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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】素子実装基板およびSAWセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240809BHJP
   G01N 29/02 20060101ALI20240809BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H05K1/02 N
G01N29/02 501
H03H9/25 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022566949
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2021044007
(87)【国際公開番号】W WO2022118864
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020199645
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岸本 恭介
(72)【発明者】
【氏名】勝田 宏
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-195852(JP,A)
【文献】特開2006-157257(JP,A)
【文献】特開2003-297982(JP,A)
【文献】特開2013-153412(JP,A)
【文献】特開平10-303689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
G01N 29/02
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層上に配された入力用配線および出力用配線と、
前記絶縁層上に配され、前記入力用配線および前記出力用配線の周囲に位置しているとともに、前記絶縁層が露出した露出領域を有したグランド層と、を備え、
前記グランド層の前記露出領域は、前記入力用配線および前記出力用配線が近接する領域と重なり、
前記入力用配線上に配され、外部素子と接続される第1端子、および前記第1端子と接続された第1配線を有し、
前記出力用配線は、前記外部素子と接続される第2端子、および前記第2端子と接続された第2配線を有し、
前記第1端子および前記第2端子は、前記グランド層と同じ前記絶縁層上に配されるとともに、前記絶縁層の前記グランド層とは異なる面上に配された、素子実装基板。
【請求項2】
前記入力用配線は、前記第1端子とは異なる第3端子を有し、
前記出力用配線は、前記第2端子とは異なる第4端子を有する、請求項に記載の素子実装基板。
【請求項3】
前記第3端子および前記第4端子は、前記絶縁層の前記第1端子および前記第2端子とは異なる面上に配された、請求項に記載の素子実装基板。
【請求項4】
前記第3端子および前記第4端子は、前記絶縁層の前記第1端子および前記第2端子と同じ面上に配された、請求項に記載の素子実装基板。
【請求項5】
前記グランド層は絶縁体により被覆されている、請求項1~のいずれか1項に記載の素子実装基板。
【請求項6】
前記露出領域は絶縁体により被覆されている、請求項1~のいずれか1項に記載の素子実装基板。
【請求項7】
前記露出領域は前記絶縁層のいずれか一辺まで達している、請求項1~のいずれか1項に記載の素子実装基板。
【請求項8】
前記露出領域は前記絶縁層のいずれか一辺から前記一辺と異なる他の辺まで達している、請求項1~のいずれか1項に記載の素子実装基板。
【請求項9】
前記露出領域は前記絶縁層のいずれか一辺からその対辺まで達している、請求項1~のいずれか1項に記載の素子実装基板。
【請求項10】
前記露出領域を複数有する、請求項1~のいずれか1項に記載の素子実装基板。
【請求項11】
請求項1~1のいずれか1項に記載の素子実装基板に、
前記入力用配線と接続された弾性波を発生させる第1電極、前記出力用配線と接続された前記弾性波を受信する第2電極、および前記弾性波を伝播させる素子基板、を有するSAW素子を実装した、SAWセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素子実装基板およびSAWセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々のセンサ、及びセンサ装置について小型化する技術が求められている。例えば、小型化や高周波化が可能なSAW(Surface Acoustic Wave)センサを提供する技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2007-225546号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施形態に係る素子実装基板は、絶縁層と、前記絶縁層上に配された入力用配線および出力用配線と、前記絶縁層上に配され、前記入力用配線および前記出力用配線の周囲に位置しているとともに、前記絶縁層が露出した露出領域を有したグランド層と、を備える。さらに、前記グランド層の前記露出領域は、前記入力用配線および前記出力用配線が近接する領域と重なっている。
