(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】灰押出装置の清掃方法
(51)【国際特許分類】
F23J 1/02 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
F23J1/02 B
(21)【出願番号】P 2024067676
(22)【出願日】2024-04-18
【審査請求日】2024-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常泉 慎也
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-069226(JP,U)
【文献】特許第7391260(JP,B1)
【文献】特開2022-29100(JP,A)
【文献】特開2004-144321(JP,A)
【文献】特開2000-55341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底面の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、前記冷却槽の前記底面は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底面に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置の清掃方法であって、
前記灰押出装置は、前記スクレーパの往復動作の方向で見て、前記排出口に近い前端と前記前端の反対側に位置する後端とを備えた点検口を、前記導入口の直下の第一側壁に有し、
前記冷却槽から前記貯留水を排出し、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させ、前記点検口を開放する第一工程と、
前記第一工程の後に、前記底面の全幅に亘って接する金属製清掃具を前記点検口から前記冷却槽内に挿入して設置した後、
前記冷却槽内で前記金属製清掃具よりも前記スクレーパに近い位置に、前記金属製清掃具の高さと同等の長さの第一角材を、その長さ方向が前記金属製清掃具の高さ方向に沿う縦置きの状態で前記金属製清掃具の幅方向に沿って複数並べて配置した後、前記第一角材よりも前記スクレーパに近い位置に、前記金属製清掃具の幅と同等の長さの第二角材を、その長さ方向が前記金属製清掃具の幅方向に沿う横置きの状態で前記高さ未満に多段に複数積層した第二角材組を、1組または前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する第一準備工程、
または、
前記冷却槽内で前記金属製清掃具よりも前記スクレーパに近い位置に、前記第二角材を前記横置きの状態で且つ前記金属製清掃具の高さと同等の高さに多段に複数積層した前記第二角材組を、1組または前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する第二準備工程、
のうち、いずれか一つを実施した後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第二工程と、
前記スクレーパの前進により前記前端の近傍まで押し出された前記スクレーパの最寄りに配置された前記第二角材組と前記第一側壁との間に携帯ジャッキを挿入し、前記携帯ジャッキを伸ばして、前記最寄りの前記第二角材組を、前記第一側壁と前記第一側壁に対向して配置された第二側壁との間に固定する第三工程と、
前記第二工程において前記第一準備工程を実施した場合には、
前記第三工程において前記最寄りの前記第二角材組を前記携帯ジャッキで固定してから、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させた後、
前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記固定した前記第二角材組と同一段数に前記第二角材を積層した追加第二角材組を、1組または前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する第三準備工程、
または、
前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記固定した前記第二角材組の最上段の前記第二角材の前記スクレーパ側の面に少なくとも接触可能な長さの追加縦置角材を、前記縦置きの状態で前記金属製清掃具の幅方向に沿って複数並べて配置した後、前記追加縦置角材よりも前記スクレーパに近い位置に、前記固定した前記第二角材組と同一段数以下に前記第二角材を積層した前記追加第二角材組を、1組もしくは前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置、または、前記第二角材を1本もしくは前記往復動作の方向に沿って複数本前記横置きに並べて配置する第四準備工程、
または、
前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記第二角材と同一断面寸法且つ互いに同一長さの第三角材を、前記固定した前記第二角材組と同一段数に積層するとともに、その長さ方向が前記第二角材の長さ方向と垂直になる横置きの状態で並列に複数配置した後、前記第三角材よりも前記スクレーパに近い位置に、前記積層された前記第三角材と同一段数に前記第二角材を積層した前記追加第二角材組を、1組もしくは前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する第五準備工程、
のいずれか1つを実施し、
前記第二工程において前記第二準備工程を実施した場合には、前記第三工程において前記最寄りの前記第二角材組を前記携帯ジャッキで固定してから、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させた後、前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記第四準備工程を実施する第四工程と、
前記携帯ジャッキを縮めて前記固定を外し、前記携帯ジャッキを前記点検口から取り出した後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第五工程と、
を有する灰押出装置の清掃方法。
【請求項2】
前記第三工程では、前記携帯ジャッキが、前記最寄りの前記第二角材組の最上段の前記第二角材または前記最寄りの前記第二角材組の下方から数えて半数以上の上段に位置する前記第二角材を、前記第一側壁と前記第二側壁との間に固定することで、前記最寄りの前記第二角材組を前記第一側壁と前記第二側壁との間に固定する請求項1に記載の灰押出装置の清掃方法。
【請求項3】
前記金属製清掃具が前記排出口近傍に達するまで、前記第三工程、前記第四工程、前記第五工程を順次繰り返す請求項2に記載の灰押出装置の清掃方法。
【請求項4】
複数の前記第一角材同士は間隔を開けて配置され、
または、
複数の前記第三角材同士は、積層方向を除き、間隔を開けて配置され、
または、
前記第三準備工程における複数の前記追加第二角材組は、少なくとも一段目に配置される前記第二角材の総数が最上段に配置される前記第二角材の総数よりも少ない
請求項3に記載の灰押出装置の清掃方法。
【請求項5】
前記金属製清掃具から前記スクレーパに向かって、前記縦置きの状態で配置された前記第一角材を含む角材の高さ、または、前記横置きの状態で積層された前記第二角材の高さが、次第に低くなる請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の灰押出装置の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を冷却して排出する灰押出装置の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
灰押出装置は、焼却炉から排出された焼却灰を導入口から冷却槽内に導入し、冷却槽内で冷却したのち排出口から排出するための装置である。冷却槽の内部には焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパが配置される。スクレーパは、その先端が冷却槽の底面の全幅に亘って接するように配置され、導入口に対し排出口と逆側に配置された駆動装置によって駆動される。焼却炉が休炉する場合、灰押出装置内で焼却灰が固着しないように、灰押出装置内の焼却灰を除去するための清掃作業が行われる。
【0003】
