(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】血液透析を受けている患者を監視するための生理学的監視装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240809BHJP
A61M 1/14 20060101ALI20240809BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240809BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20240809BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240809BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20240809BHJP
A61B 5/053 20210101ALI20240809BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20240809BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240809BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240809BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20240809BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61M1/14 100
A61B5/02 350
A61B5/021
A61B5/0245 100A
A61B5/029
A61B5/053
A61B5/256 200
A61B5/33 200
A61B5/33 300
A61B5/352
A61B5/02 310A
A61B5/332
(21)【出願番号】P 2022131202
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2018564874の分割
【原出願日】2017-06-06
【審査請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518433950
【氏名又は名称】トゥーセンス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バネット,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ディロン,マーシャル,シング
(72)【発明者】
【氏名】ピード,スーザン,ミークス
(72)【発明者】
【氏名】ハイワード,ローレン ニコル,ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ディロン,マーク シング
(72)【発明者】
【氏名】クライン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】スタイナー,デレク
(72)【発明者】
【氏名】ブロードブック,アール.クレイグ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0106366(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0041268(US,A1)
【文献】特開2014-012072(JP,A)
【文献】特開2002-051997(JP,A)
【文献】特開平11-216180(JP,A)
【文献】特表2015-531261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61B 7/00-7/04
A61M 1/00-1/38
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析セッションを受けている患者の特性を示すためのシステムであって、
患者の単一の箇所上に装着され、1)心電図(ECG)、胸部生体インピーダンス(TBI)、光電式容積脈波(PPG)、および心音計(PCG)の波形を測定するための検知素子、2)1組の生理学的パラメータを決めるためにECG波形、TBI波形、PPG波形、およびPCG波形を分析するためのプロセッサ、および3)前記1組の生理学的パラメータを伝送するように構成された第1の無線送受信機を備える体装着式生体測定センサであって、前記検知素子、前記プロセッサ、及び前記第1の無線送受信機は、前記患者の胸骨に寄り掛かるように構成されたハウジング内に装着される、体装着式生体測定センサと、
前記1組の生理学的パラメータを受信するように構成された第2の無線送受信機を備えるゲートウェイシステムと、
前記1組の生理学的パラメータを分析するように構成されたデータ分析システムであって、前記データ分析システムが、前記患者の代償不全を予測し、かつ、前記1組の生理学的パラメータのうち1つ又は複数の生理学的パラメータの閾値を超えたことを測定した場合、前記患者の限外濾過速度を修正するためにアラームが動作して、臨床医が前記限外濾過速度を修正するように警告する、ように構成されたデータ分析システムと
を備える、システム。
【請求項2】
前記生体測定センサは前記患者の胸部に接着されるように構成された接着性パッチである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記接着性パッチは前記患者の胸部に前記接着性パッチを固定する4つの電極を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記4つの電極のうち2つの電極は前記TBI波形の測定をするための前記検知素子に電気的に接続され、かつ前記患者の胸部に電流を送り込むように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記4つの電極のうち、残りの2つの電極は前記TBI波形の測定をするための前記検知素子に電気的に接続され、かつ前記電流によって誘発される生体電気信号を検知するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記TBI波形の測定をするための前記検知素子は検知された前記生体電気信号を処理して心拍誘発パルスを生成するように構成された第1の電気回路をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記TBI波形の測定をするための前記検知素子は検知された前記生体電気信号を処理して前記患者の胸部のインピーダンスを示す信号を生成するように構成された第2の電気回路をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記PPG波形の測定をするための前記検知素子は発光ダイオード(LED)と、光検出器(PD)を備え、前記PDは、前記患者の胸部の毛細血管床から反射された前記LEDによって発せられる放射線を検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記PPG波の測定をするための前記検知素子は、赤色光スペクトル領域の第1のLED放射線と、赤外線スペクトル領域の第2のLED放射線を検知する素子を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記PCG波の測定をするための前記検知素子は圧電型マイクロホンを備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願についてのクロスリファレンス
本出願は、2016年6月6日出願の米国仮特許出願第62/346,410号の便益を請求し、全ての表、図、および特許請求の範囲を含めて同仮特許出願の全体を本明細書に援用する。
【0002】
2.発明の分野
本発明は、医療的治療、例えば血液透析を受けている患者からの生理学的信号を測定するセンサの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
3.一般的な背景
患者からの生理学的信号または生理学的に影響を受けた生体測定信号を測定することによって評価され得るいくつかの生理学的パラメータがある。心電図(ECG:electrocardiogram)、胸部生体インピーダンス(TBI:thoracic bio-impedance)、光電式容積脈波(PPG:photoplethysmogram)、および心音計(PCG:phonocardiogram)の波形などの、いくつかの信号は、患者の皮膚に直接付着するセンサ(例えば電極、光学素子、マイクロホン)を用いて測定される。これらの波形の処理は、心拍数(HR:heart rate)、呼吸数(RR:respiration rate)、心拍変動性(HRV:heart rate variability)、パルス酸素測定(SpO2)、1回拍出量(SV:stroke volume)、心拍出量(CO:cardiac output)、および胸部流体、例えば胸部流体含有量(TFC:thoracic fluid content)に関するパラメータなどのパラメータを生み出す。ある種の生理学的条件は、それらが単一の時点に取得されるときに、これらのパラメータから識別されることができ、他のものは、パラメータの傾向を識別するのに、かなりの期間にわたる評価を必要とする。いずれにしても、一貫性を有して、高い再現性および精度を備えたパラメータを取得することが重要である。
【0004】
