(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】パーティクルボード及びパーティクルボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20240809BHJP
B27N 3/06 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/06 A
(21)【出願番号】P 2023147940
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】福井 杜史之
(72)【発明者】
【氏名】平田 一紘
(72)【発明者】
【氏名】三田野 竣太
(72)【発明者】
【氏名】久保 耕平
(72)【発明者】
【氏名】大島 克仁
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-293706(JP,A)
【文献】特開2022-163565(JP,A)
【文献】特開2016-179625(JP,A)
【文献】特開2017-177559(JP,A)
【文献】特開2014-151599(JP,A)
【文献】特開2015-157456(JP,A)
【文献】特開2010-234716(JP,A)
【文献】特開昭60-219007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 3/02
B27N 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の木質片が集合状態で接着一体化されたパーティクルボードであって、
上記多数の木質片は、
最大粒径が0.5mm以上5mm以下の粒状の多数の木質粉砕片と、厚さが0.05
mm以上0.35mm
以下の多数の
薄片状の木質切削片とを混合したものである
ことを特徴とするパーティクルボード。
【請求項2】
多数の木質片が集合状態で接着一体化されたパーティクルボードの製造方法であって、
第1木質素材を粒状に粉砕することにより、多数の木質粒状片を作製する第1粉砕工程と、
上記多数の木質粒状片、又は該多数の木質粒状片を大小2種類の篩を用いて分級する第1分級工程によって得られる最大粒径が0.5mm以上5mm以下の第1木質粒状片を木質粉砕片として選択する第1選択工程と、
第2木質素材を表面に繊維が直線状に表れるように切削して厚さが0.05mm以上0.35mm以下の多数の木質薄片を作製する切削工程と、
上記多数の木質薄片、該多数の木質薄片を繊維方向に沿って割れるように粉砕する第2粉砕工程によって作製される細長形状の多数の木質小薄片、又は該多数の木質小薄片を大小2種類の篩を用いて分級する第2分級工程によって得られる多数の第1~第3木質小薄片の少なくとも1種類を木質切削片として選択する第2選択工程と、
上記第1選択工程で選択された多数の上記木質粉砕片と上記第2選択工程で選択された多数の上記木質切削片とを混合して上記多数の木質片とする木質片混合工程と、
上記多数の木質片に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
接着剤が塗布された上記多数の木質片を堆積させてマットを形成するマットフォーミング工程と、
上記マットに熱圧プレス処理を施して上記マットの接着剤を硬化させることにより、上記パーティクルボードを形成する熱圧工程とを備えている
ことを特徴とするパーティクルボードの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパーティクルボードの製造方法において、
上記切削工程と上記第2粉砕工程と上記第2分級工程とは、上記多数の第1木質小薄片を集合状態で接着一体化してなる木質ボードの製造方法が備えるものであり、
上記第2選択工程では、上記第1~第3木質小薄片の少なくとも1種類を上記木質切削片として選択する
ことを特徴とするパーティクルボードの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパーティクルボードの製造方法において、
上記第2選択工程では、上記第1木質小薄片以外の上記第2木質小薄片及び第3木質小薄片を上記木質切削片として選択する
ことを特徴とするパーティクルボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクルボード及びパーティクルボードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラワン合板等の南洋材合板が広く利用されている。しかし、近年、南洋材合板は、原料の枯渇や環境破壊防止の点で入手自体が難しくなりつつあり、他の木質ボードへの置き換えが図られている。
