(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】発泡性難燃性クリアコート調製物
(51)【国際特許分類】
C09D 161/28 20060101AFI20240809BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20240809BHJP
C09D 161/24 20060101ALI20240809BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240809BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240809BHJP
【FI】
C09D161/28
C09K21/12
C09D161/24
C09D7/65
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2022513060
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2020073929
(87)【国際公開番号】W WO2021037955
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-03-31
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】バウアー・ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】テルマート・アンドレアス
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-151776(JP,A)
【文献】米国特許第03309427(US,A)
【文献】特開平07-053900(JP,A)
【文献】特表2001-524571(JP,A)
【文献】米国特許第05387655(US,A)
【文献】特開昭49-021432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 161/28
C09K 21/12
C09D 161/24
C09D 7/65
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30重量%~
75重量%の水性合成樹脂調製物、
20重量%~
50重量%の
ポリリン酸とポリオールの部分エステル、
3重量%~
15重量%のポリオール、および
2重量%~
20重量%のさらに別の成分、
を含む、
ハロゲン不含である発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項2】
40重量%~60重量%の水性合成樹脂調製物、30重量%~40重量%の
ポリリン酸とポリオールの部分エステル、5重量%~10重量%のポリオール、および5重量%~15重量%のさらに別の成分を含む、請求項
1に記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項3】
前記ポリオールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、および/またはペンタエリスリトールのポリ縮合物、および/またはペンタエリスリトールをベースとするエステルの混合物、グリセロール、オリゴマーグリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、グルシトール、トレイトール、エリスリトール、アラビトール、イノシトール、グルコサミン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびエチレンオキシド-プロピレンオキシドポリオールである、請求項1
または2に記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項4】
前記ポリオールがソルビトールである、請求項1~
3のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項5】
前記
ポリリン酸とポリオールの部分エステルが、
少なくとも40重量%の平均ヒドロキシル基含有量を有する少なくとも2個のポリオールに由来し、前記の平均ヒドロキシル基含有量が、ポリオールの全分子量で除したヒドロキシル基の分子量×100%として計算される、請求項1~
4のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項6】
前記
ポリリン酸とポリオールの部分エステルが、
少なくとも45重量%の平均ヒドロキシル基含有量を有する2~4個のポリオールに由来する、請求項
5に記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項7】
前記水性合成樹脂調製物が、窒素含有合成樹脂調製物である、請求項1~
6のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項8】
前記水性合成樹脂調製物が、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂および/または尿素-ホルムアルデヒド樹脂である、請求項1~
6のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項9】
前記のさらに別の成分が、分散剤、フィラー、硬化剤、チキソトロープ剤、可塑剤、酸供与体、さらに別の難燃剤、表面助剤および/またはバインダーである、請求項1~
8のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項10】
