(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 123/08 20060101AFI20240809BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240809BHJP
C09J 123/14 20060101ALI20240809BHJP
C09J 123/20 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C09J123/08
C09J11/08
C09J123/14
C09J123/20
(21)【出願番号】P 2023037788
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2018233576の分割
【原出願日】2018-12-13
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】高森 愛
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-177009(JP,A)
【文献】特開2016-155916(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099107(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/081632(WO,A1)
【文献】特表2017-516888(JP,A)
【文献】国際公開第2018/217748(WO,A1)
【文献】特開2014-208812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 123/08
C09J 11/08
C09J 123/14
C09J 123/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体、(B)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体、(C)粘着付与樹脂および(D)ワックスを有し、
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体が(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体を含む、ホットメルト接着剤であって、
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体が、さらに、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体を含み、
(A)~(D)の総重量100重量部に対し、
(A2)が10~40重量部含まれ、(D)が10~30重量部含まれる、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体は、融点が90~140℃、エチレン含有率が5.5~10.0重量%である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(B)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体が(B1)エチレン/酢酸ビニル共重合体を含む、請求項
1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(A1)が5~40重量部含まれる、請求項1
~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
被着体である紙における接着部分と、その複数の接着部分に接着し固化した請求項1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤とを、有してなる紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤、及びホットメルト接着剤を用いて製造された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着(高速セット)が可能であるという特徴を有し、例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」ともいう)等のエチレン系共重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、無定形ポリアルファオレフィン(以下、「APAO」ともいう)等のオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン-イソプレン-スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SIS」ともいう)、スチレン-ブタジエン-スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SBS」ともいう)及びそれらの水素添加物等の合成ゴム、及びポリウレタン等が汎用されている。
【0004】
これらのホットメルト接着剤のなかで、エチレン系共重合体をベースポリマーとしたホットメルト接着剤は、特許文献1及び2に開示されているように、製本及び包装等の紙加工分野や木工分野に利用されることが多い。
【0005】
ホットメルト接着剤を塗布する場合、ホットメルトアプリケーターという専用の塗布装置が用いられることが多い。ホットメルトアプリケーターは吐出口であるノズルを有しており、ホットメルト接着剤は約120~190℃に加熱され、ノズルの先端から吐出されて被着体に塗布される。
【0006】
エチレン系ホットメルト接着剤を塗布する際、ノズルの先端から被着体までの間に、ホットメルト接着剤の糸状物が発生することがある。この糸状物は、ホットメルト接着剤の糸曳き性に起因するものであり、ノズルの周辺又は被着体の接着を意図しない領域を汚してしまう。従って、糸曳きが少なく、塗工性に良好なホットメルト接着剤の開発は、接着剤メーカーにとって重要な責務となっている。
【0007】
例えば、特許文献1のホットメルト接着剤は、エチレン/炭素数3~20のオレフィン共重合体およびエチレンカルボン酸エステル共重合体を特定の割合で含むことで、ホットメルトガンから噴出される際の糸曳を低減している([請求項1]、[表1]~[表2])。
【0008】
しかしながら、特許文献1のホットメルト接着剤は、塗工時の糸曳性は低減されているが、接着後の耐熱性及び高温時の接着性に未だ改善の余地がある。例えば、特許文献1のホットメルト接着剤で接着された段ボール箱を夏に倉庫で保管すると、保管温度が上昇した場合に接着剤の接着強度が低下し、段ボール箱が開いてしまうことがある。
【0009】
特許文献2のホットメルト接着剤は、エチレン/C3~C20α-オレフィン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体および粘着付与樹脂を特定の割合で含み、糸曳が低減されている([請求項1]、[表1])。しかしながら、特許文献2のホットメルト接着剤も、耐熱性及び熱安定性に関しては不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-177009号公報