いくつかの生理学的パラメータの測定は、測定される身体箇所における高度な精度および/または一貫性を必要としない。単純な例として、患者の体温(TEMP)の測定は、多くの場合、舌下のどこかに簡単に置かれる口腔体温計を用いて行われる。ここでは、体温計の厳密な配置は、測定される温度値に大きい影響を有さない。同様に、ECG波形のR-R間隔の時間依存性変動によって決まる、HRなどの、波形の時間依存性特徴によって決まるパラメータは、センサポジショニングに比較的に無感応である。この場合、R-R間隔は、患者の胸腔上での電極のポジショニングによる変動をほとんど示さない。対照的に、収縮期(SYS)および拡張期(DIA)血圧(BP)は、測定箇所に対してかなりの感応性を示す。血圧計を用いて測定されるとき、BP値は、上腕動脈上でのカフの大まかなアライメントに、比較的に無感応であるが、手首、大腿、指、またはさらに反対の腕などの身体上の他の箇所で測定されるときには、変化することになる。同様に、TFCなどの、波形の振幅依存性特徴の測定は、電極のポジショニングに強く左右される。この場合、TFCの値は、電極の間で測定されたインピーダンスに関係しており、これは、ひいては、電極の配置によって変化することになる。電極の日々の配置の偏差は、特に測定されたパラメータの傾向が抽出されるとき、結果的に測定誤差をもたらす可能性がある。このことは、ひいては、誤った情報につながる可能性があり、このような測定の値を価値のないものにし、したがって、治療に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
4.知られているデバイスおよび関連性のある生理学
患者からの時間依存性ECG波形およびTBI波形を測定する医療デバイスは、標準的には、ケーブルまたはリード線を通して、患者の体上のさまざまな箇所に接着された使い捨て電極につながる。標準的には、デバイスの中の患者の体から遠隔に位置付けられる所与のデバイスの中のアナログ回路は、波形を発生させるために信号を処理する。さらなる分析の場合、このような波形は、HR、TFC、SV、CO、およびRRなどのパラメータを生み出す。
【0006】
ECG波形およびTBI波形を測定する使い捨て電極は、標準的には、患者の胸部または脚上に装着され、i)患者に接触する導電性ヒドロゲル、ii)ヒドロゲルに接触するAg/AgCl被覆アイレット、iii)アイレットをデバイスから延びるリード線またはケーブルに接続する導電性金属ポスト、およびiv)電極を患者に接着する接着性バッキングを含む。ECG波形およびTBI波形を測定するいくつかのデバイスは、患者の身体上に全体的に装着される。これらのデバイスは、内在電極に直接接続されたアナログおよびデジタル両方の電子機器を含む、単純な、パッチ型システムを特徴とするように改良されてきた。このようなデバイスは、標準的には、比較的短い期間、例えば数日から数週間に及ぶ期間にわたって命じられる。それらは、標準的には無線であり、標準的にはウェブベースシステムに情報を伝送するために、セル方式無線電話を含む第2のデバイスに、短距離上で情報を伝送するために、ブルートゥース(登録商標)送受信機などの技術を含む。
【0007】
5.末期腎疾患および鬱血性心不全を患っている患者
TFC、重量、および水分補給状態を評価することは、多くの疾患を診断、管理するのに重要である。例えば、末期腎疾患(ESRD:end-stage renal disease)は、患者の腎臓が日々の生活に必要な水準で機能することがもはや可能でないときに起こる。疾患は、最も一般的には、糖尿病および高血圧によって生じ、SYSおよびDIAの変動を伴った、全身にわたる流体の漸増によって特徴付けられる。ESRDを患っている患者は、標準的には、過剰な流体を除去するために、血液透析(限外濾過を含む)が必要である。したがって、ESRDの特性を示すために、TFCの正確な測定は、血液透析の間の流体の過剰除去または過少除去の原因となることが多い実験的な臨床推定の必要性をなくし、それによって、血行力学的不安定性および低血圧の発症を防止することができる(Anand他、「Monitoring Changes in Fluid Status With a Wireless Multisensor Monitor: Results From the Fluid Removal During Adherent Renal Monitoring (FARM) Study」、Congest Heart Fail.2012;18:32~36)。
【0008】
透析には2つの主要な種類、『血液透析』および『腹膜透析』がある。血液透析は、通常、米国では400,000人を上回る人々で、1年に52週、1週に3回実行されている。それは、限外濾過法と呼ばれる技術を用いて、患者の血液から過剰な老廃物および水を除去する。腹膜透析は、特別なプラスチックチューブを通して患者の腹腔に入れられる流体を使用して、体から過剰な老廃物および流体を除去する。血液透析の間、血液は、患者の体からフィルタ(『透析膜』)を通って透析装置に移動する。この処置のために、患者は、腕や脚の動脈および静脈の間に設置された特殊なプラスチックチューブ(『gortex移植片』と呼ばれる)を有する。腕の動脈と静脈との間を直接接続することもある。この処置は、『チミーノ瘻孔』と呼ばれる。次いで、針が、移植片または瘻孔の中に配置され、血液は、透析装置に移動し、フィルタを通ってから患者に戻る。移植片または瘻孔が設置される前に、患者が透析を必要とする場合、透析を実行するために、標準的には、大径カテーテルが、頸部または脚の大静脈の中に直接配置される。透析機械では、フィルタの反対側の溶液が、患者からの老廃物を受け入れる。
【0009】
腹膜透析は、フィルタの働きをする、腹腔内部の患者自身の体組織を使用する。腹腔は、『腹膜』と呼ばれる特別な膜で内側を覆われている。『腹膜透析カテーテル』と呼ばれるプラスチックチューブは、腹壁を通って腹腔に入れられる。次いで、特別な流体が、腹腔に流し込まれ、腸の周囲を洗浄する。腹膜は、この流体と血流との間でフィルタの働きをする。異なる種類の溶液を使用して、老廃物および過剰な水が、この処理によって体から除去され得る。
【0010】
血液透析処置はそれぞれ、大量の流体を除去する必要があるので、患者が、透析中症候性低血圧、筋痙攣、嘔気、嘔吐、および他の不快な状態を経験することは珍しいことではない。透析患者における透析中流体増加を測定するための現在の標準的な技術は、血液透析セッションの初めに患者の体重から基本的に推定される既知の『乾燥重量』に対して、現在重量を比較することである。しかしながら、このような重量は、流体保持に関連しないいくつかの要因によって誤った影響を及ぼされる可能性がある。患者から流体除去する速度を正確に測定すれば、上記の透析中合併症を最小限に抑える可能性があり、さらに、患者の理想的な乾燥重量へ向かう経過を推定するのに使用され得る。
【0011】
多くのESRD患者は、さらに、鬱血性心不全(CHF:congestive heart failure)、「一連」の生理学的要因、すなわち、流体状態(例えばTFC)、生命徴候(すなわちHR、RR、TEMP、SYS、DIA、およびSpO2)、および血行力学的パラメータ(例えばCO、SV)を使用して通常監視される合併疾患を患う。こうしたパラメータの正確な測定は、特に利尿薬剤を分散させるために、患者を管理するのに役立ち、それによって、費用のかかる再入院を減らすことができる(Packer他、「Utility of Impedance Cardiography for the Identification of Short-Term Risk of Clinical Decompensation in Stable Patients With Chronic Heart Failure」、J Am Coll Cardiol 2006;47:2245~52)。
【0012】
CHFは、特殊な種類の心不全(HF:heart failure)、複雑な病態生理学によってもたらされる慢性疾患である。この状態は、SVおよびCOが、腎臓および肺に適切に潅流させるのに不十分であるときに発生する。HFの原因は、よく知られており、通常虚血性心疾患、糖尿病、高血圧、肥満、喫煙、および心臓弁膜症が含まれる。収縮期HFでは、駆出率(EF:ejection fraction)は、減少させることができ(<50%)、他方で、拡張期HFでは、このパラメータは、通常正常である(>65%)。心不全の両方の形の共通の前兆特性は、その収縮サイクルの終わりの左心房内の圧力、または左心室拡張終期圧(LVEDP:left ventricular end-diastolic pressure)の時間依存性上昇である。LVEDPの慢性的上昇は、肺静脈から肺の中へ流体漏出を引き起こし、結果的に、息切れ(呼吸困難)、速い呼吸(呼吸促迫)、体の全体にわたる酸素送達と酸素需要量との不一致に起因する労作に伴う疲労をもたらす。したがって、かなり容易に検出され得るHF用の初期の代償的仕組みには、RRおよびHRの増加が含まれる。
【0013】
COに障害が生じると、腎臓は、反応して濾過能力が低下し、したがって、ナトリウムおよび水の滞留を促進し、血管内量の増大につながる。LVEDPが上昇するとき、肺静脈うっ血は悪化する。体重は漸進的に増加し、流体が、下肢に移動する可能性がある。HF用の薬剤は、減弱した灌流に対する腎臓のホルモン応答性を妨げるように設計されており、それらは、さらに、体から過剰なナトリウムおよび水を排出するのを助けるように働く。しかしながら、BPの増加(後負荷に関する)、または流体滞留(前負荷に関する)、または頻拍性不整脈に因るHRの著しい変化は、非代償性HFにつながる可能性があるので、これらの2つの生物学的治療方法の間の極めて繊細な平衡は、維持される必要がある。残念なことに、この状態は、経口薬剤には非応答性を有することが多い。その状況では、多くの場合、静脈内利尿療法のために、病院に入院する必要がある。
【0014】
医療センターでは、HFは、通常、SV、CO、およびEFなどのパラメータを測定するドップラー/超音波を使用して検出される。一方で、家庭環境では、単純な重量計で測定される漸進的な体重増加は、CHFを示す1つの方法である。しかしながら、このパラメータは、通常、状態を薬剤または食事を変えることで改善することができる特に重要な機会であるCHFの早発性を検出するのに十分な感応性を有していない。
【0015】
SVは、左心室拡張末期容積(EDV)と収縮末期容量(ESV)との間の数学的差であり、心拍のたびに左心室によって放出される血量を表し、標準値は、約70~100mLである。EFは、式1で以下に表すようにEDVおよびESVに関係する。
【数1】
【0016】
生体インピーダンスによって測定されるSVは、通常、式2で以下に示す、バーンスタイン式と類似の式を使用する。バーンスタイン式は、以下の参考文献でさらに詳細に記載されており、その内容を参考文献として本明細書に援用する:Bernstein, D. P.およびH. J. M. Lemmens、「Stroke volume equation for impedance cardiography」、Medical and Biological Engineering and Computing 43.4 (2005):443~450。
