IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノリタケカンパニーリミテドの特許一覧

<>
  • 特許-加熱炉 図1
  • 特許-加熱炉 図2
  • 特許-加熱炉 図3
  • 特許-加熱炉 図4
  • 特許-加熱炉 図5
  • 特許-加熱炉 図6
  • 特許-加熱炉 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】加熱炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/30 20060101AFI20240809BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20240809BHJP
   F27B 9/36 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
F27B9/30
F27B9/24 R
F27B9/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024048758
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-03-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄太
(72)【発明者】
【氏名】吉金 隆宏
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292404(JP,A)
【文献】特開2006-090578(JP,A)
【文献】特開2010-223563(JP,A)
【文献】特開平06-147760(JP,A)
【文献】中国実用新案第209605576(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/30
F27B 9/24
F27B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を有するものであって、前記側壁に長孔が設けられた搬送室と、
前記搬送室内に設けられ、前記側壁の壁面に対して直交する直交方向に長尺なものであって被搬送物を搬送するための搬送ローラーと、
前記搬送室内に設けられ、前記直交方向に長尺なものであって前記被搬送物を加熱するための熱源と、
前記長孔内に設けられ、前記搬送ローラーの端部または前記熱源の端部が挿入された断熱部材と、を備え、
前記断熱部材は、隣接する2本以下の前記搬送ローラーの端部または隣接する2本以下の前記熱源の端部を前記長孔内のうち前記長孔の長手方向の端部の側に偏心した部分に配置するものであることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記断熱部材のうち前記長孔の長手方向の寸法は、前記断熱部材のうち前記長孔の短手方向の寸法に比べて大きく設定され、
前記断熱部材のうち前記断熱部材の端部の側に偏心した部分には、前記搬送ローラーの端部または前記熱源の端部が挿入される貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記断熱部材は、前記搬送ローラーの端部または前記熱源の端部を挟んで互いに対向する2つの分割断熱部材に分割されていることを特徴とする請求項2に記載の加熱炉。
【請求項4】
前記2つの分割断熱部材のそれぞれは、前記側壁の厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板に分割されていることを特徴とする請求項3に記載の加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被搬送物を直状の搬送室に沿って搬送しながら被搬送物を加熱する加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
上記加熱炉には搬送室内に長尺物を設けた構成のものがある。この長尺物は搬送室の延び方向に対して直交する直交方向に長尺なものであり、被搬送物を搬送室に沿って搬送するための搬送ローラーおよび被搬送物を加熱するための熱源のそれぞれは長尺物の一例である。この加熱炉の場合には搬送室の側壁に円孔が設けられていた。この円孔内には円筒状の断熱部材が設けられており、長尺物の端部が断熱部材内に挿入されることによって長尺物の端部が円孔内に支持されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-30848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の加熱炉の場合には長尺物の保守点検作業または交換作業を行うに際して長尺物を直交方向へ真直ぐに搬送室の内部から外部に抜取る必要があった。