(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240809BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20240809BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240809BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240809BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240809BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20240809BHJP
H01L 27/092 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652B
H01L29/78 652C
H01L29/78 652E
H01L29/78 652F
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652S
H01L29/78 653C
H01L29/78 656C
H01L29/78 656E
H01L29/78 657A
H01L29/78 657B
H01L29/78 657F
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
H01L27/088 E
H01L27/092 A
(21)【出願番号】P 2023075833
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2018204293の分割
【原出願日】2018-10-30
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 肇
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰詔
(72)【発明者】
【氏名】大隅 悠史
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183604(JP,A)
【文献】米国特許第05424231(US,A)
【文献】特開2018-129378(JP,A)
【文献】特開2010-171418(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115280(WO,A1)
【文献】特開2011-258834(JP,A)
【文献】特開2013-065749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/76
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 21/8238
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する半導体層と、
前記主面の表層部に形成された第1導電型のドリフト領域と、
前記主面に形成され、前記ドリフト領域に側壁および底壁を有するトレンチ、前記トレンチの内壁に形成された絶縁層、および、前記絶縁層を挟んで前記トレンチに埋設され、ゲート電圧が印加される埋め込み電極を含むトレンチゲート構造と、
前記ドリフト領域において前記トレンチゲート構造の外壁に沿う領域に形成され、前記ドリフト領域の第1導電型不純物濃度を超える第1導電型不純物濃度を有する第1導電型の高濃度ドリフト領域と、を含み、
前記ドリフト領域は、5μm以上20μm以下の厚さを有しており、
前記高濃度ドリフト領域は、前記ドリフト領域の底部に対して0.1μm以上3μm以下の間隔を空けて前記半導体層の前記主面側に形成されて
おり、
複数の前記トレンチゲート構造が、前記半導体層の前記主面に間隔を空けて形成され、
複数の前記高濃度ドリフト領域が、複数の前記トレンチゲート構造に対して1対1対応の関係で形成されており、
複数の前記トレンチゲート構造の中央部の間のピッチは、1μm以上3μm以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記高濃度ドリフト領域は、前記トレンチの前記側壁を被覆する側壁被覆部を有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記高濃度ドリフト領域は、前記トレンチの前記底壁を被覆する底壁被覆部を有している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記高濃度ドリフト領域は、前記トレンチの前記側壁を被覆する側壁被覆部、および、前記トレンチの前記底壁に沿う領域に形成され、前記側壁被覆部の第1導電型不純物濃度を超える第1導電型不純物濃度を有する底壁被覆部を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記高濃度ドリフト領域は、前記ドリフト領域の底部に対して前記トレンチの前記底壁側の領域に位置する底部を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
複数の前記高濃度ドリフト領域は、互いに隣り合う複数の前記トレンチゲート構造の間の領域において互いに連なっている、請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項7】
複数の前記トレンチゲート構造は、互いに隣り合う第1トレンチゲート構造および第2トレンチゲート構造を含み、前記第1トレンチゲート構造から拡がる第1空乏層が前記第2トレンチゲート構造から拡がる第2空乏層に重なる態様で、前記半導体層の前記主面に間隔を空けて形成されている、請求項
1または
6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1空乏層は、前記第1トレンチゲート構造の底壁および前記第2トレンチゲート構造の底壁に対して前記ドリフト領域の底部側の領域において前記第2空乏層に重なる、請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記埋め込み電極は、前記絶縁層を挟んで前記トレンチの前記底壁側に埋設された底側電極、前記絶縁層を挟んで前記トレンチの開口側に埋設された開口側電極、ならびに、前記底側電極および前記開口側電極の間に介在する中間絶縁層を含む絶縁分離型の電極構造を有している、請求項1~
8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記底側電極には、ゲートのオン制御時に基準電位が印加され、
前記開口側電極には、ゲートのオン制御時にゲート電圧が印加される、請求項
9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記底側電極には、ゲートのオン制御時にゲート電圧が印加され、
前記開口側電極には、ゲートのオン制御時にゲート電圧が印加される、請求項
9に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記底側電極は、前記トレンチの開口側に位置する第1端部、および、前記トレンチの前記底壁側に位置し、前記トレンチの前記底壁に向かって凸湾曲状に形成された第2端部を有している、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁層は、前記トレンチの前記底壁側の内壁に形成された底側絶縁層、および、前記トレンチの開口側の内壁に形成され、前記底側絶縁層の厚さ未満の厚さを有する開口側絶縁層を含み、
前記底側電極は、前記底側絶縁層を挟んで前記トレンチの前記底壁側に埋設され、
前記開口側電極は、前記開口側絶縁層を挟んで前記トレンチの開口側に埋設されている、請求項
9~
12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記底側絶縁層は、前記トレンチの前記側壁を被覆する側壁被覆部、および、前記トレンチの前記底壁を被覆し、前記側壁被覆部の厚さ未満の厚さを有する底壁被覆部を有している、請求項
13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記側壁被覆部の厚さに対する前記底壁被覆部の厚さの比は、0.5以上0.8以下である、請求項
14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記底側絶縁層は、断面視において前記トレンチの前記底壁に向かってU字状に窪んだU字状の空間を区画している、請求項
13~
15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記トレンチは、前記主面から厚さ方向に向けて先細り形状に形成されている、請求項1~
16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記ドリフト領域の表層部において前記トレンチゲート構造の側方に形成された第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域の表層部において前記トレンチゲート構造の側方に形成された第1導電型のソース領域と、をさらに含む、請求項1~
17のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記半導体層は、第1導電型の半導体基板および前記半導体基板の上に積層され、前記半導体基板の第1導電型不純物濃度未満の第1導電型不純物濃度を有し、前記ドリフト領域を形成する第1導電型のエピタキシャル層を含む積層構造を有している、請求項1~
18のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
主面を有する半導体層と、
前記主面の表層部に形成された第1導電型のドリフト領域と、
前記主面に形成され、前記ドリフト領域に側壁および底壁を有するトレンチ、前記トレンチの内壁に形成された絶縁層、および、前記絶縁層を挟んで前記トレンチに埋設され、ゲート電圧が印加される埋め込み電極を含むトレンチゲート構造と、
前記ドリフト領域において前記トレンチゲート構造の外壁に沿う領域に形成され、前記ドリフト領域の第1導電型不純物濃度を超える第1導電型不純物濃度を有する第1導電型の高濃度ドリフト領域と、を含み、
前記高濃度ドリフト領域は、前記トレンチの前記側壁を被覆する側壁被覆部と、前記トレンチの前記底壁を被覆する底壁被覆部とを有し、前記底壁被覆部は、前記高濃度ドリフト領域の底部を形成しており、
前記底壁被覆部内には、第1導電型不純物濃度が一層高くされた高濃度領域が、前記トレンチゲート構造の底壁に沿って形成されており、
前記底壁被覆部の底面は、前記高濃度領域に応じた凹凸を有していて、
前記ドリフト領域は、5μm以上20μm以下の厚さを有しており、
前記高濃度ドリフト領域は、前記ドリフト領域の底部に対して0.1μm以上3μm以下の間隔を空けて前記半導体層の前記主面側に形成されて
おり、
複数の前記トレンチゲート構造が、前記半導体層の前記主面に間隔を空けて形成され、
複数の前記高濃度ドリフト領域が、複数の前記トレンチゲート構造に対して1対1対応の関係で形成されており、
複数の前記トレンチゲート構造の中央部の間のピッチは、1μm以上3μm以下である、半導体装置。
【請求項21】
複数の前記高濃度ドリフト領域は、互いに隣り合う複数の前記トレンチゲート構造の間の領域において互いに連なっている、請求項
20に記載の半導体装置。
【請求項22】
複数の前記トレンチゲート構造は、互いに隣り合う第1トレンチゲート構造および第2トレンチゲート構造を含み、前記第1トレンチゲート構造から拡がる第1空乏層が前記第2トレンチゲート構造から拡がる第2空乏層に重なる態様で、前記半導体層の前記主面に間隔を空けて形成されている、請求項
20または
21に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記第1空乏層は、前記第1トレンチゲート構造の底壁および前記第2トレンチゲート構造の底壁に対して前記ドリフト領域の底部側の領域において前記第2空乏層に重なる、請求項
22に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記埋め込み電極は、前記絶縁層を挟んで前記トレンチの前記底壁側に埋設された底側電極、前記絶縁層を挟んで前記トレンチの開口側に埋設された開口側電極、ならびに、前記底側電極および前記開口側電極の間に介在する中間絶縁層を含む絶縁分離型の電極構造を有している、請求項
20~
23のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記底側電極には、ゲートのオン制御時に基準電位が印加され、
前記開口側電極には、ゲートのオン制御時にゲート電圧が印加される、請求項
24に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記底側電極には、ゲートのオン制御時にゲート電圧が印加され、
前記開口側電極には、ゲートのオン制御時にゲート電圧が印加される、請求項
24に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記底側電極は、前記トレンチの開口側に位置する第1端部、および、前記トレンチの前記底壁側に位置し、前記トレンチの前記底壁に向かって凸湾曲状に形成された第2端部を有している、請求項
24~
26のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項28】
前記絶縁層は、前記トレンチの前記底壁側の内壁に形成された底側絶縁層、および、前記トレンチの開口側の内壁に形成され、前記底側絶縁層の厚さ未満の厚さを有する開口側絶縁層を含み、
前記底側電極は、前記底側絶縁層を挟んで前記トレンチの前記底壁側に埋設され、
前記開口側電極は、前記開口側絶縁層を挟んで前記トレンチの開口側に埋設されている、請求項
24~
27のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項29】
前記底側絶縁層は、前記トレンチの前記側壁を被覆する側壁被覆部、および、前記トレンチの前記底壁を被覆し、前記側壁被覆部の厚さ未満の厚さを有する底壁被覆部を有している、請求項
28に記載の半導体装置。
【請求項30】
前記側壁被覆部の厚さに対する前記底壁被覆部の厚さの比は、0.5以上0.8以下である、請求項
29に記載の半導体装置。
【請求項31】
前記底側絶縁層は、断面視において前記トレンチの前記底壁に向かってU字状に窪んだU字状の空間を区画している、請求項
28~
30のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項32】
前記トレンチは、前記主面から厚さ方向に向けて先細り形状に形成されている、請求項
20~
31のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項33】
前記ドリフト領域の表層部において前記トレンチゲート構造の側方に形成された第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域の表層部において前記トレンチゲート構造の側方に形成された第1導電型のソース領域と、をさらに含む、請求項
20~
32のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項34】
前記半導体層は、第1導電型の半導体基板および前記半導体基板の上に積層され、前記半導体基板の第1導電型不純物濃度未満の第1導電型不純物濃度を有し、前記ドリフト領域を形成する第1導電型のエピタキシャル層を含む積層構造を有している、請求項
20~
33のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トレンチゲートパワー半導体装置を開示している。この半導体装置は、溝が形成されたドリフト層と、溝の内面に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を挟んで溝に埋め込まれたゲート電極膜と、を含む。
【0003】
特許文献2は、トレンチゲート構造のパワートランジスタを有する半導体装置を開示している。この半導体装置は、溝が形成された主面を有するエピタキシャル層(ドリフト層)と、溝の内面に形成されたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層を挟んで溝に埋め込まれたダミーゲート電極およびゲート電極と、ダミーゲート電極およびゲート電極の間に介在する絶縁層と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/165319A1号
【文献】特開2006-202931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレンチゲート構造を備えた半導体装置の分野では、低オン抵抗化が一つの課題となっている。低オン抵抗化を図る一つの方法として、ドリフト層を高濃度化することが考えられる。この場合、キャリア密度の増加によってオン抵抗の低減を図ることができる。しかし、ドリフト層の全域を一括して高濃度化すると、半導体層中において電界集中が生じやすくなる結果、ブレークダウン電圧が低下するという背反が生じる。
【0006】
本発明の一実施形態は、ブレークダウン電圧の低下を抑制しながら、オン抵抗を低減できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、主面を有する半導体層と、前記主面の表層部に形成された第1導電型のドリフト領域と、前記主面に形成され、前記ドリフト領域に側壁および底壁を有するトレンチ、前記トレンチの内壁に形成された絶縁層、および、前記絶縁層を挟んで前記トレンチに埋設され、ゲート電圧が印加される埋め込み電極を含むトレンチゲート構造と、前記ドリフト領域において前記トレンチゲート構造の外壁に沿う領域に形成され、前記ドリフト領域の第1導電型不純物濃度を超える第1導電型不純物濃度を有する第1導電型の高濃度ドリフト領域と、を含む、半導体装置を提供する。
【0008】
この半導体装置によれば、ドリフト領域において主たる電流経路となる領域が高濃度ドリフト領域によって高濃度化されている。これにより、ドリフト領域の全域の高濃度化を回避できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制しながら、オン抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を一つの方向から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す半導体装置の電気的構造を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す領域IIIの断面斜視図であって、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域を含む形態を示す断面斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4から層間絶縁層を取り除いた断面斜視図である。
【
図7】
図7は、
図3に示す2つのトレンチゲート構造を含む領域の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す1つのトレンチゲート構造の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す領域IXの平面図であって、半導体層の入力領域の一部の構造を示す平面図である。
【
図12A】
図12Aは、
図7に対応する領域の断面図であって、
図1に示す半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【
図13A】
図13Aは、
図7に対応する領域の断面図であって、第2形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面図である。
【
図13B】
図13Bは、
図7に対応する領域の断面図であって、第3形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面図である。
【
図13C】
図13Cは、
図7に対応する領域の断面図であって、第4形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面図である。
【
図13D】
図13Dは、
図7に対応する領域の断面図であって、第5形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面図である。
【
図13E】
図13Eは、
図7に対応する領域の断面図であって、第6形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面図である。
【
図13F】
図13Fは、
図7に対応する領域の断面図であって、第7形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面図である。
【
図13G】
図13Gは、
図5に対応する領域の断面斜視図であって、第8形態例に係る高濃度ドリフト領域が形成された形態を示す断面斜視図である。
【
図14】
図14は、
図7に対応する領域の断面図であって、本発明の第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図1示す半導体装置が組み込まれた半導体パッケージを、封止樹脂を透過して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1を一つの方向から見た斜視図である。
【0012】
図1を参照して、半導体装置1は、半導体層2を含む。半導体層2は、シリコンを含む。半導体層2は、直方体形状に形成されたチップ状に形成されている。半導体層2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4、ならびに、第1主面3および第2主面4を接続する側面5A,5B,5C,5Dを有している。
【0013】
第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。側面5Aおよび側面5Cは、第1方向Xに沿って延び、第1方向Xに交差する第2方向Yに互いに対向している。側面5Bおよび側面5Dは、第2方向Yに沿って延び、第1方向Xに互いに対向している。第2方向Yは、より具体的には、第1方向Xに直交している。
【0014】
半導体層2には、出力領域6および入力領域7が設定されている。出力領域6は、半導体層2の第1主面3において側面5D側の領域に設定されている。入力領域7は、半導体層2の第1主面3において側面5B側の領域に設定されている。
【0015】
平面視において、出力領域6の面積S1は、入力領域7の面積S2以上である(S2≦S1)。面積S2に対する面積S1の比S1/S2は、1を超えて10以下であってもよい(1<S1/S2≦10)。比S1/S2は、1を超えて5以下、または、5以上10以下であってもよい。入力領域7の平面形状および出力領域6の平面形状は、任意であり、特定の形状に限定されない。
【0016】
出力領域6は、絶縁ゲート型のトランジスタの一例としてのゲート、ドレインおよびソースを有するパワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)9を含む。
【0017】
入力領域7は、制御回路の一例としてのコントロールIC(Integrated Circuit)10を含む。コントロールIC10は、種々の機能を実現する複数種の機能回路を含む。複数種の機能回路には、外部からの電気信号に基づいてパワーMISFET9を駆動制御するゲート制御信号を生成する回路が含まれる。コントロールIC10は、パワーMISFET9と共に所謂IPD(Intelligent Power Device)を形成している。IPDは、IPM(Intelligent Power Module)とも称される。
