(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】金属酸化物ゲル粒子の径を制御するシステムおよび手法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/1434 20240101AFI20240809BHJP
G01N 15/1409 20240101ALI20240809BHJP
C01G 43/01 20060101ALI20240809BHJP
G21C 3/62 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01N15/1434 110
G01N15/1434
G01N15/1409 100
C01G43/01 A
G21C3/62 300
(21)【出願番号】P 2023144520
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2022505649の分割
【原出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-09-06
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519461772
【氏名又は名称】エックス-エナジー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リンニーン,ニコラス
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219479(JP,A)
【文献】国際公開第2009/132198(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0163265(US,A1)
【文献】特開昭59-147296(JP,A)
【文献】AL McAlister et al.,Demonstration of microfluidics for synthesis of sol-gel feedstocks,Oak Ridge National Laboratory,2019年03月,p1-12,URL:https://info.ornl.gov/sites/publications/Files/Pub122678.pdf,令和5年4月28日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/1434
G01N 15/1409
C01G 43/01
G21C 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ゲル粒子の径を最適化する方法であって、
ヘキサメチレンテトラミンを含む低温の金属硝酸塩溶液を供給液として準備する工程と、
前記供給液を第1のノズルを通して流し、第1の流量で第1の流れとして前記第1のノズルから排出する工程と、
非水系駆動流体を、第2の流量で第2の流れとして第2のノズルを通して流し、前記第2の流れを前記第1の流れに接触させる工程と、
駆動流体の前記第2の流れ内の前記金属酸化物ゲル粒子の流れに向けられたセンサー装置を用いて、前記金属酸化物ゲル粒子の径または流量を光学的に測定する工程と、
前記測定された粒子径または流量が所望の粒子径または流量に略同一でない場合、前記第1および前記第2の流量の合計である総流量に対する前記第1の流量の比率を調整することによって前記粒子径または流量を調整する工程と、を含み、
前記第1の流れと前記第2の流れの間のせん断によって、前記第1の流れが前記金属硝酸塩溶液の粒子に分解され、
ヘキサメチレンテトラミンの分解により、前記金属硝酸塩溶液の粒子が前記金属酸化物ゲル粒子に変換され、
前記センサー装置が、前記金属酸化物ゲル粒子または前記駆動流体によって吸収される光の透過率を測定し、前記金属酸化物ゲル粒子が光学センサーを通過する期間の間、前記駆動流体による光の透過率が変化
し、
前記センサー装置が、前記駆動流体の前記第2の流れに沿って第1の距離だけ互いに離間して配設される第1のセンサーおよび第2のセンサーを備え、前記第1の距離が、所望の粒子径よりも小さい、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記測定された粒子径が、所望の粒子径よりも大きい場合、前記供給液の前記第1の流量を減少させることで、前記粒子径を減少させる、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、