30重量%~75重量%のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、20重量%~50重量%のポリリン酸とポリオールの部分エステル、3重量%~15重量%のソルビトール、グリセロール、イノシトールおよびN,N-ジメチル-D-グルカミンからなる群から選択されるポリオール、および2重量%~20重量%の分散剤、フィラー、硬化剤、チキソトロープ剤、可塑剤、酸供与体、さらに別の難燃剤、表面助剤およびバインダーからなる群から選択されるさらに別の成分、
を含む、請求項1に記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項11】
硬化後のリン含有量が1重量%~15重量%である、請求項1~10のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項12】
硬化後のリン含有量が5重量%~10重量%である、請求項1~10のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項13】
施用および乾燥後に透明である、請求項1~12のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
【請求項14】
木材、木質材料、ベニヤ、プラスチック、建築材料、セルロース材料、ゴム、金属および他の材料、合成または天然繊維から作製された布帛でできた物品のコーティングの生成のための、ならびに織物および皮革の含浸のための、ならびにポリオレフィン上の発泡性防炎コーティングとしての、およびソルダーマスクとしての、請求項1~13のいずれか1つに記載のクリアコート調製物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性難燃性クリアコート調製物、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性難燃剤は、熱の作用下で形成する、難燃性材料の膨張した断熱層の形成を通して作用し、これは、保護すべき材料を酸素の侵入および/または過熱から保護し、従って可燃性材料の燃焼を防止するかまたは少なくとも遅らせ、あるいは熱の作用を通した耐荷重性構成要素の機械的および静的特性の変化を防止するかまたは少なくとも遅らせる。
【0003】
難燃性成分としてクロロパラフィン類を含有する溶媒含有バインダーをベースとする難燃性コーティングが知られている(“Fire Safety Journal” 4(3), 163-7および“Paintindia” 32 (1) 3-6, 14, 1982におけるBhatnagarおよびVergnaud)(非特許文献1および非特許文献2)。
【0004】
これらの系の欠点は、乾燥中に溶媒蒸気が放出され、火災の場合に腐食性で毒性のハロゲン含有燃焼ガスが放出されることである。
【0005】
US-B-4166743(特許文献1)は、皮膜形成剤、ポリリン酸アンモニウム、熱の作用下で炭化する少なくとも1種の物質、分散剤、結晶水を有する塩、発泡剤および任意選択的にフィラーからなる膨張性コーティングを開示している。ここで使用される皮膜形成剤は、ポリ酢酸ビニルまたは酢酸ビニルとマレイン酸ジブチルとのコポリマーの水性分散体であってよく、一方で、適切な炭化物質はジシアンジアミド、ペンタエリスリトールまたはメラミンである。言及されている分散剤は酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレンまたはトルエンであり、言及されている発泡剤はクロロパラフィンである。
【0006】
Troitzsch(“International Plastics Flammability Handbook”,第2版,Oxford University Press,New York,1990,第52および53頁)(非特許文献3)によれば、炭化物質の典型的な代表例は、ペンタエリスリトールおよびデンプンであり、一方でグアニジン、メラミンおよびクロロパラフィンが発泡剤の中に含まれる。前述の膨張性コーティングの欠点は、それらは、発泡剤中におよび/または熱の作用下で炭化する物質中に、有機的に結合したハロゲンを含有し、その結果、コーティングの破損において腐食性および毒性のガスが放出されることである。
【0007】
従って、前述の系は、多くの場合に、生命を危険にさらすガスおよびダストの放出のために、実際には使用できない。
【0008】
さらに、DE-A-4343668(特許文献2)には、皮膜形成バインダー、ポリリン酸アンモニウム、熱の作用下で炭化する少なくとも1種の物質、発泡剤、および任意選択的に分散剤およびフィラーからなる膨張性の難燃性コーティングが記載されている。
【0009】
DE-A-4343669(特許文献3)には、類似の組成の膨張性難燃性コーティングが記載されているが、これらはポリリン酸アンモニウムを含有しない。
【0010】
しかしながら、当該系は、比較的短く、しばしば不十分な耐用年数(耐火時間)しか達成しない。
【0011】
また、ポリオールをベースとするリン酸部分エステルが酸供与体および炭化物質として作用する、発泡特性を有する水をベースとする組成物も知られている(WO-A-1993005118)(特許文献4)。
【0012】
ここでの欠点は、当該系が不十分なコーティング特性、例えば、過度に遅い硬化、残存粘性の残留および過度に高い湿気感受性のみを達成することである。達成可能な耐用年数は、数分の範囲内でしかなく、従って実用的な使用には短すぎる。
【0013】
最後に、DE-A-19751434(特許文献5)には、少なくとも2つの異なるモノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェートの混合物が記載されており、これらは、アミノ樹脂と組み合わせて、透明に乾燥する防火コーティングを生成できると言われている。ここで得られるものは、完全には硬化せず、実際には使用できない、不十分な施用プロファイルを有する粘着性コーティングである。
【0014】
