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特許7536194フィーダセットアップ装置およびフィーダセットアップシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】フィーダセットアップ装置およびフィーダセットアップシステム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
H05K13/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023534520
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026477
(87)【国際公開番号】W WO2023286210
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野沢 瑞穂
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/026619(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/118995(WO,A1)
【文献】特表2005-539370(JP,A)
【文献】特開平11-121984(JP,A)
【文献】特開2019-201156(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアテープを巻回したリールが取り付けられ前記キャリアテープを送って部品を供給するテープフィーダを、作業実施位置に保持するフィーダ保持部と、
前記作業実施位置の前記テープフィーダから前記リールを取り外すリール取り外し機構と、
前記リール取り外し機構とは別途設けられ、前記作業実施位置の前記テープフィーダに前記リールを取り付けるリール取り付け機構と、
を備えるフィーダセットアップ装置。
【請求項2】
前記リール取り外し機構および前記リール取り付け機構とは別途設けられ、前記テープフィーダ内で前記キャリアテープを装填して送り可能な状態にするテープ装填機構を備える、請求項1に記載のフィーダセットアップ装置。
【請求項3】
前記リール取り外し機構は、取り外した複数の前記リールをまとめて回収する回収ボックスを有する、
請求項1または2に記載のフィーダセットアップ装置。
【請求項4】
複数の前記テープフィーダを収容するフィーダ収容部と、
前記フィーダ収容部と前記フィーダ保持部の間で、前記テープフィーダを搬送するフィーダ搬送部と、
を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィーダセットアップ装置。
【請求項5】
前記フィーダセットアップ装置は、複数の前記リールを保持するリール保持部を備え、
前記リール取り付け機構は、前記リール保持部から前記リールを取り出して前記テープフィーダに取り付ける、
請求項1~4のいずれか一項に記載のフィーダセットアップ装置。
【請求項6】
前記リール保持部は、保持板と、前記保持板から垂直方向に立てて設けられ前記リールの中心に形成された中心孔に係入する保持軸と、を有する、請求項5に記載のフィーダセットアップ装置。
【請求項7】
キャリアテープを巻回したリールが取り付けられ前記キャリアテープを送って部品を供給するテープフィーダを、作業実施位置に保持するフィーダ保持部と、
複数の前記テープフィーダを収容して、装置筐体に着脱可能に設けられるフィーダ収容部と、
前記フィーダ収容部と前記フィーダ保持部の間で、前記テープフィーダを搬送するフィーダ搬送部と、
複数の前記リールを保持して、装置筐体に着脱可能に設けられるリール保持部と、
前記作業実施位置の前記テープフィーダから前記リールを取り外すリール取り外し機構と、
前記リール取り外し機構とは別途設けられ、前記リール保持部から前記リールを取り出して前記作業実施位置の前記テープフィーダに取り付けるリール取り付け機構と、
を備えるフィーダセットアップ装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたフィーダセットアップ装置と、
前記フィーダ収容部および前記リール保持部の少なくとも一方を、前記フィーダセットアップ装置に搬入し、または、前記フィーダセットアップ装置から搬出する搬送車と、
を備えるフィーダセットアップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機に装備するテープフィーダのセットアップ作業を行う装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、キャリアテープを用いて部品を供給するテープフィーダを使用する。従来、テープフィーダにキャリアテープをセットするセットアップ作業はオペレータによって行われていた。近年、テープフィーダのセットアップ作業を自動化する技術が開発されており、その技術例が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された部品テープ取付け装置は、部品テープ(キャリアテープ)を第1収納部から部品供給位置を経由して第2収納部に搬送する部品供給装置を対象として、ロボット部は、横倒し姿勢の部品供給装置の第1収納部に使用前の部品テープをセットするとともに、第2収納部から使用済みの部品テープを回収する。これによれば、使用後の部品供給装置に自動で部品テープを補給することができる、とされている。
【0004】
また、特許文献2に開示された倉庫システムは、リール倉庫と、フィーダ倉庫と、リールローダと、搬送ロボットとを備え、搬送ロボットは、リール倉庫のリールおよびフィーダ倉庫のテープフィーダをリールローダに搬送し、リールローダは、リールをテープフィーダに装填する。これによれば、部品装着機でテープフィーダを使用する準備が自動的に整えられ、オペレータは装填作業に関与せず、従来よりも省力化が達成される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-204858号公報
【文献】国際公開第2021/106026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術では、使用前の部品テープをリールから引き出して部品供給装置に送り、第1収納部内のクリップ部に巻回保持させている。しかしながら、長尺の部品テープを一旦引き出して再度巻回状態にする必要が有るため、セットアップ作業が煩雑化して非効率となる。加えて、1台のロボット部が使用前の部品テープのセット、および使用済みの部品テープの回収を順番に行うので、セットアップ作業に長時間を要する。