【0003】
特許文献1には、木材を粉砕した木質粉砕片に接着剤を付着させたものをマット状に堆積させ、熱盤で熱圧締することによって成形されたパーティクルボードを、合板の代替材料として用いることが開示されている。パーティクルボードは、廃材や再生材等を利用でき、また、芯層と表層とで用いる木質粉砕片のサイズを変えることで木材を無駄なく利用できることから、比較的安価に形成できる点で、合板の代替品として優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、曲げ強度を確保するために、比較的大きな木質粉砕片でパーティクルボードを構成すると、表面性(平滑度)が低下する虞がある。逆に、表面性(平滑度)を低下させないために、比較的細かい木質粉砕片でパーティクルボードを構成すると、曲げ強度を確保するために、木質粉砕片の密度を高め且つ多量の接着剤を用いる必要があり、コスト及び重量が増大する虞がある。また、パーティクルボードには、ビス引き抜き強度が低く、ビス施工される耐力下地面材として用いることができず、また、耐水性及び吸湿による寸法安定性に欠けるという問題もあった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボードをコスト及び重量を増大させることなく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、単層のパーティクルボードに厚さが極めて薄い多数の木質切削片を含ませることとした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、多数の木質片が集合状態で接着一体化されたパーティクルボードを前提とするものである。
【0009】
そして、第1の発明は、上記多数の木質片は、多数の木質粉砕片と、厚さが0.05~0.35mmの多数の木質切削片とを混合したものであることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、木質粉砕片とは、木質素材を粉砕することによって形成される粒状の木質片のことをいい、木質切削片とは、木質素材を切削することによって形成される薄片状の木質片のことをいう。
【0011】
第1の発明では、多数の木質粉砕片と、厚さが0.05~0.35mmの極めて薄い多数の木質切削片とが混合されてなる多数の木質片で、パーティクルボードを構成することとしている。このようにパーティクルボードに、通常含まれる木質粉砕片だけでなく、厚さが0.05~0.35mmと極めて薄い木質切削片を含ませることにより、パーティクルボードの曲げ強度が増大する。そのため、パーティクルボードの曲げ強度を確保するために、木質片の密度を高めたり、多量の接着剤を用いたりする必要がない。また、多数の木質片が、粒状の木質粉砕片のみで構成される場合に比べて、薄片状の木質切削片が介在することにより、少量の接着剤で木質片どうしが接着し易くなる。そのため、第1の発明に係るパーティクルボードによれば、従来並みの曲げ強度を確保しつつ、接着剤の使用量を低減することができる。
【0012】
また、第1の発明に係るパーティクルボードによれば、粒状の木質粉砕片間の隙間に、厚さが0.05~0.35mmと極めて薄い木質切削片が入り込むことにより、表面に凹凸が生じ難い。特に、パーティクルボードの表面において、薄片状の木質切削片が折り重なれば、表面がより平滑になり、表面性(平滑度)に優れたものとなる。
【0013】
また、第1の発明に係るパーティクルボードによれば、粒状の木質粉砕片に比べて面積が大きい多数の薄い木質切削片を含むため、粒状の木質粉砕片のみで構成された従来のパーティクルボードに比べて、ビスが抜け難くなる。従って、第1の発明に係るパーティクルボードによれば、木質切削片を全体に含ませることにより、全体が補強され、ビス引き抜き強度(木ネジ保持力)が著しく向上するため、ビス施工される耐力下地面材に適したものとなる。
【0014】
また、第1の発明に係るパーティクルボードによれば、粒状の木質粉砕片のみでは間に大きな隙間が数多く形成されるところ、混ぜ込まれた薄片状の木質切削片がこの隙間に入り込むことにより、隙間が小さくなり、少なくなる。よって、第1の発明に係るパーティクルボードは、粒状の木質粉砕片のみで構成された従来のパーティクルボードに比べて、水分が内部に浸入し難くなり、耐水性に優れる。
【0015】
また、粒状の木質粉砕片のみで構成された従来のパーティクルボードでは、プレス成形時に木質粉砕片が押しつぶされることにより、水分が内部に浸入した際に水分を吸収し易くなり、寸法変化(長さ・厚さの変化)が大きくなる虞がある。これに対し、第1の発明に係るパーティクルボードによれば、上述のように、従来のパーティクルボードに比べて、水分が内部に侵入し難い構造であるため、水分を吸収して寸法(長さ・厚さ)が大きく変化することもない。