【0018】
入力領域7は、領域分離構造8によって出力領域6から電気的に絶縁されている。
図1では、領域分離構造8がハッチングによって示されている。具体的な説明は省略されるが、領域分離構造8は、トレンチに絶縁体が埋め込まれたトレンチ絶縁構造を有していてもよい。
【0019】
半導体層2の上には、複数(この形態では6つ)の電極11,12,13,14,15、16およびゲート制御配線17が形成されている。
図1では、ハッチングによって複数の電極11~16およびゲート制御配線17が示されている。複数の電極11~16は、この形態では、電源電極11(ドレイン電極)、出力電極12(ソース電極)、入力電極13、基準電位電極14、ENABLE電極15およびSENSE電極16を含む。
【0020】
複数の電極11~16の個数、配置および平面形状は任意であり、
図1に示される形態に限定されない。複数の電極11~16の個数、配置および平面形状は、パワーMISFET9の仕様やコントロールIC10の仕様に応じて調整される。
【0021】
電源電極11は、半導体層2の第2主面4の上に形成されている。電源電極11は、半導体層2の第2主面4に電気的に接続されている。電源電極11は、パワーMISFET9のドレインや、コントロールIC10の各種回路に電源電圧を伝達する。
【0022】
電源電極11は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層またはAl層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。電源電極11は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層またはAl層を含む単層構造を有していてもよい。電源電極11は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの少なくとも2つを任意の態様で積層させた積層構造を有していてもよい。
【0023】
出力電極12は、出力領域6の上に形成されている。出力電極12は、パワーMISFET9のソースに電気的に接続されている。出力電極12は、パワーMISFET9によって生成された電気信号を外部に伝達する。
【0024】
入力電極13、基準電位電極14、ENABLE電極15およびSENSE電極16は、入力領域7の上にそれぞれ形成されている。入力電極13は、コントロールIC10を駆動するための入力電圧を伝達する。
【0025】
基準電位電極14は、コントロールIC10に基準電位(たとえばグランド電位)を伝達する。ENABLE電極15は、コントロールIC10の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号を伝達する。SENSE電極16は、コントロールIC10の異常を検出するための電気信号を伝達する。
【0026】
ゲート制御配線17は、出力領域6および入力領域7に選択的に引き回されている。ゲート制御配線17は、この形態では、第1ゲート制御配線17Aおよび第2ゲート制御配線17Bを含む。ゲート制御配線17の個数は任意であり、ゲート制御信号の伝達距離や、伝達すべきゲート制御信号の数に応じて調整される。
【0027】
ゲート制御配線17は、出力領域6においてパワーMISFET9のゲートに電気的に接続され、入力領域7においてコントロールIC10に電気的に接続されている。ゲート制御配線17は、コントロールIC10によって生成されたゲート制御信号をパワーMISFET9のゲートに伝達する。ゲート制御信号は、ゲート電圧および基準電位を含む。パワーMISFET9のオン・オフは、ゲート制御信号によって制御される。
【0028】
出力電極12、入力電極13、基準電位電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16およびゲート制御配線17は、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、銅、アルミニウム合金または銅合金のうちの少なくとも1種をそれぞれ含んでいてもよい。
【0029】
出力電極12、入力電極13、基準電位電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16およびゲート制御配線17は、Al-Si-Cu(アルミニウム-シリコン-銅)合金、Al-Si(アルミニウム-シリコン)合金、または、Al-Cu(アルミニウム-銅)合金のうちの少なくとも一種をそれぞれ含んでいてもよい。
【0030】
出力電極12、入力電極13、基準電位電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16およびゲート制御配線17は、同一種の電極材料を含んでいてもよいし、互いに異なる電極材料を含んでいてもよい。
【0031】
図2は、
図1に示す半導体装置1の電気的構造を示すブロック回路図である。以下では、半導体装置1が車に搭載された場合を例にとって説明する。
【0032】
半導体装置1は、電源電極11、出力電極12、入力電極13、基準電位電極14、ENABLE電極15、SENSE電極16、ゲート制御配線17、パワーMISFET9およびコントロールIC10を含む。
【0033】
電源電極11は、電源に接続される。電源電極11は、パワーMISFET9およびコントロールIC10に電源電圧を提供する。電源電圧は、10V以上20V以下であってもよい。出力電極12は、負荷に接続される。
【0034】
入力電極13は、MCU(Micro Controller Unit)、DC/DCコンバータ、LDO(Low Drop Out)等に接続されてもよい。入力電極13は、コントロールIC10に入力電圧を提供する。入力電圧は、1V以上10V以下であってもよい。基準電位電極14は、基準電位配線に接続される。基準電位電極14は、パワーMISFET9およびコントロールIC10に基準電位を提供する。
【0035】
ENABLE電極15は、MCUに接続されてもよい。ENABLE電極15には、コントロールIC10の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号が入力される。SENSE電極16は、抵抗器に接続されてもよい。
【0036】
パワーMISFET9のゲートは、ゲート制御配線17を介してコントロールIC10(後述するゲート制御回路25)に接続されている。パワーMISFET9のドレインは、電源電極11に接続されている。パワーMISFET9のソースは、コントロールIC10(後述する電流検出回路27)および出力電極12に接続されている。
【0037】
コントロールIC10は、センサMISFET21、入力回路22、電圧制御回路23、保護回路24、ゲート制御回路25、アクティブクランプ回路26、電流検出回路27、電源逆接続保護回路28および異常検出回路29を含む。
【0038】
センサMISFET21のゲートは、ゲート制御回路25に接続されている。センサMISFET21のドレインは、電源電極11に接続されている。センサMISFET21のソースは、電流検出回路27に接続されている。
【0039】
入力回路22は、入力電極13および電圧制御回路23に接続されている。入力回路22は、シュミットトリガ回路を含んでいてもよい。入力回路22は、入力電極13に印加された電気信号の波形を整形する。入力回路22によって生成された信号は、電圧制御回路23に入力される。
【0040】
電圧制御回路23は、保護回路24、ゲート制御回路25、電源逆接続保護回路28および異常検出回路29に接続されている。電圧制御回路23は、入力回路22からの電気信号および保護回路24からの電気信号に応じて、種々の電圧を生成する。電圧制御回路23は、この形態では、駆動電圧生成回路30、第1定電圧生成回路31、第2定電圧生成回路32および基準電位・基準電流生成回路33を含む。
【0041】
駆動電圧生成回路30は、ゲート制御回路25を駆動するための駆動電圧を生成する。駆動電圧は、電源電圧から所定値を差し引いた値に設定されてもよい。駆動電圧生成回路30は、電源電圧から5Vを差し引いた5V以上15V以下の駆動電圧を生成してもよい。駆動電圧は、ゲート制御回路25に入力される。
【0042】
第1定電圧生成回路31は、保護回路24を駆動するための第1定電圧を生成する。第1定電圧生成回路31は、ツェナーダイオードを含んでいてもよい。第1定電圧は、1V以上5V以下であってもよい。第1定電圧は、保護回路24(より具体的には、後述する負荷オープン検出回路35等)に入力される。
【0043】
第2定電圧生成回路32は、保護回路24を駆動するための第2定電圧を生成する。第2定電圧生成回路32は、レギュレータ回路を含んでいてもよい。第2定電圧は、1V以上5V以下であってもよい。第2定電圧は、保護回路24(より具体的には、後述する過熱保護回路36や低電圧誤動作抑制回路37)に入力される。
【0044】
基準電位・基準電流生成回路33は、各種回路の基準電位および基準電流を生成する。基準電位は、1V以上5V以下であってもよい。基準電流は、1mA以上1A以下であってもよい。基準電位および基準電流は、各種回路に入力される。各種回路がコンパレータを含む場合、基準電位および基準電流は、当該コンパレータに入力されてもよい。
【0045】
保護回路24は、電圧制御回路23、ゲート制御回路25、異常検出回路29、パワーMISFET9のソースおよびセンサMISFET21のソースに接続されている。保護回路24は、過電流保護回路34、負荷オープン検出回路35、過熱保護回路36および低電圧誤動作抑制回路37を含む。
【0046】
過電流保護回路34は、ゲート制御回路25およびセンサMISFET21のソースに接続されている。過電流保護回路34は、過電流からパワーMISFET9を保護する。過電流保護回路34は、電流モニタ回路を含んでいてもよい。過電流保護回路34によって生成された信号は、ゲート制御回路25(より具体的には、後述する駆動信号出力回路40)に入力される。
【0047】
負荷オープン検出回路35は、電圧制御回路23およびパワーMISFET9のソースに接続されている。負荷オープン検出回路35は、パワーMISFET9のショート状態やオープン状態を検出する。負荷オープン検出回路35によって生成された信号は、電圧制御回路23に入力される。
【0048】
過熱保護回路36は、電圧制御回路23に接続されている。過熱保護回路36は、半導体装置1の温度を監視する。過熱保護回路36は、感温ダイオードやサーミスタ等の感温デバイスを含んでいてもよい。過熱保護回路36は、過度な温度上昇からパワーMISFET9を保護する。過熱保護回路36によって生成された信号は、電圧制御回路23に入力される。
【0049】
低電圧誤動作抑制回路37は、電圧制御回路23に接続されている。低電圧誤動作抑制回路37は、電源電圧が所定値未満である場合にパワーMISFET9が誤動作するのを抑制する。低電圧誤動作抑制回路37によって生成された信号は、電圧制御回路23に入力される。
【0050】
ゲート制御回路25は、電圧制御回路23、保護回路24、パワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに接続されている。ゲート制御回路25は、パワーMISFET9のオン・オフおよびセンサMISFET21のオン・オフを制御する。
【0051】
ゲート制御回路25は、電圧制御回路23からの電気信号および保護回路24からの電気信号に応じて、複数種のゲート制御信号を生成する。複数種のゲート制御信号は、ゲート制御配線17を介してパワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートにそれぞれ入力される。ゲート制御回路25は、より具体的には、発振回路38、チャージポンプ回路39および駆動信号出力回路40を含む。
【0052】
発振回路38は、電圧制御回路23からの電気信号に応じて発振し、所定の電気信号を生成する。発振回路38によって生成された電気信号は、チャージポンプ回路39に入力される。チャージポンプ回路39は、発振回路38からの電気信号を昇圧させる。チャージポンプ回路39によって昇圧された電気信号は、駆動信号出力回路40に入力される。
【0053】
駆動信号出力回路40は、チャージポンプ回路39からの電気信号および保護回路24(より具体的には、過電流保護回路34)からの電気信号に応じて複数種のゲート制御信号を生成する。複数種のゲート制御信号は、ゲート制御配線17を介してパワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに入力される。センサMISFET21およびパワーMISFET9は、駆動信号出力回路40によって同時に駆動制御される。
【0054】
アクティブクランプ回路26は、逆起電力からパワーMISFET9を保護する。アクティブクランプ回路26は、電源電極11、パワーMISFET9のゲートおよびセンサMISFET21のゲートに接続されている。アクティブクランプ回路26は、互いに逆バイアス接続された2つのダイオードを含んでいてもよい。2つのダイオードは、ツェナーダイオードおよびpn接合ダイオードを含んでいてもよい。
【0055】
電流検出回路27は、保護回路24、異常検出回路29、パワーMISFET9のソースおよびセンサMISFET21のソースに接続されている。電流検出回路27は、パワーMISFET9によって生成された電気信号およびセンサMISFET21によって生成された電気信号に応じて、電流検出信号を生成する。電流検出信号は、異常検出回路29に入力される。
【0056】
電源逆接続保護回路28は、基準電位電極14および電圧制御回路23に接続されている。電源逆接続保護回路28は、電源が逆接続された際に、逆電圧から電圧制御回路23やパワーMISFET9等を保護する。
【0057】
異常検出回路29は、電圧制御回路23、保護回路24および電流検出回路27に接続されている。異常検出回路29は、保護回路24の電圧を監視する。保護回路24において、過電流保護回路34、負荷オープン検出回路35、過熱保護回路36および低電圧誤動作抑制回路37のいずれかに異常(電圧の変動等)が生じた場合、保護回路24の電圧に応じた異常検出信号を生成し、外部に出力する。
【0058】
異常検出回路29は、より具体的には、第1マルチプレクサ回路41および第2マルチプレクサ回路42を含む。第1マルチプレクサ回路41は、2つの入力部、1つの出力部および1つの選択制御入力部を含む。第1マルチプレクサ回路41の入力部には、保護回路24および電流検出回路27がそれぞれ接続されている。第1マルチプレクサ回路41の出力部には、第2マルチプレクサ回路42が接続されている。第1マルチプレクサ回路41の選択制御入力部には、電圧制御回路23が接続されている。
【0059】
第1マルチプレクサ回路41は、電圧制御回路23からの電気信号、保護回路24からの電圧検出信号および電流検出回路27からの電流検出信号に応じて、異常検出信号を生成する。第1マルチプレクサ回路41によって生成された異常検出信号は、第2マルチプレクサ回路42に入力される。
【0060】
第2マルチプレクサ回路42は、2つの入力部および1つの出力部を含む。第2マルチプレクサ回路42の入力部には、第2マルチプレクサ回路42の出力部およびENABLE電極15がそれぞれ接続されている。第2マルチプレクサ回路42の出力部には、SENSE電極16が接続されている。
【0061】
ENABLE電極15にMCUが接続され、SENSE電極16に抵抗器が接続されている場合、MCUからENABLE電極15にオン信号が入力され、SENSE電極16から異常検出信号が取り出される。異常検出信号は、SENSE電極16に接続された抵抗器によって電気信号に変換される。半導体装置1の状態異常は、この電気信号に基づいて検出される。
【0062】
図3は、
図1に示す領域IIIの断面斜視図であって、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91を含む形態を示す断面斜視図である。
図4は、
図3から基準電位電極14およびゲート制御配線17を取り除いた断面斜視図である。
図5は、
図4から層間絶縁層122を取り除いた断面斜視図である。
【0063】
図6は、
図5の平面図である。
図7は、
図3に示す2つのトレンチゲート構造61を含む領域の拡大断面図である。
図8は、
図7に示す1つのトレンチゲート構造61の拡大断面図である。
【0064】
図3~
図8を参照して、半導体層2は、この形態では、n
+型の半導体基板51およびn型のエピタキシャル層52を含む積層構造を有している。半導体基板51によって半導体層2の第2主面4が形成されている。エピタキシャル層52によって半導体層2の第1主面3が形成されている。半導体基板51およびエピタキシャル層52によって半導体層2の側面5A~5Dが形成されている。
【0065】
エピタキシャル層52は、半導体基板51のn型不純物濃度よりも低いn型不純物濃度を有している。半導体基板51のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下であってもよい。エピタキシャル層52のn型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。
【0066】
エピタキシャル層52は、半導体基板51の厚さTsub未満の厚さTepi(Tepi<Tsub)を有している。半導体基板51の厚さTsubは、50μm以上450μm以下であってもよい。厚さTsubは、50μm以上150μm以下、150μm以上250μm以下、250μm以上350μm以下、または、350μm以上450μm以下であってもよい。
【0067】
半導体基板51の厚さTsubを低減させることにより、抵抗値を低減できる。半導体基板51の厚さTsubは、研削によって調整できる。この場合、半導体層2の第2主面4は、研削痕を有する研削面であってもよい。
【0068】
エピタキシャル層52の厚さTepiは、5μm以上20μm以下であってもよい。エピタキシャル層52の厚さTepiは、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、または、15μm以上20μm以下であってもよい。厚さTepiは、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0069】
半導体基板51は、半導体層2の第2主面4側においてドレイン領域53として形成されている。エピタキシャル層52は、半導体層2の第1主面3の表層部においてドリフト領域54(ドレインドリフト領域)として形成されている。ドリフト領域54の底部は、半導体基板51およびエピタキシャル層52の境界によって形成されている。以下、エピタキシャル層52をドリフト領域54という。
【0070】
出力領域6において半導体層2の第1主面3の表層部には、p型のボディ領域55が形成されている。ボディ領域55のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。
【0071】
ボディ領域55は、ドリフト領域54の表層部に形成されている。ボディ領域55の底部は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に形成されている。ボディ領域55の厚さは、0.5μm以上2μm以下であってもよい。ボディ領域55の厚さは、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、または、1.5μm以上2μm以下であってもよい。
【0072】
出力領域6において半導体層2の第1主面3には、複数のトレンチゲート構造61が形成されている。複数のトレンチゲート構造61は、平面視において第1方向Xに沿って帯状にそれぞれ延び、第2方向Yに沿って間隔を空けて形成されている。
【0073】
複数のトレンチゲート構造61は、平面視において全体としてストライプ状に形成されている。複数のトレンチゲート構造61は、第1方向Xにおいて一方側の第1端部および他方側の第2端部をそれぞれ有している。
【0074】
図3~
図6では、各トレンチゲート構造61の一端部側の領域を図示し、他端部側の領域の図示を省略している。各トレンチゲート構造61の他端部側の領域の構造は、各トレンチゲート構造61の一端部側の領域の構造とほぼ同様である。
【0075】
各トレンチゲート構造61の幅WTは、0.5μm以上2μm以下であってもよい。幅WTは、各トレンチゲート構造61が延びる方向(第1方向X)に直交する方向(第2方向Y)の幅である。幅WTは、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、または、1.5μm以上2μm以下であってもよい。幅WTは、0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましい。
【0076】
複数のトレンチゲート構造61は、ボディ領域55を貫通し、ドリフト領域54に達している。各トレンチゲート構造61の深さDTは、1μm以上10μm以下であってもよい。深さDTは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。深さDTは、2μm以上6μm以下であることが好ましい。
【0077】
各トレンチゲート構造61は、一方側の第1側壁62、他方側の第2側壁63、ならびに、第1側壁62および第2側壁63を接続する底壁64を含む。以下では、第1側壁62、第2側壁63および底壁64を纏めて「内壁」または「外壁」ということがある。
【0078】
各トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64は、ドリフト領域54内に位置している。各トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63は、法線方向Zに沿って延びている。各トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63は、第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。
【0079】
半導体層2内において第1側壁62が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第2側壁63が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。各トレンチゲート構造61は、断面視において第1主面3側から底壁64側に向けて幅WTが狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0080】
各トレンチゲート構造61の底壁64は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。各トレンチゲート構造61の底壁64は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0081】
各トレンチゲート構造61の底壁64は、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上10μm以下の間隔ITを空けて第1主面3側の領域に位置している。間隔ITは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。間隔ITは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0082】
複数のトレンチゲート構造61は、第2方向Yに沿って交互に配列された第1トレンチゲート構造61Aおよび第2トレンチゲート構造61Bを含む。第1トレンチゲート構造61Aの外壁からは、ドリフト領域54内に第1空乏層が拡がる。第2トレンチゲート構造61Bの外壁からは、ドリフト領域54内に第2空乏層が拡がる。
【0083】
複数のトレンチゲート構造61は、第1空乏層が第2空乏層に重なる態様で配列されている。第1空乏層は、より具体的には、第1トレンチゲート構造61Aおよび第2トレンチゲート構造61Bの間の領域において、各トレンチゲート構造61の底壁64に対して第1主面3側の領域で第2空乏層に重なる。