【0007】
これに対比して、特許文献2に記載されたリールローダは、キャリアテープが巻回されたリールの交換作業を行うので、セットアップ作業が効率化される。ただし、特許文献2は、倉庫システムの構成要素および構成要素間の搬送に係る発明であるため、リールローダの詳細な構成が開示されていない。
【0008】
それゆえ、本明細書では、テープフィーダのセットアップ時間を従来よりも短縮することができるフィーダセットアップ装置、およびフィーダセットアップシステムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、キャリアテープを巻回したリールが取り付けられ前記キャリアテープを送って部品を供給するテープフィーダを、作業実施位置に保持するフィーダ保持部と、前記作業実施位置の前記テープフィーダから前記リールを取り外すリール取り外し機構と、前記リール取り外し機構とは別途設けられ、前記作業実施位置の前記テープフィーダに前記リールを取り付けるリール取り付け機構と、を備えるフィーダセットアップ装置を開示する。
【0010】
また、本明細書は、キャリアテープを巻回したリールが取り付けられ前記キャリアテープを送って部品を供給するテープフィーダを、作業実施位置に保持するフィーダ保持部と、複数の前記テープフィーダを収容して、装置筐体に着脱可能に設けられるフィーダ収容部と、前記フィーダ収容部と前記フィーダ保持部の間で、前記テープフィーダを搬送するフィーダ搬送部と、複数の前記リールを保持して、装置筐体に着脱可能に設けられるリール保持部と、前記作業実施位置の前記テープフィーダから前記リールを取り外すリール取り外し機構と、前記リール取り外し機構とは別途設けられ、前記リール保持部から前記リールを取り出して前記作業実施位置の前記テープフィーダに取り付けるリール取り付け機構と、前記フィーダ収容部および前記リール保持部の少なくとも一方を、前記フィーダセットアップ装置に搬入し、または、前記フィーダセットアップ装置から搬出する搬送車と、を備えるフィーダセットアップシステムを開示する。
【発明の効果】
【0011】
開示したフィーダセットアップ装置およびフィーダセットアップシステムにおいて、リール取り付け機構がリール取り外し機構とは別途設けられているので、二つの機構は並行して動作することができる。したがって、一つのロボット部によりリールの取り外しおよび別のリールの取り付けを順番に行う従来技術と比較して、並行動作の分だけセットアップ時間を従来よりも短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のフィーダセットアップ装置を模式的に示す斜視図である。
図2】フィーダセットアップ装置を模式的に示す平面図である。
図3】フィーダ保持部の構成、およびテープフィーダの構成を模式的に示す斜視図である。
図4】フィーダセットアップ装置の制御および駆動に係る構成を示すブロック図である。
図5】フィーダセットアップ装置の動作を説明する動作フローの図である。
図6】テープフィーダからリールを取り外す動作、および並行して実施する別のリールの準備動作を説明する平面図である。
図7】取り外したリールの回収動作、および並行して実施する別のリールの取り付け動作を説明する平面図である。
図8】フィーダセットアップ装置におけるセットアップ時間を説明する図である。
図9】従来技術におけるセットアップ時間を説明する図である。
図10】変形形態のリール保持部を模式的に示す斜視図である。
図11】実施形態のフィーダセットアップシステムを模式的に示す斜視図である。
図12】フィーダ収容部を搬送するフィーダ搬送車の斜視図である。
図13】リール保持部を搬送するリール搬送車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施形態のフィーダセットアップ装置1の構成
実施形態のフィーダセットアップ装置1の構成について、図1図3を参考にして説明する。各図は、模式的な説明図であり、また、一部の部材が省略されて見易く描かれている。図1および図2の左上に示されるように、便宜的に前後左右を定める。フィーダセットアップ装置1は、リール着脱部11、リール供給部13、およびフィーダ供給部15からなる。
【0014】
リール着脱部11は、装置筐体12の内部に、各種の部材が組み付けられて構成される。装置筐体12は、大きな直方体形状のケースであり、前側および左側の一部が開口している。リール供給部13は、リール着脱部11の前側に結合して配置される。リール供給部13は、装置筐体12よりも小さめの装置筐体に相当する箱形状の台座14を用いて構成される。フィーダ供給部15は、リール着脱部11の左側に結合して配置される。フィーダ供給部15は、装置筐体12よりも小さくて上部に収納空間161をもつ装置筐体16を用いて構成される。
【0015】
リール着脱部11は、フィーダ保持部2、リール取り付け機構3、テープ装填機構4、およびリール取り外し機構5を備える。図2に示されるように、フィーダ保持部2は、装置筐体12内部の左前寄りの位置に配置される。フィーダ保持部2は、テープフィーダ9を作業実施位置に縦置き姿勢で保持する。図3に示されるように、フィーダ保持部2は、底板21および支え板23を有する。底板21は、前後方向に延びる溝形状のスロット22をもつ。テープフィーダ9は、スロット22の前側から後方に向かって挿入され、作業実施位置に保持される。支え板23は、底板21から起立するように設けられ、作業実施位置のテープフィーダ9の左側面に接する。支え板23は、リールRをテープフィーダ9に取り付ける際に発生する横向きの押し付け荷重を支える。
【0016】
ここで、テープフィーダ9の構成の概略について、図3を参考にして説明する。テープフィーダ9は、部品装着機に着脱可能に装備される。テープフィーダ9は、キャリアテープTを巻回したリールRが取り付けられ、キャリアテープTを送って部品を供給する。リールRの各々には、リールRの個体を識別する識別コードが表示されている。
【0017】
テープフィーダ9は、左右方向の幅寸法が小さな薄型に形成される。テープフィーダ9は、側方から見て概ね中央の位置に、左側の側板から右向きに突出したリール保持軸91を有する。リール保持軸91は、リールRの中心に形成された中心孔に係入して、リールRを着脱可能かつ回転可能に保持する。キャリアテープTは、部品を収容するキャビティ部が一定ピッチで設けられる。さらに、キャリアテープTは、一方の側縁に沿って多数のスプロケット孔が設けられる。テープフィーダ9の右側の側板92は、リールRの着脱を容易にするために、中央部が大きく開放されている。なお、リールRは、キャリアテープTの材質が相違し、さらにはキャリアテープTのテープ幅寸法やリールRの幅寸法が相違する複数の種類があり、これらに対応するテープフィーダ9にも複数の種類がある。
