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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/042 20060101AFI20240809BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240809BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20240809BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20240809BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
F15B11/042
F15B11/02 C
F15B11/17
F15B11/028 G
E02F9/22 R
E02F9/22 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023179314
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2019157819の分割
【原出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2023184576
(43)【公開日】2023-12-28
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】清水 自由理
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏政
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048899(JP,A)
【文献】特開2012-202219(JP,A)
【文献】特開平07-259140(JP,A)
【文献】特開2018-145985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられた作業装置と、
一対の入出口ポートを有する両傾転型の液圧ポンプである複数の閉回路ポンプと、
入口ポートおよび出口ポートを有する片傾転型の液圧ポンプである複数の開回路ポンプと、
前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプを駆動するエンジンと、
前記複数の閉回路ポンプに閉回路状に接続された複数の液圧アクチュエータと、
前記複数の開回路ポンプに開回路状に接続された複数の液圧モータと、
前記複数の開回路ポンプと前記複数の液圧モータとを接続する流路上に設けられ、前記複数の開回路ポンプから前記複数の液圧モータに供給される圧油の方向および流量を制御する複数の流量制御弁と、
前記複数の液圧アクチュエータおよび前記複数の液圧モータの各動作方向および各要求流量を指示するための操作装置と、
前記操作装置からの入力に応じて前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各傾転ならびに前記複数の流量制御弁の各開口を制御するコントローラと、
前記複数の液圧アクチュエータの各出入口圧を検出する複数の第1圧力センサと、
前記複数の開回路ポンプの各出口圧を検出する複数の第2圧力センサとを備えた建設機械において、
前記複数の液圧アクチュエータは、前記作業装置を駆動する片ロッドシリンダと、前記上部旋回体を駆動する旋回モータとを含み、
前記複数の液圧モータは、前記下部走行体を駆動する走行モータを含み、
前記コントローラは、
前記操作装置からの入力に応じた前記複数の液圧アクチュエータの各要求流量と、前記複数の第1圧力センサによって検出された前記複数の液圧アクチュエータの各出入口圧と、前記操作装置からの入力に応じた前記複数の開回路ポンプの各要求吐出流量と、前記複数の第2圧力センサによって検出された前記複数の開回路ポンプの各出口圧とに基づいて、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプが前記エンジンに要求するトルクである要求トルクを演算し、
前記走行モータ、前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータを同時に駆動している状態で、前記要求トルクの変化率である要求トルク変化率が所定の変化率を上回った場合に、前記走行モータに接続された前記複数の開回路ポンプが前記エンジンに要求するトルクが前記エンジンの許容出力トルクの所定の第1割合以下となるように前記走行モータの要求流量を制限し、
前記許容出力トルクから、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクと前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータに接続された複数の閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正である場合は、前記操作装置からの入力に基づいて前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータの要求流量を演算し、
前記許容出力トルクから、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクと前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータに接続された複数の閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正でない場合は、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクに対して前記旋回モータの要求トルクの割合が前記第1割合よりも小さい所定の第2割合以下となるように前記旋回モータの要求流量を制限して前記旋回モータの要求トルクを制限し、
前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクから、前記旋回モータの要求流量の制限により制限された前記旋回モータの要求トルクと前記片ロッドシリンダに接続された前記閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正の場合は、前記操作装置からの入力に基づいて前記片ロッドシリンダの要求流量を演算し、
前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクから、前記旋回モータの要求流量の制限により制限された前記旋回モータの要求トルクと前記片ロッドシリンダに接続された前記閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正でない場合は、前記走行モータ、前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータの要求速度比を維持したまま、前記許容出力トルク以下となるように前記片ロッドシリンダの要求流量を制限して前記片ロッドシリンダに接続される前記閉回路ポンプの吐出流量を制限する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記第1割合は、前記許容出力トルクの50%以下に設定されている
ことを特徴する建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記第2割合は、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクの25%以下に設定されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記建設機械が走行する地面の傾斜角度を検出する角度センサを備え、
前記コントローラは、前記角度センサによって検出された傾斜角度に応じて前記第1割合を変更する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ポンプで液圧アクチュエータを直接駆動する液圧回路を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルなどの建設機械において、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータを駆動させる油圧回路内の絞り要素を減らし燃料消費率を低減するために、油圧ポンプから作動油を油圧アクチュエータへ送り、油圧アクチュエータで仕事を行った作動油をタンクに戻さず油圧ポンプへ戻すように接続した油圧回路(以下、油圧閉回路)の開発が進められている。
【0003】
エンジンを原動力として油圧ポンプを駆動する場合、エンジンの出力を効果的に使用しつつ、過負荷でエンジンが停止しないようにエンジンにかかる負荷馬力を制御する必要がある。油圧ポンプの馬力制御に関する先行技術を開示するものとして、例えば特許文献1がある。
【0004】