前記測定された粒子径が、所望の粒子径よりも小さい場合、前記供給液の前記第1の流量を増加させることで、前記粒子径を増加させる、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、
前記測定された粒子径が、所望の粒子径と異なる場合、前記供給液の前記第1の流量を
変化させることにより、前記測定された粒子径を変化させる、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、
前記金属酸化物ゲル粒子の流量を測定する工程が、
前記ゲル粒子の前端部または後端部が第1のセンサーから第2のセンサーまで移動する時間ΔTを測定し、前記ΔTを前記第1のセンサーと前記第2のセンサーとの間の距離で割ることにより、流動している流体中の前記ゲル粒子の速度を測定する工程と、
前記ゲル粒子の速度に前記流動している流体の断面積を乗算する工程と、を含む、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、
前記金属酸化物ゲル粒子の径を測定する工程が、
前記ゲル粒子の前端部または後端部が第1のセンサーから第2のセンサーまで移動する時間ΔTを測定し、前記ΔTを前記第1のセンサーと前記第2のセンサーとの距離で割ることにより、流動している流体中の前記ゲル粒子の速度を測定する工程と、
前記ゲル粒子の速度に前記流動している流体の断面積を乗じることにより、前記流動している流体の前記流量を決定する工程と、
前記流量に、前記ゲル粒子が前記第1のセンサーを通過する時間を乗じる工程と、含む、方法。
【請求項7】
制御された粒子径を有する金属酸化物ゲル粒子を製造するためのシステムであって、
金属酸化物ゲル粒子を形成するシステムと、
前記金属酸化物ゲル粒子を形成するシステムの下流側に配置され、センサー装置を備える、前記金属酸化物ゲル粒子の平均径を制御するシステムと、を含み、
前記金属酸化物ゲル粒子を形成するシステムが、
流路を画定する駆動流体ノズルであって、前記流路に沿って第1の流量で駆動流体の駆動流を流すように構成された駆動流体用ノズルと、
出口を有する金属塩溶液ノズルであって、ヘキサメチレンテトラミンを含む低温金属塩溶液の第1の流れを第
2の流量で前記流路に搬送するように構成された金属塩ノズルと
、
前記金属塩溶液中の金属塩をヘキサメチレンテトラミンでゲル化させるのに十分な水準に前記駆動流体の温度を維持するように構成されたヒーターと、を備え、
前記センサー装置が、
前記流路に沿って第1の距離だけ互いに離間して配設される第1のセンサーおよび第2のセンサーであって、前記ゲル粒子の体積流量と平均径を測定するように構成される、第1のセンサーおよび第2のセンサーと、
前記センサー装置の入力に基づいて、前記金属酸化物ゲル粒子の平均径を調整する制御システムと、を備え
、
前記第1のセンサーおよび前記第2のセンサーが、前記流路に沿って第1の距離だけ互いに離間して配置され、前記第1の距離が、前記金属酸化物ゲル粒子の所望の径よりも小さい、システム。
【請求項8】
請求項
7記載のシステムであって、
前記平均径を制御するシステムが、前記金属酸化物ゲル粒子が前記第1のセンサーと前記第2のセンサーとの間の第1の距離を移動する第1の通過時間および前記金属酸化物ゲル粒子が単一のセンサーを通過する第2の通過時間から体積流量を計算するように構成される、システム。
【請求項9】
請求項
7記載のシステムであって、
前記平均径を制御するシステムが、前記金属酸化物ゲル粒子が前記第1のセンサーと前記第2のセンサーとの間の第1の距離を移動する第1の通過時間および前記金属酸化物ゲル粒子が単一のセンサーを通過する第2の通過時間から前記ゲル粒子の平均径を計算するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項
7記載のシステムであって、
前記平均径を制御するシステムが、前記第1及び前記第2の流量の合計である総流量に対する前記第1の流量の比率を調整することによって前記ゲル粒子の平均径を調整するように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、制御された粒子径を有する金属酸化物ゲル粒子の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物ゲル粒子は、金属塩溶液の液滴を非水系流体に分散させ、液滴中の金属塩を内部ゲル化させ、金属酸化物ゲル粒子の形態のゲル相に形成することで調整される。
【0003】