【0018】
テープフィーダ9は、さらに、供給位置93、スプロケット94、および図略のテープ剥離部を有する。供給位置93は、テープフィーダ9の上面の後端付近に設けられる。スプロケット94は、供給位置93の前側に回転可能に設けられる。スプロケット94の歯は、キャリアテープTのスプロケット孔に係入する。スプロケット94は、図略の駆動モータによって間欠駆動され、キャリアテープTを一定ピッチずつ送る。テープ剥離部は、キャリアテープTを構成するカバーテープの一方の側縁をベーステープから剥離した状態で供給位置93を通過させ、部品の取り出しを可能とする。キャリアテープTは、供給位置93を通過した後、部品装着機に設けられたテープ切断装置によって切断される。
【0019】
さらに、テープフィーダ9の各々には、テープフィーダ9の個体を識別する識別コードが表示されている。また、テープフィーダ9には、図略のフィーダ制御部が設けられる。フィーダ制御部は、テープフィーダ9の識別コードおよびリールRの識別コードを記憶するとともに、部品供給動作を制御する。テープフィーダ9がフィーダ保持部2に保持されたとき、図略のコネクタが自動嵌合することによって、フィーダ制御部は、後述する主制御部81に通信接続される。
【0020】
フィーダセットアップ装置1の説明に戻る。リール取り付け機構3は、フィーダ保持部2の右側に配置される。リール取り付け機構3は、後述するリール移載機構1Aを含んで構成される。リール取り付け機構3は、横倒し姿勢のリールRを縦置き姿勢に変更し、さらに、リールRを作業実施位置のテープフィーダ9に取り付ける。リール取り付け機構3は、一対のガイドレール31、移動台32、取り付け材33、載置エリア34、および仮置きエリア35などで構成される。なお、リール取り付け機構3は、横倒し姿勢のリールRを縦置き姿勢に変更する機構と、縦置き姿勢のリールRを掴んでテープフィーダ9に取り付ける機構とが分離された構成でもよい。
【0021】
一対のガイドレール31は、装置筐体12の前縁位置、および前後方向の概ね中央位置で左右方向に延在し、相互に離隔して平行に配置される。移動台32は、前後方向に長い部材で形成され、一対のガイドレール31の上側に跨って装架される。移動台32は、ガイドレール31に沿って図1および図2に示された右寄りの待機位置と、フィーダ保持部2との間を往復移動する。
【0022】
取り付け材33は、概ね角棒形状の部材で形成され、移動台32の右側面から上方に延在して設けられる。取り付け材33は、作業実施位置のテープフィーダ9のリール保持軸91に正対する。換言すると、取り付け材33は、リール保持軸91から見て正確な右方向に位置する。取り付け材33は、移動台32に近い箇所に設けられた揺動軸331を中心にして、図1および図2に示された直立姿勢、および左側に倒れた水平姿勢に揺動する(図1の矢印SW1参照)。取り付け材33の揺動軸331から離れた側の端部に、採取部332が設けられる。採取部332は、リールRを着脱可能に採取する。採取部332として、リールRに形成された爪部またはリールRの周縁を把持する把持機構や、負圧を用いてリールRを吸着する吸着機構などを用いることができる。
【0023】
載置エリア34は、一対のガイドレール31の間の右寄りの位置に設けられる。載置エリア34は、次に取り付ける予定のリールRが横倒し姿勢で載置されるエリアである。仮置きエリア35は、一対のガイドレール31の間の載置エリア34の左側に設けられる。仮置きエリア35は、リール取り付け機構3がリールRの使用順序を変更する場合に、当該のリールRを横倒し姿勢で仮置きして使用順序を後に変更するためのエリアである。仮置きエリア35に載置されたリールRは、結果的に使用されない場合がある。仮置きエリア35は、複数のリールRが仮置きされるように広く形成することができる。なお、移動台32および取り付け材33は、載置エリア34および仮置きエリア35の上方を移動する。
【0024】
テープ装填機構4は、図2に示されるように、フィーダ保持部2に近接して配置される(図1では省略)。テープ装填機構4は、テープフィーダ9内でキャリアテープTを装填して送り可能な状態にする。テープ装填機構4は、例えば多関節型ロボットにより構成され、具体例として多関節アーム41、カメラ42、および複数のフィンガ43などで構成される。
【0025】
多関節アーム41は、アームの回転や折り曲げなどの動作が自在であり、カメラ42およびフィンガ43の位置および向きを自在に調整する。カメラ42は、多関節アーム41の先端部に設けられる。カメラ42は、作業実施位置のテープフィーダ9を撮像して、リールRやキャリアテープTの位置および状態を検出する。複数のフィンガ43は、多関節アーム41の先端部にカメラ42と並んで設けられる。複数のフィンガ43は、作業対象物の把持および解放の動作に加えて、移動操作、捻り操作などを行うことができる。
【0026】
複数のフィンガ43は、装填動作に先行して、キャリアテープTの先端を留めている留めシールを剥がす。複数のフィンガ43は、次に、キャリアテープTの先端をスプロケット94に係合するまで装填して、送り可能な状態にする。複数のフィンガ43は、必要に応じてリールRをリール保持軸91の回りに回転させることにより、剥がし動作や装填動作を容易化することができる。テープ装填機構4は、動作時以外の時間帯において、リールRの着脱動作を阻害しないように、多関節アーム41を折り曲げた退避姿勢をとる。
【0027】
リール取り外し機構5は、フィーダ保持部2の右側に配置され、リール取り付け機構3よりも上側に位置する。リール取り外し機構5は、作業実施位置のテープフィーダ9からリールRを取り外す。リール取り外し機構5は、ガイドレール51、移動台52、取り外し材53、および回収ボックス54などで構成される。
【0028】
ガイドレール51は、装置筐体12の天井付近に設けられて、前後方向に延在する。移動台52は、左右方向に長く形成され、ガイドレール51の下側に装架される。移動台52は、ガイドレール51に沿って図1および図2に示された後寄りの待機位置と、フィーダ保持部2との間を往復移動する。
【0029】
