(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/566 20210101AFI20240809BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20240809BHJP
H01M 50/567 20210101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M50/566
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/533
H01M50/553
H01M50/567
(21)【出願番号】P 2022136078
(22)【出願日】2022-08-29
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】原 有輝
(72)【発明者】
【氏名】山元 翔太
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朋也
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125491(JP,A)
【文献】特開2022-049729(JP,A)
【文献】特開2022-048450(JP,A)
【文献】特開2016-110859(JP,A)
【文献】特開2015-153521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を収容するケースと、を備える蓄電デバイスであって、
前記ケースは、
開口を有し、前記電極体を収容するケース本体と、
前記ケース本体の前記開口を閉塞する蓋体であって、当該蓋体を厚み方向に貫通する第1挿入孔を有する蓋体と、を備え、
前記蓄電デバイスは、
前記ケースの内部に位置し、前記電極体と電気的に接続する集電部材であって、第2挿入孔をなす孔周囲面を含む孔周囲部を有する集電部材と、
前記ケースの外部から内部に延びる柱状または筒状の端子挿入部を有する端子部材であって、前記第1挿入孔及び前記第2挿入孔に挿入された前記端子挿入部の一部が加締め変形した加締め変形部を有する端子部材と、
前記集電部材の前記孔周囲部と前記端子部材の前記加締め変形部とが溶接された溶接部と、
前記溶接部と前記孔周囲面と前記加締め変形部とによって囲まれた第1空間部であって、前記溶接部に隣接しつつ前記孔周囲面に沿って周方向に延びる第1空間部と、を備える
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記蓋体と前記端子部材と前記集電部材とは、一体となって蓋構造体を構成しており、
前記溶接部は、前記孔周囲部の全周にわたって形成されることなく、前記孔周囲部の周方向一部に形成されており、
前記孔周囲部と前記加締め変形部とが溶接されていない非溶接部は、前記孔周囲面と前記加締め変形部とが径方向に離間することによって前記蓋構造体の外部に開放された第2空間部を形成しており、
前記第1空間部は前記第2空間部に連通している
蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓋体の前記第1挿入孔及び前記集電部材の前記第2挿入孔に前記端子挿入部を挿入した状態で、前記端子挿入部の加締め予定部を加締め変形させて前記加締め変形部を形成することで、前記端子部材と前記集電部材と前記蓋体とが結合した蓋構造体を形成する加締め工程と、
前記蓋構造体について、前記孔周囲部の溶接予定部と前記加締め変形部の溶接予定部とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を備え、
前記加締め工程では、前記加締め変形部を形成すると共に、前記加締め変形部と前記孔周囲部とによって囲まれた空間部であって前記第1空間部を含む第3空間部を形成し、
前記第3空間部は、前記孔周囲部の前記溶接予定部及び前記加締め変形部の前記溶接予定部に対して、前記レーザ溶接工程においてレーザビームが照射される側とは反対側に隣接する空間部であり、
前記レーザ溶接工程では、前記孔周囲部の前記溶接予定部及び前記加締め変形部の前記溶接予定部が溶融した溶融部の一部が前記第3空間部に達するように前記レーザ溶接を行って、前記第1空間部に隣接する前記溶接部を形成する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記加締め工程では、前記加締め変形部を形成すると共に、前記孔周囲面に沿って周方向の一部に延びる前記第3空間部と、前記第3空間部に連通する第2空間部であって前記孔周囲面に沿って周方向の一部に延びる第2空間部とを形成し、
前記第2空間部は、前記孔周囲面と前記加締め変形部とが径方向に離間することによって前記蓋構造体の外部に開放された空間部であり、
前記蓋構造体の平面視で、前記第3空間部と前記第2空間部とは、前記孔周囲面の全周に沿った環状空間部をなしており、
前記レーザ溶接工程では、前記第2空間部を形成する前記孔周囲部及び前記加締め変形部にはレーザビームを照射することなく、前記第3空間部を形成する前記孔周囲部の前記溶接予定部及び前記加締め変形部の前記溶接予定部を溶融させて、前記孔周囲部の周方向一部に前記溶接部を形成する