【0005】
本開示の一実施形態に係る測定装置は、前記素子実装基板に、前記入力用配線と接続された弾性波を発生させる第1電極、前記出力用配線と接続された前記弾性波を受信する第2電極、および前記弾性波を伝播させる素子基板、を有するSAW素子、を実装した測定装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るセンサ装置の概略図である。
図2】第1実施形態に係るSAW素子の概略図である。
図3A】第1実施形態に係る素子実装基板の上面図である。
図3B】第1実施形態に係る素子実装基板の下面図である。
図3C】第1実施形態に係る素子実装基板のI-I´線での断面図である。
図3D】第1実施形態に係る素子実装基板のII-II´線での断面図である。
図3E】第1実施形態に係る素子実装基板のIII―III´線での断面図である。
図4A】第2実施形態に係る素子実装基板の下面図である。
図4B】第2実施形態に係る素子実装基板のI-I´線での断面図である。
図5A】第3実施形態に係る素子実装基板の上面図である。
図5B】第3実施形態に係る素子実装基板の下面図である。
図5C】第3実施形態に係る素子実装基板のI-I´線での断面図である。
図6A】第4実施形態に係る素子実装基板の下面図である。
図6B】第4実施形態に係る素子実装基板のI-I´線での断面図である。
図7】第4実施形態に係る素子実装基板の変形例の下面図である。
図8】第4実施形態に係る素子実装基板の変形例の下面図である。
図9A】第5実施形態に係る素子実装基板の下面図である。
図9B】第5実施形態に係る素子実装基板のI-I´線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
以下、図面を適宜用いて、本開示の第1実施形態に係るSAWセンサ装置1について説明する。
【0008】
図1に、第1実施形態に係るSAWセンサ装置1の概略を示す。
【0009】
SAWセンサ装置1は、測定対象(検体)から特定の物質を標的として検出することができる。SAWセンサ装置1は、特定の物質を検出可能とするSAW素子10(外部素子)と、SAW素子10が実装された素子実装基板100とを備える。SAW素子10は、素子実装基板100と電気的に接続されている。
【0010】
図2に、第1実施形態に係るSAW素子10の概略を示す。
【0011】
SAW素子10は、素子基板(以下、本明細書では「圧電基板」という)11と、反応部12と、第1電極(以下、本明細書では「入力用IDT(Interdigital Transducer)電極」という)13と、第2電極(以下、本明細書では「出力用IDT電極」という)14とを備える。反応部12は、圧電基板11上に配され、検体中の特定の物質と反応する。入力用IDT電極13は、電気信号を受信し変換した弾性表面波(弾性波)を反応部12に向かって伝播させる。出力用IDT電極14は、反応部12を通過した弾性表面波を受信して電気信号へ変換する。また、反応部12は、入力用IDT電極13および出力用IDT電極14に挟まれるように位置している。
【0012】
圧電基板11は、入力用IDT電極13から発せられた弾性表面波を伝播させることができる。圧電基板11は、例えば、水晶、タンタル酸リチウム(LiTaO3)単結晶、またはニオブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶などの圧電性を有する単結晶の基板から形成されていればよい。
【0013】
反応部12は、前述の通り、圧電基板11上に配され、検体中の特定の物質と反応することができる。反応部12は、圧電基板11の上面に形成された金属膜と、金属膜の上面に固定化された、特定の物質と反応する反応物質とを有する。金属膜は、金層からなる単層構造としてもよく、チタン層およびチタン層上に位置する金層の二層構造、あるいは、クロム層およびクロム層上に位置する金層の二層構造などの複数層構造とすることができる。また、金属膜に代えて、例えば、SiO2、TiO2などの酸化膜を用いてもよい。反応物質は、検出対象の被検出物に応じて適宜選択すればよく、例えば、検体液中の特定の細胞または生体組織などを被検出物とするときは、核酸やペプチドからなるアプタマーや抗体を用いることができる。
【0014】
