(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】模型部品、及び、模型部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20240809BHJP
A63H 3/36 20060101ALI20240809BHJP
A63H 9/00 20060101ALI20240809BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B29C45/16
A63H3/36 Z
A63H9/00 Q
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2023028818
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2019133859の分割
【原出願日】2018-11-26
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】山上 篤史
(72)【発明者】
【氏名】望月 時道
(72)【発明者】
【氏名】志田 健二
(72)【発明者】
【氏名】原 章
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169801(JP,A)
【文献】特開2001-225349(JP,A)
【文献】特開2001-206058(JP,A)
【文献】特開平08-320658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型部品の製造方法であって、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うよう
に第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と、
前記第1の層の、前記第2の層が成形され
ていない面の少なくとも一部を覆うように、前記第2の色の第2の材料を用いて第3の層を成形する第3の工程と
を含
み、
前記第2の層及び前記第3の層の少なくともいずれかは、
厚みが異なることにより前記第1の層が視認される
程度が異なる第1の部
分を含むように成形される、模型部品の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程では、前記第1の工程において前記第1の層を成形するために使用された成形型を用いて前記第1の層の前記
第2の層が成形されていない面が支持され
る、
請求項1に記載の模型部品の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程では、前記第2の工程において前記第2の層を成形するために使用された成形型を用いて前記第2の層が支持される、請求項1または2に記載の模型部品の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程では、前記第1の層の前記第2の層が成形されていない面が支持された状態で前記第2の層が成形される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の模型部品の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程では、前記第2の層が支持された状態で前記第3の層が成形される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の模型部品の製造方法。
【請求項6】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であっ
て、第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、
厚みが異なることにより前記第1の層が視認される
程度が異なる第1の部
分を含むように構成され
、
前記第1の層は、前記第1の材料で形成された第1のランナーと接続され、前記第1のランナーは前記模型部品が他の模型部品と組み合わされて完成品を構成する場合に、前記他の模型部品との接続部材として用いられる、模型部品。
【請求項7】
前記第1の部分における前記第2の層の膜厚が周方向において変化するように構成される、請求項6に記載の模型部品。
【請求項8】
前記接続部材として用いられる前記第1のランナーは、前記第2の層の表面に露出していることを特徴とする請求項6
又は7に記載の模型部品。
【請求項9】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分を含み、前記第1の部分における前記第2の層の膜厚が周方向において変化するように構成される、模型部品。
【請求項10】
前記第1の色の透明度は前記第2の色の透明度よりも低いことを特徴とする請求項
6ないし9のいずれか一項に記載の模型部品。
【請求項11】
前記第2の色は半透明であることを特徴とする請求項
10に記載の模型部品。
【請求項12】
前記第1の色は不透明であり、前記第2の色は半透明であることを特徴とする請求項
11に記載の模型部品。
【請求項13】
前記第1の色は半透明であり、前記第2の色は半透明であることを特徴とする請求項9に記載の模型部品。
【請求項14】
前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むことを特徴とする請求項
6から
13のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項15】
前記第1の材料はポリスチレン(PS)であって、前記第2の材料は汎用ポリスチレン(GPPS)である、請求項
6から