特許文献1には、エンジンにより駆動される可変容量式の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから作動油が供給される複数のアクチュエータとを有する作業機械に設けられる制御装置であって、前記各アクチュエータに対する作動指令を入力するために操作を受ける入力部(操作レバー)と、前記各アクチュエータのうち操作対象となるアクチュエータとこのアクチュエータについてなされる操作の方向とによって特定される操作内容ごとに、その操作量と前記油圧ポンプの吸収馬力の上限値とを関連付けた馬力情報を記憶する記憶部と、前記入力部によって少なくとも一つのアクチュエータに対する作動指令が入力された場合に、前記記憶部に記憶された馬力情報を用いて各アクチュエータ毎に前記吸収馬力の上限値を決定する操作馬力決定部と、前記操作馬力決定部により決定された吸収馬力の上限値のうち最も大きな吸収馬力の上限値を選択する高位選択部と、前記高位選択部により選択された吸収馬力以下の馬力となるように前記油圧ポンプの容量を調整する容量調整部とを備え、前記記憶部に記憶された馬力情報のうち、少なくとも一つの操作内容に係る馬力情報は、前記入力部の操作量の変化に応じて吸収馬力の上限値が変化する特性を有することを特徴とする作業機械の制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010―276126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の作業機械の制御装置によれば、操作レバーの操作量及び操作方向に応じて油圧ポンプの吸収馬力の上限値が設定されることにより、エンジンの負荷を抑えてエンスト等の不具合を抑制することができる。しかし、操作レバーの操作速度やアクチュエータの負荷状態を考慮していないため、例えば以下のような課題が生じる。
【0007】
オペレータが操作レバーを高速で操作すると、操作対象となるアクチュエータに接続されている油圧ポンプの吐出流量が急速に増加すると共に、当該アクチュエータの負荷圧に応じて当該油圧ポンプがエンジンに要求するトルク(要求トルク)が急激に上昇する。このとき、要求トルクの上昇に対してエンジン出力トルクの上昇が間に合わず、要求トルクの絶対値がエンジンの最大定格トルクを下回っている場合であっても、エンジン回転数が停止または一時的に低下する現象(ラグダウン)が発生するおそれがある。特に、油圧ポンプでアクチュエータを直接駆動する油圧閉回路では、アクチュエータと油圧ポンプとの間に絞り要素が介在せず、アクチュエータの負荷が油圧ポンプに直接的に伝わるため、この傾向が顕著となる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、オペレータの操作内容やアクチュエータの負荷状態にかかわらず、エンジンのラグダウンを抑制できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられた作業装置と、一対の入出口ポートを有する両傾転型の液圧ポンプである複数の閉回路ポンプと、入口ポートおよび出口ポートを有する片傾転型の液圧ポンプである複数の開回路ポンプと、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプを駆動するエンジンと、前記複数の閉回路ポンプに閉回路状に接続された複数の液圧アクチュエータと、前記複数の開回路ポンプに開回路状に接続された複数の液圧モータと、前記複数の開回路ポンプと前記複数の液圧モータとを接続する流路上に設けられ、前記複数の開回路ポンプから前記複数の液圧モータに供給される圧油の方向および流量を制御する複数の流量制御弁と、前記複数の液圧アクチュエータおよび前記複数の液圧モータの各動作方向および各要求流量を指示するための操作装置と、前記操作装置からの入力に応じて前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプの各傾転ならびに前記複数の流量制御弁の各開口を制御するコントローラと、前記複数の液圧アクチュエータの各出入口圧を検出する複数の第1圧力センサと、前記複数の開回路ポンプの各出口圧を検出する複数の第2圧力センサとを備えた建設機械において、前記複数の液圧アクチュエータは、前記作業装置を駆動する片ロッドシリンダと、前記上部旋回体を駆動する旋回モータとを含み、前記複数の液圧モータは、前記下部走行体を駆動する走行モータを含み、前記コントローラは、前記操作装置からの入力に応じた前記複数の液圧アクチュエータの各要求流量と、前記複数の第1圧力センサによって検出された前記複数の液圧アクチュエータの各出入口圧と、前記操作装置からの入力に応じた前記複数の開回路ポンプの各要求吐出流量と、前記複数の第2圧力センサによって検出された前記複数の開回路ポンプの各出口圧とに基づいて、前記複数の閉回路ポンプおよび前記複数の開回路ポンプが前記エンジンに要求するトルクである要求トルクを演算し、前記走行モータ、前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータを同時に駆動している状態で、前記要求トルクの変化率である要求トルク変化率が所定の変化率を上回った場合に、前記走行モータに接続された前記複数の開回路ポンプが前記エンジンに要求するトルクが前記エンジンの許容出力トルクの所定の第1割合以下となるように前記走行モータの要求流量を制限し、前記許容出力トルクから、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクと前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータに接続された複数の閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正である場合は、前記操作装置からの入力に基づいて前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータの要求流量を演算し、前記許容出力トルクから、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクと前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータに接続された複数の閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正でない場合は、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクに対して前記旋回モータの要求トルクの割合が前記第1割合よりも小さい所定の第2割合以下となるように前記旋回モータの要求流量を制限して前記旋回モータの要求トルクを制限し、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクから、前記旋回モータの要求流量の制限により制限された前記旋回モータの要求トルクと前記片ロッドシリンダに接続された前記閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正の場合は、前記操作装置からの入力に基づいて前記片ロッドシリンダの要求流量を演算し、前記走行モータの要求流量の制限により制限された前記開回路ポンプの要求トルクを割り当てた後の前記許容出力トルクから、前記旋回モータの要求流量の制限により制限された前記旋回モータの要求トルクと前記片ロッドシリンダに接続された前記閉回路ポンプの要求トルクとを差し引いた値が正でない場合は、前記走行モータ、前記片ロッドシリンダおよび前記旋回モータの要求速度比を維持したまま、前記許容出力トルク以下となるように前記片ロッドシリンダの要求流量を制限して前記片ロッドシリンダに接続される前記閉回路ポンプの吐出流量を制限するものとする。
【0010】
以上のように構成した本発明によれば、閉回路ポンプおよび開回路ポンプがエンジンに要求するトルクの変化率である要求トルク変化率が所定の変化率を上回った場合に、閉回路ポンプおよび開回路ポンプの少なくとも1つの吐出流量が制限される。これにより、オペレータの操作内容や液圧アクチュエータの負荷状態にかかわらず、エンジンのラグダウンを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る建設機械によれば、オペレータの操作内容やアクチュエータの負荷状態にかかわらず、エンジンのラグダウンを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルに搭載された液圧駆動装置の概略構成図である。
図3図2に示すコントローラの機能ブロック図である。
図4図2に示す液圧駆動装置の走行単独動作時の挙動を示す図である。
図5図2に示すコントローラの走行単独動作時の処理を示すフローチャートである。
図6】一般的なターボ付きエンジンの負荷トルクとエンジン回転数との関係を示す図である。
図7図2に示す液圧駆動装置の走行+ブーム上げ複合動作時の挙動を示す図である。
図8A図2に示すコントローラの走行複合動作時の処理を示すフローチャート(1/3)である。
図8B図2に示すコントローラの走行複合動作時の処理を示すフローチャート(2/3)である。
図8C図2に示すコントローラの走行複合動作時の処理を示すフローチャート(3/3)である。
図9】本発明の実施の形態の変形例に係るコントローラの機能ブロック図である。
図10図2に示す液圧駆動装置の走行+ブーム上げ+旋回複合動作時の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0015】
図1において、油圧ショベル100は、走行モータ8a,8bによって駆動されるクローラ式の走行装置を装備した下部走行体101と、下部走行体101上に旋回可能に取り付けられ、旋回モータ7によって駆動される上部旋回体102と、上部旋回体102の前部に上下方向に回動可能に取り付けられた作業装置103とを備えている。上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ104が設けられている。
【0016】
作業装置103は、上部旋回体102の前部に上下方向に回動可能に取り付けられたブーム2と、ブーム2の先端部に上下または前後方向に回動可能に連結された作業部材としてのアーム4と、アーム4の先端部に上下または前後方向に回動可能に連結された作業部材としてのバケット6と、ブーム2を駆動する液圧シリンダであるブームシリンダ1と、アーム4を駆動する液圧シリンダであるアームシリンダ3と、バケット6を駆動する液圧シリンダであるバケットシリンダ5とを備えている。