【0084】
第1空乏層は、第1トレンチゲート構造61Aおよび第2トレンチゲート構造61Bの間の領域において、各トレンチゲート構造61の底壁64に対してドリフト領域54の底部側の領域で第2空乏層に重なることが好ましい。このような構造によれば、各トレンチゲート構造61の底壁64に電界が集中するのを抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0085】
互いに隣り合うトレンチゲート構造61の側壁間のピッチPSは、0.2μm以上2μm以下であってもよい。ピッチPSは、0.2μm以上0.4μm以下、0.4μm以上0.6μm以下、0.6μm以上0.8μm以下、0.8μm以上1.0μm以下、1.0μm以上1.2μm以下、1.2μm以上1.4μm以下、1.4μm以上1.6μm以下、1.6μm以上1.8μm以下、または、1.8μm以上2.0μm以下であってもよい。ピッチPSは、0.3μm以上1.5μm以下であることが好ましい。
【0086】
ピッチPSは、一方側のトレンチゲート構造61の第1側壁62および他方側のトレンチゲート構造61の第2側壁63の間において、各トレンチゲート構造61が延びる方向(第1方向X)に直交する方向(第2方向Y)の距離である。
【0087】
互いに隣り合うトレンチゲート構造61の中央部間のピッチPCは、1μm以上3μm以下であってもよい。ピッチPCは、1μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。ピッチPCは、1.2μm以上1.8μm以下であることが好ましい。
【0088】
ピッチPCは、一方側のトレンチゲート構造61の中央部および他方側のトレンチゲート構造61の中央部の間において、各トレンチゲート構造61が延びる方向(第1方向X)に直交する方向(第2方向Y)の距離である。
【0089】
ピッチPCを狭めることにより、単位面積当たりのチャネル面積を増加させることができるから、チャネル抵抗の低減を図ることができる。また、ブレークダウン電圧の向上も図ることができる。ただし、この場合、ドリフト領域54内の電流経路の縮小に起因してドリフト領域54のオン抵抗が増加するという背反がある。この背反に対する対策については、後述する。
【0090】
図6~
図8を参照して、各トレンチゲート構造61は、ゲートトレンチ65、絶縁層66および埋め込み電極67(電極)を含む。ゲートトレンチ65は、半導体層2の第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0091】
ゲートトレンチ65は、トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64を区画している。以下では、トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64を、ゲートトレンチ65の第1側壁62、第2側壁63および底壁64ともいう。
【0092】
絶縁層66は、ゲートトレンチ65の内壁に沿って膜状に形成されている。絶縁層66は、ゲートトレンチ65内において凹状の空間を区画している。絶縁層66においてゲートトレンチ65の底壁64を被覆する部分は、ゲートトレンチ65の底壁64に倣って形成されている。これにより、絶縁層66は、ゲートトレンチ65内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0093】
絶縁層66は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)または酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0094】
絶縁層66は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。絶縁層66は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。絶縁層66は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。絶縁層66は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。
【0095】
図8を参照して、絶縁層66は、ゲートトレンチ65の底壁64側から半導体層2の第1主面3側に向けてこの順に形成された底側絶縁層68および開口側絶縁層69を含む。
【0096】
底側絶縁層68は、ゲートトレンチ65の底壁64側の内壁を被覆している。底側絶縁層68は、より具体的には、ボディ領域55の底部に対してゲートトレンチ65の底壁64側の内壁を被覆している。底側絶縁層68は、ゲートトレンチ65の底壁64側においてU字空間を区画している。底側絶縁層68は、U字空間を区画する平滑な内壁面を有している。底側絶縁層68は、ドリフト領域54(より具体的には後述する高濃度ドリフト領域91)に接している。底側絶縁層68の一部は、ボディ領域55に接していてもよい。
【0097】
開口側絶縁層69は、ゲートトレンチ65の開口側の内壁を被覆している。開口側絶縁層69は、より具体的には、ボディ領域55の底部に対してゲートトレンチ65の開口側の領域においてゲートトレンチ65の第1側壁62および第2側壁63を被覆している。開口側絶縁層69は、ボディ領域55に接している。開口側絶縁層69の一部は、ドリフト領域54に接していてもよい。
【0098】
底側絶縁層68は、第1厚さT1を有している。開口側絶縁層69は、第1厚さT1未満の第2厚さT2(T2<T1)を有している。第1厚さT1は、底側絶縁層68においてゲートトレンチ65の内壁の法線方向に沿う厚さである。第2厚さT2は、開口側絶縁層69においてゲートトレンチ65の内壁の法線方向に沿う厚さである。
【0099】
ゲートトレンチ65の幅WTに対する第1厚さT1の比T1/WTは、0.1以上0.4以下であってもよい。比T1/WTは、0.1以上0.15以下、0.15以上0.2以下、0.2以上0.25以下、0.25以上0.3以下、0.3以上0.35以下、または、0.35以上0.4以下であってもよい。比T1/WTは、0.25以上0.35以下であることが好ましい。
【0100】
底側絶縁層68の第1厚さT1は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第1厚さT1は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第1厚さT1は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。
【0101】
開口側絶縁層69の第2厚さT2は、底側絶縁層68の第1厚さT1の1/100以上1/10以下であってもよい。第2厚さT2は、100Å以上500Å以下であってもよい。第2厚さT2は、100Å以上200Å以下、200Å以上300Å以下、300Å以上400Å以下、または、400Å以上500Å以下であってもよい。第2厚さT2は、200Å以上400Å以下であることが好ましい。
【0102】
底側絶縁層68は、ゲートトレンチ65の第1側壁62および第2側壁63を被覆する部分からゲートトレンチ65の底壁64を被覆する部分に向けて第1厚さT1が減少する態様で形成されている。
【0103】
底側絶縁層68においてゲートトレンチ65の底壁64を被覆する部分の厚さは、底側絶縁層68においてゲートトレンチ65の第1側壁62および第2側壁63を被覆する部分の厚さよりも小さい。底側絶縁層68によって区画されたU字空間の底壁側の開口幅は、第1厚さT1の減少分だけ拡張されている。これにより、U字空間の先細りが抑制されている。
【0104】
底側絶縁層68は、より具体的には、側壁被覆部70および底壁被覆部71を含む。側壁被覆部70は、ゲートトレンチ65の第1側壁62および第2側壁63を被覆し、U字空間の側壁を形成している。底壁被覆部71は、ゲートトレンチ65の底壁64を被覆し、U字空間の底壁を形成している。
【0105】
底壁被覆部71は、第1厚さT1の範囲において、側壁被覆部70の厚さTSとは異なる厚さTBを有している。底壁被覆部71の厚さTBは、より具体的には、側壁被覆部70の厚さTS未満(TB<TS)である。
【0106】
側壁被覆部70の厚さTSに対する底壁被覆部71の厚さTBの比TB/TSは、0.5以上0.8以下であってもよい。比TB/TSは、0.5以上0.55以下、0.55以上0.6以下、0.6以上0.65以下、0.65以上0.7以下、0.7以上0.75以下、または、0.75以上0.8以下であってもよい。比TB/TSは、0.65以上0.75以下であることが好ましい。
【0107】
底壁被覆部71は、隅部71Aおよび最深部71Bを含む。隅部71Aは、側壁被覆部70との境界部を区画している。最深部71Bは、U字空間の底を区画している。最深部71Bは、隅部71Aの厚さTCとは異なる厚さTD(TD≠TC)を有していてもよい。最深部71Bの厚さTDは、隅部71Aの厚さTCを超えていていもよい(TD>TC)。
【0108】
厚さTDおよび厚さTCの差TD-TCは、10Å以上200Å以下であってもよい。差TD-TCは、10Å以上50Å以下、50Å以上100Å以下、100Å以上150Å以下、または、150Å以上200Å以下であってもよい。差TD-TCは、10Å以上80Å以下であることが好ましい。
【0109】
底側絶縁層68によって区画されたU字空間は、製造工程中において、底側絶縁層68の表面部をエッチング法によって除去することによって形成される。エッチング法は、ウエットエッチング法であってもよい。
【0110】
底側絶縁層68の内壁面は、エッチング法によって形成されたエッチング面である。底側絶縁層68の第1厚さT1がゲートトレンチ65の底壁64に向けて減少するのは、底壁被覆部71の除去量が、側壁被覆部70の除去量よりも多いためである。
【0111】
埋め込み電極67は、絶縁層66を挟んでゲートトレンチ65に埋め込まれている。埋め込み電極67にはゲート電圧を含む所定のゲート制御信号が印加される。埋め込み電極67は、この形態では、底側電極72、開口側電極73および中間絶縁層74を含む絶縁分離型の電極構造を有している。
【0112】
底側電極72は、絶縁層66を挟んでゲートトレンチ65の底壁64側に埋設されている。底側電極72は、より具体的には、底側絶縁層68を挟んでゲートトレンチ65の底壁64側に埋設されている。底側電極72は、底側絶縁層68を挟んでドリフト領域54(より具体的には後述する高濃度ドリフト領域91)に対向している。底側電極72の一部は、底側絶縁層68を挟んでボディ領域55に対向していてもよい。
【0113】
底側電極72は、第1端部72A、第2端部72Bおよび壁部72Cを含む。第1端部72Aは、ゲートトレンチ65の開口側に位置している。第2端部72Bは、ゲートトレンチ65の底壁64側に位置している。壁部72Cは、第1端部72Aおよび第2端部72Bを接続し、ゲートトレンチ65の内壁に沿って壁状に延びている。
【0114】
第1端部72Aは、底側絶縁層68から露出している。第1端部72Aは、底側絶縁層68に対して半導体層2の第1主面3側に突出している。これにより、底側電極72は、ゲートトレンチ65の開口側において、底側絶縁層68および開口側絶縁層69との間で、断面視において逆凹状のリセスを区画している。第1端部72Aの幅は、壁部72Cの幅未満である。
【0115】
第2端部72Bは、ゲートトレンチ65の底壁64に向かう凸湾曲状に形成されている。第2端部72Bは、より具体的には、底側絶縁層68(底壁被覆部71)によって区画されたU字空間の底壁(エッチング面)に倣って形成されており、ゲートトレンチ65の底壁64に向かう滑らかな凸湾曲状に形成されている。
【0116】
このような構造によれば、底側電極72に対する局所的な電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。特に、エッチング法によって拡張された底側絶縁層68のU字空間に底側電極72を埋設することにより、底側電極72が第1端部72Aから第2端部72Bに向けて先細り形状になることを適切に抑制できる。これにより、底側電極72の第2端部72Bに対する局所的な電界集中を適切に抑制できる。
【0117】
このような構造は、第1主面3から第2主面4に向かう先細り形状のゲートトレンチ65の内壁に膜状の絶縁層66が形成される場合に特に有効である。先細り形状のゲートトレンチ65は、第2主面4に向かう凸湾曲状の底壁64を有するゲートトレンチ65、または、断面視において開口幅が第1主面3から第2主面4に向かって狭まるテーパ形状のゲートトレンチ65、もしくは、これら双方の特徴を備えたゲートトレンチ65を含む。
【0118】
すなわち、先細り形状の一形態として第2主面4に向かう凸湾曲状の底壁64を有するゲートトレンチ65の内壁に膜状の絶縁層66が形成される場合、ゲートトレンチ65の内壁にはゲートトレンチ65の底壁64に向けて開口幅が狭まる先細り形状の凹状(U字状)の空間が区画される。
【0119】
この場合、凹状の空間に埋設される埋め込み電極67(底側電極72)も、凹状の空間の内壁に倣って先細り形状に形成される。先細り形状の埋め込み電極67(底側電極72)が形成された場合、ゲートトレンチ65の底壁64において電界が局所的に集中する。その結果、電界集中に起因してブレークダウン電圧が低下する。
【0120】
したがって、第2主面4に向かう凸湾曲状の底壁64を有するゲートトレンチ65が形成される場合、絶縁層66(底側絶縁層68)の底壁被覆部71の厚さTBを側壁被覆部70の厚さTS未満(TB<TS)とすることにより、絶縁層66によって区画される凹状の空間が先細り形状になることを適切に抑制できる。その結果、ゲートトレンチ65の底壁64における電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0121】
また、先細り形状の一形態としてテーパ形状のゲートトレンチ65の内壁に膜状の絶縁層66が形成される場合、ゲートトレンチ65内にはゲートトレンチ65の底壁64に向けて開口幅が狭まる先細り形状の凹状の空間が区画される。
【0122】
この場合、凹状の空間に埋設される埋め込み電極67(底側電極72)も、凹状の空間の内壁に倣って先細り形状に形成される。先細り形状の埋め込み電極67(底側電極72)が形成された場合、ゲートトレンチ65の底壁64において電界が局所的に集中する。その結果、電界集中に起因してブレークダウン電圧が低下する。
【0123】
したがって、テーパ形状のゲートトレンチ65が形成される場合、絶縁層66(底側絶縁層68)の底壁被覆部71の厚さTBを側壁被覆部70の厚さTS未満(TB<TS)とすることにより、絶縁層66によって区画される凹状の空間が先細り形状になることを適切に抑制できる。その結果、ゲートトレンチ65の底壁64における電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0124】
底側電極72は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金または銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。底側電極72は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。
【0125】
開口側電極73は、絶縁層66を挟んでゲートトレンチ65の開口側に埋設されている。開口側電極73は、より具体的には、開口側絶縁層69を挟んでゲートトレンチ65の開口側に区画された逆凹状のリセスに埋設されている。開口側電極73は、開口側絶縁層69を挟んでボディ領域55に対向している。開口側電極73の一部は、開口側絶縁層69を挟んでドリフト領域54(より具体的には後述する高濃度ドリフト領域91)に対向していてもよい。
【0126】
開口側電極73は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金または銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。開口側電極73は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。
【0127】
開口側電極73においてゲートトレンチ65から露出する露出部は、膜状に形成されたキャップ絶縁層75によって被覆されている。キャップ絶縁層75は、ゲートトレンチ65内において開口側絶縁層69に連なっている。キャップ絶縁層75は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0128】
中間絶縁層74は、底側電極72および開口側電極73の間に介在し、底側電極72および開口側電極73を電気的に絶縁している。中間絶縁層74は、より具体的には、底側電極72および開口側電極73の間の領域において底側絶縁層68から露出する底側電極72の外面(より具体的には突出部)を被覆している。中間絶縁層74は、底側電極72の第1端部72Aを被覆している。中間絶縁層74は、絶縁層66(底側絶縁層68)に連なっている。
【0129】
中間絶縁層74は、第3厚さT3を有している。第3厚さT3は、底側電極72の第1厚さT1未満(T3<T1)である。第3厚さT3は、第1厚さT1の1/100以上1/10以下であってもよい。第3厚さT3は、100Å以上500Å以下であってもよい。第3厚さT3は、100Å以上200Å以下、200Å以上300Å以下、300Å以上400Å以下、または、400Å以上500Å以下であってもよい。第3厚さT3は、200Å以上400Å以下であることが好ましい。
【0130】
中間絶縁層74は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)または酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。中間絶縁層74は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。
【0131】
パワーMISFET9を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、底側電極72にゲート電圧が印加され、開口側電極73にゲート電圧が印加されてもよい。この場合、底側電極72および開口側電極73は、ゲート電極として機能する。これにより、底側電極72および開口側電極73の間の電圧降下を抑制できるから、底側電極72および開口側電極73の間の電界集中を抑制できる。また、半導体層2のオン抵抗を低下させることができるから、消費電力の低減を図ることができる。
【0132】
パワーMISFET9を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、底側電極72に基準電位が印加され、開口側電極73にゲート電圧が印加されてもよい。この場合、底側電極72がフィールド電極として機能する一方で、開口側電極73がゲート電極として機能する。これにより、寄生容量を低下させることができるから、スイッチング速度の向上を図ることができる。
【0133】
図3~
図6を参照して、半導体層2の第1主面3には、複数(この形態では2つ)のトレンチコンタクト構造81が形成されている。複数のトレンチコンタクト構造81は、各トレンチゲート構造61の一端部側に位置する一方側のトレンチコンタクト構造81および各トレンチゲート構造61の他端部側に位置する他方側のトレンチコンタクト構造81(図示略)を含む。
【0134】
一方側のトレンチコンタクト構造81は、第2方向Yに沿って帯状に延び、複数のトレンチゲート構造61の一端部に接続されている。他方側のトレンチコンタクト構造81は、一方側のトレンチコンタクト構造81と同様に、第2方向Yに沿って帯状に延び、複数のトレンチゲート構造61の他端部に接続されている。
【0135】
他方側のトレンチコンタクト構造81は、一方側のトレンチコンタクト構造81とほぼ同様の構造を有している。他方側のトレンチコンタクト構造81についての具体的な説明は、省略される。
【0136】
各トレンチコンタクト構造81の幅WTCは、0.5μm以上3μm以下であってもよい。幅WTCは、各トレンチコンタクト構造81が延びる方向(第2方向Y)に直交する方向(第1方向X)の幅である。幅WTCは、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、または、2.5μm以上3.0μm以下であってもよい。幅WTCは、0.8μm以上2μm以下であることが好ましい。各トレンチコンタクト構造81の幅WTCは、各トレンチゲート構造61の幅WTと等しいことが好ましい(WTC=WT)。
【0137】
各トレンチコンタクト構造81は、ボディ領域55を貫通し、ドリフト領域54に達している。各トレンチコンタクト構造81の深さDTCは、1μm以上10μm以下であってもよい。深さDTCは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。深さDTCは、2μm以上6μm以下であることが好ましい。各トレンチコンタクト構造81の深さDTCは、各トレンチゲート構造61の深さDTと等しいことが好ましい(DTC=DT)。
【0138】
各トレンチコンタクト構造81は、一方側の第1側壁82、他方側の第2側壁83、ならびに、第1側壁82および第2側壁83を接続する底壁84を含む。各トレンチコンタクト構造81の第1側壁82は、トレンチゲート構造61に接続された接続面である。以下では、第1側壁82、第2側壁83および底壁84を纏めて「内壁」または「外壁」ということがある。
【0139】
各トレンチコンタクト構造81の第1側壁82、第2側壁83および底壁84は、ドリフト領域54内に位置している。各トレンチコンタクト構造81の第1側壁82および第2側壁83は、法線方向Zに沿って延びている。各トレンチコンタクト構造81の第1側壁82および第2側壁83は、第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。
【0140】
半導体層2内において第1側壁82が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第2側壁83が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。各トレンチコンタクト構造81は、断面視において半導体層2の第1主面3側から底壁84側に向けて幅WTCが狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0141】
各トレンチコンタクト構造81の底壁84は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。各トレンチコンタクト構造81の底壁84は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状に形成されている。
【0142】
各トレンチコンタクト構造81の底壁84は、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上10μm以下の間隔ITCを空けて第1主面3側の領域に位置している。間隔ITCは、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。間隔ITCは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。間隔ITCは、トレンチゲート構造61の間隔ITと等しいことが好ましい(ITC=IT)。
【0143】
各トレンチコンタクト構造81は、コンタクトトレンチ85、コンタクト絶縁層86およびコンタクト電極87を含む。コンタクトトレンチ85は、半導体層2の第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。
【0144】
コンタクトトレンチ85は、トレンチコンタクト構造81の第1側壁82、第2側壁83および底壁84を区画している。以下では、トレンチコンタクト構造81の第1側壁82、第2側壁83および底壁84を、コンタクトトレンチ85の第1側壁82、第2側壁83および底壁84ともいう。