【0016】
以上により、第1の発明によれば、表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボードをコスト及び重量を増大させることなく提供することができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、上記木質切削片は、木質素材を切削してなる厚さが0.05~0.35mmの多数の木質薄片を粉砕してなる多数の木質小薄片のうち、分級によって選別された多数の第1木質小薄片を集合状態で接着一体化してなる木質ボードの形成時に、上記木質素材から生成されるものであることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明は、第2の発明において、上記木質切削片は、上記木質小薄片であって、分級によって上記第1木質小薄片を選別する前のものであることを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明は、第2の発明において、上記木質切削片は、上記木質小薄片のうち、分級によって選別された上記第1木質小薄片以外のものであることを特徴とするものである。
【0020】
第2~第4の発明では、木質切削片を、他の木質ボードを形成するために木質素材を加工した際に生成されるものを用いることとしている。そのため、通常のパーティクルボードに用いる材料(木質粉砕片)と異なる材料(木質切削片)を用いることとしても、他の木質ボードの材料加工時に生成されるものを異なる材料として用いるため、容易に調達できる。従って、第2~第4の発明によれば、表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボードを容易に且つ比較的安価に提供することができる。
【0021】
特に、第4の発明では、木質切削片として、木質小薄片を分級して選別された第1木質小薄片以外のもの(第2木質小薄片及び第3木質小薄片)を用いることとしている。このように、他の木質ボードの形成時に生じた他の木質ボードには用いない廃材を、パーティクルボード用の木質切削片として利用することにより、パーティクルボードをより安価に形成することができる。また、他の木質ボードの木質素材を余すことなく用いることとなるため、木質資源の有効活用に繋がる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した如く、本発明によると、単層のパーティクルボードに厚さが極めて薄い多数の木質切削片を含ませることとしたため、表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボードをコスト及び重量を増大させることなく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るパーティクルボードの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、木質粉砕片の作製過程を示す図である。
【
図3】
図3は、木質切削片の作製過程を示す図である。
【
図4】
図4は、第1木質小薄片を概略的に示す拡大斜視図である。
【
図5】
図5は、パーティクルボードの製造工程を示す図である。
【
図6】
図6は、熱圧工程前のマットと熱圧工程後に形成されるパーティクルボードとを比較して示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
《発明の実施形態1》
-パーティクルボードの構成-
図1は、本発明の実施形態1に係るパーティクルボード10を示す。パーティクルボード10は、例えば、床材等の建材の下地材や家具の構成材等として用いることができるものである。
【0026】
パーティクルボード10は、多数の木質片1,…,1が集合状態で接着一体化されたものである。パーティクルボード10には、多数の木質片1,…,1と接着剤とが含まれている。本発明の特徴は、パーティクルボード10の構成材料(木質片1)にあり、厚さや密度は特に限定されるものではないが、パーティクルボード10は、例えば、厚さ3mm以上25mm以下、密度500kg/m3以上800kg/m3以下となるように構成されている。
【0027】
<木質片>