入力用IDT電極13は、所定の弾性表面波を発信することができる。出力用IDT電極14は、入力用IDT電極13からの弾性表面波を受信することができる。入力用IDT電極13および出力用IDT電極14は圧電基板11上に配されている。入力用IDT電極13は、2本の電極指を有している。また、出力用IDT電極14は、2本の電極指を有している。また、前述の通り、入力用IDT電極13、出力用IDT電極14、反応部12は同一直線上に位置している。入力用IDT電極13、および出力用IDT電極14は、例えば金の薄膜層などからなる単層構造としてもよく、圧電基板11側からチタン層、金層およびチタン層の三層構造、あるいはクロム層、金層およびクロム層の三層構造などの複数層構造としてもよい。
【0015】
SAW素子10、またSAW素子10の各構成要素は周知の製法で製造することができる。
【0016】
図3A~Eに、素子実装基板100の概略を示す。図3A、Bにおいて素子実装基板100の表面は絶縁体150に被覆されているが、説明のために第1配線124、第2配線134、露出領域141を破線で示している。
【0017】
素子実装基板100は、SAW素子10を支持し、SAW素子10に電気信号を供給することができる。素子実装基板100は、第1絶縁層110と、入力用配線120および出力用配線130と、グランド層140と、を備える。入力用配線120および出力用配線130は、第1絶縁層110上に配され、SAW素子10と接続される。グランド層140は、入力用配線120および出力用配線130と同じ層に位置し、入力用配線120および出力用配線130の周囲に位置している。
【0018】
第1絶縁層110は、基板として機能し、SAW素子10、入力用配線120、出力用配線130およびグランド層140を支持することができる。第1絶縁層110は、樹脂材料、セラミック材料、ガラス材料等の誘電体、またはそれらの複合材料等から形成されていればよい。樹脂材料は、例えば、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂等であればよい。また、セラミック材料は、例えば、シリカ、アルミナまたはジルコニア等であればよい。
【0019】
入力用配線120は、外部からの電気信号をSAW素子10の入力用IDT電極13へと伝送することができる。また、出力用配線130は、SAW素子10の出力用IDT電極14にて変換された電気信号を外部へと伝送することができる。入力用配線120は、第1絶縁層110上に配され、SAW素子10の入力用IDT電極13と電気的に接続している。また、出力用配線130は、第1絶縁層110上に配され、SAW素子10の出力用IDT電極14に電気的に接続している。
【0020】
入力用配線120は、入力用IDT電極13が有する2本の電極指のうち1本と接続される第1端子121を有する。出力用配線130は、出力用IDT電極14が有する2本の電極指のうち1本と接続される第2端子131を有する。第1端子121および第2端子131は、金、鉛等の薄膜などからなる単層構造、またニッケルと金、チタンと金などからなる二層構造、またニッケルとパラジウムと金などからなる三層構造など、金属材料から形成されていればよい。第1端子121および第2端子131は、周知の製法で形成することができるが、本実施形態においては、例えば、無電解メッキにより形成される。
【0021】
また、入力用配線120は、外部機器と接続される外部接続端子122を有する。出力用配線130は、外部機器と接続される外部接続端子132を有する。外部接続端子122、132は、例えば外部電気信号源等と接続され、SAWセンサ装置1へと電気信号を供給する。外部接続端子122、132は、金、鉛等の薄膜などからなる単層構造、またニッケルと金、チタンと金などからなる二層構造、またニッケルとパラジウムと金などからなる三層構造など、金属材料から形成されていればよい。外部接続端子122、132は、周知の製法で形成することができるが、本実施形態においては、例えば、無電解メッキにより形成される。
【0022】
また、入力用配線120は、第1端子121、外部接続端子122と接続される第1配線124を有する。また、出力用配線130は、第2端子131、外部接続端子132と接続される第2配線134を有する。素子実装基板100は、これらの構成を有することで、SAW素子10や外部機器等とワイヤボンディングなどの接続方法で接続することができるとともに、メッキにより接続部分の劣化を抑えることができる。
【0023】
第1配線124および第2配線134は、銅やアルミニウムなどの金属材料から形成されていればよい。第1配線124および第2配線134は、周知の製法で形成することができる。本実施形態においては、第1配線124および第2配線134は、例えば、第1絶縁層110上に配された銅箔を基に、第1配線124および第2配線134の外縁に空隙等を設け、絶縁を施すことにより、グランド層140と同時に形成される。
【0024】