【0145】
コンタクトトレンチ85の第1側壁82は、ゲートトレンチ65の第1側壁62および第2側壁63に連通している。コンタクトトレンチ85は、ゲートトレンチ65との間で1つのトレンチを形成している。
【0146】
コンタクト絶縁層86は、コンタクトトレンチ85の内壁に沿って膜状に形成されている。コンタクト絶縁層86は、コンタクトトレンチ85内において凹状の空間を区画している。コンタクト絶縁層86においてコンタクトトレンチ85の底壁84を被覆する部分は、コンタクトトレンチ85の底壁84に倣って形成されている。
【0147】
コンタクト絶縁層86は、トレンチゲート構造61の底側絶縁層68と同様の態様で、コンタクトトレンチ85内においてU字状に窪んだU字空間を区画している。つまり、具体的な説明は省略されるが、コンタクト絶縁層86においてコンタクトトレンチ85の底壁84を被覆する部分は、トレンチゲート構造61の底側絶縁層68と同様に、側壁被覆部70および底壁被覆部71(隅部71Aおよび最深部71B)を有している。
【0148】
コンタクト絶縁層86は、第4厚さT4を有している。第4厚さT4は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第4厚さT4は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第4厚さT4は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。第4厚さT4は、底側絶縁層68の第1厚さT1と等しい(T4=T1)ことが好ましい。
【0149】
コンタクト絶縁層86は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)または酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0150】
コンタクト絶縁層86は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。コンタクト絶縁層86は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。コンタクト絶縁層86は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。コンタクト絶縁層86は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。コンタクト絶縁層86は、絶縁層66と同一の絶縁材料からなることが好ましい。
【0151】
コンタクト絶縁層86は、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85の間の連通部において絶縁層66と一体を成している。一方側のコンタクトトレンチ85の内壁に形成されたコンタクト絶縁層86は、この形態では、ゲートトレンチ65の一端部側に引き出された絶縁引き出し部86Aを有している。絶縁引き出し部86Aは、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85の間の連通部を横切ってゲートトレンチ65の一端部側の内壁を被覆している。
【0152】
絶縁引き出し部86Aは、ゲートトレンチ65内において底側絶縁層68および開口側絶縁層69と一体を成している。絶縁引き出し部86Aは、ゲートトレンチ65の一端部側の内壁において、底側絶縁層68と共にU字空間を区画している。
【0153】
図示は省略されるが、他方側のコンタクトトレンチ85の内壁に形成されたコンタクト絶縁層86は、この形態では、ゲートトレンチ65の内壁に引き出された絶縁引き出し部86Aを有している。絶縁引き出し部86Aは、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85の間の連通部を横切ってゲートトレンチ65の他端部側の内壁を被覆している。
【0154】
絶縁引き出し部86Aは、ゲートトレンチ65内において底側絶縁層68および開口側絶縁層69と一体を成している。絶縁引き出し部86Aは、ゲートトレンチ65の他端部側の内壁において、底側絶縁層68と共にU字空間を区画している。
【0155】
コンタクト電極87は、コンタクト絶縁層86を挟んでコンタクトトレンチ85に埋め込まれている。コンタクト電極87は、埋め込み電極67とは異なり、一体物としてコンタクトトレンチ85に埋め込まれている。コンタクト電極87は、コンタクトトレンチ85から露出する一端部、コンタクト絶縁層86に接する他端部を有している。
【0156】
コンタクト電極87の他端部は、トレンチゲート構造61の底側電極72と同様の態様で、コンタクトトレンチ85の底壁84に向かう凸湾曲状に形成されている。コンタクト電極87の他端部は、より具体的には、コンタクト絶縁層86によって区画されたU字空間の底壁(エッチング面)に倣って形成されており、コンタクトトレンチ85の底壁84に向かう滑らかな凸湾曲状に形成されている。
【0157】
このような構造によれば、トレンチゲート構造61に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。すなわち、コンタクト電極87に対する局所的な電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0158】
コンタクト電極87は、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85の間の接続部において埋め込み電極67の底側電極72に電気的に接続されている。より具体的には、一方側のコンタクトトレンチ85内に形成されたコンタクト電極87は、ゲートトレンチ65の一端部側に引き出された電極引き出し部87Aを有している。電極引き出し部87Aは、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85の間の連通部を横切ってゲートトレンチ65内に位置している。
【0159】
電極引き出し部87Aは、ゲートトレンチ65内においてコンタクト絶縁層86によって区画されたU字空間に埋め込まれている。電極引き出し部87Aは、ゲートトレンチ65内において底側電極72と一体を成している。これにより、コンタクト電極87は、底側電極72に電気的に接続されている。コンタクト電極87は、ゲートトレンチ65内からコンタクトトレンチ85内に引き出された底側電極72の引き出し部でもある。
【0160】
ゲートトレンチ65内において電極引き出し部87Aおよび開口側電極73の間には、中間絶縁層74が介在している。これにより、コンタクト電極87は、ゲートトレンチ65内において開口側電極73から電気的に絶縁されている。
【0161】
図示は省略されるが、他方側のコンタクトトレンチ85内に形成されたコンタクト電極87は、より具体的には、ゲートトレンチ65の他端部側に引き出された電極引き出し部87Aを有している。電極引き出し部87Aは、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85の間の連通部を横切ってゲートトレンチ65内に位置している。
【0162】
電極引き出し部87Aは、ゲートトレンチ65内においてコンタクト絶縁層86によって区画されたU字空間に埋め込まれている。電極引き出し部87Aは、ゲートトレンチ65内において底側電極72と一体を成している。これにより、コンタクト電極87は、底側電極72に電気的に接続されている。コンタクト電極87は、ゲートトレンチ65内からコンタクトトレンチ85内に引き出された底側電極72の引き出し部でもある。
【0163】
コンタクト電極87は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金または銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。コンタクト電極87は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。コンタクト電極87は、底側電極72と同一の導電材料を含むことが好ましい。
【0164】
コンタクト電極87においてコンタクトトレンチ85から露出する露出部は、膜状に形成されたキャップ絶縁層88によって被覆されている。キャップ絶縁層88は、コンタクトトレンチ85内においてコンタクト絶縁層86に連なっている。キャップ絶縁層88は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0165】
図3~
図8を参照して、ドリフト領域54においてトレンチゲート構造61の外壁に沿う領域にはn
+型の高濃度ドリフト領域91が形成されている。この形態では、複数の高濃度ドリフト領域91が、複数のトレンチゲート構造61の外壁に対して1対1対応の関係で形成されている。
【0166】
高濃度ドリフト領域91は、ドリフト領域54のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有している。高濃度ドリフト領域91のn型不純物濃度は、ボディ領域55のp型不純物濃度未満であることが好ましい。高濃度ドリフト領域91のn型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1019cm-3以下であってもよい。
【0167】
高濃度ドリフト領域91は、ゲートトレンチ65の内壁からドリフト領域54に対してn型不純物を導入することによって形成されている。したがって、ボディ領域55は、高濃度ドリフト領域91のn型不純物の一部を含む。
【0168】
つまり、ボディ領域55は、トレンチゲート構造61の外壁に沿う領域においてp型不純物の一部がn型不純物の一部によって相殺補償された相殺補償領域(a compensation region)を含み、全体としてp型の半導体領域を成している。「相殺補償」は、「相殺」、「補償」、「キャリア相殺」または「キャリア補償」とも称される。相殺補償領域のp型不純物濃度は、n型不純物によって相殺補償された分だけ低下している。
【0169】
高濃度ドリフト領域91を形成することにより、ドリフト領域54における主たる電流経路となる領域を高濃度化できる。これにより、ドリフト領域54のオン抵抗の低減を図ることができる。また、ドリフト領域54の全域を高濃度化せずに済むので、半導体層2中の電界集中を抑制できる。とりわけ、トレンチゲート構造61の外壁に沿う高濃度ドリフト領域91を形成することにより、トレンチゲート構造61に対する電界集中を抑制できる。したがって、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0170】
複数のトレンチゲート構造61のピッチPCを狭める場合には、電流経路の縮小に起因してドリフト領域54のオン抵抗が増加することが懸念される。しかし、高濃度ドリフト領域91によって電流経路を確保できるから、オン抵抗の増加を抑制できる。これにより、オン抵抗の増加およびブレークダウン電圧の低下を抑制しながら、ピッチPCを狭めてチャネル抵抗の低減を図ることができる。
【0171】
各高濃度ドリフト領域91は、側壁被覆部92および底壁被覆部93を含む。側壁被覆部92は、トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63を被覆している。底壁被覆部93は、トレンチゲート構造61のコーナ部を介してトレンチゲート構造61の底壁64を被覆している。底壁被覆部93は、高濃度ドリフト領域91の底部を形成している。
【0172】
底壁被覆部93は、側壁被覆部92のn型不純物濃度を超えるn型不純物濃度を有する高濃度領域94(
図7の破線部参照)を有している。高濃度領域94は、トレンチゲート構造61の底壁64に沿って形成されている。底壁被覆部93を形成することにより、トレンチゲート構造61の底壁64に対する電界集中を適切に抑制できる。底壁被覆部93は、高濃度領域94からドリフト領域54に向けてn型不純物濃度が漸減する濃度勾配を有していてもよい。
【0173】
各高濃度ドリフト領域91は、ドリフト領域54の底部に対して各トレンチゲート構造61の底壁64側の領域に位置する底部を有している。各高濃度ドリフト領域91の底部は、ドリフト領域54の底部に対して0.1μm以上3μm以下の間隔IDを空けて第1主面3側の領域に形成されている。
【0174】
間隔IDは、0.1μm以上0.5μm以下、0.5μm以上1μm以下、1μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。間隔IDは、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0175】
各高濃度ドリフト領域91の底部(底壁被覆部93)の厚さTDBは、トレンチゲート構造61の側壁間のピッチPS以上(PS≦TDB)であってもよい。厚さTDBは、ピッチPSを超えていてもよい(PS<厚さTDB)。厚さTDBは、トレンチゲート構造61の底壁64および各高濃度ドリフト領域91の底部の間の厚さである。また、厚さTDBは、間隔ITおよび間隔IDの差IT-IDでもある。
【0176】
複数の高濃度ドリフト領域91は、この形態では、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において互いに接続されている。これにより、半導体層2の第1主面3の表層部には、複数の高濃度ドリフト領域91が一体化した高濃度ドリフト領域91が形成されている。
【0177】
一体化した高濃度ドリフト領域91は、複数のトレンチゲート構造61を一括して被覆している。一体化した高濃度ドリフト領域91は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において第1接続部95および第2接続部96を含む。
【0178】
第1接続部95は、各トレンチゲート構造61の底壁64に対して第1主面3側の領域において複数の高濃度ドリフト領域91が接続された部分である。第2接続部96は、各トレンチゲート構造61の底壁64に対してドリフト領域54の底部側の領域において複数の高濃度ドリフト領域91が接続された部分である。第2接続部96は、第1主面3に向かって窪んだ凹状に形成されていてもよい。
【0179】
高濃度ドリフト領域91は、この形態では、ドリフト領域54において複数のトレンチコンタクト構造81の外面を露出させている。つまり、高濃度ドリフト領域91は、ドリフト領域54において複数のトレンチコンタクト構造81から間隔を空けてトレンチゲート構造61の外面を被覆している。
【0180】
ボディ領域55の表層部には、複数のn+型のソース領域101が形成されている。ソース領域101のn型不純物濃度は、ドリフト領域54のn型不純物濃度を超えている。ソース領域101のn型不純物濃度は、高濃度ドリフト領域91のn型不純物濃度を超えている。ソース領域101のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0181】
複数のソース領域101は、ボディ領域55の表層部において各トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63に沿って選択的に形成されている。複数のソース領域101の底部は、ボディ領域55の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。これにより、複数のソース領域101は、絶縁層66(開口側絶縁層69)を挟んで埋め込み電極67(開口側電極73)に対向している。
【0182】
図6~
図8を参照して、複数のソース領域101は、より具体的には、複数の第1ソース領域101Aおよび複数の第2ソース領域101Bを含む。複数の第1ソース領域101Aは、各トレンチゲート構造61の第1側壁62に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2ソース領域101Bは、各トレンチゲート構造61の第2側壁63に沿って間隔を空けて形成されている。
【0183】
各第2ソース領域101Bは、この形態では、第2方向Yに沿って各第1ソース領域101Aと対向している。各第2ソース領域101Bは、各第1ソース領域101Aと一体を成している。各第2ソース領域101Bは、第2方向Yに沿って各第1ソース領域101Aの一部または全部と対向しないように、各第1ソース領域101Aから第1方向Xにずれて形成されていてもよい。
【0184】
ボディ領域55の表層部には、複数のp+型のコンタクト領域102が形成されている。コンタクト領域102のp型不純物濃度は、ボディ領域55のp型不純物濃度を超えている。コンタクト領域102のp型不純物濃度は、1×1019cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0185】
複数のコンタクト領域102は、ボディ領域55の表層部において複数のソース領域101の間の領域に形成されている。これにより、複数のコンタクト領域102は、複数のソース領域101に対して交互の配列となる態様でボディ領域55の表層部に形成されている。
【0186】
図6~
図8を参照して、複数のコンタクト領域102は、より具体的には、複数の第1コンタクト領域102Aおよび複数の第2コンタクト領域102Bを含む。複数の第1コンタクト領域102Aは、複数の第1ソース領域101Aの間に介在するように各トレンチゲート構造61の第1側壁62に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2ソース領域101Bは、複数の第2ソース領域101Bの間に介在するように各トレンチゲート構造61の第2側壁63に沿って間隔を空けて形成されている。
【0187】
各第2コンタクト領域102Bは、この形態では、第2方向Yに沿って各第1コンタクト領域102Aと対向している。各第2コンタクト領域102Bは、各第1コンタクト領域102Aと一体を成している。各第2ソース領域101Bが各第1ソース領域101Aから第1方向Xにずれて形成されている場合、各第2コンタクト領域102Bは、各第1コンタクト領域102Aから第1方向Xにずれて形成されていてもよい。
【0188】
ソース領域101およびコンタクト領域102は、この形態では、半導体層2の第1主面3において互いに隣り合うトレンチゲート構造61の一端部によって挟まれた領域に形成されていない。半導体層2の第1主面3において互いに隣り合うトレンチゲート構造61の一端部によって挟まれた領域からはボディ領域55が露出している。
【0189】
同様に、図示はしないが、ソース領域101およびコンタクト領域102は、半導体層2の第1主面3において互いに隣り合うトレンチゲート構造61の他端部によって挟まれた領域に形成されていない。これにより、半導体層2の第1主面3において互いに隣り合うトレンチゲート構造61の他端部によって挟まれた領域からはボディ領域55が露出している。
【0190】
このように、半導体層2の第1主面3の表層部には、FET構造110が形成されている。FET構造110は、各トレンチゲート構造61の側方に形成されている。FET構造110は、第1主面3から第2主面4に向けてこの順に形成された複数のソース領域101、ボディ領域55および高濃度ドリフト領域91(ドリフト領域54)を含む。
【0191】
FET構造110は、この形態では、複数のコンタクト領域102も含む。ボディ領域55において複数のソース領域101および高濃度ドリフト領域91に挟まれた領域にパワーMISFET9のチャネルCHが形成される。
【0192】
FET構造110は、より具体的には、第1FET構造110Aおよび第2FET構造110Bを含む。第1FET構造110Aは、各トレンチゲート構造61の第1側壁62に沿う領域に形成されている。第2FET構造110Bは、各トレンチゲート構造61の第2側壁63に沿う領域に形成されている。
【0193】
第1FET構造110Aは、第1主面3から第2主面4に向けてこの順に形成された複数の第1ソース領域101A、ボディ領域55および高濃度ドリフト領域91(ドリフト領域54)を含む。第1FET構造110Aは、この形態では、複数の第1コンタクト領域102Aも含む。ボディ領域55において複数の第1ソース領域101Aおよび高濃度ドリフト領域91に挟まれた領域にパワーMISFET9の第1チャネルCH1が形成される。
【0194】
第1チャネルCH1は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域に第1チャネル面積SCH1で形成されている。第1チャネル面積SCH1は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域に形成された複数の第1ソース領域101Aのトータル平面面積によって定義される。
【0195】
第1チャネルCH1は、0%以上50%以下の第1チャネル割合RCH1を有している。第1チャネル割合RCH1は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において第1チャネル面積SCH1が占める割合である。第1チャネル割合RCH1は、0%以上50%以下の範囲で調整される。
【0196】
第1チャネル割合RCH1は、0%以上5%以下、5%以上10%以下、10%以上15%以下、15%以上20%以下、20%以上25%以下、25%以上30%以下、30%以上35%以下、35%以上40%以下、40%以上45%以下、または、45%以上50%以下であってもよい。第1チャネル割合RCH1は、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0197】
第1チャネル割合RCH1が50%の場合、トレンチゲート構造61の第1側壁62のほぼ全域に第1ソース領域101Aが形成される。この場合、トレンチゲート構造61の第1側壁62に第1コンタクト領域102Aは形成されない。第1チャネル割合RCH1は、50%未満であることが好ましい。
【0198】
第1チャネル割合RCH1が0%の場合、トレンチゲート構造61の第1側壁62に第1ソース領域101Aは形成されない。この場合、トレンチゲート構造61の第1側壁62にボディ領域55および/または第1コンタクト領域102Aだけが形成される。第1チャネル割合RCH1は、0%を超えることが好ましい。
図3~6では、第1チャネル割合RCH1が25%である例が示されている。
【0199】
第2FET構造110Bは、第1主面3から第2主面4に向けてこの順に形成された複数の第2ソース領域101B、ボディ領域55および高濃度ドリフト領域91(ドリフト領域54)を含む。第2FET構造110Bは、この形態では、複数の第2コンタクト領域102Bも含む。ボディ領域55において複数の第2ソース領域101Bおよび高濃度ドリフト領域91に挟まれた領域にパワーMISFET9の第2チャネルCH2が形成される。
【0200】
第2チャネルCH2は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域に第2チャネル面積SCH2で形成されている。第2チャネル面積SCH2は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域に形成された複数の第2ソース領域101Bのトータル平面面積によって定義される。
【0201】
第2チャネルCH2は、0%以上50%以下の第2チャネル割合RCH2を有している。第2チャネル割合RCH2は、第2チャネル面積SCH2が互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域に占める割合である。第2チャネル割合RCH2は、0%以上50%以下の範囲で調整される。
【0202】
第2チャネル割合RCH2は、0%以上5%以下、5%以上10%以下、10%以上15%以下、15%以上20%以下、20%以上25%以下、25%以上30%以下、30%以上35%以下、35%以上40%以下、40%以上45%以下、または、45%以上50%以下であってもよい。第2チャネル割合RCH2は、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0203】