【0017】
図2は、図1に示す油圧ショベル100に搭載された液圧駆動装置の概略構成図である。なお、説明の簡略化のため、図2では、ブームシリンダ1、旋回モータ7、および走行モータ8a,8bの駆動に関わる部分のみを示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0018】
動力源であるエンジン9は、動力を配分する動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、チャージポンプ11、および第1~第4の液圧ポンプ12~15が接続されている。
【0019】
第1および第2の液圧ポンプ12,13は、一対の入出力ポートを持つ傾転斜板機構と、傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ12a,13aとを備えている。
【0020】
第3および第4の液圧ポンプ14,15は、吐出ポートおよび吸込ポートを持つ傾転斜板機構と、傾転斜板の傾斜角を調整するレギュレータ14a,15aとを備えている。
【0021】
レギュレータ12a,13a,14a,15aは、コントローラ50からの信号により、第1~第4の液圧ポンプ12~15の傾転斜板の傾転角を調整する。
【0022】
第1および第2の液圧ポンプ12,13は、傾転斜板の傾転角を調整することにより、作動油の吐出方向と吐出流量を制御できる。第1および第2の液圧ポンプ12,13は、圧油の供給を受けることで液圧モータとしても機能する。
【0023】
第3および第4の液圧ポンプ14,15は、傾転斜板の傾転角を調整することにより、作動油の吐出流量を制御できる。
【0024】
第1の液圧ポンプ12の一対の入出力ポートには流路200,201が接続され、流路200,201には切換弁40,41が接続されている。切換弁40,41は、コントローラ50からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。切換弁40,41は、コントローラ50からの信号が無い場合は、遮断状態である。
【0025】
切換弁40は、流路210,211を介してブームシリンダ1に接続されている。コントローラ50からの信号により切換弁40が連通状態になると、第1の液圧ポンプ12は、流路200,201、切換弁40、および流路210,211を介してブームシリンダ1と接続し、閉回路を構成する。
【0026】
切換弁41は、流路215,216を介して旋回モータ7に接続されている。コントローラ50からの信号により切換弁41が連通状態になると、第1の液圧ポンプ12は、流路200,201、切換弁41、および流路215,216を介して旋回モータ7と接続し、閉回路を構成する。
【0027】
第2の液圧ポンプ13の一対の入出力ポートには流路202,203が接続され、流路202,203には切換弁42,43が接続されている。切換弁42,43は、コントローラ50からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。切換弁42,43は、コントローラ50からの信号が無い場合は、遮断状態である。
【0028】
切換弁42は、流路210,211を介してブームシリンダ1に接続されている。コントローラ50からの信号により切換弁42が連通状態になると、第2の液圧ポンプ13は、流路202,203、切換弁42、および流路210,211を介してブームシリンダ1と接続し、閉回路を構成する。
【0029】
切換弁43は、流路215,216を介して旋回モータ7に接続されている。コントローラ50からの信号により切換弁43が連通状態になると、第2の液圧ポンプ13は、流路202,203、切換弁43、および流路215,216を介して旋回モータ7と接続し、閉回路を構成する。
【0030】
第3の液圧ポンプ14の吐出ポートは、流路204を介してリリーフ弁21、切換弁44,45、および比例弁48に接続されている。第3の液圧ポンプ14の吸込ポートは、タンク25に接続されている。
【0031】
リリーフ弁21は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク25に逃がし回路を保護する。
【0032】
切換弁44,45は、コントローラ50からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ50からの信号が無い場合は、切換弁44,45は、遮断状態である。切換弁44は、流路210を介してブームシリンダ1のヘッド室1aに接続されている。切換弁45は、流路213を介して流量制御弁71a,71bに接続されている。
【0033】
比例弁48は、コントローラ50からの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ50からの信号が無い場合、比例弁48は最大開口面積に保持される。また、切換弁44,45が遮断状態の時、コントローラ50は、第3の液圧ポンプ14の吐出流量に応じてあらかじめ決めた開口面積となるように比例弁48に信号を出力する。
【0034】
第4の液圧ポンプ15の吐出ポートは、流路205を介してリリーフ弁22、切換弁46,47、および比例弁49に接続されている。第4の液圧ポンプ15の吸込ポートは、タンク25へ接続されている。
【0035】
リリーフ弁22は、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をタンク25に逃がし回路を保護する。
【0036】
切換弁46,47は、コントローラ50からの信号により、流路の連通と遮断を切り換える。コントローラ50からの信号が無い場合は、切換弁46,47は、遮断状態である。切換弁46は、流路210を介してブームシリンダ1のヘッド室1aに接続されている。切換弁47は、流路213を介して流量制御弁71a,71bに接続されている。
【0037】
比例弁49は、コントローラ50からの信号により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。コントローラ50からの信号が無い場合、比例弁49は最大開口面積に保持される。また、切換弁46,47が遮断状態の時、コントローラ50は、第4の液圧ポンプ15の吐出流量に応じてあらかじめ決めた開口面積となるように比例弁49に信号を出力する。
【0038】
チャージポンプ11の吐出ポートは、チャージラインとしての流路212を介して、チャージ用リリーフ弁20、およびチャージ用チェック弁26,27,28a,28b,36a,36bに接続されている。チャージポンプ11の吸込ポートは、タンク25に接続されている。チャージポンプ11は、流路212に圧油を供給する。
【0039】
チャージ用リリーフ弁20は、チャージ用チェック弁26,27,28a,28b,36a,36bのチャージ圧力を調整する。
【0040】
チャージ用チェック弁26は、流路200,201の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定した圧力下回った場合に、流路200,201にチャージライン212の圧油を補充する。
【0041】
チャージ用チェック弁27は、流路202,203の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定した圧力下回った場合に、流路202,203にチャージライン212の圧油を補充する。
【0042】
チャージ用チェック弁28a,28bは、流路210,211の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定した圧力下回った場合に、流路210,211にチャージライン212の圧油を補充する。
【0043】
チャージ用チェック弁36a,36bは、流路215,216の圧力がチャージ用リリーフ弁20で設定した圧力下回った場合に、流路215,216にチャージライン212の圧油を補充する。
【0044】
流路200,201に設けられたリリーフ弁30a,30bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0045】
流路202,203に設けられたリリーフ弁31a,31bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0046】
ブームシリンダ1は、作動油の供給を受けて伸縮作動する液圧片ロッドシリンダである。ブームシリンダ1の伸縮方向は、作動油の供給方向に依存する。
【0047】
流路210,211に設けられたリリーフ弁32a,32bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0048】
流路210,211に設けられたフラッシング弁34は、流路内の余剰油をチャージライン212に排出する。
【0049】
旋回モータ7は、作動油の供給を受けて回転する液圧モータである。旋回モータ7の回転方向は、作動油の供給方向に依存する。
【0050】
流路215,216に設けられたリリーフ弁37a,37bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、作動油をチャージライン212に逃がし回路を保護する。
【0051】
流路215,216に設けられたフラッシング弁38は、流路内の余剰油をチャージライン212に排出する。
【0052】
走行モータ8a,8bは、作動油の供給を受けて回転する液圧モータである。走行モータ8a,8bの回転方向は、作動油の供給方向に依存する。走行モータ8a,8bの一方の入出力ポートは、流路217を介して流量制御弁71a,71bに接続されている。走行モータ8a,8bの他方の入出力ポートは、流路218を介して流量制御弁71a,71bに接続されている。