取り外し材53は、移動台52よりも長い厚板形状の部材で形成され、移動台52の下側に左右方向に延在して設けられる。取り外し材53は、移動台52の左端付近に設けられた揺動軸531を中心にして、図1および図2に示された水平姿勢、および下方に垂れた垂直姿勢に揺動する(図1の矢印SW2参照)。取り外し材53の揺動軸531から離れた側の端部に、採取部532が設けられる。採取部532は、リールRを着脱可能に採取する。採取部532の採取方式は、リール取り付け機構3の採取部332と同じでもよいし、相違してもよい。
【0030】
回収ボックス54は、移動台52が待機位置に移動したときの取り外し材53の下方に配置される。回収ボックス54は、取り外した複数のリールRをまとめて回収する。回収ボックス54は、上方に開口する箱形状に形成されている。したがって、回収ボックス54は、取り外し材53の採取部532が解放することによって落下するリールRを自動的に回収することができる。
【0031】
リール供給部13は、リール保持部6を着脱可能に備え、さらに、リール移載機構1Aを備える。台座14の上面の左右には、前後方向に延びる一対の案内板141が設けられる。リール保持部6は、台座14の一対の案内板141の間に載置される。図2に示されるように、一対の案内板141は、前側の向かい合う内側がテーパ状に形成されて、前側の離間距離が後側よりも拡げられている。これにより、リール保持部6を前側から台座14に向けて進入させることが容易となっている。
【0032】
リール保持部6は、複数(例えば20個)のリールRを横倒し姿勢で積み上げて保持する。なお、リールRは、新品に限定されず、キャリアテープTを途中まで使用した使いかけのものであってもよい。リール保持部6は、水平配置される円板状の保持板61と、保持板61の中心から上向きに立てて設けられリールRの中心孔に係入する丸棒形状の保持軸62と、を有する。したがって、リール保持部6は、直径や幅寸法の異なるリールRが混在しても、それらの中心孔を揃えた状態で保持するので、リールRの取り出しが容易となっている。保持板61の上面の外周寄りに識別コード63が表示されている。識別コード63は、リール保持部6の個体を特定する情報を含む。識別コード63は、印刷やシールの貼り付けによって設けられる。
【0033】
作業者は、作業指示データに基づいて、複数のリールRを調達し、リール保持部6に積み上げる積み上げ作業を実施する。作業指示データは、フィーダセットアップ装置1が実施するセットアップ作業の作業内容を指示する。つまり、作業指示データは、部品装着機の生産進捗に伴って順番に必要となる複数のリールRの種別情報と、それらのリールRに適用可能な複数のテープフィーダ9の種別情報とを対応付けたデータである。
【0034】
リール移載機構1Aは、台座14の底部から左方に延びた板座142の上に配置される。リール移載機構1Aは、リール取り付け機構3の一部として機能する。リール移載機構1Aは、支柱1B、アーム1C、および採取部1Eなどで構成される。支柱1Bは、板座142の後部寄りの位置から鉛直上方に起立している。アーム1Cは、支柱1Bに対して昇降可能に設けられる。さらに、アーム1Cは、支柱1Bに近い箇所に設けられた回転軸1Dを中心にして、水平面内で回転可能に構成される。
【0035】
採取部1Eは、アーム1Cに対して伸縮可能に設けられる。採取部1Eは、その下側にリールRを着脱可能に採取する。採取部1Eの採取方式は、リール取り付け機構3の採取部332およびリール取り外し機構5の採取部532と同じでもよいし、相違してもよい。また、採取部1Eには、コードリーダ1F(図4参照)が付設されている。コードリーダ1Fは、リール保持部6の識別コード63を読み取る。さらに、コードリーダ1Fは、最も上側のリールRの識別コードを読み取ることができる。
【0036】
リール移載機構1Aは、前述したように、リール取り付け機構3の一部として機能する。詳述すると、リール移載機構1Aは、アーム1Cおよび採取部1Eの動作により、リール保持部6からリールRを取り出す。さらに、リール移載機構1Aは、アーム1Cおよび採取部1Eの動作により、取り出したリールRを横倒し姿勢のままで、載置エリア34または仮置きエリア35に載置する。リール移載機構1Aは、リール保持部6に積み上げられた複数のリールRを上側から順番に使用する。
【0037】
フィーダ供給部15は、フィーダ収容部7を着脱可能に備え、さらに、フィーダ搬送部75を備える。図2に示されるように、装置筐体16の上部の収納空間161は前方に開放されており、2個のフィーダ収容部7を左右に並べて収納することができる。収納空間161を区画する底面には、左右方向に延びるローラコンベア162が複数設けられ(図1参照)、フィーダ収容部7の収納動作が容易となっている。
【0038】
フィーダ収容部7は、前側が開いた箱形状に形成される。フィーダ収容部7の底面には、フィーダ保持部2のスロット22と同一形状のスロットが複数形成される。フィーダ収容部7は、複数(例えば20個)のテープフィーダ9を縦置き姿勢で左右方向に並べて収容する。複数のテープフィーダ9がフィーダ収容部7に収容され、かつフィーダ収容部7が収納空間161に収納されたとき、図略のコネクタが自動嵌合することによって、複数のフィーダ制御部は、後述する主制御部81に通信接続される。フィーダ収容部7の各々には、フィーダ収容部7の個体を識別する識別コードが表示されている。作業者は、前述した作業指示データに基づいて、使用する複数のテープフィーダ9を調達し、フィーダ収容部7に収容する収容作業を実施する。なお、収納空間161に収納されるフィーダ収容部7の個数は、1個でも3個以上でもよい。
【0039】
装置筐体16の収納空間161の前側下部に、ガイドレール163が設けられる。ガイドレール163は、収納空間161の左右方向の概ね全体に延在し、さらにフィーダ保持部2の前側まで延在する。このガイドレール163にフィーダ搬送部75が装架される。フィーダ搬送部75は、ガイドレール163に沿ってフィーダ収容部7とフィーダ保持部2の間を往復移動する。
【0040】
フィーダ搬送部75は、後側に開口部をもつ箱形状に形成される。フィーダ搬送部75は、テープフィーダ9を一時的に内蔵する内蔵空間、および、開口部を経由してテープフィーダ9の内蔵空間への出し入れを行うフィーダ操作機構を有する。したがって、フィーダ搬送部75は、フィーダ収容部7やフィーダ保持部2からテープフィーダ9を引き出したり、逆にテープフィーダ9をフィーダ収容部7やフィーダ保持部2に挿入したりすることができる。なお、リール供給部13およびフィーダ供給部15の前側に開閉可能な安全柵(図略)を設けて、作業者の不用意な接近を防止することが好ましい。
