(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240809BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240809BHJP
C08L 63/02 20060101ALI20240809BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240809BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240809BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/22
C08L63/02
H01M10/653
H01M10/625
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022096598
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2022-06-23
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522173228
【氏名又は名称】ランクセス・パフォーマンス・マテリアルズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビーンミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・エントナー
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104559147(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111518367(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232664(US,A1)
【文献】特開2015-025025(JP,A)
【文献】特開2016-139490(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110938246(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H01M 10/625
H01M 10/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物又は成形材料であって、
a)少なくとも1種のポリアミド、
b)酸化アルミニウム、
c)水酸化マグネシウム、及び
d)少なくとも1種の有機でハロゲンフリーの
エポキシド、
を含み、
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分b)が、20~300質量部の範囲の量で用いられ
、
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分d)が、0.1~25質量部の範囲の量で用いられ、
前記成分d)が、1分子あたり2個のエポキシ基を含み
、及び
エポキシドが、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとのオリゴマー性反応生成物であって、450~750グラム/当量の範囲の、ISO 3001に記載のエポキシ指数を有する、
組成物又は成形材料。
【請求項2】
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分b)が、35~250質量部の範
囲の量で用いられることを特徴とする、請求項1に記載の組成物又は成形材料。
【請求項3】
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分c)が、20~350質量部の範
囲の量で用いられることを特徴とする、請求項1に記載の組成物又は成形材料。
【請求項4】
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分d)が
、1~16質量部の範
囲の量で用いられることを特徴とする、請求項1に記載の組成物又は成形材料。
【請求項5】
前記エポキシドが、式(III)
【化1】
[式中、aは、0~12の範囲の整数を表すが、ここでaは、繰り返し単位の平均数を表す]
の、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとのオリゴマー性反応生成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物又は成形材料。
【請求項6】
用いられる前記成分a)が、ISO 11357に記載のDSC法により、第二加熱において、溶融ピークを積分することによって測定して、4~25J/gの範囲の溶融エンタルピーを有する半晶質のポリアミ
ドから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物又は成形材料。
【請求項7】
用いられる前記成分a)が、ポリアミド6又はポリアミド66又はポリアミド6若しくはポリアミド66のコポリアミドである、請求項6に記載の組成物又は成形材料。
【請求項8】
電気産業又は電子産業の製造物
品であって、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物又は成形材料をベースとする
、製造物品。
【請求項9】
電
池を充電するための電池充電部
材であることを特徴とする、請求項
8に記載の
製造物品。
【請求項10】
前記充電部材が、充電インレット又は充電インレットの部材であることを特徴とする、請求項9に記載の製造物品。
【請求項11】
前記充電インレットの部材が、リアハウジングウォール、ピンホルダー、ハウジングフロント、又はコネクションマスクか
ら選択されることを特徴とする、請求項
10に記載の
製造物品。
【請求項12】
充電部材を製造するためのプロセスであって、
以下のものを含む組成物、
a)少なくとも1種のポリアミド、
b)酸化アルミニウム,
c)水酸化マグネシウム、及び
d)少なくとも1種の有機でハロゲンフリーの
エポキシド、
を混合し、水浴中で押出加工し、ペレット化が可能となるまで冷却し、そしてペレット化することにより、成形材料に加工し、そして射出成形プロセスにおいて採用することを特徴とし、
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分b)が、20~300質量部の範囲の量で用いられ
、
前記成分a)の100質量部あたり、前記成分d)が、0.1~25質量部の範囲の量で用いられ、
前記成分d)が、1分子あたり2個のエポキシ基を含み
、及び
エポキシドが、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとのオリゴマー性反応生成物であって、450~750グラム/当量の範囲の、ISO 3001に記載のエポキシ指数を有する、
プロセス。
【請求項13】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物又は成形材料の使用であって、電気産業又は電子産業の製造物品を製造するた
めの使用。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物又は成形材料の使用であって、充電部材を製造するための使用。
【請求項15】
前記充電部材が、電池を充電するための電池充電部
材であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリアミド、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び少なくとも1種の有機エポキシドを含む、難燃性のポリアミドベースの組成物又は成形材料、及びそれらから製造可能な電気産業又は電子産業の製造物品、特に充電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性電気部材、特に電池を充電するための充電部材、特に電気自動車(electromobility)で使用するためのものは、その充電部材の結線部及びケーブルを通して電流が流れるときに、熱を発生する。典型的な充電部材は、(特許文献1)の
図1に示されているような、充電ケーブルプラグ及び充電インレットである。電気自動車の開発を促進する目的で、電気車両産業全体で、充電部材の結線部、特に充電インレットと充電ケーブルプラグとの接続部を標準化させる試みがなされてきた。たとえば、Society of Automotive Engineers(「SAE」)は、SAE J1772においてそのような接続部を規定した(参照:(非特許文献1))。
【0003】
(非特許文献1)における情報では、特に自動車両の電池を充電するためには、結線部を介して伝送される電流を増大させるのが望ましいことを示している。しかしながら、高電流の場合では、その結線部及び電力ケーブルが温度上昇にさらされ、それによって、その自動車両の中の充電インレットの部材が損傷される可能性がある。たとえば、電気車両(EV)又はハイブリッド電気車両(HEV)の電池システムのための充電インレットは、充電操作の際に、充電インレットの結線部及びケーブルを介して熱を発生する可能性がある。
【0004】
(特許文献2)では、自動車両電池のための充電設備を用いて充電する際に発生する熱の問題を、ケーブル熱交換器の手段により解決しているが、それには、電力ケーブルの導体を積極的に冷却するために、そのケーブル熱交換器を通して冷媒を流動させるための冷媒流路が含まれている。
【0005】
(特許文献3)の解決法は、充電インレットの過熱を防止するためのデジタル機器からなっていて、そこでは、充電時間を測定し、充電インレットの温度を予測して、特定の充電電圧での充電時間及び充電電流に基づいた充電インレットの温度を規定し、充電インレットの温度が、ある種の閾値温度を越えることを防止している。
【0006】
それに代わるものとして検討されているのが、より効果的に導電体の中の熱を消散させるための、電気絶縁性で伝熱性のプラスチックである。しかしながら、多くの用途で望まれている難燃性は、電気自動車における電池及び充電設備の分野では、多くの場合、UL94試験におけるV-0格付けが規定されているので、大問題である。設置スペースが狭く、電気絶縁性プラスチックを通して、外部の熱消散媒体へ、可能な限り短い距離で熱を移行させようとすると、極めて薄い壁厚、少なくとも0.75mmで、UL94のV-0格付けが達成されるべきであるという要請に、必然的に導かれる。その結果としての課題目標は、少なくとも1W/mKの等方性熱伝導率に加えて、それにも関わらず、壁厚0.75mm以下でのV-0格付け、及びさらにはその用途には十分な機械的安定性を確保するようにした、電気絶縁性で伝熱性の添加剤及び難燃剤を加えた本来的に断熱性のプラスチックを提供することである。
【0007】
(特許文献4)では、水酸化マグネシウム及び窒化ホウ素を含むポリアミド成形材料の手段によりこの問題を解決しようと試みている。0.75mmでもUL94 V-0難燃性格付けが達成され、さらには熱伝導率が1W/mKより大ではあるものの、これは、多くの用途での機械的性質、特に曲げ強度及び外側繊維歪み(outer fibre strain)が不十分となる犠牲を払っている。(特許文献4)ではさらに、窒化ホウ素を採用しているが、このものは、それが異方性の熱伝導率を有しているために、その製造業者に多大の設計上の努力を要求し、さらには、その複雑且つ高エネルギー消費の製造モードについて、エコロジー的な面で批判的な見方を取らなければならない。
【0008】
(特許文献5)には、ポリアミド、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び有機エポキシドを含む、ポリアミドベースの組成物が開示されている。(特許文献5)の実施例では、なかんずく、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが採用されている。
【0009】
(特許文献6)には、エポキシド、耐衝撃性改良剤、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ポリアミド、窒化ホウ素、シリコーンゴム、顔料、及び加硫剤を含む、電子産業で使用するための高性能伝熱性フィルムが開示されている。耐衝撃性改良剤としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを採用することができる。
【0010】
最後に、(特許文献7)を参照するが、それは、以下のものを含む、伝熱性ポリマー組成物を特許請求している:
(a)約20重量%~約60重量%の、ポリアミド、ポリエステル、及びポリオレフィンから選択される有機ポリマー;
(b)約30重量%~約70重量%の、水酸化マグネシウム又は酸化水酸化アルミニウムから選択される伝熱性添加剤;及び
(c)約1重量%~約10重量%のポリアリーレンスルフィド、