清掃作業の際には、例えば、特許文献1に開示された金属製の清掃具を使用することができる。この場合、金属製の清掃具を先頭に配置し、その後、角材(木材)を順次継ぎ足してゆくことで、スクレーパの駆動(前後の往復運動)を用いて、灰押出装置の貯留槽内の焼却灰を、灰押出装置の排出口から排出することができる。具体的には、清掃具に対してスクレーパ側に配置された角材がスクレーパにより排出口側へ押し出されると、清掃具が角材に押されて排出口側へ押し出される。そして、焼却灰が清掃具に押されて排出口から排出される。下記特許文献1には、清掃作業を効率よく安全に実施するために、角材を配置する際に携帯ジャッキで一部の角材を固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、灰押出装置は、作業者が当該装置内部へ入ることができる点検口(いわゆるマンホール)から排出口まで登り傾斜の底面を備えている。そのため、清掃具が角材に押されて排出口側へ押し出される際、清掃具のスクレーパ側下方にのみ角材の圧力が加わると、清掃具の排出口側一部が、灰押出装置の底面から浮き上がってしまい、焼却灰の排出効率が低下する可能性がある。
そこで、清掃具のスクレーパ側上方にも角材の圧力を加えて当該浮き上がりを防止すべく、角材を上下方向へ積層する多段積みの方法が開発されている。例えば、清掃具の高さが角材を三本積層した高さ以上であり且つ四本積層した高さ未満であれば、角材を四本積層した角材組を、当該底面に沿って清掃具からスクレーパ側へ向かって順次、スクレーパの駆動方向に沿う横方向に並べて行く。
【0006】
しかし、上記のように角材を上下多段積みすることで清掃具の浮き上がりを防止する方法では角材の本数や容積が増加する。角材の本数が増加し、その容積が増加すると、灰押出装置の清掃作業において角材を配置する作業者の工数や作業時間が増して清掃コストが増加するのみならず、角材の運搬コストも増加するため、改善が望まれていた。
そこで、本発明は、上述した課題に鑑み案出されたものであって、角材を上下多段積みにする灰押出装置の清掃方法において、従来技術に比べて角材の本数や容積を減らしつつ、清掃具の浮き上がりを防止して、効率的に焼却灰を排出することができる灰押出装置の清掃方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の灰押出装置の清掃方法は、焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底面の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、前記冷却槽の前記底面は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底面に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置の清掃方法に関するものである。
前記灰押出装置は、前記スクレーパの往復運動の方向で見て、前記排出口に近い前端と前記前端の反対側に位置する後端とを備えた点検口を、前記導入口の直下の第一側壁に有する。
そして、以下の第一工程、第二工程、第三工程、第四工程、および、第五工程を少なくとも有する。
【0008】
すなわち、前記清掃方法は、前記冷却槽から前記貯留水を排出し、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させ、前記点検口を開放する第一工程と、前記第一工程の後に、前記底面の全幅に亘って接する金属製清掃具を前記点検口から前記冷却槽内に挿入して設置した後、以下の第一準備工程または第二準備工程のいずれか一つを実施した後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第二工程を含む。
【0009】
ここで、前記第一準備工程は、前記冷却槽内で前記金属製清掃具よりも前記スクレーパに近い位置に、前記金属製清掃具の高さと同等の長さの第一角材を、その長さ方向が前記金属製清掃具の高さ方向に沿う縦置きの状態で前記金属製清掃具の幅方向に沿って複数並べて配置した後、前記第一角材よりも前記スクレーパに近い位置に、前記金属製清掃具の幅と同等の長さの第二角材を、その長さ方向が前記金属製清掃具の幅方向に沿う横置きの状態で前記高さ未満に多段に複数積層した第二角材組を、1組または前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する工程である。
また、前記第二準備工程は、前記冷却槽内で前記金属製清掃具よりも前記スクレーパに近い位置に、前記第二角材を前記横置きの状態で且つ前記金属製清掃具の高さと同等の高さに多段に複数積層した前記第二角材組を、1組または前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する工程である。
【0010】
そして、前記清掃方法は、前記第二工程の後に、前記スクレーパの前進により前記前端の近傍まで押し出された前記スクレーパの最寄りに配置された前記第二角材組と前記第一側壁との間に携帯ジャッキを挿入し、前記携帯ジャッキを伸ばして、前記最寄りの前記第二角材組を、前記第一側壁と前記第一側壁に対向して配置された第二側壁との間に固定する第三工程を実施する。その後、以下の第四工程を実施する。
【0011】
すなわち、第四工程では、前記第二工程において前記第一準備工程を実施した場合には、前記第三工程において前記最寄りの前記第二角材組を前記携帯ジャッキで固定してから、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させた後、以下の第三準備工程、または、第四準備工程、または、第五準備工程のうち、いずれか一つを実施する。
第三準備工程は、前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記固定した前記第二角材組と同一段数に前記第二角材を積層した追加第二角材組を、1組または前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する工程である。
第四準備工程は、前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記固定した前記第二角材組の最上段の前記第二角材の前記スクレーパ側の面に少なくとも接触可能な長さの追加縦置角材を、前記縦置きの状態で前記金属製清掃具の幅方向に沿って複数並べて配置した後、前記追加縦置角材よりも前記スクレーパに近い位置に、前記固定した前記第二角材組と同一段数以下に前記第二角材を積層した前記追加第二角材組を、1組もしくは前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置、または、前記第二角材を1本もしくは前記往復動作の方向に沿って複数本前記横置きに並べて配置する工程である。
第五準備工程は、前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記第二角材と同一断面寸法且つ互いに同一長さの第三角材を、前記固定した前記第二角材組と同一の段数に積層するとともに、その長さ方向が前記第二角材の長さ方向と垂直になる横置きの状態で並列に複数配置した後、前記第三角材よりも前記スクレーパに近い位置に、前記積層された第三角材と同一段数に前記第二角材を積層した前記追加第二角材組を、1組もしくは前記往復動作の方向に沿って複数組並べて配置する工程である。
【0012】
また、第四工程では、前記第二工程において前記第二準備工程を実施した場合には、第三工程において前記最寄りの前記第二角材組を前記携帯ジャッキで固定してから、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させた後、前記固定した前記第二角材組と前記スクレーパとの間に、前記第四準備工程を実施する。
【0013】
さらに、前記清掃方法は、前記第四工程を実施した後、前記携帯ジャッキを縮めて前記固定を外し、前記携帯ジャッキを前記点検口から取り出した後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第五工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の灰押出装置の清掃方法によれば、従来に比べて角材の本数や容積を減らしつつ、金属製清掃具の浮き上がりを防止して、効率的に焼却灰を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の清掃方法が適用される灰押出装置の基本構成および本発明の清掃方法の第一工程を説明するための当該灰押出装置の断面図である。
【
図2】