【0041】
2.フィーダセットアップ装置1の制御および駆動に係る構成
次に、フィーダセットアップ装置1の制御および駆動に係る構成について、図4を参考にして説明する。フィーダセットアップ装置1は、主制御部81、取り付け制御部82、装填制御部83、取り外し制御部84、移載制御部85、および搬送制御部86を有する。主制御部81は、通信機能およびマンマシンインターフェース機能を有するコンピュータ装置を用いて構成される。下位制御部に相当するその他の制御部は、主制御部81と一体に設けられてもよく、別に設けられてもよい。図4において、主制御部81に通信接続される複数のテープフィーダ9の一つだけが例示されている。
【0042】
主制御部81は、フィーダ保持部2に保持されたテープフィーダ9のフィーダ制御部に通信接続される。また、主制御部81は、フィーダ収容部7に収容された複数のテープフィーダ9のフィーダ制御部に通信接続される。一方、主制御部81は、上位制御部89に通信接続される。上位制御部89は、フィーダ収容部7の識別コードと、収容されている複数のテープフィーダ9の識別コードとを対応付けたフィーダ対応データを記憶している。フィーダ対応データは、前述した収容作業の際に作成される。また、上位制御部89は、リール保持部6の識別コードと、保持されている複数のリールRの識別コードとを対応付けたリール対応データを記憶している。リール対応データは、前述した積み上げ作業の際に作成される。上位制御部89は、テープフィーダ9の識別コードとテープフィーダの種別情報とを対応付けたフィーダ情報を記憶している。上位制御部89は、リールRの識別コードとリールRの種別情報とを対応付けたリール情報を記憶している。
【0043】
主制御部81は、セットアップ作業を開始する以前に、上位制御部89から作業指示データを取得する。さらに、主制御部81は、作業指示データに併せて、フィーダ対応データおよびリール対応データを取得する。なお、主制御部81は、フィーダ収容部7の識別コードを読み取るコードリーダ(二次元コードリーダなど)を備え、読み取った識別コードを上位制御部89に照会して、フィーダ対応データを取得するようにしてもよい。
【0044】
主制御部81は、取り付け制御部82、装填制御部83、取り外し制御部84、移載制御部85、および搬送制御部86を制御する。ここで、リール取り付け機構3(リール移載機構1Aを含む)、テープ装填機構4、およびリール取り外し機構5は、別々に設けられて駆動源が相違しており、互いに独立して動作する。したがって、主制御部81は、セットアップ作業を効率的に行えるようにリール取り付け機構3、テープ装填機構4、およびリール取り外し機構5を別々に並行して動作させ、かつ、機構間の干渉を回避するように制御する。
【0045】
取り付け制御部82は、リール取り付け機構3の移動台32の移動を駆動する第1モータの起動および停止、ならびに第1モータの正転および逆転の切り替えによる移動方向の変更を制御する。さらに、取り付け制御部82は、取り付け材33の揺動動作および採取部332の採取動作を制御する。
【0046】
装填制御部83は、テープ装填機構4のカメラ42の検出結果に基づいて、多関節アーム41およびフィンガ43の動作を制御する。取り外し制御部84は、リール取り外し機構5の移動台52の移動を駆動する第2モータの起動および停止、ならびに第2モータの正転および逆転の切り替えによる移動方向の変更を制御する。さらに、取り外し制御部84は、取り外し材53の揺動動作および採取部532の採取動作を制御する。移載制御部85は、リール移載機構1Aのアーム1Cの昇降動作および回転動作を制御し、さらに、採取部1Eの伸縮動作および採取動作を制御する。
【0047】
また、移載制御部85は、コードリーダ1Fが読み取ったリール保持部6の識別コード63を主制御部81に送信する。主制御部81は、受信した識別コード63を上位制御部89に照会して、リール対応データを取得し、リール保持部6の全てのリールRの個体を識別する。あるいは、コードリーダ1Fは、リールRの各々に表示された識別コードを逐次取得し、取得した識別コードが移載制御部85から主制御部81に送信されてもよい。搬送制御部86は、フィーダ搬送部75の移動を駆動する第3モータの起動および停止、ならびに第3モータの正転および逆転の切り替えによる移動方向の変更を制御する。
【0048】
主制御部81は、上位制御部89から作業指示データ、フィーダ情報、リール情報を取得し、フィーダ保持部2に保持されたテープフィーダ9の識別コードを取得し、移載制御部85からリール保持部6の識別コードまたはリールRの識別コードを取得する。さらに、主制御部81は、作業指示データ、フィーダ情報、リール情報および識別コードに基づいて、リール保持部6の一番上のリールRに適用可能なテープフィーダ9を選択することができる。すなわち、主制御部81は、認識したリールRの識別情報とテープフィーダの識別情報に基づいてリールRの種別に応じた種類のテープフィーダ9を選択する。
【0049】
3.フィーダセットアップ装置1の動作
次に、フィーダセットアップ装置1の動作について、図5図7を参考にして説明する。フィーダセットアップ装置1では複数の機構が並行して動作するので、動作フローは、図5に示されるように並列2系列となる。この動作フローは、主制御部81を主として下位制御部との協調制御により進められる。
【0050】
図5の動作フローの実行に先立ち、作業者は、セットアップ作業の対象となる複数のテープフィーダ9を収容した第1のフィーダ収容部7を収納空間161に収納する。さらに、作業者は、空の第2のフィーダ収容部7を収納空間161に収納する。これによれば、セットアップ済みのテープフィーダ9を第2のフィーダ収容部7に集めて、最終的に第1のフィーダ収容部7を空にする運用となる。
【0051】
上記に限定されず、1個のフィーダ収容部7のみを用い、セットアップ作業が終了したテープフィーダ9を元の収容位置に戻す運用としてもよい。また、2個のフィーダ収容部7にテープフィーダ9を隙間なく収容して、最大数のセットアップ作業を実施する運用とすることもできる。この運用では、第1のフィーダ収容部7へのセットアップ作業が終了して第2のフィーダ収容部7へのセットアップ作業を実施しているときに、作業実施済みの第1のフィーダ収容部7を作業実施前の第3のフィーダ収容部7と交換することができる。そして、これを繰り返すことにより、途切れることのないセットアップ作業を実施することができる。
【0052】