14のいずれか1項に記載の模型部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型部品及び模型部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるプラモデル(登録商標)と呼ばれるような組み立て模型の部品(パーツとも言う)、例えば、玩具の顔に着色する際は、一か所一か所、人の手で色を塗ったり、彩色個所に開口部が設けられたマスクを利用してスプレーで塗装したりすることが行われている(特許文献1を参照)。また、複数の印刷機とコンベアを備えた彩色装置を利用して塗装を自動化したものも提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平3-34226号公報
【文献】特開平8-47585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、色が段階的に濃くなっていくようなグラデーションを施すには技量が必要であり、品質を安定させるのは困難である。また、塗装用の彩色装置を用いる場合、追加の設備投資や、設備が大型化するという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
模型部品の発明は、
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有し、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成される。
また、模型部品の製造方法の発明は、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と、
前記第1の層の、前記第2の層が成形されていない面の少なくとも一部を覆うように、前記第2の色の第2の材料を用いて第3の層を成形する第3の工程と
を含み、
前記第2の層及び前記第3の層の少なくともいずれかは、厚みが異なることにより前記第1の層が視認される程度が異なる第1の部分を含むように成形される。
【0007】
模型部品の製造方法の発明は、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と、
前記第1の層の、前記第2の層が成形された面の反対側の面の少なくとも一部を覆うように、前記第2の色の第2の材料を用いて第3の層を成形する第3の工程と
を含み、
前記第2の工程では、前記第1の層の前記反対側の面が支持された状態で前記第2の層が成形され、
前記第3の工程では、前記第2の層が支持された状態で前記第3の層が成形され、
前記第2の層及び前記第3の層の少なくともいずれかは、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように成形される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法に従って作製される成形物を説明するための図である。
【
図3】発明の実施形態に対応する模型部品の構造を説明するための図である。
【
図4】発明の実施形態に対応する模型部品の断面構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ参照符号は、同じ要素を示している。また、各図において、紙面における上下左右方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。なお本発明は、以下に説明する実施形態おいて成形材料としてポリスチレンを例示するがこれに限定されず、他の材質(ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等)の利用を排除するものではない。
【0011】
まず、発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法を、
図1のフローチャートに従って説明する。S101では、模型部品の骨格部分を構成する1次成形層を形成するための1次成形を行う。1次成形層の成形材料(素材)としては、不透明のポリスチレン(PS)または強化ポリスチレン(KPS)を使用することができる。次に、S102では、1次成形層の表面に、1次成形層の半面を覆うように2次成形層を形成するための2次成形を行う。2次成形層の成形材料としては例えば透明または半透明の汎用ポリスチレン(GPPS)を使用することができる。続くS103では、1次成形層の表面の残りの部分に、1次成形層を覆うように3次成形層を形成するための3次成形を行う。2次成形層及び3次成形層は模型部品の外側表面(外皮部)を形成することになるが、2次成形層と3次成形層との厚みに応じて、下側に形成された1次成形層の色が透ける程度が異なるように形成されている。
【0012】
上記の工程において、1次成形層を構成する成形材料は不透明の色(例えば、青、緑、その他の色、例えば、ソリッドカラー、メタリックカラー、パールカラー等)、或いは、透明(半透明を含む)の色(例えば、青、緑、その他の色)を有する一方、2次成形層及び3次成形層の成形材料は、透明または半透明の色を有する。例えば、模型部品が人形の髪の毛のパーツを構成する場合に、表面を構成する2次成形層及び3次成形層はクリアホワイト(半透明の白色)であるのに対して、1次成形層は濃い青、あるいは、濃い緑色などとすることができる。2次成形層及び3次成形層の色と1次成形層の色とは同系色であってもよいし、互いに類似色や反対色であってもよい。本実施形態では、このように1次成形層と、2次成形層及び3次成形層とを異なる色の成形材料で形成し、かつ、2次成形層及び3次成形層をクリア素材、或いは、半透明の素材を使用して形成することで、その下にある色の異なる1次成形層が透けて見えるようにすることで、グラデーションを表現可能にする。
【0013】