【文献】特表2008-527067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、本発明の目的は、塗工時の糸曳きが少なく、接着後の耐熱性及び熱安定性に優れるホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体、(B)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体、(C)粘着付与樹脂および(D)ワックスを有し、
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体が(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体を含む、ホットメルト接着剤を提供する。
【0013】
ある一形態においては、(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体は、さらに、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体を含む。
【0014】
ある一形態においては、(B)エチレン-カルボン酸エステル共重合体は(B1)エチレン/酢酸ビニル共重合体を含む。
【0015】
ある一形態においては、(A)~(D)の総重量100重量部に対し、(A1)が5~40重量部含まれる。
【0016】
ある一形態においては、(A)~(D)の総重量100重量部に対し、さらに、(A2)が10~40重量部含まれる。
【0017】
また、本発明は、被着体である紙における接着部分と、その複数の接着部分に接着し固化した上記いずれかのホットメルト接着剤とを、有してなる紙製品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温塗工性及び高速セット性に優れ、低温から高温までの幅広い温度領域で優れた接着性を示すホットメルト接着剤が提供される。例えば、本発明のホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品は優れた耐熱性を示す。
【0019】
本発明に係る紙製品では、塗工を意図しない部分にホットメルト接着剤の糸状落下物が付着していることがない。本発明の紙製品は、接着部分が耐熱性に優れ、広い温度領域で接着強度に優れるので、冷凍庫で保管することもでき、冷凍庫で保管した後、夏場の倉庫で長期間放置することも可能である。本発明の紙製品には、ビール等の飲料を梱包する段ボール包装容器及びカートン等の板紙を含んでなる紙製品が含まれる。
【0020】
尚、板紙とはいわゆる厚紙を意味し、木材パルプ、古紙などを原料とした厚い紙の総称をいう(JIS P 0001 4001)。段ボールは、板紙を波形に成形した中しんの片面又は両面に板紙のライナーを貼ったシートである。ライナーに使用される板紙には、クラフトパルプ及び故紙を原材料とするクラフトライナー(Kライナー)及び故紙を原料とするジュートライナー(Cライナー)等がある。段ボールの典型例には、JIS 1516に記載された外装用段ボールが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレンと炭素数3~20のオレフィンとの共重合体(以下「(A)共重合体」ということがある。)、(B)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体(以下「(B)共重合体」ということがある。)、(C)粘着付与樹脂及び(D)ワックスを必須成分として含む。
【0022】
尚、本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗工することができ、冷却することで硬化し接着する接着剤をいう。
【0023】
<(A)共重合体>
(A)共重合体において「炭素数3~20のオレフィン」は、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、イソブチレン、cis-2-ペンテン、trans-2-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン及び2,3-ジメチル-2-ブテン等を例示できる。炭素数3~10のオレフィンが好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンであることがより好ましい。
【0024】
(A)共重合体として、具体的に、エチレン/オクテン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/エチレン/1-ブテンの3元共重合体、プロピレン/1-ヘキセン/1-オクテンの3元重合体、プロピレン/1-ヘキセン/メチルペンテンの3元共重合体が挙げられる。これらの共重合体は、単独でも複数種類が混合されても良い。
【0025】
(A)共重合体は、(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体を含んでいる。(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体とは、メタロセン触媒を用いてエチレンとプロピレンを重合することで生成される重合体である。メタロセン触媒で生成された重合体は、非常に分子量分布が狭く、結晶性に偏りを生じさせることがない。メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体は、エチレン部位とプロピレン部位との並び方や、各構成単位の含有割合等について均一なので、低分子量体が生じ難い。その結果、本発明のホットメルト接着剤は耐熱性に優れ、高温環境下で優れた接着力を示すと考えられる。
【0026】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の融点は90℃~140℃であるのが好ましい。(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体のエチレン含有率は5.5~10.0重量%であるのが好ましく、特に6.0~9.0重量%が好ましく、7.0~8.0重量%最も望ましい。
【0027】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の融点やエチレン含有率が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、低温から高温までの幅広い温度領域で接着性が向上する。尚、本明細書において、エチレン含有率は、エチレンとαオレフィンとの共重合体の総重量に対するエチレン構造体の割合であり、ASTM法に基づくエクソンモービル法で測定された値とする。
【0028】