金属酸化物ゲル粒子は、2つの流体ノズルを用いて、ウラン、トリウム、プルトニウム、セリウムなどのランタノイド金属の硝酸塩を含む様々な金属塩または金属酸化物塩の溶液から調製される。塩溶液はヘキサメチルテトラミン(hexamethyl tetramine:HMTA)と尿素を含み、第1のノズルから第1の流量で流れ、第2のノズルの非水系駆動流体の流れに入り込む。非水系駆動流体は、HMTAの分解を誘発するのに十分な温度まで加熱される。
【0004】
硝酸ウラニル溶液の場合、塩溶液が駆動流体に接触する前に、化学式 UO2((NH2)2CO)2
+2の金属イオン-尿素錯体が形成されるので、尿素が早期にゲル化することへの抑制を担っている可能性がある。この金属イオン-尿素錯体が駆動流体によって加熱されると、分離してUO2
+2または類似の酸化ウランを形成する可能性がある。同時に、HMTAは分解して水酸化アンモニウムを形成する。HMTAの分解は、反応式(1)、(2)に基づき2段階で行われる。
【0005】
(CH2)6N4+H+→((CH2)6N4)H+ (1)
(CH2)6N4H++9H2O→6HCHO+NH4
++3NH4OH (2)
【0006】
また、金属イオンはさらに加水分解し、反応式(3)、(4)に基づき縮合する。
【0007】
(UO2)+2
(aq)+2H2O→(UO2(OH)2)(aq)+2H+ (3)
2(UO2(OH)2)(aq)→2UO3・2H2O (4)
【0008】
反応式(2)で生成した水酸化アンモニウムが溶液のpHを上昇させ、加水分解・縮合の反応式(3)を促進させ、金属イオン微粒子2UO3・2H2Oを球状のゲル粒子として生成させる。球状酸化ウランゲルを回収・焼成することで、核燃料ペレットのカーネルとして有用なセラミック粒子を形成することができる。
【0009】
ゲル粒子形成において、金属酸化物溶液の液滴を駆動流体中に高速で分散させ、HMTAの分解による急速なゲル化が行われる。このゲル粒子の径は、核燃料の仕様上、非常に重要である。特に、核燃料ペレットに使用される焼結セラミック粒子の径は、このゲル粒子の径によって制御される。ゲル粒子の焼結により、質量が約35%減少し、粒子半径が約65%縮径する。内部ゲル化によりゲル粒子を形成する際、ゲル化が終了し、粒子が回収されるまで、形成されるゲル粒子の径は不明である。ゲル粒子の特性評価をおこなうと、核燃料のような所望の生成物を調製するには粒子が大きすぎることが判明することがある。あるいは、粒子が小さくて目的の用途に適さない、また、不所望なほど広い粒子の径分布を有している可能性がある。
【0010】
本開示は、粒子形成中に粒子径を調整することで、粒子の径を制御しながら金属酸化物ゲル粒子を調製する方法に関する。
【0011】
対象物は、本明細書に開示される様々な実施形態によって実現されうる利点を例示するものであり、実現されうる利点を網羅的または限定的に示すことを意図するものではない。本明細書に開示された様々な実施形態の更なる利点は、本明細書の説明から明らかになるであろう。また、本明細書に開示された様々な実施形態を実践することから知ることができるであろう。また、当業者に明らかな任意の変形に鑑みて修正されたように知ることができるであろう。したがって、本発明は、本明細書に示され、様々な実施形態で説明される新規な方法、配置、組み合わせ、及び改良に属する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に開示される様々な実施形態は、2つの流体ノズル内で形成されるゲル粒子の径およびノズル内のゲル粒子の流量をリアルタイムで分析することができる光学センサーに関する。
【0013】
本明細書に開示される様々な実施形態は、金属酸化物ゲル粒子の径を最適化する方法に関し、ヘキサメチレンテトラミン(hexamethylene tetramine)を含む低温の金属硝酸塩溶液を含む供給液(feed solution)を準備する工程と、供給液を第1のノズルを通して流し、第1の流量で第1のノズルから出るようにする工程と、第2の流体を第1の流体と接触させるために、高温の非水系駆動流体を第2のノズルに第2の流量で流す工程と、を含む。様々な実施形態において、第1の流れと第2の流れとの間のせん断は、第1の流れを金属硝酸塩溶液の液滴に分解し、高温の駆動流体によるヘキサメチレンテトラミンの熱分解は、金属硝酸塩溶液の液滴を金属酸化物ゲル粒子に変質させる。ゲル粒子は、駆動流体の第2の流れに運ばれる。様々な実施形態において、駆動流体中の金属酸化物ゲル粒子の平均粒径または金属酸化物ゲル粒子の平均流量は、駆動流体の流れ内の金属酸化物ゲル粒子の流れに向けられたセンサー装置を用いて、光学的に測定される。
【0014】