このため、搬送室の外部に長尺物の長さ寸法と同等程度の抜取り作業用の空間を必要とするので、抜取り作業用の空間内に柱や機械等の障害物が存在する場合に長尺物の抜取り作業に支障を来す虞があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は長尺物を抜取るための抜取り作業用の空間内に障害物が存在する場合であっても長尺物の抜取り作業を容易に行うことが可能な加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の加熱炉の要旨とするところは、(a)側壁を有するものであって前記側壁に長孔が設けられた搬送室と、(b)前記搬送室内に設けられ前記側壁の壁面に対して直交する直交方向に長尺なものであって被搬送物を搬送するための搬送ローラーと、(c)前記搬送室内に設けられ前記直交方向に長尺なものであって前記被搬送物を加熱するための熱源と、(d)前記長孔内に設けられ前記搬送ローラーの端部または前記熱源の端部が挿入された断熱部材とを備え、(f)前記断熱部材は隣接する2本以下の前記搬送ローラーの端部または隣接する2本以下の前記熱源の端部を前記長孔内のうち前記長孔の長手方向の端部の側に偏心した部分に配置するものであることにある。
【0007】
第2の発明の加熱炉の要旨とするところは、第1の発明において、(a)前記断熱部材のうち前記長孔の長手方向の寸法は前記断熱部材のうち前記長孔の短手方向の寸法に比べて大きく設定され、(b)前記断熱部材のうち前記断熱部材の端部の側に偏心した部分には前記搬送ローラーの端部または前記熱源の端部が挿入される貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【0008】
第3の発明の加熱炉の要旨とするところは、第2の発明において、(a)前記断熱部材は前記搬送ローラーの端部または前記熱源の端部を挟んで互いに対向する2つの分割断熱部材に分割されていることにある。
【0009】
第4の発明の加熱炉の要旨とするところは、第3の発明において、(a)前記2つの分割断熱部材のそれぞれは前記側壁の厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板に分割されていることにある。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、隣接する2本以下の搬送ローラーの端部または隣接する2本以下の熱源の端部が断熱部材によって長孔内のうち長孔の端部の側に偏心した部分に配置されている。このため、長尺物としての搬送ローラーまたは熱源を長孔の長手方向に向けて傾斜させた姿勢で搬送室の内部から外部に抜取ることができる。従って、長尺物の抜取り作業用の空間内に障害物が存在する場合であっても長尺物の抜取り作業を容易に行うことが可能になる。
【0011】
第2の発明によれば、長孔の長手方向に沿う寸法が長孔の短手方向に沿う寸法に比べて大きな断熱部材が長孔内に設けられている。この断熱部材のうち断熱部材の端部の側に偏心した部分に位置する貫通孔内に搬送ローラーの端部または熱源の端部が挿入されている。このため、断熱部材の外周面および長孔の内周面間の隙間寸法が狭められるので、搬送室の内部から長孔を通して外部に熱が漏れることを効果的に抑えることが可能になる。
【0012】
第3の発明によれば、断熱部材が搬送ローラーの端部または熱源の端部を挟んで相互に対向する2つの分割断熱部材に分割されている。このため、断熱部材を搬送ローラーの端部または熱源の端部から除去する除去作業を行う場合に断熱部材を2つの分割断熱部材に分割することができるので、断熱部材の除去作業を行い易くなる。
【0013】
第4の発明によれば、2つの分割断熱部材のそれぞれが側壁の厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板に分割されている。このため、複数の断熱板を単位枚数毎に長孔内に挿入することによって断熱部材を長孔内で構成することができるので、断熱部材の長孔内に対する設置作業を行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る加熱炉を示す側面図である。
図2図1の加熱炉を図1のX2―X2線に沿って破断して示す図である。
図3図1の加熱炉の一部である図2のX3部を拡大して示す図である。
図4図1の加熱炉用のスリーブを示す図である。
図5図1の加熱炉の一部である図2のX5部を拡大して示す図である。
図6】本発明の実施例2に係る加熱炉用のスリーブを示す図である。