入力用配線120は、第3端子123を有する。また、出力用配線130は、第4端子133を有する。第3端子123は、第1配線124と接続されている。また、第4端子133は第2配線134と接続されている。第3端子123および第4端子133は、プローブ用端子として用いることができ、例えばSAW素子10実装後の性能試験に使用することができる。第3端子123および第4端子133は、適宜、省略してもよい。この場合、外部接続端子122、132をプローブ用端子として用いてもよい。また外部接続端子122、132の代わりに、第3端子123および第4端子133を、外部電気信号源等と接続するために用いることも可能である。この場合、外部接続端子122、132は、適宜、省略してもよい。
【0025】
第3端子123および第4端子133は、金、鉛等の薄膜などからなる単層構造、またニッケルと金、チタンと金などからなる二層構造、またニッケルとパラジウムと金などからなる三層構造など、金属材料から形成されていればよい。第3端子123および第4端子133は、周知の製法で形成することができるが、本実施形態においては、例えば、無電解メッキにより形成される。
【0026】
グランド層140は、入力用IDT電極13が有する2本の電極指の、入力用配線120に接続されている電極指とは別の電極指と電気的に接続され、電位の基準としての役割を果たすことができる。また、グランド層140は、出力用IDT電極14が有する2本の電極指の、出力用配線130に接続されている電極指とは別の電極指と電気的に接続され、電位の基準としての役割を果たすことができる。
【0027】
グランド層140は、SAW素子10の入力用IDT電極13および出力用IDT電極14と電気的に接続される端子を有する。また、グランド層140は、外部機器と接続される端子を有する。グランド層140は、外部機器と接続される端子を有することで、例えば、外部機器等を介して接地することができる。
【0028】
グランド層140は、銅やアルミニウムなどの金属材料から形成されていればよい。グランド層140は周知の製法で設けることができる。本実施形態においては、グランド層140は、例えば、第1絶縁層110上に配された銅箔を基に、第1配線124および第2配線134の外縁と空隙等を設け、絶縁を施すことにより、第1配線124および第2配線134と同時に形成される。
【0029】
グランド層140は、前述のとおり、入力用配線120、出力用配線130の周囲に位置している。また、グランド層140は第1絶縁層110が露出した、露出領域141を有する。露出領域141は、入力用配線120と出力用配線130との間に位置しており、入力用配線120および出力用配線130が近接する領域と重なっている。
【0030】
ここで、従来、グランド層は、インピーダンスを小さくするために、広範囲に設けていた。そのため、例えば単層の基板上に配線およびグランド層を配置する場合には、配線以外の部分の全域にグランド層を配置することがある。しかしながら、このような基板を小型化すると、配線間の距離が短くなり、入力用配線からグランド層を介して出力用配線に電流が漏れ出てノイズとなり、センサ装置の測定精度が低下する恐れがあった。
【0031】
これに対して、本実施形態では、上述の通り、グランド層140が露出領域141を有しており、露出領域141は入力用配線120および出力用配線130が近接する領域と重なっている。すなわち、入力用配線120と出力用配線130との間に露出領域141から露出した第1絶縁層110が位置している。このため入力用配線120と出力用配線130との間にグランド層140が位置している場合と比較して、入力用配線120から出力用配線130への電流漏れを低減させることができ、ひいては、SAWセンサ装置1の測定精度を向上させることができる。
【0032】
本実施形態では、露出領域141は、素子実装基板100の一辺からその対辺まで達しており、グランド層140は露出領域141によって、入力用配線120と出力用配線130との間で、2つに分離されている。これにより、入力用配線120から漏れた電流が、露出領域141を迂回して出力用配線130に伝達することを防ぐことができるため、よりSAWセンサ装置1の測定精度向上が期待できる。
【0033】
本実施形態の入力用配線120と出力用配線130とは、第3端子123と第4端子133との間で最近接しており(図3BのA-A´間)、第3端子123と第4端子133との間を分離するように露出領域141が位置している。入力用配線120と出力用配線130の最近接部は適宜、変更が可能であり、例えば、第1配線124と第2配線134の間でもよい。また、入力用配線120と出力用配線130の最近接部は、入力用配線120中のいずれかの端子と出力用配線130中の第2配線134との間でもよく、入力用配線120中の第1配線124と出力用配線130中のいずれかの端子との間でもよい。また、入力用配線120と出力用配線130の位置は、適宜入れ替え、変更してもよい。また、単に「近接する領域」という場合は、最近接する部分を含むものである。