様々な実施形態において、センサー装置は、金属酸化物ゲル粒子または駆動流体のいずれかによって吸収される光の透過率を測定する。このとき、金属酸化物ゲル粒子がセンサー装置を通過している期間において、駆動流体を通る光の透過率が変化する。光の透過率の時系列変動は、粒子の平均径または体積流量を測定するために使用できる。様々な実施形態において、測定された粒子径又は体積流量が所望の液滴の径又は流量にほぼ等しくない場合、総流量に対する第1の流量を調整することによって前記液滴の径又は流量を調整する。ここで総流量は、第1及び第2の流量の合計である。
【0015】
様々な実施形態において、測定された粒子径が所望の粒子径よりも大きい場合、駆動流体の流量を増加させること、供給液の流量を減少させること、またはその両方によって、測定された粒子径を減少させることができる。測定された粒子径が所望の粒子径よりも小さい場合、駆動流体の流量を減少させること、供給液の第1の流量を増加させること、又はその両方によって、測定された粒子径を増加させることができる。
【0016】
様々な実施形態において、センサー装置は、駆動流体の流れに沿って第1の距離だけ互いに間隔を空けた第1の光学センサーおよび第2の光学センサーを含む。第1及び第2のセンサーのそれぞれは、駆動流体の流れに向かい合って設けられる第1及び第2の光ファイバーを含む。それぞれのセンサーにおいて、第1の光ファイバーは、駆動流体を介して信号を送信し、第2の光ファイバーは該信号を受信する。様々な実施形態によれば、それぞれのセンサーにおいて、第1の光ファイバーによって送信される信号は、駆動流体によって吸収されないが、金属酸化物ゲル粒子によって吸収される波長の光信号である。それぞれのセンサー内において、第1および第2の光ファイバーは、少なくとも駆動流体を搬送する管の直径に等しく、駆動流体を介した信号の減衰を防ぐのに十分小さい距離だけ離間している。
【0017】
様々な実施形態において、第1のセンサー及び第2のセンサーは、駆動流体の第2の流れに沿って、第1の距離だけ互いに間隔をあけて配置される。センサー間の第1の距離は、ゲル粒子の平均直径よりも小さい。このとき、ゲル粒子の平均直径は、0.8~3.2mmの間、1~2.5mmの間、1~2mmの間、1~1.5mmの間、又は1.5~2mmの間であってもよい。様々な実施形態において、センサー間の間隔は、ゲル粒子の所望の目標となる直径より0.1~1mm、0.2~0.9mm、0.3~0.8、又は0.5~0.7mm小さくする。
【0018】
様々な実施形態において、平均径が、金属酸化物ゲル粒子が第1の光学センサー及び/又は第2の光学センサーを通過する速度を計算することによって推定されてもよい。様々な実施形態において、2つのセンサーは、流路に沿って既知の距離だけ間隔を空けて配置されており、ゲル粒子の前端又は後端が該既知の距離を移動する時間に基づいて、ゲル粒子の速度が計算される。ゲル粒子の速度が決定されると、センサーを通過したゲル粒子を搬送する駆動流体の流量が算出される。流量が計算されると、ゲル粒子が占有した流れ(ゲル粒子の体積)の割合は、1つのゲル粒子が1つの光学センサーを通過するのにかかる第1の時間の長さを、2つの連続したゲル滴が1つの光学センサーに達するのにかかる第2の時間の長さで割ることによって、計算される。
【0019】
種々の実施形態において、粒子径が制御された金属酸化物ゲル粒子を製造するための装置は、金属酸化物ゲル粒子を形成するためのシステムを含み、該システムは、
出口を有する金属塩溶液ノズルであって、ヘキサメチレンテトラミンを含む低温の金属塩溶液の第1の流れを第1の流量で前記流路に搬送するように構成された金属塩溶液ノズルと、
流路を画定する駆動流体ノズルであって、前記流路に沿って第2の流量で第2の駆動流体の駆動流を流すように構成された駆動流体用ノズルと、
選択的に設けられる、金属塩溶液中の金属塩をヘキサメチレンテトラミンでゲル化させるのに十分な温度水準を駆動流体に対して維持させるように構成されたヒーターによって特徴づけられる。
【0020】
様々な実施形態において、本装置は、さらに、金属酸化物ゲル粒子を形成するためのシステムの下流に配置された金属酸化物ゲル粒子の平均の径を制御するためのシステムを含む。ゲル粒子の径を制御するためのシステムは、センサー装置を備え、該センサー装置は、
流路に沿って第1の距離だけ互いに間隔を置いた第1のセンサーおよび第2のセンサーであって、ゲル粒子の平均の径および粒子の流量を測定するように構成される、第1のセンサーおよび第2のセンサーと、
センサー装置からの入力に基づいて、金属酸化物ゲル粒子の平均径を調整する制御装置と、を含む。
【0021】