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極体と、電極体を収容するケースと、を備える蓄電デバイスが開示されている。ケースは、開口を有し、電極体を収容するケース本体と、ケース本体の開口を閉塞する蓋体であって、当該蓋体を厚み方向に貫通する第1挿入孔を有する蓋体と、を備える。さらに、この蓄電デバイスは、ケースの内部に位置し、電極体と電気的に接続する集電部材であって、第2挿入孔をなす孔周囲面を含む孔周囲部を有する集電部材と、ケースの外部から内部に延びる柱状または筒状の端子挿入部を有する端子部材であって、第1挿入孔及び第2挿入孔に挿入された端子挿入部の一部が加締め変形した加締め変形部を有する端子部材と、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とが溶接された溶接部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の蓄電デバイスは、以下のようにして製造される。まず、加締め工程において、蓋体の第1挿入孔及び集電部材の第2挿入孔に端子挿入部を挿入した状態で、端子挿入部の加締め予定部を加締め変形させて加締め変形部を形成することで、端子部材と集電部材と蓋体とが結合した蓋構造体を形成する。次いで、レーザ溶接工程において、蓋構造体について、集電部材のうち孔周囲部の溶接予定部と端子部材のうち加締め変形部の溶接予定部とをレーザ溶接する。
【0005】
しかしながら、集電部材の孔周囲部の表面や端子部材の加締め変形部の表面には、オイルが付着していることがある。このような場合において、レーザ溶接工程において、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とをレーザ溶接すると、オイルが溶接熱によって気化することで、溶融部内でガスが発生する。このガスが、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とが溶接された溶接部内に残存することで、当該溶接部内にボイドが生じることがあった。これにより、溶接部の強度が低下すると共に、溶接部の導電性が低下する(従って、集電部材と端子部材との接続抵抗が大きくなる)ことがあった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部との溶接部内におけるボイドが低減された蓄電デバイス、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、電極体と、前記電極体を収容するケースと、を備える蓄電デバイスであって、前記ケースは、開口を有し、前記電極体を収容するケース本体と、前記ケース本体の前記開口を閉塞する蓋体であって、当該蓋体を厚み方向に貫通する第1挿入孔を有する蓋体と、を備え、前記蓄電デバイスは、前記ケースの内部に位置し、前記電極体と電気的に接続する集電部材であって、第2挿入孔をなす孔周囲面を含む孔周囲部を有する集電部材と、前記ケースの外部から内部に延びる柱状または筒状の端子挿入部を有する端子部材であって、前記第1挿入孔及び前記第2挿入孔に挿入された前記端子挿入部の一部が加締め変形した加締め変形部を有する端子部材と、前記集電部材の前記孔周囲部と前記端子部材の前記加締め変形部とが溶接された溶接部と、前記溶接部と前記孔周囲面と前記加締め変形部とによって囲まれた第1空間部であって、前記溶接部に隣接しつつ前記孔周囲面に沿って周方向に延びる第1空間部と、を備える蓄電デバイスである。
【0008】
この蓄電デバイスは、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とが溶接された溶接部を備える。さらに、この蓄電デバイスは、この溶接部と集電部材の孔周囲面と加締め変形部とによって囲まれた第1空間部を有する。この第1空間部は、前記溶接部に隣接しつつ孔周囲面に沿って周方向に延びている。このような蓄電デバイスは、溶接部内のボイドが低減された蓄電デバイスとなる。
【0009】
具体的には、この蓄電デバイスは、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とを溶接したときに、孔周囲部の溶接予定部と加締め変形部の溶接予定部とが溶融した溶融部が、第1空間部に接触した状態になったものである。このため、集電部材の孔周囲部や端子部材の加締め変形部の表面にオイルが付着しており、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とを溶接したときに、このオイルが溶接熱によって気化することで、溶融部内でガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を第1空間部に逃がすことができる。これにより、溶接部内に生じるボイドを低減することができるので、溶接部の強度を高めることができると共に、溶接部の導電性を高める(従って、集電部材と端子部材との接続抵抗を小さくする)ことができる。
【0010】
従って、このようにして製造された蓄電デバイスは、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部との溶接部内におけるボイドが低減された蓄電デバイスとなる。このような蓄電デバイスは、前記溶接部の強度が高く、且つ、前記溶接部の導電性が高くなる。
【0011】
(2)さらに、前記(1)の蓄電デバイスであって、前記蓋体と前記端子部材と前記集電部材とは、一体となって蓋構造体を構成しており、前記溶接部は、前記孔周囲部の全周にわたって形成されることなく、前記孔周囲部の周方向一部に形成されており、前記孔周囲部と前記加締め変形部とが溶接されていない非溶接部は、前記孔周囲面と前記加締め変形部とが径方向に離間することによって前記蓋構造体の外部に開放された第2空間部を形成しており、前記第1空間部は前記第2空間部に連通している蓄電デバイスとすると良い。
【0012】