(A)共重合体は、さらに、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体を含むことが好ましい。メタロセン系エチレン/オクテン共重合体はメタロセン触媒を用いてエチレンとオクテンを重合することで生成される重合体である。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤は、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体を含むことで、さらに、高温時の接着性が維持されつつ、低温時の接着性や常温時の接着性が向上し、低温塗工性が著しく向上する。
【0030】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体としては、例えば、エクソンモービル社製のビスタマックス(商品名)シリーズが挙げられる。
【0031】
(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体として、例えば、ダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
【0032】
このような(A)共重合体は、単独で又は複数種類を組み合わせて使用することができる。
【0033】
<(B)共重合体>
(B)共重合体において「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」は、具体的に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及び酢酸アリル等のカルボン酸ビニル及びアリルエステル等を例示することができる。
【0034】
本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの双方を表す。
【0035】
本発明では、エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルが(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルであることが好ましく、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルであることが望ましい。
【0036】
好ましい(B)共重合体としては、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/カルボン酸ビニル共重合体、エチレン/カルボン酸アリル共重合体が挙げられる。より好ましい(B)共重合体は、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/カルボン酸ビニル共重合体であり、特に、エチレン/カルボン酸ビニル共重合体が最も望ましい。
【0037】
エチレン/カルボン酸ビニル共重合体の具体例としては、(B1)エチレン/酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。(B)共重合体が(B1)エチレン/酢酸ビニル共重合体を含むことによって、本発明のホットメルト接着剤の糸曳きをより低減することが可能となる。
【0038】
エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体等を例示できる。
【0039】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)共重合体、(B)共重合体の他に、その他のエチレン系重合体を含んでも良い。その他のエチレン系重合体としては、例えば、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸との共重合体、及びエチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物との共重合体が挙げられる。
【0040】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」とは、エチレン性二重結合とカルボキシル基を有する化合物をいい、その種類は特に限定されない。具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。
【0041】
エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸との共重合体の具体例としては、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体が挙げられる。
【0042】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」とは、エチレン性二重結合と2つのカルボキシル基が脱水縮合したカルボン酸無水物基とを有する化合物であり、その種類は特に限定されない。具体的には、例えば、無水マレイン酸等を例示できる。
【0043】
エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物との共重合体の具体例としては、エチレン/無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0044】
<(C)粘着付与樹脂>
(C)粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0045】
粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、上述の樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0046】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、エクソンモービル社製のECR5600(商品名)、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブY135(商品名)、アイマーブP125(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR231C(商品名)、ECR179EX(商品名)、JTXGエネルギー社製のT-REZ HC103(商品名)、T-REZ HA103(商品名)、T-REZ HA125(商品名)、T-REZ HB103(商品名)、T-REZ HA085(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。
【0047】
<(D)ワックス>
本明細書で「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が15000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。ワックスは、合成ワックスでも天然ワックスでも差し支えない。
【0048】
合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス)等が例示される。