(ここで、全重量パーセントは、そのポリマー組成物の全重量を基準にしており、そして、ポリアリーレンスルフィドを含まないこと以外では同一のポリマー組成物よりも高い難燃性を示す)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許第10 2012 002 882B4号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2020 108 175A1号明細書
【文献】欧州特許出願公告第3 470 254B1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3 133 104A1号明細書
【文献】中国特許出願公開第104559147A号明細書
【文献】中国特許出願公開第111518367A号明細書
【文献】国際公開第2014/036720A1号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】https://de.wikipedia.org/wiki/SAE_J1772
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、従来技術から出発して、本発明が対象としている課題は、理想的には窒化ホウ素を使用することなく、壁厚0.75mm以下でUL94 V-0難燃性格付けを可能とし、少なくとも1W/mKの理想的な等方性熱伝導率を達成しながらも、それにも関わらず、良好な機械的性質を達成している、電気絶縁性で伝熱性のポリアミドベースの組成物/成形材料を提供することである。
【0014】
理想的な等方性熱伝導率とは、具体的には、流れとは垂直な方向の熱伝導率(「平面貫通(through plane)」)の、流れ方向の熱伝導率(「平面内(in plane)」)に対する比率が、0.65~1.5の範囲であることを意味していると理解されたい。
【0015】
良好な機械的性質とは、ISO178-Aに記載の曲げ試験で、少なくとも1.5%の外側繊維歪み及び少なくとも150MPaの曲げ強度、そして少なくとも20kJ/m2のISO180-1Uに記載の衝撃強度を意味していると理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
その課題は、本発明の主題によって解決されるが、その主題には以下のものを含む組成物又は成形材料が含まれる:
少なくとも1種のポリアミド、好ましくは半晶質のポリアミド、
酸化アルミニウム、
水酸化マグネシウム、及び
好ましくは1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を有する、少なくとも1種の有機でハロゲンフリーのエポキシ化化合物。
【0017】
しかしながら、本発明さらに、以下のものを含む組成物をベースとする、電気産業又は電子産業の製造物品、好ましくは充電部材、特に好ましくは電池を充電するための電池充電部材、特に好ましくは電気自動車のための電池を充電するための電池充電部材も提供する:
少なくとも1種のポリアミド、好ましくは半晶質のポリアミド、
酸化アルミニウム、
水酸化マグネシウム、及び
好ましくは1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を有する、少なくとも1種の有機でハロゲンフリーのエポキシ化化合物。
【0018】
しかしながら、本発明はさらに、電気産業又は電子産業の製造物品を製造するため、好ましくは充電部材を製造するため、特に好ましくは電池を充電するための電池充電部材を製造するため、特には電気自動車のための電池を製造するためのプロセスにも関するが、ここで、以下のものを含む組成物を:
a)少なくとも1種のポリアミド、好ましくは半晶質のポリアミド、
b)酸化アルミニウム,
c)水酸化マグネシウム、及び
d)好ましくは1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を有する、少なくとも1種の有機でハロゲンフリーのエポキシ化化合物;
混合し、水浴中で押出加工し、ペレット化が可能となるまで冷却し、そしてペレット化することにより、成形材料に加工し、そして射出成形プロセスにおいて採用する。別な方法として、それらの成形材料を、成分a)~d)を混合した後で、射出成形へ直接送り込んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
射出成形により加工するための、本発明において用いられる組成物の調製は、最初に、少なくとも1種の混合装置の中で、出発物質として用いられる成分a)、b)、c)、及びd)、並びに場合によってはさらなる成分を混合することにより実施される。これは、混練、コンパウンディング、押出加工、又はローラーミル加工によりその用いられる成分を加工して成形材料とすることにより、実施するのが好ましい。この加工は、230℃~330℃の範囲の温度で実施するのが好ましい。成形材料を得るための加工は、共回転二軸スクリューエクストルーダー又はBussニーダーの中でのコンパウンディングにより実施するのが特に好ましい。個々の成分を予備混合しておくのも好都合である。本発明による組成物をベースとする成形材料が、中間体として得られる。それらの成形材料は、もっぱら成分a)~d)のみで構成されていてもよいし、或いは、成分a)~d)に加えてさらなる成分を含んでいてもよい。同様に本発明における成形材料は、Coperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)製のZSK 26コンパウンダー二軸スクリューエクストルーダーで、約290℃の温度で、水浴中に押出加工し、ペレット化が可能となるまで冷却し、そしてペレット化することにより製造するのが好ましい。次いで、そのペレット化した原料を、真空乾燥キャビネットの中、好ましくは70±10℃の範囲の温度で恒量になるまで乾燥させてから、射出成形機に供給する。射出成形のプロセスは、当業者には公知であり、たとえば、次の文献を参照されたい:
https://www.maschinenbau-wissen.de./skript3/werkstofftechnik/kunststoffe/389-spritzgiessen-prozess。
【0020】
本発明による組成物では、成分b)を、成分a)の100質量部あたり、20~300質量部の範囲、好ましくは35~250質量部の範囲、特に好ましくは50~180質量部の範囲、極めて特に好ましくは70~120質量部の範囲の量で採用するのが好ましい。
【0021】
本発明による組成物では、成分c)を、成分a)の100質量部あたり、20~350質量部の範囲、好ましくは50~300質量部の範囲、特に好ましくは85~250質量部の範囲、極めて特に好ましくは120~210質量部の範囲の量で採用するのが好ましい。
【0022】
本発明による組成物では、成分d)を、成分a)の100質量部あたり、0.1~25質量部の範囲、好ましくは1~16質量部の範囲、特に好ましくは2~10質量部の範囲の量で採用する。
【0023】
はっきりさせるために付言すれば、本発明の範囲には、任意の所望の組合せにおいて、すべての報告された定義、一般的な範囲又は好ましい範囲と記載された、報告された量及びパラメーターが包含されることに注意されたい。このことは、本発明における組成物、成形材料、及び製造物品、並びに本発明におけるプロセス、並びに本発明における使用にも関連する。特に断らない限り、引用された標準は、本願出願日において有効である版が適用可能である。特に断らない限り、報告されているパーセントは、重量パーセントである。
【0024】
成分a)
本発明において用いられるポリアミドは、好ましくは、独国特許出願公開第10 2011 084 519A1号明細書に従い、ISO 11357に記載のDSC法により、その第2加熱において、溶融ピークを積分することにより測定して、4~25J/gの範囲の溶融エンタルピーを有する半晶質のポリアミドであるべきである。
【0025】
成分a)として用いられるポリアミドが、少なくとも180℃の融点を有しているのが好ましい。ポリアミド6(PA6)、又はポリアミド66(PA66)、又はPA6若しくはPA66のコポリアミドが、特に好ましい。PA6の使用が、極めて特に好ましい。
【0026】
本出願の文脈において使用されるポリアミドの命名法は、国際的な標準/DIN 7728に従ったものであって、最初の数が出発ジアミンの中の炭素原子の数を表し、最後の数がジカルボン酸の中の炭素原子の数を表している。たとえばPA6の場合のように、数字が一つしか表記されていないのなら、このことは、その出発物質がα,ω-アミノカルボン酸か、又はそれから誘導されるラクタムすなわち、PA6の場合であればε-カプロラクタムであったということを意味している。さらなる情報については、次の文献を参照されたい:H.Domininghaus,Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften,p.272ff,VDI-Verlag,1976。
【0027】
用いられる成分a)は、ISO 307に従い、96重量%硫酸中0.5重量%溶液で、25℃で測定して、80~135mL/gの範囲、特に好ましくは90~130mL/gの範囲、極めて特に好ましくは90~125mL/gの範囲、特別に好ましくは95~115mL/gの範囲の粘度数を有する、低粘度のポリアミドであるのが好ましい。
【0028】
特に好ましい実施態様においては、用いられる成分a)が、ISO 307に従い、96重量%硫酸中0.5重量%溶液で、25℃で測定して、95~115mL/gの範囲の粘度数を有するポリアミド6である。
【0029】
本発明における熱可塑性プラスチック成形材料で用いられるポリアミドは、各種のプロセスにより製造することが可能であり、各種の構成単位から合成することができる。各種のモノマー構成単位、さらには、所望の分子量に設定するための各種の連鎖移動剤、又は所望の最終製品に応じて後ほど意図されている後処理で使用するための反応性基を有するモノマーを含む、ポリアミドを製造するための多くの手順が公知である。
【0030】
本発明において成分a)として用いられるポリアミドを製造するための工業的に適切なプロセスは、典型的には、溶融状態での重縮合を介して進行する。本発明の文脈においては、ラクタムの加水分解的重合もまた、重縮合であると考えるべきである。
【0031】
成分b)
用いられる成分b)が、α-Al2O3であるのが好ましい。
【0032】
本発明の文脈において使用するのに好ましい、工業グレードの酸化アルミニウムの場合においては、α-Al2O3の比率が、70%より大である。90%よりも高いα-Al2O3の比率を有する酸化アルミニウムが使用されれば、特に好ましい。95%よりも高いα-Al2O3の比率を有する酸化アルミニウムが使用されれば、極めて特に好ましい。本発明において特に好ましいのは、5重量%未満の不純物しか含まないα-Al2O3であり、1重量%未満の不純物しか含まなければ、極めて特に好ましい。
【0033】
成分b)は、粉体として用いられるのが好ましい。好適な粉体は、ISO 13320に従って求めて、100μm以下の体積平均粒子サイズd50、好ましくは0.1~50μmの範囲の体積平均粒子サイズd50、特に好ましくは0.5~10μmの範囲の体積平均粒子サイズd50、極めて特に好ましくは0.5~5μmの範囲の体積平均粒子サイズd50を有する。
【0034】
成分b)の、ISO 13320に従って求められる下側体積平均粒子サイズd10は、好ましくは0.01~20μmの範囲、特に好ましくは0.05~10μmの範囲、極めて特に好ましくは0.1~5μmの範囲、特に好ましくは0.3~2μmの範囲である。
【0035】
成分b)の、ISO 13320に従って求められる上側体積平均粒子サイズd90は、好ましくは200μm以下、特に好ましくは1~100μmの範囲、極めて特に好ましくは1.5~50μmの範囲、特に好ましくは2~10μmの範囲である。
【0036】
成分b)としては、ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、100μm以下のd50、0.01~20μmの範囲のd10、及び200μm以下のd90の体積平均粒子サイズ分布を有する酸化アルミニウムを採用するのが好ましい。したがって、本発明は、好ましくは、組成物及び成形材料、並びにそれらから製造可能な製造物品に関するが、ただし、それらは、成分b)として、ISO 13320に従ったレーザー回折法によって測定して、100μm以下のd50、0.01~20μmの範囲のd10、及び200μm以下のd90の体積平均粒子サイズ分布を有する酸化アルミニウムを採用している。
【0037】
ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有するAl
2O
3を採用するのが、特に好ましい。欧州特許出願公開第3 670 589A1号明細書を参照されたい。レーザー回折法によって得られたデータの評価は、対数横座標を有する、体積関連ヒストグラムを使用して実施する。この目的のためには、粒子サイズを複数のサイズクラスに分割する。0.01μm~10,000μmの測定範囲にわたって、それぞれの十進の桁(each decade)を、18のサイズクラスにさらに分割する。このことによって、その幅が次式
【数1】
(式中、xは、1~108の範囲のサイズクラスの一連番号を表す)
のサイズクラスyに相当する、108個のサイズクラスが得られる。