図7】本発明の実施例2に係る加熱炉の一部を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例1について、図1ないし図5を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1の加熱炉10は磁器やセラミックス電子部品や炭素繊維等の焼成およびホーロー製品衛生陶器等の釉焼に適用されるローラーハースキルン型の一部を示したものであり、工場等の床面F上に設置されるものである。この加熱炉10は本発明の加熱炉に相当する。図1の矢印H1は水平方向を示すものであり、以下、矢印H1方向を搬送方向と称する。図2の矢印H2は搬送方向に対して直交する水平方向を示すものであり、以下、矢印H2方向を直交方向と称する。
【0017】
加熱炉10は、図2に示すように、搬送方向に対して平行な四角状の炉体20を有するものであり、炉体20は2つの側壁20aと天壁20bと底壁20cを有している。2つの側壁20aは前記直交方向に間隔を置いて相互に対向する鉛直なものであり、底壁20cは2つの側壁20aの下端部間を連結する水平なものである。天壁20bは2つの側壁20aの上端部間を連結する水平なものであり、2つの側壁20a~底壁20cの4者間には搬送方向に対して平行な炉室22が形成されている。この炉室22は本発明の搬送室に相当し、側壁20aは本発明の側壁に相当する。
【0018】
炉体20は、図2に示すように、搬送方向に対して平行な四角状の断熱レンガ24および金属製のケーシング26を有している。このケーシング26は断熱レンガ24を包被するものであり、ケーシング26は断熱レンガ24の外周面を覆う四角状の外筒部26aおよび断熱レンガ24の内周面を覆う四角状の内筒部26bを有している。
【0019】
炉体20には、図2に示すように、2つの側壁20aのそれぞれの外面に位置してローラーケース28が設置されている。これら各ローラーケース28は搬送方向に対して平行な細長なものであり(図1参照)、両ローラーケース28は炉体20を挟んで前記直交方向に相互に対向配置されている。これら各ローラーケース28は、図3に示すように、炉体20側の一面のみが開口するものである。これら各ローラーケース28にはローラーケース28を周回するフランジ部28aが形成されており、各フランジ部28aおよび炉体20の側壁20a間にはローラーケース28を周回するシール部材30が介在されている。
【0020】
各ローラーケース28のフランジ部28aには、図3に示すように、炉体20の外側から複数のボルト32aが挿入されており、各ボルト32aの先端部はシール部材30およびケーシング26の外筒部26aを貫通して断熱レンガ24内に突出している。これら各ボルト32aの先端部にはナット32bが螺合されており、各ローラーケース28は複数組のボルト32aおよびナット32bによって炉体20の側壁20aに着脱可能に固定されている。これら2つのローラーケース28のそれぞれには軸受機構40が固定されている。これら2つの軸受機構40は互いに同一に構成されたものであり、以下、1つの軸受機構40を対象に軸受機構40について説明する。
【0021】
軸受機構40は、図3に示すように、2つの軸受板42と2つの軸受板42の上端部間に介在された上スペーサー板44と2つの軸受板42の下端部間に介在された下スペーサー板46を有している。2つの軸受板42は前記直交方向に隙間を介して互いに対向する鉛直とされており、上スペーサー板44および下スペーサー板46のそれぞれは水平とされている。これら上スペーサー板44および下スペーサー板46のそれぞれには軸受機構40の外側から一方の軸受板42を通して複数のボルト48aが挿入されている。
【0022】
各ボルト48aの先端部は、図3に示すように、他方の軸受板42を通してローラーケース28内に突出している。これら各ボルト48aの先端部にはナット48bが螺合されており、2つの軸受板42と上スペーサー板44と下スペーサー板46の4者は複数組のボルト48aおよびナット48bによって分解可能に相互に連結されている。
【0023】
各軸受板42には、図3に示すように、8つの軸受50(1つのみ図示する)が支持されている。これら各軸受板42の8つの軸受50は搬送方向に相互に間隔を置いて一列に並ぶものであり、軸受機構40は前記直交方向に相互に対向する8対の軸受50を有している。これら8対の軸受50のそれぞれには支持軸52が回転可能に支持されている。これら8本の支持軸52のそれぞれは前記直交方向に平行な円柱状をなすものであり、搬送方向に相互に間隔を置いて一列に並べられている。これら各支持軸52のうちローラーケース28側の一端部はローラーケース28内に突出し、各支持軸52のうちローラーケース28とは反対側の他端部は軸受機構40の外部に突出している。
【0024】