【0049】
「フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。
【0050】
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾールワックス社のサゾールH1(商品名)、サゾールC80(商品名)、日本精蝋社のFT-115(商品名)が市販されている。
【0051】
天然ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラタムが挙げられる。
【0052】
パラフィンワックスとは、減圧蒸留抽出油から分離生成した常温で固形のワックスである。代表的なパラフィンワックスとして、日本精蝋社製のParaffin Waxシリーズが挙げられる。
【0053】
マイクロクリスタリンワックスとは、減圧蒸留ボトムまたは重質抽出油から分離生成した常温で固形のワックスである。代表的なマイクロクリスタリンワックスとして、日本精蝋社製のHi-Micシリーズが挙げられる。
【0054】
ペトロラタムとしては、減圧蒸留ボトムから分離生成した常温で半固形のワックスである。代表的なペトロラタムとして、中央油化社製のCenton CPシリーズが挙げられる。
【0055】
これらのワックスは、単独で用いられても、複数種類が混合されても良い。
【0056】
本発明において、(D)ワックスは、融点が60~150℃であることが好ましく、特に80~120℃であることが好ましく、90~110℃であることが最も望ましい。(D)ワックスの融点が高くなることによって、本発明のホットメルト接着剤は、耐熱性および熱安定性が向上し、高温領域の接着強度が優れる。
【0057】
本明細書における融点とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度10℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。(D)ワックスだけでなく、成分(A)~(C)や、その他添加剤、ホットメルト接着剤の融点についても、上記方法で測定される。
【0058】
<ホットメルト接着剤>
本発明のホットメルト接着剤では、(A)共重合体、(B)共重合体、(C)粘着付与樹脂及び(D)ワックスの合計100重量部当たり、(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体は5~40重量部含まれているのが好ましく、特に10~35重量部含まれるのが特に望ましく、15~30重量部含まれるのが最も望ましい。
【0059】
(A1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、耐熱性及び熱安定性がさらに向上し、高温時の接着性が維持されつつ、低温時の接着性や常温時の接着性が向上し、より広い温度領域での接着性に優れたものとなる。
【0060】
本発明のホットメルト接着剤では、(A)~(D)の合計100重量部当たり、(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体は10~40重量部含まれているのが好ましく、特に10~35重量部含まれるのが特に望ましく、15~30重量部含まれるのが最も望ましい。
【0061】
(A2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、高温時の接着性が維持されつつ、低温時の接着性や常温時の接着性がより向上し、低温塗工性や高速セット性も著しく向上する。
【0062】
本発明のホットメルト接着剤では、(A)~(D)の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を2~10重量部含むのが好ましく、特に2~8重量部含むのが特に望ましく、3~7重量部含むのが最も望ましい。
【0063】
本発明のホットメルト接着剤は、(B)が上記範囲にあることによって、噴出時の糸曳がより少なくなる。
【0064】
本発明のホットメルト接着剤では、(A)~(D)の合計100重量部に対し、(C)粘着付与樹脂の配合量が30~60重量部であるのが好ましく、特に40~60重量部が好ましく、40~50重量部が最も望ましい。
【0065】
(C)粘着付与樹脂の配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤は、初期接着性が向上し、低温から高温までの広い温度領域での接着性が維持される。
【0066】
本発明のホットメルト接着剤では、成分(A)~(D)の合計100重量部に対し、(D)ワックスの配合量が5~30重量部であるのが好ましく、特に10~30重量部が好ましく、15~25重量部が最も望ましい。
【0067】
(D)ワックスの配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤は、粘度が低くなり、各成分の相溶性が向上することによって、結果的に耐熱性や熱安定性が向上し、低温時の接着が維持されつつ、高温時の接着性を向上する。
【0068】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、可塑剤、安定化剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤)、微粒子充填剤を例示することができる。
【0069】
「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、エチレン系共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
【0070】
可塑剤として市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0071】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱、空気及び光等による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0072】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0073】
「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0074】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、ADEKAのアデカスタブAO-60(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)、JP-650(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独でも組み合わせて使用できる。