既存の先行技術は、全てが依然として欠点を有する調製物をもたらす。いくつかの調製物はハロゲンを含有し、火災の場合に有毒で腐食性のガスを放出する。ハロゲン不含系の場合、耐用年数が非常に短く、場合によっては、達成される生成物の硬化が不十分である。また、一部の系では工業的生産に問題があり;他の系では適用範囲が小さすぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】US-B-4166743
【文献】DE-A-4343668
【文献】DE-A-4343669
【文献】WO-A-1993005118
【文献】DE-A-19751434
【非特許文献】
【0016】
【文献】“Fire Safety Journal” 4(3), 163-7
【文献】“Paintindia” 32 (1) 3-6, 14, 1982
【文献】Troitzsch(“International Plastics Flammability Handbook”,第2版,Oxford University Press,New York,1990,第52および53頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、ハロゲン不含であり、十分な耐用年数を示し、そしてさらなる(硬化)物質を添加することなく硬化生成物を形成する、発泡性防炎クリアコート調製物を提供することである。さらに、本発明のクリアコート調製物は、コーティングされる材料に施用した後に透明性を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、20重量%~88.5重量%の水性合成樹脂調製物、10重量%~60重量%のリン酸部分エステル、0.5重量%~20重量%のポリオールおよび1重量%~30重量%のさらに別の成分を含む、最初に記載したタイプの発泡性難燃性クリアコート調製物によって達成される。
【0019】
前記発泡性難燃性クリアコート調製物は、好ましくは、30重量%~75重量%の水性合成樹脂調製物、20重量%~50重量%のリン酸部分エステル、3重量%~15重量%のポリオール、および2重量%~20重量%のさらに別の成分を含む。
【0020】
前記発泡性難燃性クリアコート調製物は、より好ましくは、40重量%~60重量%の水性合成樹脂調製物、30重量%~40重量%のリン酸部分エステル、5重量%~10重量%のポリオール、および5重量%~15重量%のさらに別の成分を含む。
【0021】
前記ポリオールは、好ましくは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、および/またはペンタエリスリトールのポリ縮合物、および/またはペンタエリスリトールをベースとするエステルの混合物、グリセロール、オリゴマーグリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、グルシトール、トレイトール、エリスリトール、アラビトール、イノシトール、グルコサミン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびエチレンオキシド-プロピレンオキシドポリオールである。
【0022】
前記ポリオールは、好ましくは、ソルビトールである。
【0023】
前記リン酸部分エステルは、より好ましくは、オルトリン酸と1または複数のポリオールとのモノ-およびジエステルの混合物に相当する組成物であり、ここで、これらのポリオールの平均ヒドロキシル基含有量は少なくとも40重量%であり、モノエステル/ジエステルモル比は12:1を超えず、前記混合物のリン含有量は少なくとも10重量%である。
【0024】
前記リン酸部分エステルは、より好ましくは、オルトリン酸と1または複数のポリオールとの、任意選択的にカルボン酸無水物で修飾されたモノ-およびジエステルの混合物に相当する組成物であり、ここで、これらのポリオールの平均ヒドロキシル基含有量は少なくとも40重量%であり、モノエステル/ジエステルモル比は12:1を超えず、前記混合物のリン含有量は少なくとも10重量%である。
【0025】
前記水性合成樹脂調製物は、好ましくは、窒素含有合成樹脂調製物である。
【0026】
前記水性合成樹脂調製物は、好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂および/または尿素-ホルムアルデヒド樹脂である。
【0027】
前記水性合成樹脂調製物は、より好ましくは、エーテル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂および/またはエーテル化尿素-ホルムアルデヒド樹脂である。
【0028】
さらに別の成分は、好ましくは、分散剤、フィラー、硬化剤、チキソトロープ剤、可塑剤、酸供与体、さらに別の難燃剤、表面助剤(surface auxiliaries)および/またはバインダーである。
【0029】
硬化後の発泡性難燃性クリアコート調製物のリン含有量は、1重量%~15重量%である。
【0030】
硬化後の発泡性難燃性クリアコート調製物のリン含有量は、好ましくは、5重量%~10重量%である。
【0031】
本発明はまた、施用および乾燥後に透明である、請求項1~12の少なくとも1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物に関する。
【0032】
本発明の発泡性難燃性クリアコート調製物は、好ましくは、ハロゲン不含である。
【0033】
本発明はまた、木材、木質材料、ベニヤ、プラスチック、建築材料、セルロース材料、ゴム、金属および他の材料、合成または天然繊維から作製された布帛でできた物品のコーティングの生成のための、ならびに織物および皮革の含浸のための、ならびにポリオレフィン上の発泡性防炎コーティングとしての、およびソルダーマスクとしての、本発明のクリアコート調製物の使用に関する。
【0034】
