IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -ビニールハウスのフィルム保護具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ビニールハウスのフィルム保護具
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
A01G9/24 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023078379
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2019067306の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023090962
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清純
(72)【発明者】
【氏名】小島 典弘
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-175554(JP,U)
【文献】特開昭59-71622(JP,A)
【文献】実開平2-127151(JP,U)
【文献】実開昭55-145167(JP,U)
【文献】実開昭54-5310(JP,U)
【文献】実公昭48-16851(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスの骨組みに対して着脱自在に嵌着される嵌着部と、前記骨組みを覆うフィルムと接する位置に配された保護部と、保護部支持体とを備え、
前記保護部は、軟質部材により形成され、
前記保護部支持体は、長尺の板状で硬質材料により形成されるととともに、
該保護部支持体の一方の面部側に前記嵌着部が配置され、他方の面部上の長手方向に沿って前記保護部がアーチ状に形成され、該保護部と前記保護部支持体との間に中空部が形成されている
ことを特徴とするビニールハウスのフィルム保護具。
【請求項2】
前記保護部支持体は、硬質材料により形成された支持体本体と、前記支持体本体内に配設され、ステンレス材料より形成された薄板状の芯材と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のビニールハウスのフィルム保護具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用のビニールハウス(温室)に用いられる保護部材に関するものである。より詳しくは、ビニールハウスの側壁部や天井部に用いられるフィルムを巻き上げて、あるいは下して開閉可能としたビニールハウスにおいて、フィルムが巻き上げられ、あるいは下される際に、当該フィルムがビニールハウスの骨格(パイプ材)との接触によって擦れ、その摩擦によってフィルムが擦り切れるのを防止するためのフィルム保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、パイプ材をつなぎ合わせて組立体を形成して骨格とし、当該骨格にフィルムを被せた、一般的にビニールハウスと呼ばれる簡易の温室が、農園芸用途で広く用いられている。当該ビニールハウスにおいては、ハウス内を換気する目的で、その側壁面または屋根部を開閉自在としたものが多くある。この開閉自在を実現する手段として、たとえば特許文献1に示すように、ビニールハウスの骨格(パイプ材)の上に、フィルム(シートb)で覆ったビニールハウスにおいて、フィルム(シートb)の下端縁にパイプ材からなる巻軸cを取り付け、当該巻軸cにフィルムを巻き込むようにしてフィルムを巻き上げ、あるいは巻き下ろすことによってビニールハウスの壁面を開閉自在としたものがある。
【0003】
この従来のビニールハウスによれば、上記巻軸cの一端に接続した回転伝達装置のハンドル3を手で回すことにより巻軸cを回動させ、これによってフィルムbを巻き上げ、または巻き下げることができるので、簡便にビニールハウスの壁面を開閉自在としてビニールハウスの換気を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-112639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のビニールハウスにおいては、フィルムを巻き上げ、又は巻き下げる際に、上記組立体を構成するパイプ材とそれを覆うフィルムとが互いに擦れ合い、その摩擦によってフィルムが破れるなどの課題があった。
【0006】
本発明は上記の課題を克服するためのものであり、ビニールハウス内の換気を行うために、その側壁部や天井部に用いられるフィルムを巻き上げて、あるいは下して開閉可能としたビニールハウスにおいて、フィルムが巻き上げられ、あるいは巻き下ろされ際に、当該フィルムがビニールハウスの骨格(パイプ材)との接触によって擦れ、その摩擦によってフィルムが擦り切れるのを防止するためのフィルム保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち、本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具は、ビニールハウスの骨組みに対して着脱自在に嵌着される嵌着部と、前記骨組みを覆うフィルムと接する位置に配された保護部と、保護部支持体とを備え、前記保護部は、軟質部材により形成され、前記保護部支持体は、長尺の板状で硬質材料により形成されるととともに、該保護部支持体の一方の面部側に前記嵌着部が配置され、他方の面部上の長手方向に沿って前記保護部がアーチ状に形成され、該保護部と前記保護部支持体との間に中空部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具によれば、ビニールハウスの骨組みを覆うフィルムと接する位置に配された保護部を備えており、当該保護部が軟質部材により形成されているので、フィルムが擦り切れて破れることが防止される。