【0075】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0076】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)エチレン/炭素数が3~20オレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、(C)粘着付与樹脂、(D)ワックス、更に必要に応じて上述の各種添加剤を配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0077】
<ホットメルト接着剤を有する製品>
本発明に係るホットメルト接着剤は、加熱及び溶融され、被着体の接着部分に塗工され、塗工された溶融状態のままで他の被着体に接触され、その後冷却及び固化されて、被着体を接合する。被着体としては、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙材料等が挙げられるが、中でも紙、特に板紙が好適である。
【0078】
本発明に係る紙製品は、被着体である紙材料における接着部分と、その複数の接着部分に接着し、固化したホットメルト接着剤とを有してなる。紙材料は、例えば段ボール箱を組み立てる場合のように単一の部材であってよく、また、工芸品を作製する場合のように複数の部材であってもよい。
【0079】
紙製品の種類は特に限定されないが、典型的には、製本、カレンダー、段ボール包装容器及びカートン等を例示できる。本発明のホットメルト接着剤の特性を考慮すると、本発明の紙製品として、段ボール包装容器及びカートン等の板紙から構成される紙製品が特に有効である。
【0080】
ホットメルト接着剤を接着部分に塗工する方法は、目的とする紙製品を得ることができる限り、特に制限されるものではないが、ホットメルトアプリケーターが広く利用される。ホットメルトアプリケーターとして、例えば、ノードソン社製のプロブルーP4メルター(商品名)、プロブルーP10メルター(商品名)等を例示することができる。
【0081】
塗工方法は、例えば、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工等を例示できる。
【0082】
ホットメルトアプリケーターで本発明のホットメルト接着剤を塗工する場合(ホットメルトアプリケーターでホットメルト接着剤を地面と水平方向に吐出して、塗工する場合であっても)、ホットメルト接着剤の糸状物が殆ど吐出しなくなる。従って、被着体の接着部分以外の領域又はアプリケーターの噴出口の周辺領域が糸状物で汚れることがない。
【0083】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。実施例に示した割合は、特に断らない限り不揮発分の重量を基準にしたものである。但し、実施例5及び9は参考例である。
【実施例】
【0084】
以下にホットメルト接着剤の原料、および配合、評価方法を記載する。
(A)エチレンと炭素数が3~20のオレフィンとの共重合体
(A1-1)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体(エチレン含有量:7.1重量%、融点:112℃、190℃溶融粘度:1850mPas、エクソンモービル社製 ビスタマックスA(試作品))
(A1-2)メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体(エチレン含有量:6.0重量%、融点:97℃、190℃溶融粘度:1200mPas、エクソンモービル社製 ビスタマックス8880(商品名))
(A2-1)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:30~40重量%、融点:68℃、メルトフローレート:1000g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティGA1900(商品名))
(A2-2)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:35~37重量%、融点:70℃、メルトフローレート:500g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティGA1950(商品名))
(A2-3)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:30~40重量%、融点:70℃、メルトフローレート:1250g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティGA1875(商品名))
(A2-4)メタロセン系エチレン/オクテン共重合体(1-オクテン含有量:30~40重量%、融点:68℃、メルトフローレート:660g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティGA1000R(商品名))
(A3)メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体(融点:95℃、東ソー社製 ニポロンZ HM510R(商品名))
【0085】
(B)エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体
(B1-1)エチレン/酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量20重量%、メルトフローレート20g/10min、東ソー社製のウルトラセン633(商品名))
(B1-2)エチレン/酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量28重量%、メルトフローレート18g/10min、東ソー社製のウルトラセン710(商品名))
(B2)エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル含量32重量%、メルトフローレート450g/10min、住友化学社製のアクリフト CM5022(商品名))
(B3)エチレン/アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量25重量%、メルトフローレート250g/10min、ダウ・ケミカル社製のNUC-6070(商品名))
【0086】
(C)粘着付与樹脂
(C1)水添脂環式/芳香族共重合系炭化水素樹脂(軟化点:103℃、JXTGエネルギー社製 T-REZ HC103(商品名))
(C2)水添脂環式炭化水素樹脂(軟化点:103℃、 JXTGエネルギー社製 T-REZ HA103(商品名))
(C3)水添脂環式炭化水素樹脂(軟化点:125℃、 JXTGエネルギー社製 T-REZ HA125(商品名))
【0087】
(D)ワックス
(D1)フィッシャートロプシュワックス(融点:108℃、針入度2、サゾール社製 サゾールワックスH1(商品名))
(D2)フィッシャートロプシュワックス(融点:80℃、針入度7、サゾール社製 サゾールワックスC80(商品名))
(D3)パラフィンワックス(融点:69℃、針入度12、日本精蝋社製 パラフィン155F(商品名))
(D4)マイクロスタリンワックス(融点:84℃、針入度12、日本精蝋社製 ハイミック1080(商品名))