また、各成形層の成形材料の材質については、1次成形層、2次成形層及び3次成形層を互いに結合させて一体化させるため、共通の材質とすることができる。上記の例ではPS、KPS、GPPSの性質の違いはあれど、ポリスチレンとして共通の材料を用いている。ポリスチレン以外にも、例えばABS樹脂やポリエチレン(PE)等を共通に用いてもよい。また、一部の層に異なる材質の素材を用いてもよい。
【0014】
上記の3段階の成形工程からなる模型部品の製造方法は、例えば多色成形装置を用いて実施することができる。各成形工程では、その工程に対応する成形型を使用する。具体的には、成形型のランナー溝や各部品を成形するための成形空間(キャビティ)に成形材料を流入させて成形物を形成し、冷却した後に成形型から成形物が取り出される。1次成形、2次成形で作製された成形物については、それぞれ次の成形工程の成形型に取り付けられて、2次成形あるいは3次成形が実行される。多色成形装置を用いた成形方法そのものは公知であるため、より詳細な説明は省略する。
【0015】
また、上記においては1次成形層を1回の成形工程の実施により成形する場合を説明したが、成型しようとする1次成形層の厚みに応じて、1次成形層を分割し1次成形を2回実施してもよい。この場合、実施される成形工程は4段階となる。1次成形層を2回に分けて成形することにより、成形上の凹み、歪みを低減し、均一の見栄えの成形物を作成することができる。
【0016】
次に、
図2を参照して、本実施形態に対応する
図1の成形方法に従い、1次成形層から3次成形層までの成形手順について説明する。
図2は、成型過程における成形型及び成形物の断面図である。
図2(A)と
図2(B)とはS101における1次成形に対応する。
図2(A)に示すように、成形型(雄型201と雌型202、雄型、雌型の割当は逆であってもよい。)は、成型しようとする1次成形層に対応するキャビティ203を有しており、部品を形成するためにこのキャビティ203に対して不図示の主ランナー及び副ランナーを介して成形材料を流入させる。
【0017】
そして、
図2(B)に示すように、雄型201と雌型202とを用いた1次成形において、成形物204が作製される。当該成形物204は主ランナー、副ランナー、1次成形層で構成される。成形物204は、ポリスチレン(PS)で形成されている。主ランナーは部品の周囲を取り囲むように形成され、部品は、副ランナーを介して主ランナーと接続されることで、主ランナーに対して固定される。また、主ランナー及び副ランナーとは、成形型201及び202におけるキャビティ203に成形材料を流入させるための溝に対応している。S101の1次成形においては、成形型201及び202の主ランナー溝から副ランナー溝を介して、キャビティ203に成形材料を流入させ、キャビティ、主ランナー溝及び副ランナー溝のすべてに成形材料を充填させたのち、冷却することにより1次成形層を含む成形物204を作製することができる。
【0018】
次にS102の2次成形において、1次成形層の上側を覆うように2次成形層が形成される。
図2(C)及び
図2(D)はS102における2次成形に対応する。
図2(C)に示すように、成形型211と成形物204との間で、2次成形において形成しようとする2次成形層に対応するキャビティ212が形成され、このキャビティ212に対して不図示の主ランナー及び副ランナーを介して成形材料を流入させる。これにより
図2(D)に示すように2次成形層を含む成形物213が形成され、1次成形層は、汎用ポリスチレン(GPPS)により少なくとも一部が覆われる。成形物213は、主ランナー、副ランナー、2次成形層で構成される。本実施形態では、主ランナーから副ランナーを介して1次成形層の上側の表面にGPPSを形成することにより、2次成形層が形成される。このとき、1次成形層の下側は、成形型202により支持されているので、成形物204の位置が変動することなく、2次成形層の厚みが所望の厚みとなるよう成形物213を正確に形成することが可能となる。
【0019】
S102の2次成形においては、成形物204を成形型211及び202の内側に固定した後、主ランナー溝から副ランナー溝を介してキャビティ213に成形材料(GPPS)を流入させ、キャビティ213、主ランナー溝及び副ランナー溝のすべてに成形材料を充填させたのち、冷却することにより成形物213を成形物204の上側表面に形成することができる。
【0020】
次にS103の3次成形において、1次成形層の残りの面を覆うように3次成形層が形成される。
図2(E)及び
図2(F)はS103における3次成形に対応する。成形物223は、成形物204の表面のうちで成形物213が形成されていない面を成形材料により覆うことにより形成される。3次成形においては、2次成形において使用した成形型211を下側に配置し、その上側に成形物204との間でキャビティ222を形成する成形型221を配置する。これにより、成形型211により成形物213が形成された成形物204の位置が固定され、3次成形においてキャビティ222の大きさに変動が生ずることを防止できる。このようにして、成形物213が形成された成形物204を成形型221及び211の内側に固定した後、主ランナー溝から副ランナー溝を介してキャビティ222に成形材料(GPPS)を流入させ、キャビティ、主ランナー溝及び副ランナー溝のすべてに成形材料を充填させたのち、冷却することにより成形物223を成形物204の表面に形成することができる。以上により、模型部品を成形することができる。
【0021】
本実施形態では、1次成形層を覆う成形層を2回に分けて形成することとしているが、仮に1回の形成工程において形成しようとする場合、成形型のキャビティ内には成形物203がランナーのみで支持された状態で置かれることとなる。この状態で成形材料が流入してきた際には、その圧力により成形物203の位置が変動することでキャビティ212、222の大きさが変動し、結果として2次成形層及び3次成形層の厚みが予定していた厚みとならなくなってしまうおそれがある。厚みが変動すると、完成した模型部品の外観において所望の色味が得られないことになるため、歩留まりに影響する。これに対して、1次成形層を覆う成形層を2回に分けて形成することで歩留まりを改善することが可能となる。