図1の灰押出装置に使用される金属製清掃具の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の清掃方法の第二工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図4】本発明の清掃方法の第二工程の他の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図5】本発明の清掃方法の第三工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図6】本発明の清掃方法の第四工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図7】本発明の清掃方法の第四工程の他の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図8】本発明の清掃方法の第五工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図9】第五工程の後、再び第三工程乃至第五工程を繰り返す場合の当該第四工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図10】清掃作業終了時の状態を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図11】実施形態の清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図12】変形例1の清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図13】変形例1Aの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図14】変形例1Bの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図15】変形例1Cの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図16】変形例1Dの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図17】変形例2の清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図18】変形例2Aの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図19】変形例2Bの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図20】変形例2Cの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【
図21】変形例2Dの清掃方法における角材の並べ方を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の清掃方法について、各工程に対応する灰押出装置の状態を示す複数の図を用いて、実施形態および各変形例を説明する。これら各図においては、説明の簡便のため、適宜、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いて説明する。
以下に示す実施形態および各変形例の清掃方法はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態及び各変形例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態及び各変形例で示す清掃方法の各工程は、必須の工程を除き、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0017】
以下、
図1および
図2を用いて、まず、本発明の清掃方法が適用される灰押出装置の基本構成と、清掃作業に使用される金属製清掃具の一例を説明し、その後、
図3乃至
図10を用いて、実施形態の清掃方法の各工程を説明する。
【0018】
図1に示すように、一般的に、灰押出装置1は、焼却灰を冷却する水が二点鎖線で示す所定水位まで貯留された冷却槽2と、冷却槽2内に配置されたスクレーパ3及びスクレーパ3を駆動する駆動装置4と、焼却炉から焼却灰が導入される導入口5と、冷却槽2で冷却された焼却灰をスクレーパ3及び駆動装置4で排出する排出口6とを備える。
冷却槽2の導入口5は、筒状(例えば、矩形筒状)の壁面で形成される。この壁面は、図示しない灰シュートに接続される。なお、灰シュートの上端は、例えば、廃棄物の焼却炉であるストーカ炉の後燃焼段に接続される。
冷却槽2の底面7は、導入口5の直下の底面部分で最も低い位置にある最下面7cから、排出口6に向かって上り傾斜となる第一傾斜面7aと、最下面7cから第一傾斜面7aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面7bとを備える。すなわち、第一傾斜面7aは前進方向Df(ここでは、+X軸方向)に向かうにしたがって漸次高くなるように形成され、第二傾斜面7bは後進方向Dr(ここでは、-X軸方向)に向かうにしたがって漸次高くなるによう形成される。従って、底面7は、下に凸の曲面状となっている。
冷却槽2の断面形状は幅方向(
図1の紙面に直交する方向であり、ここではY軸方向)に一様であり、第一傾斜面7a、最下面7c及び第二傾斜面7bの各幅寸法は全て同一である。
【0019】
スクレーパ3は、上板3aと、上板3aに接続されて排出口6側を向く押出板3bと、上板3aと押出板3bとに接続した両側板(
図1には2つの側板のうち一方の側板3cのみ図示あり)とを備える。上板3aに対面する底板は存在しないため、スクレーパ3は、冷却槽2の底面7側に開放した箱型の形状である。
スクレーパ3は、押出板3bの下端(スクレーパ3の先端3d)が冷却槽2の底面7の全幅に亘って接しながら、駆動装置4によって、底面7に沿って前進及び後進する。
なお、スクレーパ3の「前進」とは、スクレーパ3の押出板3bが焼却灰を加圧して排出口6側に向かって押し出す押出方向(前進方向Df、すなわち+X軸方向)に動くことを意味する。また、スクレーパ3の「後進」とは、前進の逆方向(後進方向Dr、すなわち-X軸方向)に動くことを意味する。また、底面7の「全幅」とは、冷却槽2の内部の幅方向(Y軸方向)の実質的な大きさを意味する。具体的には、後述する
図5に示すように、冷却槽2の両側壁9の間隔、つまり、側壁9a(第一側壁)と側壁9b(第二側壁)との間の寸法と同一または当該寸法よりやや小さい寸法を意味する。
【0020】
駆動装置4は、スクレーパ3を駆動する装置であり、第二傾斜面7bの上方に配置される。駆動装置4は、二方向に回動可能な駆動軸4aと、スクレーパ3と駆動軸4aとを接続するアーム4bとを備える。駆動装置4は、駆動軸4aを回動させることで、アーム4bに接続されたスクレーパ3を前進及び後進(前後方向、±X軸方向)の往復動作をさせることができる。
【0021】
冷却槽2の2つの側壁9のうち、第一側壁9aには、最下面7c近傍に、
図1に一点鎖線で示すように、矩形の点検口8(いわゆるマンホール)が設けられる。点検口8には、図示しない密閉扉が設けられ、作業者は開閉することができる。点検口8は、少なくとも、後述する金属製清掃具(以下、単に「清掃具」という)10を、余裕をもって搬入できる程度の大きさに形成される。
なお、X軸方向(言い換えればスクレーパ3の往復動作の方向)で見て、点検口8の排出口6に近い側の端部を、ここでは前端8aという。また、前端8aの反対側、すなわち、点検口8の駆動装置4に近い側の端部を、ここでは後端8bという。
【0022】
図2は、清掃具の一例として、金属製の清掃具10を示す前面斜視図である。清掃具10は、本発明の発明者による特許第6823753号公報に記載の清掃具であるので、具体的な説明は省略する。なお、
図2に示すように、この清掃具10において、前進方向Dfへ向かう排出口6側(+X軸方向)を向いた前面は、平面部材で閉塞されているのに対して、後進方向Drへ向かうスクレーパ3側(-X軸方向)を向いた後面と左右の両側面と上面との各面は、清掃具10を直方体形状にするための断面L字型フレームで囲まれただけである。すなわち、当該フレームで囲まれた後面、左右側面及び上面は閉塞されておらず、開放されている。
【0023】
清掃具10は、例えば、2つのブロック10A、10Bに分割可能であるので、作業者は、分割した各ブロック10A、10Bをそれぞれ個別に点検口8から容易に灰押出装置1の内部へ搬入して、清掃具10に組み立てることができる。清掃具10の幅は、底面7の全幅の寸法である。清掃具10は、ブロック10Aとブロック10Bを合体させることで、当該全幅の矩形状の押出板を形成することができ、この押出板で焼却灰を排出口6に向かって押してゆくことができる。