前記リン酸部分エステルは、好ましくは、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%の平均ヒドロキシル基含有量(ヒドロキシル基の分子量をポリオールの全分子量で除したもの×100%として計算される)を有する、少なくとも2個、特に2~4個のポリオールに由来する。ポリオール混合物において、40重量%未満のヒドロキシル基含有量を有する1または複数のポリオールを使用することもでき、この場合、好ましくは、存在する全てのポリオールヒドロキシル基の15%以下が、そのようなポリオールに由来する。
【0035】
前記リン酸部分エステルは、DE4342972A1に記載されるリン酸エステル、またはこれらのエステルと他のリン酸エステルとの混合物に相当し得る。
【0036】
本発明に従って使用される上記のメラミン樹脂は、典型的には、1:1~1:6のモル比(メラミン:ホルムアルデヒド)のメラミンとホルムアルデヒドとの反応生成物である。
【0037】
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂はまた、1~20個の炭素原子の鎖長を有するアルコールでエーテル化されていてもよい。
【0038】
さらなる可能な炭素源には、デンプン様化合物、例えばデンプンおよび変性デンプン、および/または多価アルコール、例えば糖類および多糖類、および/または熱可塑性または熱硬化性ポリマー樹脂バインダー、例えばポリビニルアルコール類、フェノール樹脂なども含まれる。
【0039】
本発明のクリアコート調製物は、典型的には、多種多様な異なる基材、好ましくは鋼製の梁および柱、屋根、壁、ケーブル、パイプ、ケーブルダクト、ケーブルおよびコンビネーションバルクヘッド(cables and combination bulkheads)、ドア、カーテン、スモークカーテン(smoke curtains)、ブラインド、安全キャビネット、据え付けキャビネットおよび他の物品/材料の保護のための、塗装可能、噴霧可能またはロール可能(rollable)な塗料として防火コーティング(発泡性防炎コーティング)の形態で使用される。
【0040】
本発明の防火コーティングはまた、中空プロファイルおよびH-プロファイルの建設的防火のために、作業場用途(workshop applications)において、および高い耐候安定性が必要とされる領域のために、適している。
【0041】
着色剤を使用しない場合、本発明の発泡性難燃性クリアコート調製物は、典型的には、コーティングの形態において清澄(透明)である。それらはまた、典型的にはそれ自体で使用される。しかしながら、フィラー、特にタルク等を添加することによって、コーティングを曇らせることも可能である。
【0042】
同様に、適切な着色剤、特に無機顔料の選択により、乾燥状態において着色された、好ましくは白色である発泡性難燃性コーティングを生成することが可能である。
【0043】
本発明の文脈における着色剤は、例えば、Roempp’s Chemie Lexikon,第9版 1992,第1237頁に記載されているものを意味すると理解される。これには、無機及び有機、天然及び合成の着色剤、例えば顔料及び染料が含まれる。
【0044】
前記のさらに別の成分は、より好ましくはチキソトロープ剤および/またはフィラーである。
【0045】
前記クリアコート調製物は、任意の従来の様式で、例えば、噴霧、浸漬、延伸(drawing)および塗装によって施用することができる。コーティング操作は、任意選択的に、2回以上繰り返すことができる。コーティングの厚さは、組成物の粘度およびコーティングされる基材に応じて、広い範囲内で変化させることができる。典型的な層厚は、10μm~3mmの範囲である。
【0046】
硬化は使用される成分の性質に応じて上昇させた温度で行うこともできるが、前記組成物(前記コーティング)は、好ましくは、室温で硬化される。
【実施例】
【0047】
本発明を、以下の物質を使用した以下の例によって説明する:
【0048】
Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA (INEOS Melamines GmbH,フランクフルト,ドイツ):
メタノールで三重エーテル化され、イミノ基を含む非常に高い反応性のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂。
【0049】
Maprenal(登録商標)MF 921w/85WA (INEOS Melamines GmbH,フランクフルト,ドイツ):
メタノールで四重エーテル化され、イミノ基を含む高い反応性のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂。
【0050】
Resimene(登録商標)AQ-2610 (INEOS Melamines GmbH,フランクフルト,ドイツ):
メタノールで四重エーテル化され、イミノ基を含む高い反応性のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂。
【0051】
Resimene(登録商標)757 (INEOS Melamines GmbH,フランクフルト,ドイツ):
メタノールおよびn-ブタノール(75/25の比)で四重エーテル化され、イミノ基を含む高い反応性のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂。
【0052】
Resimene(登録商標)764 (INEOS Melamines GmbH,フランクフルト,ドイツ):
メタノールおよびn-ブタノール(10/90の比)で四重エーテル化され、イミノ基を含む高い反応性のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂。
【0053】
