~5であることがさらに好ましい。ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上作用、低下抑制作用又は維持作用を高めることにより、抗疲労効果を奏するため、本発明の組成物において、セサミン類とPQQ又はその塩との重量比を上記特定の範囲とすることは抗疲労作用の観点からも好ましい。
なお、本明細書において、PQQ又はその塩の量を示す際は、ピロロキノリンキノン(PQQ)量に換算した値を用いる。
【0025】
本発明の組成物は、上記セサミン類と上記PQQ又はその塩とを含有することで、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上作用、低下抑制作用又は維持作用を相乗的に高めることができる。これにより、本発明の組成物を用いると、低用量であっても上記作用を発揮させることができ、服用量の少量化が服用のしやすさに繋がり、継続摂取しやすい組成物を得ることができる。
【0026】
本発明の組成物は、ミトコンドリア機能を向上、低下抑制又は維持させることができる。また、本発明の組成物は、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持させることができる。また、これにより本発明の組成物は、抗疲労効果を奏する。
【0027】
なお、本明細書において、ミトコンドリア機能及びミトコンドリアのエネルギー産生能は、本発明の属する技術分野における通常の知識に基づき評価されればよく、その方法は特に限定されない。例えば、細胞外フラックスアナライザーを使用して、測定対象である細胞におけるATP合成時にミトコンドリアで使用される酸素消費速度(以下、「OCR」とも記載する)を、ATP合成酵素阻害剤(例えば、オリゴマイシン及びロテノン)、及び、脱共役剤(例えば、カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP))を添加しながら継続的に測定することで、ミトコンドリア機能の評価をすることができる。評価項目は、例えば、ミトコンドリア機能評価における主要な指標とされる、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量について解析することにより、ミトコンドリア機能を評価することができる。
【0028】
本発明の組成物は、抗疲労用組成物とすることができる。以下、「本発明の組成物」との表記は、抗疲労用組成物も含むものとする。なお、本明細書において、疲労とは、身体的あるいは精神的原因で生じる一時的な身体活動能力及び精神的活力の減退を意味する。疲労は、通常、疲労感(例えば、不快感、活動意欲の低下等)等を伴う。抗疲労とは、疲労を抑制、軽減又は改善することをいう。疲労の抑制は、疲労に対する耐性を高めること、疲労を予防すること(疲労のリスクがある対象においてリスクを低減することを含む)等を含む。疲労の軽減は、疲労の症状(例えば、疲労感等)を軽減すること等を含む。疲労の改善は、疲労から回復させること、疲労の症状を改善すること等を含む。
本発明の抗疲労用組成物は、身体疲労及び/又は精神疲労を抑制、軽減又は改善するため、身体的疲労感及び/又は精神的疲労感を抑制、軽減又は改善するため等に使用することができ、なかでも、身体疲労を抑制、軽減又は改善するため、身体的疲労感を抑制、軽減又は改善するために好ましく使用することができる。
【0029】
本発明の組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明の組成物は、それ自体がミトコンドリア機能を向上、低下抑制若しくは維持させるための、又は、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制若しくは維持させるための、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明の組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。本発明の一態様として、本発明の抗疲労用組成物は抗疲労剤ということもできる。
本発明の組成物は、経口用組成物、非経口用組成物のいずれであってもよいが、好ましくは経口用組成物である。経口用組成物としては、飲食品、経口用の医薬品、医薬部外品、飼料が挙げられ、好ましくは飲食品又は経口用医薬品であり、より好ましくは飲食品である。
【0030】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、セサミン類の1種以上及びPQQ又はその塩に加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。本発明の組成物を、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。
【0031】
例えば本発明の組成物を飲食品とする場合、セサミン類の1種以上及びPQQ又はその塩に、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、健康補助食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、健康補助食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ドライシロップ剤、シロップ剤、液剤、飲料、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0032】
本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、例えば、セサミン類の1種以上及びPQQ又はその塩に、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬品又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬品又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬品又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)投与の形態が挙げられる。本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、経口用医薬品又は医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤形としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。医薬品は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0033】