8本の支持軸52のそれぞれには、図3に示すように、ローラーケース28内に位置して径小部52aおよびヘッド部52bが形成されている。これら各径小部52aは支持軸52に比べて径小な円柱状をなすものであり、各ヘッド部52bは径小部52aに比べて径大な円柱状をなすものである。これら各支持軸52には支持軸52に比べて径大な円環状のばね押え板54が固定されている。これら各支持軸52の外周面のうちばね押え板54よりも炉体20側の部分には圧縮コイルスプリングからなる押えばね56が挿入されている。各軸受機構40は以上のように構成されている。
【0025】
断熱レンガ24のうち炉体20の2つの側壁20aのそれぞれに対応する部分には、図1に示すように、第1のレンガ孔24aが上下2段に形成されている。これら各第1のレンガ孔24aは断熱レンガ24のうち側壁20aに対応する部分を前記直交方向に貫通するものであり、前記直交方向から見た場合に水平方向の寸法が鉛直方向の寸法に比べて大きな長孔形状をなしている。ケーシング26は、図3に示すように、各第1のレンガ孔24aに対応して第1のレンガ孔カバー26cを有している。これら各第1のレンガ孔カバー26cは外筒部26aから炉室22側へ突出する筒状をなすものであり、各第1のレンガ孔24aの内周面は第1のレンガ孔カバー26cによって覆われている。
【0026】
断熱レンガ24のうち炉体20の2つの側壁20aのそれぞれに対応する部分には、図1に示すように、図1の横方向である搬送方向に並ぶ2つの第2のレンガ孔24bが上下2段に形成されている。これら各第2のレンガ孔24bは断熱レンガ24のうち側壁20aに対応する部分を直交方向に貫通するものであり、前記直交方向から見た場合に図1の横方向の寸法である搬送方向の寸法が図1の縦方向の寸法である鉛直方向の寸法に比べて大きな長孔形状をなしている。これら各第2のレンガ孔24bの鉛直方向の寸法は第1のレンガ孔24aの鉛直方向の寸法と同一に設定され、各第2のレンガ孔24bの搬送方向の寸法は第1のレンガ孔24aの搬送方向の寸法に比べて短く設定されている。
【0027】
ケーシング26は各第2のレンガ孔24bに対応して第2のレンガ孔カバー26d(図4(b)参照)を有している。これら各第2のレンガ孔カバー26dは第1のレンガ孔カバー26cと同様に外筒部26aから炉室22側へ突出する筒状をなすものであり、各第2のレンガ孔24bの内周面は第2のレンガ孔カバー26dによって覆われている。
【0028】
断熱レンガ24のうち炉体20の2つの側壁20aのそれぞれに対応する部分には、図1に示すように、搬送方向に並ぶ4つの第3のレンガ孔24cが上下2段に形成されている。これら各第3のレンガ孔24cは断熱レンガ24のうち側壁20aに対応する部分を直交方向に貫通するものであり、前記直交方向から見た場合に円形状をなしている。これら各第3のレンガ孔24cの直径寸法は第1のレンガ孔24aおよび第2のレンガ孔24bのそれぞれの鉛直方向の寸法と同一に設定されている。
【0029】
ケーシング26は各第3のレンガ孔24cに対応して第3のレンガ孔カバー26e(図4(c)参照)を有している。これら各第3のレンガ孔カバー26eは第1のレンガ孔カバー26cと同様に外筒部26aから炉室22側へ突出する筒状をなすものであり、各第3のレンガ孔24cの内周面は第3のレンガ孔カバー26eによって覆われている。
【0030】
炉体20の各側壁20aは、図3および図5に示すように、上下方向に並ぶ2つの第1のスリーブ挿入孔58aを有している。これら各第1のスリーブ挿入孔58aは第1のレンガ孔カバー26cの内部空間を称するものであり、ケーシング26の内筒部26bには各第1のスリーブ挿入孔58aに対応して第1の窓部26fが形成されている。これら各第1の窓部26fは前記直交方向から見た場合に第1のスリーブ挿入孔58aに重なる長孔形状をなすものであり、各第1のスリーブ挿入孔58aは第1の窓部26fを介して炉室22内に連通している。これら各第1のスリーブ挿入孔58aは本発明の長孔に相当する。
【0031】
炉体20の各側壁20aは搬送方向に一列に並ぶ2つの第2のスリーブ挿入孔58b(図4(b)参照)を上下2段に有している。これら各第2のスリーブ挿入孔58bは第2のレンガ孔カバー26dの内部空間を称するものであり、ケーシング26の内筒部26bには各第2のスリーブ挿入孔58bに対応して第2の窓部(図示せず)が形成されている。これら各第2の窓部は前記直交方向から見た場合に第2のスリーブ挿入孔58bに重なる長孔形状をなすものであり、各第2のスリーブ挿入孔58bは第2の窓部を介して炉室22内に連通している。これら各第2のスリーブ挿入孔58bは本発明の長孔に相当する。
【0032】