本実施形態1では、パーティクルボード10を構成する多数の木質片1,…,1は、多数の木質粉砕片2,…,2と、多数の木質切削片3,…,3とを混合したものである。木質粉砕片2,…,2は、従来のパーティクルボードにおいて木質片として用いるものであり、木質切削片3,…,3は、後述する他の木質ボード50の構成材料として用いるものである。つまり、本実施形態1では、従来のパーティクルボードで用いる木質粉砕片2,…,2に、他の木質ボード50の構成材料として用いる木質切削片3,…,3を混合したものを多数の木質片1,…,1として用いている。木質切削片3,…,3は、木質片1,…,1の総重量に対し、10~90重量%の割合で混合されている。
【0028】
[木質粉砕片]
図2に示すように、木質粉砕片2,…,2は、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の既知の粉砕装置(チッパー)により、木質素材Aを粒状に粉砕することによって得られる。本実施形態1のパーティクルボード10では、
図2に示すように、木質素材Aを粉砕した木質粒状片2a,…,2aを、大小2種類の篩を用いて分級し、分級によって選別された第1木質粒状片2b,…,2bを、木質粉砕片2,…,2として用いている。第1木質粒状片2b,…,2bとして、例えば、粒径(最大径)が0.5mm以上5mm以下の粒状片が選別される。
【0029】
なお、パーティクルボード10に用いる木質粉砕片2,…,2は、第1木質粒状片2b,…,2bに限られない。分級により、2種類の篩の両方を通過した第1木質粒状片2b,…,2bよりも細かい第2木質粒状片2c,…,2cや、2種類の篩の両方を通過しない第1木質粒状片2b,…,2bよりも粗い第3木質粒状片2d,…,2dを、木質粉砕片2,…,2として用いてもよい。また、分級前の木質粒状片2a,…,2aを、木質粉砕片2,…,2として用いてもよく、木質粒状片2a,…,2a、第1木質粒状片2b,…,2b、第2木質粒状片2c,…,2c及び第3木質粒状片2d,…,2dの全て、いずれか2つ又はいずれか3つを組み合わせて木質粉砕片2,…,2として用いることとしてもよい。つまり、木質粒状片2a,…,2a、第1木質粒状片2b,…,2b、第2木質粒状片2c,…,2c及び第3木質粒状片2d,…,2dの少なくとも1種類を、木質粉砕片2,…,2として用いることができる。
【0030】
また、
図2に示すように、第1木質粒状片2b,…,2bよりも粗い第3木質粒状片2d,…,2dは、木質粉砕片2,…,2として用いずに、チッパー装置に戻し、再度粉砕することとしてもよい。
【0031】
木質素材Aの樹種は特に限定されず、いかなる樹種でも木質素材Aとして用いることができる。例えば、スギ、ヒノキ、ベイマツ等のファー材、アカシア、アスペン、ポプラ、パイン系(ハードパイン、ソフトパイン、ラジアータパイン等)、バーチ、ゴム(ゴムの木)等を木質素材Aとして用いることができる。また、トドマツ、カラマツ、エゾマツ、サワラ、ヒバ、カヤ、栂、槙、種々の松、桐、楓、樺(白樺)、椎、ブナ、樫、樅、櫟、楢、楠、ケヤキ等の国産材や、米ヒノキ、米ヒバ、米杉、米樅、スプルース、米栂、レッドウッド等の北米材、アガチス、ターミナリア、ラワン、メランチ、ジュンコン、カメレレ、カランパヤン、アンベロイ、メリナ、チーク、アピトン、センゴンラウト等の南洋材や、バルサ、セドロ、マホガニー、リグナムバイタ、アカシアマンギューム、地中海松、コウリャン、カメレレのような他の外材等も、木質素材Aとして用いることができる。また、丸太や間伐材等の原木だけでなく、建築現場等で発生する端材や廃材、廃パレット材、再生材等を木質素材Aとして用いてもよい。
【0032】
[木質切削片]
木質切削片3,…,3は、本発明に係るパーティクルボード10とは異なる木質ボード50の形成時に、木質素材Bから生成されるものである。木質ボード50は、
図3に示すように、木質素材Bを既知の切削装置(ストランダー)によって切削してなる厚さが0.05~0.35mmの多数の木質薄片3a,…,3aを、既知の粉砕装置でさらに粉砕して多数の木質小薄片3b,…,3bを形成し、さらに、これを大小2種類の篩を用いて分級し、分級によって選別された第1木質小薄片3c,…,3cを集合状態で接着一体化したものである。
【0033】
本実施形態1のパーティクルボード10では、上記木質ボード50を形成する際に、木質素材Bを切削してなる厚さが0.05~0.35mmの多数の木質薄片3a,…,3aをさらに粉砕してなる多数の木質小薄片3b,…,3bを、木質切削片3,…,3として用いることができる。
【0034】
木質薄片3aの厚さtは0.05mm以上0.35mm以下であり、好ましくは0.10mm以上0.30mm以下、より好ましくは0.15mm以上0.25mm以下、さらに好ましくは0.15mm以上0.20mm以下である。上記木質薄片3aの厚さtは平均値である。木質小薄片3bは、木質薄片3aを粉砕したものであるため、木質小薄片3bも木質薄片3aの厚さtに等しいものとなる。