この蓄電デバイスは、蓋体と端子部材と集電部材とが一体となった蓋構造体を有する。さらに、前記溶接部は、集電部材の孔周囲部の全周にわたって形成されることなく、孔周囲部の周方向一部に形成されている。すなわち、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とは全周溶接されていない。さらに、孔周囲部と加締め変形部とが溶接されていない非溶接部は、孔周囲部と加締め変形部とが径方向に離間することによって蓋構造体の外部に開放された第2空間部を形成している。この第2空間部は、前記第1空間部に連通している。従って、蓋構造体の平面視で、第1空間部と第2空間部とによって、孔周囲面に沿って周方向に延びる環状空間部を形成している。このような蓄電デバイスは、溶接部内のボイドがより一層低減された蓄電デバイスとなり得る。
【0013】
具体的には、前述のように、集電部材の孔周囲部と端子部材の加締め変形部とを溶接したときに溶融部内でガスが発生した場合、当該ガスの少なくとも一部を第1空間部に逃がすことができ、さらには、当該ガスを第1空間部に連通する第2空間部に逃がして、第2空間部から蓋構造体の外部に排出することができる。これにより、溶接部内に生じるボイドをより一層低減することができる。従って、このようにして製造された蓄電デバイスは、溶接部内のボイドがより一層低減された蓄電デバイスとなる。
【0014】
(3)本発明の他の態様は、前記(1)または(2)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記蓋体の前記第1挿入孔及び前記集電部材の前記第2挿入孔に前記端子挿入部を挿入した状態で、前記端子挿入部の加締め予定部を加締め変形させて前記加締め変形部を形成することで、前記端子部材と前記集電部材と前記蓋体とが結合した蓋構造体を形成する加締め工程と、前記蓋構造体について、前記孔周囲部の溶接予定部と前記加締め変形部の溶接予定部とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を備え、前記加締め工程では、前記加締め変形部を形成すると共に、前記加締め変形部と前記孔周囲部とによって囲まれた空間部であって前記第1空間部を含む第3空間部を形成し、前記第3空間部は、前記孔周囲部の前記溶接予定部及び前記加締め変形部の前記溶接予定部に対して、前記レーザ溶接工程においてレーザビームが照射される側とは反対側に隣接する空間部であり、前記レーザ溶接工程では、前記孔周囲部の前記溶接予定部及び前記加締め変形部の前記溶接予定部が溶融した溶融部の一部が前記第3空間部に達するように前記レーザ溶接を行って、前記第1空間部に隣接する前記溶接部を形成する蓄電デバイスの製造方法である。
【0015】
この製造方法では、加締め工程において、加締め変形部を形成すると共に、加締め変形部と孔周囲部とによって囲まれた第3空間部を形成する。この第3空間部は、前記第1空間部を含む空間部であり、孔周囲部の溶接予定部及び加締め変形部の溶接予定部に対して、後のレーザ溶接工程においてレーザビームが照射される側とは反対側に隣接している。そして、レーザ溶接工程において、孔周囲部の溶接予定部及び加締め変形部の溶接予定部が溶融した溶融部の一部が第3空間部に達するようにレーザ溶接を行って、第1空間部に隣接する溶接部を形成する。
【0016】
従って、レーザ溶接工程を開始するときに、集電部材の孔周囲部や端子部材の加締め変形部の表面にオイルが付着しており、孔周囲部と加締め変形部とをレーザ溶接したときに、このオイルが溶接熱によって気化することで溶融部内においてガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を第1空間部(第3空間部に含まれる空間部)に逃がすことができる。これにより、溶接部内に生じるボイドを低減することができるので、溶接部の強度を高めることができると共に、溶接部の導電性を高める(従って、集電部材と端子部材との接続抵抗を小さくする)ことができる。
【0017】
なお、第1空間部は、第3空間部と同一の空間部となる場合と、第3空間部の一部の空間部となる場合とがある。第1空間部が第3空間部の一部となる場合とは、レーザ溶接工程において、第3空間部の一部に前記溶融部の一部が進入することによって、第3空間部の一部が前記溶接部の一部によって埋まり、第3空間部の一部が消失した場合である。
【0018】
(4)さらに、前記(3)の蓄電デバイスの製造方法であって、前記加締め工程では、前記加締め変形部を形成すると共に、前記孔周囲面に沿って周方向の一部に延びる前記第3空間部と、前記第3空間部に連通する第2空間部であって前記孔周囲面に沿って周方向の一部に延びる第2空間部とを形成し、前記第2空間部は、前記孔周囲面と前記加締め変形部とが径方向に離間することによって前記蓋構造体の外部に開放された空間部であり、前記蓋構造体の平面視で、前記第3空間部と前記第2空間部とは、前記孔周囲面の全周に沿った環状空間部をなしており、前記レーザ溶接工程では、前記第2空間部を形成する前記孔周囲部及び前記加締め変形部にはレーザビームを照射することなく、前記第3空間部を形成する前記孔周囲部の前記溶接予定部及び前記加締め変形部の前記溶接予定部を溶融させて、前記孔周囲部の周方向一部に前記溶接部を形成する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0019】
この製造方法では、加締め工程において、加締め変形部を形成すると共に、孔周囲面に沿って周方向の一部に延びる第3空間部と、第3空間部に連通する第2空間部であって孔周囲面に沿って周方向の一部に延びる第2空間部と、を形成する。なお、第2空間部は、孔周囲面と加締め変形部とが径方向に離間することによって蓋構造体の外部に開放された空間部である。
【0020】