【0034】
また、本開示の素子実装基板100は、第1絶縁層110、グランド層140、および入力用配線120および出力用配線130の少なくとも一部を被覆した絶縁体150をさらに有していてもよい。絶縁体150は、被覆した構成要素の劣化を抑える役割を持つ。絶縁体150は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの絶縁体材料が用いられる。
【0035】
第1端子121および第2端子131は、前述の通り、入力用IDT電極13および出力用IDT電極14と接続されている。また、第1端子121および第2端子131は、第1絶縁層110の、グランド層140が配された面とは異なる面上に配されている。これによれば、SAWセンサ装置1の使用時にグランド層140の露出領域141に検体が接触するのを防ぐことができ、ひいては第1絶縁層110の特性(例えば誘電率や絶縁性)が変化することを防ぐことができる。
【0036】
第1端子121および第2端子131は、第1絶縁層110の、グランド層140が配された面と同じ面上に配されていてもよい。本実施形態においては、第1端子121および第2端子131は、ワイヤボンディングによって、入力用IDT電極13および出力用IDT電極14と接続されている。
【0037】
また、第3端子123および第4端子133は、第1絶縁層110の、第1端子121および第2端子131が配された面とは異なる面上に配されている。この際、第1端子121および第2端子131はSAW素子10との接続に用いられることから、第3端子123および第4端子133はSAW素子10が実装される面とは異なる面に位置している。よって、第3端子123および第4端子133が、第1端子121および第2端子131が配された面とは異なる面上に配されている場合、SAWセンサ装置1の使用時に伝送線路上に検体が接触することによってノイズが発生することを防ぐことができる。
【0038】
第3端子123および第4端子133は、第1絶縁層110の、第1端子121および第2端子131が配された面と同じ面上に配されていてもよい。第3端子123および第4端子133が、第1端子121および第2端子131が配された面と同じ面上に配されている場合、第1端子121、第2端子131、第3端子123、第4端子133をそれぞれ同じ工程で配することが可能である。
【0039】
露出領域141は、前述の通り、入力用配線120と出力用配線130との間に位置している。本実施形態においては、露出領域141は、絶縁体150により被覆されているが、この絶縁体150は適宜、省略してもよい。露出領域141が絶縁体150により被覆されている場合、露出領域141の第1絶縁層110を保護することができる。さらに、露出領域141の表面の結露などによる誘電率の変化を防ぐためにも有効である。露出領域141は、例えば、基板上に第1配線124、第2配線134、グランド層140を設ける際に形成、絶縁体150を設けた後に、エッチング等により形成してもよい。
【0040】
本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。以下に素子実装基板の形態で、各種実施形態を示す。
【0041】
例えば、本実施形態では、素子実装基板にSAW素子を実装したSAWセンサ装置として説明してきたが、実装基板に実装するセンサ素子はSAW素子に限らない。例えば、外部電気信号源から素子実装基板を介して電気信号を入力し、素子から素子実装基板を介して電気信号を出力する形態のセンサ装置に用いる素子であれば、本開示の素子実装基板を用いることができ、小型化に伴う電流漏れの低減が期待できる。
【0042】
例えば、本実施形態において、第1端子121と第2端子131、及び第3端子123と第4端子133はそれぞれ基板の同じ面に位置している。さらに、第1端子121と第3端子123、及び第2端子131と第4端子133はそれぞれ基板の異なる面に位置している。しかし、この位置関係は適宜変更してもよい。
【0043】
また、第1配線124および第2配線134は、入力用配線120および出力用配線130中の各端子同士を接続するとともに、各端子を通してSAW素子10へ電気信号を入出力する。第1配線124および第2配線134、およびグランド層140は、第1絶縁層110の同一平面上に配されており、いわゆるコプレーナ構造を形成しているが、第1配線124および第2配線134の構造は、適宜変更し得る。第1配線124および第2配線134の構造は、例えば、コプレーナ・ストリップ構造であってもよい。
【0044】
<第2実施形態>
図4A、Bに、第2実施形態の素子実装基板200の概略を示す。
【0045】