ここでは、清掃具10は、2つのブロック10A、10Bを一体化させる構成として図示するが、特許第6823753号公報の趣旨に沿って3つ以上のブロックを一体化させる構成としてもよい。さらに、点検口8から灰押出装置1の内部へ搬入可能であれば、特許第6823753号公報に記載の清掃具を必ずしも使用する必要はなく、状況に応じて、別の清掃具、例えば、特許文献1に記載の清掃具と類似の形状でありながら分割不能な一体形成の清掃具を使用してもよい。
【0024】
では、
図3乃至
図11を用いて、実施形態の清掃方法、すなわち、上述した灰押出装置1の内部の焼却灰を排出口6から排出する清掃方法の各工程を順次説明する。なお、
図3乃至
図10は、
図1と同一の灰押出装置1のある時点における状態を示す図であるので、全ての図において全ての符号を記載することはせず、理解の促進のため、適宜、符号の記載を省略する。また、
図11は、
図3乃至
図10を用いて説明する実施形態の清掃方法における角材(木材)の並べ方を説明する斜視図である。
【0025】
[第一工程]
第一工程では、
図1のように、冷却槽2に水(貯留水)が貯留された状態で、まず、駆動装置4を駆動してスクレーパ3に前進及び後進の往復運動をさせ、できるだけ多くの焼却灰を排出口6に向かって押し出した後、駆動装置4を停止させる。このとき、点検口8の後端8bの近傍に、スクレーパ3の先端3dが停止するように、スクレーパ3を後端8bの近傍に後進させて、駆動装置4を停止させる。
そして、冷却槽2に貯留された水を全て排水する。当該排水の方法としては、様々な方法がありうる。例えば、冷却槽2の底面7に図示しない排水バルブを設置して排水してもよい。また、駆動装置4の上方から冷却槽2にホースを入れ、当該ホースに接続された排水ポンプを駆動することで排水してもよい。
その後、作業者は、点検口8の密閉扉を開けて、点検口8を開放する。
なお、以降の工程において、点検口8と言う場合には、当該密閉扉が開いた点検口8を意味するものとする。
【0026】
[第二工程]
第一工程の後、点検口8から、作業者が、清掃具10を冷却槽2の内部に挿入または搬入する。そして、作業者は、スクレーパ3の押出板3bと焼却灰との間の空間に、底面7の全幅に亘って接するように清掃具10を設置する。
そして、作業者は、後述の第一準備工程または第二準備工程のいずれか一つを実施した後、スクレーパ3を前進させ、点検口8の前端8aの近傍で停止させる。
第二工程における第一準備工程または第二準備工程は、いずれも、清掃具10に対してスクレーパ3側に角材(木材)を配置する工程であり、第一準備工程と第二準備工程とでは、最初に配置される角材が縦置きであるか横置きであるかが主に異なる。「縦置き」、「横置き」の定義については、後述する。
まず、第二工程において第一準備工程を実施する場合について説明する。
なお、第二工程において第二準備工程を実施する場合については、変形例2にて後述する。
【0027】
<第一準備工程>
第二工程における第一準備工程では、
図3及び
図11に示すように、複数本(ここでは六本)の第一角材11を、点検口8から冷却槽2の内部に挿入または搬入して、清掃具10よりもスクレーパ3の押出板3bに近い位置に、言い換えれば、清掃具10から-X軸方向に、清掃具10に接するように、縦置きの姿勢で幅方向(Y軸方向)に並べて配置する。
その後、複数本(ここでは三本)の第二角材12を、点検口8から冷却槽2の内部に挿入または搬入して、既に配置した第一角材11よりもスクレーパ3に近い位置に、言い換えれば、第一角材11から-X軸方向に、横置きの姿勢で清掃具10の高さH(Z軸方向の長さ)未満の高さまで多段(ここでは三段)に複数積層した第二角材組12Aとして、一組配置する。すなわち、第二角材組12Aは、複数の横置きの第二角材12を清掃具10の高さH方向(Z軸方向、上下方向)へ多段に積層したものを一組とする。
図3及び
図11では、当該第一準備工程において、一組の第二角材組12Aとして三本の第二角材12を上下方向に積層した場合を例に挙げている。
なお、第二角材組12Aは、スクレーパ3の往復動作の方向(X軸方向)に複数組を並べて配置することができる。
【0028】
第一角材11は、清掃具10の高さH(Z軸方向の長さ)と同等の長さL1を有し、第一準備工程で最初に配置され、清掃具10に接するように縦置きに配置される。
「縦置き」とは、角材の長さ方向が清掃具10の高さHに沿う状態で上下方向に立てて配置することである。ここでは、第一角材11の長さ方向が清掃具10の高さHに沿う状態(縦置きの状態)で、第一角材11を立てた状態で配置している。
図11では、六本の縦置きの第一角材11が、幅方向(Y軸方向)に並べられた状態で、幅方向に隣接した者同士が互いに接した状態で配置される。
第一角材11を幅方向に並べる本数は、複数の第一角材11の合計幅と清掃具10の幅Wとの関係で設定される。
図11では、合計幅が清掃具10の幅Wよりも狭くなるように第一角材11の本数が設定されている。
第一角材11の長さL1が高さHと同等であるとは、長さL1が高さHと同一であること、または、長さL1が高さHに対して±10cm程度の範囲であることを含む。
図11では、第一角材11の長さL1が、清掃具10の高さHよりもやや長い。
このように第一角材11の長さL1を設定する理由を説明する。
図2に示すように清掃具10の上面、裏面及び横面は開放されている。そのため、清掃作業中に長さL1の第一角材11を配置する場合、長さL1が高さH未満であると清掃具10の上面や裏面から入り込んだ焼却灰が第一角材11よりも後方(スクレーパ側)へ侵入する場合がある。そこで、第一角材11を焼却灰の侵入を抑制する壁面として機能させるために、第一角材11の長さL1が清掃具10の高さHと同等としている。侵入抑制効果を高めるうえでは、第一角材11の長さL1が清掃具10の高さHよりも長いほうが望ましい。
【0029】
第二角材12は、清掃具10の幅W(Y軸方向の長さ)と同等の長さL2を有し、第一準備工程で第一角材11の次に横置きに配置される。
「横置き」とは、角材の長さ方向が清掃具10の幅W(Y軸方向)に沿う状態または清掃具10の高さ方向に垂直な平面(XY平面)に沿う状態で横方向に寝かせて配置することである。ここでは、第二角材12の長さ方向が清掃具10の幅W(Y軸方向)に沿う状態(横置きの状態)で、第二角材12を寝かせて配置している。
第二角材12の長さL2が幅Wと同等であるとは、長さL2が幅Wと同一であること、または、長さL2が幅Wに対して±10cm程度の範囲であることを含む。
図11では、第二角材12の長さL2が幅Wよりも短い。なお、この第二角材12の長さL2は、後述する携帯ジャッキ13の設置スペースを確保するため、冷却槽2の両側壁9の間隔、つまり底面7の全幅よりも短い。
【0030】
なお、後述の変形例1における「見かけ上」多段に積層した追加第二角材組14では、一段目の角材の一部は、その長さ方向が、清掃具10の高さ方向に垂直な平面(XY平面)に寝かせて配置された状態であるものの、清掃具10の幅W(Y軸方向)に沿う状態に必ずしもないが、「横置き」の定義が上述のものであるので、当該一段目の角材の一部も「横置き」の状態である。
また、後述の変形例1B等における第三角材16は、その長さ方向が、当該平面(XY平面)に寝かせて配置された状態であるものの、清掃具10の幅W(Y軸方向)に垂直方向(X軸方向)に寝かせて配置されているため、清掃具10の幅W(Y軸方向)に沿うものでないが、「横置き」の定義が上述のものであるので、当該第三角材16も「横置き」の状態である。
【0031】
一組の第二角材組12Aを配置する際、後述の
図5に示すように、各第二角材12の一端12aが、点検口8が設置された第一側壁9aに対面する第二側壁9bに接するように、各第二角材12を配置する。すなわち、一組の第二角材組12Aを構成する各第二角材12のそれぞれの他端12bは第一側壁9aに接しておらず、それぞれの他端12bと第一側壁9aとの間には空間がある。
なお、複数組の第二角材組12Aを-X軸方向に順次配置する場合、各第二角材組12Aに含まれる全ての第二角材12の一端12aを、第二側壁9bに接するように配置するのが望ましい。
第二角材組12Aおいて積層される第二角材12の本数(段数)は、第二角材組12Aの高さh1が清掃具10の高さH未満となるように設定される。
例えば、
図11では、第二角材12が四段積層された場合、第二角材組12Aの高さh1が清掃具10の高さHを超えてしまい、第二角材12が三段以下であれば、第二角材組12Aの高さh1が清掃具10の高さH未満となる。そのため、
図11では、第二角材組12Aおいて第二角材12が三段積層された場合を例示している。
【0032】
図3は、上述の第一準備工程により、六本の第一角材11が縦置きに配置された後に、一組の第二角材組12Aが横置きに配置された状態を示す図である。