【0009】
また、本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具において、保護部は、保護部支持体を介して嵌着部と一体的に形成されていることを特徴とする。また、本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具において、嵌着部及び保護部支持体は硬質材料により形成され、保護部は軟質材料により形成されていることを特徴とする。このようにすれば、嵌着部がビニールハウスの骨組みにしっかりと嵌着して、所定の位置に確実に保持され、また保護部が所定の位置に保持されて、ビニールハウスのフィルムが擦り切れて破れることを確実に防止することができる。
【0010】
さらに、保護部支持体は、嵌着部の長さ方向の全長に亘って板状に形成され、保護部は嵌着部上にアーチ状に形成されて、保護部と嵌着部との間に筒状の中空部が設けられていることを特徴とする。このようにすれば、軟質材料からなる保護部と筒状の中空部とによって、クッション性が高まり、ビニールハウスのフィルムが擦り切れて破れることをより好適に防止することができる。
【0011】
また、嵌着部及び保護部支持体は硬質塩化ビニールからなり、保護部は軟質塩化ビニールからなることを特徴とする。このようにすれば、保護部支持体と保護部との接合が確実となり、所望の性能を発揮することができる。さらに、保護部支持体は、硬質の芯材をさらに備えていることを特徴とする。このようにすれば、保護部をより強固に支持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具によれば、ビニールハウスの骨組みに対して着脱自在に嵌着される嵌着部と、該嵌着部と一体的に形成されて、前記骨組みを覆うフィルムと接する位置に配された保護部とを備え、当該保護部は、軟質部材により形成されているので、フィルムが擦り切れて破れることを好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示したフィルム保護具の正面図である。
図3図1に示したフィルム保護具の側面図である。
図4図1におけるA-A線断面図である。
図5図1に示したフィルム保護具が取り付けられるビニールハウスの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
図1図4は、本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具の一実施形態を示す図である。図1に示すように、この実施形態におけるフィルム保護具1は、長尺の嵌着部2と、嵌着部2に一体的に形成された保護部3とを備えている。この実施形態においては、保護部支持体4を更に備えており、当該保護部支持体4を介して嵌着部2と保護部3が一体的に形成されるものとしている。
【0016】
嵌着部2は、本実施形態においては硬質塩化ビニールにより形成されている。嵌着部2は、略円筒形の周壁が一部軸方向、図1における下側面が長手方向に端から端まで切り欠かれていて、これにより図3に示すように側面視で下方に開口した略C字状となされ、開口部21が形成されてなるものである。
【0017】
フィルム保護具1は、例えば図5に示したビニールハウスVHの骨組みを構成するパイプ部材71に、嵌着部2を嵌着させて用いるものである。嵌着部2の円筒内空間部の内径寸法は、パイプ部材71の外径寸法と略同一か、あるいは僅かに小さいものとなされ、これにより、確実にパイプ部材71に嵌着することが可能となる。
【0018】
また、嵌着部2の開口部21の幅、すなわち開口部21における両開口端部22、22間の距離は、パイプ部材71の外径よりも小さいものとなされている。これにより、開口部21に沿ってフィルム保護具1をパイプ部材71に押し付けることで、開口端部同士の間隔が開くように嵌着部2が弾性変形して、パイプ部材71が嵌着部2内側に導かれる。いったん弾性変形した嵌着部2はパイプ部材71が嵌着部2の内側に嵌ると同時に元の形状に戻り、これによって嵌着部2がパイプ部材71に嵌着され、しっかりと固定される。
【0019】
なお、この嵌着部2は、上述の通り硬質塩化ビニールで形成されている。後述する保護部支持体4が本実施形態においては同様に硬質塩化ビニールで形成され、また保護部3が軟質塩化ビニールで形成されることによって相互の溶着性が良好となることから、本実施形態においては、嵌着部2を硬質塩化ビニールで形成するのが望ましい。しかしながら、上述の溶着性が担保される組み合わせであれば、硬質塩化ビニールに限られるものではなく、開口部21をパイプ材71押し込むことができる程度に弾性変形可能なものであればポリプロピレンやポリエチレン、ABS樹脂、AAS樹脂、ASA樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、エラストマー、ラバーなどにより形成してもよく、またそれらを適宜組み合わせて用いてもよい。あるいは、弾性変形可能であり、かつ所定の強度を備えていれば、上記以外の合成樹脂材料や金属その他の任意の材料を使用することができる。さらに、この嵌着部2は一体的に形成されているが、複数の部材を連結して嵌着部2を形成するようにしてもよい。