【0035】
木質ボード50の形成に用いる第1木質小薄片3cについて詳述する。
図4に拡大して示すように、第1木質小薄片3cは、導管や仮導管等による繊維aに沿った方向の繊維方向寸法d1が、繊維方向と直交する方向の繊維直交方向寸法d2よりも長い細長形状(短冊形状)である。繊維方向寸法d1を長さとし、繊維直交方向寸法d2を幅とすると、長さd1は40mm以下、好ましくは35mm以下、より好ましくは30mm以下、より一層好ましくは25mm以下、さらに好ましくは10mm以上20mm以下である。また、幅d2は35mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは0.5mm以上5mm以下である。第1木質小薄片3cの長さd1及び幅d2はいずれも平均値とする。
【0036】
このような厚さ、形状、大きさの第1木質小薄片3c,…,3cは、上述したように、適宜選択した大小2種類の篩を用いて、多数の木質小薄片3b,…,3bを分級することにより選別される。この分級により、多数の第1木質小薄片3c,…,3cが選別される他、2種類の篩の両方を通過した第1木質小薄片3c,…,3cよりも細かい第2木質小薄片3d,…,3d、及び2種類の篩の両方を通過しない第1木質小薄片3c,…,3cよりも粗い第3木質小薄片3e,…,3eも得られる。
【0037】
なお、本実施形態1では、上述したように、粉砕後分級前の多数の木質小薄片3b,…,3bを、木質切削片3,…,3としてパーティクルボード10に用いることができる。しかしながら、パーティクルボード10を構成する木質切削片3,…,3は、木質小薄片3b,…,3bに限られない。木質ボード50に用いる第1木質小薄片3c,…,3cや、木質ボード50に用いられない第2木質小薄片3d,…,3d及び第3木質小薄片3e,…,3eを、パーティクルボード10を構成する木質切削片3,…,3として用いてもよい。また、切削後粉砕前の木質薄片3a,…,3aを木質切削片3,…,3として用いてもよく、木質薄片3a,…,3a、木質小薄片3b,…,3b、第1木質小薄片3c,…,3c、第2木質小薄片3d,…,3d及び第3木質小薄片3e,…,3eの全て、いずれか2つ、3つ又は4つを組み合わせて木質切削片3,…,3として用いることとしてもよい。つまり、木質薄片3a,…,3a、木質小薄片3b,…,3b、第1木質小薄片3c,…,3c、第2木質小薄片3d,…,3d及び第3木質小薄片3e,…,3eの少なくとも1種類を、木質切削片3,…,3として用いることができる。
【0038】
木質素材Bの樹種は特に限定されず、いかなる樹種でも木質素材Bとして用いることができる。例えば、スギ、ヒノキ、ベイマツ等のファー材、アカシア、アスペン、ポプラ、パイン系(ハードパイン、ソフトパイン、ラジアータパイン等)、バーチ、ゴム(ゴムの木)等を木質素材Bとして用いることができる。また、トドマツ、カラマツ、エゾマツ、サワラ、ヒバ、カヤ、栂、槙、種々の松、桐、楓、樺(白樺)、椎、ブナ、樫、樅、櫟、楢、楠、ケヤキ等の国産材や、米ヒノキ、米ヒバ、米杉、米樅、スプルース、米栂、レッドウッド等の北米材、アガチス、ターミナリア、ラワン、メランチ、ジュンコン、カメレレ、カランパヤン、アンベロイ、メリナ、チーク、アピトン、センゴンラウト等の南洋材や、バルサ、セドロ、マホガニー、リグナムバイタ、アカシアマンギューム、地中海松、コウリャン、カメレレのような他の外材等も、木質素材Bとして用いることができる。また、丸太や間伐材等の原木だけでなく、建築現場等で発生する端材や廃材、廃パレット材、再生材等を木質素材Bとして用いてもよい。
【0039】
以上のような木質粉砕片2,…,2と木質切削片3,…,3とを混合することにより、パーティクルボード10を構成する多数の木質片1,…,1が構成されている。
【0040】
木質片1(木質粉砕片2、木質切削片3)の物性に関し、その密度は好ましくは250kg/m3以上、より好ましくは300kg/m3以上であり、また好ましくは800kg/m3以下、より好ましくは500kg/m3以下、さらに好ましくは400kg/m3以下である。密度が250kg/m3未満であると、同密度・同曲げ強度のパーティクルボード10を形成するために必要なマットの厚さが大きくなるとともに、プレス成形工程での熱圧プレス処理に係るプレス圧を高める必要がある。また、木質片1の密度は、800kg/m3を超えてもよいが、そのような木質片1を容易に得ることは難しい。すなわち、800kg/m3を超える木質片1を容易に得ることができるのであれば、密度の上限値は800kg/m3に限定されず、さらに高い値であってもよい。
【0041】