炉体20の各側壁20aは搬送方向に一列に並ぶ4つの第3のスリーブ挿入孔58c(図4(c)参照)を上下2段に有している。これら各第3のスリーブ挿入孔58cは第3のレンガ孔カバー26eの内部空間を称するものであり、ケーシング26の内筒部26bには各第3のスリーブ挿入孔58cに対応して第3の窓部(図示せず)が形成されている。これら各第3の窓部は前記直交方向から見た場合に第3のスリーブ挿入孔58cに重なる円形状をなすものであり、各第3のスリーブ挿入孔58cは第3の窓部を介して炉室22内に連通している。
【0033】
図1の炉室22内には、図3に示すように、8本の搬送ローラー60が収納されている(1本のみ図示する)。これら各搬送ローラー60は前記直交方向に平行な円筒状のセラミックスからなるものであり、前記直交方向から見た場合の搬送ローラー60の形状は円形状に設定されている。これら各搬送ローラー60は側壁22aの外側の壁面および内側の壁面のそれぞれに対して直交する長尺なものである。これら8本の搬送ローラー60のうち2本のそれぞれの各端部は下段の第1のスリーブ挿入孔58a内を通して支持軸52のヘッド部52bの外周面に抜差し可能に嵌合されている。残りの6本の搬送ローラー60のうち2本のそれぞれの各端部は下段の第2のスリーブ挿入孔58b内を通して支持軸52のヘッド部52bの外周面に抜差し可能に嵌合されている。これら各搬送ローラー60は本発明の搬送ローラーに相当する。残りの4本の搬送ローラー60のそれぞれの各端部は第3のスリーブ挿入孔58cを通して支持軸52のヘッド部52bの外周面に抜差し可能に嵌合されている。
【0034】
炉体20の下段の各第1のスリーブ挿入孔58a内および上段の各第1のスリーブ挿入孔58a内のそれぞれには、図3および図5に示すように、断熱材製の第1のスリーブ62が挿入されている。これら各第1のスリーブ62は本発明の断熱部材に相当するものであり、各組の第1のスリーブ62の外周面および第1のスリーブ挿入孔58aの内周面間にはバルク外断熱部材64が充填されている。これら各第1のスリーブ62は、図4(a)に示すように、前記直交方向から見た場合に第1のスリーブ挿入孔58aに相似する長孔形状をなすものである。これら各第1のスリーブ62のうち第1のスリーブ挿入孔58aの長手方向の寸法は第1のスリーブ挿入孔58aの短手方向の寸法に比べて大きく設定されている。
【0035】
各第1のスリーブ62には、図4(a)に示すように、2つの貫通孔66が形成されている。これら各貫通孔66は第1のスリーブ62を前記直交方向から見た場合に第1のスリーブ62のうち端部の側に偏心した部分に設けられたものである。これら各貫通孔66は第1のスリーブ62を厚さ方向に貫通するものであり、各貫通孔66を前記直交方向から見た場合の貫通孔の形状は円形状に設定されている。これら各貫通孔66は本発明の貫通孔に相当する。
【0036】
炉体20の各第2のスリーブ挿入孔58b内には、図4(b)に示すように、断熱材製の第2のスリーブ68が収納されている。これら各第2のスリーブ68は本発明の断熱部材に相当するものであり、各組の第2のスリーブ68の外周面および第2のスリーブ挿入孔58bの内周面間には第1のスリーブ62と同様にバルク外断熱部材64が充填されている。これら各第2のスリーブ68は前記直交方向から見た場合に第2のスリーブ挿入孔58bに相似する長孔形状をなすものである。これら各第2のスリーブ68のうち第2のスリーブ挿入孔58bの長手方向の寸法は第2のスリーブ挿入孔58bの短手方向の寸法に比べて大きく設定されている。これら各第2のスリーブ68には第1のスリーブ62の貫通孔66と同一形状をなす1つの貫通孔66が形成されている。これら各第2のスリーブ68の貫通孔66は第2のスリーブ68を直交方向から見た場合に第2のスリーブ68のうち端部の側に偏心した部分に設けられている。
【0037】
炉体20の各第3のスリーブ挿入孔58c内には、図4(c)に示すように、断熱材製の第3のスリーブ70が収納されている。これら各第3のスリーブ70は前記直交方向から見た場合に第3のスリーブ挿入孔58cに相似する円形状をなすものであり、各第3のスリーブ70には第1のスリーブ62と同様の貫通孔66が形成されている。これら各組の第3のスリーブ70の外周面および第3のスリーブ挿入孔58cの内周面間には第1のスリーブ62と同様にバルク外断熱部材64が充填されている。
【0038】
8本の搬送ローラー60のうち2本のそれぞれの各端部は、図3に示すように、下段の第1のスリーブ62の貫通孔66内に回転可能に挿入されている。残りの8本の搬送ローラー60のうち2本のそれぞれの各端部は下段の第2のスリーブ68の貫通孔66内に回転可能に挿入されている。残りの4本の搬送ローラー60のそれぞれの各端部は下段の第3のスリーブ70の貫通孔66内に回転可能に挿入されている。これら8本の搬送ローラー60のそれぞれの外周面および貫通孔66の内周面間にはバルク内断熱部材72が充填されている。
【0039】