【0038】
「モノモーダルな(monomodal)」という用語の定義については、次のサイトを参照されたい:
https://de.wikipedia.org/wiki/Partikelgr%C3%B6%C3%9Fenverteilung。
【0039】
本発明においては、酸化アルミニウムの粒子サイズの体積(単位、[%])(=ヒストグラムのY軸)を、サイズクラス(単位、マイクロメートル[μm])(=ヒストグラムのX軸)に対してプロットしたときに、好ましくは、ガウス曲線の形状にある唯一の極大値が形成され、形成されるさらなる極大値のいずれもが、体積10%を越えないときに、モノモーダルな粒子サイズ分布が存在しているとする。
【0040】
「粒子サイズ分布(particle siz distribution)」という用語は、統計学に由来する。この分野では、各種の特徴(feature)、たとえば製造許容差の度数と度数分布とを考慮する。粒子技術及び粒子測定技術/分散解析の分野においては、粒子の相当直径を特徴として選択する。粒子サイズ分布は、統計学の一般的な度数分布から誘導される。粒子サイズの密度分布は、典型的には、ガウス釣鐘曲線の形状にある。その粒子サイズの密度分布が、単一の極大値を有している場合、これは、モノモーダルな分布と呼ばれている。二つの極大値の場合には、その分布はバイモーダルである。最大の極大値の横座標の値が、モーダル値と呼ばれている。酸化アルミニウムの粒子サイズ分布は、ISO 13320に従ったレーザー回折法によって求められる。本発明の文脈においては、酸化アルミニウムについての光学的物質データを使用して測定を実施し、前記データを、ミー理論に従って評価した。これについては、以下を参照されたい:
https://de.wikipedia.org/wiki/Laserbeugungs-Partikelgr%C3%B6%C3%9Fenanalyse。
【0041】
d10、d50、及びd90は、全体積を基準にして、粒子のそれぞれ10%、50%(中央値)及び90%が、それらより小さい直径を有している、直径である。
【0042】
成分b)としては、ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、100μm以下のd50、0.01~20μmの範囲のd10、及び1~100μmの範囲のd90の、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有する酸化アルミニウムを採用するのが特に好ましい。したがって、本発明は、特に好ましくは、組成物及び成形材料、並びにそれらから製造可能な製造物品に関するが、ただし、それらは、成分b)として、ISO 13320に従ったレーザー回折法によって測定して、100μm以下のd50、0.01~20μmの範囲のd10、及び1~100μmの範囲のd90の、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有する酸化アルミニウムを採用している。
【0043】
成分b)としては、ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、0.1~50μmの範囲のd50、0.01~20μmの範囲のd10、及び1~100μmの範囲のd90の、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有する酸化アルミニウムを採用するのが特に好ましい。したがって、本発明は、極めて特に好ましくは、組成物及び成形材料、並びにそれらから製造可能な製造物品に関するが、ただし、それらでは、成分b)として、ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、0.1~50μmの範囲のd50、0.01~20μmの範囲のd10、及び1~100μmの範囲のd90の、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有する、酸化アルミニウムが用いられる。
【0044】
成分b)としては、ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、0.5~5μmの範囲のd50、0.5~2μmの範囲のd10、及び2~10μmの範囲のd90の、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有する酸化アルミニウムを採用するのが極めて特に好ましい。したがって、本発明は、極めて特に好ましくは、組成物及び成形材料、並びにそれらから製造可能な製造物品に関するが、ただし、それらでは、成分b)として、ISO 13320に記載のレーザー回折法によって測定して、0.5~5μmの範囲のd50、0.5~2μmの範囲のd10、及び2~10μmの範囲のd90の、モノモーダルな体積平均粒子サイズ分布を有する、酸化アルミニウムが用いられる。
【0045】
本発明において成分b)として用いられるAl2O3粒子は、アスペクト比で表して、異なった形態で存在していてもよい。1~100、特に好ましくは1~30、極めて特に好ましくは1~10のアスペクト比を有する粒子を採用するのが好ましい。欧州特許出願公開第3 164 694A1号明細書には、アスペクト比を求めるためのいくつかのプロセスが記載されている。カメラベースのプロセスにおいては、粒子を、二次元の画像として、カメラのセンサー上に画像形成させる。そのセンサーが、CCDマトリックス又はCMOS画像センサーである場合には、粒子の形状測定には、適切な画像解析ソフトウェアが使用される。独国特許公報第198 02 141C1号明細書には、マトリックスカメラを含む解決法が記載されており、そして欧州特許出願公開第1 972 921A1号明細書には、2台のカメラを含む解決法が記載されている。そのセンサーが、CCDリニアアレイである場合には、その、画像化された粒子領域が、公知の粒子速度で測定されたコード長さ(chord length)から組み立てられる。適切な装置及びプロセスが、以下の特許に記載されている:独国特許出願公開第10 2009 056 503A1号明細書(センサーライン使用)、独国特許出願公開第10 2004 056 520A1号明細書(CCDライン使用)、独国特許出願公開第43 13 688A1号明細書(CCDライン使用)、独国特許出願第41 19 240C2号明細書(CCDライン使用)、旧東独特許出願第278 859A1号明細書(CCDラインセンサー使用)、旧東独特許出願第260 764A1号明細書(CCDラインセンサー使用)、及び旧東独特許出願第232760A1号明細書(シングルラインテレビカメラ使用)。独国特許第196 28 348C1号明細書では、個々の光導波路のラインを用いて粒子の形状を求めることが提案されているが、ここで、第二の光導波路のラインが、速度を求めるのに使用されている。回折ベースのプロセスでは、粒子形状に及ぼす、粒子回折パターン依存性が利用されている。コヒーレント光を用いて粒子を照射し、適切な受光器を用いて、その回折パターンの光強度分布を測定する。その回折パターンの中での光強度の分布は、粒子の形状に依存する。それらのための解釈法は、独国特許第694 06 683T2号明細書(リングセンサー使用)及び独国特許第102 18 413B4号明細書に記載がある。独国特許出願公開第41 29 105A1号明細書には、散乱光測定を使用した粒子の形状測定法が開示されている。それら引用されたプロセスは、単に、コスト及び煩雑さが異なっているだけなので、当業者ならば、従来技術において引用されたそれらのプロセスから、任意に選択することが可能である。
【0046】
本発明において成分b)として用いられるAl2O3は、少なくとも1種のアミノシランをベースとする、少なくとも1種の表面変性を備えているのが好ましい。「表面変性(surface modification)」という用語は、熱可塑性プラスチックのマトリックスに対する結合性を改良することを目的とした、シランベースの有機カップリング剤を指している。
【0047】
好ましい表面処理剤/表面変性剤は、次の一般式
(RO)3-Si-(CH2)n-X (I)
[式中、
Rは、メチル、エチル、イソプロピル、及びメトキシメチルからなる群より選択される有機基を表し、
nは、0~12の整数(両端を含む)を表し、そして
Xは、アミンを表す]
のアミノシランである。
【0048】
用いられる成分b)の表面処理剤/表面変性剤は、好ましくは、以下の群からの少なくとも1種のアミノシランである:3-アミノプロピルトリエトキシシラン[CAS 919-30-2]、3-アミノプロピルトリメトキシシラン[CAS 13822-56-5]、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン[CAS 1760-24-3]、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン[CAS 5089-72-5]、3-(N-シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン[CAS 3068-78-8]、及びN,N-(ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン[CAS 15180-47-9]。
【0049】
本発明におけるシランベースの表面変性剤及びそれらの製法は、原理的には、米国特許第7,547,743B2号明細書からも、当業者には公知であり、その特許の中に開示されているオルガノポリシロキサンの製造に関する内容は、参照することにより、本出願にすべて包含されたものとする。
【0050】
表面変性のために用いられるアミノシランが、100質量部の酸化アルミニウムを基準にして、0.05~5質量部の範囲の量、特に好ましくは0.1~1質量部の範囲の量で適用されるのが好ましい。
【0051】
アミノシランを用いた酸化アルミニウムの表面処理/表面変性は、酸化アルミニウムの使用直前に実施してもよいし、或いは予め表面処理した酸化アルミニウムを採用してもよい。酸化アルミニウムと接触させると、上述のアミノシランが反応して、シラノールが生成し、相当するアルコール基が除去される。
【0052】
本発明においては、Martoxid(登録商標)MPS-2[CAS No.1344-28-1](Martinswerk GmbH(Bergheim,Germany)製)を成分b)として採用するのが特に好ましい。
【0053】
成分c)
用いられる成分c)は、水酸化マグネシウム[CAS No.1309-42-8]である。
【0054】
水酸化マグネシウム[CAS No.1309-42-8]は、その原産地及び製造方法の結果として、不純物が含まれている可能性がある。典型的な不純物としては、たとえばケイ素-、鉄-、カルシウム-及び/又はアルミニウム-含有化合物が挙げられるが、それらは、水酸化マグネシウム結晶の中に、たとえば酸化物の形態で挟み込まれている可能性がある。水酸化マグネシウムの純度は、水酸化マグネシウム以外の化学種の比率で決まるが、それらは、可能な限り少ないのがよい。成分c)として使用するのに好適な水酸化マグネシウムは、ISO 12677に記載の、焼成した物質についての蛍光X線(XRF)で測定することが可能なケイ素の比率が、15,000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、特に好ましくは500ppm未満である。
【0055】
本発明において用いられる水酸化マグネシウムは、純度、すなわち、Mg(OH)2の比率が、少なくとも96重量%、好ましくは少なくとも98重量%であるのが特に好ましい。
【0056】
ケイ素含量に加えて、及び/又は純度に加えて、本発明において用いられる水酸化マグネシウムが、ISO 12677に記載の、焼成した物質についての蛍光X線(XRF)で測定することが可能な鉄含量(Fe)が、1500ppm未満、好ましくは1000ppm未満、特に好ましくは300ppm未満であれば、特に好ましい。
【0057】
特には、その水酸化マグネシウムが、非鉱物質、すなわち、合成由来である。合成由来の成分b)の、好適に考えられる製造方法は、塩化マグネシウム水溶液の水熱分解法か、又は焼成した消和ドロマイト又は石灰乳を用いた、マグネシウム塩溶液の沈殿法である。
【0058】
成分c)として用いられる水酸化マグネシウムは、サイズ処理がしてあっても、或いはサイズ処理がしてなくてもよい。サイズ剤は、ある成分(この場合では水酸化マグネシウム)に対して、さらなる加工をする前に、スプレー法又は浸漬法によって適用する、含浸液体であって、ある成分の特性又は加工性を改良することを目的としている。成分c)は、ステアレート又はアミノシロキサンをベースとするサイズ剤、特に好ましくはアミノシロキサンを備えているのが好ましい。
【0059】