なお、
図3乃至
図10では、すでに完全に排水がなされた後の灰押出装置1を示す図であるので、
図1のように所定水位を示す二点鎖線の記載はない。
第一準備工程を実施した後、作業者は、点検口8から冷却槽2の内部を見ながら、駆動装置4を遠隔操作して、スクレーパ3を前進させ、
図4に示すように、スクレーパ3の先端3dが点検口8の前端8aの近傍に達したところで、スクレーパ3を停止させる。この位置でスクレーパ3を停止することで、スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間には、
図4に示すように、少なくとも作業者の手や腕を入れることが可能な程度の隙間を設けることができる。また、第二角材組12Aは、点検口8の前端8aよりもやや+X軸方向に位置することになる。
このとき、スクレーパ3と清掃具10とに挟み込まれて、第一角材11及び第二角材組12Aは固定された状態となる。
【0033】
なお、
図3および
図4では、スクレーパ3と清掃具10との間に、第一角材11と一組の第二角材組12Aを配置した図を一例として示しているが、複数組の第二角材組12AをX軸方向に並べて設置した場合も、同様である。すなわち、第一角材11と複数組の第二角材組12Aとは、スクレーパ3と清掃具10とに挟み込まれて固定される。
また、複数組の第二角材組12Aを設置した場合も、
図4と同様に第二工程でスクレーパ3を前進及び停止させた状態では、複数組の第二角材組12Aのうち、スクレーパ3に最寄りに配置された第二角材組12A、すなわちスクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する第二角材組12A(最も-X軸方向側に存在する第二角材組12A)は、点検口8の前端8aよりもやや+X軸方向に位置することになる。
以下、スクレーパ3と清掃具10との間に第二角材組12Aを1組のみ配置した場合も、スクレーパ3と清掃具10との間に複数組の第二角材組12Aを配置した場合も、スクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する第二角材組12A、言い換えれば、最も-X軸方向側に存在する第二角材組12Aを、単に、「最寄りの第二角材組」という。
また、第二角材組12Aに限らず、ある時点において、スクレーパ3と清掃具10との間に配置される角材または上下方向に積層された角材組で、最も-X軸方向側に存在する角材または角材組を、「最寄り」の角材または角材組と表現する。
【0034】
[第三工程]
第二工程の後、最寄りの第二角材組12Aは、先述のように、スクレーパ3と清掃具10との間に挟み込まれて、第一角材11とともに固定された状態である。複数組の第二角材組12Aが設置される場合は、最寄りの第二角材組12Aに加え、他のすべての第二角材組12Aも含め、スクレーパ3と清掃具10との間に挟み込まれて、第一角材11とともに固定された状態となる。このため、最寄りの第二角材組12Aが自然に移動するおそれがない。
そこで、第三工程では、第二工程で述べた隙間(スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間の隙間)から、作業者が手や腕を入れて、携帯ジャッキ13を冷却槽2の内部の最寄りの第二角材組12Aのうち最上段の第二角材12(
図11において「(1)」を付す)の他端12bと第一側壁9aとの間に挿入して
図5に示すように位置合わせし、その後、携帯ジャッキ13のシリンダーを伸ばす。これにより、最寄りの第二角材組12Aにおける最上段の第二角材12は、第一側壁9aと第二側壁9bとの間にしっかりと固定される。なお、
図5は、位置合わせの段階(固定前の段階)の図であるため、携帯ジャッキ13と、最上段の第二角材12の他端12b、第一側壁9aとの間には、それぞれ空間がある。
【0035】
ここでは、携帯ジャッキ13は、最寄りの第二角材組12Aのうち最上段の第二角材12を、第一側壁9aと第二側壁9bとの間にしっかりと固定することで、結果として、最寄りの第二角材組12A全体を最も安定的に第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定する例を示した。しかし、発明者の検証によれば、最寄りの第二角材組12Aの下方から数えて半数以上の上段に位置する第二角材12を携帯ジャッキ13で第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定すれば、最寄りの第二角材組12A全体を、安定的に第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定することができることが判明している。
例えば、
図11のように、第二角材12が三段積層された第二角材組12Aおいては、最寄りの第二角材組12Aのうち最上段の第二角材12を携帯ジャッキ13で上述のように固定すれば、第二角材組12A全体を最も安定的に第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定することができ、最寄りの第二角材組12Aのうち下方から数えて二段目の第二角材12を携帯ジャッキ13で上述のように固定した場合であっても、第二角材組12A全体を安定的に第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定することができる。
もちろん、最寄りの第二角材組12Aの最下段の第二角材12を携帯ジャッキ13で第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定すれば、最寄りの第二角材組12A全体を移動不能に第一側壁9aと第二側壁9bとの間に固定することができる。従って、灰押出装置1の設計や仕様並びに第二角材組12A全体の段数(積層数)に応じて、最寄りの第二角材組12Aのうち、最下段から最上段までのいずれの段の第二角材12を携帯ジャッキ13で固定するか、適宜選択することが可能である。
【0036】
ここで例示した第三工程では、携帯ジャッキ13で固定される最寄りの第二角材組12Aにおける最上段の第二角材12は、点検口8の前端8aよりやや+X軸方向に配置されている。そのため、作業者は、自身の体全体ではなく手や腕だけ点検口8から入れて、携帯ジャッキ13の位置合わせや最寄りの第二角材組12Aにおける最上段の第二角材12の固定の作業を安全に実施することができる。
なお、携帯ジャッキ13は、スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間の隙間から灰押出装置1の冷却槽2の内部に、一人の作業者が片手または両手で簡単かつ容易に設置できる程度の大きさのジャッキ、すなわち小型のジャッキである。携帯ジャッキ13は、耐荷重の見地から油圧シリンダー式のジャッキが望ましいが、第二角材12を十分に支えて固定することができるのであれば、エアーシリンダー式のジャッキでもよい。
本実施形態では、携帯ジャッキ13はシリンダーが伸縮するジャッキとして説明するが、携帯ジャッキ13は、しっかり最上段の第二角材12を固定できるのであれば、ハンドルを回転するとパンタグラフ等が伸縮する手動式のジャッキでもよい。
すなわち、本発明において、携帯ジャッキを伸ばすという場合には、シリンダーやパンタグラフ等が伸びることを意味し、携帯ジャッキを縮めるという場合には、シリンダーやパンタグラフ等が縮むことを意味する。
【0037】
[第四工程]
第三工程にて最寄りの第二角材組12Aの第二角材12を固定した後、第四工程では、作業者は、点検口8から内部を見ながら、駆動装置4を遠隔操作して、スクレーパ3を後進させ、
図6に示すように、スクレーパ3の先端3dが点検口8の後端8bの近傍に達したところで、スクレーパ3を停止させる。この位置でスクレーパ3を停止することで、冷却槽2の内部において、点検口8の前端8aから後端8bの間には、作業者が新たな角材(追加の角材)を挿入することができる大きな空間が得られる。
そこで、スクレーパ3を停止した後、
図7に示すように、作業者は、携帯ジャッキ13で固定した最上段の第二角材12を含む最寄りの第二角材組12Aとスクレーパ3との間に、「追加の角材」を点検口8から冷却槽2の内部に挿入し、順次、冷却槽2の底面7の上に大きな隙間がないように並べて配置する。
第四工程では、上記の「追加の角材」を配置する。詳しくは、上記の第二工程で第一準備工程を実施した場合は、第三準備工程、または、第四準備工程、または、第五準備工程の何れか一つを実施し、上記の第二工程で第二準備工程を実施した場合には、第四準備工程を実施する。
ここでは、まず、上記の第二工程で第一準備工程を実施した場合であって、第四工程において「第三準備工程」を実施する場合を例に挙げて説明する。第四準備工程や、第五準備工程については後述の変形例1~変形例1Dで説明する。