図1の炉体20の外部には、図2に示すように、搬送モーター74が設置されている。計16本の支持軸52のうち搬送モーター74側の8本のそれぞれには、図3に示すように、スプロケット76が固定されている。これら8つのスプロケット76のそれぞれは共通のチェーン機構(図示せず)を介して搬送モーター74の駆動軸に連結されている。このチェーン機構は搬送モーター74の運転状態で8本の搬送ローラー60のそれぞれを互いに同一方向へ互いに同一速度で支持軸52を介して回転操作する。これら8本の搬送ローラー60は、図2に示すように、被搬送物Cを支持するものであり、被搬送物Cは8本の搬送ローラー60が搬送モーター74によって回転操作されることによって炉室22に沿って搬送方向へ搬送される。
【0040】
8本の搬送ローラー60のそれぞれの保守点検作業または交換作業を行うには搬送モーター74とは反対側の従動側のローラーケース28を側壁20aから取外す。このローラーケース28の取外し作業は複数本のボルト32aを取外すことによって可能になるものであり、各支持軸52はローラーケース28を取外すときに搬送ローラー60から抜取られる。このローラーケース28の取外し状態で下段の各第1のスリーブ62と下段の各第2のスリーブ68と下段の各第3のスリーブ70を除去する。そして、各搬送ローラー60を従動側に向けて炉室22の内部から外部に抜取り、搬送ローラー60の保守点検作業または交換作業を炉室22の外部で行う。
【0041】
炉室22内には、図5に示すように、前記直交方向に延びる長尺な8本のヒーター78(1本のみ図示する)が収納されている。これら各ヒーター78は前記直交方向から見た場合に搬送ローラー60と同じ大きさの円形状をなすものである。これら各ヒーター78は側壁22aの内側の壁面および外側の壁面のそれぞれに対して直交する長尺なものであり、各ヒーター78は本発明の長尺な熱源に相当する。
【0042】
8本のヒーター78のうち2本のそれぞれの各端部は、図5に示すように、側壁20aの上段の第1のスリーブ62の貫通孔66内に挿入されている。残りの6本のヒーター78のうち2本のそれぞれの各端部は上段の第2のスリーブ68の貫通孔66内に挿入されている。残りの4本のヒーター78のそれぞれの各端部は側壁20aの上段の第3のスリーブ70の貫通孔66内に挿入されている。これら各ヒーター78は炉室22内の天井部のうち搬送ローラー60の真上に設置されたものであり、図5に示すように、各ヒーター78の外周面および貫通孔66の内周面間にはバルク内断熱部材72が充填されている。
【0043】
炉室22内は8本のヒーター78が通断電制御にされることに応じて被搬送物Cを加熱処理するための加熱処理温度に制御される。これら8本のヒーター78および搬送モーター74の運転状態では被搬送物Cが搬送方向へ搬送されながら加熱処理される。
【0044】
図1の炉体20には、図1に示すように、2つの側壁20aのそれぞれの外面に位置して搬送方向に延びる細長なヒーターカバー80が設置されている。これら各ヒーターカバー80は、図5に示すように、炉室22側の一面のみが開口するものであり、各ヒーター78の端部の電極部はヒーターカバー80によって覆われている。これら各ヒーターカバー80にはヒーターカバー80を周回するフランジ部80aが形成されており、各フランジ部80aおよび側壁20a間にはヒーターカバー80を周回するシール部材82が介在されている。
【0045】
各ヒーターカバー80のフランジ部80aには、図5に示すように、炉室22の外側から複数のボルト84aが挿入されており、各ボルト84aの先端部はシール部材82およびケーシング26の外筒部26aを貫通して断熱レンガ24内に突出している。これら各ボルト84aの先端部にはナット84bが螺合されており、各ヒーターカバー80は複数組のボルト84aおよびナット84bによって炉体20の側壁20aに着脱可能に固定されている。
【0046】
8本のヒーター78の保守点検作業または交換作業を行うには従動側のヒーターカバー80の複数のボルト84aを側壁20aから取外し、従動側のヒーターカバー80を側壁20aから取外す。このヒーターカバー80の取外し状態で上段の各第1のスリーブ62と上段の各第2のスリーブ68と上段の各第3のスリーブ70を除去する。そして、各ヒーター78を従動側に向けて炉室22の内部から外部に抜取り、各ヒーター78を炉室22の外部で保守点検または交換する。
【0047】
上記実施例1によれば、搬送ローラー60の端部およびヒーター78の端部のそれぞれを第1のスリーブ62によって第1のスリーブ挿入孔58a内のうち端部の側に偏心した部分に保持した。このため、搬送ローラー60およびヒーター78のそれぞれを第1のスリーブ挿入孔58aの長手方向に向けて傾斜させた姿勢で炉室22の内部から外部に抜取ることができる。従って、搬送ローラー60およびヒーター78の抜取り作業用の空間内に障害物が存在する場合であっても搬送ローラー60およびヒーター78のそれぞれの抜取り作業を容易に行うことが可能になる。この効果は第2のスリーブ68についても同様である。