【数2】
【0017】
式2では、Z0は、TBI波形のDC成分の平均値として算出される。容積導体-Vc-は、経験的に導出された、患者の血液容量に関する患者特有の定数を表す。それは通常、患者の体重および性によって決まる。Mcも同様に、TBI波形のAC成分の中の心拍誘発『心臓パルス』の形態論に関係する、経験的に導出されたパラメータである。左室駆出時間(LVET)は、大動脈弁の開閉を区分する時間を示す。このパラメータは通常、心臓パルスから直接的に、または式3で以下に示す、ワイズラー回帰と呼ばれる数式を用いて、患者の現在のHRから推定される。
LVET(秒)=0.413-0.0017×HR(拍動/分) (3)
【0018】
COは、左心室から大動脈に放出される平均的時間依存性血量である。それは、患者の心臓が動脈樹を通して血液をどれくらい効率的にポンプ圧送するのかを示し、標準値は、約5~7L/分である。下記の式4は、HRおよびSVの積としてCOを示す。
CO=SV×HR (4)
【0019】
CHF患者、特に収縮期HFを患う患者は、EFおよび全身にわたる血流量を増加させるために、ペースメーカおよび/または埋め込み可能な心臓除細動器などの埋込型デバイスを導入する可能性がある。これらのデバイスは、装置の異なる導線の間の電気インピーダンスを測定するために、回路およびアルゴリズムを含むことができる。CHF患者では、胸部流体が増加するので、通常インピーダンスは、低下する。したがって、このパラメータは、患者の体外に置かれる問合せデバイスによって読み取られるとき、心不全の発症を示すことができる。
【0020】
6.ESRDおよびCHRに関連する経費
CHFおよびESRDはそれぞれ、約5,300,000人および3,000,000人のアメリカ人に影響を及ぼしており、結果的に、CHFに関して45,000,000,000ドル、ESRDに関して35,000,000,000ドルと推定される年間保健医療費が生じている。CHF患者は、年間のメディケア支出のほぼ43%を占め、これは、全種類の癌に対する総計支出よりも多い。幾分戸惑いを感じるが、これのおよそ17,000,000,000ドルは、病院への再入院によるものと考えられる。CHFは、ESRDの患者に関する死亡率の主要な原因でもあり、毎年この人口統計データは、メディケアに毎年ほぼ90,000ドル/患者の負担をかけている。したがって、無理もない話だが、これらの疾患を患っている患者を退院した状態にしておこうとする根深い財政的な動機がある。2012年から、米国の病院は、上記の規定再入院率に対してペナルティを課されるようになった。現在では、ペナルティは支払い額の1%の上限を有しており、今後3年の内に3%を超えるように増加している。
【0021】
しかしながら、臨床医が、彼らが遠隔で、薬剤を滴定する、食事を監視する、および運動を促進することを可能にする詳細情報にアクセスする場合、CHFに関連する再入院を減らすことができるというかなりの見込みがある。事実、メディケアは、ESRDおよび/またはCHFを患う全患者の75%は、単純かつ有効なプログラムで治療されれば、再入院を潜在的に回避することができると推定した。
【0022】
したがって、CHFおよびESRDなどの状態の前兆現象を識別する目的で、医師は、在宅患者に、監視解決策を処方することができる。通常、このような解決策には、多数の、標準医療デバイス、例えば血圧計カフ、重量計、およびパルス酸素濃度計が含まれる。ある事例では、患者は、これらのデバイスを、毎日、順次的なやり方で、すなわち1度に1つのデバイスを使用する。次いで、患者は、測定されたパラメータを伝達するために、中央コールセンターに電話をする。より高度なシステムでは、デバイスは、同様に順次的なやり方で使用されるが、自動的に、短距離無線リンク(例えばブルートゥース(登録商標))を通じて「ハブ」に接続し、ハブは、次いで、情報をコールセンターへ転送する。多くの場合、ハブは、患者への基本的な質問、例えば患者の食事に関する質問、患者がどのように感じているのか、薬剤を飲んだか否かを提示する単純なユーザインターフェースを特徴とする。
【発明の概要】
【0023】
前述の内容を考慮すると、血液透析および類似の治療法の間、患者の監視を改善することは、有益である。自宅および臨床的環境の両方において、ESRD、HF、CHF、心臓不整脈、および他の疾患を患っている患者を監視するのを容易にする本発明によるセンサは、この目的を達成することができる。センサは、パッチまたは従来型のネックレスのように装着され、毎日のように使用されるときに、一貫性を有した配置を確実にし、それによって、その測定の反復性および再現性を改善する機械的な仕組みを特徴とする。さらに、センサは、多数のパラメータの同時測定を行い、したがって、多数のデバイスを使用する必要性をなくしている。これらの特徴は両方共に、患者コンプライアンスを改善することができる。
【0024】
より厳密には、1つの態様では、本発明は、患者から以下のパラメータ、すなわちHR、PR、SpO2、RR、BP、TEMP、TFC、SV、CO、および血圧と、パルス到着時間(PAT)および脈管通過時間(VTT)と呼ばれる全身血管抵抗とに反応する1組のパラメータを測定する頸部装着センサを特徴とする。SVから、線形モデルを使用している第1のアルゴリズムは、患者の脈圧(PP)を推定することができる。PPおよびPAT、VTT、および関連パラメータから、第2のアルゴリズムは、SYSおよびDIAを推定することができる。したがって、単独で働いているセンサは、血行力学的パラメータ(SV、CO、TFC)に加えて、5つの生命徴候(HR/PR、SpO2、RR、TEMP、およびSYS/DIA)を全て測定することができる。これらのパラメータのいくつかの傾向は、例えば、透析の間に発生する有害事象の発症を予測することができる。
【0025】
センサは、運動検出加速度計をさらに含み、その加速度計によって、センサは、姿勢、運動の程度、活動水準、胸部の呼吸誘発性上下動、および落下などの動作関連パラメータを決めることができる。このようなパラメータは、例えば、人工透析の間の患者の姿勢または運動を決めることができ、これは、筋痙攣および嘔気に向かう経過に影響を与える可能性がある。センサは、運動が、最小限に抑えられ、予め決められた閾値を下回るとき、生命徴候および血行力学的パラメータを測定するために、運動関連パラメータを処理する追加的なアルゴリズムを作動させ、それによって、アーチファクトを減らすことができる。そのうえ、センサは、生命徴候および血行力学的パラメータに関する計算精度を改善するために、姿勢などの運動関連パラメータを推定する。
【0026】
使い捨て電極は、面倒なケーブルなしで患者の体に近接してそれを固定するために、センサに直接付着する。特に、電極は、標準的には、接着パッチの中に提供されており、各電極パッチは、ECG波形およびTBI波形を測定するために、2つの電極域を含有している。パッチは、信号を伝導する電気的結合を提供するために、回路基板に電気的に接続される磁石を用いて、センサの中に包含された回路基板に、容易に接続する(および接続を切る)。使用の前に、電極は、回路基板の近くに単純に保持されており、磁気引力が、電極パッチを適切な位置に嵌め込み、それによって、電極を患者の体の上で適切にポジショニングすることを確実にしている。
【0027】
赤(例えば660nm)および赤外線(例えば900nm)のスペクトル領域で作動する発光ダイオードを使用して、センサは、患者の胸部の毛細血管床を軽く押圧することで、SpO2およびPRを測定する。反射モード光学素子を用いて作動することで、センサは、赤波長および赤外線波長の両方でPPG波形を測定する。SpO2は、これらの波形の交互的および静的成分から処理される。PRは、これが、比較的高い信号対雑音比を通常有するので、ひいては、隣接したパルスから、典型的には赤外光で生じたPPG波形から算出され得る。
【0028】
これらのさまざまな測定と関連付けられるアナログ電子機器およびデジタル電子機器は全て、センサに直接統合される。これは、単一の、-大きな医学的なデバイスではなく、典型的には従来型の宝石の一片のように形づけられている-目立たない構成要素は、1回限りおよび継続的な測定の両方を用いて、患者の特性を示すことができる確固たる1組のパラメータを測定することを意味する。測定は、ほんの数分または数時間にわたって行われることができ、医療施設および在宅で行うことができる。センサは、患者によって装着されるとき、胸部の中央近くに位置付けられるベース(すなわち検知)部分の中に単純なLEDを含む。センサは、データを、例えばゲートウェイデバイスに送信する無線送信機(ブルートゥース(登録商標)および/または802.11a/b/g/nを作動させる)をさらに含む。これは、例えば、従来型の可搬式デバイス(例えばセル式電話、タブレット型コンピュータ、デスクトップ/ラップトップコンピュータ、またはプラグインハブ)であってもよい。
【0029】
センサは、快適で、装着するのが容易な形態要素を特徴としながら、上記の特性の全てを測定する。それは、軽量(約100グラム)で、電池式である。使用中、それは、患者の頸部の周囲に簡単に垂らしてかけられ、後で詳しく述べるように、使い捨て電極が、それを適所に保持する。従来型のネックレスの撚り線またはケーブルに似た、可撓性を有する、導電性素子は、センサ上で電力を供給し、それを適所に保持し、さらに、毎日のように使用されるときに、一貫性を有して配置されることを確実にする。そのうえ、患者の頸部は、目立たず、快適であり、手から移動された場所であり、患者の目につくことなく、センサの重量を支えることができる。頸部および胸部空洞は、さらに、手や指などの外肢と比較して相対的に動きがなく、したがって、頸部領域に固定されるセンサは、運動関連のアーチファクトを最小限に抑える。さらに、このようなアーチファクトは、センサ内の加速度計によってある程度まで補正される。センサが宝石(例えばネックレス)に似ていて、したがって、さまざまな従来技術のデバイスと比べて、かなり、人目を引きにくい、または目立ちにくいので、長期間にわたって医療デバイスを装着することに関する感情的な不快感は、減少され、それによって、監視療法に伴う長期の患者コンプライアンスを促進することになる。
【0030】