【0022】
次に
図3を参照して、
図1及び
図2の製造方法に従って製造された模型部品の構造の一例を説明する。
図3(A)は、本実施形態に対応する成形工程により作製された、人形玩具の髪の毛の一部としての模型部品300の一例を示す図である。模型部品300の外側表面303は2次成形層と3次成形層で構成され、2次成形層及び3次成形層で覆われた1次成形層は、その一部が接続部301及びランナー302として外側に露出している。特に、ランナー302は、2次成形層及び3次成形層の表面に露出している。接続部301及びランナー302は、他の部品と接続するための接続部材として機能する。
【0023】
図3(B)は模型部品300を複数の成形層に分離した分離図である。
図3(B)では、1次成形を2回に分けて実施する場合を示している。即ち、1次成形層は、第1成形層311と第2成形層312とで構成され、2次成形層は第3成形層313で構成され、3次成形層は第4成形層314で構成される。第1成形層311及び第2成形層312は模型部品の骨格部を形成し、第3成形層313及び第4成形層314は模型部品の外皮部を形成している。以下、簡単のために第1成形層311及び第2成形層312を「骨格部」と総称し、第3成形層313及び第4成形層314を「外皮部」と総称する。また、
図3(B)では、骨格部の表面を骨格全体に隙間なく成形材料を充填させた構造としているが、部材の間に隙間を含む櫛状あるいは格子状の構造としてもよい。
【0024】
本実施形態において、外皮部は、骨格部を覆うように形成され、その表面には凹凸が形成されており、この凹凸により厚みが調整される。外皮部は模型部品200の表面を形成する成形層であって、模型の所望の外形に応じた表面を有している。模型部品200は人形玩具の髪の毛の一部であるため、外皮部の表面形状により髪型が表現されている。
【0025】
骨格部と外皮部との外側表面の形状を比較すると、互いに相似形である部分と、相似形でない部分とを含むように構成されている。相似形の部分は、外皮部の厚みが所定値に保たれる。一方、相似形でない部分は、相似形の部分とは異なる厚みを有するように形成されており、厚みの変化に応じて、外皮部を透過して外側から視覚的に認識できる骨格部の色が変化する。例えば、外皮部が半透明(例えば、クリアホワイト)素材で形成されており、骨格部が青色の素材で形成されている場合、クリアホワイトの外皮部を通して骨格部の青色が白濁して見えることになる。このとき、相似形の部分においては外皮部の厚みが一定に保たれるため、半透明の外皮部を通して見える骨格部の色の白濁の度合いは一定である。しかし、外皮部の厚みがより増してくると、白濁の度合いが強くなってくると共に、骨格部が存在しない部分においては外皮部のみの色が認識されることになる。また、外皮部の厚みが薄くなる場合には白濁の度合いが弱くなって青色が濃くなるため、厚みを変化させることにより濃淡を変化させることができる。さらに、骨格部の外形を先細るように構成することで、髪の毛の色が白濁した青色から白に徐々に変化していく様子を表現することができる。また、本実施形態では、外皮部から骨格部(の色)が視認可能な部分と、骨格部が含まれず骨格部(の色)が視認可能でない部分とが連続するように成形を行うことで、色の変化によるグラデーションを表現することができる。ここで、外皮部が2つ以上の成形層を合体して得られる場合に、少なくとも一方が当該構成を有していればよい。
【0026】
次に、本実施形態に対応する模型部品300の断面構造を説明する。
図4(A)は、
図3(A)模型部品300のうち、外皮部の厚みが所定値に保たれている部分の断面を例示的に示す断面図である。
図4(A)の断面図に示すように、模型部品300の外側の面を構成する外皮部は厚みD1を有しており、全体的な厚みは均一である。このように構成された部分では外側から模型部品300を見た場合の色合いは均一に保たれる。一方、
図4(B)は、
図3(A)模型部品300のうち、外皮部の厚みが変化している部分の断面を例示的に示す断面図である。
図4(B)の断面図に示すように、模型部品300の外側の面を構成する外皮部の一部は厚みD1を有している一方で、他の部分では厚みD2、D3を有しており、厚みの大きさはD1<D2<D3となる。このように構成された部分では、厚みの大きさが大きい部分ほど骨格部の色に対する外皮部の色の混色の度合いが大きくなり、外側から模型部品300を見た場合の色合いの変化が大きくなる。例えば、外皮部がクリアホワイトの素材で形成されている場合、厚みが大きくなるほど白濁の度合いが強くなり、D1よりもD2、D2よりもD3の方が骨格部の色味が薄くなる。
【0027】
このようにして外皮部の厚みを部分的に、または、全体的に変化させることにより、模型部品300を外側から見た場合の色合いを異ならせることができる。このとき、外皮部の厚みが連続的に厚くなる部分においては、骨格部の色に対する外皮部の色の混色の度合いが徐々に大きくなるため、最も濃く骨格部の色が透けて見える個所から、徐々に色が薄くなって外皮部自体の色に遷り変わるので、観察者は模型部品300の表面においてグラデーションを観察することができる。
【0028】
グラデーションの見え方は、外皮部の厚みの変化のさせかたの違いによって異ならせることが可能である。例えば、厚みの変化の度合いを、急峻とするか、あるいは、緩やかとするかによって、濃い色から薄い色への変化の仕方が異なるため、異なるグラデーション表現を実現することができる。また、厚みを減らす方向に変化させてもよい。これにより、薄い色から濃い色へ変化させることもできる。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することできる。