作業者は、さらに、セットアップ作業に用いる複数のリールRを保持したリール保持部6を、リール供給部13の台座14に載置する。このとき、フィーダ収容部7に収容された複数のテープフィーダ9と、リール保持部6に保持された複数のリールRとが一対一で対応して、過不足のないことが好ましい。作業者が作業指示データに基づいて前述した収容作業および積み上げ作業を実施することにより、一対一の対応関係が充足され、かつ過不足が生じない。一対一の対応関係が充足されることは、複数種類のテープフィーダ9および複数種類のリールRが混用される場合でも成立する。
【0053】
図5のステップS1で、主制御部81は、リール保持部6の一番上のリールRに対応するテープフィーダ9を搬送するようにフィーダ搬送部75を制御する。フィーダ搬送部75は、フィーダ収容部7から当該のテープフィーダ9を引き出して内蔵し、フィーダ保持部2まで移動し(図6の矢印M1参照)、内蔵していたテープフィーダ9をフィーダ保持部2に挿入する。これにより、当該のテープフィーダ9は、作業実施位置に保持されるとともに、主制御部81によってその識別コードが読み取られる。
【0054】
仮に、一番上のリールRに適用可能なテープフィーダ9が無い例外の場合、一番上のリールRは、リール移載機構1Aによって仮置きエリア35に載置され、二番目のリールRに対応するテープフィーダ9がフィーダ保持部2に挿入される。この例外は、例えば、作業者が何らかの事情でフィーダ収容部7からテープフィーダ9を抜き取った場合に発生する。この後、動作フローは、ステップS2~S5の第1系列およびステップS11~S14の第2系列に分かれる。
【0055】
第1系列のステップS2で、主制御部81は、テープフィーダ制御部から読み取ったテープフィーダ9の識別コードまたはリールRの識別コードに基づいて、テープフィーダ9のリールRの状態を確認し、動作フローを分岐させる。テープフィーダ9が事前に部品装着機で使用されているとき、リールRは、キャリアテープTの一部が使用された使いかけの状態となっている場合がある。この場合のステップS3で、テープ装填機構4は、キャリアテープTの先端を留めテープで留める処理を実施して、キャリアテープTの弛みを抑制する。このとき、テープ装填機構4は、必要に応じてキャリアテープTをリールRに巻き取ることができる。この後、テープ装填機構4は、多関節アーム41を折り曲げた退避姿勢をとる。
【0056】
次のステップS4で、リール取り外し機構5は、テープフィーダ9からリールRを取り外す。詳述すると、まず、移動台52が待機位置からフィーダ保持部2まで移動する(図6の矢印M2参照)。次に、取り外し材53が水平姿勢から垂直姿勢に揺動すると、採取部532がリールRに当接して、このリールRを採取する。その次に、取り外し材53が垂直姿勢から水平姿勢に戻ると、採取部532がリールRをリール保持軸91から抜き取って水平姿勢で保持する。このとき、主制御部81は、当該のテープフィーダ9のフィーダ制御部の記憶部からリールRの識別コードを削除する。さらに、主制御部81は、実際にリールRが取り外されたテープフィーダ9の識別コードを上位制御部89に送信する。その際、主制御部81は、テープフィーダ9の識別コードとともに取り外されたリールRの識別コードを上位制御部89に送信するようにしてもよい。
【0057】
次のステップS5で、リール取り外し機構5は、リールRを回収する。詳述すると、まず、移動台52がフィーダ保持部2から待機位置まで移動する(図7の矢印M4参照)。次に、採取部532がリールRを解放する。これにより、解放されたリールRは、自動的に回収ボックス54内に落下する。この後、動作フローは、ステップS6に進められ、第2系列の動作が終了するまで待機となる。
【0058】
また、ステップS2で、リールRは、キャリアテープTの全体が使用されて無くなった使用済みとなっている場合がある。この場合、動作フローは、ステップS3を省略してステップS4に進められ、直ちにリールRの取り外しが行われる。さらに、ステップS2で、テープフィーダ9に元からリールRが取り付けられていない場合(無しの場合)がある。この場合、動作フローは、直ちにステップS6に進められる。
【0059】
一方、第2系列のステップS11で、リール移載機構1Aは、採取部1Eを用いてリール保持部6の一番上のリールRを採取し、載置エリア34に載置する(図6の矢印M3参照)。また、一番上のリールRが仮置きエリア35に載置された例外の場合、リール移載機構1Aは、二番目のリールRを載置エリア34に載置する。この後、リール移載機構1Aは、採取部1Eをリール保持部6の上方に戻す。
【0060】
次のステップS12で、リール取り付け機構3は、載置エリア34のリールRの姿勢を変更する。詳述すると、まず、取り付け材33が直立姿勢から水平姿勢に倒れると、採取部332がリールRに当接して、このリールRを採取する。このとき、リールRは横倒し姿勢であるので、載置された位置および姿勢が安定化されている。したがって、採取部332は、リールRを容易に採取することができる。仮に、リールRが縦置き姿勢であると、転動したり向きが変化したりするおそれがある。
【0061】
その次に、取り付け材33が水平姿勢から直立姿勢に戻ると、採取部332がリールRを横倒し姿勢から縦置き姿勢に変更して保持する。なお、仮置きエリア35のリールRを使用する場合には、取り付け材33が倒れる前に、移動台32が所定距離だけ左方に移動する。この後、ステップS4の終了を意味する終了条件が満たされるまで、動作フローの実行が保留される。これは、リール取り付け機構3とリール取り外し機構5の干渉を回避するためである。
【0062】
終了条件が満たされた後のステップS13で、リール取り付け機構3は、リールRをテープフィーダ9に取り付ける。詳述すると、採取部332がリールRを縦置き姿勢で保持した状態で、移動台32がフィーダ保持部2まで移動する。これにより、リールRは、リール保持軸91に向かって真っすぐに前進し(図7の矢印M5参照)、自動的にリール保持軸91に取り付けられる。移動台32の移動は、移動台52の待機位置への移動と同時に並行することが可能である。
【0063】
リールRの取り付けが終了すると、主制御部81は、当該のテープフィーダ9のフィーダ制御部にリールRの識別コードを記憶させる。さらに、主制御部81は、実際に組み合わせられたテープフィーダ9の識別コードと、リールRの識別コードとを対応付けて上位制御部89に送信する。この後、移動台32は、待機位置に戻る。次のステップS14で、テープ装填機構4は、キャリアテープTの先端の留めテープを剥がして、スプロケット94に係合するまで装填する。
【0064】