【0020】
また、嵌着部2の開口部21とは反対側、すなわち図1~4における嵌着部2の上側には、嵌着部2と一体的に保護部支持体4が形成されている。保護部支持体4は、本実施形態においては長尺の板状であって、嵌着部2の長さ方向全長に亘って形成されている。また、本実施形態における保護部支持体4は、図3及び図4に示す通り、嵌着部2と同様に硬質塩化ビニールで形成された支持体本体41と、支持体本体41内に配設され、ステンレス材料により形成された薄板状の芯材42とを備えている。この硬質材料からなる保護部支持体4は、これを設けることにより、後述する保護部3を所望の形状及び位置に保持されるよう支持するためのものである。それゆえ、当該目的を達するものであれば、保護部支持体4の形状や材料は任意に選択可能なものである。また、薄板状の芯材42は、保護部3を安定的に支持して変形しないことに寄与するものであり、これを設けるのが好ましいが、上記目的を達するものであれば、必ずしも設ける必要はなく、また材料も任意に選択できるものである。
【0021】
さらに、保護部支持体4上には、これと一体的に保護部3が設けられている。保護部3は、軟質塩化ビニールにより形成され、嵌着部2及び保護部支持体4の長さ方向全長に亘って形成されている。また、この保護部3は、図1、3及び4に示すように、側面視でアーチ状となされ、その両端部が保護部支持体4の両側端部に溶着されて保護部支持体4と一体的に形成されており、これによって保護部3と保護部支持体4により中空部5が形成されている。
【0022】
このような構成を備えることによって、ビニールハウスVHの骨組みを構成するパイプ部材71に嵌着部2を嵌着させてフィルム保護具1を取り付ければ、保護部3の上面が、ビニールハウスVHのフィルムFに接することになる。このとき、保護部3は軟質材料により形成され、また保護部3の下に中空部5が設けられていることでクッション機能により、フィルムFとの摩擦が低減され、フィルムFが摩擦により擦り切れる恐れが少なくなる。尚、この保護部3は、この実施形態においては軟質塩化ビニールにより形成されているが、軟質でフィルムFとの摩擦が低減される材料であって、保護部支持体4との溶着性が担保される組み合わせのものであれば、これに限定されるものではなく、EVAほか任意の材料が用いられて良いものである。
【0023】
次に、以上のような構成を備えたフィルム保護具1の使用方法を、図5を参考に以下説明する。図5は、本発明に係るフィルム保護具が使用されるビニールハウスの一例であり、パイプ材71をつなぎ合わせた組立体からなる骨格にフィルムFを被せたビニールハウスVHである。図5に示すように、所定高さのフィルムFの下端縁にパイプ材からなる巻軸72が取り付けられ、また、巻軸72の一端には回転伝達装置のハンドル73が接続されている。このハンドル3を手で回して巻軸72を回動させ、巻軸72にフィルムFを巻き込むようにしてフィルムFを巻き上げ、あるいは巻き下ろすことによってビニールハウスVHの側壁面を開閉自在とし、これにより必要に応じてビニールハウスVHの換気を行うことができるようにしたものである。
【0024】
図5に示したビニールハウスVHにおいて、本発明に係るフィルム保護具1を用いない場合は、フィルムFとパイプ部材71とが互いに擦れ合い、その摩擦によってフィルムが破れることがたびたび発生する。
【0025】
そこで、本発明に係るフィルム保護具1を、上述の通り嵌着部2をパイプ材71に嵌着させることによって固定し、使用する。そうすると、ハンドル3を手で回して巻軸72を回動させ、巻軸72にフィルムFを巻き込むようにしてフィルムFを巻き上げ、あるいは巻き下ろす際、保護部3及び中空部5がクッション機能を発揮し、フィルムFとの摩擦が低減され、これによりフィルムFが擦り切れる恐れが大幅に軽減される。尚、フィルム保護具1の全長は任意に設定できるものであるが、フィルムFが巻き上げ、巻き下ろされる範囲の全長に合わせて、その長さに形成され配置されるのが好ましい。
【0026】
以上、本発明に係るビニールハウスのフィルム保護具について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。例えば、本実施形態においては、嵌着部2と保護部3と保護部支持体4とを一体に形成しているが、これらを別体として作製したうえで組み合わせて使用するものとしてもよい。また、保護部3のアーチ状や、中空部5の形状もここに示した形態に限定されるものではなく、フィルムFとの摩擦を低減できる形状であれば、任意の形状として良いものであって、そのような変形例も本発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、ビニールハウス内の換気を行うために、その側壁部や天井部に用いられるフィルムを巻き上げて、あるいは下して開閉可能としたビニールハウスにおいて、フィルムが巻き上げられ、あるいは巻き下ろされ際に、当該フィルムがビニールハウスの骨格(パイプ材)との接触によって擦れ、その摩擦によってフィルムが擦り切れるのを防止するためのフィルム保護具を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 フィルム保護具
2 嵌着部
21 開口部
22 開口端部
3 保護部
4 保護部支持体
41 支持体本体
42 芯材
5 中空部
71 パイプ材
F フィルム
VH ビニールハウス
図1
図2
図3
図4
図5