様々な実施形態において、平均ゲル粒子径を制御するためのシステムは、金属酸化物ゲル粒子が第1のセンサーと第2のセンサーとの間の距離を移動するために要する第1の通過時間から体積流量を計算するように構成されている。
【0022】
様々な実施形態において、計算されたゲル粒子径が所望のゲル粒子径と異なる場合、平均径を制御するためのシステムは、駆動流体の第1の流量と総流量との比を調整することによってゲル粒子の平均サイズを調整するように構成される。ここで、総流量は、金属塩溶液の第1の流量と第2の流量とを合計したものである。
【0023】
予測可能な径に金属酸化物ゲル粒子を調製する改善された方法の現在の必要性に鑑みて、様々な例示的な実施形態の簡潔な概要を示す。後述の記載は、様々な例示的な実施形態のいくつかの態様を強調し、説明することを意図しているが、本発明の範囲を限定するものではない、いくつかの簡略化及び省略がなされる場合がある。当業者が発明概念を実現及び使用することを可能にするのに十分な好ましい例示的な実施形態の詳細な説明が、後述される。
【0024】
様々な例示的な実施形態をより良く理解するために、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、2つの流体ノズルで形成される金属酸化物ゲル粒子の径を監視するための装置を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の装置内のセンサーによって金属酸化物ゲル粒子が検出されたときに生成される出力データを示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の装置内のセンサーによって金属酸化物ゲル粒子が検出されたときに生成される出力データを示す図である。
【
図4】
図4は、2つの流体ノズルで形成される金属酸化物ゲル粒子の径を制御する工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、CPUおよびCPUによって制御されるポンプを組み合わせた、
図1の装置を示す図である。
【
図6】
図6は、ゲル粒子から調製された金属酸化物焼結体粒子のカーネル径の時系列変動、金属酸化物ブロス溶液の流量の時系列変動および総流量の時系列変動を示す図である。
【
図7】
図7は、カーネル径を、総流量に対する金属酸化物ブロス溶液の流量の比率の関数としてプロットしたグラフである。
【0026】
図6および
図7に示したデータを生成するために使用したデータ点の数が多いため、個々のデータ点をプロットするのではなく、重なり合ったデータ点を表すクラウド(Cloud)形式でデータを表示した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示で使用される、「約(about)」という用語は、記載数値のプラスマイナス10%以内、記載数値のプラスマイナス5%以内、記載数値のプラスマイナス3%以内を意味すると解釈してもよい。修飾語なしで記載されたすべての数値は、有効数字で解釈してもよい。
【0028】
本開示で使用される、装置またはその一部に適用される「~するように構成されている(configured to)」という文言は、言及された装置または要素が言及された機能を実行するように設計または構築されていることを意味する。
【0029】
本開示で使用される、m1として参照される「直径」という用語は、粒子が光学センサーを過ぎて管内を移動する際の長さを意味する。管の直径は粒子の長さより短い場合、粒子が管の長さに沿って伸びることがある。他の場合、管の直径は粒子の長さより大きいか、または粒子の長さとほぼ等しいので、粒子は実質的に球形となる。いずれの場合も、粒子の長さに沿った距離が直径m1と呼ばれる。
【0030】
ここで図面を参照すると、同様の符号が、同様の構成要素または工程を示し、様々な例示的な実施形態の広範な態様が開示されている。
【0031】
図1は、金属酸化物ゲル粒子の粒子径を測定するシステムの構成を示す図である。このシステムは、非水系駆動流体を搬送するように構成されたノズル1(「駆動流体ノズル」)を含む。このとき、駆動流体は、ノズル1内を矢印Aで示す流路にて第1の流量で運ばれる。直径m1(
図1では細長い粒子の長さに等しいとして示されている)を有するゲル粒子3は、管1に沿って矢印Aの方向に移動し、それぞれがCPU10に接続された第1のセンサー4及び第2のセンサー5を通過する。センサー4は、管1によって分離された2本の光ファイバー6および7を有する。選択された波長の光信号が、ファイバー6からファイバー7へ、矢印Bの方向に伝送される。駆動流体は選択された波長に対して透過性を有し、ゲル粒子3は選択された波長に対して半透過性または非透過性を有する。ファイバー6から送信された光とファイバー7で受信した光との間の光強度の時間的変化に対応する信号が、CPU10に伝送される。それぞれのセンサー4、5の出力はケーブル13、14を介してCPU10に送られ、ここで、粒子径が計算される。