【0038】
<第三準備工程>
第四工程における第三準備工程では、携帯ジャッキ13で固定した最上段の第二角材12(
図11において番号「(1)」を付した第二角材12)を含む最寄りの第二角材組12Aと同一段数に第二角材12を積層した追加第二角材組14を1組または並べて複数組配置する。
後述するが、
図11では、各第四工程において、それぞれ三組の追加第二角材組14をX軸方向に並べて配置している。また、
図11において番号「(1)」、「(2)」、「(3)」は、時間的に異なる工程ごとに、各時点において携帯ジャッキ13で固定する最寄りの角材組(第二角材組12Aまたは追加第二角材組14)の最上段の第二角材12の順番を示す。
追加第二角材組14に用いる第二角材12は、第二角材組12Aに用いた第二角材12と同一である。そのため、追加第二角材組14の高さは、第二角材12と同一である。
第四工程では、
図6の状態において、最上段の第二角材12は携帯ジャッキ13でしっかりと固定されており、冷却槽2の内部には上記大きな空間が得られるので、新たに追加第二角材組14を1組または複数組配置する際、作業者は自身の手や腕だけ点検口8から入れて、新たな追加第二角材組14用の第二角材12を配置することができる。このため、追加第二角材組14用の第二角材12の冷却槽2の内部への設置作業を、安全に実施することができる。
【0039】
[第五工程]
第四工程の後、第五工程において、作業者は、携帯ジャッキ13のシリンダーを縮め、携帯ジャッキ13で固定していた最上段の第二角材12の当該固定を外し、携帯ジャッキ13を点検口8から取り出す。
このとき、清掃具10とスクレーパ3との間には、第一角材11と第二角材組12Aと複数組の追加第二角材組14とが、冷却槽2の底面7の上に実質的に隙間なく配置された状態であるので、携帯ジャッキ13を取り外しても、これら複数の角材(第一角材11、第二角材組12A及び追加第二角材組14)が自然に移動することはない。
また、上述のように、第二角材12の長さL2は、清掃具10の幅方向(Y軸方向)の長さよりも短く、各第二角材12の一端12aが第二側壁9bに接するように配置されているので、各第二角材12のそれぞれの他端12bと第一側壁9aとの間には、作業者の手や腕を通すことができる程度の隙間がある(
図5参照)。
このため、作業者は、自身の体全体ではなく手や腕だけ点検口8から入れて、携帯ジャッキ13を安全かつ容易に取り外し、灰押出装置1の冷却槽2の外部へ取り出すことができる。
【0040】
その後、作業者は、点検口8から冷却槽2の内部を見ながら、駆動装置4を遠隔操作して、スクレーパ3を前進させ、
図8に示すように、スクレーパ3の先端3dが点検口8の前端8aの近傍に達したところで、スクレーパ3を停止させる。
この位置でスクレーパ3を停止することで、スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間には、
図8に示すように、少なくとも作業者の手や腕を入れることが可能な程度の隙間を設けることができる。
また、スクレーパ3に最寄りの追加第二角材組14、すなわちスクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する追加第二角材組14(最も-X軸方向側に存在する追加第二角材組14)は、点検口8の前端8aよりもやや+X軸方向に位置することになる。
なお、第四工程において新たに追加した追加第二角材組14のうち、最もスクレーパ3に近い追加第二角材組14が、第五工程の
図8における最寄りの追加第二角材組14となる。
【0041】
その後、清掃具10が排出口6近傍に達するまで、第三工程、第四工程、および第五工程を順次、複数回、循環して繰り返す。
図9及び
図11では、一例として、時間の経過順に見て、第一工程、第二工程(第一準備工程実施)、第三工程(一回目の第三工程)、第四工程(一回目の第四工程:第三準備工程実施)、第五工程、第三工程(二回目の第三工程)、第四工程(二回目の第四工程:第三準備工程実施)の順に各工程を実施した直後の状態を示している。
図11には、一回目の第三工程において携帯ジャッキ13で固定する最上段の第二角材12を「(1)」で、二回目の第三工程において携帯ジャッキ13で固定する最上段の第二角材12を「(2)」で示している。なお、
図11の状態においては三回目の第三工程はまだ実施していないが、参考までに、三回目の第三工程において携帯ジャッキ13で固定する最上段の第二角材12を「(3)」で示している。
【0042】
第三工程、第四工程、および第五工程を順次繰り返し、最後に第五工程を実施した際、第一傾斜面7a上の清掃具10の位置は、排出口6まで、残りわずかの距離となっている。このとき、すでに、冷却槽2内の焼却灰の大部分は、排出口6から排出されている。
そこで、作業者は、灰押出装置1の外側から排出口6を見つつ、
図10に示すように、駆動装置4を遠隔操作して清掃具10が排出口6から落下することがない程度にスクレーパ3を前進させ、清掃具10が排出口6から見える程度の位置でスクレーパ3を停止させる。これにより、冷却槽2内のほぼ全ての焼却灰を排出口6から排出し、灰押出装置1内部の焼却灰を排出口6から排出する清掃作業を完了することができる。
以上の清掃方法によれば、
図11に示すように、清掃具10からスクレーパ3に向かうにつれ、第二角材組12A(第二角材12)による高さh1が、清掃具10に接して配置される第一角材11の高さL1や清掃具10の高さHよりも低くなるので(
図11の破線矢印を参照)、従来に比べて角材の本数や容積を減らしつつ、清掃具10の浮き上がりを防止して、灰押出装置1の清掃作業を効率良く安全に実施することができる。
【0043】
ところで、上記清掃作業を完了後、作業者は、排出口6から灰押出装置1の外部へ清掃具10や、第一角材11、第二角材組12A、追加第二角材組14などの角材を順次取り出す、または、点検口8からこれら角材や清掃具10を順次取り出す。ここで、例えば、作業者が点検口8からこれら角材や清掃具10を取り出す場合であっても、すでに焼却灰は全て排出されており、焼却灰の重みが角材や清掃具10に加わることがないため、これらが点検口8に向かって自然に移動することはない。従って、作業者は、灰押出装置1の外部へ、角材や清掃具10を安全に取り出すことができる。
【0044】
[変形例1]
図12は、変形例1の清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例1の清掃方法は、一回目の第四工程で後述の第四準備工程を実施し、二回目の第四工程で第三準備工程を実施する点が、
図3乃至
図11で説明した実施形態の清掃方法における角材の並べ方とは異なる。
上述の相違点を除き、変形例1の清掃方法は実施形態の清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
図12は、時間の経過順に見て、第一工程、第二工程(第一準備工程実施)、第三工程(一回目の第三工程)、第四工程(一回目の第四工程:第四準備工程実施)、第五工程、第三工程(二回目の第三工程)、第四工程(二回目の第四工程:第三準備工程実施)の順に各工程を実施した直後の状態を示している。
【0045】
<第四準備工程>
第四工程における第四準備工程では、携帯ジャッキ13で固定した最寄りの第二角材組12Aの最上段の第二角材12(
図12において番号「(1)」を付す)のスクレーパ3側の面に少なくとも接触可能な長さL3の追加縦置角材15を、第二角材組12Aよりもスクレーパ3に近い位置に、言い換えれば第二角材組12Aの-X軸方向側に、その長さ方向が高さ方向(Z軸方向)に沿う縦置きの状態で、幅方向(Y軸方向)に沿って複数本(ここでは例えば六本)配置する。
その後、追加縦置角材15よりも前記スクレーパに近い位置に、言い換えれば追加縦置角材15の-X軸方向側に、第二角材組12Aと同一段数以下(ここでは二段)の第二角材12を積層した追加第二角材組14′を一組もしくは並べて複数組(ここでは例えば一組)配置する。
なお、第四準備工程では、追加縦置角材15を配置した後、一組または複数組の追加第二角材組14′に替えて、一段だけの追加の第二角材12を一本もしくはX軸方向に並べて複数本横置きに配置してもよい。
【0046】
追加縦置角材15は、第一角材11とは別の角材であり、その長さL3は、第一角材11の長さL1と同等または第一角材11の長さL1よりも短い。
図12に示す例では、追加縦置角材15の長さL3は、第二角材組12Aの高さh1と同一であり、第一角材11の長さL1よりも短い。