好適に成分c)として用いられる水酸化マグネシウムは、0.5μm~6μmの範囲の平均粒子サイズd50を有しているが、ここで0.7μm~3.8μmの範囲のd50が好ましく、そして1.0μm~2.6μmの範囲のd50が特に好ましい。d50を求めるのに適した測定法は、特にレーザー回折法であり、たとえばMalvern Mastersizer 2000を用いて測定する。たとえば、水酸化マグネシウムを摩砕することにより、所望の粒子サイズとすることができる。本出願における平均粒子サイズ、それらの測定、及びそれらの重要性に関連しては、Chemie Ingenieur Technik(72),pp.273~276、3/2000(Wiley-VCH Verlags GmbH(Weinheim),2000)を参照されたいが、それによれば、d50値とは、それより下に粒子の量の50%が存在する粒子のサイズである(中央値)。本発明においては、成分b)のd50値は、ISO 14887に従って水の中に分散させた後に、ISO 13320に記載のレーザー回折法(光散乱法)によって測定する。それに代わる分散剤が、Horiba Instruments Inc(Albany,New York,2013)からのホワイトペーパー「Dispersing Powders in Liquid for Particle Size Analysis」の表2に記載されている。
【0060】
本発明において好適な水酸化マグネシウムのタイプとしては、特には、Magnifin(登録商標)H5IV(Martinswerk GmbH(Bergheim,Germany)製)、又はHidromag(登録商標)Q2015 TC(Penoles(Mexico City,Mexico)製)が挙げられるが、Magnifin(登録商標)H5IVが特に好ましい。
【0061】
成分d)
成分d)として用いられる、1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を有する有機でハロゲンフリーのエポキシ化化合物の製造は、当業者には公知である。好ましい有機でハロゲンフリーのエポキシ化化合物は、エピクロロヒドリンと、好ましくは少なくとも2個の遊離のアルコール性若しくはフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物との反応によるか及び/又はフェノール性ヒドロキシル基との反応によって得ることが可能な、ポリグリシジルエーテル又はポリ(ベータ-メチルグリシジル)エーテルである。
【0062】
好ましいポリグリシジルエーテル又はポリ(ベータ-メチルグリシジル)エーテルは、非環状アルコール、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール及び高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン-1,2-ジオール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールから、及びポリエピクロロヒドリンから誘導される。
【0063】
また別の、好ましいポリグリシジルエーテル又はポリ(ベータ-メチルグリシジル)エーテルは、脂環族アルコール、特に1,3-若しくは1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、又は1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エンから誘導されるか、又はそれらには、たとえばN,N-ビス(8,2-ヒドロキシエチル)アニリン又はp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンをベースとする芳香族核が含まれる。
【0064】
好ましい有機のエポキシ化化合物はさらに、単核フェノールをベースとするもの、又は多核フェノールをベースとするものである。好ましい単核フェノールは、レソルシノール又はヒドロキノンである。好ましい多核フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又は4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンであるが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが特に好ましい。
【0065】
好ましい、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合反応生成物は、フェノールノボラックである。本発明において成分d)として極めて特に好適に用いられるエポキシ化化合物は、多核フェノールをベースとするものであって、少なくとも1個、好ましくは2個の末端エポキシ基を含んでいる。これらは、たとえば米国特許出願公開第2002/0128428A1号明細書に記載のプロセスによって製造することが可能であるが、この場合さらに、300~2000グラム/当量の範囲のエポキシ指数(ISO 3001に従って測定可能)を有するバリアントが好ましい。450~1500グラム/当量の範囲のエポキシ指数(ISO 3001に従って測定可能)を有するバリアントが特に好ましく、そして450~750グラム/当量の範囲のエポキシ指数(ISO 3001に従って測定可能)を有するバリアントが極めて特に好ましい。
【0066】
成分d)として好ましいか、又は本発明において代わりに採用可能である、少なくとも2個のエポキシ官能基を有する有機でハロゲンフリーのエポキシ化合物には、エポキシ含有単位だけではなく、
【化1】
さらには次の単位、
【化2】
及び/又は次の単位
【化3】
[式中、R
9、R
10は、相互に独立して、H又はC
1~C
8-アルキルを表し、
R
11は、C
1~C
8-アルキルを表し、
X及びYは、それぞれ、0~20の範囲の整数を表すが、
ただし、X又はYのいずれかが、少なくとも一度は、1以上であり、
Zは、2~20の範囲の整数を表し、そして
R
*は、H又はC
1~C
8-アルキルを表すが、
ここで、X、Y、Zで表示された単位は、繰り返して、且つ任意の所望の順序で現れてよい]
が、任意の所望の組合せ及び頻度で含まれる。
【0067】
したがって、有機でハロゲンフリーのエポキシ化合物は、末端基R*(相互に独立して、H又はC1~C8-アルキルを表す)によって形成される。
【0068】
成分d)として採用可能な、有機でハロゲンフリーのエポキシドが、式(II)
【化4】
[式中、R
9、R
10は、相互に独立して、H又はC
1~C
8-アルキルを表し、
R
11は、C
1~C
8-アルキルを表し、
X及びYは、それぞれ、0~20の範囲の整数を表すが、
ただし、X又はYのいずれかが、少なくとも一度は、1以上であり、
Zは、2~20の範囲の整数を表し、そして
R
*は、H又はC
1~C
8-アルキルを表すが、
ここで、X、Y、Zで表示された単位は、繰り返して、且つ任意の所望の順序で現れてよい]
に合致しているのが好ましい。
【0069】
特に好ましい実施態様においては、用いられる成分d)が、独国特許出願公開第10 316 615A1号明細書に基づいて、メタクリル酸グリシジルと、スチレン並びに任意成分のアクリル酸及び/又はメタクリル酸とを重合させることにより得られるメタクリル酸グリシジル変性のスチレン含有ポリマーをベースとするエポキシ官能性化合物から選択されるが、ここで、アクリル酸に代えるか又はそれに追加して、1種又は複数種のアクリル酸エステルを採用してもよいし、或いは、メタクリル酸に代えるか又はそれに追加して、1種又は複数種のメタクリル酸エステルを採用してもよい。好ましいエステルは、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、及び/又はベンジルをベースとするものである。そのような成分d)は、市場でも入手可能である。それらの内でも特に知られているのは、商品名Joncryl(登録商標)(BASF AG製)、特にはJoncryl(登録商標)ADR4400である。
【0070】
さらに好ましいか又は代わりの実施態様においては、用いられる成分d)が、エチレン、メタクリル酸グリシジル及び/又はアクリル酸グリシジル、並びにアクリル酸及び/又はメタクリル酸を重合させることにより得られる、メタクリル酸グリシジル変性及び/又はアクリル酸グリシジル変性のエチレン-アクリレートコポリマーをベースとするエポキシ官能性化合物から選択されるが、ここで、アクリル酸に代えるか又はそれに追加して、1種又は複数種のアクリル酸エステルを採用してもよいし、或いは、メタクリル酸に代えるか又はそれに追加して、1種又は複数種のメタクリル酸エステルを採用してもよい。好ましいエステルは、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、及び/又はベンジルをベースとするものである。これらは、市場でも入手可能である。これらは、特に、エチレン、アクリル酸メチル、及びメタクリル酸グリシジルのランダムターポリマーであって、知られているものとしては、商品名Lotader(登録商標)(Arkema(Columbes,France)製)、特にLotader(登録商標)AX8700及びLotader AX8900が挙げられる。エチレンを、他のオレフィン、特には、好ましくは2~10個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンと置き換えることも可能である。好適なオレフィンは、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテンを含む群より選択される。特に好ましいオレフィンはエテン及びプロペンであり、極めて特に好ましいのはエテンである。
【0071】
さらなる好ましい実施態様又はそれらに代わる実施態様においては、グリセロールのエポキシ化脂肪酸エステル、特には、エポキシ化植物油が、成分d)として用いられる。これらは、不飽和脂肪酸のトリグリセリドの反応性オレフィン基をエポキシ化することによって得られる。エポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステルは、グリセロールの不飽和脂肪酸エステル、好ましくは植物油と、有機ペルオキシカルボン酸とから出発して、製造することもできる(Prilezhaev反応)。エポキシ化植物油を製造するためのプロセスは、たとえば、Smith,March,「March’s Advanced Organic Chemistry,5th edition」,Wiley-Interscience,New York,2001に記載されている。エポキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステルが、植物油であるのが好ましい。本発明における成分d)として使用するのに特に好適なグリセロールのエポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ化ダイズ油[CAS No.8013-07-8]である。
【0072】
本発明において成分d)として使用するのに特に好適な、2個の末端エポキシ官能基を有する有機でハロゲンフリーの、芳香族エポキシ化合物は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとのオリゴマー反応生成物である。ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応からの、式(III)
【化5】
[式中、aは、0~12の範囲の整数を表し、好ましくは式中、aが、1~8の範囲の整数を表し、特に好ましくは式中、aが、1~6の範囲の整数を表し、極めて特に好ましくは式中、aが、2~4の範囲、そして極めて特に好ましくは2~3の範囲の整数を表すが、ここで、aは、繰り返し単位の平均の数を表している]
の有機でハロゲンフリーのオリゴマー性反応生成物を、成分d)として採用するのが特に好ましい。
【0073】
それらの化学量論に応じて、そのような式(III)の反応生成物は、特に好ましい2~4の範囲のaでは、900~1500g/molの平均に丸めた(average rounded)分子量(EN ISO 10927に従って測定可能)を示す。
【0074】
本発明において成分d)として採用可能なエポキシ化合物としては、好ましくは0℃~150℃の範囲、特に好ましくは50℃~120℃の範囲、極めて特に好ましくは60℃~110℃の範囲、特には75℃~95℃の範囲のMettler軟化点(DIN 51920に従って測定可能)を有する。Mettler軟化点とは、直径6.35mmの流出開口部を有する円筒状のニップルからサンプルが流出して、19mm下にある光ゲートを遮ったときの温度である。この終点に達するまで、空気中一定条件でサンプルを加熱する。
【0075】
本発明において成分d)として用いられる、引用されたエポキシ化合物の中で、極めて特に好ましいのは、一般式(III)[CAS No.25068-38-6]のビスフェノールAとエピクロロヒドリンとのオリゴマー反応生成物であり、このものは、450~600グラム/当量の範囲のエポキシ指数(ISO 3001に従って測定可能)、及び75℃~95℃の範囲の軟化点(DIN 51920に従って測定可能)を有している。それらは、たとえば、Huntsman Advanced Materials(Everberg,Belgium)から入手可能な、Araldite(登録商標)GT7071、又はAraldite(登録商標)GT7072である。
【0076】
成分e)