【0053】
流路217に設けられたリリーフ弁70aは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、流路218に作動油を逃がし回路を保護する。
【0054】
流路218に設けられたリリーフ弁70bは、流路圧が所定の圧力以上になったときに、流路217に作動油を逃がし回路を保護する。
【0055】
流量制御弁71a,71bは、ポンプ側の3つのポートと、走行モータ側の3つのポートとを備える。ポンプ側の第1のポートと第2のポートは流路213に接続され、第3のポートはタンク25に接続されている。走行モータ側の第1のポートは流路217に接続され、第2のポートはタンク25に接続され、第3のポートは流路218に接続されている。
【0056】
流量制御弁71a,71bは3つの開口状態を有する。第1の開口状態では、ポンプ側の第1のポートを閉じ、ポンプ側の第2のポートと走行モータ側の第2のポートを接続し、ポンプ側の第3のポートと走行モータ側の第1のポートと第3のポートを接続する。第2の開口状態では、ポンプ側の第1のポートと走行モータ側の第1のポートを接続し、ポンプ側の第2のポートを閉じ、走行モータ側の第2のポートを閉じ、ポンプ側の第3のポートと走行モータ側の第3のポートを接続する。第3の開口状態では、ポンプ側の第1のポートと走行モータ側の第3のポートを接続し、ポンプ側の第2のポートを閉じ、走行モータ側の第2のポートを閉じ、ポンプ側の第3のポートと走行モータ側の第1のポートを接続する。
【0057】
流量制御弁71a,71bは、コントローラ50からの信号により、3つの開口状態のいずれかに遷移し、通過流量を制御する。コントローラ50からの信号が無い場合、流量制御弁71a,71bは第1の開口状態に保持される。コントローラ50から正の信号が入力される場合、流量制御弁71a,71bは第1の開口状態から第2の開口状態へ遷移する。コントローラ50から負の信号が入力される場合、流量制御弁71a,71bは第1の開口状態から第3の開口状態に遷移する。
【0058】
流路210に接続された圧力センサ60aは、流路210の圧力を計測し、コントローラ50に入力する。圧力センサ60aは、流路210の圧力を計測することにより、ブームシリンダ1のヘッド室圧力を計測する。
【0059】
流路211に接続された圧力センサ60bは、流路211の圧力を計測し、コントローラ50に入力する。圧力センサ60bは、流路211の圧力を計測することにより、ブームシリンダ1のロッド室圧力を計測する。
【0060】
流路215に接続された圧力センサ62aは、流路215の圧力を計測し、コントローラ50に入力する。圧力センサ62aは、流路215の圧力を計測することにより、旋回モータ7の一方の入出力ポート圧力を計測する。
【0061】
流路216に接続された圧力センサ62bは、流路216の圧力を計測し、コントローラ50に入力する。圧力センサ62bは、流路216の圧力を計測することにより、旋回モータ7の他方の入出力ポート圧力を計測する。
【0062】
流路204に接続された圧力センサ72は、流路204の圧力を計測し、コントローラ50に入力する。圧力センサ72は、流路204の圧力を計測することにより、第3の液圧ポンプ14の吐出圧力を計測する。
【0063】
流路205に接続された圧力センサ73は、流路205の圧力を計測し、コントローラ50に入力する。圧力センサ73は、流路205の圧力を計測することにより、第4の液圧ポンプ15の吐出圧力を計測する。
【0064】
レバー51は、オペレータによって操作され、その操作量をコントローラ50に入力する。
【0065】
図3は、図2に示すコントローラ50の機能ブロック図である。なお、図3では、図2と同様に、ブームシリンダ1、旋回モータ7、および走行モータ8a,8bの駆動に関わる部分のみを示し、その他のアクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0066】
図3において、コントローラ50は、要求流量演算部50aと、アクチュエータ圧力演算部50bと、ポンプ圧力演算部50cと、要求トルク演算部50dと、要求流量制限部50eと、指令演算部50fとを備えている。
【0067】
要求流量演算部50aは、オペレータのレバー入力に対して、各アクチュエータの動作方向および要求流量を演算し、要求トルク演算部50dおよび要求流量制限部50eに出力する。
【0068】
アクチュエータ圧力演算部50bは、圧力センサ60a,60b,62a,62bの値から、アクチュエータ1,7の圧力(以下、アクチュエータ圧力)を演算し、要求トルク演算部50dおよび指令演算部50fに出力する。
【0069】
ポンプ圧力演算部50cは、圧力センサ72,73の値から、第3および第4の液圧ポンプ14,15の圧力(以下、ポンプ圧力)を演算し、要求トルク演算部50dおよび指令演算部50fに出力する。
【0070】
要求トルク演算部50dは、要求流量演算部50aから入力された要求流量、アクチュエータ圧力演算部50bから入力されたアクチュエータ圧力、およびポンプ圧力演算部50cから入力されたポンプ圧力に基づき、オペレータのレバー入力に応じてアクチュエータ1,7,8a,8bを駆動した場合にエンジン9にかかるトルク(以下、要求トルク)を演算する。
【0071】
要求流量制限部50eは、要求トルク演算部50dから入力された要求トルクに基づき、要求トルクの変化率(以下、要求トルク変化率)を計算する。そして、要求トルク変化率がエンジン9の特性に基づいて予め設定された許容出力トルク変化率(後述)を超えないように、要求流量演算部50aから入力された要求流量を制限し、指令演算部50fに出力する。
【0072】
指令演算部50fは、要求流量制限部50eから入力された要求流量、アクチュエータ圧力演算部50bから入力されたアクチュエータ圧力、およびポンプ圧力演算部50cから入力されたポンプ圧力に基づき、切換弁40~47、比例弁48,49、流量制御弁71a,71b、およびレギュレータ12a,13a,14a,15aへの指令値を演算し、それぞれに出力する。
【0073】
次に、図2に示した液圧駆動装置の動作を説明する。
【0074】
(1)非操作時
図2において、レバー51の非操作時は、第1~第4の液圧ポンプ12~15は最小傾転角に制御され、切換弁40~47は全て閉じられ、ブームシリンダ1、旋回モータ7、および走行モータ8a,8bは停止状態で保持される。
【0075】
(2)走行単独動作時
図4に、走行単独動作時のレバー51の入力、流量制御弁71a,71bの開口面積(開口1はポンプ側の第1のポートと走行モータ側の第1のポートとの間の開口面積、開口2はポンプ側の第2のポートと走行モータ側の第2のポートとの間の開口面積、開口3はポンプ側の第3のポートと走行モータ側の第3のポートとの間の開口面積)、第3および第4の液圧ポンプ14,15の合計要求吐出流量、圧力センサ72,73で計測した第3および第4の液圧ポンプ14,15の各吐出圧力、エンジン負荷トルク(要求トルク)、第3および第4の液圧ポンプ14,15の各吐出流量の変化を示す。
【0076】
時刻t0から時刻t1にかけて、レバー51の入力のうち、走行モータ8a,8bの正転を指示する指令値(以下、走行指令値)は0であり、走行モータ8a,8bは静止している。
【0077】
時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、走行指令値が0から最大値まで上げられる。
【0078】
図5は、コントローラ50の走行動作時の処理を示すフローチャートである。
【0079】
まず、ステップS1において、コントローラ50は、レバー51の入力Linに基づき、走行モータ8a,8bに作動油を供給するポンプの要求吐出流量Qop_dを計算する。なお、本実施の形態では、第3の液圧ポンプ14および第4の液圧ポンプ15が走行モータ8a,8bに作動油を供給するため、要求吐出流量Qop_dは、第3の液圧ポンプ14の要求吐出流量Qop14_dと第4の液圧ポンプ15の要求吐出流量Qop15_dとの合計に等しい。要求吐出流量Qop_dは、以下のように、レバー51の入力Linの関数で定義される。
【0080】
【数1】
【0081】
実際に走行モータ8a,8bを通過する流量は、流量制御弁71a,71bの開口面積により制御される。流量制御弁71a,71bの開口による流量制御の応答性を向上するために、レバー51の入力Linの走行指令値が0でない場合に、ポンプの要求吐出流量Qop_dが最大値になるように設定してもよい。
【0082】
次に、ステップS2において、コントローラ50は、エンジン9の特性を考慮し、ステップS1で決定した要求吐出流量Qop_dの変化率を制限する。
【0083】
次に、ステップS3において、コントローラ50は、圧力センサ72で計測した第3の液圧ポンプ14の吐出圧力Pop14、圧力センサ73で計測した第4の液圧ポンプ15の吐出圧力Pop15、第3の液圧ポンプ14の要求吐出流量Qop14_d、および第4の液圧ポンプ15の要求吐出流量Qop15_dから、レバー51の要求通りに第3の液圧ポンプ14と第4の液圧ポンプ15から流量を供給する場合にポンプ14,15が発生させる要求トルクTp_dを例えば以下の式(2)に基づき計算する。第3の液圧ポンプ14の要求トルクと第3の液圧ポンプ15の要求トルクの合計Top_dは、
【0084】
【数2】
【0085】
となる。ここで、Nengはエンジン回転数、ηopは第3の液圧ポンプ14と第4の液圧ポンプ15のポンプ効率である。
【0086】
全ポンプが発生させる要求トルクTp_dは、以下のとおりである。
【0087】
【数3】
【0088】