Primere(登録商標)70 0867L (Metadynea,クレムス,オーストリア):
メタノールでエーテル化され、イミノ基を含む高い反応性のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂。
【0054】
Exolit(登録商標)AP 422 (Clariant Plastics & Coatings (Germany) GmbH,フランクフルト・アム・マイン):
式(NH4PO3)n(式中、n=20~1000、特に500~1000)の、難水溶性の、自由流動性の粉末状ポリリン酸アンモニウム。45μmより小さい粒径を有する粒子の割合は、99%より大きい。
【0055】
Exolit(登録商標)855 (Clariant Plastics & Coatings (Germany) GmbH,フランクフルト・アム・マイン):
難燃剤(ポリリン酸とポリオールの部分エステル)。
【0056】
Budit(登録商標)380 (Chemische Fabrik Budenheim,ブーデンハイム,ドイツ):
難燃剤(リン酸とペンタエリスリトールの部分エステル)。
【0057】
Sorbitol(登録商標)(Biesterfeld AG,ハンブルク):炭素形成物質。
【0058】
Glycerol(登録商標)(Syskem Chemie GmbH,ブッパータール):炭素形成物質。
【0059】
Inosit(登録商標)(Brenntag GmbH,ミュールハイムアンデアルール):炭素形成物質。
【0060】
Genamin(登録商標)Gluco 50(N,N-ジメチル-D-グルカミン)(Clariant SE International):
炭素形成物質。
【0061】
Aerosil(登録商標)380 (Evonik SE,ドイツ):チキソトロピー剤。
【0062】
Chinafill(登録商標)100, (Amberger Kaolinwerke,ヒルシャー):フィラー。
【0063】
p-トルエンスルホン酸(INEOS Melamines GmbH,フランクフルト):硬化成分。
【0064】
Byk 333(登録商標)(Byk Wesel,ドイツ):シリコーン含有表面添加剤。
【0065】
Hypersal XT 782 (INEOS Melamines GmbH,フランクフルト):アニオン性表面添加剤。
【0066】
発泡性防炎調製物-これは後に発泡性防炎コーティングとして施用された-を、以下のように製造した:
a)調製物部分1
フィラーをメラミン樹脂もしくはメラミン樹脂混合物(ここでは例えば、前述のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂)の初期装入物中に、撹拌しながら室温で分散し、同様に炭素形成物質を撹拌しながら計量添加する。
【0067】
b)調製物部分2
硬化成分および界面活性物質を、撹拌しながら室温で液体難燃剤の初期装入物に添加し、次いで、助剤および添加剤(例えば、二酸化チタン、繊維およびフィラー)を、低速で撹拌しながら組み入れる。
【0068】
調製物部分1および2は、それぞれ別々に調製され、それぞれ比較的長い期間(1年より長い)にわたって貯蔵安定性である。
【0069】
建築材料の発泡性防炎コーティングのために、前記部分調製物を、撹拌しながら、1:1の比率(調製物部分1および調製物部分2の各場合において)で容器中で混合する。得られた混合物は、4時間まで処理可能である。コーティングされる基材への施用は、ブラシもしくはローラーによって、または噴霧技術によって行うことができる。
【0070】
前述の発泡性難燃性調製物は、12時間以内に室温で硬化して、透明で硬質のコーティングを与える。硬化反応は、乾燥温度を上げることによって促進することができる。
【0071】
本発明を以下の例によって説明する(pbw=重量部)。
【0072】
例1(比較)
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Budit(登録商標)380
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0073】
例2
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0074】
例3
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
5.38 pbw Chinafill 100
2.0 pbw Exolit AP 422
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0075】
例4
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
4.38 pbw Chinafill 100
3.00 pbw Exolit AP 422
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0076】
例5
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
3.38 pbw Chinafill 100
4.00 pbw Exolit AP 422
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0077】
例6
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%グリセロール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0078】
例7
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%イノシトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0079】