一つの好ましい実施態様においては、本発明による組成物、それらから製造可能な成形材料、さらにはそれらから製造可能な製造物品、特に充電部材には、成分a)、b)、c)及びd)に加えてさらに、少なくとも1種の成分e)、すなわちa)、b)、c)及びd)とは異なる添加剤が含まれる。成分e)として用いられるその少なくとも1種の添加剤は、好ましくは、100質量部の成分a)を基準にして、0.01~30質量部の範囲の量で用いられる。
【0077】
好適な成分e)の添加剤としては、以下のものが挙げられる:潤滑剤及び離型剤、UV安定剤、着色剤、鎖伸長添加剤、可塑剤、流動促進剤、熱安定剤、抗酸化剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、エラストマー変性剤、帯電防止剤、乳化剤、成核剤、加工助剤、垂れ防止剤、成分c)とは異なる難燃剤、及び成分b)とは異なる補強剤。
【0078】
成分e)の添加剤は、単独で使用してもよいし、或いは、混合物/マスターバッチの形で使用してもよい。
【0079】
ハロゲンフリーの添加剤を採用するのが好ましい。
【0080】
潤滑剤及び離型剤は、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の塩、長鎖脂肪酸のエステル誘導体又はアミド誘導体、及びモンタンワックスの群の少なくとも1種から選択される。
【0081】
好ましい長鎖脂肪酸は、ステアリン酸又はベヘン酸である。好ましい長鎖脂肪酸の塩は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛である。好ましい長鎖脂肪酸のエステル誘導体は、ペンタエリスリトールをベースとするもの、より特にはペンタエリスリトールのC16~C18脂肪酸エステル[CAS No.68604-44-4]又は[CAS No.85116-93-4]である。好ましい長鎖脂肪酸のアミド誘導体は、エチレンジアミンをベースとするもの、特にエチレン-ビス-ステアリルアミド[CAS No.110-30-5]である。
【0082】
本発明の文脈においては、モンタンワックスは、28~32個の炭素原子の鎖長を有する、直鎖の飽和カルボン酸の混合物である。本発明においては、飽和若しくは不飽和の、8~40個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸と、2~40個の炭素原子を有する脂肪族飽和アルコールとのエステル又はアミド、並びに飽和若しくは不飽和の、8~40個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の金属塩の群からの、潤滑剤及び/又は離型剤を採用するのが特に好ましいが、ここで、エチレン-ビス-ステアリルアミド及び/又はエチレングリコールジモンタネート、特にLicowax(登録商標)E[CAS No.74388-22-0](Clariant(Muttenz,Basel)製)が特に好ましく、そしてエチレン-ビス-ステアリルアミド[CAS No.110-30-5]、たとえばLoxiol(登録商標)EBS(Emery Oleochemicals GmbH(Duesseldorf,Germany)製)として入手可能なものが、極めて特に好ましい。
【0083】
UV安定剤として好適に用いられるのは、以下のものである:置換されたレソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、トリアジン誘導体、又はベンゾフェノン。
【0084】
着色剤として好適に用いられるのは、以下のものである:有機顔料、好ましくはフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、並びに染料、好ましくはニグロシン又はアントラキノン、さらには無機顔料、特に二酸化チタン(充填剤として使用されていない場合)、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、硫化亜鉛、又はカーボンブラック。
【0085】
本発明において、顔料として使用するのに好ましい好適な二酸化チタンは、一つの実施態様においては、その親酸化物(parent oxide)が、硫酸法(SP)又は塩素法(CP)で製造することが可能で、アナターゼ及び/又はルチル構造、好ましくはルチル構造を有するような二酸化チタン顔料である。その親酸化物は、安定化が必須という訳ではないが、特定の安定化が好ましい:CP法の親酸化物では、0.3~3.0重量%(Al2O3として計算)のAlドーピング及び四塩化チタンから二酸化チタンへの酸化の際の気相における少なくとも2%の過剰酸素によるし、SP法親酸化物では、たとえばAl、Sb、Nb、又はZnを用いたドーピングによる。Alを用いた「軽度の」安定化、又はより高いAlドーピング量では、アンチモンを用いて補償するのが特に好ましい。ペイント及びコーティング、プラスチック物質などにおいて二酸化チタンを白色顔料として使用する場合には、UV吸収が原因の望ましくない光触媒反応によって、その顔料処理された物質の分解が引き起こされるということは公知である。このことには、二酸化チタン顔料が近紫外領域の光を吸収し、それにより電子・正孔対が形成され、それが二酸化チタンの表面上に高度に反応性の高いフリーラジカルを作り出すという現象が含まれている。形成されたフリーラジカルが、有機媒体の中のバインダーの分解をもたらす。本発明においては、二酸化チタンを無機的に後処理することによって、特に好ましくはSi及び/又はAl及び/又はZrの酸化物を用いるか、及び/又はSn化合物を使用することによって、二酸化チタンの光活性を低下させるのが好ましい。
【0086】
顔料の二酸化チタンの表面に、化合物SiO2及び/又はAl2O3及び/又は酸化ジルコニウムの非晶質の沈降酸化物水和物の被覆を有しているのが好ましい。Al2O3のシェルによって、ポリマーマトリックスの中への顔料の分散が容易となり;SiO2シェルによって、顔料表面における電荷の交換がより困難となり、それによってポリマーの分解が防止される。
【0087】
本発明においては、その二酸化チタンが、特にシロキサン又はポリアルコールを用いた、親水性及び/又は疎水性の有機コーティングを備えているのが好ましい。
【0088】
本発明において成分e)の着色剤として使用するのに好適な二酸化チタン[CAS No.13463-67-7]は、90~2000nmの範囲、特に好ましくは200~800nmの範囲の平均粒子サイズd50を有している。平均粒子サイズd50は、粒子の50重量%が、このd50値よりも小さい球相当径を有する、粒子サイズ分布から求めた数値である。関連する標準は、ISO 13317-3である。
【0089】
二酸化チタンについての粒子サイズ分布及び平均粒子サイズの報告値は、それぞれの場合において、熱可塑性プラスチック成形材料の中に組み入れる前の、いわゆる表面ベースの粒子サイズに基づいている。本発明においては、粒子サイズの測定は、レーザー回折法によって実施されるが、これについては以下の文献を参照されたい:C.M.Keck,「Moderne Pharmazeutische Technologie 2009(Freie Universitaet Berlin)」,Chapter 3.1.、又はQUANTACHROME PARTIKELWELT NO 6,June 2007,p.1~16。
【0090】
市場で入手可能な二酸化チタンとしては、たとえば、Kronos(Dallas,USA)からの、Kronos(登録商標)2230、Kronos(登録商標)2233、Kronos(登録商標)2225、及びKronos(登録商標)vlp7000が挙げられる。
【0091】
構成材料e)として使用するのに好適な可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素オイル、又はN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0092】
成分e)として使用するのに好適な流動促進剤は、少なくとも1種のα-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを含むコポリマーである。少なくとも1種のα-オレフィンと、脂肪族アルコールのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの少なくとも1種とのコポリマーが特に好ましい。α-オレフィンと、脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとのコポリマーが、極めて特に好ましい。そのα-オレフィンがエテン及び/又はプロペンから形成され、そのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルが、そのアルコール成分として、6~20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基を含んでいるコポリマーが、特に好ましい。エテンとアクリル酸2-エチルヘキシルとのコポリマーが、特別に極めて特に好ましい。本発明における流動助剤に適したコポリマーは、その組成だけではなく、その低分子量性の点でも注目に値する。したがって、特に好ましいのは、190℃及び2.16kgの負荷の下で測定して、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、特に好ましくは少なくとも300g/10分のMFIを有するコポリマーである。MFI、すなわちメルトフローインデックスが、熱可塑性プラスチックの溶融物の流動特性を特徴付けるが、これは、標準のISO 1133又はASTM D 1238に規定されている。本発明の文脈においては、MFI、及びMFIに関連するすべての数値は、ISO 1133に記載の標準法により、190℃、試験荷重2.16kgで測定するか、求めたものである。
【0093】
成分e)として使用するのに好ましいエラストマー変性剤としては、なかんずく、1種又は複数種の、以下のもののグラフトポリマーが挙げられる:
e.1:5重量%~95重量%、好ましくは30重量%~90重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、
e.2:95%~5重量%、好ましくは70%~10重量%の、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する、1種又は複数種のグラフト基材。この場合における重量パーセントは、成分e)として用いられるエラストマー変性剤の100重量%を基準としている。
【0094】
グラフト基剤のe.2は、一般的には0.05~10μmの範囲、好ましくは0.1~5μmの範囲、特に好ましくは0.2~1μmの範囲の平均粒子サイズ(d50)を有している。
【0095】
モノマーe.1は、好ましくは以下のものの混合物である:
e.1.1:50重量%~99重量%の、ビニル芳香族化合物及び/又は環置換されたビニル芳香族化合物、特には、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、及び/又はメタクリル酸(C1~C8)-アルキル、特にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、並びに
e.1.2:1%~50重量%の、ビニルシアニド、特には不飽和ニトリル、たとえばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル、及び/又は(メタ)アクリル酸(C1~C8)-アルキル、特にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体、特には無水物及びイミド、特には無水マレイン酸又はN-フェニルマレイミド。この場合における重量パーセントは、成分e)として採用可能なエラストマー変性剤の100重量%を基準としている。
【0096】
好適なモノマーe.1.1は、スチレン、α-メチルスチレン及びメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択され、好適なモノマーe.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択される。
【0097】
特に好適なモノマーは、e.1.1ではスチレン、e.1.2ではアクリロニトリルである。
【0098】
エラストマー変性剤において用いられる、グラフトポリマーに対して好適なグラフト基剤e.2としては、たとえば、以下のものが挙げられる:ジエンゴム、EPDMゴム、すなわち、エチレン/プロピレン、場合によってはジエンをベースとするもの、さらにはアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレン、及びエチレン/酢酸ビニルゴム。EPDMは、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを表している。
【0099】
好適なグラフト基剤のe.2は、ジエンゴム、特にブタジエン、イソプレンなどをベースとするもの、又はジエンゴム若しくはジエンゴムのコポリマー若しくはそれらの混合物と、さらなる共重合性モノマー、特にe.1.1及びe.1.2との混合物であるが、ただし、成分e.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-10℃未満である。
【0100】