本発明の組成物を飼料とする場合には、セサミン類の1種以上及びPQQ又はその塩を飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0034】
本発明の組成物に含まれるセサミン類の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の組成物中のセサミン類の総含有量は、例えば、該組成物中に0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましく、また、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
一態様において、セサミン類の総含有量は、組成物中に0.001~10重量%が好ましく、0.01~5重量%がより好ましく、0.05~5重量%がさらに好ましい。
【0035】
本発明の組成物に含まれるPQQ又はその塩の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の組成物中のPQQ又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中に0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.005重量%以上がさらに好ましく、また、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
一態様において、PQQ又はその塩の含有量は、PQQ換算で、組成物中に0.0001~20重量%が好ましく、0.001~10重量%がより好ましく、0.05~10重量%がさらに好ましい。
【0036】
本発明の組成物は、経口で摂取(経口投与)されることが好ましい。本発明の組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されない。本発明の組成物の投与量は、ミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持させる効果、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持させる効果、及び/又は抗疲労効果が得られるような量であればよく、投与形態、投与方法、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
一態様において、本発明の組成物をヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、セサミン類の総投与量は、1日当たり体重60kg当たり、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは3mg以上、また、好ましくは200mg以下、より好ましくは100mg以下、さらに好ましくは80mg以下である。また、PQQ又はその塩の総投与量は、PQQ換算で、1日当たり体重60kg当たり、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは3mg以上、また、好ましくは200mg以下、より好ましくは100mg以下、さらに好ましくは80mg以下である。
一態様において、セサミン類の総投与量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kg当たり、好ましくは0.5~200mg、より好ましくは1~100mg、さらに好ましくは3~80mgである。また、PQQ又はその塩の総投与量は、PQQ換算で、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kg当たり、好ましくは0.5~400mg、より好ましくは1~200mg、さらに好ましくは3~160mgである。
上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。
一態様においては、上記量のセサミン類とPQQ又はその塩とを、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。
一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のセサミン類とPQQ又はその塩とを摂取させる又は投与するために使用することができる。
なお、セサミン類の上記総投与量について、セサミン類の化合物を2種以上使用する場合は、これらの合計量である。
一態様においては、セサミン及び/又はエピセサミンを、セサミン及びエピセサミンの総投与量として1日当たり体重60kg当たり、好ましくは0.5~200mg、より好ましくは1~100mg、さらに好ましくは3~80mg、ヒト(成人)に経口で摂取させる又は投与することが好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、継続して摂取又は投与されるものであることが好ましい。セサミン類とPQQ又はその塩とは、継続的に摂取又は投与されることによって、上記の効果が高まることが期待される。一態様において、本発明の組成物は、好ましくは1週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上継続して、特に好ましくは12週間以上継続して摂取又は投与されることが好ましい。
【0039】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されず、ヒト及びヒト以外の動物に摂取させることができる。ヒト以外の動物としては、例えば、産業動物、ペットおよび実験動物等が挙げられる。具体的に、産業動物とは、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ及びヒツジ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥及びダチョウ等の家禽、並びに、ブリ、ハマチ、マダイ、マアジ、コイ、ニジマス及びウナギ等の魚類等、産業上飼養することが必要とされている動物をいう。ペットとはイヌ、ネコ、マーモセット、小鳥及びハムスター等のいわゆる愛玩動物、コンパニオン・アニマルをいい、実験動物とはマウス、ラット、モルモット、ビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル及びカニクイザル等、医学、生物学、農学及び薬学等の分野で研究に供用される動物を表す。