【0080】
例8
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 921w/85WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0081】
例9
32.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 921w/85WA
15.00 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0082】
例10
15.00 pbw Maprenal(登録商標)MF 921w/85WA
32.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0083】
例11
47.90 pbw Resimene(登録商標)AQ-2610
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0084】
例12
15.00 pbw Maprenal(登録商標)MF 921w/85WA
32.90 pbw Resimene(登録商標)AQ-2610
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0085】
例13
32.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 921w/85WA
15.00 pbw Resimene(登録商標)AQ-2610
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0086】
例14
47.90 pbw Primere(登録商標)70 0867L
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0087】
【0088】
例15
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
41.88 pbw Exolit(登録商標)855
0.00 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw Hypersal XT 782
【0089】
例16
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
27.65 pbw Exolit(登録商標)855
14.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw Hypersal XT 782
【0090】
例17
37.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
42.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw Hypersal XT 782
【0091】
例18(比較)
57.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
12.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0092】
例19
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
9.23 pbw Genamin(登録商標)Gluco 50
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0093】
例20
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
4.00 pbw 70%ソルビトール水溶液
5.23 pbw Genamin(登録商標)Gluco 50
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0094】
例21
47.90 pbw Maprenal(登録商標)MF 920w/75WA
32.65 pbw Exolit(登録商標)855
5.23 pbw 70%ソルビトール水溶液
4.00 pbw Genamin(登録商標)Gluco 50
7.38 pbw Chinafill 100
2.34 pbw p-トルエンスルホン酸
0.5 pbw BYK 333
【0095】
【0096】
発熱速度(heat emission rate)および透明度に関する本発明のクリアコート調製物の品質の試験
走行中の鉄道車両に使用され、室内の垂直表面に、および他の表面に施用される材料は、熱放射の作用下での発熱速度に関して、対応する要求を満たさなければならない。発熱速度は、水平位置で試験片への照射によって確認される。試験の手順および結果の評価は、規格ISO 5660-1およびDIN EN 45545-2に基づく。
【0097】
コーンカロリーメーターでの試験のためのEN45545-2による評価基準は、MARHE値である。これは、測定期間中の平均発熱速度の最大値であり、3回の個々の試験からの平均値として確定される。MARHE値は、対応する危険レベル(HL2<90kW/m2;HL3<60kW/m2)を与える。
【0098】
このようにして製造した各発泡性防炎調製物の400g/m2の量を、硬いトウヒ板(100×100×20mm)に施用し、ISO5660-1(コーンカロリーメーター試験)による発熱性試験に供した。MARHE値は、選択した試験パラメータ下での表面積(kW/m2)に基づく発熱速度を示す。発熱性が低いほど、発泡性防炎コーティングの断熱効果はより良好である。
【0099】
透明度
光波を透過する材料の能力は、透明度と呼ばれる。材料は、380ナノメートル(nm)~780nmの範囲の波長を有する可視光に対して透過性である場合、透明であると記載される。従って、材料、例えば窓ガラスは、その背後にあるものを比較的明瞭に見ることができる場合には透明であると記載される。これはまた、本発明の範囲内においても当てはまる。