上記を考慮し、1つの態様において、本発明は、透析を受けている患者の特性を示すためのシステムを提供し、システムは、1)患者の単一の箇所上に装着され、i)ECG、TBI、PPG、およびPCGの波形を測定するための検知素子、ii)1組の生理学的パラメータを決めるためにECG、TBI、PPG、およびPCGの波形を集合的に分析するためのプロセッサ、およびiii)1組の生理学的パラメータを伝送するように構成された第1の無線送受信機を特徴とする体装着式生体測定センサと、2)1組の生理学的パラメータを受信するように構成された第2の無線送受信機を備えるゲートウェイシステムと、3)患者の状態を決めるために1組の生理学的パラメータを分析するように構成されたデータ分析システムとを備える。
【0031】
別の態様において、本発明は、透析セッションを受けている患者の『乾燥重量』値を推定するためのシステムを提供する。ここで、乾燥重量という用語は、腎不全のために流体が増やされていない、患者が有するはずの体重を表す。システムは、1)TBI波形を測定する、上で説明したものと類似の体装着式生体測定センサと、2)患者の流体値を決めるためにTBI波形を集合的に分析し、次いで、流体値、および血液透析セッションが始まる前の患者の体重の値を分析することによって、患者の乾燥重量値を推定するためのプロセッサとを含む。ここで、流体値は、患者の胸部の流体の体積に関する。流体は、大部分は水で構成されていて、1グラム/cm3に近い密度を有する。この関係を用いて、除去される流体は、重量変化および患者の目標乾燥重量へ向かう経過と関連付けることができる。
【0032】
別の態様において、本発明は、血液透析を受けている1組の患者の特性を示すためのシステムを提供する。システムは、1)ECG、TBI、PPG、およびPCGの波形を測定する、上で説明したものと類似の、または異なる構成(例えばパッチ)を代替的に有する体装着式生体測定センサと、2)1組の生理学的パラメータを決めるためにECG、TBI、PPG、およびPCG波形を集合的に分析するためのプロセッサと、3)1組の生理学的パラメータを伝送するように構成された第1の無線送受信機と、4)1組の体装着式生体測定センサの中の各体装着式生体測定センサを受容する充電ステーションと、5)1組の体装着式生体測定センサの中の各体装着式生体測定センサから1組の生理学的パラメータを受信するように構成された第2の無線送受信機を含んでいるゲートウェイシステムとを含む。ゲートウェイシステムは、無線でペアリングをし、次いで、この組の中の第1の体装着式生体測定センサから、第1の組の情報をダウンロードし、次いで、完了した後、組の中のお互いのセンサと共に処理を繰り返すことによって、これを行う。このプロセスは、すべての情報がダウンロードされるまで、完全に自動化されたやり方で行われる。標準的には、次いで、ゲートウェイシステムは、それをさらなる再調査および分析(例えばデータ分析エンジンによって)のためのウェブベースシステムに送る。
【0033】
他の態様において、本発明は、流体水準(例えばTFC)を推定する、または透析セッションを受けている患者のBPの特性を示すためのシステムを提供する。ここでは、システムは、上で説明したものと類似の、センサ、ゲートウェイシステム、データ分析エンジン、およびウェブベースシステムを含む。
【0034】
さらに他の態様において、本発明は、1組の4つの電極を含む、患者の特性を示すためのセンサを提供し、この組の中の2つの電極は、患者に電流を送り込むように構成された電気回路に接続されており、この組の中の2つの別個の電極は、患者の胸部から電圧を検知するように構成された電気回路に接続されている。センサは、インピーダンス波形を決めるために電圧を処理する第1のアナログフィルタと、ECG波形を決めるために電圧を処理する第2のアナログフィルタとを備えたアナログシステムを含む。センサ内のプロセッサは、第1の基準点を決めるために、ECG波形をそして、第2の基準点を決めるためにインピーダンス波形を処理し、次いで、血圧値を決めるために、第1の基準点と第2の基準点との間の時間差を処理する。ここでは、センサは、患者の体の上に完全に装着され、さらに情報を外部ゲートウェイシステムに伝送するための無線送信機をさらに備える。
【0035】
さらに他の利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】血液透析を受けている1組の患者を示している概略図であり、各患者は、本発明による、データ分析エンジンに結合された中央ステーションに情報を伝送するセンサを装着している。
【
図2】代償不全が、血液透析を受けている患者に起こることを予測するために、
図1のデータ分析エンジンと共に使用されるアルゴリズムの流れ図である。
【
図3】本発明によるセンサの前側部分の写真である。
【
図4A】露出した電極接点を備えた、本発明によるセンサの裏の部分の写真である。
【
図4B】露出した電極接点に接続された使い捨てパッチ電極を備えた、本発明によるセンサの裏の部分の写真である。
【
図5A】患者から採取されたECG波形の時間依存性プロットである。
【
図5B】同時に、
図5Aに示したECG波形と同じ患者から採取されたPCG波形の時間依存性プロットである。
【
図5C】同時に、
図5Aに示したECG波形と同じ患者から採取されたPPG波形の時間依存性プロットである。
【
図5D】同時に、
図5Aに示したECG波形と同じ患者から採取されたTBI波形の時間依存性プロットである。
【
図5E】
図5Dに示したTBI波形の第1の微分係数の時間依存性プロットである。
なお、図5A~5Eは、患者から採取された以下の波形の時間依存性プロットである。ECG(図5A)、PCG(図5B)、PPG(図5C)、TBIのAC成分(図5D)、およびTBIのAC成分の微分係数(図5E)。
【
図6A】
図3のセンサで、患者からの単一の心拍から生じたECG波形およびPPG波形の時間依存性プロットであり、これらの波形の基準点に印を付け、電気機械式活性化時間(EMAT:electro-mechanical activation time)に関する時間間隔を示す円形の記号が加えられている。
【
図6B】
図3のセンサで、患者からの単一の心拍から生じたTBI波形およびPPG波形の時間依存性プロットであり、これらの波形の基準点に印を付け、第1のVTT(VTT
1)に関する時間間隔を示す円形の記号が加えられている。
【
図6C】
図3のセンサで、患者からの単一の心拍から生じたPCG波形およびPPG波形の時間依存性プロットであり、これらの波形の基準点に印を付け、第3のVTT(VTT
3)に関する時間間隔を示す円形の記号が加えられている。
【
図6D】
図3のセンサで、患者からの単一の心拍から生じたECG波形およびPPG波形の時間依存性プロットであり、これらの波形の基準点に印を付け、PATに関する時間間隔を示す円形の記号が加えられている。
【
図6E】
図3のセンサで、患者からの単一の心拍から生じたPCG波形およびTBI波形の時間依存性プロットであり、これらの波形の基準点に印を付け、第2のVTT(VTT
2)に関する時間間隔を示す円形の記号が加えられている。
【
図6F】
図3のセンサで、患者からの単一の心拍から生じたPCG波形の時間依存性プロットであり、この波形の基準点に印を付け、LVETに関する時間間隔を示す円形の記号が加えられている。
【
図7A】患者のBP測定が、カフベースシステムを使用して較正されている、センサを装着している患者の概略図である。
【
図7B】カフベースシステムを使用して較正された後の、センサを装着している患者の概略図である。
【
図8A】充電ステーションに取り付けられ、一方同時に、情報がそこからワイヤレスでダウンロードされている1組のセンサの写真である。
【
図8B】
図8Aに示した1組のセンサから情報をダウンロードするタブレット型コンピュータゲートウェイ上で動作しているソフトウェアユーザインターフェースの写真である。
【
図9A】本発明のセンサ(以下『試験』デバイスと呼ぶ)によってTFC値が測定される場所を示している人体解剖模型の写真である。
【
図9B】『基準』デバイスが本明細書に記載される臨床試験で使用されている、Z
0値が測定される場所を示している人体解剖模型の写真である。
【
図10A】試験デバイスおよび基準デバイスの両方で血液を透析する間に除去された流体に応じて測定されたインピーダンス値を示す散布プロットであり、試験デバイスおよび基準デバイスでの値が、徐々に離れている。
【
図10B】
図10Aで示したように、試験デバイスおよび基準デバイスによって行われた測定間の一致を示す相関プロットである。
【
図10C】試験デバイスおよび基準デバイスの両方で血液を透析する間に除去された流体に応じて測定されたインピーダンス値を示す散布プロットであり、試験デバイスおよび基準デバイスでの値が、徐々に近づいている。
【
図10D】
図10Cで示したように、試験デバイスおよび基準デバイスによって行われた測定間の一致を示す相関プロットである。
【
図11A】試験デバイスおよび基準デバイスの両方で血液を透析する間に除去された流体に応じて測定されたインピーダンス値を示す散布プロットであり、試験デバイスおよび基準デバイスでの値は、相対的に高い。
【
図11B】
図11Aで示したように、試験デバイスおよび基準デバイスによって行われた測定間の一致を示す相関プロットである。
【
図11C】試験デバイスおよび基準デバイスの両方で血液を透析する間に除去された流体に応じて測定されたインピーダンス値を示す散布プロットであり、試験デバイスおよび基準デバイスでの値は、相対的に低い。
【
図11D】
図11Cで示したように、試験デバイスおよび基準デバイスによって行われた測定間の一致を示す相関プロットである。
【
図12】試験デバイスおよび基準デバイスの両方で血液を透析する間に除去された流体に応じて測定されたように、33人の被験者で実施された臨床試験でプールされたインピーダンス値を示す散布プロットである。
【
図13A】正常洞調律を有する患者から測定されたECG波形の時間依存性プロットである。
【
図13B】
図13Bで波形を発生させるのに用いられた同じ患者から測定されたECG波形の時間依存性プロットであり、この場合にのみ、患者が、心室頻拍を経験している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
1.血液透析の間ESRD患者を監視する
図1に示すように、本発明によるセンサ10a~fは、個別の透析装置13a~fに連結されたESRD患者11a~fの群を測定するのに使用され得る。透析装置は、例えば、単一の透析クリニックに設置されていてもよい。各センサ10a~fは、この後