さらに、レーザ溶接工程では、孔周囲部及び加締め変形部のうち、第2空間部を形成する部位にはレーザビームを照射することなく、第3空間部を形成する部位の溶接予定部を溶融させて、孔周囲部の周方向一部に溶接部を形成する。なお、このレーザ溶接工程では、孔周囲部の溶接予定部及び加締め変形部の溶接予定部が溶融した溶融部の一部が第3空間部に達するようにレーザ溶接を行って、第1空間部に隣接する溶接部を形成する。
【0021】
従って、集電部材の孔周囲部や端子部材の加締め変形部の表面にオイルが付着しており、孔周囲部と加締め変形部とをレーザ溶接したときに、このオイルが溶接熱によって気化することで溶融部内においてガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を第1空間部(第3空間部に含まれる空間部)に逃がすことができ、さらには、当該ガスを第1空間部に連通する第2空間部に逃がして、第2空間部から蓋構造体の外部に排出することができる。これにより、溶接部内に生じるボイドをより一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態にかかる蓄電デバイスの部分断面図である。
【
図2】同蓄電デバイスの平面図(表面側平面図)である。
【
図7】組み合わせ工程後で加締め工程前における端子部材及びその近傍の拡大平面図(裏面側平面図)であり、
図6と同等の位置における拡大平面図である。
【
図8】
図7のN-N断面図であり、後に溶接部となる孔周囲部が切断された拡大断面図である。
【
図10】
図7のP-P断面図であり、後に非溶接部となる孔周囲部が切断された拡大断面図である。
【
図14】加締め工程後における端子部材及びその近傍の拡大平面図(裏面側平面図)であり、
図6と同等の位置における拡大平面図である。
【
図15】
図14のQ-Q断面図であり、
図8と同等の位置における拡大断面図である。
【
図20】レーザ溶接工程後の
図8と同等の位置における拡大断面図であって、
図5のJ部及びK部拡大図に相当し、且つ、
図6のS-S断面図に相当する。
【
図22】レーザ溶接工程後の
図10と同等の位置における拡大断面図であって、
図6のT-T断面図に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の蓄電デバイス1は、リチウムイオン二次電池である。この蓄電デバイス1は、電極体50と、電極体50を収容するケース30とを備える。ケース30は、金属からなるハードケースであり、直方体箱状をなしている。このケース30は、角形有底筒状をなす金属製のケース本体20と、矩形平板状をなす金属製の蓋体10とを備える(
図1及び
図2参照)。このうち、ケース本体20は、開口20bを有し、電極体50を収容する。蓋体10は、ケース本体20の開口20bを閉塞する。この蓋体10は、当該蓋体10を厚み方向DTに貫通する正極第1挿入孔11及び負極第1挿入孔12を有する(
図1~
図5参照)。
【0024】
電極体50は、正極板51と、負極板52と、正極板51と負極板52との間に介在するセパレータ53と、を有する(
図1参照)。より具体的には、電極体50は、帯状の正極板51と、帯状の負極板52と、帯状のセパレータ53とを備え、正極板51と負極板52とがセパレータ53を間に挟んで捲回された扁平捲回型の電極体である。なお、電極体50の内部には、図示しない電解液が含まれている。ケース30の内部の底面側にも、図示しない電解液が収容されている。
【0025】
さらに、蓄電デバイス1は、ケース30の内部に位置し、電極体50と電気的に接続する正極集電部材60及び負極集電部材70を有する(
図1~
図5参照)。正極集電部材60は、蓋体10の長手方向DL(厚み方向DTに直交する方向)に延びる矩形平板状の正極第1集電部位61と、蓋体10の厚み方向DTに延びる矩形平板状の正極第2集電部位62とを有する。正極第1集電部位61には、当該正極第1集電部位61を厚み方向に貫通する正極第2挿入孔63が形成されている(
図3参照)。正極第1集電部位61は、正極第2挿入孔63をなす孔周囲面64を含む孔周囲部65を有する(
図20参照)。この正極集電部材60は、正極第2集電部位62を通じて、電極体50の正極板51に電気的に接続する。なお、
図20は、
図5のJ部拡大図及びK部拡大図である。また、
図3と
図5とは、上下が反対の位置関係になっている。
【0026】
また、負極集電部材70は、蓋体10の長手方向DLに延びる矩形平板状の負極第1集電部位71と、蓋体10の厚み方向DTに延びる矩形平板状の負極第2集電部位72とを有する(
図1~
図5参照)。負極第1集電部位71には、当該負極第1集電部位71を厚み方向に貫通する負極第2挿入孔73が形成されている(
図3参照)。負極第1集電部位71は、負極第2挿入孔73をなす孔周囲面74を含む孔周囲部75を有する(
図20参照)。この負極集電部材70は、負極第2集電部位72を通じて、電極体50の負極板52に電気的に接続する。
【0027】
さらに、蓄電デバイス1は、正極端子部材80及び負極端子部材90を有する(
図1~
図5参照)。正極端子部材80は、ケース30の外部から内部に延びる有底筒状の正極端子挿入部81と、正極端子挿入部81の径方向外側に位置する正極環状鍔部82とを有する。正極端子挿入部81は、正極第1挿入孔11及び正極第2挿入孔63に挿入されている。正極環状鍔部82は、ケース30の外部に配置されている。正極端子挿入部81の一部(具体的には先端部)は、加締め変形した加締め変形部81bとなっている(
図21及び
図23参照)。
【0028】
負極端子部材90は、ケース30の外部から内部に延びる有底筒状の負極端子挿入部91と、負極端子挿入部91の径方向外側に位置する負極環状鍔部92とを有する。負極端子挿入部91は、負極第1挿入孔12及び負極第2挿入孔73に挿入されている。負極環状鍔部92は、ケース30の外部に配置されている。負極端子挿入部91の一部(具体的には先端部)は、加締め変形した加締め変形部91bとなっている(