(D5)ポリエチレンワックス(融点:109℃、針入度7、三井化学社製 ハイワックス320P(商品名))
(D6)ポリプロピレンワックス(融点:140/148℃、針入度1以下、三井化学社製 ハイワックスNP105(商品名))
【0088】
(E)酸化防止剤
(E1)フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製社製 アデカスタブAO60(商品名))
(E2)リン系酸化防止剤(城北化学社製 JP650(商品名))
(E3)イオウ系酸化防止剤(住友化学社製 スミライザーTPS(商品名))
【0089】
これらの成分を表1及び表3に示す割合(重量部)で溶融混合した。万能攪拌機を用いて、各成分を約150℃で約1時間かけて溶融混合して、実施例1~11、及び比較例1~4のホットメルト接着剤を製造した。実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、各性能を下記の方法で評価した。評価結果を表2及び表4に示す。
【0090】
<低温塗工性>
ブルックフィールド粘度計(27番ローター)及びサーモセルを用いて、ホットメルト接着剤の150℃溶融粘度を測定し、低温塗工性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0091】
◎ : 150℃溶融粘度が500mPas以上、2000mPas未満
○ : 150℃溶融粘度が2000mPas以上、3000mPas未満
× : 150℃溶融粘度が3000mPas以上
【0092】
<接着性>
(サンプル作製)
150℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナー段ボールに、塗工量2g/m、セットタイム10秒、オープンタイム3秒、プレス圧1kg/25cm2の条件でKライナー段ボールを貼り合わせた。
【0093】
(評価方法)
作製したサンプルを60℃、23℃、又は-10℃に設定した恒温槽中に24時間養生し、その後、その雰囲気下にて、手剥離にて強制剥離した。全接着面積に占めるKライナー段ボールの破壊の割合を材破率(材料が破壊された割合)とし、その状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0094】
◎ : 材破率が80%より高い
○ : 材破率が60%~80%
△ : 材破率が40%以上で、60%未満
× : 材破率が40%未満
【0095】
<熱安定性>
(サンプル作製)
ホットメルト接着剤を70ccのガラス瓶に20g入れ、150℃恒温槽にて72時間保管し、1)粘度増減率、2)炭化物の発生について確認した。評価基準は以下のとおりである。
【0096】
(評価方法)
1)粘度増減率
粘度増減率は、ホットメルト接着剤の150℃での初期粘度に対し、1週間後のホットメルト接着剤の150℃での粘度が増減した割合である。
【0097】
具体的には、以下の計算式にて求めた。
粘度増減率(%)=(150℃で1週間保管後の溶融粘度)×100/150℃での初期粘度)-100
【0098】
◎ : 粘度増減率が5%未満
○ : 粘度増減率が5%~10%
△ : 粘度増減率が10%より大きく、20%より小さい
× : 粘度増減率が20%以上
【0099】
2)炭化物の発生
◎ : 炭化物なし
○ : 炭化物がわずかにあり
△ : 炭化物があり
× : 炭化物が著しい
【0100】
<高速セット性>
(サンプル作製)
150℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナー段ボールに、塗工量2g/m、オープンタイム3秒、プレス圧1kg/25cm2の条件でKライナー段ボールを貼り合わせた。
【0101】
(評価方法)
作製したサンプルを垂直方向に一定速度で強制剥離し、剥離強度が6Kgf以上、かつKライナー段ボールが材破するまでの時間(固化速度)をセットタイムとし、その時間を測定した。評価基準は以下のとおりである。
【0102】
◎ : セットタイムが0.5秒未満
○ : セットタイムが0.5秒以上、0.7秒未満
× : セットタイムが0.7秒以上
【0103】
<耐熱性>
(サンプル作製)
150℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナー段ボールに、塗工量2g/m、セットタイム10秒、オープンタイム3秒、プレス圧1kg/25cm2の条件でKライナー段ボールを貼り合わせた。
【0104】
(評価方法)
作製したサンプルを60℃雰囲気下で、応力方向に300g/25cm2荷重を掛け、貼り合わせたサンプルが剥離するまでの時間を測定した。評価基準は以下のとおりである。
【0105】
◎ : 剥離時間が8時間より長い
○ : 剥離時間が3時間~8時間満
× : 剥離時間が3時間未満
【0106】
<糸曳性>
ホットメルトガンの先端から20cm離れた被着体へホットメルト接着剤を垂直に間欠塗布した。ホットメルトガンと被着体との間の落下物の状態を目視にて観察し、糸曳き性を評価した。測定条件及び評価基準は以下のとおりである。
【0107】
(測定条件)
温度設定:タンク、ホース、及びノズル全て150℃
ノズル径:14/1000インチ
ノズル:4orifice(吐出口の数:4)
塗出圧力:0.3MPa
塗出ショット数:4orificeは180ショット/1分間
【0108】
◎ : 落下物の形状は粒状
○ : 落下物の形状は殆ど粒状であるが、わずかに糸状のものが混在
△ : 落下物の形状は、粒状と糸状が混在
× : 落下物の形状は糸状
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
表2及び表4に示すように、実施例1~11のホットメルト接着剤は、糸曳が少なく、低温塗工性や高速セット性に優れており、耐熱性及び熱安定性にも優れている。実施例のホットメルト接着剤の接着性は、広い温度範囲(-10~60℃)で優れており、特に60℃での接着性が高い。従って、段ボール等の包装資材で荷物を梱包する際、実施例のホットメルト接着剤で包装資材を封緘すれば荷物の熱を気にすることなく梱包作業を進めることが可能となる。
【0114】
これに対し、比較例1~4のホットメルト接着剤は、糸曳き性、低温塗工性、高速セット性、耐熱性、熱安定性、接着性のいずれかが著しく劣っている。
【0115】
比較例1のホットメルト接着剤は、成分(A1)を含まないので、耐熱性が低く、高温時の接着性が低くなっている。
【0116】
比較例2のホットメルト接着剤は、(B)共重合体を含まないので、糸曳き性が著しく劣っている。
【0117】
比較例3のホットメルト接着剤は(C)粘着付与樹脂を含まず、比較例4のホットメルト接着剤は(D)ワックスを含まない。比較例3、4のホットメルト接着剤は、全ての性能が劣っており、ホットメルト接着剤として機能していない。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工分野全般に利用でき、包装資材(特に段ボール)等を封緘する用途に好適である。