第2実施形態の素子実装基板200は、上記の実施形態とは、多層基板である点で異なる。素子実装基板200は、第1絶縁層211と、第1グランド層240と、第2絶縁層212と、入力用配線220および出力用配線230と、第3絶縁層213と、第2グランド層250と、第4絶縁層214と、を備える。第1グランド層240は、第1絶縁層211上に位置している。第2絶縁層212は、第1グランド層240上に積層されている。入力用配線220および出力用配線230は、第2絶縁層212上に配されている。第3絶縁層213は、入力用配線220および出力用配線230上に積層されている。第2グランド層250は、第3絶縁層213上に位置している。第4絶縁層214は、第2グランド層250上に積層されている。
【0046】
本実施形態における、第1絶縁層211、第2絶縁層212、第3絶縁層213、および第4絶縁層214は、基板として機能することができる。第1絶縁層211、第2絶縁層212、第3絶縁層213、および第4絶縁層214は、同じ材料で形成してもよく、異なる材料で形成してもよい。
【0047】
本実施形態において、入力用配線220と出力用配線230は、第1グランド層240および第2グランド層250と異なる層に位置している。また、入力用配線220および出力用配線230は、各絶縁層を貫通するビアホールを介して、第1絶縁層211上および第4絶縁層214上にも配されている。第1グランド層240、および第2グランド層250は、各絶縁層を貫通するビアホールを介して、第1絶縁層211上および第4絶縁層214上にも配されている。
【0048】
本実施形態において、第1グランド層240および第2グランド層250は、入力用配線220と出力用配線230との間で、2つに分離されており、絶縁層が露出した露出領域241、251を有する。本実施形態においては、露出領域241、251は層間に存在する絶縁体によって被覆されている。この層間の絶縁体は適宜、省略してもよい。
【0049】
本実施形態の入力用配線220と出力用配線230においても、第3端子223と第4端子233との間で最近接している。一方、第1グランド層240は第1絶縁層211上に配されており、第1配線224よび第2配線234との間で電流漏れが発生する恐れがある。よって本実施形態においては、露出領域241は、第1絶縁層211上で第1配線224と第2配線234の間を分離するように位置している。また、第2グランド層250は第3絶縁層213上に配されており、第1配線224および第2配線234との間で電流漏れが発生する恐れがある。よって本実施形態においては、露出領域251は、第3絶縁層213上で第1配線224と第2配線234の間を分離するように位置している。またこの場合も、上面視または下面視より、露出領域241・251は入力用配線220と出力用配線230の最近接する領域と重なっている。
【0050】
第1端子221および第2端子231は、第1絶縁層211上の第1配線224および第2配線234と接続されている。第3端子223、第4端子233、および外部接続端子222、232は、第4絶縁層214上の第1配線224および第2配線234と接続されている。適宜、これらの位置関係は変更可能である。
【0051】
本実施形態において、第1配線224および第2配線234は、各絶縁層を貫通するビアを通して、第1絶縁層211上および第4絶縁層214上にも配されている。また、本実施形態においては、第1配線224および第2配線234、第1グランド層240および第2グランド層250は、ストリップライン構造を形成している。第1配線224および第2配線234の構造は、適宜変更し得る。また、第1グランド層240は第1絶縁層211上の第1端子221と同じ面に位置してもよく、第2グランド層250は第4絶縁層214上の第2端子231と同じ面に位置してもよい。この場合、各グランド層が素子実装基板200内部に位置している場合よりも、外部からの電磁的ノイズを防ぐことができる。
【0052】
<第3実施形態>
図5A~Cに、第3実施形態の素子実装基板300の概略を示す。図5A、Bにおいて素子実装基板300の表面は絶縁体350に被覆されているが、説明のために第1配線324、第2配線334、露出領域341を破線で示している。
【0053】
第3実施形態の素子実装基板300は、備えている構成要素は第1実施形態と大きな違いはないが、グランド層340が、第1絶縁層310の、第1端子321および第2端子331が位置する面と同じ面に配されている点で異なる。
【0054】
本実施形態の入力用配線320と出力用配線330では、第3端子323と第4端子333との間で最近接している。一方、グランド層340は第1絶縁層310の、第1端子321および第2端子331が位置する面と同じ面に配されており、第1端子321よび第2端子331との間で電流漏れが発生する恐れがある。よって本実施形態においては、露出領域341は第1端子321と第2端子331の間を分離するように位置している。
【0055】
本実施形態においては、第1配線324および第2配線334とグランド層340は、マイクロストリップライン構造を形成している。第1配線324および第2配線334の構造は、適宜変更し得る。