図21及び
図23参照)。
【0029】
さらに、蓄電デバイス1は、正極集電部材60の孔周囲部65と正極端子部材80の加締め変形部81bとが溶接された正極溶接部W1を有する(
図6及び
図21参照)。また、蓄電デバイス1は、負極集電部材70の孔周囲部75と負極端子部材90の加締め変形部91bとが溶接された負極溶接部W2を有する。
【0030】
さらに、蓄電デバイス1は、正極溶接部W1と孔周囲面64と加締め変形部81bとによって囲まれた正極第1空間部S11を有する(
図21参照)。この正極第1空間部S11は、正極溶接部W1に隣接しつつ孔周囲面64に沿って周方向に延びている。具体的には、正極第1空間部S11は、
図6において、平面視円弧状をなす正極溶接部W1の下方に位置し、平面視円弧状をなしている。また、蓄電デバイス1は、負極溶接部W2と孔周囲面74と加締め変形部91bとによって囲まれた負極第1空間部S12を有する(
図21参照)。この負極第1空間部S12は、負極溶接部W2に隣接しつつ孔周囲面74に沿って周方向に延びている。具体的には、負極第1空間部S12は、
図6において、平面視円弧状をなす負極溶接部W2の下方に位置し、平面視円弧状をなしている。このような蓄電デバイス1は、正極溶接部W1の内部及び負極溶接部W2の内部において、ボイドが低減された蓄電デバイスとなる。
【0031】
具体的には、この蓄電デバイス1は、正極集電部材60の孔周囲部65と正極端子部材80の加締め変形部81bとを溶接したときに、孔周囲部65の溶接予定部65wと加締め変形部81bの溶接予定部81wとが溶融した溶融部が、正極第1空間部S11に接触した状態になったものである。同様に、負極集電部材70の孔周囲部75と負極端子部材90の加締め変形部91bとを溶接したときに、孔周囲部75の溶接予定部75wと加締め変形部91bの溶接予定部91wとが溶融した溶融部が、負極第1空間部S12に接触した状態になったものである。
【0032】
このため、孔周囲部65や加締め変形部81bの表面にオイルが付着しており、孔周囲部65と加締め変形部81bとを溶接したときに、このオイルが溶接熱によって気化することで、溶融部内でガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を正極第1空間部S11に逃がすことができる。同様に、孔周囲部75と加締め変形部91bとを溶接したときも、溶融部内で発生したガスの少なくとも一部を負極第1空間部S12に逃がすことができる。
【0033】
これにより、正極溶接部W1及び負極溶接部W2に生じるボイドを低減することができるので、正極溶接部W1及び負極溶接部W2の強度を高めることができると共に、正極溶接部W1及び負極溶接部W2の導電性を高めることができる。従って、正極集電部材60と正極端子部材80の接続抵抗、及び、負極集電部材70と負極端子部材90の接続抵抗を小さくすることができる。
【0034】
ところで、蓄電デバイス1は、蓋体10と正極集電部材60と正極端子部材80と正極絶縁板41とガスケット45と負極集電部材70と負極端子部材90と負極絶縁板43とガスケット47とが一体となった、蓋構造体100を有する(
図3~
図5参照)。なお、ガスケット45,47は、円筒状をなす筒状部45b,47bと、筒状部45b,47bの一端部の径方向外側に位置する円環状の鍔部45c,47cとを有する。さらに、正極溶接部W1は、正極集電部材60の孔周囲部65の全周にわたって形成されることなく、孔周囲部65の周方向一部に形成されている(
図6参照)。すなわち、正極集電部材60の孔周囲部65と正極端子部材80の加締め変形部81bとは全周溶接されていない。具体的には、正極溶接部W1は、平面視円弧状をなし、孔周囲部65の周方向に正極非溶接部NW1を挟んで2カ所に形成されている。なお、正極非溶接部NW1とは、孔周囲部65(孔周囲面64)に沿って周方向に延びる部位であって、孔周囲部65と加締め変形部81bとが溶接されていない部位である(
図6参照)。
【0035】
さらに、正極非溶接部NW1は、孔周囲部65と加締め変形部81bとが、正極第2挿入孔63の径方向に離間することによって蓋構造体100の外部に開放された正極第2空間部S21を形成している(
図22及び
図23参照)。この正極第2空間部S21は、正極第1空間部S11に連通している。具体的には、正極第2空間部S21と正極第1空間部S11とは、孔周囲面64の周方向に繋がっている。従って、蓋構造体100の平面視で、正極第1空間部S11と正極第2空間部S21とによって、孔周囲面64に沿って周方向に延びる環状空間部を形成している。このような蓄電デバイス1は、正極溶接部W1内のボイドがより一層低減された蓄電デバイスとなる。
【0036】
具体的には、前述のように、正極集電部材60の孔周囲部65と正極端子部材80の加締め変形部81bとを溶接したときに、溶融部内でガスが発生した場合、当該ガスの少なくとも一部を正極第1空間部S11に逃がすことができ、さらには、当該ガスを正極第1空間部S11に連通する正極第2空間部S21に逃がして、正極第2空間部S21から蓋構造体100の外部に排出することができる。これにより、正極溶接部W1の内部に生じるボイドをより一層低減することができる。
【0037】
さらに、負極溶接部W2も、正極溶接部W1と同様に、負極集電部材70の孔周囲部75の全周にわたって形成されることなく、孔周囲部75の周方向一部に形成されている(
図6参照)。具体的には、負極溶接部W2は、平面視円弧状をなし、孔周囲部75の周方向に負極非溶接部NW2を挟んで2カ所に形成されている。さらに、負極非溶接部NW2は、孔周囲部75と加締め変形部91bとが、負極第2挿入孔73の径方向に離間することによって蓋構造体100の外部に開放された負極第2空間部S22を形成している(