ここで、追加縦置角材15の長さL3は、最上段の第二角材12のスクレーパ3側の面に少なくとも接触可能な長さである。言い換えれば、追加縦置角材15の長さL3は、スクレーパ3から+X軸方向に当該最上段の第二角材12を見て、追加縦置角材15の上端が最上段の第二角材12のスクレーパ3側の面に重なる長さともいえる。
したがって、追加縦置角材15の長さL3は、最上段の第二角材12を除く第二角材組12Aの高さh2(ここでは、第二角材12を二段積んだ高さ)よりも大きい。
また、角材の容積を減らす観点から、追加縦置角材15の長さL3は、第二角材組12Aの全体の高さh1以下であることが望ましい。
【0047】
一回目の第四工程(第四準備工程実施)を実施した後、一回目の第五工程を実施して、それから二回目の第三工程、二回目の第四工程(第三準備工程実施)、および二回目の第五工程を順次、複数回、循環して繰り返す。
ただし、
図12では、
図11の実施形態の清掃方法で説明した第三準備工程における追加第二角材組14と異なり、二回目の第四工程(第三準備工程実施)で、角材の本数または容量を低減するため、第二角材12を「見かけ上」は多段(ここでは二段)に積層した追加第二角材組14′を三組配置している。
この「見かけ上」三組の追加第二角材組14′では、二段目の第二角材12が三本であるのに対して、一段目の第二角材12が二本しか配置されていない。一段目に配置された二本の第二角材12のうち一本の第二角材12xが、二段目に配置された三本の第二角材12のうち、二本の第二角材12y、12zの両方を支持するように配置されている。二本の第二角材12y、12zを支持しやすいように、第二角材12xは、X軸方向及びY軸方向に斜めに傾けて、配置されてよい。
このように「見かけ上」の積層配置をした第二角材12であっても、本発明の清掃方法であれば、最上段の第二角材12が崩れてその位置が変わるおそれ、例えば、二段目から一段目に変化するおそれはない。また、実際に二本の第二角材12を上下に積層した組を三組配置するよりも、第二角材12の本数を減らすことができ、結果として、角材(木材)の容量を減少させることができる。
【0048】
なお、ここでは、一例として、「見かけ上」の三組の追加第二角材組14′を配置したが、実際に二本の第二角材12を上下に積層した追加第二角材組を三組配置してもよい。
変形例1においても、実施形態の清掃方法と同様の効果が得られる。さらに、変形例1では、実施形態の清掃方法に比べ、第二角材12の本数を低減することができる。
【0049】
[変形例1A]
図13は、変形例1Aの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例1Aの清掃方法は、第一角材11′の幅wXを除き、変形例1の清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
図13では、複数(六本)の第一角材11のうち幅方向外側に配置した第一角材11′の幅wXが他の第一角材11よりも広く、六本の第一角材11、11′で清掃具10の全幅Wを覆っている。すなわち、清掃具10の裏面全体が第一角材11、11′で覆われている。
上述の通り、実施形態の清掃方法や、変形例1の清掃方法では、第二角材12における第一側壁9a側の端面と、複数の第一角材11における第一側壁9a側に位置する端面とが面一になるように設定されている。第二角材12の長さL2が、清掃具10の幅Wよりも短いため、清掃具10の裏面の一部は、第一角材11に覆われていない。通常は、清掃具10の裏面からスクレーパ3側へ侵入する焼却灰の量はほとんどないので、
図11や
図12に示す第一角材11でも、清掃作業を問題なく実施できる。
しかし、清掃具10の裏面からスクレーパ3側へ侵入する焼却灰の量が多く、看過できない場合には、変形例1Aのように、幅方向外側に配置した第一角材11′の幅wXを他の第一角材11よりも広くして、清掃具10の裏面全体を第一角材11、11′で覆うのが望ましい。これにより、清掃具10の裏面から焼却灰のスクレーパ側への侵入を防止できる。
【0050】
[変形例1B]
図14は、変形例1Bの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例1Bの清掃方法は、二回目の第四工程で後述の第五準備工程を実施する点、及び、三回目の第四工程を実施したことまで図示している点が、変形例1の清掃方法を示した
図12とは異なる。変形例1Bの清掃方法は、これらの相違点を除き、変形例1の清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
なお、
図14では、三回目の第四工程においても、第五準備工程を実施している。
図14は、時間の経過順に見て、第一工程、第二工程(第一準備工程実施)、第三工程(一回目の第三工程)、第四工程(一回目の第四工程:第四準備工程実施)、第五工程(一回目の第五工程)、第三工程(二回目の第三工程)、第四工程(二回目の第四工程:第五準備工程実施)、第五工程(二回目の第五工程)、第三工程(三回目の第三工程)、第四工程(三回目の第四工程:第五準備工程実施)の順に各工程を実施した直後の状態を示している。
【0051】
<第五準備工程>
第四工程における第五準備工程では、直前の第三工程において携帯ジャッキ13で固定された最寄りの追加第二角材組14′の最上段の第二角材12と同一段数(ここでは二段)で積層された第三角材16を、当該最寄りの追加第二角材組14′よりもスクレーパ3に近い位置に、言い換えれば最寄りの追加第二角材組14′の-X軸方向に、その長さ方向がX軸方向に沿う横置きの状態で、Y軸方向へ並べて複数配置する。つまり、第二角材12の長さ方向(Y軸方向)と垂直になる状態で、第三角材16をY軸方向へ並べて複数配置する。
その後、第三角材16よりもスクレーパ3に近い位置に、言い換えれば第三角材16の-X軸方向に、第三角材16と同一段数(つまり最寄りの追加第二角材組14′と同一段数であり、ここでは二段)で第二角材12を積層した新たな追加第二角材組14′を一組配置する。なお、この第五準備工程において、複数組の追加第二角材組14′がX軸方向へ並べて配置されてもよい。
それぞれの第三角材16は、互いに同一長さであり、且つ、第二角材12と同一断面寸法を有する。
図14では、二本の第三角材16を積層した第三角材16の組を、Y軸方向へ並べて二列(二つ)配置する。なお、Y軸方向へ並べた二列の第三角材16の組同士は互いに間隔を空けて配置される。すなわち、複数の第三角材16同士は、積層方向を除き、間隔を開けて配置される。
これにより、Y軸方向へ第三角材16の組を隙間なく配置する場合に比べて、角材の本数や容積を低減できる。
変形例1Bの清掃方法においても、実施形態の清掃方法と同様の効果が得られる。
また、変形例1Bの清掃方法では、実施形態の清掃方法に比べ、さらに角材の本数や容積を低減できる。
【0052】
[変形例1C]
図15は、変形例1Cの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例1Cの清掃方法では、第二工程(第一準備工程)において複数(ここでは二本)の縦置きの第一角材11が、Y軸方向に互いに間隔を空けて配置されるとともに、第四工程(第四準備工程)において複数(ここでは二本)の追加縦置角材15が、Y軸方向に互いに間隔を空けて縦置きに配置される。この点を除き、変形例1Cの清掃方法は、変形例1Bの清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
図15では、第一角材11と追加縦置角材15とがそれぞれ二本ずつY軸方向に互いに間隔を空けて縦置きに配置される。
したがって、変形例1Cの清掃方法は、変形例1Bの清掃方法に比べ、さらに角材の本数や容積を低減できる。
【0053】
[変形例1D]
図16は、変形例1Dの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例1Dの清掃方法は、三回目の第四工程で第四準備工程を実施する点を除き、変形例1Bの清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
図16では、三回目の第四工程の第四準備工程にて、最寄りの追加第二角材組14′における最上段の第二角材12(
図16で番号「(3)」を付す)のスクレーパ3側の面に少なくとも接触可能な長さL4を有する追加縦置角材15′を配置した後、一段、すなわち一本の第二角材12を配置する。この一段の第二角材12は、スクレーパ3の往復動作の方向、すなわちX軸方向に複数本横置きに並べて配置してもよい。
追加縦置角材15′の長さL4は、最寄りの追加第二角材組14′の段数(ここでは二段)と同等またはやや短い長さであり、一回目の第四工程(第四準備工程)で配置された追加縦置角材15の長さL3よりも短い。また、
図16では、Y軸方向に互いに間隔を空けた二本の追加縦置角材15′が配置されており、追加縦置角材15′の本数を削減している。