【0100】
これにより、表4に示す試験結果を得た。
【0101】
【0102】
ドイツの学校評価系により評価を行う。評価1は「最も高い透明性、ヘーズなし」を意味し、下は評価6:「低い透明性、顕著なヘーズ」まで至る。
【0103】
リン酸部分エステル(ここではExolit(登録商標)855)を使用する本発明のクリアコート調製物は全て透明であり、従って有効な透明の発泡性防炎コーティングの製造のために優れた適合性を有する。
【0104】
さらに、本発明のクリアコート調製物は、MARHE値から明らかなように、低い発熱性のみを有する。従って、発泡性防炎コーティングの形態の本発明のクリアコート調製物は、良好な断熱効果を有する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.20重量%~88.5重量%の水性合成樹脂調製物、10重量%~60重量%のリン酸部分エステル、0.5重量%~20重量%のポリオール、および1重量%~30重量%のさらに別の成分、
を含む、発泡性難燃性クリアコート調製物。
2.30重量%~75重量%の水性合成樹脂調製物、20重量%~50重量%のリン酸部分エステル、3重量%~15重量%のポリオール、および2重量%~20重量%のさらに別の成分を含む、上記1に記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
3.40重量%~60重量%の水性合成樹脂調製物、30重量%~40重量%のリン酸部分エステル、5重量%~10重量%のポリオール、および5重量%~15重量%のさらに別の成分を含む、上記1または2に記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
4.前記ポリオールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、および/またはペンタエリスリトールのポリ縮合物、および/またはペンタエリスリトールをベースとするエステルの混合物、グリセロール、オリゴマーグリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、グルシトール、トレイトール、エリスリトール、アラビトール、イノシトール、グルコサミン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびエチレンオキシド-プロピレンオキシドポリオールである、上記1~3のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
5.前記ポリオールがソルビトールである、上記1~4のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
6.前記リン酸部分エステルが、オルトリン酸と1または複数のポリオールとのモノ-およびジエステルの混合物に相当する組成物であり、ここで、これらのポリオールの平均ヒドロキシル基含有量は少なくとも40重量%であり、モノエステル/ジエステルモル比は12:1を超えず、前記混合物のリン含有量は少なくとも10重量%である、上記1~5のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
7.前記リン酸部分エステルが、オルトリン酸と1または複数のポリオールとの、任意選択的にカルボン酸無水物で修飾されたモノ-およびジエステルの混合物に相当する組成物であり、ここで、これらのポリオールの平均ヒドロキシル基含有量は少なくとも40重量%であり、モノエステル/ジエステルモル比は12:1を超えず、前記混合物のリン含有量は少なくとも10重量%である、上記1~6のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
8.前記水性合成樹脂調製物が、窒素含有合成樹脂調製物である、上記1~7のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
9.前記水性合成樹脂調製物が、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂および/または尿素-ホルムアルデヒド樹脂である、上記1~7のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
10.前記のさらに別の成分が、分散剤、フィラー、硬化剤、チキソトロープ剤、可塑剤、酸供与体、さらに別の難燃剤、表面助剤および/またはバインダーである、上記1~9のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
11.硬化後のリン含有量が1重量%~15重量%である、上記1~10のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
12.硬化後のリン含有量が5重量%~10重量%である、上記1~10のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
13.施用および乾燥後に透明である、上記1~12のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
14.ハロゲン不含である、上記1~13のいずれか1つに記載の発泡性難燃性クリアコート調製物。
15.木材、木質材料、ベニヤ、プラスチック、建築材料、セルロース材料、ゴム、金属および他の材料、合成または天然繊維から作製された布帛でできた物品のコーティングの生成のための、ならびに織物および皮革の含浸のための、ならびにポリオレフィン上の発泡性防炎コーティングとしての、およびソルダーマスクとしての、上記1~13のいずれか1つに記載のクリアコート調製物の使用。