第2チャネル割合RCH2が50%の場合、トレンチゲート構造61の第2側壁63のほぼ全域に第2ソース領域101Bが形成される。この場合、トレンチゲート構造61の第2側壁63に第2コンタクト領域102Bは形成されない。したがって、第2チャネル割合RCH2は、50%未満であることが好ましい。
【0204】
第2チャネル割合RCH2が0%の場合、トレンチゲート構造61の第2側壁63に第2ソース領域101Bは形成されない。この場合、トレンチゲート構造61の第2側壁63にボディ領域55および/または第2コンタクト領域102Bだけが形成される。したがって、第2チャネル割合RCH2は、0%を超えることが好ましい。
図3~6では、第2チャネル割合RCH2が25%である例が示されている。
【0205】
第2チャネル割合RCH2は、第1チャネル割合RCH1と等しくてもよい。第2チャネル割合RCH2は、第1チャネル割合RCH1と異なっていてもよい。第1チャネル割合RCH1および第2チャネル割合RCH2は、トータルチャネル割合RCH1+RCH2が0%以上100%以下(より具体的には0%を超えて100%未満)の範囲で任意の値に調整される。
【0206】
トータルチャネル割合RCH1+RCH2を増加させた場合、オン抵抗が減少する一方で、アクティブクランプ耐量が減少するという背反がある。トータルチャネル割合RCH1+RCH2を20%以上70%以下とすることにより、オン抵抗およびアクティブクランプ耐量を適切に設計できる。この場合、第1チャネル割合RCH1が10%以上35%以下であり、第2チャネル割合RCH2が10%以上35%以下であることが好ましい。
【0207】
互いに異なる第1チャネル割合RCH1を有する複数の第1FET構造110Aを形成し、単位面積当たりにおけるトータルの第1チャネル割合RCH1(トータルチャネル割合RCH1+RCH2)を平均化する調整が行われてもよい。
【0208】
これと同時にまたはこれに代えて、互いに異なる第2チャネル割合RCH2を有する複数の第2FET構造110Bを形成し、単位面積当たりにおけるトータルの第2チャネル割合RCH2(トータルチャネル割合RCH1+RCH2)を平均化する調整が行われてもよい。
【0209】
単位面積当たりに占めるトータルチャネル割合RCH1+RCH2は、半導体層2の温度分布に応じて調整されてもよい。たとえば、半導体層2において温度が高まり易い領域のトータルチャネル割合RCH1+RCH2を比較的小さし、半導体層2において温度が高まり難い領域のトータルチャネル割合RCH1+RCH2を比較的大きくしてもよい。半導体層2において温度が高まり易い領域として、出力領域6の中央部を例示できる。半導体層2において温度が高まり難い領域として、出力領域6の周縁部を例示できる。
【0210】
図3および
図4を参照して、半導体層2の第1主面3の上には、主面絶縁層121が形成されている。主面絶縁層121は、半導体層2の第1主面3を選択的に被覆している。主面絶縁層121は、絶縁層66およびコンタクト絶縁層86に連なっている。主面絶縁層121は、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)または酸化タンタル(Ta
2O
3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0211】
主面絶縁層121は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。主面絶縁層121は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。主面絶縁層121は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。主面絶縁層121は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。主面絶縁層121は、絶縁層66と同一の絶縁材料からなることが好ましい。主面絶縁層121は、ゲートトレンチ65の開口において絶縁層66と一体を成している。
【0212】
主面絶縁層121の上には、層間絶縁層122が形成されている。層間絶縁層122は、主面絶縁層121の厚さを超える厚さを有していてもよい。層間絶縁層122は、主面絶縁層121のほぼ全域を被覆している。層間絶縁層122は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)または酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0213】
層間絶縁層122は、この形態では、酸化シリコンの一例としてのUSG(Undoped Silica Glass)層を含む。層間絶縁層122は、USG層からなる単層構造を有していてもよい。層間絶縁層122は、平坦化された主面を有していてもよい。層間絶縁層122の主面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって研削された研削面であってもよい。
【0214】
層間絶縁層122は、酸化シリコンの一例としてのPSG(Phosphor Silicate Glass)および/またはBPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)を含んでいてもよい。層間絶縁層122は、半導体層2の第1主面3側からこの順に積層されたPSG層およびBPSG層を含む積層構造を有していてもよい。層間絶縁層122は、半導体層2の第1主面3側からこの順に積層されたBPSG層およびPSG層を含む積層構造を有していてもよい。
【0215】
図3、
図4、
図7および
図8を参照して、出力領域6において層間絶縁層122には、第1プラグ電極123、第2プラグ電極124および第3プラグ電極125が埋め込まれている。この形態では、複数の第1プラグ電極123、複数の第2プラグ電極124および複数の第3プラグ電極125が埋め込まれている。第1プラグ電極123、第2プラグ電極124および第3プラグ電極125は、タングステンをそれぞれ含んでいてもよい。
【0216】
複数の第1プラグ電極123は、層間絶縁層122において開口側電極73を被覆する部分にそれぞれ埋め込まれている。複数の第1プラグ電極123は、この形態では、トレンチゲート構造61の一端部側の領域において層間絶縁層122を貫通し、1対1対応の関係で複数の開口側電極73に接続されている。むろん、1つの開口側電極73に対して複数の第1プラグ電極123が接続されていてもよい。
【0217】
図示は省略されるが、複数の第1プラグ電極123は、トレンチゲート構造61の他端部側の領域にも埋め込まれている。複数の第1プラグ電極123は、トレンチゲート構造61の他端部側の領域において層間絶縁層122を貫通し、1対1対応の関係で複数の開口側電極73に接続されている。むろん、1つの開口側電極73に対して複数の第1プラグ電極123が接続されていてもよい。
【0218】
複数の第1プラグ電極123は、この形態では、トレンチゲート構造61の一端部側の領域および他端部側の領域において、第2方向Yに沿って一列に間隔を空けて配列されている。各第1プラグ電極123は、平面視において三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状、もしくは、円形状または楕円形状に形成されていてもよい。各第1プラグ電極123は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。
【0219】
複数の第2プラグ電極124は、層間絶縁層122において一方側のトレンチコンタクト構造81のコンタクト電極87を被覆する部分にそれぞれ埋め込まれている。複数の第2プラグ電極124は、層間絶縁層122を貫通し、一方側のトレンチコンタクト構造81のコンタクト電極87に接続されている。
【0220】
図示は省略されるが、複数の第2プラグ電極124は、層間絶縁層122において他方側のトレンチコンタクト構造81のコンタクト電極87を被覆する部分にも埋め込まれている。複数の第2プラグ電極124は、層間絶縁層122を貫通し、他方側のトレンチコンタクト構造81のコンタクト電極87に接続されている。
【0221】
複数の第2プラグ電極124は、この形態では、第2方向Yに沿って一列に間隔を空けて配列されている。各第2プラグ電極124は、平面視において三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状、もしくは、円形状または楕円形状に形成されていてもよい。各第2プラグ電極124は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。
【0222】
複数の第3プラグ電極125は、層間絶縁層122においてFET構造110を被覆する部分にそれぞれ埋め込まれている。複数の第3プラグ電極125は、層間絶縁層122を貫通し、対応する第1FET構造110Aおよび第2FET構造110Bにそれぞれ接続されている。各第3プラグ電極125は、対応するソース領域101およびコンタクト領域102に電気的に接続されている。
【0223】
各第3プラグ電極125は、平面視においてトレンチゲート構造61に沿って延びる帯状に形成されている。各第3プラグ電極125の第1方向Xの長さは、トレンチゲート構造61の第1方向Xの長さ未満であってもよい。
【0224】
むろん、複数の第3プラグ電極125が、互いに隣り合う複数のトレンチゲート構造61の間の領域に間隔を空けて形成されていてもよい。この場合、各第3プラグ電極125は、平面視において三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状、もしくは、円形状または楕円形状に形成されていてもよい。
【0225】
出力領域6において層間絶縁層122の上には、前述の基準電位電極14およびゲート制御配線17が形成されている。基準電位電極14は、層間絶縁層122の上において複数の第3プラグ電極125に電気的に接続されている。基準電位電極14には、基準電位が印加される。基準電位は、複数の第3プラグ電極125を介して第1FET構造110Aおよび第2FET構造110Bに伝達される。
【0226】
ゲート制御配線17のうちの第1ゲート制御配線17Aは、層間絶縁層122の上において複数の第1プラグ電極123に電気的に接続されている。第1ゲート制御配線17Aには、ゲート制御信号が印加される。ゲート制御信号は、第1ゲート制御配線17Aおよび複数の第1プラグ電極123を介して各トレンチゲート構造61の底側電極72に伝達される。
【0227】
ゲート制御配線17のうちの第2ゲート制御配線17Bは、層間絶縁層122の上において複数の第2プラグ電極124に電気的に接続されている。第2ゲート制御配線17Bには、ゲート制御信号が印加される。ゲート制御信号は、第2ゲート制御配線17Bおよび複数の第2プラグ電極124を介して各トレンチゲート構造61の開口側電極73に伝達される。
【0228】
パワーMISFET9を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第1ゲート制御配線17Aおよび第2ゲート制御配線17Bにゲート電圧が印加されてもよい。この場合、底側電極72および開口側電極73にゲート電圧が印加される。これにより、底側電極72および開口側電極73をゲート電極として機能させることができる。
【0229】
パワーMISFET9を駆動させるとき(つまり、ゲートのオン制御時)、第1ゲート制御配線17Aに基準電位が印加され、第2ゲート制御配線17Bにゲート電圧が印加されてもよい。この場合、底側電極72に基準電位が印加され、開口側電極73にゲート電圧が印加される。これにより、底側電極72をフィールド電極として機能させ、開口側電極73をゲート電極として機能させることができる。
【0230】
図9は、
図1に示す領域IXの平面図であって、半導体層2の入力領域7の一部の構造を示す平面図である。
図10は、
図9に示すX-X線に沿う断面図である。
図11は、
図9に示すXI-XI線に沿う断面図である。
【0231】
図9~
図11を参照して、入力領域7(コントロールIC10)は、半導体層2の第1主面3に形成されたCMIS(Complementary Metal Insulator Semiconductor)領域131を含む。CMIS領域131には、前述の高濃度ドリフト領域91は形成されていない。CMIS領域131は、高濃度ドリフト領域91によって高濃度化されていないドリフト領域54(エピタキシャル層52)に形成されている。
【0232】
CMIS領域131のドリフト領域54が高濃度化されている場合、オン抵抗の低減を図ることはできるが、コントロールIC10の特性が変動する。また、CMIS領域131におけるドリフト領域54の高濃度化に起因して、ブレークダウン電圧が低下する可能性もある。
【0233】
したがって、出力領域6だけに高濃度ドリフト領域91を形成することにより、コントロールIC10の電気的特性の変動を抑制しながら、パワーMISFET9の電気的特性を向上させることができる。また、CMIS領域131の設計変更を要しないので、出力領域6(パワーMISFET9)に設計変更を加えても、設計変更の前後において入力領域7(コントロールIC10)の互換性を維持できる。
【0234】
CMIS領域131は、入力領域7において半導体層2の第1主面3の任意の領域に形成されたn型MIS領域132およびp型MIS領域133を含む。n型MIS領域132は、n型MISFET134が形成された領域である。p型MIS領域133は、p型MISFET135が形成された領域である。p型MIS領域133は、n型MIS領域132から電気的に絶縁されている。
【0235】
n型MIS領域132は、平面視において三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状、もしくは、円形状または楕円形状に形成されていてもよい。n型MIS領域132は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。
【0236】
p型MIS領域133は、n型MIS領域132から間隔を空けて形成されている。p型MIS領域133は、平面視において三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状、もしくは、円形状または楕円形状に形成されていてもよい。p型MIS領域133は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。
【0237】
図9および
図10を参照して、n型MIS領域132は、第1領域分離構造136によって区画されている。第1領域分離構造136は、n型MIS領域132を区画する内周壁、外周壁、ならびに、内周壁および外周壁を接続する底壁を含む環状に形成されている。第1領域分離構造136は、n型MIS領域132の平面形状に応じて、三角環状、四角環状、五角環状、六角環状等の多角環状、もしくは、円環状または楕円環状に形成されていてもよい。
【0238】
第1領域分離構造136の幅WS1は、0.5μm以上3μm以下であってもよい。幅WS1は、第1領域分離構造136が延びる方向に直交する方向の幅である。幅WS1は、0.5μm以上1.0μm以下、1.0μm以上1.5μm以下、1.5μm以上2μm以下、2μm以上2.5μm以下、または、2.5μm以上3μm以下であってもよい。幅WS1は、0.8μm以上2μm以下であることが好ましい。幅WS1は、トレンチゲート構造61の幅WTと等しいことが好ましい。
【0239】
第1領域分離構造136の内周壁、外周壁および底壁は、ドリフト領域54内に位置している。第1領域分離構造136の深さDS1は、1μm以上10μm以下であってもよい。深さDS1は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。深さDS1は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。深さDS1は、トレンチゲート構造61の深さDTと等しいことが好ましい。
【0240】
第1領域分離構造136の内周壁および外周壁は、法線方向Zに沿って延びている。第1領域分離構造136の内周壁および外周壁は、第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。
【0241】
半導体層2内において第1領域分離構造136の内周壁が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第1領域分離構造136の外周壁が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。第1領域分離構造136は、断面視において半導体層2の第1主面3側から底壁側に向けて幅WS1が狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0242】
第1領域分離構造136の底壁は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。第1領域分離構造136の底壁は、トレンチゲート構造61の底壁64と同様の態様で、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0243】
第1領域分離構造136は、第1領域分離トレンチ137、第1領域分離絶縁層138および第1領域分離電極139を含む。第1領域分離トレンチ137は、半導体層2の第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。第1領域分離トレンチ137は、第1領域分離構造136の内周壁、外周壁および底壁を区画している。
【0244】
第1領域分離絶縁層138は、第1領域分離トレンチ137の内壁に沿って膜状に形成されている。第1領域分離絶縁層138は、第1領域分離トレンチ137内において凹状の空間を区画している。
【0245】
第1領域分離絶縁層138において第1領域分離トレンチ137の底壁を被覆する部分は、第1領域分離トレンチ137の底壁に倣って形成されている。これにより、第1領域分離絶縁層138は、トレンチゲート構造61の底側絶縁層68(トレンチコンタクト構造81のコンタクト絶縁層86)と同様の態様で、第1領域分離トレンチ137の底壁においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0246】
第1領域分離絶縁層138は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)または酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0247】
第1領域分離絶縁層138は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。第1領域分離絶縁層138は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。第1領域分離絶縁層138は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。第1領域分離絶縁層138は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。第1領域分離絶縁層138は、絶縁層66と同一の絶縁材料からなることが好ましい。
【0248】
第1領域分離絶縁層138は、第5厚さT5を有している。第5厚さT5は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第5厚さT5は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第5厚さT5は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。第5厚さT5は、底側絶縁層68の第1厚さT1と等しい(T5=T1)ことが好ましい。
【0249】
第1領域分離電極139は、第1領域分離絶縁層138を挟んで第1領域分離トレンチ137に埋め込まれている。第1領域分離電極139には、基準電位が印加される。第1領域分離電極139は、トレンチゲート構造61の埋め込み電極67とは異なり、一体物として第1領域分離トレンチ137に埋め込まれている。第1領域分離電極139は、第1領域分離トレンチ137から露出する一端部、第1領域分離トレンチ137に接する他端部を有している。
【0250】
第1領域分離電極139の他端部は、トレンチゲート構造61の底側電極72(トレンチコンタクト構造81のコンタクト電極87)と同様の態様で、第1領域分離トレンチ137の底壁に向かう凸湾曲状に形成されている。第1領域分離電極139の他端部は、より具体的には、第1領域分離絶縁層138によって区画されたU字空間の底壁に倣って形成されており、第1領域分離トレンチ137の底壁に向かう滑らかな凸湾曲状に形成されている。
【0251】
第1領域分離電極139は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金または銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第1領域分離電極139は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。第1領域分離電極139は、埋め込み電極67と同一の導電材料を含むことが好ましい。
【0252】
第1領域分離電極139において第1領域分離トレンチ137から露出する露出部は、膜状に形成されたキャップ絶縁層140によって被覆されている。キャップ絶縁層140は、第1領域分離トレンチ137内において第1領域分離絶縁層138に連なっている。キャップ絶縁層140は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0253】
半導体層2の第1主面3の表層部において第1領域分離構造136によって取り囲まれた領域には、p型の第1ウェル領域141が形成されている。第1ウェル領域141の底部は、第1領域分離構造136の底壁に対して第1主面3側の領域に形成されている。
【0254】
第1ウェル領域141は、第1領域分離トレンチ137の内周壁を被覆し、第1領域分離構造136の底壁を露出させている。第1ウェル領域141の底部は、第1領域分離トレンチ137の中間部に対して第1領域分離トレンチ137の底壁側の領域に位置している。
【0255】
第1ウェル領域141の表層部には、n+型の第1ソース領域143およびn+型の第1ドレイン領域144が形成されている。第1ドレイン領域144は、第1ソース領域143から間隔を空けて形成されている。第1ドレイン領域144のn型不純物濃度は、第1ソース領域143のn型不純物濃度とほぼ等しい。
【0256】
第1ソース領域143および第1ドレイン領域144は、平面視において第1ウェル領域141の中央部に形成されている。第1ソース領域143および第1ドレイン領域144は、平面視において同一方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されていてもよい。第1ソース領域143の底部および第1ドレイン領域144の底部は、第1ウェル領域141の底部に対して第1主面3側の領域に形成されている。
【0257】
第1ウェル領域141の表層部には、p+型の第1コンタクト領域145がさらに形成されている。第1コンタクト領域145は、第1ウェル領域141のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。
【0258】
第1コンタクト領域145は、平面視において第1ソース領域143および第1ドレイン領域144を一括して取り囲む環状に形成されている。第1コンタクト領域145は、第1領域分離構造136から間隔を空けて形成されている。第1コンタクト領域145は、第1領域分離構造136の内周壁を被覆していてもよい。
【0259】