図22及び
図23参照)。この負極第2空間部S22は、負極第1空間部S12に連通している。具体的には、負極第2空間部S22と負極第1空間部S12とは、孔周囲面64の周方向に繋がっている。このような蓄電デバイス1は、負極溶接部W2内のボイドがより一層低減された蓄電デバイスとなる。
【0038】
具体的には、負極集電部材70の孔周囲部75と負極端子部材90の加締め変形部91bとを溶接したときに、溶融部内でガスが発生した場合、当該ガスの少なくとも一部を負極第1空間部S12に逃がすことができ、さらには、当該ガスを負極第1空間部S12に連通する負極第2空間部S22に逃がして、負極第2空間部S22から蓋構造体100の外部に排出することができる。これにより、負極溶接部W2の内部に生じるボイドをより一層低減することができる。
【0039】
次に、本実施形態の蓄電デバイス1の製造方法について説明する。まず、蓋構造体100を形成する。具体的には、組み合わせ工程において、蓋体10の裏面10cを上方に向けて、蓋体10の裏面10c側に正極絶縁板41を挟んで正極集電部材60を重ねた状態で、蓋体10の表面10b側から正極第1挿入孔11にガスケット45の筒状部45bを挿入し、さらに、蓋体10の表面10b側から、正極第1挿入孔11(筒状部45bの内側)及び正極第2挿入孔63に、正極端子部材80の正極端子挿入部81を挿入する(
図3、
図7、
図8、
図10参照)。
【0040】
さらに、蓋体10の裏面10c側に負極絶縁板43を挟んで負極集電部材70を重ねた状態で、蓋体10の表面10b側から負極第1挿入孔12にガスケット47の筒状部47bを挿入し、さらに、蓋体10の表面10b側から、負極第1挿入孔12(筒状部47bの内側)及び負極第2挿入孔73に、負極端子部材90の負極端子挿入部91を挿入する(
図3、
図7、
図8、
図10参照)。このようにして、蓋体10と正極集電部材60と正極端子部材80と正極絶縁板41とガスケット45と負極集電部材70と負極端子部材90と負極絶縁板43とガスケット47とを組み合わせて、組み合わせ構造体100Aを形成する。
【0041】
なお、正極第2挿入孔63をなす孔周囲面64は、正極集電部材60の厚み方向に段差を有しており、正極集電部材60の裏面60c側に位置する裏面側孔周囲面64cと、この裏面側孔周囲面64cよりも表面60b側に位置して裏面側孔周囲面64cよりも小径のテーパ面64bと、裏面側孔周囲面64cとテーパ面64bとを連結する円環状の連結面64dとを有する(
図8~
図11参照)。テーパ面64bは、正極集電部材60の裏面60c側から表面60b側に向かうにしたがって縮径するテーパ面である。
【0042】
しかも、
図9と
図11を比較するとわかるように、裏面側孔周囲面64cのうち、後に正極溶接部W1となる孔周囲部65に含まれる第1部位64c1と、後に正極非溶接部NW1となる孔周囲部65に含まれる第2部位64c2とでは、形状が異なる。具体的には、第1部位64c1は、
図9に示すように、正極集電部材60の厚み方向に真っ直ぐ延びる形態をなしている。一方、第2部位64c2は、
図11に示すように、テーパ面64bと同等の勾配を有する傾斜面であり、第1部位64c1よりも直径が大きくなっている。
【0043】
また、負極第2挿入孔73をなす孔周囲面74も、正極第2挿入孔63をなす孔周囲面64と同様な形状をなし、裏面側孔周囲面74cとテーパ面74bと連結面74dとを有する(
図8~
図11参照)。裏面側孔周囲面74cは、後に負極溶接部W2となる孔周囲部75に含まれる第1部位74c1と、後に正極非溶接部NW1となる孔周囲部75に含まれる第2部位74c2とを有する。第1部位74c1は、負極集電部材70の厚み方向に真っ直ぐ延びる形態をなしている。一方、第2部位74c2は、テーパ面64bと同等の勾配を有する傾斜面であり、第1部位74c1よりも直径が大きくなっている。
【0044】
次に、加締め工程において、正極第1挿入孔11及び正極第2挿入孔63に正極端子部材80の正極端子挿入部81を挿入した状態で、正極端子挿入部81の加締め予定部81cを加締め変形させて、加締め変形部81bを形成する(
図14及び
図15参照)。なお、加締め予定部81cは、正極端子挿入部81の先端部であって、加締め変形部81bになる部位である。
【0045】
具体的には、
図12に示すように、組み合わせ工程において形成した組み合わせ構造体100Aについて、蓋体10の裏面10cを上方に向け、さらに、組み合わせ構造体100Aの上(詳細には、正極集電部材60の裏面60c上及び負極集電部材70の裏面70c上)に、平板状の押さえ治具150を載置する。なお、押さえ治具150には、正極端子挿入部81が挿入される円形状の貫通孔150bと、負極端子挿入部91が挿入される円形状の貫通孔150cが形成されている。
【0046】
この状態で、円環状の押圧部材130によって、押さえ治具150を介して、正極集電部材60の裏面60cのうち正極第2挿入孔63の周囲に位置する部位を、正極端子部材80の正極環状鍔部82に向けて押圧して、正極集電部材60と正極環状鍔部82との間で、正極絶縁板41とガスケット45を厚み方向に圧縮した状態にする。さらに、円環状の押圧部材140によって、押さえ治具150を介して、負極集電部材70の裏面70cのうち負極第2挿入孔73の周囲に位置する部位を、負極端子部材90の負極環状鍔部92に向けて押圧して、負極集電部材70と負極環状鍔部92との間で、負極絶縁板43とガスケット47を厚み方向に圧縮した状態にする。
【0047】
この状態で、