【0056】
<第4実施形態>
図6A、Bに、第4実施形態の素子実装基板400の概略を示す。図6Aにおいて素子実装基板400の表面は絶縁体450に被覆されているが、説明のために入力用配線420の一部、出力用配線430の一部、露出領域441を破線で示している。
【0057】
第4実施形態の素子実装基板400は、備えている構成要素は第1実施形態と大きな違いはないが、グランド層440が分離され、第1絶縁層410が露出している露出領域441を2つ備えている点で異なっている。本実施形態において、露出領域441は3個以上存在してもよい。素子実装基板400が、入力用配線420と出力用配線430の近接する領域が複数あるような複雑なシグナルパターンを有する場合には、各近接領域に露出領域441を有することで、各近接領域での電流漏れを低減させることができる。また、本実施形態のように、露出領域441に挟まれたグランド層440を有することで、電流漏れの影響を抑えつつ、入力用配線420と出力用配線430の間に新たな配線を配することも可能である。
【0058】
また、グランド層440が完全に分離されていなくてもよく、例えば上端のみ、または下端のみ、接続されている形状でもよい(例えば図7の下端のみ接続されている形態)。これによれば、入力用配線420から漏れた電流がグランド層440を伝達する距離を長くすることができ、電流漏れの低減が期待できる。またこの場合、接続箇所を上端と下端の交互にすることで、露出領域441により分離されたグランド層440の形状が蛇行しているような形状にすることも可能である(例えば図8の形態)。これによれば、露出領域の幅を長くすることなく入力用配線420から漏れた電流がグランド層440を伝達する距離をさらに長くすることができ、さらなる電流漏れの低減が期待できる。また、電流漏れはある程度幅を持って分布しているため、グランド層440の外部機器と接続される端子同士の間のみ分離されている形状においても、一定の効果が期待できる。
【0059】
<第5実施形態>
図9A、Bに、第5実施形態の素子実装基板500の概略を示す。図9Aにおいて素子実装基板500の表面は絶縁体550に被覆されているが、説明のために入力用配線520の一部、出力用配線530の一部、露出領域541を破線で示している。
【0060】
第5実施形態の素子実装基板500は、備えている構成要素は第1実施形態と大きな違いはないが、グランド層540が分離され、第1絶縁層510が露出している露出領域541が、入力用配線520と出力用配線530の最近接部のみに存在する点で異なっている。
【0061】
電流漏れは、入力用配線520と出力用配線530の最近接部でもっとも起きやすい。そのため、少なくとも入力用配線520と出力用配線530の最近接部が分離されていれば、電流漏れ低減の効果が期待できる。また、他実施形態と比較して、露出領域541が素子実装基板500上を占める面積が小さいことから、電流漏れを低減しつつ、グランド層540の面積を広く保持することができる。
【0062】
以上の記載では、本開示を明瞭に開示するためにいくつかの実施形態に関し説明してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例および代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。また、いくつかの実施形態に示した各要件は、自由に組み合わせが可能である。例えば、上述の実施形態の各構成要素、工程を適宜組み合わせて、SAWセンサ装置、素子実装基板を構成してもよい。
【0063】
本明細書中の実施形態に係るSAWセンサ装置、または素子実装基板は、周知の製法で製造することができるが、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 SAWセンサ装置
10 SAW素子
11 圧電基板
12 反応部
13 入力用IDT電極
14 出力用IDT電極
100,200,300,400,500 素子実装基板
110,310,410,510 第1絶縁層
120,220,320,420,520 入力用配線
121,221,321 第1端子
122,222 外部接続端子
123,223,323 第3端子
124,224 第1配線
130,230,330,430,530 出力用配線
131,231,331 第2端子
132,232 外部接続端子
133,233,333 第4端子
134,234 第2配線
140,340,440,540 グランド層
141,341,441,541 露出領域
150,350,450,550 絶縁体
211 第1絶縁層
212 第2絶縁層
213 第3絶縁層
214 第4絶縁層
240 第1グランド層
241 露出領域
250 第2グランド層
251 露出領域

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B