半導体層2の第1主面3の上において第1領域分離構造136によって取り囲まれた領域には、第1プレーナゲート構造146が形成されている。第1プレーナゲート構造146は、第1ソース領域143、第1ドレイン領域144、ならびに、第1ソース領域143および第1ドレイン領域144の間の領域を被覆している。第1プレーナゲート構造146は、平面視において第1ソース領域143および第1ドレイン領域144に沿って延びる帯状に形成されている。
【0260】
第1プレーナゲート構造146は、第1ゲート絶縁層147および第1ゲート電極層148を含む積層構造を有している。第1ゲート電極層148は、第1ゲート絶縁層147を挟んで第1ソース領域143、第1ドレイン領域144、ならびに、第1ソース領域143および第1ドレイン領域144の間の領域に対向している。n型MISFET134のチャネルは、第1ウェル領域141の表層部において第1ソース領域143および第1ドレイン領域144の間の領域に形成される。
【0261】
半導体層2の第1主面3の上において第1領域分離構造136によって取り囲まれた領域には、第1フィールド絶縁層149が形成されている。第1フィールド絶縁層149は、LOCOS層であってもよい。
【0262】
第1フィールド絶縁層149は、第1プレーナゲート構造146および第1コンタクト領域145の内周縁の間の領域、ならびに、第1領域分離構造136および第1コンタクト領域145の外周縁の間の領域を被覆している。第1フィールド絶縁層149は、第1領域分離トレンチ137の開口において第1領域分離絶縁層138に接続されている。
【0263】
n型MIS領域132において半導体層2の第1主面3の上には、前述の層間絶縁層122が形成されている。層間絶縁層122には、第1ソースプラグ電極150、第1ドレインプラグ電極151および第1コンタクトプラグ電極152が埋め込まれている。第1ソースプラグ電極150、第1ドレインプラグ電極151および第1コンタクトプラグ電極152は、タングステンをそれぞれ含んでいてもよい。
【0264】
第1ソースプラグ電極150は、層間絶縁層122を貫通して第1ソース領域143に接続されている。第1ドレインプラグ電極151は、層間絶縁層122を貫通して第1ドレイン領域144に接続されている。第1コンタクトプラグ電極152は、層間絶縁層122を貫通して第1コンタクト領域145に接続されている。
【0265】
図9および
図11を参照して、p型MIS領域133は、第2領域分離構造156によって区画されている。第2領域分離構造156は、この形態では、第1領域分離構造136から間隔を空けて形成されている。第2領域分離構造156は、半導体層2の一部の領域を挟んで第1領域分離構造136に対向している。
【0266】
第2領域分離構造156は、第1領域分離構造136と一体的に形成されていてもよい。第2領域分離構造156は、n型MIS領域132およびp型MIS領域133の間の領域において第1領域分離構造136と一体を成していてもよい。
【0267】
第2領域分離構造156は、p型MIS領域133を区画する内周壁、外周壁、ならびに、内周壁および外周壁を接続する底壁を含む環状に形成されている。第2領域分離構造156は、p型MIS領域133の平面形状に応じて、三角環状、四角環状、五角環状、六角環状等の多角環状、もしくは、円環状または楕円環状に形成されていてもよい。
【0268】
第2領域分離構造156の幅WS2は、0.5μm以上2.0μm以下であってもよい。幅WS2は、第2領域分離構造156が延びる方向に直交する方向の幅である。幅WS2は、0.5μm以上1.0μm以下、1.0μm以上1.5μm以下、または、1.5μm以上2.0μm以下であってもよい。幅WS2は、0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましい。幅WS2は、トレンチゲート構造61の幅WTと等しいことが好ましい。
【0269】
第2領域分離構造156の内周壁、外周壁および底壁は、ドリフト領域54内に位置している。第2領域分離構造156の深さDS2は、1μm以上10μm以下であってもよい。深さDS2は、1μm以上2μm以下、2μm以上4μm以下、4μm以上6μm以下、6μm以上8μm以下、または、8μm以上10μm以下であってもよい。深さDS2は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。深さDS2は、トレンチゲート構造61の深さDTと等しいことが好ましい。
【0270】
第2領域分離構造156の内周壁および外周壁は、法線方向Zに沿って延びている。第2領域分離構造156の内周壁および外周壁は、第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。
【0271】
半導体層2内において第2領域分離構造156の内周壁が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。半導体層2内において第2領域分離構造156の外周壁が第1主面3との間で成す角度(テーパ角)の絶対値は、90°を超えて95°以下(たとえば91°程度)であってもよい。第2領域分離構造156は、断面視において半導体層2の第1主面3側から底壁側に向けて幅WS2が狭まる先細り形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0272】
第2領域分離構造156の底壁は、ドリフト領域54の底部に対して第1主面3側の領域に位置している。第2領域分離構造156の底壁は、ドリフト領域54の底部に向かう凸湾曲状(U字状)に形成されている。
【0273】
第2領域分離構造156は、第2領域分離トレンチ157、第2領域分離絶縁層158および第2領域分離電極159を含む。第2領域分離トレンチ157は、半導体層2の第1主面3を第2主面4側に向けて掘り下げることによって形成されている。第2領域分離トレンチ157は、第2領域分離構造156の内周壁、外周壁および底壁を区画している。
【0274】
第2領域分離絶縁層158は、第2領域分離トレンチ157の内壁に沿って膜状に形成されている。第2領域分離絶縁層158は、第2領域分離トレンチ157内において凹状の空間を区画している。
【0275】
第2領域分離絶縁層158において第2領域分離トレンチ157の底壁を被覆する部分は、第2領域分離トレンチ157の底壁に倣って形成されている。これにより、第2領域分離絶縁層158は、トレンチゲート構造61の底側絶縁層68(トレンチコンタクト構造81のコンタクト絶縁層86)と同様の態様で、第2領域分離トレンチ157の底壁においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0276】
第2領域分離絶縁層158は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)または酸化タンタル(Ta2O3)のうちの少なくとも1種を含む。
【0277】
第2領域分離絶縁層158は、半導体層2側からこの順に積層されたSiN層およびSiO2層を含む積層構造を有していてもよい。第2領域分離絶縁層158は、半導体層2側からこの順に積層されたSiO2層およびSiN層を含む積層構造を有していてもよい。第2領域分離絶縁層158は、SiO2層またはSiN層からなる単層構造を有していてもよい。第2領域分離絶縁層158は、この形態では、SiO2層からなる単層構造を有している。第2領域分離絶縁層158は、絶縁層66と同一の絶縁材料からなることが好ましい。
【0278】
第2領域分離絶縁層158は、第6厚さT6を有している。第6厚さT6は、1500Å以上4000Å以下であってもよい。第6厚さT6は、1500Å以上2000Å以下、2000Å以上2500Å以下、2500Å以上3000Å以下、3000Å以上3500Å以下、または、3500Å以上4000Å以下であってもよい。第6厚さT6は、1800Å以上3500Å以下であることが好ましい。第6厚さT6は、底側絶縁層68の第1厚さT1と等しい(T6=T1)ことが好ましい。
【0279】
第2領域分離電極159は、第2領域分離絶縁層158を挟んで第2領域分離トレンチ157に埋め込まれている。第2領域分離電極159には、基準電位が印加される。第2領域分離電極159は、トレンチゲート構造61の埋め込み電極67とは異なり、一体物として第2領域分離トレンチ157に埋め込まれている。第2領域分離電極159は、第2領域分離トレンチ157から露出する一端部、第2領域分離トレンチ157に接する他端部を有している。
【0280】
第2領域分離電極159の他端部は、トレンチゲート構造61の底側電極72(トレンチコンタクト構造81のコンタクト電極87)と同様の態様で、第2領域分離トレンチ157の底壁に向かう凸湾曲状に形成されている。第2領域分離電極159の他端部は、より具体的には、第2領域分離絶縁層158によって区画されたU字空間の底壁に倣って形成されており、第2領域分離トレンチ157の底壁に向かう滑らかな凸湾曲状に形成されている。
【0281】
第2領域分離電極159は、導電性ポリシリコン、タングステン、アルミニウム、銅、アルミニウム合金または銅合金のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。第2領域分離電極159は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。導電性ポリシリコンは、n型不純物またはp型不純物を含んでいてもよい。導電性ポリシリコンは、n型不純物を含むことが好ましい。第2領域分離電極159は、埋め込み電極67と同一の導電材料を含むことが好ましい。
【0282】
第2領域分離電極159において第2領域分離トレンチ157から露出する露出部は、膜状に形成されたキャップ絶縁層160によって被覆されている。キャップ絶縁層160は、第2領域分離トレンチ157内において第2領域分離絶縁層158に連なっている。キャップ絶縁層160は、酸化シリコン(SiO2)を含んでいてもよい。
【0283】
半導体層2の第1主面3の表層部において第2領域分離構造156によって取り囲まれた領域には、p型の第2ウェル領域161が形成されている。第2ウェル領域161の底部は、第2領域分離構造156の底壁に対して第1主面3側の領域に形成されている。
【0284】
第2ウェル領域161は、第2領域分離トレンチ157の内周壁を被覆し、第2領域分離構造156の底壁を露出させている。第2ウェル領域161の底部は、第2領域分離トレンチ157の中間部に対して第2領域分離トレンチ157の底壁側の領域に位置している。
【0285】
第2ウェル領域161の表層部には、n型の表層ウェル領域162が形成されている。表層ウェル領域162は、平面視において第2領域分離構造156の内周壁から間隔を空けて第2ウェル領域161の中央部に形成されている。表層ウェル領域162は、この形態では、平面視において第2領域分離構造156の内周壁に平行な4辺を有する四角形状に形成されている。表層ウェル領域162の底部は、第2ウェル領域161の底壁に対して第1主面3側の領域に形成されている。
【0286】
表層ウェル領域162の表層部には、p+型の第2ソース領域163およびp+型の第2ドレイン領域164が互いに間隔を空けて形成されている。第2ドレイン領域164は、第2ソース領域163から間隔を空けて形成されている。第2ドレイン領域164のp型不純物濃度は、第2ソース領域163のp型不純物濃度とほぼ等しい。
【0287】
第2ソース領域163および第2ドレイン領域164は、平面視において表層ウェル領域162の中央部に形成されている。第2ソース領域163および第2ドレイン領域164は、平面視において同一方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されていてもよい。第2ソース領域163の底部および第2ドレイン領域164の底部は、表層ウェル領域162の底部に対して第1主面3側の領域に形成されている。
【0288】
第2ウェル領域161の表層部には、p+型の第2コンタクト領域165がさらに形成されている。第2コンタクト領域165は、第2ウェル領域161のp型不純物濃度を超えるp型不純物濃度を有している。
【0289】
第2コンタクト領域165は、平面視において第2領域分離構造156および表層ウェル領域162の間の領域に形成されている。第2コンタクト領域165は、平面視において表層ウェル領域162を取り囲む環状に形成されている。
【0290】
第2コンタクト領域165は、表層ウェル領域162および第2領域分離構造156から間隔を空けて形成されている。第2コンタクト領域165は、表層ウェル領域162に接続されていてもよい。第2コンタクト領域165は、第2領域分離構造156の内周壁を被覆していてもよい。
【0291】
半導体層2の第1主面3の上において第2領域分離構造156によって取り囲まれた領域には、第2プレーナゲート構造166が形成されている。第2プレーナゲート構造166は、第2ソース領域163、第2ドレイン領域164、ならびに、第2ソース領域163および第2ドレイン領域164の間の領域を被覆している。第2プレーナゲート構造166は、平面視において第2ソース領域163および第2ドレイン領域164に沿って延びる帯状に形成されている。
【0292】
第2プレーナゲート構造166は、第2ゲート絶縁層167および第2ゲート電極層168を含む積層構造を有している。第2ゲート電極層168は、第2ゲート絶縁層167を挟んで第2ソース領域163、第2ドレイン領域164、ならびに、第2ソース領域163および第2ドレイン領域164の間の領域に対向している。p型MISFET135のチャネルは、表層ウェル領域162の表層部において第2ソース領域163および第2ドレイン領域164の間の領域に形成される。
【0293】
半導体層2の第1主面3の上において第2領域分離構造156によって取り囲まれた領域には、第2フィールド絶縁層169が形成されている。第2フィールド絶縁層169は、LOCOS層であってもよい。
【0294】
第2フィールド絶縁層169は、第2プレーナゲート構造166および第2コンタクト領域165の内周縁の間の領域、ならびに、第2領域分離構造156および第2コンタクト領域165の外周縁の間の領域を被覆している。第2フィールド絶縁層169は、第2領域分離トレンチ157の開口において第2領域分離絶縁層158に接続されている。
【0295】
p型MIS領域133において半導体層2の第1主面3の上には、前述の層間絶縁層122が形成されている。層間絶縁層122には、第2ソースプラグ電極170、第2ドレインプラグ電極171および第2コンタクトプラグ電極172が埋め込まれている。第2ソースプラグ電極170、第2ドレインプラグ電極171および第2コンタクトプラグ電極172は、タングステンをそれぞれ含んでいてもよい。
【0296】
第2ソースプラグ電極170は、層間絶縁層122を貫通して第2ソース領域163に接続されている。第2ドレインプラグ電極171は、層間絶縁層122を貫通して第2ドレイン領域164に接続されている。第2コンタクトプラグ電極172は、層間絶縁層122を貫通して第2コンタクト領域165に接続されている。
【0297】
図12A~
図12Vは、
図7に対応する領域の断面図であって、
図1に示す半導体装置1の製造方法の一例を説明するための断面図である。以下では、出力領域6側の製造方法について説明し、入力領域7側の製造方法についての説明は省略する。
【0298】
図12Aを参照して、半導体層2のベースとなるシリコン製の半導体ウエハ層182(半導体層)が用意される。半導体ウエハ層182は、第1主面183および第2主面184を有している。半導体ウエハ層182の第1主面183および第2主面184は、半導体層2の第1主面3および第2主面4にそれぞれ対応している。
【0299】
半導体ウエハ層182は、半導体ウエハ185の主面の上にエピタキシャル層52を形成する工程を経て製造される。エピタキシャル層52は、この形態では、半導体ウエハ185の主面からシリコンをエピタキシャル成長させることによって形成されている。
【0300】
次に、
図12Bを参照して、半導体ウエハ層182の第1主面183に、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85が形成される。この工程では、まず、半導体ウエハ層182の第1主面183に絶縁膜186が形成される。絶縁膜186は、酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。
【0301】
次に、絶縁膜186の上に、所定パターンを有するマスク187が形成される。マスク187は、半導体ウエハ層182の第1主面183においてゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85を形成すべき領域を露出させる開口188を有している。
【0302】
次に、マスク187を介するエッチング法によって絶縁膜186の不要な部分が除去される。これにより、開口188に対応した開口189が絶縁膜186に形成される。その後、マスク187は除去される。
【0303】
次に、絶縁膜186を介するエッチング法によって半導体ウエハ層182の不要な部分が除去される。これにより、半導体ウエハ層182の第1主面183に、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85が形成される。その後、絶縁膜186は除去される。
【0304】
次に、
図12Cを参照して、半導体ウエハ層182の第1主面183に犠牲絶縁層190が形成される。犠牲絶縁層190は、半導体ウエハ層182の第1主面183、ゲートトレンチ65の内壁およびコンタクトトレンチ85の内壁に膜状に形成される。犠牲絶縁層190は、酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。犠牲絶縁層190の厚さは、100Å以上2000Å以下であってもよい。
【0305】
次に、
図12Dを参照して、n型不純物が、犠牲絶縁層190を介してゲートトレンチ65の内壁に導入される。犠牲絶縁層190は、半導体ウエハ層182を保護する保護膜として機能し、n型不純物の導入に起因する面荒れを抑制する。
【0306】
n型不純物は、燐であってもよい。n型不純物は、斜めイオン注入法によって半導体ウエハ層182に導入されてもよい。第1主面183の法線を0°としたとき、法線に対するn型不純物の導入角の絶対値|θ|は、0°を超えて15°以下であってもよい。
【0307】
絶対値|θ|は、0°を超えて3°以下、3°以上6°以下、6°以上9°以下、9°以上12°以下、または、12°以上15°以下であってもよい。絶対値|θ|は、2°以上12°以下であることが好ましい。
【0308】
この工程では、導入角の絶対値|θ|を維持した状態で半導体ウエハ層182の第1主面183に対するn型不純物の相対的な導入位置を変更することによって、n型不純物がゲートトレンチ65の内壁の内壁に導入される。
【0309】
より具体的には、ゲートトレンチ65の第1側壁62に入射するように、n型不純物が半導体ウエハ層182の第1主面183およびゲートトレンチ65の内壁に導入される。また、半導体ウエハ層182が90°回転されて、n型不純物が半導体ウエハ層182の第1主面183およびゲートトレンチ65の内壁(主に底壁)に導入される。
【0310】
また、
図12Eを参照して、ゲートトレンチ65の第2側壁63に入射するように半導体ウエハ層182が90°回転されて、n型不純物が半導体ウエハ層182の第1主面183およびゲートトレンチ65の内壁に導入される。また、半導体ウエハ層182が90°回転されて、n型不純物が半導体ウエハ層182の第1主面183およびゲートトレンチ65の内壁(主に底壁)に導入される。ゲートトレンチ65の内壁に対するn型不純物の導入順序は任意であり、
図12Dおよび
図12Eの順に限定されない。
【0311】
次に、
図12Fを参照して、半導体ウエハ層182に導入されたn型不純物がドリフト領域54内に拡散される。n型不純物の拡散は、ドライブイン処理法によって実施される。これにより、ドリフト領域54内に高濃度ドリフト領域91が形成される。その後、犠牲絶縁層190は除去される。
【0312】
次に、
図12Gを参照して、絶縁層66の底側絶縁層68およびコンタクト絶縁層86のベースとなるベース絶縁層191が形成される。ベース絶縁層191は、半導体ウエハ層182の第1主面183、ゲートトレンチ65の内壁およびコンタクトトレンチ85の内壁に沿って膜状に形成される。ベース絶縁層191は、酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)またはCVD法によって形成されてもよい。ベース絶縁層191は、この形態では、熱酸化処理法によって形成されている。
【0313】
ベース絶縁層191は、ゲートトレンチ65内において凹状の空間を区画している。ベース絶縁層191は、形成すべき底側絶縁層68の第1厚さT1を超える厚さTBA(TBA>T1)を有している。ベース絶縁層191の厚さTBAは、第1厚さT1に100Å以上1500Å以下の厚さTP1を加えた値に設定される。
【0314】
同様に、ベース絶縁層191は、コンタクトトレンチ85内において凹状の空間を区画している。ベース絶縁層191は、形成すべきコンタクト絶縁層86の第4厚さT4を超える厚さTBA(TBA>T4)を有している。ベース絶縁層191の厚さTBAは、厚さT4に100Å以上1500Å以下の厚さTP1を加えた値に設定される。
【0315】
厚さTP1は、100Å以上300Å以下、300Å以上600Å以下、600Å以上900Å以下、900Å以上1200Å以下、または、1200Å以上1500Å以下であってもよい。
【0316】
次に、
図12Hを参照して、ベース絶縁層191が薄化される。この工程では、エッチング法によって、ベース絶縁層191の表層部が除去されることによってベース絶縁層191が薄化される。エッチング法は、ウエットエッチング法であってもよい。ベース絶縁層191は、加算された厚さTP1に応じた分だけ除去される。
【0317】
これにより、ゲートトレンチ65内においてベース絶縁層191によって区画された凹状の空間の内壁が拡張されると同時に平滑化される。また、凹状の空間の底壁が、ゲートトレンチ65の底壁64に向かうU字状に丸められる。
【0318】
ゲートトレンチ65内では、凹状の空間の底壁部の除去量が、凹状の空間の側壁部の除去量よりも多くなるようにベース絶縁層191の表層部がエッチング法によって除去される。これにより、ゲートトレンチ65内において側壁被覆部70および底壁被覆部71(隅部71Aおよび最深部71B)を含むベース絶縁層191に形成される。
【0319】
また、コンタクトトレンチ85内においてベース絶縁層191よって区画された凹状の空間の内壁が拡張されると同時に平滑化される。また、凹状の空間の底壁が、コンタクトトレンチ85の底壁84に向かうU字状に丸められる。
【0320】
コンタクトトレンチ85内では、凹状の空間の底壁部の除去量が、凹状の空間の側壁部の除去量よりも多くなるようにベース絶縁層191の表層部がエッチング法によって除去される。これにより、コンタクトトレンチ85内において側壁被覆部70および底壁被覆部71(隅部71Aおよび最深部71B)を含むベース絶縁層191に形成される。
【0321】
次に、
図12Iを参照して、埋め込み電極67の底側電極72およびコンタクト電極87のベースとなる第1ベース電極層192が、半導体ウエハ層182の第1主面183の上に形成される。第1ベース電極層192は、ゲートトレンチ65およびコンタクトトレンチ85を埋めて、半導体ウエハ層182の第1主面183を被覆する。第1ベース電極層192は、導電性ポリシリコンを含む。第1ベース電極層192は、CVD法によって形成されてもよい。
【0322】
次に、
図12Jを参照して、第1ベース電極層192の不要な部分が除去されて、埋め込み電極67の底側電極72およびコンタクト電極87が形成される。この工程では、コンタクト電極87が形成された後、埋め込み電極67の底側電極72が形成される。
【0323】