次に、ステップS4において、要求トルクTp_dの変化率(要求トルク変化率)を計算する。要求トルク変化率は、例えば、要求トルクTp_dからエンジン9が現在出力しているトルクを差し引いた値をコントローラ50の制御周期で除算することにより求められる。
【0089】
次に、ステップS5において、コントローラ50は、ステップS4で計算した要求トルク変化率が許容出力トルクTp_limの変化率(以下、許容出力トルク変化率)以下であるか否かを判定する。要求トルク変化率が許容出力トルク変化率以下である場合はステップS7へ進み、そうでない場合はステップS6へ進む。許容出力トルクTp_limは、エンジン9が現時点で出力可能なトルクであり、エンジン9の燃料噴射量、ターボ圧等の情報から計算することができる。ここで、許容出力トルクTp_limおよび許容出力トルク変化率は以下の様に求めても良い。
【0090】
ターボ付きエンジンの場合、無負荷状態からエンジンに負荷が掛かると、ターボ圧が上昇するまで設計最大トルクが出力できない。例えば、図6に示す通り、エンジンに時刻t1から時刻t2にかけて最小値から最大値までエンジン負荷トルク(要求トルクTp_d)を上げると、エンジン負荷トルクの上昇に対してエンジン出力トルクの上昇が間に合わず、エンジン回転数が許容最小回転数を下回ってしまう。ここで、許容最小回転数とは、目標回転数から、最大限許容される低下量を差し引いた回転数である。一方、時刻t1から時刻t3にかけて最小値から最大値までエンジン負荷トルクを上げると、エンジン負荷トルクの上昇に対してエンジン出力トルクの上昇が間に合うため、エンジン回転数は許容最小回転数を下回ることはない。そこで、エンジン回転数の低下が許容最小回転数までに抑えられる最大トルク変化率を許容出力トルク変化率とし、許容出力トルク変化率を満たす最大出力トルクを許容出力トルクTp_limとする。例えば、現時点のエンジン出力トルクに許容出力トルク変化率とコントローラ50の制御周期との積を加算することにより求められる。すなわち、本発明における許容出力トルクTp_limは、現時点のエンジン出力トルクに応じて時々刻々と変化する。なお、ステップS5では、要求トルク変化率が許容出力トルク変化率以下であるか否かを判定しているが、この判定は、要求トルクTp_dが許容出力トルクTp_lim以下であるか否かの判定と同じである。
【0091】
ここで、一般的な建設機械が平地で走行動作を行う場合、図4に示すとおり、走行停止中(時刻t0~時刻t1)はポンプ14,15の吐出圧力Pop14,Pop15は低く、走行加速中(時刻t1~時刻t3)に上昇し、定常速度(時刻t3~)で一定になるという特徴がある。特に最大加速度で走行する場合、ポンプ吐出圧力Pop14,Pop15は、リリーフ弁21,22の設定圧力まで上昇する。流量制御弁71a,71bを制御し走行モータ8a,8bを駆動させる際の応答性を上げるために、レバー入力の走行指令値が0でない場合にポンプ14,15の合計要求吐出流量(Qop14_d+Qop15_d)が最大値(2Qopmax)になるよう設定されていると、前述の急激な圧力上昇と、吐出流量の増大により、エンジン負荷トルク(要求トルクTp_d)が急激に上昇する。そこで図4に示す通り、レバー入力の走行指令値が0でない場合にポンプ14,15の合計要求吐出流量(Qop14_d+Qop15_d)が最小値から最大値(2Qopmax)まで変化する際の変化率を制限する。これにより、エンジン負荷トルク(要求トルクTp_d)の急激な上昇を抑制することができ、エンジン9のラグダウンを抑制できる。この変化率は、レバー入力の走行指令値が0でない場合にポンプ14,15の合計要求吐出流量(Qop14_d+Qop15_d)が最大値(2Qopmax)になるよう設定されている場合(制限前)のポンプ吐出圧力Pop14,Pop15の上昇特性に基づき、ポンプ14,15が発生する要求トルクTp_dの増加率がエンジン9の許容出力トルク変化率以下になるよう設定すればよい。
【0092】
次に、ステップS6において、コントローラ50は、要求トルク変化率が許容出力トルク変化率以下になるように(すなわち、要求トルクTp_dが許容出力トルクTp_lim以下になるように)、要求吐出流量Qop_d(=Qop14_d+Qop15_d)を制限する。制限後の要求吐出流量Qop_d’(=Qop14_d’+Qop15_d’)は、例えば以下の様に求めることができる。
【0093】
ステップS3において求めた要求トルクTp_dに対して、エンジン9は許容出力トルクTp_limまでしか出力できないため、第3の液圧ポンプ14の要求トルクと第4の液圧ポンプ15の要求トルクの合計Top_dを、
【0094】
【数4】
【0095】
となるように抑制する必要がある。式(2)より、
【0096】
【数5】
【0097】
となる。ここで、第3の液圧ポンプ14の吐出圧力Pop14と第4の液圧ポンプ15の吐出圧力Pop15はほぼ等しく、制限後の要求吐出流量Qop_d’を2台のポンプ14,15に等しく割り当てると、各ポンプの制限後の要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’を、
【0098】
【数6】
【0099】
と求めることができる。
【0100】
次に、ステップS7において、コントローラ50は、走行モータ8a,8bを駆動するポンプ14,15の要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’に基づき、第3の液圧ポンプ14の吐出流量Qop14と第4の液圧ポンプ15の吐出流量Qop15を制御し、処理を終了する。
【0101】
図5に示す処理フローによれば、図4に示す時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、走行指令値が最大値まで上げられると、コントローラ50は、レバー51の入力から要求吐出流量Qop14_d,Qop15_dを計算する。次に、コントローラ50は、要求吐出流量Qop14_d,Qop15_dと、圧力センサ72,73で計測した第3の液圧ポンプ14の吐出圧力Pop14と第4の液圧ポンプ15の吐出圧力Pop15から、式(2),(3)を用いて、要求トルクTp_dを計算する。
【0102】
図4に示す通り、要求トルクTp_dが時刻t1から時刻t2にかけて最大値に達するのに対して、エンジン9の許容出力トルクTp_limが、エンジン9の定格最大トルクになるのに時刻t1から時刻t3までかかるとすると、時刻t1から時刻t3にかけて、コントローラ50は、要求トルクTp_dがエンジン9の許容出力トルクTp_lim以下になるように、式(6)を用いて、制限した要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’を計算する。
【0103】
コントローラ50は、制限した要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’に基づき、図4に示すように、第3の液圧ポンプ14の吐出流量Qop14と第4の液圧ポンプ15の吐出流量Qop15を制御する。
【0104】
以上の様に制御することにより、エンジン9をラグダウンさせることなくショベルを動作させることが可能になる。
【0105】
なお、本実施の形態では、ポンプを同時に立ち上げたが、1台ずつ立ち上げてもよい。
【0106】
(3)走行+ブーム上げ動作時
図7に、走行+ブーム上げ複合動作時のレバー51の入力、レバー51の入力に基づく流量制御弁71a,71bの開口面積、レバー51の入力に基づくブームシリンダ1の要求流量、第1および第2の液圧ポンプ12,13の各要求吐出流量、第3および第4の液圧ポンプ14,15の合計要求吐出流量、圧力センサ60a,60bで計測したブームシリンダ1のヘッド室圧力とロッド室圧力、圧力センサ72,73で計測した第3および第4液圧ポンプ14,15の各吐出圧力、エンジン負荷トルク(要求トルク)、第1および第2の液圧ポンプ12,13の各吐出流量、第3および第4の液圧ポンプ14,15の各吐出流量の変化を示す。
【0107】
時刻t0から時刻t1にかけて、レバー51の入力のうち、ブームシリンダ1の伸長を指示する指令値(以下、ブーム上げ指令値)、および走行指令値は0であり、ブームシリンダ1と走行モータ8a,8bは静止している。
【0108】
時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値および走行指令値が最大値まで上げられる。
【0109】
図8A図8Cは、コントローラ50の走行複合動作時の処理を示すフローチャートである。以下、図5に示した走行単独動作時の処理との相違点を中心に説明する。
【0110】
ステップS3において、コントローラ50は、圧力センサ60a,60bで計測したブームシリンダ1のヘッド室圧力Pcyl_hとロッド室圧力Pcyl_r、および第1の液圧ポンプ12の要求吐出流量と第2の液圧ポンプ13の要求吐出流量の合計Qcp_dから、レバー51の要求通りにブームシリンダ1を駆動させる場合にポンプが発生させる要求トルクTp_dを計算する。
【0111】
ステップS5で要求トルク変化率が許容出力トルク変化率以下でないと判定された場合はステップS6aへ進む。
【0112】
ステップS6aにおいて、走行単独操作であるか否かを判定する。走行単独操作である場合はステップS6へ進み、そうでない場合はステップS8aへ進む。
【0113】
ステップS8aにおいて、走行、ブーム及び旋回の複合操作であるか否かを判定する。走行、ブーム及び旋回の複合操作である場合はステップS8bへ進み、そうでない場合はステップS10aへ進む。
【0114】
ステップS8bにおいて、走行用開回路ポンプの要求トルクが所定の割合(第1割合)以下になるように走行要求流量を制限し、ステップS8cへ進む。
【0115】