【0048】
上記実施例1によれば、長手方向の寸法が短手方向の寸法に比べて大きな長孔形状の第1のスリーブ62を第1のスリーブ挿入孔58a内に設けた。この第1のスリーブ62のうち第1のスリーブ62の端部の側に偏心した部分に貫通孔66を設けた。このため、第1のスリーブ62の外周面および第1のスリーブ挿入孔58aの内周面間の隙間寸法が狭められるので、炉室22の内部から第1のスリーブ挿入孔58aを通して外部に熱が漏れることを効果的に抑えることが可能になる。この効果は第2のスリーブ68についても同様である。
【0049】
上記実施例1においては、第1のスリーブ62を単一部材から構成したが、これに限定されるものではなく、第1のスリーブ62を複数の部材に分割しても良い。以下、第1のスリーブ62を複数の部材に分割した本発明の実施例2について説明する。
【実施例2】
【0050】
搬送ローラー60用の各第1のスリーブ62は、図6に示すように、両貫通孔66の中心点間を通る直線で第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bの2つに分割されている。これら搬送ローラー60用の各第1のスリーブ62の第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62b間は2本の搬送ローラー60の端部を上下に挟んで互いに対向するものであり、第1のスリーブ挿入孔58a内で互いに接触している。これら搬送ローラー60用の第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bは本発明の2つの分割断熱部材に相当する。この搬送ローラー60用の各第1の上分割スリーブ62aおよび各第1の下分割スリーブ62bのそれぞれは側壁20aの厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板62cに分割されている。これら複数の断熱板62cは第1のスリーブ挿入孔58a内に1枚毎に挿入されることに応じて第1のスリーブ挿入孔58a内で重ねられたものであり、複数の断熱板62cのそれぞれはバルク外断熱部材64およびバルク内断熱材72の両者に接触している。
【0051】
ヒーター78用の各第1のスリーブ62は搬送ローラー60用の第1のスリーブ62と同様に両貫通孔66の中心点間を通る直線で第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bの2つに分割されている。これらヒーター78用の各第1のスリーブ62の第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62b間は2本のヒーター78の端部を上下に挟んで互いに対向するものであり、第1のスリーブ挿入孔58a内で互いに接触している。これらヒーター78用の第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bは本発明の2つの分割断熱部材に相当する。このヒーター78用の各第1の上分割スリーブ62aおよび各第1の下分割スリーブ62bのそれぞれは搬送ローラー60用の第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bと同様に側壁20aの厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板62cに分割されている。これら複数の断熱板62cは第1のスリーブ挿入孔58a内に1枚毎に挿入されることに応じて第1のスリーブ挿入孔58a内で重ねられたものであり、複数の断熱板62cのそれぞれはバルク外断熱部材64およびバルク内断熱材72の両者に接触している。
【0052】
ケーシング26の内筒部26bには、図7に示すように、上段の第1のスリーブ挿入孔58aおよび下段の第1のスリーブ挿入孔58aのそれぞれに対応して縦長な金属板からなる内押え板102が固定されている。これら各内押え板102は前記直交方向から見て第1のスリーブ62の2つの貫通孔66間に配置されている(図7参照)。これら各内押え板102は第1のスリーブ挿入孔58a内に断熱板62cが挿入される前に複数組のボルト104aおよびナット104bによって内筒部26bに着脱可能に固定されたものである。即ち、断熱板62cの挿入作業は内押え板102の内筒部26bに対する固定状態で内押え板102の反対側から行われるものである。この断熱板62cの挿入作業中には断熱板62cが第1のスリーブ挿入孔58aの端面を通過して脱落することが内押え板102によって防止される。
【0053】