【0040】
本発明の組成物の投与対象は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、投与対象として、ミトコンドリア機能の向上、低下抑制又は維持を必要とする又は希望する対象や、ミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持を必要とする又は希望する対象や、抗疲労効果を必要とする又は希望する対象などが挙げられる。また、上記のように加齢によりミトコンドリア機能が低下することが知られている。一態様において本発明の組成物の対象として中高年者が好ましい。本発明の組成物は、中高年者用(好ましくは高齢者用)の抗疲労用組成物であってよい。また、本発明の組成物は、例えば、ミトコンドリア機能の向上、低下抑制又は維持や、ミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持や、抗疲労効果を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0041】
本発明の組成物には、「疲労感の軽減」、「疲労を感じにくい」、「活力の維持」、「活力の向上」、「エネルギー産生を助ける」及び「エネルギーに溢れている」からなる群から選択される1以上の表示が付されていてもよい。例えば、疲労感・活力の低下とは、加齢に伴い感じやすいものであってもよい。エネルギー産生とは、細胞やミトコンドリアで産生されるものであってもよい。本発明の一態様において、本発明の組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。
【0042】
本発明は、以下の方法及び使用も包含する。
セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を投与する、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持する方法。
セサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩を投与する、疲労の抑制、軽減又は改善方法。
ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持のためのセサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩の使用。
抗疲労のためのセサミン類の1種以上、及び、ピロロキノリンキノン(PQQ)又はその塩の使用。
上記方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的な方法であってもよい。上記使用は、治療的な方法又は使用であってもよく、非治療的な方法又は使用であってもよい。
セサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を投与することにより、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持が可能となり、抗疲労が可能となる。
【0043】
本発明は、本発明の組成物を製造するための、セサミン類の1種以上及びPQQ又はその塩の使用も包含する。
具体的に、本発明は、ミトコンドリア機能及び/又はミトコンドリアのエネルギー産生能を、向上、低下抑制又は維持するための組成物を製造するためのセサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を含む組成物の使用であってもよい。
また、本発明は、抗疲労用組成物を製造するためのセサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を含む組成物の使用であってもよい。
【0044】
上記の使用において、セサミン類、及び、PQQ又はその塩の好ましい態様は、上述した本発明の組成物と同じである。セサミン類の1種以上として、セサミン類の化合物1種を使用してもよく、2種以上を使用してもよい。また、PQQ又はその塩として、PQQの塩を使用してもよい。上記使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、セサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を対象に投与する(摂取させる)ことが好ましい。上記使用においては、セサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を、経口投与(摂取)することが好ましい。上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。
【0045】
上記使用においては、所望の作用が得られる量(有効量ということもできる)のセサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を使用すればよい。セサミン類、及び、PQQ又はその塩との好ましい投与量や投与対象等は上述した本発明の組成物と同じである。セサミン類、及び、PQQ又はその塩は、そのまま投与してもよく、これらを含む組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の組成物を使用してもよい。
【0046】
上記使用において、セサミン類含有する組成物とPQQ又はその塩を含有する組成物とを個別に調製し、それらをほぼ同時に、または、一方の組成物を服用後、その効き目が持続している間に他方の組成物を服用すれば、本発明の意図するセサミン類の1種以上、及び、PQQ又はその塩を含有する組成物による効果(ミトコンドリア機能の向上、低下抑制又は維持作用、ミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持作用、及び/又は、抗疲労作用)の増強作用が得られる。よって、セサミン類を含有する組成物とPQQ又はその塩を含有する組成物とを含むキット等も本発明の組成物の範囲に含まれる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
<実施例1~5:100nMセサミン・エピセサミン混合物(SE)(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))及びPQQ・2Naによるミトコンドリア機能の評価試験>
ミトコンドリア機能を調べるため、5.5×10
3cells/wellのTIG-3細胞を専用プレートに播き、37℃、CO