また、木質片1(木質粉砕片2、木質切削片3)の含水率は、2%以上20%以下であることが好ましく、2%以上8%以下であることがより好ましい。含水率が2%未満の場合、プレス成形工程での熱圧プレス処理において軟化に時間がかかってプレス時間が長くなり、曲げ強度が下がる虞がある。一方、木質片1の含水率が20%を超えると、同熱圧プレス処理において加熱・圧縮に時間がかかり、さらには接着剤の硬化が阻害されて曲げ強度が下がる虞がある。
【0042】
<接着剤>
パーティクルボード10に用いる接着剤は、熱硬化型接着剤であれば特に限定されない。例えば、イソシアネート系の接着剤を用いることができる。また、その他、フェノール樹脂、ユリア樹脂やメラミン樹脂等のアミン系接着剤や、天然系接着剤等も用いることができる。接着剤は、堆積前の木質片1,…,1に塗布され、木質片1,…,1を堆積させたマットを熱圧プレスする際に硬化する。これにより、多数の木質片1,…,1が集合状態で接着一体化される。
【0043】
-パーティクルボードの製造方法-
次に、パーティクルボード10の製造方法について説明する。
図5に示すように、パーティクルボード10の製造方法は、木質片作製工程S1と、接着剤塗布工程S2と、マットフォーミング工程S3と、熱圧工程S4とを備えている。
【0044】
<木質片作製工程S1>
木質片作製工程S1は、木質粉砕片作製工程S11と、木質切削片作製工程S12と、木質片混合工程S13とを備えている。
【0045】
[木質粉砕片作製工程S11]
木質粉砕片作製工程S11は、材料準備工程S111と、粉砕工程S112と、分級工程S113とを備えている。
【0046】
(材料準備工程S111)
まず、木質素材Aを準備する。丸太や間伐材等の原木を用いる場合、短くカットして樹皮を除去して木質素材Aとする。建築現場等で発生する端材や廃材、廃パレット材、再生材等を用いる場合、短くカットして木質素材Aとする。
【0047】
(粉砕工程S112)
次に、準備した木質素材Aを、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の既知の粉砕装置(チッパー)により、粒状に粉砕する。木質素材Aを粉砕することにより、木質粒状片2a,…,2aが得られる。
【0048】
(分級工程S113)
粉砕によって得られた木質粒状片2a,…,2aを、大小2種類の篩を用いて3種類のサイズに分級する。具体的には、木質粒状片2a,…,2aは、目の粗い篩は通過し、目の細かい篩は通過しない所望の粒径(例えば、0.5mm以上5mm以下)の第1木質粒状片2b,…,2bと、2種類の篩の両方を通過した第1木質粒状片2b,…,2bよりも細かい第2木質粒状片2c,…,2cと、2種類の篩の両方を通過しない第1木質粒状片2b,…,2bよりも粗い第3木質粒状片2d,…,2dとに分ける。このように分級して選別した第1木質粒状片2b,…,2bを、木質粉砕片2,…,2とする。
【0049】
[木質切削片作製工程S12]
木質切削片作製工程S12は、材料準備工程S121と、切削工程S122と、粉砕工程S123とを備えている。なお、上述したように、本実施形態1では、木質ボード50の形成時に生じる木質小薄片3b,…,3bを、木質切削片3,…,3として用いる。そのため、木質切削片作製工程S12は、木質ボード50の製造方法の一部の工程である。
【0050】
(材料準備工程S121)
まず、木質素材Bを準備する。丸太や間伐材等の原木を用いる場合、短くカットして樹皮を除去して木質素材Bとする。建築現場等で発生する端材や廃材、廃パレット材、再生材等を用いる場合、短くカットして木質素材Bとする。
【0051】
(切削工程S122)
次に、準備した木質素材Bを、外刃型や内刃型の既知の切削装置(ストランダー)により、切削して多数の所望の厚さtの木質薄片3a,…,3aを形成する。具体的には、切削装置に木質素材Bを送り込む方向及び速度を調節し、表面に繊維aが直線状に表れた所望の厚さtの多数の木質薄片3a,…,3aを形成する。
【0052】
なお、この切削工程S122において、厚さtの木質薄片3a,…,3aを作製することにより、次の粉砕工程で得られる木質小薄片3b,…,3bの厚さが所望の厚さtとなる。
【0053】
(粉砕工程S123)