図3および
図4を参照しながら、さらに詳細に記載するように、時間依存性の生理学的波形(ECG、TBI、PPG、PCG)、生命徴候(HR、RR、TEMP、SpO2、およびBP)、および血行力学的パラメータ(TFC、SV、CO)の群を連続的に測定し、次いで、これらのパラメータを示すデータを中央ステーション100に無線で伝送する。センサ10a~fは、標準的には、生命徴候および血行力学的パラメータ(例えば毎分1回)と比べて比較的高頻度(例えば250Hz)に波形を測定する。センサ10a~fは、この後さらに詳細に記載される埋め込まれた検知素子を用いて、時間依存性波形を患者から直接的に測定する。計算アルゴリズムを用いて、各センサ10a~fの中のマイクロプロセッサは、時間依存性波形から生命徴候および血行力学的パラメータを決める。計算アルゴリズムの例は、以下の同時係属、交付済み特許に記載されており、その内容を参考文献として本明細書に援用する:2014年9月11日に出願された米国特許出願第62/049279号、「NECK-WORN PHYSIOLOGICAL MONITOR」、2014年8月21日に出願された米国特許出願第14/184616号、「NECKLACE-SHAPED PHYSIOLOGICAL MONITOR」、および2014年7月3日に出願された米国特許出願第14/145253号、「BODY-WORN SENSOR FOR CHARACTERIZING PATIENTS WITH HEART FAILURE」。
【0038】
無線通信は、標準的には、ブルートゥース(登録商標)または802.11a-g(本明細書ではWiFi(登録商標)と呼ぶ)に基づいたプロトコルを使用する無線などの、センサ10a~fの中の内蔵無線を用いて実行される。中央ステーション100は、例えば、対応するブルートゥース(登録商標)またはWiFi(登録商標)無線を有する、コンピュータ、ワークステーション、タブレット型コンピュータ、または可搬式電話であり得る。あるいは、各センサ10a~fは、透析クリニック内で機能しているネットワークにデータを無線で伝送し、中央ステーション100は、データを受信するためにネットワーク上のノードとして機能する。
図8A、
図8Bを参照しながら、さらに詳細に記載されるさらに別の代替実施形態では、センサは、透析セッションの間にデータを採取し、次いで、それを内部記憶装置の中に記憶する。次いで、データは、(例えばネットワークまたは中央ステーションに)後ほど無線で送信され得る。例えば、
図8A、
図8Bに示す例では、センサは、その充電式電池が充電されている(例えば充電ステーションを用いて)とき、データを無線で伝送する。ここでは、ゲートウェイは、充電ステーションに取り付けられた各センサと順次、自動的にペアリングする内蔵ブルートゥース(登録商標)送受信機を備えたタブレット型コンピュータである。透析セッションの間に採取されるすべてのデータがゲートウェイにアップロードされると、次いで、ゲートウェイは、充電ステーションに取り付けられた他のセンサとペアリングし、プロセスを繰り返す。これは、各センサからのデータがダウンロードされるまで続けられる。
【0039】
中央ステーション100と通信しているデータ分析エンジン102は、透析クリニックにおいて各患者11a~fによって生成されたデータ(時間依存性波形、生命徴候、および血行力学的パラメータ)を受信して、処理する。より具体的には、データ分析エンジン102は、それぞれのセンサによって生成されたデータに基づいて、患者11a~fの代償不全を予測するように設計されたアルゴリズムを働かせるソフトウェアシステムである。データ分析エンジンによって予測される代償不全の種類には、1)生命徴候または血行力学的パラメータ、例えばBP、HR、SpO2、RR、TEMP、SV、およびCOの急速な変化、2)低血圧または高血圧、3)低酸素血症、4)リズム障害、5)筋痙攣につながる脱水症、6)冷え、7)嘔気、8)効果のない治療につながる姿勢変化、9)発作、10)急速な失血(内部または外部の)が含まれる。これらの状態を予測するための高水準アルゴリズムについて、
図2に関してこの後さらに詳細に記載される。これらのアルゴリズムでの目標は、特定の患者が代償不全の初期段階であることを透析クリニックで働いている臨床医に示し、応答して、アラームまたはアラートを発生することである。アラームまたはアラートに受けた臨床医は、より重度の代償不全を、それが実際に発生する前に未然に防ぐために、患者の透析治療に介入して修正することができる。
【0040】
図2は、透析患者における代償不全を予測するために、
図1に示すデータ分析エンジン102上で働くことができるアルゴリズム200の流れ図を示す。アルゴリズム200は、下に要約される。
【0041】
段階202:データ分析エンジンは、センサから以下の時間依存性データを受信する:生理学的波形(250Hz毎に試料採取された、ECG、TBI、PPG、PCG)、生命徴候(1~15分毎に波形から算出された、HR、RR、TEMP、SpO2、BP)、および血行力学的パラメータ(1~15分毎に算出された、TFC、SV、CO)。生命徴候および血行力学的パラメータは、上で言及された計算アルゴリズムを使用して、センサ上で直接算出される。
【0042】
段階204:データ分析エンジンは、段階202からのデータの1つまたは複数の変化(ΔC)を算出し、ΔCの値を、第1原理算出、医学知識、および/または従来の臨床試験を使用して経験的に決められた特定の閾値(ΔT)と比較する。標準的には、ΔTの値は、以下のような状態につながる有意な変化に対応する:1)低血圧および高血圧につながるBPの急速な変化、2)低酸素血症、3)リズム障害、4)筋痙攣につながる脱水症、5)冷え、6)嘔気、7)効果のない治療につながる姿勢変化、8)発作、および9)急速な失血(内部または外部)。
【0043】
段階206:ΔCを、段階204の間に採取された1つまたは複数のパラメータに関してΔTと比較し、それぞれの事例で、ΔCがΔTを超えるかどうかを決める。
【0044】
段階208:ΔCが、1つまたは複数のパラメータに関してΔTを超える場合、アラーム(例えば音声的、視覚的アラーム)を用いて臨床医に警告し、この時点で、臨床医は、患者の限外濾過速度を修正することができる。
【0045】
段階210:ΔCが、いかなるパラメータに関してもΔTを超えない場合、既存の限外濾過速度を用いて透析治療を続ける。
【0046】
下の表1は、センサによって測定された生命徴候および血行力学的パラメータごとのΔT値の例を記載する。
【0047】
【0048】
他の実施形態では、時間依存性波形の特定の特性は、応答して、アラームまたはアラートを誘発することができるデータ分析エンジンによって処理されることができる。例えば、
図13A、
図13Bの波形で示すように、透析の間、センサによって測定されたECG波形は、正常洞調律(
図13A)から、心室頻拍(
図13B)の状態に変化していることを示すことができる。あまり重症ではない症例では、波形内での、1組の心拍誘発パルスの振幅、または個別のパルスの成分(例えば心拍誘発パルスまたはその微分係数)の単純な変化が、アラームまたはアラートを誘発することができる。さらに他の実施形態では、波形の中の上記の成分は、その変化がアラームを誘発することができる別のパラメータ(例えば生理学的パラメータ)と相関していることができる。
【0049】
2.センサ
本明細書に記載するセンサは、ECG、TBI、PPG、およびPCG波形を測定すること、およびこれらの波形から、HR、HRV、RR、SpO2、BP、TFC、SV、およびCO値を決めることと一緒に、上記の同時係属特許出願に詳述されており、同特許出願の内容は、すでに参考文献として本明細書に援用されている。
【0050】
図3に示すように、本発明によるセンサ10は、血液透析の間、患者を監視するように設計される。これまで示したように、そして後でさらに詳細に説明するように、センサ10は、数値および波形データを測定し、次いで、この情報を透析クリニック内の中央ステーションおよびデータ分析エンジンに無線で送信する。センサ10は、標準的には、それが、ネックレスまたは他の頸部装飾宝石と同様に、患者の胸骨に寄り掛かるように、患者の頸部28の周囲に装着される。センサ10は、検知部分30および固定部材32(または図示していない別の実施形態では、複数の固定部材)を特徴とする。図示するように、固定部材32は、検知部分30の第1の端部34から延びて、検知部分30の第2の端部36に結合する。固定部材32は、患者の頸部28の後ろを通れるように、かつ、検知部分30の裏側の患者に面する面に取り付けられた検知電極が患者の胸部上の適切な位置に取り付けられるよう検知部分30を適切な位置に保持するのに十分な長さを有する。このことは、検知部分30が、個々の患者上で行われる測定ごとに、ほぼ同じ位置に置かれること、およびこの後でより十分に説明されるように、それが、関連性のある生体電気信号を得るのに適切な位置に保持されることを確実にする。さらに、固定部材32は、センサ10が装着されるとき、それが、目立たずに患者の頸部28の後方に配置されるように、通常、固定部材32の中央に(長さ方向に言えば)配置される電池区画38の中に電池を収容する。
【0051】
他の、図示していない実施形態では、固定部材は、中間部で分割されることができ、可撓性、さらに保形性を有する「分岐部」が、医師の聴診器によく似て、患者の頸部28後方を通るけれども、連結していないように、検知部分30の第1および第2の端部34、36から延びている場合もある。その場合、電池区画は、分岐部の一方に、または代替的に、センサ10の検知部分30の中に設置されることができる。さらに別の図示していない実施形態では、固定部材は、含まれていない可能性もあり、その場合、電極を患者の体に付着させることだけを利用して、センサを定位置に保持している。
【0052】
さらに他の実施形態では、センサ10は、固定部材32がなくてもよく、検知部分30だけを含むことがある。この場合、システムは、内部電池を有し、
図3に示すネックレスではなく、『パッチ』に似ている。パッチ(および対応する検知部分)は、いくつかの異なる幾何学形状を特徴とすることができる。例えば、それは、大きいバンドエイド(登録商標)のような形状をしていてもよく、または細長い『競技場』形状を有していてもよい。パッチは、
図3に示されるように、患者の胸部の中央付近で、または胸部の左側もしくは右側で動作してもよい。