【0032】
図2は、一群のゲル粒子がセンサー4を通過する際の光強度の時系列変動を示す図である。ファイバー6から送信した光とファイバー7で受信した光量の変化が所定の背景値より小さい場合、CPUは値0を出力する。それぞれのファイバー6と7の間にゲル粒子3が存在する場合、光量の変化が所定の背景値を超えるので、CPUは値1を出力する。これらにより、一連の矩形波11の形として時間に依存する信号が得られる。それぞれの矩形波11は、前端部11aおよび後端部11bを有する。それぞれの矩形波の長さは、1つのゲル粒子がセンサー4を通過する期間(期間P)に相当する。隣り合う矩形波の前端部11a(または後端部11b)間の時間から、ゲル粒子がセンサー6を通過する周波数が得られる。全ての粒子3が同一程度の径を有すれば、隣接する2つの矩形波から期間と周波数を決定できる。粒子3の径が異なる場合、一連の矩形波11から期間と周波数の平均値または中央値を決定できる。
【0033】
図1に示すように、センサー5は、管1によって区切られた2本の光ファイバー8、9を有する。選択された波長の光信号が、ファイバー8からファイバー9に伝送される。ファイバー6から送信された光とファイバー7で受信された光との間の光強度の時間依存的な変化に対応する信号がCPU10に送信される。
図3は、一群のゲル粒子がセンサー4を通過する際の光強度の時系列変動と、一連のゲル粒子がセンサー5を通過する際の光強度の時系列変動を示す図である。それぞれのセンサー4および5は、それぞれのファイバー6および7の間の距離x1が、所望のゲル粒子径m1より小さくなるように配置される。
【0034】
図3に見られるように、センサー4および5のそれぞれは、光強度の時系列変動を、時間期間ΔTでオフセットした一連の矩形波11として提供する。期間Pおよび周波数Fは、センサー4の出力、センサー5の出力またはセンサー4およびセンサー5の両方から得られる出力の平均値から計算できる。
【0035】
期間P、周波数F、オフセットΔTが決まれば、粒子の速度、流量、粒子体積を決定することができる。粒子の速度は、単一の粒子の前端部または後端部がセンサー4とセンサー5との間の距離x1を移動するのにかかる時間の長さに対応する、オフセット時間ΔTから決定されてもよい。速度Vは、以下のように計算されてもよい。
【0036】
V = x1/ΔT(5)
【0037】
管1を通過する金属イオン溶液と駆動流体の総体積流量Flowは、速度Vと管1の内径d1から以下のように算出できる。
【0038】
Flow = [V(d1)
2
/4]π (6)
【0039】
金属イオン溶液の流量FlowMは、以下のように計算できる。
【0040】
FlowM = (P/F) * Flow (7)
【0041】
式変形すると以下のように変形される。
【0042】
FlowM/Flow = P/F (7)
【0043】
比FlowM/Flowをゲル粒子の焼結によって得られたカーネル径の関数としてプロットすると、少なくとも0.4<FlowM/Flow<0.8のとき、粒子の径はFlowM/Flowに対して線形的な依存性を示すことが明らかになった。したがって、この流量比を操作することにより、粒子径を制御することができる。
【0044】
ゲル粒子の体積は、期間Pに流量Flowを乗じることで以下のように推定できる。
【0045】
Particle Volume(粒子の体積)=P*Flow=P[V(d1)
2
/4]π (8)
【0046】
戻って
図1を参照すると、金属酸化物溶液を搬送する溶液は、管12を通過して管1と交差し、矢印Aで示す流路に第1の流量で駆動流体を搬送する。管12は、低温の金属塩溶液(「塩溶液」)を矢印Cで示す流路に第2の流量で搬送する。管12の出口は、管1内の駆動流体の流路内にある。金属酸化物塩は、ランタノイド金属、プルトニウム、ウラン、またはトリウムの塩であってもよい。また、金属酸化物塩は、アンモニアまたは水酸化アンモニウムとの反応によりゲル化を起こす任意の塩であってもよい。
【0047】
塩溶液が管12から排出されるとき、塩溶液の流れと駆動流体の流れの間のせん断により、塩溶液の流れは駆動流体中に分散した塩溶液の粒子に分解される。様々な実施形態において、塩溶液はヘキサメチレンテトラミン(HMTA)を含み、駆動流体は、HMTAをアンモニアとホルムアルデヒドに分解させるのに十分な温度まで加熱される。そして、アンモニアによって塩溶液粒子がゲル化し、球状の金属酸化物ゲル粒子3が形成される。粒子3は、駆動流体によってノズル1に沿って矢印Aの方向に搬送される。