図13に示すように、パンチ110によって正極端子挿入部81の加締め予定部81cを加締め変形させて、加締め変形部81bを形成する。なお、パンチ110は、下方に向かって縮径する円錐台形状の第1パンチ部111と、第1パンチ部111の上方に位置する円板形状の第2パンチ部112とを有する。
【0048】
具体的には、
図13に示すように、パンチ110を下方に移動させることで、第1パンチ部111を円筒形状の加締め予定部81cの内側に押し込んで、加締め予定部81cを径方向外側に押し拡げるように変形させると共に、第1パンチ部111及び第2パンチ部112によって加締め予定部81cを下方に押圧して、加締め変形部81bを形成する。このとき、加締め変形部81bは、その外周面が、正極集電部材60のテーパ面64bに沿ったテーパ面81dとなり、加締め変形部81bのテーパ面81dが正極集電部材60のテーパ面64bに密着すると共に、加締め変形部81bの先端部の外周面が、孔周囲面64の第1部位64c1のうち裏面60c側の部位に密着する(
図16参照)。
【0049】
これにより、加締め変形部81bのテーパ面81dによって正極集電部材60のテーパ面64bを下方(正極環状鍔部82側)に押圧する態様で、加締め変形部81bと正極環状鍔部82との間に、正極集電部材60と正極絶縁板41と蓋体10とガスケット45とが厚み方向DTに挟まれて固定される(
図15参照)と共に、加締め変形部81bと孔周囲面64(詳細には、第1部位64c1及び連結面64d)とによって囲まれた正極第3空間部S31が形成される(
図16参照)。
【0050】
さらには、
図13に示すように、パンチ120によって負極端子挿入部91の加締め予定部91cを加締め変形させて、加締め変形部91bを形成する。なお、パンチ120は、下方に向かって縮径する円錐台形状の第1パンチ部121と、第1パンチ部121の上方に位置する円板形状の第2パンチ部122とを有する。
【0051】
具体的には、
図13に示すように、パンチ120を下方に移動させることで、第1パンチ部121を円筒形状の加締め予定部91cの内側に押し込んで、加締め予定部91cを径方向外側に押し拡げるように変形させると共に、第1パンチ部121及び第2パンチ部122によって加締め予定部91cを下方に押圧して、加締め変形部91bを形成する。このとき、加締め変形部91bは、その外周面が、負極集電部材70のテーパ面74bに沿ったテーパ面91dとなり、加締め変形部91bのテーパ面91dが負極集電部材70のテーパ面74bに密着すると共に、加締め変形部91bの先端部の外周面が、孔周囲面74の第1部位74c1のうち裏面60c側の部位に密着する(
図16参照)。
【0052】
これにより、加締め変形部91bのテーパ面91dによって負極集電部材70のテーパ面74bを下方(負極環状鍔部92側)に押圧する態様で、加締め変形部91bと負極環状鍔部92との間に、負極集電部材70と負極絶縁板43と蓋体10とガスケット47とが厚み方向DTに挟まれて固定される(
図15参照)と共に、加締め変形部91bと孔周囲面74(詳細には、第1部位74c1及び連結面74d)とによって囲まれた負極第3空間部S32が形成される(
図16参照)。これにより、蓋体10と正極集電部材60と正極端子部材80と正極絶縁板41とガスケット45と負極集電部材70と負極端子部材90と負極絶縁板43とガスケット47とが結合した蓋構造体100が形成される。
【0053】
なお、正極第3空間部S31は、正極第1空間部S11を含む空間部であり、孔周囲面64に沿って周方向の一部に延びる形態である。また、正極第3空間部S31は、孔周囲部65の溶接予定部65w及び加締め変形部81bの溶接予定部81wに対して、後のレーザ溶接工程においてレーザビームLBが照射される側(
図19において上側)とは反対側(
図19において下側)に隣接する空間部でもある。負極第3空間部S32は、負極第1空間部S12を含む空間部であり、孔周囲面74に沿って周方向の一部に延びる形態である。また、負極第3空間部S32は、孔周囲部75の溶接予定部75w及び加締め変形部91bの溶接予定部91wに対して、後のレーザ溶接工程においてレーザビームLBが照射される側(
図19において上側)とは反対側(
図19において下側)に隣接する空間部でもある。
【0054】
一方、孔周囲面64の第2部位64c2には、加締め変形部81bの先端部の外周面が接触することなく、孔周囲面64の第2部位64c2と加締め変形部81bとが、正極第2挿入孔63の径方向に離間した状態となる(
図17及び
図18参照)。これにより、孔周囲面64の第2部位64c2と加締め変形部81bとの間に、外部に開放された正極第2空間部S21が形成される。なお、この正極第2空間部S21は、正極第3空間部S31に連通する空間部であり、孔周囲面64に沿って周方向の一部に延びる形態である。具体的には、正極第2空間部S21と正極第3空間部S31とは、孔周囲面64の周方向に繋がっており、孔周囲面64の全周に沿った環状空間部をなしている。
【0055】
また、孔周囲面74の第2部位74c2にも、加締め変形部91bの先端部の外周面が接触することなく、孔周囲面74の第2部位74c2と加締め変形部81bとが、負極第2挿入孔73の径方向に離間した状態となる(
図18参照)。これにより、孔周囲面74の第2部位74c2と加締め変形部91bとの間に、外部に開放された負極第2空間部S22が形成される。なお、この負極第2空間部S22は、負極第3空間部S32に連通する空間部であり、孔周囲面74に沿って周方向の一部に延びる形態である。具体的には、負極第2空間部S22と負極第3空間部S32とは、孔周囲面74の周方向に繋がっており、孔周囲面74の全周に沿った環状空間部をなしている。
【0056】
次に、レーザ溶接工程において、蓋構造体100について、孔周囲部65の溶接予定部65wと加締め変形部81bの溶接予定部81wとをレーザ溶接する(