特に好適なグラフト基材e.2は、ABSポリマー(エマルション法、バルク法、及び懸濁法のABS)であるが、ここでABSは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンを表しており、たとえば以下の文献に記載されている:独国特許出願公開第A2 035 390号明細書、又は独国特許出願公開第A2 248 242号明細書、又は「Ullmann,Enzyklopaedie der Technischen Chemie」,vol.19(1980),pp.277~290。
【0101】
それらのエラストマー変性剤/グラフトポリマーは、フリーラジカル重合、好ましくはエマルション重合、懸濁重合、溶液重合、又はバルク重合、特には、エマルション重合又はバルク重合で製造される。
【0102】
特に好適なグラフトゴムとしてはさらに、ABSポリマーが挙げられるが、このものは、米国特許第A4 937 285号明細書に従って、有機過酸化物とアスコルビン酸とからなる重合開始剤系を用いた酸化還元開始法によって製造される。
【0103】
周知のように、グラフト化反応においては、グラフトモノマーが、グラフト基材の上に全部がグラフトされなければならないという訳ではないので、グラフトポリマーは、本発明においては、グラフト基材の存在下にグラフトモノマーを(共)重合させ、さらに仕上げ作業によって得られた反応生成物を意味していると理解されたい。
【0104】
同様に好適なアクリレートゴムは、好ましくはアクリル酸アルキルのポリマーであるグラフト基剤e.2をベースとしていて、それは、場合によっては、e.2を基準にして最高40重量%までの、その他の重合性エチレン性不飽和モノマーを組み合わせたものである。好適な重合性アクリル酸エステルとしては、以下のものが挙げられる:C1~C8-アルキルエステル、たとえばメチル、エチル、ブチル、n-オクチル及び2-エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロC1~C8-アルキルエステル、好ましくはアクリル酸クロロエチル、グリシジルエステル、並びにそれらのモノマーの混合物。この文脈において特に好ましいのは、コアとしてのアクリル酸ブチルとシェルとしてのメタクリル酸メチルを含むグラフトポリマー、特には、Paraloid(登録商標)EXL2300(Dow Corning Corporation(Midland Michigan,USA)製)である。
【0105】
e.2に従うさらなる好適なグラフト基材は、以下の特許に記載されているような、グラフト-活性なサイトを有するシリコーンゴムである:独国特許出願公開第A3 704 657号明細書、独国特許出願公開第A3 704 655号明細書、独国特許出願公開第A3 631 540号明細書、及び独国特許出願公開第A3 631 539号明細書。
【0106】
シリコーン画分を含む好ましいポリマーは、シェルとしてメタクリル酸メチル又はスチレン-アクリロニトリルを、そしてコアとしてシリコーン/アクリル酸エステルグラフト物を含むものである。シェルとしてスチレン-アクリロニトリルを有する採用可能なグラフトポリマーとしては、たとえば、Metablen(登録商標)SRK200が挙げられる。シェルとしてメタクリル酸メチルを有する採用可能なグラフトポリマーとしては、たとえば、Metablen(登録商標)S2001、Metablen(登録商標)S2030及び/又はMetablen(登録商標)SX-005が挙げられる。Metablen(登録商標)S2001を使用するのが特に好ましい。Metablen(登録商標)の商品名を有する製品は、三菱レイヨン(株)(日本国、東京)から入手することが可能である。
【0107】
架橋は、2個以上の重合性二重結合を有する共重合性モノマーによって達成することが可能である。架橋性モノマーの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:3~8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3~12個の炭素原子を有する不飽和1価アルコール又は2~4個のOH基及び2~20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル;ポリ不飽和ヘテロサイクリック化合物、好ましくはトリビニルシアヌル酸塩及びトリアリルシアヌル酸塩;多官能ビニル化合物、好ましくはジビニルベンゼン及びトリビニルベンゼン;さらにはリン酸トリアリル及びフタル酸ジアリル。
【0108】
好適な架橋性モノマーは、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、及び少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロサイクリック化合物である。
【0109】
特に好適な架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌル酸塩、トリアリルイソシアヌル酸塩、トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋されるモノマーの量は、100重量%のグラフト基材e.2を基準にして、好ましくは0.02%~5重量%、特には0.05%~2重量%である。
【0110】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状の架橋性モノマーの場合には、100重量%のグラフト基材e.2を基準にして、1重量%未満の量に制限するのが有利である。
【0111】
アクリルエステルに加えて、場合によってはグラフト基剤e.2を製造するために使用することが可能な、好ましい「その他の」重合性で、エチレン性の不飽和モノマーとしては以下のものが挙げられる:アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC1~C6-アルキルエーテル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、ブタジエン。グラフト基剤e.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有するエマルションポリマーである。
【0112】
グラフトポリマーをベースとするエラストマー変性剤と共に、同様に使用することが可能なその他の物質は、グラフトポリマーをベースとせず、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー変性剤である。好ましくは、これらには、ブロックコポリマー構造を有するエラストマー及びそれに加えて、熱可塑性的に溶融することが可能なエラストマー、特に、EPM、EPDM及び/又はSEBSゴム(EPM=エチレン-プロピレン・コポリマー、EPDM=エチレン-プロピレン-ジエン・ゴム、SEBS=スチレン-エテン-ブテン-スチレン・コポリマー)が含まれる。
【0113】
成分e)として用いられる、成分c)とは異なる好適な難燃剤は、ハロゲンフリーである。
【0114】
成分e)として使用するのに好適なリン含有難燃剤としては、以下のものが挙げられる:ホスフィン酸塩、たとえばアルキルホスフィン酸金属塩、特にビスジエチルホスフィン酸亜鉛及び特に好ましくはトリスジエチルホスフィン酸アルミニウムの群から、並びにホスフィン酸無機金属塩、特にホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛の群からのリン含有化合物、リン酸及びホスホン酸のモノエステル及びオリゴマー性エステル、特には、リン酸トリフェニル(TPP)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)(オリゴマーを含む)、ポリホスホネート、特には、ビスフェノールA-ジフェニルメチルホスホネートコポリマー(たとえば、Nofia(商標)HM1100[CAS No.68664-06-2](FRX Polymers(Chelmsford,USA)製)、さらには、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド(DOPO誘導体)の誘導体、ホスホネートアミン、ホスホン酸金属塩、特にはホスホン酸アルミニウム及びホスホン酸亜鉛、ホスフィンオキシド、並びにホスファゼン。特に好ましいホスファゼンは、フェノキシホスファゼンオリゴマーである。ホスファゼン及びそれらの製造法は、たとえば欧州特許出願第A728 811号明細書、独国特許出願第A1961668号明細書、及び国際公開第A97/40092号パンフレットに記載されている。本発明において特に好適に用いられるのは、環状フェノキシホスファゼン、たとえば2,2,4,4,6,6-ヘキサヒドロ-2,2,4,4,6,6-ヘキサフェノキシトリアザトリホスホリン[CAS No.1184-10-7]及び/又は、たとえば(株)伏見製薬所(日本国、香川県)から、Rabitle(登録商標)FP110[CAS No.1203646-63-2]の名称で得ることが可能なものである。
【0115】
成分e)の難燃剤として同様に採用可能ものは、(個別、又は混合物の形の)窒素含有難燃剤である。
【0116】
好ましいのは、以下のものである:メラミン及び/又はグアニジンの塩、特には、グアニジン炭酸塩、一級グアニジンシアヌル酸塩、一級グアニジンリン酸塩、二級グアニジンリン酸塩、一級グアニジン硫酸塩、二級グアニジン硫酸塩、グアニジンペンタエリスリチルホウ酸塩、グアニジンネオペンチルグリコールホウ酸塩、メラミンシアヌル酸塩、及びメラミンポリリン酸塩、並びにさらには、尿素リン酸塩及び尿素シアヌル酸塩。縮合メラミン誘導体たとえば、メレム、メラム及びメロン、並びにそれらの縮合リン酸との反応生成物もまた、使用することができる。同様に好適なものとして、以下のものが挙げられる:トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸塩又はそれとカルボン酸との反応生成物、ベンゾグアナミン、並びにそれらのアダクト及び塩、並びにさらには、窒素上で置換されているそれらの反応生成物、さらにはそれらの塩及びアダクト。好適なさらなる窒素含有成分としては、アラントイン化合物、及びそれとリン酸、ホウ酸又はピロリン酸との塩、さらには、グリコルリル(glycoluril)又はそれらの塩が挙げられる。さらなる好適な窒素含有難燃剤は、トリクロロトリアジン、ピペラジン及びモルホリンの反応生成物[CAS No.1078142-02-5]、具体的には、MCA PPM Triazin HF(MCA Technologies GmbH(Biel-Benken,Switzerland)製)である。
【0117】
本明細書では特に取り上げなかったその他の難燃剤又は難燃相乗剤を、成分e)としてさらに採用してもよい。それらには、純粋な無機リン化合物、特に赤リン又はリン酸ホウ素水和物もさらに含まれる。成分c)とは異なる鉱物質の難燃性添加剤、又は脂肪族及び芳香族スルホン酸の塩、特に1-ペルフルオロブタンスルホン酸の金属塩を採用することもまた可能である。同様に好適なのは、以下の群からの難燃相乗剤である:その金属がアンチモン、亜鉛、モリブデン、カルシウム、チタン、マグネシウム、又はホウ素である、酸素含有、窒素含有、又は硫黄含有金属化合物、好ましくは、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸カルシウム、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化モリブデン、並びに、着色剤としてすでに使用されているものでなければ、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、窒化亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、又はそれらの混合物。
【0118】
成分e)として好適に採用可能な、さらなる適切な難燃性添加剤としては、以下のものが挙げられる:炭化層形成物(char former)、特に好ましくはポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニル)エーテル、特にはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル[CAS No.25134-01-4]、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、又はポリエーテルケトン、並びにさらには垂れ防止剤、特にはテトラフルオロエチレンポリマー。テトラフルオロエチレンポリマーは、純品の形態で採用してもよいし、或いは他の樹脂、好ましくはスチレン-アクリロニトリル(SAN)、又はアクリレート類、好ましくはメタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルと組み合わせて採用してもよい。テトラフルオロエチレン-スチレン-アクリロニトリル樹脂の特に好適な例は、たとえばCycolac(登録商標)INP 449[CAS No.1427364-85-9](Sabic Corp.(Riyadh,Saudi Arabia)製)であり、テトラフルオロエチレン-アクリレート樹脂の特に好適な例は、たとえば、Metablen A3800[CAS No.639808-21-2](三菱レイヨン(株)(日本国、東京)製)である。テトラフルオロエチレンポリマーを含む垂れ防止剤は、本発明においては、それぞれの場合において、100質量部の成分a)を基準にして、好ましくは0.01~5質量部の範囲、特に好ましくは0.05~2質量部の範囲の量で、成分e)として用いられる。