【0048】
図1は、金属酸化物溶液担持管12が管1と直角に交差するように示されているが、これは
図1の装置にとって必要な特徴ではない。いくつかの実施形態では、管1と管12とは同軸であってよく、管12は管1の内側にあってもよい。また、管1および12は交差して、単一の共通管を形成してもよい。管12内の塩溶液が、管1によって搬送される駆動流体に流れ込むことだけが必要である。
【0049】
様々な実施形態において、金属酸化物溶液を形成するために、UO3、U3O8、UO2(NO3)2、トリウムもしくはプルトニウムの硝酸塩、またはランタノイド金属の硝酸塩などの金属酸化化合物が使用される。金属酸化化合物は、水溶液に溶解され、金属含有塩溶液を形成する。様々な実施形態において、金属酸化化合物は、UO3、U3O8、またはUO2(NO3)2などのウラン化合物である。また、塩溶液は、尿素及びHMTAを含んでもよい。様々な実施形態において、塩溶液は、水、UO3、及びHNO3又はUO2(NO3)2のいずれかを含む非酸性硝酸ウラニル溶液であってよい。尿素は、低温で金属イオンと反応し、UO2(NH2CO)2
+2などの未熟なゲル化を抑制する錯体を形成する。
【0050】
非水系駆動流体は、50℃~90℃、50℃~80℃、55℃~75℃、55℃~70℃、または約60±5℃の温度に加熱してもよい。硝酸ウラニル溶液の場合、塩溶液が管12から排出され駆動流体に接触することで、金属イオンと尿素の錯体が分離してUO2
+2が形成されることがある。これと同時に、HMTAが分解して、水酸化アンモニウムとホルムアルデヒドを生成する。HMTAの分解によって生成された水酸化アンモニウムは、ウラン酸化物種を中和反応させ、ノズル1内において、球状ゲル粒子3としての金属イオンポリマー(UO2(OH))n
+nの形成を促進させる。
【0051】
ケーブル13および14を介したセンサー4および5の入力に基づき、CPU10は、
図4に示すように、金属酸化物ゲル粒子の平均径を調整するための制御システムを制御する。CPUは、ゲル粒子がセンサー4および5の間の第1の距離x1を移動する第1の通過時間(ΔT)を規定するセンサー4及び5からのデータを受信する。
図4のステップ15において、金属酸化物ゲル粒子が距離x1を移動する時間ΔTから式(5)を用いて粒子速度が計算され、粒子速度から式(6)を用い、駆動流体の流れの断面積を乗じて体積流量が決定される。このことによって、通過時間ΔTは、体積流量に換算される。
【0052】
図4のステップ16において、粒子体積を決定するために、
図1に示す金属酸化物ゲル粒子の径m1が、ステップ13で算出した体積流量に、
図4に描いた期間Pを乗じることで算出される。
【0053】
図4のステップ17において、算出された粒子径m
1と所望の粒子径m
2とを比較することができる。m
1=m
2であれば(ステップ18)、ノズル1内の粒子ゲル化の条件に変化なく、解析が終了する(ステップ19)。m
1>m
2であれば(ステップ20)、ゲル粒子が大きすぎるため、CPUは
図1の管1内の駆動流体と管12内の塩溶液の相対流量を調節する。塩溶液の流量Aと流量Aおよび駆動流体の流量Bの総流量との比を小さくすることで(例えば、駆動流体の流量に対する塩溶液の流量を小さくすること(ステップ20a)で)、
図1のノズル1内の2つの液間のせん断が大きくなり、駆動流体中に分散する塩溶液の粒子の径を小さくすることができる。
【0054】
m1<m2であれば(ステップ21)、ゲル粒子が小さすぎるため、塩溶液の流量Aと流量Aおよび駆動流体の流量Bの総流量との比を増やすことで(例えば、駆動流体の流量に対する塩溶液の流量を増やすこと(ステップ20a)で)、CPUは、駆動流体中に分散する塩溶液の粒子を大きくする。
【0055】
図5は、
図1の装置を、CPU10と組み合わせて、そのユーザーがゲル粒子3の径を調整することを可能にするシステムの一部分を示す図である。
図5には、矢印Aで示された流路に駆動流体を第1の流量で搬送するように構成された管1と、矢印Bで示された流路に金属塩溶液を第2の流量で搬送するように構成された管12が示されている。管12の出口は、管1の流路内に設けられる(管1および12は、
図5のシステムにおいては同軸であるが、
図1においては直角であることに留意されたい)。駆動流体は、ポンプ22によって管1aから管1へ送られる。塩溶液は、ポンプ23によって管12aから管12に送られる。センサー4および5からのデータは、ケーブル13および14を介してCPU10に伝わり、