【0053】
検知部分30は、標準的には、2つ以上のセクションまたはセグメント、例えば中央セグメント42および2つの外側セグメント40a、40bで構築される。電極パッチは、後述するように、2つの外側セグメント40aおよび40bの裏側に付着する。セグメントは、さらに可撓性ハウジング46および48の中に包み込まれる可撓性コネクタセグメント(図示せず)を用いて相互に連結される。可撓性コネクタセグメントは、通常、高分子材料、例えばDuPont社から入手可能なKapton(登録商標)可撓性プリント回路から作られる。このような材料は、基本的に、通常銅から作られる、1つまたは複数の薄い導電部材を包み込む、可撓性を有する高分子フィルムである。セグメント40a、40b、および42のそれぞれは、この後でさらに詳細に記載される別々の電気回路構成要素を用いて装入された硬質回路基板(図示せず)をそれぞれ含む。硬質回路基板は、それぞれが、20個の導電性部材を含む可撓性コネクタセグメントを介して相互に連結する。
【0054】
硬質回路基板は、硬質保護ハウジングセグメント53a、53b、55の内側にそれぞれ包み込まれ、可撓性コネクタセグメントは、可撓性コネクタセグメント46および48の中に包み込まれる。保護ハウジングセグメント53a、53b、および55は、さらに標準的には、センサ10の全体的な審美的に好ましい外観に貢献する不透明プラスチックから作られる。好適なことに、保護ハウジングセグメント53a、53b、55の反対側の端部にそれぞれきちんとはまるように設計されたゴムブートとして形成され得るコネクタセグメント46および48は、標準的には、シリコーンゴムなどの軟らかい可撓性材料から作られる。一般的に言って、検知部分30のこのような構成は、それらが患者の胸部に付着される前に、検知電極を適切な位置に保持するのに役立ち、一方で、検知部分30が、それが当たっている生理学的領域の異なる曲率に従うことを可能にする。
【0055】
最上部の、中央ハウジングセグメント55の前方に面する面上に位置する透明または半透明のプラスチック窓57は、患者12用の単純なユーザインターフェースとして機能する内在LEDを被覆する。例えば、LEDは、可視スペクトルの異なる色を放射することができ、センサ10が、オン時、測定時、充電時、低消費電力運転時、測定完了時などを示すために、異なる頻度でそれらを点滅させることができる。音響的な『ブザー』および/または振動構成要素が、センサに追加的に含まれる。LED、ブザー、および振動構成要素は、協働して、上記のように誘発されて、アラームの場合に臨床医に警告することができる。
【0056】
図4Aおよび
図4Bに示すように、裏側に面する面101上に、センサ10は、反射モード光学素子を使用して働くパルス酸素測定センサ100と、弁が患者の心臓の中で閉じるときに生じた音を測定する圧電型マイクロホンを特徴とする音響センサ103とを含む。パルス酸素測定センサ100および音響センサ103は、後で詳述するように、測定の間、PPG波形およびPCG波形をそれぞれ発生する。そのような波形は、SpO2、BP、SV、CO、および他のパラメータを決めるために、さらに処理され得る。パルス酸素測定センサ100および音響センサ103は、ECG回路およびインピーダンス回路と関連付けられた、検知105a、b電極、および駆動107a、b電極用の磁気インターフェースの間で、対向するハウジングセグメント(
図3の53aおよび53b)の背面上に配置される。測定の間、
図4Bに示すように、2つの離れた電極パッチ109a、109bの中に埋め込まれたステンレス鋼ポストは、検知105a、b電極と、駆動107a、b電極用の磁気インターフェースにつながる。センサが装着されると、内在検知素子(パルス酸素測定センサ100および音響センサ103)が、患者の皮膚に直接接触することができるように、各電極パッチ109a、109bは、開口(すなわち切抜き丸穴)を含む。次いで、後で詳述するように、測定が行われる。
【0057】
本明細書に援用されてきた上記の特許出願は、検知電極および駆動電極が、ECG波形およびTBI波形を測定する方法について記載している。要約すると駆動電極は、患者の胸部に高頻度、低アンペア電流を送り込む。検知電極は、送り込まれた電流によって引き起こされたインピーダンスを示す電圧を検知する。電圧は、2つの異なる波形に関する信号成分にフィルタをかけて増幅するために、アナログフィルタおよび差動増幅器を特徴とする一連の電気回路を通過する。これは、当技術で知られており、特許出願に記載されている技術を用いて行われる。信号成分の1つは、ECG波形を示す。別の成分は、TBI波形を示す。TBI波形は、異なるインピーダンス波形を決めるために、後で詳述するように、さらにフィルタをかけられて、処理される低周波成分および高周波成分を有する。
【0058】
パルス酸素測定センサの例は、米国特許第8,437,824号に記載されており、同特許の内容全体を参考文献として本明細書に援用する。パルス酸素測定センサ100は、当技術では一般的に知られているように、交互の、パルス状の様式で、赤および赤外線LEDを動かし、感光性光検出器ダイオードを制御する。それは、反射モードで動作するように構成されており、LEDおよび感光性ダイオードが、同じ方向からの放射線を受容するように、配置されていることを意味している。それは、SpO2の値を発生させるために、患者の胸部の毛細血管床からのPPG波形を測定する。これは、LEDおよび感光性ダイオードが、相互に向こう側に配置されている従来型のパルス酸素測定センサとは対照的であり、その中に体の部分(例えば、指または耳垂)が嵌る空間が、LEDと感光性ダイオードとの間に位置している。したがって、パルス酸素測定回路は、感光性ダイオードに到着する前に、毛細血管床(すなわち胸部の中の)から反射されたダイオードによって発せられる放射線を検出して、測定する。
【0059】
音響センサ103は、標準的には、マイクロホン(例えば圧電型マイクロホン)および増幅器システムを含み、各心拍の間に房室弁および半月弁が閉じることで主に生じる心音を示すPCG波形を検出するように設計される。あるいは、感応性加速度計が、患者の内在する鼓動している心臓によって動かされる胸部の小規模の地震性の運動を測定するために、音響センサ103の代わりに使用されることができる。このような波形は、振動性心臓図(SCG:seismocardiogram)と呼ばれ、PCG波形の代わりに(またはそれと合せて)使用され得る。
【0060】
パルス酸素測定センサ100および音響センサ103の両方が、総合的センサ10に組み込まれているので、それらは、「ケーブルクラッタ」をなくして、(パルス酸素計測法測定が、標準的には行われる)患者の手および指を他の目的のために自由にする効果的な様式で信号を測定するために、楽に患者の胸部に接続することができる。この構成の追加的な便益は、PPG波形を歪めて、SpO2の誤った値が報告される可能性がある運動アーチファクトの減少である。運動アーチファクトのこの減少は、日常的な活動の間、胸部は、標準的には、手および指より動きが少ないという事実に起因しており、その後のアーチファクト減少は、患者から測定されるパラメータの正確さを最終的に改善する。
【0061】
図5A~
図5Eは、本発明によるセンサによって測定されたECG、TBI、PPG、およびPCGの波形の時間依存性プロットを、センサ上で動作している特徴検出ファームウェアによって決められる波形の基準点を示す『×』記号を加えて示している。以下で詳細に説明するように、センサは、4つの波形全てを集合的に処理することによって、生理学的信号の群を測定する。
【0062】
ESRD患者は、血液透析治療の間に高血圧および(より一般的には)低血圧の状態になりやすい可能性があるので、SYSおよびDIAを含むBPは、特にESRD患者に関連性がある。したがって、センサを用いたBPの測定について、本明細書でさらに詳細に検討する。センサは、
図5A~
図5Eに示す生理学的波形を同時にトラッキングすることによって、BPを監視する。
図5Aに示すECG波形は、各心臓周期の開始に略式で印をつける心拍誘発QRS群を含む。その次は、心音を示すPCG波形-音響センサを用いて取り込まれ、
図5Bに示される-である。その次は、内在毛細管の容積変化を監視するPPG波形-パルス酸素測定センサを用いて取り込まれ、
図5Cに示される-である。TBI波形は、DC(Z
0)成分およびAC(ΔZ)成分を含み、Z
0は、内在電気インピーダンスを測定することによって胸部の中の流体の量を検知して、波形の基線を表し、ΔZは、胸郭血管系の血流量をトラックして、(
図5Dに示すように)波形のパルス状成分を表す。
【0063】
QRS群は、各心拍を詳細に描写するために、基準マーカを提供する。センサの中で動作する特徴検出アルゴリズムは、他の波形のそれぞれの上のQRS群と基準マーカとの間の時間間隔を算出する。例えば、PPG波形のパルスの『足』とQRS群を隔てている時間は、PATと呼ばれる。PATは、BPおよび全身血管抵抗に関係する。測定の間、センサは、4つの生理学的波形(総称的に以下『INT』と呼ぶ)から抽出されたVTTおよび他の時間依存性パラメータに加えて、PATを算出する。さらに、センサは、波形(『AMP』)のいくつかの中の、心拍誘発パルスの振幅についての情報を算出する。例えば、TBI波形(dZ/dt
max)のAC成分の微分係数でのパルスの振幅は、
図5Eに示すように、胸郭動脈の容積測定膨張および前進血流量を示し、心臓のSYSおよび収縮性に関係する。
【0064】
SYSおよびDIAを算出するための一般的なモデルは、4つの生理学的波形からINT値およびAMP値の群を測定する必要がある。
図6A~
図6Eは、例えば、BPと相関する可能性があるINT値の群を示す。これらは、以下を含む:1)ECG QRSとS1心音の開始を隔てている時間である図、6Aに示すEMAT、2)TBI波形とPPG波形におけるパルスの開始を隔てている時間であるVTT
1(
図6B)、3)S1心音の開始とPPG波形におけるパルスの開始を隔てている時間であるVTT
3(
図6C)、4)ECG QRSとPPG波形におけるパルスの開始を隔てている時間であるPAT(
図6D)、5)S1心音の開始とTBI波形におけるパルスの開始を隔てている時間であるVTT
2(
図6E)、および6)S1心音とS2心音を隔てている時間であるLVET(