次に、切削によって得られた木質薄片3a,…,3aをハンマーや刃物(ナイフフレーカー)、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の既知の粉砕装置を用いて粉砕することにより、切削直後の大きさよりも小さくする。このとき、切削後木質薄片を繊維方向(長さ方向)に沿って割れるように幅方向に粉砕すると、細長形状の木質小薄片3b,…,3bを作ることができる。つまり、木質薄片3a,…,3aに繊維方向に直交する繊維直交方向に沿って力(衝撃)を加えると、割れ難くなるが、繊維方向に平行に沿って力を加えると、簡単に割れるようになる。木質薄片3a,…,3aがカールしていても、その粉砕により平面状に分割される。尚、木質薄片3a,…,3aに加える力の方向は上記の繊維方向に平行な方向に限定されない。木質薄片3a,…,3aに対してランダムな方向に力を加えると、通常、木質薄片3a,…,3aは力の弱い部分から割れていく(力の弱い方向に割れ易い)。木質薄片3a,…,3aの各繊維がつながる力(繊維直交方向の力)は繊維方向の力よりも圧倒的に弱いため、上記粉砕装置で木質薄片3a,…,3aをランダムな方向に粉砕すれば(力を加えると)、木質薄片3a,…,3aが繊維方向に沿って割れて繊維直交方向に短くなり、細長形状の木質小薄片3b,…,3bが得られる。
【0054】
また、木質薄片3a,…,3aに木材の節があったとしても、その節は他の部分よりも脆いので、粉砕により節が粉状になり、なくなる。
【0055】
このように切削工程S122のみの1段階ではなく、その後に粉砕工程S123を加えて2段階の加工工程を経由させることで、必要な大きさで節部分のない高強度の木質小薄片3b,…,3bを容易に製造することができる。
【0056】
[木質片混合工程S13]
木質片混合工程S13では、木質粉砕片作製工程で作製された多数の木質粉砕片2,…,2と、木質切削片作製工程で作製された多数の木質切削片3,…,3とを、所望の混合割合(木質片1,…,1の総重量に対する木質切削片3,…,3が、10~90重量%)となるように混合する。
【0057】
<接着剤塗布工程S2>
木質片作製工程S1において作製された多数の木質片1,…,1を、接着剤塗布装置に搬入して接着剤を塗布する。接着剤としては、例えば、イソシアネート系の接着剤を用いることができ、その他、フェノール樹脂、ユリア樹脂やメラミン樹脂等のアミン系接着剤、木質用天然物(タンニン)系接着剤等を用いてもよい。また、接着剤と共に、一般に使用される撥水剤を併用してもよい。
【0058】
<マットフォーミング工程S3>
マットフォーミング工程S3では、接着剤が塗布された多数の木質片1,…,1を、厚さ方向に集合させた状態で所定厚さ(高さ)になるまで堆積させ、木質片1,…,1のマット9を形成する(
図6の左側)。例えば、厚さ9mmのパーティクルボード10を形成する場合には、マット9の厚さ(高さ)は、90mm程度の厚さとなる。
【0059】
<熱圧工程S4>
マットフォーミング工程S3において形成されたマット9を、熱圧プレス装置に搬入して熱盤間にセットし、熱圧プレス装置により、マット9を所定の圧力及び温度で熱圧プレス処理して圧縮する。このとき、接着剤が硬化することにより、多数の木質片1,…,1が接着一体化される。その結果、
図6の右側に示すパーティクルボード10が形成される。
【0060】
このとき、
図6に示すように、上記例示した90mm程度の厚さのマット9は、例えば、9mmのパーティクルボード10に圧縮され、厚さが1/10まで圧縮される。熱圧プレス処理に係るプレス温度は、特に限定されないが、例えば160~220℃である。熱圧プレス処理に係るプレス圧は、例えば、2~4N/mm
2であり、プレス時間は、例えば、1.5~3分間である(例えば、厚さ1mm当たり10~20秒)。なお、プレス時間は、パーティクルボード10の厚さによって変動するものであり、1分未満で終了する場合もあれば、3分よりも長い時間を要する場合もある。また、熱圧プレス装置による熱圧プレス処理の前に、加熱装置による予備加熱処理を行ってもよい。
【0061】
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、多数の木質粉砕片2,…,2と、厚さが0.05~0.35mmの極めて薄い多数の木質切削片3,…,3とが混合されてなる多数の木質片1,…,1で、パーティクルボード10を構成することとしている。このようにパーティクルボード10に、通常含まれる木質粉砕片2,…,2だけでなく、厚さが0.05~0.35mmと極めて薄い木質切削片3,…,3を含ませることにより、パーティクルボード10の曲げ強度が増大する。そのため、パーティクルボード10の曲げ強度を確保するために、木質片1,…,1の密度を高めたり、多量の接着剤を用いたりする必要がない。また、多数の木質片1,…,1が、粒状の木質粉砕片2,…,2のみで構成される場合に比べて、薄片状の木質切削片3,…,3が介在することにより、少量の接着剤で木質片1,…,1どうしが接着し易くなる。そのため、本実施形態1のパーティクルボード10によれば、従来並みの曲げ強度を確保しつつ、接着剤の使用量を低減することができる。
【0062】