2(5%)の条件で24時間培養した。培養24時間後に、セサミン・エピセサミン混合物及びPQQを含む各組成物を、それぞれ下記表1に記載の濃度でウェル中の培地に添加し、24時間培養した。その後、セサミン・エピセサミン混合物及びPQQを添加した培地を取り除き、ウェル中の細胞を、H
2O
2(800μM)添加培地で2時間処理した。その後、解析培地に交換し、分析機器(XF analyzer、Agilent株式会社)にて酸素消費速度を分析した。分析終了後、ヘキストHeで核を染色し、細胞を蛍光顕微鏡BZ-x(株式会社キーエンス)で撮影し、画像解析にて細胞数のカウントを行った。ATP産生量は、ATPシンターゼ阻害(オリゴマイシン)による酸素消費速度減少量とした。得られた結果を表1及び
図1に示す。
【0049】
<参考例1:無処理群のミトコンドリア機能の評価試験>
ミトコンドリア機能を調べるため、5.5×103cells/wellのTIG-3細胞を専用プレートに播き、37℃、CO2(5%)の条件で24時間培養した。培養24時間後に、セサミン・エピセサミン混合物及びPQQを含む組成物の培地への添加、及び、セル中の細胞のH2O2(800μM)添加培地で2時間処理を行うことなく、さらに、26時間培養した以外は、実施例1と同様にして、参考例1における酸素消費速度を分析し、細胞数をカウントした。また、ATP産生量を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0050】
<比較例1:H2O2処理群のミトコンドリア機能の評価試験>
ミトコンドリア機能を調べるため、5.5×103cells/wellのTIG-3細胞を専用プレートに播き、37℃、CO2(5%)の条件で24時間培養した。培養24時間後に、セサミン・エピセサミン混合物及びPQQを含む組成物の培地への添加を行うことなく、さらに24時間培養した以外は、実施例1と同様にして、比較例1における酸素消費速度を分析し、細胞数をカウントした。また、ATP産生量を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0051】
<比較例2~9:セサミン・エピセサミン混合物(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))又はPQQ・2Naによるミトコンドリア機能の評価試験>
ミトコンドリア機能を調べるため、5.5×103cells/wellのTIG-3細胞を専用プレートに播き、37℃、CO2(5%)の条件で24時間培養した。培養24時間後に、セサミン・エピセサミン混合物又はPQQをそれぞれ下記表1に記載の濃度でウェル中の培地に添加し、24時間培養した。これ以外は、上記実施例1と同様にして比較例2~9における酸素消費速度を分析し、細胞数をカウントした。また、ATP産生量を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1中、「実測値」(pmol/min/10
3cells)に、上記で求めたATP産生量(ATPシンターゼ阻害による酸素消費速度減少量)を示した。
「比較例1からの回復率(%)」は、実施例及び比較例の実測値を比較例1の実測値で除して100を乗じた値である。回復率が高いほど、ATP産生量が多いことを意味する。
図1に、実施例及び比較例について求めた回復率(%)(比較例1に対する回復率)を示す。
図1中、SEはセサミン・エピセサミン混合物を示す。
図1において、「比較例6+比較例2」は、比較例2の回復率と比較例6の回復率の和であり、「比較例7+比較例2」は、比較例2の回復率と比較例7の回復率の和であり、「比較例8+比較例2」は、比較例2の回復率と比較例8の回復率の和であり、「比較例9+比較例2」は、比較例2の回復率と比較例9の回復率の和である。「比較例6+比較例2」、「比較例7+比較例2」、「比較例8+比較例2」及び「比較例9+比較例2」は、セサミン類単独(比較例2)、及び、PQQ単独(比較例6、7、8又は9)の場合の回復率から予測される、セサミン類及びPQQを組み合わせた場合の回復率を示す。
【0054】
<結果>
表1のように、ATP産生量は、コントロール群(参考例1)に対して比較例1に係る800μMのH
2O
2処理で、48.1%低下した。また、比較例5に係るPQQ(10nM)処理では、比較例1に係るH
2O
2処理群に対して、ATP産生量は5.5%減少したが、比較例6~9に係るPQQ(30nM、100nM、300nM、1μM)処理では、それぞれ比較例1に係るH
2O
2処理群に対して、1.1%、4.6%、15.3%、17.8%と、添加したPQQに対し用量依存的にATP産生量が増加した。以上より、PQQ処理によるATP産生量低下抑制効果を確認した。また、比較例2~4に係るセサミン・エピセサミン混合物(100nM、300nM、1μM)処理では、それぞれ比較例1に係るH
2O
2処理群に対して、3.8%、8.0%、8.5%と、添加したセサミン・エピセサミン混合物に対し用量依存的にATP産生量が増加した。以上より、セサミン・エピセサミン混合物処理によるATP産生量低下抑制効果を確認した。次に、実施例1~5にかかる、セサミン・エピセサミン混合物(100nM)及び、PQQ(10nM、30nM、100nM、300nM、1μM)を各濃度で含む組成物による処理では、比較例1に係るH
2O
2処理群に対して、6.7%、9.1%、12.6%、27.8%、25.3%ATP産生量が増加した。これは、
図1に示すように、セサミン・エピセサミン混合物単独のATP産生量増加率及びPQQ単独のATP産生量増加率の合算値よりも大きい値であり、単に、PQQ及びセサミン・エピセサミン混合物に対し相加的にATP産生量が増加したのではなく、セサミン・エピセサミン混合物とPQQとを含む組成物により、相乗的にATP産生量が増加したことを確認した。すなわち、セサミン・エピセサミン混合物とPQQとを含む組成物は、両者を含むことによる相乗的な効果を示すため、低用量で効果を発揮することを確認した。
また、セサミン・エピセサミン混合物とPQQとを含む組成物は、ATP産生量低下抑制についても相乗的な効果を示すことを確認した。
【0055】
以上のことからセサミン・エピセサミン混合物及びPQQは、ATP産生量低下抑制の相乗効果を示すことが明確になった。これにより、セサミン類の一種、及び、PQQ又はその塩を含有する組成物は、ミトコンドリア機能を向上、低下抑制又は維持することができ、また、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制又は維持させることができる。そして、これにより抗疲労効果を奏する。