ステップS14の後に実行されるステップS6で、フィーダ搬送部75は、フィーダ保持部2からテープフィーダ9を引き出して内蔵し、フィーダ収容部7まで移動し、内蔵していたテープフィーダ9をフィーダ収容部7に挿入する。これにより、1台のテープフィーダ9に対するセットアップ作業が終了する。次のステップS7で、主制御部81は、全数のテープフィーダ9に対するセットアップ作業が終了したか否か判定する。否の場合、動作フローはステップS1に戻され、次のテープフィーダ9に対するセットアップ作業が繰り返される。全数のテープフィーダ9に対するセットアップ作業が終了した場合、動作フローは終了となる。
【0065】
この後、作業者は、セットアップ済みのテープフィーダ9を収容したフィーダ収容部7を部品装着機まで搬送して、テープフィーダ9の段取り替えを行う。なお、仮置きエリア35にリールRが仮置きされている場合、当該のリールRに適用可能なテープフィーダ9を作業者がフィーダ収容部7に収容することで、当該のリールが使用される。さらに、使用されずに仮置きエリア35に残されたリールRは、リール移載機構1Aによってリール保持部6に戻され、作業者によって回収される。本実施形態では、作業者が始めにフィーダ収容部7およびリール保持部6を準備することにより、複数のテープフィーダ9のセットアップ作業が自動的に行われるので、省力化の効果が顕著である。
【0066】
また、本実施形態におけるセットアップ時間は、図8に示されている。図8において、キャリアテープTの留め処理の所要時間TA、リールRの取り外しの所要時間TB、リールRの回収の所要時間TC、別のリールRの準備(移載および姿勢変更)の所要時間TD、別のリールRの取り付けの所要時間TE、およびキャリアテープTの装填の所要時間TFである。また、「搬入」は、テープフィーダ9のフィーダ保持部2への挿入を意味し、「搬出」は、テープフィーダ9のフィーダ保持部2からの引き出しを意味する。
【0067】
本実施形態において、ステップS4の終了条件、すなわちリールRの取り外し(所要時間TB)が終了してから別のリールRの取り付け(所要時間TE)を開始する制約が有る。それでも、図示されるように、キャリアテープTの留め処理(所要時間TA)およびリールRの取り外し(所要時間TB)と、別のリールRの準備(所要時間TD)とを並行させることができる。さらに、リールRの回収(所要時間TC)と、別のリールRの取り付け(所要時間TE)およびキャリアテープTの装填(所要時間TF)とを並行させることができる。
【0068】
一方、特許文献1に例示される1台のロボット部を備える構成では、図9に示されるように、セットアップ作業の各処理を順番に実施し、並行処理することができない。したがって、本実施形態によれば、テープフィーダ9の搬入から搬出までのセットアップ時間を、従来技術と比較して大幅に短縮することができる。
【0069】
実施形態のフィーダセットアップ装置1において、リール取り付け機構3がリール取り外し機構5とは別途設けられているので、二つの機構は並行して動作することができる。したがって、一つのロボット部によりリールRの取り外しおよび別のリールRの取り付けを順番に行う従来技術と比較して、並行動作の分だけセットアップ時間を従来よりも短縮することができる。
【0070】
さらに、実施形態では、テープ装填機構4がリール取り外し機構5およびリール取り付け機構3とは別途設けられているので、三つの機構は並行して動作することができる。したがって、セットアップ時間を短縮する効果がさらに一層高められる。
【0071】
4.変形形態
次に、リール保持部6Aの形状が相違する変形形態について、図10を参考にして説明する。変形形態のリール保持部6Aは、底板64、保持板65、および保持軸66で構成される。底板64は、台座14に載置される部位であり、安定化を図るために広い長方形に形成される。保持板65は、底板64の一辺から直立して設けられる。保持軸66は、保持板65から垂直方向に立てて設けられ、底板64の上方で水平方向に延在する。保持軸66は、複数のリールRの中心孔に係入し、換言すると、複数のリールRを縦置き姿勢で並べて保持する。保持板65の外縁寄りに識別コード67が表示されている。
【0072】
変形形態において、リール移載機構1Aの採取部1Eは、直立姿勢に変形され、リール保持部6AからリールRを縦置き姿勢のままで採取する。さらに、採取部1Eは、リールRを縦置き姿勢のままで、リール取り付け機構3の採取部332に空中で受け渡す。変形形態におけるその他の部分の構成および動作は、実施形態と概ね同じである。変形形態においても、実施形態と同様、セットアップ作業を効率的に行うことができる。
【0073】
5.実施形態のフィーダセットアップシステム1S
次に、実施形態のフィーダセットアップシステム1Sについて、図11図13を参考にして説明する。フィーダセットアップシステム1Sは、フィーダセットアップ装置1にフィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cが付加されて構成される。図12に示されるように、フィーダ搬送車9Aは、フィーダ収容部7を載せて走行する。フィーダ搬送車9Aは、フィーダ収容部7の載せ替えを行うローラ装置9Bをその上面に有する。フィーダ搬送車9Aは、搬送制御部9Fからの無線指令9Gにしたがって走行し、かつ載せ替え作業を行う。フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cは、AGVと呼称される無人搬送車である。
【0074】
図13に示されるように、リール搬送車9Cは、複数のリール保持部6を載せて走行する。図13の例で、一つのリール保持部6はリールRを満載しており、別のリール保持部6は空である。リール搬送車9Cは、リール保持部6の位置を調整して載せ替えを自動化するための環状コンベア装置9Dをその上面に有する。リール搬送車9Cは、搬送制御部9Fからの無線指令9Gにしたがって走行し、かつ載せ替え作業を行う。なお、リール搬送車9Cは、1個のリール保持部6を載せて走行する小型化されたものでもよい。
【0075】
図11に示されるように、フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cの走行目標地点は、フィーダセットアップ装置1、倉庫9Jの入出庫口9K、外段取りエリア9L、および対基板作業ライン9Mを構成する部品装着機9Nの4箇所である。倉庫9Jは、テープフィーダ9などの器具、およびリールRなどの部材を入庫し、保管し、出庫する。外段取りエリア9Lは、対基板作業ライン9Mに関連する各種の段取り作業を作業者が実施するエリアである。なお、フィーダセットアップ装置1のリール供給部13およびフィーダ供給部15の前側に、安全柵は設けない。フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cは、4箇所の走行目標地点の相互間を走行路9Pに沿って走行する。走行路9Pは、レールなどの実体に限定されず、床面に仮想的に設定されたものであってもよい。