ステップS8cにおいて、許容出力トルクから制限後の走行用開回路ポンプの要求トルクと走行以外の要求トルクとを差し引いた値が正か否かを判定する。正である場合はステップS8dへ進み、そうでない場合はステップS9aへ進む。
【0116】
ステップS8dにおいて、レバー入力から走行モータ8a,8b以外のアクチュエータの要求流量を計算し、ステップS7へ進む。
【0117】
ステップS9aにおいて、ブーム及び旋回の複合操作であるか否かを判定する。ブーム及び旋回の複合操作である場合はステップS9bへ進み、そうでない場合はステップS9fへ進む。
【0118】
ステップS9bにおいて、走行割り当て後の許容出力トルクに対して旋回モータ7の要求トルクが所定の割合(第2割合)以下になるように旋回要求流量を制限し、ステップS9cへ進む。
【0119】
ステップS9cにおいて、走行割り当て後の許容出力トルクから制限後の旋回要求トルクと旋回以外の要求トルクとを差し引いた値が正であるか否かを判定する。正である場合はステップS9dへ進み、そうでない場合はステップS9eへ進む。
【0120】
ステップS9dにおいて、レバー入力から旋回モータ7以外のアクチュエータの要求流量を計算し、ステップS7へ進む。
【0121】
ステップS9eにおいて、各アクチュエータの要求速度比を保ったまま許容出力トルク以下になるように旋回モータ7以外のアクチュエータの要求流量を制限し、ステップS7へ進む。
【0122】
ステップS9fにおいて、各アクチュエータの要求速度比を保ったまま走行割り当て後の許容出力トルク以下となるように各要求流量を制限し、ステップS7へ進む。
【0123】
ステップS10aにおいて、ブーム及び旋回の複合操作であるか否かを判定する。ブーム及び旋回の複合操作である場合はステップS10bへ進み、そうでない場合はステップS10fへ進む。
【0124】
ステップS10bにおいて、旋回モータ7の要求トルクが所定の割合以下になるように旋回要求流量を制限し、ステップS10cへ進む。
【0125】
ステップS10cにおいて、許容出力トルクから制限後の旋回要求トルクと旋回以外の要求トルクとを差し引いた値が正であるか否かを判定する。正である場合はステップS10dへ進み、そうでない場合はステップS10eへ進む。
【0126】
ステップS10dにおいて、レバー入力から旋回モータ7以外のアクチュエータの要求流量を計算し、ステップS7へ進む。
【0127】
ステップS10eにおいて、各アクチュエータの要求速度比を保ったまま許容出力トルク以下になるように旋回モータ7以外のアクチュエータの要求流量を制限し、ステップS7へ進む。
【0128】
ステップS10fにおいて、各アクチュエータの要求速度比を保ったまま許容出力トルク以下となるように各要求流量を制限し、ステップS7へ進む。
【0129】
図8A図8Cに示す処理フローによれば、図7に示す時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値および走行指令値が最大値まで上げられると、コントローラ50は、レバー51の入力からブームシリンダ1の要求流量Qcyl_boom_dと、走行モータ8a,8bを駆動するポンプの要求吐出流量Qop_dを計算する。
【0130】
ここで、コントローラ50は、ブームシリンダ1の駆動用に第1の液圧ポンプ12と第2の液圧ポンプ13を割り当て、走行モータ8a,8bの駆動用に第3の液圧ポンプ14および第4の液圧ポンプ15を割り当てる。
【0131】
コントローラ50は、レバー51の入力Linに基づきブームシリンダ1を駆動するポンプの要求吐出流量Qcp_dを決定する。
【0132】
【数7】
【0133】
図8Aに示すステップS3において、コントローラ50は、圧力センサ60a,60bで計測したブームシリンダ1のヘッド室圧力Pcyl_hとロッド室圧力Pcyl_r、および第1の液圧ポンプ12の要求吐出流量と第2の液圧ポンプ13の要求吐出流量の合計Qcp_dから、レバー51の要求通りにブームシリンダ1を駆動させる場合にポンプが発生させる要求トルクTp_dを計算する。まず、閉回路ポンプが発生させる要求トルクTcp_dは、
【0134】
【数8】
【0135】
となる。ここで、Nengはエンジン回転数、Plossはシリンダからポンプまでの管路で発生する圧力損失、ηcpは第1の液圧ポンプ12と第2の液圧ポンプ13のポンプ効率である。
【0136】
コントローラ50は、式(2),(8)を用いて、第1の液圧ポンプ12、第2の液圧ポンプ13、第3の液圧ポンプ14、第4の液圧ポンプ15の要求トルクの合計である要求トルクTp_dを計算する。この時、要求トルクTp_dは、
【0137】
【数9】
【0138】
となる。
【0139】
図7に示す通り、要求トルクTp_dが時刻t1から時刻t2にかけて最大値に増加するのに対して、エンジン9の許容出力トルクTp_limがエンジン9の定格最大トルクになるのに時刻t1から時刻t3までかかるとすると、時刻t1から時刻t3にかけて、コントローラ50は、
【0140】
【数10】
【0141】
となるように、ブームシリンダ1を駆動するポンプ12,13の制限した要求吐出流量Qcp_d’と、走行モータ8a,8bを駆動するポンプ14,15の制限した要求吐出流量Qop_d’を計算する。
【0142】
ここで、一般的な建設機械が平地で走行動作を行う場合、図7に示すとおり、走行停止中(時刻t0~時刻t1)はポンプ14,15の吐出圧力Pop14,Pop15は低く、走行加速中(時刻t1~時刻t3)に上昇し、定常速度(時刻t3~)で一定になるという特徴がある。特に最大加速度で走行する場合、ポンプ吐出圧力Pop14,Pop15は、リリーフ弁21,22の設定圧力まで上昇する。
【0143】
例えば、ブーム上げ動作と走行を同時に開始する場合、走行加速中の急激な圧力上昇に伴い、走行モータ8a,8bへ流量を供給するポンプ14,15の要求トルク増大に伴い、ブームシリンダ1へ割り当て可能なトルクが減少し、ブームシリンダ1の速度も低くなってしまうことがある。
【0144】
これを抑制するために、ブームシリンダ1と、走行モータ8a,8bとさらに旋回モータ7とを組み合わせて動かす場合、走行モータ8a,8bに割り当てるトルクの比率をある程度確保する。例えば、エンジンが出力可能なトルク(許容出力トルクTp_lim)の50%分を走行モータ8a,8bに割り当てる。式(10)より、
【0145】
【数11】
【0146】
となり、
【0147】
【数12】
【0148】
となる。
式(8),(11)より、ブームシリンダ1を駆動するポンプの制限した要求吐出流量Qcp_d’は、
【0149】
【数13】
【0150】
となる。ここで、第1の液圧ポンプ12の吐出圧力と、第2の液圧ポンプ13の吐出圧力はほぼ等しく、制限後の要求吐出流量Qcp_d’を2台のポンプ12,13に等しく割り当てると、各ポンプの制限後の要求吐出流量Qcp12_d’,Qcp13_d’は、
【0151】
【数14】
【0152】
となる。式(13)に示す通り、ブームシリンダ1を駆動するポンプの制限した要求吐出流量Qcp_d’は、直接ポンプ圧を用いず、アクチュエータ圧力を用いるため、要求吐出流量Qcp_d’が各ポンプの最大吐出流量を越えていないかを、ポンプをブームシリンダ1へ接続する前に判定することができる。そのため、要求吐出流量Qcp_d’に応じてポンプの台数を決定してもよい。これにより、要求吐出流量Qcp_dによっては、ブームシリンダ1へのポンプの接続台数を1台で済ますことができるため、他のアクチュエータを駆動するための空きポンプを確保できる。その結果、接続先の切換回数が低減し、切換に伴う動作開始遅れや、ポンプ接続先変更に伴う圧力ショックを低減できる。
【0153】
ここで、第3の液圧ポンプ14の吐出圧力Pop14と、第4の液圧ポンプ15の吐出圧力Pop15はほぼ等しく、制限後の要求吐出流量Qop_d’を2台のポンプ14,15に等しく割り当てると、各ポンプの制限後の要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’は、式(2),(12)より、
【0154】
【数15】
【0155】
となる。式(13),(15)で計算した制限後の各要求吐出流量が、式(1),(7)で求めた要求吐出流量を上回る場合、差分の流量によって発生する余剰トルクを再度割当直しても良い。これにより、各アクチュエータに要求流量に近い流量を確保しつつ、エンジン9のトルクを効率的に使用することができる。
【0156】
ステップS7において、コントローラ50は、ブームシリンダ1を駆動するポンプ12,13の要求吐出流量Qcp12_d’,Qcp13_d’と走行モータ8a,8bを駆動するポンプ14,15の要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’に基づき、第1の液圧ポンプ12の吐出流量Qcp12、第2の液圧ポンプ13の吐出流量Qcp13、第3の液圧ポンプ14の吐出流量Qop14、および第4の液圧ポンプ15の吐出流量Qop15を制御する。
【0157】
図8A図8Cに示す処理フローによれば、図7に示す時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値および走行指令値が最大値まで上げられると、コントローラ50は、レバー51の入力からブームシリンダ1を駆動するポンプの要求吐出流量Qcp_dと走行モータ8a,8bを駆動するポンプの要求吐出流量Qop_dを計算する。次に、コントローラ50は、各要求吐出流量と、圧力センサ60a,60b,72,73で計測したブームシリンダ1のヘッド室圧力、ロッド室圧力、第3の液圧ポンプの吐出圧力Pop14、および第4の液圧ポンプの吐出圧力Pop15から、式(9)を用いて、要求トルクTp_dを計算する。
【0158】