【0119】
本発明の特定な実施態様においては、用途で必要とされるのなら、ハロゲン化難燃剤を成分e)として採用することもまた可能である。それらには、相乗剤の存在下又は非存在下で、市販の有機ハロゲン化合物が含まれる。ハロゲン化化合物、特に臭素化及び塩素化化合物としては、好ましくは、以下のものが挙げられる:エチレン-1,2-ビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化ポリスチレン、及び臭素化ポリフェニレンエーテル。
【0120】
成分e)として追加的に採用可能な難燃剤は、ポリアルキレンテレフタレート又はポリシクロアルキレンテレフタレートに、純品の形態、又はそうでなければ、マスターバッチ若しくは濃縮物(compactate)の形で添加するのがよい。
【0121】
成分e)として好適に採用可能な熱安定剤は、以下の群から選択される:硫黄含有安定剤、特にスルフィド、ジアルキルチオカルバメート、又はチオジプロピオン酸、さらには、鉄塩及び銅塩の群から選択されるもの、後者の場合においては特に、好ましくはヨウ化カリウム及び/又は次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2と組み合わせて使用されるヨウ化銅(I)、さらには立体障害アミン、特にテトラメチルピペリジン誘導体、芳香族二級アミン、特にジフェニルアミン、ヒドロキノン、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、及びベンゾフェノン、並びにさらに立体障害フェノール、及び脂肪族若しくは芳香族で置換された亜リン酸塩、さらには、これらの群の各種置換された典型物。
【0122】
立体障害フェノールの中でも採用するのに好ましいのは、少なくとも1個の3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル構成単位及び/又は少なくとも1個の3,5-ジ(tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)構成単位を有するものであって、特に好ましいのは以下のものである:1,6-ヘキサンジオール ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][CAS No.35074-77-2](Irganox(登録商標)259(BASF SE(Ludwigshafen,Germany)製)、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][CAS No.6683-19-8](Irganox(登録商標)1010、BASF SE製)、及び3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン[CAS No.90498-90-1](ADK Stab(登録商標)AO 80)。ADK Stab(登録商標)AO 80は、Adeka-Palmerole SAS(Mulhouse,France)から市販されている。N,N’-ヘキサメチレンビス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド[CAS No.23128-74-7](BASF SE(Ludwigshafen,Germany)からIrganox(登録商標)1098の名称で入手可能)を熱安定剤として使用することは、本発明においては、特に極めて特に好ましい。
【0123】
脂肪族若しくは芳香族で置換された亜リン酸塩の中で、採用するのに好ましいのは、二亜リン酸ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール[CAS No.154862-43-8](このものは、たとえばDover Chemical Corp.(Dover,USA)からDoverphos(登録商標)S9228の商品名で入手可能)、及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイル ビスホスホナイト[CAS No.38613-77-3](このものは、Clariant International Ltd.(Muttenz,Switzerland)からHostanox(登録商標)P-EPQとして、得ることができる)である。
【0124】
本発明のさらなる実施態様においては、本発明による組成物に、成分a)、b)、c)、及びd)に加えて、成分e)として、少なくとも1種の充填剤又は補強剤、好ましくは繊維、特にガラス繊維の形態にある充填剤又は補強剤を含む。「http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund」によれば、0.1~1mmの範囲の長さを有するチョップトファイバー(短繊維としても知られている)と、1~50mmの長さを有する長繊維と、L>50mmの長さを有する連続繊維とは、区別される。短繊維は、射出成形で使用され、エクストルーダーで直接加工することができる。長繊維もやはり、エクストルーダーで加工することができる。前記繊維は、繊維スプレー(fibre spraying)法で広く使用されている。長繊維は、熱硬化性樹脂に充填剤として添加されることが多い。連続繊維は、繊維強化プラスチックにおいて、ロービング又は織物の形態で使用される。連続繊維を含む製品は、最高の剛性及び強度値を与える。同様に利用することが可能なのが、摩砕したガラス繊維であって、摩砕した後のそれらの長さは、典型的には、70~200μmの範囲である。
【0125】
加工の前では、特にコンパウンダーにおける加工の前では、本発明において成分e)として使用するのに好適なガラス長繊維は、1~50mmの範囲、特に好ましくは1~10mmの範囲、極めて特に好ましくは2~7mmの範囲の開始時長さを有している。「開始時長さ」とは、本発明による組成物を得るための、特には本発明による成形材料を得るための混合手順及び/又は加工手順において加工される前の、原料物質として得られそして採用された、ガラス繊維の平均長さを指している。成分e)として好適に使用される繊維、好ましくはガラス繊維は、成形材料を得るため、又は成形材料における製造物品を得るために、加工した、特にコンパウンディングした結果として、又は完成した製造物品の中では、もともと採用された繊維又はガラス繊維(この場合、仕込み成分)よりは小さいd97及び/又はd50を有している。したがって、加工後の繊維の長さ/ガラス繊維の長さの算術平均は、多くの場合、わずか150μm~300μmの範囲である。
【0126】
本発明の文脈においては、繊維の長さ及び繊維の長さ分布並びにガラス繊維の長さ及びガラス繊維の長さ分布は、加工した繊維/ガラス繊維の場合においては、ISO 22314に従って求めるが、その方法では、サンプルを先ず、625℃で灰化させる。次いで、その灰分を、適切な結晶皿の中の、脱イオン水を用いて被覆した顕微鏡スライドグラスの上に置き、その灰分を、超音波浴を用い、機械的な作用は加えずに分散させる。次の工程では、オーブン中130℃での乾燥が含まれ、それに続けて、光学顕微鏡画像を用いてガラス繊維の長さを測定する。この目的のためには、3枚の画像から、少なくとも100本のガラス繊維を測定するので、合計して300本のガラス繊維を用いて長さを確定する。ガラス繊維の長さは、次式に従って算術平均l
nとして計算しすることが可能であり、
【数2】
[式中、l
i=i番目の繊維の長さ、n=測定した繊維の数]、有利にはヒストグラムとして示すことができるし、或いは、測定したガラス繊維の長さlでの正規分布を仮定して、次式で表されるガウス関数を使用して求めてもよい。
【数3】
【0127】
この式においては、lc及びσは正規分布に特有のパラメーターであって、lcは平均値であり、σは標準偏差である(参照:M.Schossig,「Shaedigungsmechanismen in faserverstaerkten Kunststoffen」,1(2011,Vieweg und Teubner Verlag),p.35,ISBN 978-3-8348-1483-8)。ポリマーマトリックスの中に組み入れられなかったガラス繊維は、上述の方法に従ってそれらの長さに関する分析を行うが、ただし灰化処理及び灰分からの分離は行わない。
【0128】
本発明における成分e)の充填剤として好適に採用可能なガラス繊維[CAS No.65997-17-3]は、好ましくは7~18μmの範囲、特に好ましくは9~15μmの範囲の繊維直径を有するが、その直径は、当業者が入手可能な少なくとも1種の機器、具体的には、下記文献と同様のコンピューターX線微少断層撮影法により求めることができる:「Quantitative Messung von Faserlaengen und -verteilung in faserverstaerkten Kunststoffteilen mittels μ-Roentgen-Computertomographie」,J.KASTNER,et al.,DGZfP-Jahrestagung 2007,Vortrag 47。成分e)として好適に採用可能なガラス繊維は、チョップトガラス繊維又は摩砕ガラス繊維の形態で添加するのが好ましい。
【0129】
一つの実施態様においては、成分e)として採用可能な、充填剤及び/又は補強剤、特にガラス繊維は、適切なサイジング系及び接着促進剤/接着促進剤系、特に好ましくはシランをベースとするものを備えているのが好ましい。
【0130】
したがって、本発明において特に好ましいのは、成分a)、b)、c)、及びd)に加えて、成分e)ガラス繊維を含む、組成物、成形材料、及び製造物品、特に充電部材である。
【0131】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、本発明における組成物、成形材料、製造物品、特に充電部材には、成分a)、b)、c)、及びd)に加えての、さらなる成分を一切含まない。
【0132】
好ましい実施態様
本発明は、好ましくは、ポリアミド6の100質量部あたり、以下のものを含む、組成物又は成形材料に関する:
20~300質量部、好ましくは35~250質量部、特に好ましくは50~180質量部、極めて特に好ましくは70~120質量部の、酸化アルミニウム、
20~350質量部、好ましくは50~300質量部、特に好ましくは85~250質量部、極めて特に好ましくは120~210質量部の、水酸化マグネシウム、及び
0.1~25質量部、好ましくは1~16質量部、特に好ましくは2~10質量部の、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー。
【0133】
製造物品
本発明はさらに、本発明による組成物/成形材料をベースとする、電気産業又は電子産業の製造物品も提供する。電気産業の好適な製造物品は、充電部材、特に好ましくは電池を充電するための電池充電部材、特に好ましくは電気自動車のための電池を充電するための電池充電部材である。
【0134】
本発明における電気自動車のための電池を充電するため、そして本発明による組成物/成形材料をベースとする好ましい電池充電部材は、独国特許第10 2012 002 882B4号明細書の
図1で、参照番号10及び14で示されているような、充電ケーブルプラグ又は充電インレットである。独国特許第10 2012 002 882B4号明細書の内容はすべて、本出願に組み入れられたものとする。
【0135】
本発明による組成物/成形材料をベースとする、本発明において好ましい充電インレットには、少なくともリアハウジングウォール、AC/DCケーブル、ピンホルダー、ハウジングフロント、及びコネクションマスクが含まれる。ピンホルダーが、本発明による組成物/成形材料をベースとしているのが好ましい。本発明によるピンホルダーが、本発明による組成物/成形材料をベースとする切片で構成されていて、それにより、導電性接点(ピン)が備えられ、その結果、ハウジングフロントを介してピンをコネクションマスクに簡単に取付け、固定させることが可能となっているのが特に好ましい。独国特許第10 2012 002 882B4号明細書においては、充電インレットは、車両ワイヤリングハーネスに固定されている。その車両ワイヤリングハーネスには、複数の個別のコアが含まれている。それぞれのコアの末端が、しっかりと固定されている。充電インレットにはいくつかの開口部が形成されていて、それらの結線部に合わせられている。それぞれの結線部には、近位端及び遠位端が存在する。それぞれの結線部の近位端は、コアに固定され、充電インレットの基部に形成された開口部の一つにより収納されているが、この場合、それら複数の結線部が、ピンホルダーを介して正確に位置決めされ、充電インレットの集成体に理想的なものとなっている。それぞれの結線部の遠位端は、充電インレットの底部から外部へと延びていて、充電ケーブルプラグの嵌め合いコネクターと接続されている。
【0136】