【0076】
次に、フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cによる搬送の事例について説明する。フィーダ搬送車9Aは、単品状態の複数のテープフィーダ9を倉庫9Jから出庫し、外段取りエリア9Lに搬送する。リール搬送車9Cは、単品状態の複数のリールRを倉庫9Jから出庫し、外段取りエリア9Lに搬送する。外段取りエリア9Lにおいて、作業者は、複数のテープフィーダ9をフィーダ収容部7に収容する収容作業を実施する。さらに、作業者は、複数のリールRをリール保持部6に積み上げる積み上げ作業を実施する。
【0077】
次に、フィーダ搬送車9Aは、外段取りエリア9Lで段取りされたフィーダ収容部7をフィーダセットアップ装置1まで搬送して、フィーダ供給部15の収納空間161に収納する。また、リール搬送車9Cは、外段取りエリア9Lで段取りされたリール保持部6をフィーダセットアップ装置1まで搬送して、リール供給部13の台座14に載置する。このとき、フィーダセットアップ装置1の主制御部81と搬送制御部9Fとが連携して、フィーダ収容部7およびリール保持部6の搬入を制御する。
【0078】
したがって、搬入されるフィーダ収容部7がフィーダ搬送部75に衝突することは無く、搬入予定位置に既に別のフィーダ収容部7が存在することも無い。また、リール搬送車9Cがフィーダセットアップ装置1に到着した時点で、台座14に空のリール保持部6が残っている場合がある。この場合、リール搬送車9Cは、まず台座14から空のリール保持部6を搬出し、次に搬送してきたリール保持部6を台座14に載置する。
【0079】
これで、フィーダセットアップ装置1は、稼働準備が整い、複数のテープフィーダ9のセットアップ作業を実行する。リール保持部6は、セットアップ作業の実行によってリールRが無い空の状態となる。リール搬送車9Cは、空のリール保持部6を搬出して、外段取りエリア9Lに搬送する。
【0080】
一方、フィーダ搬送車9Aは、セットアップ済みのテープフィーダ9を収容したフィーダ収容部7を搬出して、部品装着機9Nの近傍まで搬送する。作業者は、次回の生産に使用しないテープフィーダ9を部品装着機9Nから取り外し、フィーダ収容部7内の次回の生産に使用するテープフィーダ9を部品装着機9Nに取り付ける段取り替え作業を行う。取り外したテープフィーダ9は、フィーダ収容部7に収容される。フィーダ搬送車9Aは、このフィーダ収容部7をフィーダセットアップ装置1に搬送して、テープフィーダ9のリールRの交換を可能とする。あるいは、フィーダ搬送車9Aは、このフィーダ収容部7を外段取りエリア9Lに搬送する。
【0081】
上述した以外の搬送動作も可能である。例えば、フィーダ搬送車9Aは、使用予定が無いテープフィーダ9を倉庫9Jに入庫してもよく、リール搬送車9Cは、使いかけのリールRを倉庫9Jに入庫してもよい。また、フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cは、1台の搬送車で兼用されてもよい。さらに、フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cは、対基板作業ライン9Mで使用される各種の器具や部材を搬送する用途に兼用されてもよい。逆に、上述した搬送動作の一部を作業者が行ってもよいし、フィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cの一方を省略することも可能である。
【0082】
実施形態のフィーダセットアップシステム1Sでは、フィーダ収容部7およびリール保持部6のフィーダセットアップ装置1への搬入および搬出が自動で行われる。したがって、フィーダセットアップ装置1にフィーダ搬送車9Aおよびリール搬送車9Cを付加することにより、省力化の効果がさらに一層高められる。
【0083】
6.実施形態の応用および変形
なお、フィーダセットアップ装置の最小限の構成は、実施形態の構成からリール供給部13、フィーダ供給部15、およびテープ装填機構4を省略した構成となる。最小限の構成において、作業者は、テープフィーダ9をフィーダ保持部2に挿入し、リールRを横倒し姿勢で載置エリア34に載置する。これにより、リールRがテープフィーダ9に自動で取り付けられる。作業者は、リールRが取り付けられたテープフィーダ9を取り出し、キャリアテープTの装填を行って、セットアップ作業を終了する。
【0084】
また、テープ装填機構4は、前述したよりも複雑な装填動作を行うことができる。例えば、新品のリールRでは、キャリアテープTの先端に案内テープが付加されている。テープ装填機構4は、テープフィーダ9に新品のリールRが取り付けられた場合に、案内テープを所定位置で切断して、切断端をスプロケット94に係合するまで装填することができる。さらに、回収ボックス54の代わりにリール保持部6を配置して、取り外したリールRをリール保持部6に回収し、そのリール保持部6をリール搬送車9Cが搬出するようにしてもよい。その他にも、実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:フィーダセットアップ装置 11:リール着脱部 13:リール供給部 15:フィーダ供給部 1A:リール移載機構 1B:支柱 1C:アーム 1E採取部 1S:フィーダセットアップシステム 2:フィーダ保持部 3:リール取り付け機構 31:ガイドレール 32:移動台 33:取り付け材 332:採取部 34:載置エリア 35:仮置きエリア 4:テープ装填機構 41:多関節アーム 42:カメラ 43:フィンガ 5:リール取り外し機構 51:ガイドレール 52:移動台 53:取り外し材 532:採取部 54:回収ボックス 6、6A:リール保持部 61:保持板 62:保持軸 64:底板 65:保持板 66:保持軸 7:フィーダ収容部 75:フィーダ搬送部 81:主制御部 89:上位制御部 9:テープフィーダ 91:リール保持軸 94:スプロケット 9A:フィーダ搬送車 9C:リール搬送車 9F:搬送制御部 R:リール T:キャリアテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13