図7に示す通り、要求トルクTp_dが時刻t1から時刻t2にかけて最大値に達するのに対して、エンジン9の許容出力トルクTp_limがエンジン9の定格最大トルクになるのに時刻t1から時刻t3までかかるとすると、時刻t1から時刻t3にかけて、コントローラ50は、要求トルクTp_dがエンジン9の許容出力トルクTp_lim以下になるように、式(14),(15)を用いて、制限した要求吐出流量Qcp12_d’,Qcp13_d’,Qop14_d’,Qop15_d’を計算する。
【0159】
コントローラ50は、制限した要求吐出流量Qcp12_d’,Qcp13_d’,Qop14_d’,Qop15_d’に基づき、図7に示すように、第1の液圧ポンプ12の吐出流量Qcp12、第2の液圧ポンプ13の吐出流量Qcp13、第3の液圧ポンプ14の吐出流量Qop14、および第4の液圧ポンプ15の吐出流量Qop15を制御する。
【0160】
走行モータ8a,8bへのエンジントルクの割当比率は平地走行時の定常速度時のエンジントルク使用率から決定するとよい。なお、登坂走行時等はトルク使用率が上昇するため、図9に示すように、別途路面の傾斜角度を検出する手段(角度センサ91)を備え、傾斜角度により走行モータ8a,8bへのエンジントルク割当比率を変更する機能を要求流量制限部50eに持たせても良い。これにより、登坂走行時も走行速度を確保しつつ、他のアクチュエータを駆動させることができる。
【0161】
以上の様に制御することにより、エンジン9をラグダウンさせることなくショベルを動作させることが可能になる。
【0162】
(4)走行+ブーム上げ+旋回動作時
図10に、走行+ブーム上げ+旋回複合動作時のレバー51の入力、レバー51の入力に基づく流量制御弁71a,71bの開口面積、レバー51の入力に基づくブームシリンダ1および旋回モータ7の各要求流量、第1および第2の液圧ポンプ12,13の各要求吐出流量、第3および第4の液圧ポンプ14,15の合計要求吐出流量、圧力センサ60a,60bで計測したブームシリンダ1のヘッド室圧力とロッド室圧力、圧力センサ72,73で計測した第3および第4液圧ポンプ14,15の各吐出圧力、圧力センサ62a,62bで計測した旋回モータ7の各ポート圧力、エンジン負荷トルク(要求トルク)、第1および第2の液圧ポンプ12,13の各吐出流量、第3および第4の液圧ポンプ14,15の各吐出流量の変化を示す。
【0163】
時刻t0から時刻t1にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値、旋回モータ7の回転を指示する指令値(以下、旋回指令値)、および走行指令値は0であり、ブームシリンダ1、旋回モータ7、および走行モータ8a,8bは静止している。
【0164】
時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値、旋回指令値、および走行指令値が最大値まで上げられる。
【0165】
図8A図8Cに示す処理フローによれば、図10に示す時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値、旋回指令値、および走行指令値が最大値まで上げられると、コントローラ50は、レバー51の入力からブームシリンダ1の要求流量Qcyl_boom_dと、旋回モータ7の要求流量Qsw_dと、走行モータ8a,8bを駆動するポンプの要求吐出流量Qop_dを計算する。
【0166】
ここで、コントローラ50は、ブームシリンダ1の駆動用に第1の液圧ポンプ12を割り当て、旋回モータ7の駆動用に第2の液圧ポンプ13を割り当て、走行モータ8a,8bの駆動用に第3の液圧ポンプ14および第4の液圧ポンプ15を割り当てる。
【0167】
コントローラ50は、レバー51の入力Linに基づきブームシリンダ1を駆動するポンプ13の要求吐出流量Qcp13_dを決定する。
【0168】
【数16】
【0169】
図8Aに示すステップS3において、コントローラ50は、圧力センサ62a,62bで計測した旋回モータ7のaポート圧力Psw_aとbポート圧力Psw_bと、第2の液圧ポンプ13の要求吐出流量Qc13p_dから、レバー51の要求通りに旋回モータ7を駆動させる場合にポンプが発生させる要求トルクTcp13_dを計算する。要求トルクTcp13_dは、
【0170】
【数17】
【0171】
となる。ここで、Nengはエンジン回転数であり、Plossはシリンダからポンプまでの管路で発生する圧力損失であり、ηcpは第2の液圧ポンプ13のポンプ効率である。
【0172】
コントローラ50は、式(2),(8),(17)を用いて、第1の液圧ポンプ12、第2の液圧ポンプ13、第3の液圧ポンプ14、および第4の液圧ポンプ15の要求トルクの合計Tp_dを計算する。この時、要求トルクTp_dは、
【0173】
【数18】
【0174】
となる。
【0175】
図10に示す通り、要求トルクTp_dが時刻t1から時刻t2にかけて最大値に増加するのに対して、エンジン9の許容出力トルクTp_limがエンジン9の定格最大トルクになるのに時刻t1から時刻t3までかかるとすると、時刻t1から時刻t3にかけて、コントローラ50は、
【0176】
【数19】
【0177】
となるように、ブームシリンダ1を駆動するポンプ12の制限した要求吐出流量Qcp12_d’、旋回モータ7を駆動するポンプ13の制限した要求吐出流量Qcp13_d’、走行モータ8a,8bを駆動するポンプの制限した要求吐出流量Qop_d’を計算する。
【0178】
ここで、一般的な建設機械が平地で旋回動作を行う場合、図10に示すとおり、旋回停止中(時刻t0~時刻t1)は旋回モータ7のaポート圧力とbポート圧力は低く、旋回加速(時刻t1~時刻t2)中に一方のポート圧力が上がるという特徴がある。特に最大加速度で旋回する場合、一方のポート圧力は、リリーフ弁37a,37bの設定圧力まで上昇する。従って、最大加速度を越えるような要求速度が入力される場合、要求通りの流量をポンプから供給すると、一部の流量はリリーフ弁37aまたはリリーフ弁37bからタンク25へ排出され無駄になってしまう。
【0179】
例えば、ブーム上げと旋回の要求速度比を合わせようと制御する場合、旋回モータ7においては、一部の流量がリリーフ弁37aまたはリリーフ弁37bから排出され、旋回速度が出ないのみならず、加速時の旋回モータ7による要求トルク増大に伴い、ブームシリンダ1へ割り当て可能なトルクが減少し、ブームシリンダ1の速度も低くなってしまうことがある。
【0180】
これを抑制するために、ブームシリンダ1と走行モータ8a,8bとさらに旋回モータ7とを組み合わせて動かす場合、走行モータ8a,8bに割り当てるトルクの比率をある程度確保した後に、残りのトルクのうち旋回モータ7に割り当てるトルクの比率を低く設定する。例えば、エンジン9が出力可能なトルク(許容出力トルクTp_lim)の50%分を走行モータ8a,8bに割り当て、残りトルクの20%を旋回モータ7に割り当てる。式(19)より、
【0181】
【数20】
【0182】
となり、
【0183】
【数21】
【0184】
【数22】
【0185】
となる。式(8),(21)より、ブームシリンダ1を駆動するポンプ12の制限した要求吐出流量Qcp12_d’は、
【0186】
【数23】
【0187】
となる。式(17),(22)より、旋回モータ7を駆動するポンプ13の制限した要求吐出流量Qcp13_d’は、
【0188】
【数24】
【0189】
となる。走行モータ8a,8bを駆動するポンプ14,15の制限した要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’は、式(15)より求められる。式(23),(24),(15)で計算した制限後の各ポンプの要求吐出流量が、式(1),(7),(16)で求めた要求吐出流量を上回る場合、差分の流量によって発生する余剰トルクを割当トルクが不足しているアクチュエータに再度割当直しても良い。これにより、各アクチュエータに要求流量に近い流量を確保しつつ、エンジン9のトルクを効率的に使用することができる。
【0190】
ステップS7において、コントローラ50は、ブームシリンダ1を駆動するポンプ12の制限した要求吐出流量Qcp12_d’、旋回モータ7を駆動するポンプ13の要求吐出流量Qcp13_d’、および走行モータ8a,8bを駆動するポンプ14,15の制限した要求吐出流量Qop14_d’,Qop15_d’に基づき、第1の液圧ポンプ12の吐出流量Qcp12、第2の液圧ポンプ13の吐出流量Qcp13、第3の液圧ポンプ14の吐出流量Qop14、および第4の液圧ポンプ15の吐出流量Qop15を制御する。
【0191】
図8A図8Cに示す処理フローによれば、図10に示す時刻t1から時刻t2にかけて、レバー51の入力のうち、ブーム上げ指令値および走行指令値が最大値まで上げられると、コントローラ50は、レバー51の入力からブームシリンダ1を駆動するポンプの要求吐出流量Qcp12_d、旋回モータ7を駆動するポンプの要求吐出流量Qcp13_d、および走行モータ8a,8bを駆動するポンプの要求吐出流量Qop_dを計算する。次に、コントローラ50は、各要求吐出流量と、圧力センサ60a,60b,62a,62b,72,73で計測したブームシリンダ1のヘッド室圧力、ロッド室圧力、旋回モータ7のaポート圧力、bポート圧力、第3の液圧ポンプ14の吐出圧力Pop14、および第4の液圧ポンプ15の吐出圧力Pop15から、式(18)を用いて、要求トルクTp_dを計算する。
【0192】
図10に示す通り、要求トルクTp_dが時刻t1から時刻t2にかけて最大値に増加するのに対して、エンジン9の許容出力トルクTp_limがエンジン9の定格最大トルクになるのに時刻t1から時刻t3までかかるとすると、時刻t1から時刻t3にかけて、コントローラ50は、要求トルクTp_dがエンジン9の許容出力トルクTp_lim以下になるように、式(23),(24),(15)を用いて、制限した要求吐出流量Qcp12_d’,Qcp13_d’,Qop14_d’,Qop15_d’を計算する。