したがって、本発明はさらに、好ましくは、ポリアミド6の100質量部あたり以下のものを含む組成物/成形材料をベースとする、電気産業又は電子産業の製造物品、好ましくは充電部材、特に好ましくは電池を充電するための電池充電部材、特に好ましくは電気自動車のための電池を充電するための電池充電部材を提供する:
20~300質量部、好ましくは35~250質量部、特に好ましくは50~180質量部、極めて特に好ましくは70~120質量部の、酸化アルミニウム、
20~350質量部、好ましくは50~300質量部、特に好ましくは85~250質量部、極めて特に好ましくは120~210質量部の、水酸化マグネシウム、及び
0.1~25質量部、好ましくは1~16質量部、特に好ましくは2~10質量部の、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー。
【0137】
特に好ましいのは、ポリアミド6の100質量部あたり以下のものを含む組成物/成形材料をベースとする、充電インレット、又はリアハウジングウォール、ピンホルダー、ハウジングフロント、及びコネクションマスクの群からの充電インレットの部材である:
20~300質量部、好ましくは35~250質量部、特に好ましくは50~180質量部、極めて特に好ましくは70~120質量部の、酸化アルミニウム、
20~350質量部、好ましくは50~300質量部、特に好ましくは85~250質量部、極めて特に好ましくは120~210質量部の、水酸化マグネシウム、及び
0.1~25質量部、好ましくは1~16質量部、特に好ましくは2~10質量部の、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー。
【0138】
プロセス
本発明はさらに、本発明による組成物を製造するためのプロセスも提供するが、それにより、成分b)、c)及びd)、並びに場合によっては少なくとも1種の成分e)を、ポリアミドの中に組み入れる。それには、好ましくはエクストルーダー又はニーダー、特に好ましくはエクストルーダーを採用する。これらは、市販されている撹拌及び混合のための装置である。
【0139】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、成分b)、c)及びd)、並びに場合によっては少なくとも1種の成分e)の、ポリアミドの中への組み入れを、230℃~330℃の範囲の温度で実施する。
【0140】
本発明はさらに、少なくとも1種の混合装置、好ましくはコンパウンダーの中で、成分a)、b)、c)及びd)、場合によっては少なくとも1種の成分e)を含む組成物を加工して、成形材料を得、そしてそれらを、ポリアミドベースの充電部材を製造するためのさらなる加工、好ましくは射出成形プロセスにかけることによる、電気部材又は電子部材、好ましくは充電部材を製造するためのプロセスにも関する。
【0141】
射出成形による、製造物品を製造するための本発明によるプロセスは、230℃~330℃、好ましくは270℃~300℃の範囲の溶融温度、場合によってはさらに、2500bar以下の圧力、好ましくは2000bar以下の圧力、特に好ましくは1500bar以下の圧力、極めて特に好ましくは750bar以下の圧力で実施される。
【0142】
射出成形のプロセスには、好ましくはペレットの形態にある原料物質を、加熱した円筒状のキャビティの中で溶融(可塑化)させ、それを射出成形材料として、温度制御されたキャビティの中へ加圧下に射出することが含まれる。原料物質として用いられるのは、すでにコンパウンディングによって加工して成形材料となっている、本発明による組成物であって、前記成形材料は、次いで加工されて、好ましくはペレット状の物質とされる。温度調節されたキャビティの中に射出された成形材料を冷却(固化)させてから、その射出成形部品を脱型する。
【0143】
本発明は、好ましくは、ポリアミド6の100質量部あたり、以下のものを含む組成物を、少なくとも1種の混合装置、好ましくはコンパウンダーの中で加工して、成形材料を得、それらをさらなる加工、好ましくは射出成形プロセスにかけて、ポリアミドベースの充電部材を製造する、電気部材又は電子部材、好ましくは充電部材を製造するためのプロセスに関する:
20~300質量部、好ましくは35~250質量部、特に好ましくは50~180質量部、極めて特に好ましくは70~120質量部の、酸化アルミニウム、
20~350質量部、好ましくは50~300質量部、特に好ましくは85~250質量部、極めて特に好ましくは120~210質量部の、水酸化マグネシウム、及び
0.1~25質量部、好ましくは1~16質量部、特に好ましくは2~10質量部の、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー。
充電インレットの少なくとも1種の部材を、本発明による組成物/それをベースとする成形材料から製造し、ここで充電インレットの部材が、リアハウジングウォール、ピンホルダー、ハウジングフロント、及びコネクションマスクの群から選択されるのが好ましい。
【0144】
使用
本発明はさらに、電気産業又は電子産業の製造物品、好ましくは充電部材、特に電気自動車のための充電部材を製造するための、本発明による組成物の使用も提供する。好ましい充電部材は、電池を充電するための電池充電部材、好ましくは電気自動車のための電池、特に好ましくは充電ケーブルプラグ又は充電インレット、特には充電インレット又は充電インレットの部材である。本発明による組成物/成形材料をベースとする、本発明において好ましい充電インレットには、少なくともリアハウジングウォール、AC/DCケーブル、ピンホルダー、ハウジングフロント、及びコネクションマスクが含まれる。そのコネクションマスクにおいては、電気接点(ピン)が、充電プラグの接点に正確にマッチするように配置されている。特に好ましいのは、本発明による組成物/成形材料をベースとする切片から、本発明におけるピンホルダーを製造するための、本発明による組成物又は成形材料の使用である。
【0145】
電気産業又は電子産業の製造物品、好ましくは充電部材、特に電気自動車のための充電部材を製造するために、ポリアミド6の100質量部あたり、以下のものを含む組成物を使用するのが、好ましい:
20~300質量部、好ましくは35~250質量部、特に好ましくは50~180質量部、極めて特に好ましくは70~120質量部の、酸化アルミニウム、
20~350質量部、好ましくは50~300質量部、特に好ましくは85~250質量部、極めて特に好ましくは120~210質量部の、水酸化マグネシウム、及び
0.1~25質量部、好ましくは1~16質量部、特に好ましくは2~10質量部の、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー。
【0146】
充電インレット、又はリアハウジングウォール、ピンホルダー、ハウジングフロント、及びコネクションマスクの群からの充電インレットの少なくとも1種の部材を製造するために、ポリアミド6の100質量部あたり、以下のものを含む組成物を使用するのが、特に好ましい:
20~300質量部、好ましくは35~250質量部、特に好ましくは50~180質量部、極めて特に好ましくは70~120質量部の、酸化アルミニウム、
20~350質量部、好ましくは50~300質量部、特に好ましくは85~250質量部、極めて特に好ましくは120~210質量部の、水酸化マグネシウム、及び
0.1~25質量部、好ましくは1~16質量部、特に好ましくは2~10質量部の、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー。
【0147】
以下の例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明を限定する効果を有するものではない。
【実施例】
【0148】
表1に記載した成分を、Coperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)製のZSK 26 Compounder二軸スクリューエクストルーダーの中で、約290℃の温度で混合し、水浴の中に排出し、ペレット化が可能となるまで冷却し、ペレット化させた。そのペレット化した原料を、真空乾燥キャビネット中70℃で、恒量になるまで乾燥させた。
【0149】
次いでそのペレット化した原料を、Arburg A470射出成形機で、280℃~300℃の間の溶融温度及び80℃~100℃の範囲の金型温度で加工して、UL94に従った試験のための125mm×13mm×0.75mmの寸法を有する試験片、熱伝導率測定のための試験片を作製するための60mm×45mm×2.0mmの寸法を有する試験片、及び機械的試験のための80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片を得た。
【0150】
難燃性は、UL94V法に従って求めた(Underwriters Laboratories Inc.Standard of Safety,「Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」,p.14~18,Northbrook,1998)。
【0151】
曲げ強度及びエッジ繊維伸びは、80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片についてのISO 178-Aに記載の曲げ試験から得られた。
【0152】
衝撃強度は、80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片についての、ISO180-1Uに記載のIZOD法により得た。
【0153】
熱伝導率は、EN821-2に従い、Netzsch LFA447 Nanoflash(登録商標)機器を使用した、レーザーフラッシュ法により、測定した。試験片の流れとは垂直な方向の熱伝導率(平面貫通)の測定は、12.5mm×12.5mm×2mmの寸法を有する試験片で実施し、12.5mm×12.5mmの寸法を有する側面上への光パルス入力を用いた。それぞれの試験片は、60mm×45mm×2.0mmの寸法を有する試験片から予め摩砕した。
【0154】
試験片の流れ方向の熱伝導率(平面内)の測定は、60mm×45mm×2.0mmの寸法を有する試験片からそれぞれ摩砕した12.5mm×2mm×2mmの寸法を有する6個の試験片について、相互に密接させて一列に配置し、次いで、長手方向軸の回りに90°回転させ、最後に、得られる約12mm×12.5mmの表面の上に光パルスが入射するように再構成することにより実施した。
【0155】
流れとは垂直な方向の熱伝導率(平面貫通)と流れ方向の熱伝導率(平面内)との商が、熱伝導率の等方性の尺度として役立つ。完全に等方性の熱伝導率の場合に、これが1の数値であるとみなす。
【0156】
使用原料:
成分a/1:ポリアミド6(Durethan(登録商標)B24、Lanxess Deutschland GmbH(Cologne,Germany)製)
成分b/1:酸化アルミニウム(Martoxid(登録商標)TM4250、Martinswerk GmbH(Bergheim,Germany))
成分c/1:水酸化マグネシウム(Magnifin(登録商標)5HIV、Martinswerk GmbH(Bergheim,Germany))
成分d/1:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-エピクロロヒドリンコポリマー[CAS-No.25068-38-6](Araldite(登録商標)GT7071、Huntsman Advanced Materials(Everberg,Belgium)製)
【0157】
成分e)として用いられるのは、ポリアミドで慣用されている、たとえば以下のような、さらなる添加剤であった:成核剤(たとえばタルク[CAS No.14807-96-6]をベースとするもの)、及び/又は熱安定剤たとえば、1,6-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルアミノ]ヘキサン[CAS No.23128-74-7](Irganox(登録商標)1098、BASF(Ludwigshafen,Germany))、及び/又は離型剤たとえば、エチレン-ビス-ステアリルアミド[CAS No.110-30-5](Loxiol(登録商標)EBS、Emery Oleochemicals GmbH(Duesseldorf,Germany)製)。成分e)として用いられるそれらのさらなる添加剤のタイプと量は、それぞれの場合において、実施例及び比較例に対応している。
【0158】
表1に記載した組成物を、上で記述したようにして、加工した。
【0159】
【0160】
表1が示しているところでは、実施例1と比較例1との両方が、エッジ繊維伸びが1.5%より大、曲げ強度が150MPaより大、さらには、熱伝導率が少なくとも1W/mKで、十分な等方性を有しているという、本発明が対象としていた課題で要求される機械的性能を示したものの、必要とされる、0.75mmの壁厚でのUL94 V-0の難燃性格付けは、実施例1における本発明組成物の場合にのみ、達成された。さらに、実施例1による組成物をベースとするサンプルは、衝撃強度の点で、顕著な利点を示した。