図4を参照するように、ノズル1内の流れの体積流量、粒子体積および粒子直径を計算することができる。計算されたゲル粒子径m1が所望の粒子径m2と略同一でない場合、CPUはケーブル24及び25を介してポンプ22及び23に信号を送り、ポンプ22及び23の相対速度を変化させる。d1>x1であれば、ゲル粒子が大きすぎるので、CPUは、ポンプ22の動力を上げるか、ポンプ21の動力を下げるか、あるいはその両方を行うことにより、
図1のノズル1内の駆動流体とノズル2内の塩溶液の相対流量を変化させる。d1<x1の場合、ゲル粒子が小さすぎるため、CPUは、ポンプ22の動力を下げるか、ポンプ23の動力を上げるか、あるいはその両方を行うことにより、駆動流体と塩溶液との相対的な流量を減少させる。したがって、CPUは、駆動流体と塩溶液の相対流量を操作し、塩溶液がノズル2を出て駆動流体に接触した後の駆動流体と塩溶液とのせん断の度合いを制御する。せん断が大きくなることで、塩溶液は小さな液滴になり、せん断が小さくなることで、塩溶液は大きな液滴になる。
【0056】
実施例 1:流量の操作によるゲル粒子径の制御
濃度1.3Mの非酸性硝酸ウラニル溶液は、UO
2(NO
3)
2を基準に調製された。この溶液は、1.7Mの尿素と1.7MのHMTAを含み、約1.2cPの粘度を有していた。塩溶液は、0℃~5℃の温度で
図1による装置の管12にポンプで送られた。塩溶液、すなわちブロスは、
図6に見られるように、概ね0.5mL/minと1.5mL/minとの間の流速で管12から排出された。その後、塩溶液は駆動流体用の管1に導入された。
【0057】
駆動流体は、
図1の装置の管1内に送られた。駆動流体は、0℃~5℃の初期温度において粘度が100cPのシリコーンオイルである。駆動流体の流量は、
図6を参照するように、総流量が概ね1.3mL/min~2.25mL/minの範囲を維持するように制御した。駆動流体および塩溶液が管1に導入されると、管1の内容物は約56℃の温度に加熱され、硝酸ウラニルのゲル化を引き起こすHMTAによって塩溶液の熱ゲル化を誘導するので、酸化ウラニウムゲル粒子を形成する。
【0058】
データは
図1に沿った装置を用いて記録した。ノズル1の直径は1mmである。
図1を参照すると、センサー4と5との間の距離x
1は、6.35mmであった。それぞれのセンサー4および5における光ファイバー間の距離(例えばセンサー4におけるファイバー6と7との間の距離)は、3.2mmであった。それぞれの光ファイバーセンサー6、7、8、9は、直径が1.6mmであった。光ファイバーセンサーを通過するゲル球を検出するために、680nmの波長を有する赤色光を使用した。
【0059】
図6に示すように、最初の試験において、駆動流体と塩溶液の流量をプロセッサによって時間の関数として記録した。また、プロセッサは、駆動流体の流れ中のゲル粒子の期間Pと周波数Fを記録した。加熱された駆動流体によって引き起こされたHMTAの分解による熱ゲル化によって、酸化ウラニウムゲル粒子が生成された。ゲル粒子の体積は、期間Pと総流量の関数として、式(8)により算出した。プロセッサは、焼結に伴うゲル粒子の体積が65%減少することを想定して、焼結した酸化ウラン粒子の体積と直径を計算するように構成した。
図6に示すように、焼結した酸化ウラニウム粒子またはカーネルの計算された直径を、時間の関数としてプロットした。
図6及び表1に示すように、総流量及び塩溶液の流量を操作することにより、ゲル粒子を焼結して生成されるカーネル粒子の直径が変化することが明らかになった。
【0060】
【0061】
流量比Flow/Flow
Mをカーネル径の関数としてプロットすると、
図7に示すように、0.3<Flow/Flow
M<0.8、または0.4<Flow/Flow
M<0.75のときにおいて、流量比Flow/Flow
Mへの線形依存がカーネル径に見られた。したがって、金属イオン溶液の流量と総流量の比率を操作することで、カーネル径を制御できることが明らかになった。
【0062】
様々な例示的な実施形態が、その特定の例示的な態様を特に参照して詳細に説明されてきたが、本発明は他の実施形態が可能であり、その詳細は様々な明白な点での修正が可能であることが理解されるべきである。当業者には容易に明らかなように、本発明の精神(spirit)及び範囲内に留まりながら、変形及び修正の影響を受けることが可能である。したがって、前述の開示、説明、および図は、説明のためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明を決して限定するものでない。