ケーシング26の外筒部26aには、図7に示すように、上段の第1のスリーブ挿入孔58aおよび下段の第1のスリーブ挿入孔58aのそれぞれに対応して縦長な金属板からなる外押え板106が固定されている。これら各外押え板106は前記直交方向から見て第1のスリーブ62の2つの貫通孔66間に配置されている。これら各外押え板106は第1のスリーブ挿入孔58a内に全ての断熱板62cが挿入された後に複数組のボルト108aおよびナット108bによって外筒部26aに着脱可能に固定されたものである。これら各外押え板106は複数の断熱板62cが挿入作業の完了後に第1のスリーブ挿入孔58a内から脱落することを内押え板102と共に防止する。
【0054】
上記実施例2によれば、搬送ローラー60用の第1のスリーブ62を搬送ローラー60の端部を挟んで相互に対向する第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bの2つに分割した。このため、搬送ローラー60の保守点検作業等を行うにあたって、第1のスリーブ62を第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bに分割することによって搬送ローラー60から除去することができる。従って、第1のスリーブ62の除去作業が容易になる。この効果はヒーター78用の第1のスリーブ62についても同様である。
【0055】
上記実施例2によれば、搬送ローラー60用の第1の上分割スリーブ62aおよび第1の下分割スリーブ62bのそれぞれを炉室22の側壁20aの厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板62cに分割した。このため、複数の断熱板62cを1枚毎に第1のスリーブ挿入孔58a内に挿入することによって第1のスリーブ62を第1のスリーブ挿入孔58a内で構成することができる。従って、第1のスリーブ62の第1のスリーブ挿入孔58a内に対する設置作業が容易になる。この効果はヒーター78用の第1のスリーブ62についても同様である。
【0056】
上記実施例2においては、第1のスリーブ62に加えて第2のスリーブ68を第1のスリーブ62と同様に第2の上分割スリーブおよび第2の下分割スリーブの2つに分割しても良い。この場合には第2の上分割スリーブおよび第2の下分割スリーブのそれぞれを側壁20aの厚さ方向に相互に重なる複数の断熱板に分割することが好ましい。
【0057】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、次の手順で搬送ローラー60の保守点検作業等を行っても良い。8本の搬送ローラー60を従動側に向けて炉室22の内部から外部に抜取る。これら8本の搬送ローラー60の抜き取り状態で8本の搬送ローラー60から下段の各第1のスリーブ62と下段の各第2のスリーブ68と下段の各第3のスリーブ70を除去する。この手順は8本のヒーター78についても同様である。
【0058】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、直交方向から見て搬送方向に対して傾斜する長尺な長孔形状の第1のスリーブ挿入孔および第2のスリーブ挿入孔を側壁20aに設けても良い。あるいは、直交方向から見て搬送方向に対して直交する長尺な長孔形状の第1のスリーブ挿入孔および第2のスリーブ挿入孔を側壁20aに設けても良い。
【0059】
上記実施例1および2のそれぞれにおいては、搬送ローラー60の外径寸法およびヒーター78の外径寸法のそれぞれを互いに異なる大きさに設けても良い。
【0060】
上述したのは本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
10:加熱炉、22:炉室(搬送室)、22a:側壁、58a:第1のスリーブ挿入孔(長孔)、58b:第2のスリーブ挿入孔(長孔)、60:搬送ローラー、62:第1のスリーブ(断熱部材)、62a:上スリーブ分割部材(分割断熱部材)、62b:下スリーブ分割部材(分割断熱部材)、62c:断熱板、66:貫通孔、68:第2のスリーブ(断熱部材)、78:ヒーター(熱源)、C:被搬送物
【要約】
【課題】搬送ローラーの抜取り作業を容易に行うことが可能な加熱炉を提供すること。
【解決手段】搬送ローラー60の端部を第1のスリーブ62によって第1のスリーブ挿入孔58a内のうち端部の側に偏心した部分に配置した。このため、搬送ローラー60を第1のスリーブ挿入孔58aの長手方向に向けて傾斜させた姿勢で炉室22の内部から外部に抜取ることができるので、搬送ローラー60の抜取り作業用の空間内に障害物が存在する場合であっても搬送ローラー60の抜取り作業を容易に行うことが可能になる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7