コンタクト電極87の形成工程では、第1ベース電極層192の不要な部分が、エッチング法(エッチバック法)によって除去されてもよい。エッチング法は、ウエットエッチング法であってもよい。第1ベース電極層192は、ベース絶縁層191が露出するまで除去される。これにより、コンタクトトレンチ85に埋め込まれたコンタクト電極87が形成される。
【0324】
次に、所定パターンを有するマスク(図示せず)が半導体ウエハ層182の第1主面183上に形成される。マスク(図示せず)は、コンタクト電極87を被覆し、第1ベース電極層192を選択的に露出させる開口を有している。
【0325】
次に、マスク(図示せず)を介するエッチング法によってゲートトレンチ65内の第1ベース電極層192が除去される。第1ベース電極層192は、ゲートトレンチ65の深さ方向途中部まで除去される。これにより、底側電極72が形成される。
【0326】
底側電極72の第1端部72Aは、ゲートトレンチ65の深さ方向途中部に位置している。底側電極72の第2端部72Bは、ベース絶縁層191によって区画されたU字空間の底壁(エッチング面)に倣って、ゲートトレンチ65の底壁64に向かう滑らかな凸湾曲状に形成される。このような構造によれば、底側電極72に対する局所的な電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0327】
次に、
図12Kを参照して、ベース絶縁層191の不要な部分が除去される。この工程では、まず、所定パターンを有するマスク(図示せず)が半導体ウエハ層182の第1主面183上に形成される。マスク(図示せず)は、コンタクトトレンチ85を被覆し、ゲートトレンチ65を選択的に露出させる開口を有している。
【0328】
次に、ベース絶縁層191の不要な部分が、マスク(図示せず)を介するエッチング法(エッチバック法)によって除去される。エッチング法は、ウエットエッチング法であってもよい。ベース絶縁層191は、ゲートトレンチ65内において底側電極72の第1端部72Aが露出するまで除去される。これにより、ゲートトレンチ65内に底側絶縁層68が形成される。
【0329】
次に、
図12Lを参照して、半導体ウエハ層182の第1主面183に開口側絶縁層69、中間絶縁層74および主面絶縁層121が形成される。開口側絶縁層69、中間絶縁層74および主面絶縁層121は、酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)またはCVD法によって形成されてもよい。開口側絶縁層69、中間絶縁層74および主面絶縁層121は、この形態では、熱酸化処理法によって形成されている。
【0330】
次に、
図12Mを参照して、埋め込み電極67の開口側電極73のベースとなる第2ベース電極層193が、半導体ウエハ層182の第1主面183の上に形成される。第2ベース電極層193は、ゲートトレンチ65を埋めて、半導体ウエハ層182の第1主面183を被覆する。第2ベース電極層193は、導電性ポリシリコンを含む。第2ベース電極層193は、CVD法によって形成されてもよい。
【0331】
次に、
図12Nを参照して、第2ベース電極層193の不要な部分が除去されて、埋め込み電極67の開口側電極73が形成される。第2ベース電極層193は、エッチング法(エッチバック法)によって除去されてもよい。エッチング法は、ウエットエッチング法であってもよい。第2ベース電極層193は、主面絶縁層121が露出するまで除去される。これにより、ゲートトレンチ65内に埋め込み電極67の開口側電極73が形成される。
【0332】
次に、
図12Oを参照して、開口側電極73の露出部を被覆するキャップ絶縁層75、および、コンタクト電極87の露出部を被覆するキャップ絶縁層88が形成される。キャップ絶縁層75およびキャップ絶縁層88は、酸化処理法(たとえば熱酸化処理法)によって形成されてもよい。
【0333】
次に、
図12Pを参照して、半導体ウエハ層182の第1主面183の表層部にボディ領域55が形成される。ボディ領域55は、イオン注入マスク(図示せず)を介するイオン注入法によって半導体ウエハ層182の第1主面183にp型不純物を導入することによって形成される。
【0334】
次に、
図12Qを参照して、ボディ領域55の表層部にソース領域101が形成される。ソース領域101は、イオン注入マスク(図示せず)を介するイオン注入法によって半導体ウエハ層182の第1主面183にn型不純物を導入することによって形成される。
【0335】
また、図示はしないが、ボディ領域55の表層部にコンタクト領域102が形成される。ソース領域101は、イオン注入マスク(図示せず)を介するイオン注入法によって半導体ウエハ層182の第1主面183にp型不純物を導入することによって形成される。
【0336】
次に、
図12Rを参照して、半導体ウエハ層182の第1主面183の上に、層間絶縁層122が形成される。層間絶縁層122は、この形態では、USG層からなる単層構造を有している。層間絶縁層122は、CVD法によって形成されてもよい。層間絶縁層122の主面に対して平坦化処理が施されてもよい。層間絶縁層122の平坦化処理は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって行われてもよい。
【0337】
次に、
図12Sを参照して、所定パターンを有するマスク194が、層間絶縁層122の主面の上に形成される。マスク194は、複数の第1プラグ電極123、複数の第2プラグ電極124および複数の第3プラグ電極125を埋め込むべき領域を露出させる複数の開口195を有している。
【0338】
次に、マスク194を介するエッチング法によって、層間絶縁層122の不要な部分が除去される。これにより、層間絶縁層122に、複数のコンタクトホール196が形成される。その後、マスク194は除去される。
【0339】
次に、
図12Tを参照して、複数の第1プラグ電極123、複数の第2プラグ電極124および複数の第3プラグ電極125のベースとなるベースプラグ電極層197が、層間絶縁層122の主面の上に形成される。ベースプラグ電極層197は、タングステンを含む。ベースプラグ電極層197は、複数のコンタクトホール196を埋めて層間絶縁層122の主面を被覆する。
【0340】
次に、
図12Uを参照して、ベースプラグ電極層197の不要な部分が除去される。ベースプラグ電極層197の不要な部分は、層間絶縁層122の主面が露出するまで除去される。ベースプラグ電極層197の不要な部分は、エッチング法またはCMP法によって除去されてもよい。これにより、複数の第1プラグ電極123、複数の第2プラグ電極124および複数の第3プラグ電極125が形成される。
【0341】
次に、
図12Vを参照して、層間絶縁層122の上に、基準電位電極14およびゲート制御配線17が形成される。基準電位電極14およびゲート制御配線17は、スパッタ法および/またはメッキ法によって形成されてもよい。また、半導体ウエハ層182の第2主面184の上に、出力電極12が形成される。出力電極12は、スパッタ法および/またはメッキ法によって形成されてもよい。
【0342】
その後、半導体ウエハ層182が選択的に切断されて、半導体装置1が切り出される。以上を含む工程を経て半導体装置1が製造される。
【0343】
以上、半導体装置1によれば、ドリフト領域54において主たる電流経路となる領域が高濃度ドリフト領域91によって高濃度化されている。これにより、ドリフト領域54の全域の高濃度化を回避できるから、オン抵抗を低減しながらブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0344】
特に、半導体装置1によれば、高濃度ドリフト領域91は、ドリフト領域54の底部に対して半導体層2の第1主面3側の領域に位置する底部を有している。つまり、ドリフト領域54は、高濃度ドリフト領域91によって高濃度化されていない領域を有している。
【0345】
ドリフト領域54において高濃度化されていない領域は、より具体的には、高濃度ドリフト領域91の底部および半導体基板51の間の領域に介在している。つまり、比較的低いn型不純物濃度を有するドリフト領域54が、比較的高いn型不純物濃度を有する高濃度ドリフト領域91および半導体基板51の間の領域に介在している。このドリフト領域54において高濃度化されていない領域は、耐圧保持領域として機能する。これにより、ブレークダウン電圧の低下を適切に抑制できる。
【0346】
複数のトレンチゲート構造61のピッチPCを狭める場合には、電流経路の縮小に起因してドリフト領域54のオン抵抗が増加することが懸念される。しかし、高濃度ドリフト領域91によって電流経路を確保できるから、オン抵抗の増加を抑制できる。
【0347】
これにより、オン抵抗の増加およびブレークダウン電圧の低下を抑制しながら、チャネル抵抗の低減を適切に図ることができる。半導体装置1によれば、一例として、複数のトレンチゲート構造61のピッチPCを1μm以上3μm以下に設定できる。
【0348】
さらに、半導体装置1によれば、複数のトレンチゲート構造61は、互いに間隔を空けて配列された第1トレンチゲート構造61Aおよび第2トレンチゲート構造61Bを含む。第1トレンチゲート構造61Aの外壁からは、ドリフト領域54内に第1空乏層が拡がる。第2トレンチゲート構造61Bの外壁からは、ドリフト領域54内に第2空乏層が拡がる。複数のトレンチゲート構造61は、第1空乏層が第2空乏層に重なる態様で配列されている。これにより、ブレークダウン電圧の低下を適切に抑制できる。
【0349】
図13Aは、
図7に対応する領域の断面図であって、第2形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0350】
前述の第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の側壁間のピッチPS以上(PS≦TDB)の厚さTDBを有する底部(底壁被覆部93)を含む。これに対して、第2形態例に係る高濃度ドリフト領域91の底部(底壁被覆部93)の厚さTDBは、トレンチゲート構造61の側壁間のピッチPS未満(PS>TDB)である。
【0351】
第2形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、高濃度ドリフト領域91の形成工程(
図12D~
図12E参照)においてn型不純物の導入条件を調整することによって形成される。第2形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合であっても、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合の効果と同様の効果を奏することができる。
【0352】
図13Bは、
図7に対応する領域の断面図であって、第3形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0353】
前述の第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64に沿う領域に形成されている。これに対して、第3形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63を被覆し、トレンチゲート構造61の底壁64を露出させている。つまり、第3形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、底壁被覆部93を有していない。
【0354】
第3形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、高濃度ドリフト領域91の形成工程(
図12D~
図12E参照)においてn型不純物の導入条件を調整することによって形成される。第3形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合であっても、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合の効果と同様の効果を奏することができる。
【0355】
図13Cは、
図7に対応する領域の断面図であって、第4形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0356】
前述の第1形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において互いに接続されている。これに対して、第4形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において互いに間隔を空けて形成されている。つまり、第4形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、対応するトレンチゲート構造61に対して1対1対応の関係で独立して形成されている。
【0357】
第4形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、高濃度ドリフト領域91の形成工程(
図12D~
図12E参照)においてn型不純物の導入条件を調整することによって形成される。第4形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合であっても、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合の効果と同様の効果を奏することができる。
【0358】
図13Dは、
図7に対応する領域の断面図であって、第5形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0359】
前述の第1形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において互いに接続されている。これに対して、第5形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において互いに間隔を空けて形成されている。つまり、第5形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、対応するトレンチゲート構造61に対して1対1対応の関係で独立して形成されている。
【0360】
さらに、第5形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、対応するトレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63を被覆し、トレンチゲート構造61の底壁64を露出させている。つまり、第5形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、底壁被覆部93を有していない。
【0361】
第5形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、高濃度ドリフト領域91の形成工程(
図12D~
図12E参照)においてn型不純物の導入条件を調整することによって形成される。第5形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合であっても、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合の効果と同様の効果を奏することができる。
【0362】
図13Eは、
図7に対応する領域の断面図であって、第6形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0363】
前述の第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64に沿う領域に形成されている。これに対して、第6形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63を露出させ、トレンチゲート構造61の底壁64を被覆している。つまり、第6形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、側壁被覆部92を有していない。
【0364】
第6形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、高濃度ドリフト領域91の形成工程(
図12D~
図12E参照)においてn型不純物の導入条件を調整することによって形成される。第6形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合であっても、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合の効果と同様の効果を奏することができる。
【0365】
図13Fは、
図7に対応する領域の断面図であって、第7形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0366】
前述の第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64に沿う領域に形成されている。これに対して、第7形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62および第2側壁63を露出させ、トレンチゲート構造61の底壁64を被覆している。つまり、第7形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、側壁被覆部92を有していない。
【0367】
さらに、第7形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、互いに隣り合うトレンチゲート構造61の間の領域において互いに間隔を空けて形成されている。つまり、第7形態例に係る複数の高濃度ドリフト領域91は、対応するトレンチゲート構造61の底壁64に対して1対1対応の関係で独立して形成されている。
【0368】
第7形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、高濃度ドリフト領域91の形成工程(
図12D~
図12E参照)においてn型不純物の導入条件を調整することによって形成される。第7形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合であっても、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成される場合の効果と同様の効果を奏することができる。
【0369】
図13Gは、
図5に対応する領域の断面斜視図であって、第8形態例に係る高濃度ドリフト領域91が形成された形態を示す断面斜視図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0370】
前述の第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61の第1側壁62、第2側壁63および底壁64に沿う領域に形成されている。これに対して、第8形態例に係る高濃度ドリフト領域91は、ドリフト領域54において複数のトレンチコンタクト構造81の外面に沿う領域にも形成されている。
【0371】
高濃度ドリフト領域91は、トレンチコンタクト構造81側において、トレンチコンタクト構造81の第1側壁82および第2側壁83を被覆する側壁被覆部92、ならびに、底壁84を被覆する底壁被覆部93を含む。トレンチコンタクト構造81の第2側壁83を被覆する側壁被覆部92は、半導体層2の第1主面3から露出していてもよい。
【0372】
トレンチコンタクト構造81を被覆する高濃度ドリフト領域91は、トレンチゲート構造61を被覆する高濃度ドリフト領域91と一体を成している。これにより、複数のトレンチゲート構造61および複数のトレンチコンタクト構造81を一括して被覆する1つの高濃度ドリフト領域91が、ドリフト領域54の表層部に形成されている。
【0373】
その他、トレンチコンタクト構造81に対する高濃度ドリフト領域91の形成態様は、トレンチゲート構造61に対する高濃度ドリフト領域91の形成態様と同様であるので具体的な説明は省略される。
【0374】
第1形態例、第2形態例、第3形態例、第4形態例、第5形態例、第6形態例、第7形態例および第8形態例(以下、単に「第1~第8形態例」という。)に係る高濃度ドリフト領域91のうちの少なくとも2種を同時に含む半導体装置1が形成されてもよい。
【0375】
また、第1~第8形態例に係る高濃度ドリフト領域91の特徴は、それらの間で任意の態様および任意の形態で組み合わされることができる。つまり、第1~第8形態例に係る高濃度ドリフト領域91の特徴のうちの少なくとも2つの特徴が組み合わされた形態を有する高濃度ドリフト領域91が採用されてもよい。
【0376】
図14は、
図7に対応する領域の断面図であって、本発明の第2実施形態に係る半導体装置201を示す断面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0377】
第1実施形態に係る半導体装置1の各トレンチゲート構造61は、底側電極72、開口側電極73および中間絶縁層74を含む絶縁分離型の電極構造を有する埋め込み電極67を含む。これに対して、第2実施形態に係る半導体装置201の各トレンチゲート構造61は、絶縁層66を挟んでゲートトレンチ65に一体物として埋め込まれた埋め込み電極67を含む。
【0378】
各トレンチゲート構造61は、ボディ領域55を貫通し、ドリフト領域54に達している。各トレンチゲート構造61の深さDTは、1μm以上5μm以下であってもよい。深さDTは、1μm以上2μm以下、2μm以上3μm以下、3μm以上4μm以下、または、4μm以上5μm以下であってもよい。
【0379】
各トレンチゲート構造61の底壁64は、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上15μm以下の間隔ITを空けて半導体層2の第1主面3側の領域に形成されている。間隔ITは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、または、10μm以上15μm以下であってもよい。
【0380】
絶縁層66は、ゲートトレンチ65内において凹状の空間を区画している。絶縁層66においてゲートトレンチ65の底壁64を被覆する部分は、ゲートトレンチ65の底壁64に倣って形成されている。これにより、絶縁層66は、ゲートトレンチ65の底壁64においてU字状に窪んだU字空間を区画している。
【0381】
絶縁層66は、より具体的には、側壁被覆部70および底壁被覆部71を含む。側壁被覆部70は、ゲートトレンチ65の第1側壁62および第2側壁63を被覆し、U字空間の側壁を形成している。底壁被覆部71は、ゲートトレンチ65の底壁64を被覆し、U字空間の底壁を形成している。底壁被覆部71の厚さTBは、側壁被覆部70の厚さTS未満(TB<TS)である。
【0382】
側壁被覆部70の厚さTSに対する底壁被覆部71の厚さTBの比TB/TSは、0.5以上0.8以下であってもよい。比TB/TSは、0.5以上0.55以下、0.55以上0.6以下、0.6以上0.65以下、0.65以上0.7以下、0.7以上0.75以下、または、0.75以上0.8以下であってもよい。比TB/TSは、0.65以上0.75以下であることが好ましい。
【0383】
底壁被覆部71は、隅部71Aおよび最深部71Bを含む。隅部71Aは、側壁被覆部70との境界部を区画している。最深部71Bは、U字空間の底を区画している。最深部71Bは、隅部71Aの厚さTCとは異なる厚さTD(TD≠TC)を有していてもよい。最深部71Bの厚さTDは、隅部71Aの厚さTCを超えていていもよい(TD>TC)。
【0384】
厚さTDおよび厚さTCの差TD-TCは、10Å以上200Å以下であってもよい。差TD-TCは、10Å以上50Å以下、50Å以上100Å以下、100Å以上150Å以下、または、150Å以上200Å以下であってもよい。差TD-TCは、10Å以上80Å以下であることが好ましい。
【0385】
絶縁層66によって区画されたU字空間は、製造工程中において、絶縁層66の表面部をエッチング法によって除去することによって形成される(