図6F)。上記式3から注目すると、LVETは、標準的には、TBI波形の心臓パルスから直接的に、またはワイズラー回帰を用いて患者の現在のHRから推定される。これらの推定のエラーは、SVを算出する際のエラーにつながる可能性がある。S1およびS2から直接的にLVETを決めることで、このようなエラーを減らすことができ、したがって算出されたSVの精度を向上させることができる。
【0065】
これらのパラメータが決まれば、次いで、センサ上のファームウェアは、カフを必要とすることなくBP値を決めるために、人口統計学的情報(例えば年齢および性)、および
図7Aおよび7Bを参照しながら以下に記載される患者特有の較正の間に測定される情報と一緒に、それらをまとめて処理する。下記の式5は、例えば、
図6A~
図6Fに示すパラメータからBPを決めるためのアルゴリズム(例えば式)の1つの例を示す。式では、係数a~fは、較正の間に決められる。
【数3】
【0066】
これは、例えば、血液透析の間、BP値(SYSおよびDIA)を準継続的様式(例えば毎分など)で監視することを可能にし、それによって、高血圧および低血圧の状態への急速な偏倚を検知することが可能になる。
【0067】
本発明によるセンサは、標準的には、3つの時間依存性運動波形(x軸、y軸、およびz軸に沿った)およびTEMP値をそれぞれ測定するために、3軸デジタル加速度計および温度センサ(具体的には特定されない)をさらに含む。
【0068】
3.1回拍出量の測定
本発明によれば、SVおよび他の生理学的パラメータ(例えばBP、SpO2、RR、CO)を算出するためのアルゴリズムは、上述した同時係属特許出願にさらに詳細に記載されており、同特許出願の内容は、すでに参考文献として本明細書に援用されている。その中に記載されているアルゴリズムは、
図6に示すように、時間依存性TBI波形およびPCG波形をまとめて処理することによって改善され得る。図は、これらの波形に関して単一の心拍によって誘発された『パルス』のプロットを示す。SVを測定するために、センサ内のマイクロプロセッサは、まずPCG波形を、具体的にはその中のS1心音とS2心音との間の時間的遅延(
図6Fに示すように)を処理して、LVETを決め、次いで、上で参照した特許出願に記載されるように、それをSV式のさまざまな形で使用して、SVを決める。一旦決まれば、SVは、さらに処理されて、PPを決め、次いで、それがさらに処理されて、SYSおよびDIAを決める。本発明は、SVをCOに変換するための、およびS1およびS2を処理して患者の心機能を決めるための2次アルゴリズムをさらに含む。
【0069】
代替実施形態では、本発明は、TBI波形の中の心拍誘発パルスの信号対雑音比を改善するのに、『ビートスタッキング』と呼ばれる信号処理技術を用いることを含んでいてもよい。ビートスタッキングによって、平均パルス-Z(t)-は、ECG波形の中の対応するQRS群を分析することによって詳細に描写される、TBI波形からの多数(例えば7つ)の連続的パルスから算出されて、次いで、まとめて平均化される。Z(t)の微分係数-dZ(t)/dt-は、8試料ウィンドウ上で算出される。Z(t)の最大値が、算出されて、[dZ(t)/dt]maxの箇所用の境界点として使用される。このパラメータは、上で説明したように、SV式で直接的に使用される。
【0070】
4.血圧測定を較正する
透析の間にセンサによって行われたBPの測定は、カフベースシステムを用いて較正されなければならない。
図7Aおよび
図7Bに図示される好適な手法は、カフベースのオシロメトリック方式測定を特徴とする『BP較正デバイス』を使用する。BP較正デバイスは、標準的には、血液透析で使用される機械の中に直接含まれる。あるいは、それは、透析装置から離れた市販のデバイスの中に含まれる場合もあり得る。較正は、標準的には、各透析セッションの開始時に実行される。
図7Aおよび
図7Bに示すように、それは、患者12の胸部上に配置されるセンサ10と、患者の手首または前腕に付着し、センサのベースに直接付着し、
図4Bに示される2部分電極と同一である第3の使い捨てパッチ電極17とを必要とする。較正時、第3の電極17は、細径ケーブル19(長さ約3フィート)を介してセンサのベースに接続される。BP較正デバイスと関連付けられたBPカフ21は、第3の電極と同じ腕上に置かれる。
【0071】
ユーザ(患者または臨床医)が、タブレット型コンピュータゲートウェイ(図示せず)のユーザインターフェース上の『較正』と標示されたボタンを押すと、較正は、始まる。ユーザインターフェースは、患者に対応する特定の生体測定パラメータ(例えば年齢、性)の入力を求め、次いで、ユーザに、BP較正デバイスを用いてオシロメトリック方式のBP測定を開始することを促す。このプロセスは、ゲートウェイとBP較正デバイスとの間にブルートゥース(登録商標)接続を確立する。次いで、センサは、患者の胸部からPCG波形およびPPG波形と、患者の手首/前腕上の第3の電極と胸部に接着された電極の1つとの間のICG波形およびECG波形とを測定し始める。ブルートゥース(登録商標)を通じて、BP較正デバイスは、DC(『PRES-DC』)およびAC(『PRES-AC』)圧力波形をセンサに伝送する。これらはそれぞれ、カフ21が、測定の間患者の上腕動脈、およびオシロメトリック方式のエンベロープに加える背景圧を表す。センサ10内のアルゴリズムは、4つの波形をBP較正デバイスによって測定されたPRES-DC波形およびPRES-AC波形と同期させる。オシロメトリック方式の測定が完了すると、BP較正デバイスは、さらに、初期のBP値(SYS0、DIA0、およびMAP0)をセンサに伝送する。
【0072】
次いで、センサ内のファームウェアは、較正の第1の成分、INT、AMPとBPの変化との間の患者特有の関係を決めるために、計算モデルを用いて波形をまとめて処理する。これらは、式5で先に示した係数a~fによって示される。較正の第2の成分は、SYS0、DIA0、およびMAP0である。これらの2つの成分はまとめて、全透析セッションの間有効である較正を表す。センサが、較正を算出すると、それは、ブルートゥース(登録商標)を通じてゲートウェイに通知し、ゲートウェイは、第3の電極およびBPカフを除去するように患者に指示する。次いで、BPのカフなし測定を、センサを用いて開始することができる。
【0073】
5.透析セッション後のセンサを充電し、情報をダウンロードする
図8Aおよび
図8Bは、充電ステーション211に取り付けられたセンサ210の群を示す。充電ステーションは、例えば、透析セッションの間にセンサを充電するために、透析クリニックで使用される場合がある。各センサ210は、上記のように、その固定部材または『ケーブル』219の中に設置される再充電可能なLiイオン電池217によって電力を供給される。測定の間、電池217が、患者の頸部の後ろに隠されるように、ケーブル219は、患者の頸部の周囲で輪になっている。センサ210は、クラスプ221が、センサのベース223上の対合する磁気インターフェース218に嵌め込まれると、電源がオンになる。この動作は、センサ内の電源回路を完成させ、センサ電源をオンにする。次いで、測定が始まる。透析セッションの前または後、多数のセンサ210が、センサのLiイオン電池217の充電を必要とする可能性がある。多数のポート212を含む充電ステーション211は、センサ210につながって、電池217を充電する。充電ステーション211は、プラグを通して主コンセントに差し込まれる。充電ステーション211上の各ポート212は、各センサ210のクラスプ221(および磁気インターフェース218)と嵌合するように設計された磁石およびプラスチック部材を含む。クラスプ221が充電ステーション211に接続されるとき、ケーブル219の電線は、各センサの電池217を対応ポート212に接続する。次いで、主コンセントからの電力が、電池217を充電する。
【0074】
図8Bに示すように、充電プロセスの間、透析を受けている1組の患者から採取されたデータは、各センサから自動的にダウンロードされることができ、次いで、後続分析のために、中央ゲートウェイまたはクラウドベースシステムに転送され得る。例えば、充電の間、内蔵ブルートゥース(登録商標)送受信機が、各センサ内の対応するブルートゥース(登録商標)送受信機の有効距離範囲内にあるように、タブレット型コンピュータゲートウェイ221は、充電ステーションに近接して置かれることができる。タブレット型コンピュータゲートウェイ221は、各センサの中の各ブルートゥース(登録商標)送受信機を自動的に検出し、それと組になり、透析の間に採取され、センサ内の内部記憶装置上に記憶されたデータをダウンロードするカスタマイズされたユーザインターフェース222を特徴とする、ソフトウェアプログラムを実行することができる。データが、あるセンサから採取されると、タブレット型コンピュータゲートウェイは、次のセンサを『見つけ出し』、ダウンロードプロセスを繰り返す。データが各センサからダウンロードされるまで、これは続けられる。次いで、タブレット型コンピュータゲートウェイ221は、ダウンロードされたデータを、後続分析のために2次コンピュータシステム、例えばウェブベースコンピュータシステムに転送する。
【0075】
6.臨床結果
血液透析を受けている患者に関する臨床研究は、本明細書に記載するセンサを使用して実行され、上記のパラメータのいくつか、および特にTFCを測定する能力を明らかに立証する。研究の間、センサ(以下『試験』デバイスと呼ぶ)は、上記のようにTFCを測定し、Z
0(TFCの逆性に関係するパラメータ)の測定は、第2の『参照』デバイス、Cardiodynamics BioZを用いて行われた。
図9Aおよび
図9Bは、これらの2つのデバイスに関する電極位置を示す。
図9Bの円300は、BioZの電極位置を示し、Z
0の測定値を示すことは、胸郭空洞全体に関するインピーダンス値を表している。血液、骨、および胸郭流体などの生理学的成分は、その値に関与している。対照的に、
図9Aの円301によって示されるTFCの試験デバイスの測定値は、胸骨の近くの、局部的で比較的小さい領域からのインピーダンス値を表す。このため、患者に配置されるとき、TFCの試験デバイスの測定および流体変化に対するその関連付けられる感応性は、基準デバイスによって行われた対応する測定からの値より低い値を有すると予想される。すべての測定は、血液透析を受けている患者で行われた。
【0076】