また、本実施形態1のパーティクルボード10によれば、粒状の木質粉砕片2,…,2間の隙間に、厚さが0.05~0.35mmと極めて薄い木質切削片3,…,3が入り込むことにより、表面に凹凸が生じ難い。特に、パーティクルボード10の表面において、薄片状の木質切削片3,…,3が折り重なれば、表面がより平滑になり、表面性(平滑度)に優れたものとなる。
【0063】
また、本実施形態1のパーティクルボード10によれば、粒状の木質粉砕片2,…,2に比べて面積が大きい多数の薄い木質切削片3,…,3を含むため、粒状の木質粉砕片のみで構成された従来のパーティクルボードに比べて、ビスが抜け難くなる。従って、本実施形態1のパーティクルボード10によれば、木質切削片3,…,3を全体に含ませることにより、全体が補強され、ビス引き抜き強度(木ネジ保持力)が著しく向上するため、ビス施工される耐力下地面材に適したものとなる。
【0064】
また、本実施形態1のパーティクルボード10によれば、粒状の木質粉砕片2,…,2のみでは間に大きな隙間が数多く形成されるところ、混ぜ込まれた薄片状の木質切削片3,…,3がこの隙間に入り込むことにより、隙間が小さくなり、少なくなる。よって、本実施形態1のパーティクルボード10は、粒状の木質粉砕片のみで構成された従来のパーティクルボードに比べて、水分が内部に浸入し難くなり、耐水性に優れる。
【0065】
また、粒状の木質粉砕片のみで構成された従来のパーティクルボードでは、プレス成形時に木質粉砕片が押しつぶされることにより、水分が内部に浸入した際に水分を吸収し易くなり、寸法変化(長さ・厚さの変化)が大きくなる虞がある。これに対し、本実施形態1のパーティクルボード10によれば、上述のように、従来のパーティクルボードに比べて、水分が内部に侵入し難い構造であるため、水分を吸収して寸法(長さ・厚さ)が大きく変化することもない。
【0066】
以上により、本実施形態1によれば、表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボード10をコスト及び重量を増大させることなく提供することができる。
【0067】
また、本実施形態1では、木質切削片3,…,3を、他の木質ボード50を形成するために木質素材Bを加工した際に生成されるものを用いることとしている。そのため、通常のパーティクルボードに用いる材料(木質粉砕片2,…,2)と異なる材料(木質切削片3,…,3)を用いることとしても、他の木質ボード50の材料加工時に生成されるものを異なる材料として用いるため、容易に調達できる。従って、本実施形態1によれば、表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボード10を容易に且つ比較的安価に提供することができる。
【0068】
特に、木質切削片3,…,3として、木質小薄片3b,…,3bを分級して選別された第1木質小薄片3c,…,3c以外のもの(第2木質小薄片3d,…,3d及び第3木質小薄片3e,…,3e)を用いる場合には、他の木質ボード50の形成時に生じた他の木質ボード50には用いない廃材を、パーティクルボード10用の木質切削片3,…,3として利用することとなるため、パーティクルボード10をより安価に形成することができる。また、他の木質ボード50の木質素材Bを余すことなく用いることとなるため、木質資源の有効活用に繋がる。
【0069】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、他の木質ボード50の材料加工時に生成される木質切削片を、木質切削片3,…,3として用いる例について説明したが、木質切削片3,…,3は、他の木質ボード50の材料加工時に生成されるものではなく、上述のパーティクルボード10を形成するために調達されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、パーティクルボード及びパーティクルボードの製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 木質片
2 木質粉砕片
3 木質切削片
3a 木質薄片
3b 木質小薄片
3c 第1木質小薄片
3d 第2木質小薄片(第1木質小薄片以外のもの)
3e 第3木質小薄片(第1木質小薄片以外のもの)
10 パーティクルボード
50 木質ボード
【要約】
【課題】表面性、曲げ強度、ビス引き抜き強度及び耐水性に優れ、寸法変化の小さいパーティクルボードをコスト及び重量を増大させることなく製造できるようにする。
【解決手段】パーティクルボード10を構成する多数の木質片1,…,1を、多数の木質粉砕片2,…,2と、厚さが0.05~0.35mmの多数の木質切削片3,…,3とを混合したものとする。
【選択図】
図1