図12Hの工程参照)。エッチング法は、ウエットエッチング法であってもよい。つまり、絶縁層66は、ゲートトレンチ65内においてU字空間を区画する平滑な内壁面を有している。絶縁層66の内壁面は、エッチング法によって形成されたエッチング面である。
【0386】
埋め込み電極67にはゲート制御配線17を介してゲート電圧を含む所定のゲート制御信号が印加される。埋め込み電極67は、ゲートトレンチ65の開口から露出する一端部、および、ゲートトレンチ65の底壁64側に位置する他端部を有している。
【0387】
埋め込み電極67の他端部は、ゲートトレンチ65の底壁64に向かう凸湾曲状に形成されている。埋め込み電極67の他端部は、より具体的には、絶縁層66によって区画されたU字空間の底壁(エッチング面)に倣って形成されており、ゲートトレンチ65の底壁64に向かう滑らかな凸湾曲状に形成されている。これにより、埋め込み電極67に対する局所的な電界集中を抑制できるから、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0388】
図示は省略されるが、トレンチコンタクト構造81は、トレンチゲート構造61と同様の態様で形成されている。すなわち、トレンチコンタクト構造81は、コンタクト絶縁層86を挟んでコンタクトトレンチ85に一体物として埋め込まれたコンタクト電極87を含む。コンタクト絶縁層86およびコンタクト電極87の構造は、絶縁層66および埋め込み電極67の構造と同様であるので、具体的な説明は省略される。
【0389】
各高濃度ドリフト領域91は、前述の第1実施形態と同様の態様で各トレンチゲート構造61の外壁に沿って形成されている。各高濃度ドリフト領域91の底部は、この形態では、ドリフト領域54の底部に対して1μm以上10μm以下の間隔IDを空けて半導体層2の第1主面3側の領域に形成されている。間隔IDは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、または、10μm以上15μm以下であってもよい。
【0390】
この形態では、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91が適用されている。しかし、第1形態例に係る高濃度ドリフト領域91に代えてまたはこれに加えて第2~第8形態例に係る高濃度ドリフト領域91が採用されてもよい。また、第1~第8形態例に係る高濃度ドリフト領域91の特徴のうちの少なくとも2つの特徴が組み合わされた形態を有する高濃度ドリフト領域91が採用されてもよい。
【0391】
以上、第2実施形態に係る半導体装置201によっても、第1実施形態に係る半導体装置1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0392】
本発明の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0393】
前述の第1実施形態では、トレンチゲート構造61の幅WTが0.5μm以上2μm以下であり、底側絶縁層68の第1厚さT1が1500Å以上4000Å以下である例が示された。しかし、幅WTは、2μm以上5μm以下であってもよい。幅WTは、2.0μm以上2.5μm以下、2.5μm以上3.0μm以下、3.0μm以上3.5μm以下、3.5μm以上4.0μm以下、4.0μm以上4.5μm以下、または、4.5μm以上5.0μm以下であってもよい。
【0394】
また、底側絶縁層68の第1厚さT1は、4000Å以上12000Å以下であってもよい。第1厚さT1は、4000Å以上5000Å以下、5000Å以上6000Å以下、6000Å以上7000Å以下、7000Å以上8000Å以下、8000Å以上9000Å以下、9000Å以上10000Å以下、10000Å以上11000Å以下、または、11000Å以上12000Å以下であってもよい。このような構造の場合、底側絶縁層68の厚化によって半導体装置1の耐圧をさらに高めることができる。
【0395】
前述の各実施形態では、パワーMISFET9およびコントロールIC10を有するIPD(Intelligent Power Device)を含む半導体装置1,201について説明した。しかし、パワーMISFET9だけを有する半導体装置1,201が採用されてもよい。
【0396】
この場合、パワーMISFET9だけを有する半導体装置1,201と、当該半導体装置1,201に電気的に接続され、パワーMISFET9を制御する制御回路と、を含む、電気回路が採用されてもよい。このような電気回路が回路基板に実装された回路モジュールが提供されてもよい。
【0397】
制御回路は、コントロールIC10に係る複数の機能回路(
図2も併せて参照)の1つまたは複数に対応する1つまたは複数の機能回路を有していてもよい。つまり、制御回路は、センサMISFET21、入力回路22、電圧制御回路23、保護回路24、ゲート制御回路25、アクティブクランプ回路26、電流検出回路27、電源逆接続保護回路28または異常検出回路29のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0398】
前述の各実施形態において、p型の半導体部分がn型の半導体部分とされ、n型の半導体部分がp型の半導体部分とされてもよい。この場合、前述の各実施形態の説明は、「n型」および「n+型」が「p型」および「p+型」とそれぞれ読み替え、「p型」および「p+型」が「n型」および「n+型」とそれぞれ読み替えられる。
【0399】
前述の各実施形態に係る半導体装置1,201は、
図15および
図16に示されるように、半導体パッケージに組み込まれてもよい。
図15は、
図1に示す半導体装置1が組み込まれた半導体パッケージ211を、封止樹脂216を透過して示す斜視図である。
図16は、
図15の平面図である。
【0400】
ここでは、半導体パッケージ211が第1実施形態に係る半導体装置1を含む形態例について説明するが、半導体パッケージ211は、第1実施形態に係る半導体装置1に代えて第2実施形態に係る半導体装置201を含んでいてもよい。
【0401】
図15および
図16を参照して、半導体パッケージ211は、この形態では、所謂SOP(Small Outline Package)である。半導体パッケージ211は、半導体装置1、ダイパッド212、導電性接合材213、複数(この形態では8個)のリード電極214A~214H、複数(この形態では8個)の導線215A~215Hおよび封止樹脂216を含む。リード電極の個数および導線の個数は、半導体装置1の機能に応じて選択され、
図15および
図16に示される個数に限定されない。
【0402】
ダイパッド212は、直方体形状に形成された金属板からなる。ダイパッド212は、鉄、アルミニウムまたは銅を含んでいてもよい。ダイパッド212は、半導体装置1を第2主面4側から支持している。ダイパッド212は、導電性接合材213を介して半導体装置1の電源電極11に接続されている。導電性接合材213は、金属ペーストまたは半田であってもよい。
【0403】
複数のリード電極214A~214Hは、第1リード電極214A、第2リード電極214B、第3リード電極214C、第4リード電極214D、第5リード電極214E、第6リード電極214F、第7リード電極214Gおよび第8リード電極214Hを含む。
【0404】
複数のリード電極214A~214Hは、鉄、アルミニウムまたは銅を含んでいてもよい。複数のリード電極214A~214Hは、ダイパッド212から間隔を空けてダイパッド212の周囲に配置されている。
【0405】
より具体的には、4つのリード電極214A~214Dは、ダイパッド212の一辺に沿って間隔を空けて配列されている。残りの4つのリード電極214E~214Hは、ダイパッド212においてリード電極214A~214Dが配列された辺に対向する辺に沿って間隔を空けて配列されている。
【0406】
複数のリード電極214A~214Hは、配列方向に直交する方向に沿って延びる帯状にそれぞれ形成されている。複数のリード電極214A~214Hは、ダイパッド212に対向する一端部、および、その反対側の他端部を有している。複数のリード電極214A~214Hの一端部は、半導体装置1に内部接続される。複数のリード電極214A~214Hの他端部は、配線基板等の接続対象に外部接続される。
【0407】
複数の導線215A~215Hは、第1導線215A、第2導線215B、第3導線215C、第4導線215D、第5導線215E、第6導線215F、第7導線215Gおよび第8導線215Hを含む。
【0408】
第1導線215Aは、第1リード電極214Aの一端部および出力電極12に電気的に接続されている。第1導線215Aは、この形態では、金属クリップからなる。第1導線215Aは、金、アルミニウムまたは銅を含んでいてもよい。第1導線215Aは、パワーMISFETで生じた熱を、外部に効率的に放散させる。むろん、第1導線215Aは、ボンディングワイヤからなっていてもよい。
【0409】
第2導線215Bは、第2リード電極214Bの一端部および基準電位電極14に電気的に接続されている。第3導線215Cは、第3リード電極214Cの一端部およびENABLE電極15に電気的に接続されている。第4導線215Dは、第4リード電極214Dの一端部およびSENSE電極16に電気的に接続されている。
【0410】
第5導線215Eは、第5リード電極214Eの一端部およびダイパッド212に電気的に接続されている。第6導線215Fは、第6リード電極214Fの一端部およびダイパッド212に電気的に接続されている。第7導線215Gは、第7リード電極214Gの一端部および入力電極13に電気的に接続されている。第8導線215Hは、第8リード電極214Hの一端部およびダイパッド212に電気的に接続されている。
【0411】
第2~第8導線215B~215Hは、この形態では、ボンディングワイヤからなる。第2~第8導線215B~215Hは、金、アルミニウムまたは銅をそれぞれ含んでいてもよい。半導体装置1および複数のリード電極214A~214Hに対する複数の導線215A~215Hの接続形態は任意であり、
図15および
図16に示される接続形態に限定されない。
【0412】
封止樹脂216は、複数のリード電極214A~214Hの他端部を露出させるように、半導体装置1、ダイパッド212、複数のリード電極214A~214Hの一端部および複数の導線215A~215Hを封止している。封止樹脂216は、直方体形状に形成されている。封止樹脂216は、エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0413】
半導体パッケージ211の形態は、SOPに制限されない。半導体パッケージ211としては、TO(Transistor Outline)、QFN(Quad For Non Lead Package)、DFP(Dual Flat Package)、DIP(Dual Inline Package)、QFP(Quad Flat Package)、SIP(Single Inline Package)またはSOJ(Small Outline J-leaded Package)、もしくは、これらに類する種々の形態が適用されてもよい。
【0414】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0415】
この明細書および図面から抽出される特徴の例を以下に示す。
【0416】
[項1]一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層と、側壁および底壁を有し、前記半導体層の前記第1主面において前記第1主面から前記第2主面に向かう先細り形状に形成されたトレンチと、第1厚さを有し、前記トレンチの前記側壁に倣って膜状に形成された側壁被覆部、および、前記第1厚さ未満の第2厚さを有し、前記トレンチの前記底壁に倣って膜状に形成された底壁被覆部を含み、前記トレンチ内において凹状の空間を区画する絶縁層と、前記トレンチ内において前記絶縁層によって区画された前記凹状の空間に埋設された電極と、を含む、半導体装置。
【0417】
半導体層の第1主面から第2主面に向かう先細り形状に形成されたトレンチの内壁に膜状の絶縁層を形成する場合、トレンチ内にはトレンチの底壁に向けて開口幅が狭まる先細り形状の凹状の空間が絶縁層によって区画される。
【0418】
この場合、トレンチに埋設される電極も、凹状の空間の内壁に倣って先細り形状に形成される。先細り形状の電極が形成された場合、トレンチの底壁部において電界が局所的に集中する。その結果、電界集中に起因してブレークダウン電圧が低下する。
【0419】
そこで、この半導体装置では、先細り形状に形成されたトレンチの内壁において側壁被覆部の第1厚さ未満の第2厚さを有する底壁被覆部を有する絶縁層を形成している。この半導体装置によれば、底壁被覆部が第1厚さ未満の第2厚さを有しているので、絶縁層によって区画される凹状の空間が先細り形状になることが抑制される。
【0420】
これにより、凹状の空間に埋設される電極も先細り形状になることが抑制されるから、トレンチの底壁部における電界集中を抑制できる。その結果、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0421】
[項2]前記トレンチは、前記第2主面に向かう凸湾曲状の前記底壁を有している、項1に記載の半導体装置。
【0422】
[項3]前記トレンチは、断面視において前記第1主面から前記第2主面に向けて開口幅が狭まるテーパ形状に形成されている、項1に記載の半導体装置。
【0423】
[項4]前記トレンチは、前記第2主面に向かう凸湾曲状の前記底壁を有し、断面視において前記第1主面から前記第2主面に向けて開口幅が狭まるテーパ形状に形成されている、項1に記載の半導体装置。
【0424】
[項5]前記トレンチの前記側壁が前記半導体層内において前記第1主面との間で成すテーパ角は、90°を超えて95°以下である、項3または4に記載の半導体装置。
【0425】
[項6]前記底壁被覆部は、前記側壁被覆部の前記第1厚さに対する比が、0.5以上0.8以下となる前記第2厚さを有している、項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0426】
[項7]前記電極は、前記底壁被覆部に接し、前記トレンチの前記底壁に向かう凸湾曲状に形成された端部を含む、項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0427】
[項8]前記電極は、前記絶縁層を挟んで前記トレンチの前記底壁側に埋設された底側電極、前記絶縁層を挟んで前記トレンチの開口側に埋設された開口側電極、ならびに、前記底側電極および前記開口側電極の間に介在する中間絶縁層を含む絶縁分離型の電極構造を有している、項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0428】
[項9]前記底側電極は、前記底壁被覆部に接し、前記トレンチの前記底壁に向かう凸湾曲状に形成された端部を含む、項8に記載の半導体装置。
【0429】
[項10]前記絶縁層は、前記トレンチの前記底壁側の内壁に形成され、前記側壁被覆部および前記底壁被覆部を有する底側絶縁層、ならびに、前記トレンチの開口側の内壁に形成され、前記底側絶縁層の厚さ未満の厚さを有する開口側絶縁層を含み、前記底側電極は、前記底側絶縁層を挟んで前記トレンチの前記底壁側に埋設され、前記開口側電極は、前記開口側絶縁層を挟んで前記トレンチの開口側に埋設されている、項8または9に記載の半導体装置。
【0430】
[項11]一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層と、第1側壁および第1底壁を有し、前記半導体層の前記第1主面に形成されたゲートトレンチと、第2側壁および第2底壁を有し、前記ゲートトレンチに連通するように前記半導体層の前記第1主面において前記第1主面から前記第2主面に向かう先細り形状に形成されたコンタクトトレンチと、第1厚さを有し、前記コンタクトトレンチの前記第2側壁に倣って膜状に形成された側壁被覆部、および、前記第1厚さ未満の第2厚さを有し、前記コンタクトトレンチの前記第2底壁に倣って膜状に形成された底壁被覆部を含み、前記コンタクトトレンチ内において凹状の空間を区画するコンタク絶縁層と、前記コンタクトトレンチ内において前記コンタク絶縁層によって区画された前記凹状の空間に埋設されたコンタクト電極と、を含む、半導体装置。
【0431】
半導体層の第1主面から第2主面に向かう先細り形状に形成されたコンタクトトレンチの内壁に膜状のコンタクト絶縁層を形成する場合、コンタクトトレンチ内にはコンタクトトレンチの第2底壁に向けて開口幅が狭まる先細り形状の凹状の空間がコンタクト絶縁層によって区画される。この場合、コンタクトトレンチに埋設されるコンタクト電極も、凹状の空間の内壁に倣って先細り形状に形成される。
【0432】
先細り形状のコンタクト電極が形成された場合、コンタクトトレンチの底壁部において電界が局所的に集中する。その結果、電界集中に起因してブレークダウン電圧が低下する。
【0433】
そこで、この半導体装置では、先細り形状に形成されたコンタクトトレンチの内壁において側壁被覆部の第1厚さ未満の第2厚さを有する底壁被覆部を有するコンタクト絶縁層を形成している。この半導体装置によれば、底壁被覆部が第1厚さ未満の第2厚さを有しているので、コンタクト絶縁層によって区画される凹状の空間が先細り形状になることが抑制される。
【0434】
これにより、凹状の空間に埋設されるコンタクト電極も先細り形状になることが抑制されるから、コンタクトトレンチの底壁部における電界集中を抑制できる。その結果、ブレークダウン電圧の低下を抑制できる。
【0435】
[項12]前記コンタクトトレンチは、前記第2主面に向かう凸湾曲状の前記第2底壁を有している、項11に記載の半導体装置。
【0436】
[項13]前記コンタクトトレンチは、断面視において前記第1主面から前記第2主面に向けて開口幅が狭まるテーパ形状に形成されている、項11に記載の半導体装置。
【0437】
[項14]前記コンタクトトレンチは、前記第2主面に向かう凸湾曲状の前記第2底壁を有し、断面視において前記第1主面から前記第2主面に向けて開口幅が狭まるテーパ形状に形成されている、項11に記載の半導体装置。
【0438】
[項15]前記コンタクトトレンチの前記第2側壁が前記半導体層内において前記第1主面との間で成すテーパ角は、90°を超えて95°以下である、項13または14に記載の半導体装置。
【0439】
[項16]前記底壁被覆部は、前記側壁被覆部の前記第1厚さに対する比が0.5以上0.8以下となる前記第2厚さを有している、項11~15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0440】
[項17]前記コンタクト電極は、前記底壁被覆部に接し、前記コンタクトトレンチの前記第2底壁に向かう凸湾曲状に形成された端部を含む、項11~16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0441】
[項18]前記ゲートトレンチの内壁に形成された絶縁層と、前記絶縁層を挟んで前記ゲートトレンチの前記第1底壁側に埋設された底側電極、前記絶縁層を挟んで前記ゲートトレンチの開口側に埋設された開口側電極、ならびに、前記底側電極および前記開口側電極の間に介在する中間絶縁層を含む絶縁分離型の電極構造と、をさらに含む、項11~17のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0442】
[項19]前記コンタクト電極は、前記電極構造の前記底側電極に電気的に接続されている、項18に記載の半導体装置。
【0443】
[項20]前記コンタクト電極は、前記ゲートトレンチおよび前記コンタクトトレンチの連通部において前記電極構造の前記底側電極に接続されている、項19に記載の半導体装置。
【0444】
[項21]一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層を用意する工程と、前記半導体層の前記第1主面に側壁および底壁を有するトレンチを形成するトレンチ形成工程と、前記トレンチの前記側壁および前記底壁に沿い、前記トレンチ内において凹状の空間を区画する絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、エッチング法によって前記凹状の空間から露出する前記絶縁層の表面部を除去することにより、前記凹状の空間を拡張するエッチング工程と、前記トレンチ内において前記絶縁層によって区画された前記凹状の空間に電極を埋設する電極埋設工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【0445】
この半導体装置の製造方法によれば、トレンチの底壁部に対する電界集中を抑制し、ブレークダウン電圧を向上できる半導体装置を製造し、提供できる。
【0446】
[項22]前記トレンチ形成工程において、前記半導体層の前記第1主面から前記第2主面に向かう先細り形状の前記トレンチが形成される、項21に記載の半導体装置の製造方法。
【0447】
[項23]前記トレンチ形成工程において、前記第2主面に向かう凸湾曲状の底壁を有する前記トレンチが形成される、項22に記載の半導体装置の製造方法。
【0448】
[項24]前記トレンチ形成工程において、断面視において前記第1主面から前記第2主面に向けて開口幅が狭まるテーパ形状の前記トレンチが形成される、項22に記載の半導体装置の製造方法。
【0449】
[項25]前記トレンチ形成工程において、前記第2主面に向かう凸湾曲状の底壁を有し、断面視において前記第1主面から前記第2主面に向けて開口幅が狭まるテーパ形状の前記トレンチが形成される、項22に記載の半導体装置の製造方法。
【0450】
[項26]前記トレンチの側壁が前記半導体層内において前記第1主面との間で成すテーパ角は、90°を超えて95°以下である、項24または25に記載の半導体装置の製造方法。
【0451】
[項27]前記絶縁層形成工程において、第1厚さを有し、前記トレンチの前記側壁に倣う膜状の側壁被覆部、および、前記第1厚さ未満の第2厚さを有し、前記トレンチの前記底壁に倣う膜状の底壁被覆部を含む前記絶縁層が形成される、項21~26のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0452】
[項28]前記絶縁層形成工程において、前記側壁被覆部の前記第1厚さに対する比が、0.5以上0.8以下となる前記第2厚さを有する前記底壁被覆部が形成される、項27に記載の半導体装置の製造方法。
【0453】
[項29]前記電極埋設工程において、前記トレンチの前記底壁に向かう凸湾曲状に形成された端部を有する前記電極が形成される、項21~28のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0454】
[項30]前記絶縁層形成工程において、酸化処理法によって前記絶縁層が形成される、項21~29のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0455】
[項31]前記エッチング工程において、内壁が平滑化された前記凹状の空間が形成される、項21~30のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0456】
[項32]前記エッチング法は、ウエットエッチング法である、項21~31のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0457】
1 半導体装置
2 半導体層
3 第1主面
51 半導体基板
52 エピタキシャル層
54 ドリフト領域
55 ボディ領域
61 トレンチゲート構造
61A 第1トレンチゲート構造
61B 第2トレンチゲート構造
62 第1側壁
63 第2側壁
64 底壁
65 ゲートトレンチ
66 絶縁層
67 埋め込み電極
68 底側絶縁層
69 開口側絶縁層
70 側壁被覆部
71 底壁被覆部
72 底側電極
72A 第1端部
72B 第2端部
73 開口側電極
74 中間絶縁層
91 高濃度ドリフト領域
92 側壁被覆部
93 底壁被覆部
101 ソース領域
201 半導体装置