基準デバイスでの8個と比べて、試験デバイスは、4個の電極だけを使用する。基準デバイスでの4個の電極と比べて、試験デバイスの2つの電極は、生体インピーダンス測定用の電流を送り込む。試験デバイスおよび基準デバイスは両方とも、高周波、低アンペアの電流を送り込み、試験デバイスでは、基準デバイスでの約70KHzおよび4mAと比べて、周波数は、100KHzであり、アンペア数は、約6mAである。基準デバイスのように、試験デバイスは、AC波形およびDC波形の両方を測定し、そのTFC値はDC波形の30秒の平均を表す。
【0077】
表2は、第1のコホートの中の各被検者から採取したデータをまとめており、以下を含む。1)試験デバイスと基準デバイスとの間のBIASおよびSTDEV、2)試験デバイスおよび基準デバイスによって行われた測定間の相関、3)試験/基準デバイスによって行われた測定と透析の間に除去された流体の量との間の相関、および4)試験デバイスおよび基準デバイスの両方によって行われた測定の感応性(すなわちオーム/Lの単位の勾配)。表の最後の列は、すべてのこれらの値の平均を示す。ここでは、感応性は、透析の間、被検者の中へ処理された静脈内生理食塩水を対処しており、この値は、標準的には、500mLであった。
【0078】
【0079】
表2に示すデータから、試験デバイス(1.68オーム/L)および基準デバイス(2.02オーム/L)の両方に関する平均感応性は、混合効果統計モデルを用いて算出された感応性(それぞれ1.69オーム/Lおよび1.88オーム/L)に類似していることが分る。
【0080】
【0081】
上記の4人の被検者からのデータは、それらのインピーダンス値と除去された流体との関係の仕方が本質的に異なるために示されている。例えば、被検者314に関するインピーダンス値(
図10A、
図10B)は、除去された流体の量が増えるにつれて徐々に離れており、一方で、被検者322からのそれらの値(
図10C、
図10D)は、徐々に近づいている。同様に、被検者331に関するインピーダンス値(
図11A、
図11B)は、記録された最高値のいくつかであり、一方で、被検者302に関するそれらの値(
図11C、
図11D)は、最低値のいくつかである。すべての場合において、流体依存性プロットは、試験デバイスおよび基準デバイスの両方からのインピーダンス値と除去された流体の量との間の強い比例関係を示している。相関プロットは、さらに、2つのデバイスによって測定された値の間には強い比例関係が存在することを示している。
【0082】
重要なことに、これらのデータは、胸骨上の比較的小さい領域(例えば
図9Aの円301)で試験デバイスによって行われる生体インピーダンス測定は、胸郭空洞の全体(例えば
図9Aの円300)にわたる患者の流体変動に対する感応性を有することを示すように明らかに見える。予想通りに、この領域から測定された生体インピーダンス値は、胸郭空洞全体から測定された値(平均1.88オーム/L)と比べて、より低い全体的な値(9.16オームの平均BIAS)および流体変化に対する感応性(平均1.69オーム/L)を有する。これは、胸骨からの測定が、比較的小さい生理学的区域の試料を、それに応じた少ない流体体積で採取するからである。しかしながら、表2に示すように、流体除去期間の間、被検者の100%で、試験デバイスと基準デバイスとの間に明確な比例関係が観察された。同様に、これらの被検者の100%で、試験デバイスによって行われた測定は、明確な比例関係および透析の間に除去された流体の量に対する感応性を示した。
【0083】
上記の研究では、ESRDだけを患っている被検者(すなわち合計23人の被検者のコホート1A)から測定された平均値が、ESRDおよびCHFの両方を患っている被検者(合計10人のコホート1B)と比較された。下記表3は、これらの結果をまとめている。
【0084】
【0085】
表から明らかなように、CHFおよびESRDを両方患っている被検者は、ESRDだけを患っている被験者よりも、試験デバイスおよび測定デバイスの間により大きい平均BIAS、ならびに試験デバイスおよび基準デバイスの両方に関するより大きい感応性を示している。これは、CHFについてのこれらの被検者の診断におそらく関係しており、それは、彼らが、標準的にはより多くの量の、体全体にわたって分散される胸郭流体を有することを意味している。しかしながら、表は、試験デバイスの全体的な測定性能が、本質的には2つのコホートで同じであることを示している。
【0086】
臨床研究の結果を使用して、試験デバイスのTFC値と基準デバイスのZ0値との間の関係は、反復測定モデルで評価された。この分析を実行するために、反復測定モデル(連続した時点の間の、自動回帰AR(1)期間との相関を明らかにする)は、データを、以下のモデル:モデルA-被検者ごとに別個の勾配およびモデルB-すべての被検者で共通の勾配、と適合させるのに使用された。次いで、2つのモデルに関する結果は、AICを使用して2つのモデルの適合性と比較され、これは、所与の1組のデータに関する統計モデルの相対的な品質の測定である。結果は、以下の通りである。
モデルA(別個の勾配):AIC=1307.3
モデルB(同じ勾配):AIC=1400.9
【0087】
これは、別個の、被検者特有の勾配が、胸郭空洞全体にわたるインピーダンスの変化(例えば基準デバイスを用いて測定される)を、胸骨の単離した領域のインピーダンスの変化(例えば試験デバイスを用いて測定される)と比較するのに使用されなければならないことを示す。
【0088】
さらにデータを分析するために、類似の反復測定モデルが、試験デバイスのTFC値と除去された流体(ΔF)との間の関係を調査するのに使用された。この分析は、上で説明したものと同様に実施された。具体的には、試験デバイスによって測定されたTFC値は、1)除去された流体、2)被検者特有のy切片期間を使用すること、および3)時間的に順次的な測定の依存性を説明する自己相関期間を使用することの線形関数としてモデル化された。次いで、以下のモデルが、勾配の同一性を試験するために、すべての被検者に対応するデータを適合させるのに使用された:モデルA-被検者ごとに別個の勾配、およびモデルB-すべての被検者で共通の勾配。上記の分析と同様に、最小AICを備えたモデルが、最善の適合モデルとして選ばれた。この分析に関する結果を下に示す。
モデルA(別個の勾配):AIC=1636.0
モデルB(同じ勾配):AIC=1241.7
【0089】
このことは、単一の(すなわち共通の)勾配は、胸骨の単離した領域における流体の変化を、その同じ領域からのインピーダンスの変化(例えば、試験デバイスを用いて測定された)と比較するのに使用され得ることを示す。より具体的には、モデルBは、各被検者は、一意的なTFC値から(時間0に)始まること、および除去された流体の1リットルごとに、TFC値は、ほぼ1.5オーム、すなわち1.5オーム/Lの感応性ずつ増えることになることを予測する。このモデルは、透析時間の間に各被検者に入れられる静脈生理食塩水(500 mL)を考慮していない。これが考慮される場合、感応性は1.69オーム/Lに増える。これは、表2で上述された平均感応性(1.68オーム/L)とほぼ一致する。
【0090】
さらに上記のことを調査するために、試験(TFC)デバイスおよび基準(Z0)デバイスの両方に関するインピーダンスのパーセント変化が、調査された。ここでは、インピーダンスのパーセント変化は、最初に、臨床研究の間に採取されたすべての被検者特有のデータをプールし、次いで、200mLの流体が除去される毎にTFCおよびZ0の両方の平均値を決めることで算出された。パーセント変化は、透析が始まる前にインピーダンスの平均値で割られたこれらの200mL増分でのインピーダンスの平均値であった。この算出では、3Lを超える流体が除去されたのは、ほんのわずかな被検者であった。したがって、この水準を上回るTFCおよびZ0の平均値は、ほんのわずかな被検者から採取されたデータを反映しており、他方で、この水準を下回る平均値は、比較的多数の被検者から採取されたデータを反映している。例えば、4Lの流体が除去されたときのインピーダンス値は、ただ2つの試料の平均値であるが、一方で、2L除去されたときの平均値は、23個の試料の平均値である。
【0091】
図12は、上記のように算出され、除去された流体に応じてプロットされた、TFCおよびZ
0値のパーセント変化を示す。曲線は、ほとんど同一の軌道を示し、透析患者に関して、胸骨に近い比較的に単離した領域(すなわちTFC)から測定された流体のパーセント変化は、胸腔全体(すなわちZ
0)から測定されたものとほとんど同一であることを表している。上記のように、高体積の流体が除去されたときの比較的少数の試料が、3Lを上回るデータにおける分散を説明することができる。
【0092】
図12からのパーセント変化のTFC値およびZ
0値は、標準相関プロットを直接的に使用して比較された。プロットは、2つのデータセット(r
2=0.88、r=0.94)と統一に近い勾配(0.91)との間に明確な一致を示しており、ここでも、胸骨から測定された流体のパーセント変化は、胸郭空洞全体から測定されたものとほとんど同一であるという主張を立証している。
【0093】
本明細書に記載されるようにセンサを使用することで、TFC以外のパラメータは、血液透析を受けている患者から検出されて、患者が代償不全へ向かう経過の特性を示すのに使用されることができる。例えば、
図13A、
図13Bに示すように、センサによって測定されたECG波形は、正常洞調律(
図13A)、または対照的に、心室頻拍などの異常な洞調律(
図13B)を示す場合がある。データ分析エンジン上で動いているアルゴリズムは、ECG波形を分析して、これらの偏倚を検出し、次いで、アラーム/アラートを使用して、臨床医に通知することができる。これは、臨床医に透析治療を中断させることができる。
【0094】
センサによって生成されたデータは、その上、他の透析中の状態を示すことができる。これらは、1)低血圧および高血圧につながるBPの急速な変化、2)低酸素血症、3)リズム障害、4)筋痙攣につながる脱水症、5)冷え、6)嘔気、7)効果のない治療につながる姿勢変化、8)発作、ならびに9)急速な失血(内部または外部の)を含む。
【0095】
他の実施形態では、センサによって測定された多数の生理学的パラメータ(例えばTFC、BP、SV)は、単一の『性能指数』または『インデックス』に一括して扱われ、透析を受けている患者の特性を示すのに使用され得る。
【0096】
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の中に含まれるとみなされる。