【0193】
コントローラ50は、制限した要求吐出流量Qcp12_d’,Qcp13_d’,Qop14_d’,Qop15_d’に基づき、図10に示すように、第1の液圧ポンプ12の吐出流量Qcp12、第2の液圧ポンプ13の吐出流量Qcp13、第3の液圧ポンプ14の吐出流量Qop14、および第4の液圧ポンプ15の吐出流量Qop15を制御する。
【0194】
以上の様に制御することにより、旋回開始時の旋回モータ7の圧力上昇に伴いブームシリンダ1の速度が著しく低下することを抑制しつつ、エンジン9をラグダウンさせることなくショベルを動作させることが可能になる。
【0195】
本実施の形態では、一対の入出口ポートを有する両傾転型の液圧ポンプである閉回路ポンプ12,13と、入口ポートおよび出口ポートを有する片傾転型の液圧ポンプである開回路ポンプ14,15と、閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15を駆動するエンジン9と、閉回路ポンプ12,13に閉回路状に接続された液圧アクチュエータ1,3,5,7と、開回路ポンプ14,15に開回路状に接続された液圧モータ8a,8bと、開回路ポンプ14,15と液圧モータ8a,8bとを接続する流路上に設けられ、開回路ポンプ14,15から液圧モータ8a,8bに供給される圧油の方向および流量を制御する流量制御弁71a,71bと、液圧アクチュエータ1,3,5,7および液圧モータ8a,8bの各動作方向および各要求流量を指示するための操作装置51と、操作装置51からの入力に応じて閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15の各傾転ならびに流量制御弁71a,71bの開口を制御するコントローラ50と、液圧アクチュエータ1,3,5,7の出入口圧を検出する第1圧力センサ60a,60b,62a,62bと、開回路ポンプ14,15の出口圧を検出する第2圧力センサ72,73とを備えた建設機械100において、コントローラ50は、操作装置51からの入力に応じた液圧アクチュエータ1,3,5,7の要求流量と、第1圧力センサ60a,60b,62a,62bによって検出された液圧アクチュエータ1,3,5,7の出入口圧と、操作装置51からの入力に応じた開回路ポンプ14,15の要求吐出流量と、第2圧力センサ72,73によって検出された開回路ポンプ14,15の出口圧とに基づいて、閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15がエンジン9に要求するトルクである要求トルクを演算し、前記要求トルクの変化率である要求トルク変化率が所定の変化率を上回った場合に、前記要求トルク変化率が前記所定の変化率以下になるように閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15の少なくとも1つの吐出流量を制限する。
【0196】
以上のように構成された本実施の形態によれば、閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15がエンジン9に要求するトルクの変化率である要求トルク変化率が所定の変化率を上回った場合に、前記要求トルク変化率が前記所定の変化率以下になるように閉回路ポンプ12,13および開回路ポンプ14,15の少なくとも1つの吐出流量が制限される。これにより、オペレータの操作内容や液圧アクチュエータ1,3,5,7の負荷状態にかかわらず、エンジン9のラグダウンを抑制することが可能となる。
【0197】
また、閉回路ポンプ12,13は複数の閉回路ポンプからなり、開回路ポンプ14,15は複数の開回路ポンプからなり、液圧アクチュエータ1,3,5,7は複数の液圧アクチュエータからなり、液圧モータ8a,8bは複数の液圧モータからなり、流量制御弁71a,71bは複数の流量制御弁からなり、第1圧力センサ60a,60b,62a,62bは複数の第1圧力センサからなり、第2圧力センサ72,73は複数の第2圧力センサからなり、コントローラ50は、操作装置51からの入力に応じた複数の液圧アクチュエータ1,3,5,7の各要求流量と、複数の第1圧力センサ60a,60b,62a,62bによって検出された複数の液圧アクチュエータ1,3,5,7の各出入口圧と、操作装置51からの入力に応じた複数の開回路ポンプ14,15の各要求吐出流量と、複数の第2圧力センサ72,72によって検出された複数の開回路ポンプ14,15の各出口圧とに基づいて、複数の閉回路ポンプ12,13および複数の開回路ポンプ14,15がエンジン9に要求するトルクである要求トルクを演算し、前記要求トルクの変化率である要求トルク変化率が所定の変化率を上回った場合に、前記要求トルク変化率が前記所定の変化率以下になるように複数の閉回路ポンプ12,13および複数の開回路ポンプ14,15の少なくとも1つの吐出流量を制限する。これにより、複数の閉回路ポンプ12,13および複数の開回路ポンプ14,15で複数の液圧アクチュエータ1,3,5,7および複数の液圧モータ8a,8bを駆動する液圧駆動装置を搭載した建設機械において、オペレータの操作内容や液圧アクチュエータの負荷状態にかかわらず、エンジン9のラグダウンを抑制することが可能となる。
【0198】
また、本実施の形態に係る建設機械100は、下部走行体101と、下部走行体101上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体102と、上部旋回体102に取り付けられた作業装置103とを備え、液圧アクチュエータ1,3,5,7は、作業装置103を駆動する片ロッドシリンダ1,3,5と、上部旋回体102を駆動する旋回モータ7とを含み、液圧モータ8a,8bは、下部走行体101を駆動する走行モータ8a,8bであり、コントローラ50は、片ロッドシリンダ1,3,5、旋回モータ7と走行モータ8a,8bとを同時に駆動している状態で、前記要求トルク変化率が前記所定の変化率を上回った場合に、開回路ポンプ14,15がエンジン9に要求するトルクがエンジン9の許容出力トルクの所定の割合(第1割合)以下となるように開回路ポンプ14,15の吐出流量を制限する。これにより、走行モータ8a,8bの駆動時に、エンジン9のラグダウンを防ぎつつ、片ロッドシリンダ1,3,5または旋回モータ7を駆動させることができる。
【0199】
また、前記所定の割合(第1割合)は50%以下に設定されている。これにより、走行モータ8a,8bの駆動時に、エンジン9のラグダウンを防ぎつつ、エンジン9の許容出力トルクの50%以上を片ロッドシリンダ1,3,5または旋回モータ7を駆動させることができる。
【0200】
また、コントローラ50は、片ロッドシリンダ1,3,5と旋回モータ7と走行モータ8a,8bとを同時に駆動している状態で、前記要求トルク変化率が前記所定の変化率を上回った場合に、旋回モータ7に接続されている閉回路ポンプがエンジン9に要求するトルクが開回路ポンプ14,15の吐出流量が制限された後のエンジン9の許容出力トルクの25%(第2割合)以下となるように閉回路ポンプ12,13の吐出流量を制限する。これにより、片ロッドシリンダ1,3,5と走行モータ8a,8bと旋回モータ7とを同時に駆動している時に、エンジン9のラグダウンを防ぎつつ、エンジン9の許容出力トルクの25%以上を片ロッドシリンダ1,3,5および旋回モータ7を駆動させることができる。
【0201】
また、建設機械100は、建設機械100が走行する地面の傾斜角度を検出する角度センサ91を備え、コントローラ50は、角度センサ91によって検出された傾斜角度に応じて前記所定の割合(第1割合)を変更する。これにより、エンジン9のラグダウンを防ぎつつ、登坂走行時に走行速度を確保すると共に、他の液圧アクチュエータ1,3,5,7を駆動させることができる。
【0202】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0203】
1…ブームシリンダ(液圧アクチュエータ)、1a…ヘッド室、1b…ロッド室、2…ブーム、3…アームシリンダ(液圧アクチュエータ)、3a…ヘッド室、3b…ロッド室、4…アーム、5…バケットシリンダ(液圧アクチュエータ)、5a…ヘッド室、5b…ロッド室、6…バケット、7…旋回モータ(液圧アクチュエータ)、8a,8b…走行モータ(液圧モータ)、9…エンジン、10…動力伝達装置、11…チャージポンプ、12…第1の液圧ポンプ、12a…レギュレータ、13…第2の液圧ポンプ、13a…レギュレータ、14…第3の液圧ポンプ、14a…レギュレータ、15…第4の液圧ポンプ、15a…レギュレータ、20…チャージ用リリーフ弁、21,22…リリーフ弁、25…タンク、26,27,28a,28b,29a,29b…チャージ用チェック弁、30a,30b,31a,31b,32a,32b,33a,33b…リリーフ弁、34,35…フラッシング弁、36a,36b…チャージ用チェック弁、37a,37b…リリーフ弁、38…フラッシング弁、40~47…切換弁(制御弁)、48,49…比例弁、50…コントローラ、50a…要求流量演算部、50b…アクチュエータ圧力演算部、50c…ポンプ圧力演算部、50d…要求トルク演算部、50e…要求流量制限部、50f…指令演算部、51…レバー(操作装置)、60a,60b,62a,62b…圧力センサ(第1圧力センサ)、71a,71b…流量制御弁、72,73…圧力センサ(第2圧力センサ)、100…油圧ショベル(建設機械)、101…下部走行体、102…上部旋回体、103…作業装置、104…キャブ、200~205,210~213,215~218…流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10