図19参照)。なお、孔周囲部65の溶接予定部65wは、孔周囲面64の第1部位64c1を有する部位であり、加締め変形部81bの溶接予定部81wは、孔周囲面64の第1部位64c1に接触している部位である。本実施形態のレーザ溶接工程では、孔周囲部65の溶接予定部65w及び加締め変形部81bの溶接予定部81wが溶融した溶融部の一部が、正極第3空間部S31に達するようにレーザ溶接を行って、正極第1空間部S11に隣接する正極溶接部W1を形成する(
図21参照)。なお、正極第1空間部S11は、正極第3空間部S31の一部の空間部である。具体的には、正極第1空間部S11は、正極第3空間部S31の一部(
図21において上部)に溶融部の一部が進入することによって、正極第3空間部S31の一部が溶接部の一部によって埋まり、正極第3空間部S31の一部が消失した空間部である。
【0057】
従って、レーザ溶接工程を開始するときに、孔周囲部65や加締め変形部81bの表面にオイルが付着しており、孔周囲部65と加締め変形部81bとをレーザ溶接したときに、このオイルが溶接熱によって気化することで溶融部内においてガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を正極第1空間部S11に逃がすことができる。これにより、正極溶接部W1内に生じるボイドを低減することができるので、正極溶接部W1の強度を高めることができると共に、正極溶接部W1の導電性を高めることができる。
【0058】
さらに、孔周囲部75の溶接予定部75wと加締め変形部91bの溶接予定部91wとをレーザ溶接する(
図19参照)。孔周囲部75の溶接予定部75wは、孔周囲面74の第1部位74c1を有する部位であり、加締め変形部91bの溶接予定部91wは、孔周囲面74の第1部位74c1に接触している部位である。具体的には、孔周囲部75の溶接予定部75w及び加締め変形部91bの溶接予定部91wが溶融した溶融部の一部が、負極第3空間部S32に達するようにレーザ溶接を行って、負極第1空間部S12に隣接する負極溶接部W2を形成する(
図21参照)。従って、孔周囲部75や加締め変形部91bの表面にオイルが付着していた場合でも、前述した正極溶接部W1と同様に、負極溶接部W2内に生じるボイドを低減することができるので、負極溶接部W2の強度を高めることができると共に、負極溶接部W2の導電性を高めることができる。
【0059】
特に、本実施形態のレーザ溶接工程では、孔周囲部65及び加締め変形部81bのうち、正極第2空間部S21を形成する部位(非溶接予定部)にはレーザビームLBを照射することなく、正極第3空間部S31を形成する部位の溶接予定部65w,81wを溶融させて、孔周囲部65の周方向一部に正極溶接部W1を形成する(
図6参照)。これにより、レーザ溶接工程において、正極第2空間部S21は、蓋構造体100の外部に開放された形態が維持される。従って、レーザ溶接工程を開始するときに、孔周囲部65や加締め変形部81bの表面にオイルが付着しており、孔周囲部65と加締め変形部81bとをレーザ溶接したときに、このオイルが溶接熱によって気化することで溶融部内においてガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を正極第1空間部S11に逃がすことができ、さらには、当該ガスを正極第1空間部S11に連通する正極第2空間部S21に逃がして、正極第2空間部S21から蓋構造体100の外部に排出することができる。これにより、正極溶接部W1内に生じるボイドをより一層低減することができる。
【0060】
負極溶接部W2を形成するときも、正極溶接部W1を形成するときと同様である。すなわち、孔周囲部75と加締め変形部91bとをレーザ溶接したときに溶融部内でガスが発生した場合でも、当該ガスの少なくとも一部を負極第1空間部S12に逃がすことができ、さらには、当該ガスを負極第1空間部S12に連通する負極第2空間部S22に逃がして、負極第2空間部S22から蓋構造体100の外部に排出することができる。これにより、負極溶接部W2内に生じるボイドをより一層低減することができる。
【0061】
次に、電極体50を用意し、この電極体50の正極板51に、蓋構造体100の正極集電部材60を他部材を介して接続すると共に、電極体50の負極板52に、蓋構造体100の負極集電部材70を他部材を介して接続して、蓋構造体100と電極体50とを一体にする。次に、蓋構造体100と一体にされた電極体50を、ケース本体20の内部に収容すると共に、蓋体10によってケース本体20の開口20bを閉塞する。この状態で、蓋体10とケース本体20とを全周溶接する。これにより、ケース本体20と蓋体10とが接合されて、ケース30になる。その後、蓋体10に形成されている注液孔(図示なし)を通じてケース30の内部に電解液(図示なし)を注入する。その後、注液孔を封止することで、蓄電デバイス1が完成する。
【0062】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 蓄電デバイス
10 蓋体
11 正極第1挿入孔
12 負極第1挿入孔
20 ケース本体
20b 開口
30 ケース
50 電極体
60 正極集電部材
63 正極第2挿入孔
64,74 孔周囲面
65,75 孔周囲部
70 負極集電部材
73 負極第2挿入孔
80 正極端子部材
81 正極端子挿入部
81b,91b 加締め変形部
90 負極端子部材
91 負極端子挿入部
100 蓋構造体
S11 正極第1空間部
S12 負極第1空間部
S21 正極第2空間部
S22 負極第2空間部
S31 正極第3空間部
S32 負極第3空間部
W1 正極溶接部
W2 負極溶接部
NW1 正極非溶接部
NW2 負極非溶接部