変形例1Dの清掃方法では、清掃具10からスクレーパ3に向かうにつれ、縦置きされた角材(第一角材11、追加縦置角材15、追加縦置角材15′)の高さが徐々に低くなるとともに、横置きされた角材(第二角材組12A、追加第二角材組14′、第二角材12)の段数が徐々に低くなるので、実施形態の清掃方法に比べ、より一層角材の本数や容積を減らすことができる。
【0054】
[変形例2]
図17は、変形例2の清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例2の清掃方法は、第二工程において第二準備工程を実施する清掃方法である。
図17は、時間の経過順に見て、第一工程、第二工程(第二準備工程実施)、第三工程(一回目の第三工程)、第四工程(一回目の第四工程:第四準備工程実施)、第五工程(一回目の第五工程)、第三工程(二回目の第三工程)、第四工程(二回目の第四工程:第四準備工程実施)、第五工程(二回目の第五工程)、第三工程(三回目の第三工程)、第四工程(三回目の第四工程:第三準備工程実施)の順に各工程を実施した直後の状態を示している。
【0055】
<第二準備工程>
第二工程における第二準備工程では、
図17に示すように、清掃具10よりもスクレーパ3に近い位置に、言い換えれば清掃具10の-X軸方向に、清掃具10に接するように、清掃具10の高さHと同等の高さh2に多段(ここでは四段)に複数本(ここでは四本)の第二角材12を積層した第二角材組12Aを、一組配置する。なお、第二角材組12AをX軸方向へ複数組並べて配置してもよい。
第二角材組12Aの高さh2が清掃具10の高さHと同等であるとは、高さh2が清掃具10の高さHと同一であること、または、高さHに対して±10cm程度の範囲であることを含む。
図17では、例えば、清掃具10の高さHは、第二角材12を四本積層した高さh2よりも低く、第二角材12を三本積層した高さよりも高いものとする。この場合、高さh2が高さHよりも高いので、第二角材組12Aの上端側により焼却灰がスクレーパ3側へ侵入することを抑制できる。
【0056】
図17に示すように、第二工程で第二準備工程を実施した後、第三工程(一回目の第三工程)で、最寄りの第二角材組12Aの最上段の第二角材12(
図17において番号「(1)」を付す)を、携帯ジャッキ13で固定する。
そして、第四工程(一回目の第四工程)において、第四準備工程を実施する。ここでは、携帯ジャッキ13で固定された第二角材12(番号(1)の角材)のスクレーパ3側の面に少なくとも接触可能な長さL5を有する追加縦置角材15Aを、Y軸方向に沿って複数本(ここでは六本)配置し、その後、追加縦置角材15Aよりもスクレーパ3に近い位置に、第二角材組12Aと同一段数以下(ここでは三段)の第二角材12を積層した追加第二角材組14を一組もしくは並べて複数組(ここでは、一組)配置する。
【0057】
図17では、二回目の第四工程でも第四準備工程を実施する。ここでは、二回目の第三工程で、最寄りの追加第二角材組14の最上段の第二角材12(
図17において番号「(2)」を付す)を携帯ジャッキ13で固定した後、最上段の第二角材12(番号(2)の角材)のスクレーパ3側の面に少なくとも接触可能な長さL6を有する新たな追加縦置角材15Bを、Y軸方向に沿って複数本(ここでは六本)配置し、その後、追加縦置角材15Bよりもスクレーパ3に近い位置に、最寄りの追加第二角材組14と同一段数以下(ここでは二段)の第二角材12を積層した新たな追加第二角材組14′を一組しくは並べて複数組(ここでは例えば一組)配置する。
その後、
図17では、三回目の第四工程で第三準備工程を実施する。ここでは、変形例1と同様、「見かけ上」の追加第二角材組14′を三組配置している。もちろん、
図17においても、実際に二本の第二角材12を上下に積層した追加第二角材組を三組配置してもよい。
【0058】
図17では、追加縦置角材15Aの高さ(長さ)L5は、第二角材組12Aの高さより低く、1回目の第四工程で配置された追加第二角材組14の高さは、追加縦置角材15Aの高さ(長さ)L5より低い。また、追加縦置角材15Bの高さ(長さ)L6は、追加第二角材組14の高さより低く、2回目の第四工程で配置された追加第二角材組14′の高さは、追加縦置角材15Bの高さ(長さ)L6より低い。
従って、清掃具10からスクレーパ3に向かって、言い換えれば、清掃具10から-X軸方向に向かうにつれて、配置する角材高さが次第に小さくなる。よって、実施形態の清掃方法に比べ、角材の容積を削減できる。
【0059】
[変形例2A]
図18は、変形例2Aの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例2Aの清掃方法は、第二工程(第二準備工程)で配置する第二角材組12Aにおける一部の第二角材12′の幅wYを除き、変形例2の清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
変形例2Aでは、第二角材組12Aをなす四本の第二角材12のうち、最上段の第二角材12の下側に配置された三本の第二角材12′の幅wYが、最上段の第二角材12よりも広く、清掃具10の幅Wと同一または同等である。
上述の通り、通常は、清掃具10裏面から焼却灰がスクレーパ3側へ侵入することがないので、
図17の変形例2に示すように第二角材組12Aの幅が清掃具10の幅Wよりも短い場合であっても、清掃作業を問題なく実施できる。
ただし、清掃具10の裏面から焼却灰がスクレーパ3側へ侵入する量が看過できない場合には、
図18に示す変形例2Aのように、第二角材組12Aの一部の第二角材12′の幅wYを広くして、清掃具10の裏面全体または大部分を第二角材12′で覆うことで、焼却灰がスクレーパ3側へ侵入することを防止できる。
なお、最上段の第二角材12の幅は、携帯ジャッキ13を差し入れる空間を確保するために、三本の第二角材12′の幅wYよりも短く設定している。
【0060】
[変形例2B]
図19は、変形例2Bの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例2Bの清掃方法は、三回目の第四工程で第五準備工程を実施する点、及び、四回目の第四工程を実施することまで図示している点が、
図17の変形例2の清掃方法とは異なる。変形例2Bの清掃方法は、これらの相違点を除き、変形例2の清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
なお、
図19では、四回目の第四工程においても、第五準備工程を実施している。
図19は、時間の経過順に見て、第一工程、第二工程(第二準備工程実施)、第三工程(一回目の第三工程)、第四工程(一回目の第四工程:第四準備工程実施)、第五工程(一回目の第五工程)、第三工程(二回目の第三工程)、第四工程(二回目の第四工程:第四準備工程実施)、第五工程(二回目の第五工程)、第三工程(三回目の第三工程)、第四工程(三回目の第四工程:第五準備工程実施)、第五工程(三回目の第五工程)、第三工程(四回目の第三工程)、第四工程(四回目の第四工程:第五準備工程実施)の順に各工程を実施した直後の状態を示している。
第五準備工程については、
図14の変形例1Bにて上述したのと同様であるため、説明を省略する。
【0061】
[変形例2C]
図20は、変形例2Cの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例2Cの清掃方法では、一回目の第四工程(第四準備工程)において配置される複数(ここでは二本)の追加縦置角材15AがY軸方向に互いに間隔を空けて縦置きに配置され、二回目の第四工程(第四準備工程)において配置される複数(ここでは二本)の追加縦置角材15Bが、Y軸方向に互いに間隔を空けて配置される。これらの点を除き、変形例2Cの清掃方法は、変形例2Bの清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
図20では、追加縦置角材15A、15Bがそれぞれ二本ずつY軸方向に互いに間隔を空けて縦置きに配置される。したがって、追加縦置角材15A、15Bが六本ずつ配置された変形例2Bの清掃方法に比べ、角材の本数や容積を低減できる。
【0062】
[変形例2D]
図21は、変形例2Dの清掃方法に係る角材の並べ方を説明する斜視図である。変形例2Dの清掃方法は、四回目の第四工程で第四準備工程を実施することを除き、変形例2Cの清掃方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
図21では、四回目の第四工程の第四準備工程において、最寄りの追加第二角材組14′における最上段の第二角材12(
図21で番号「(4)」を付す)のスクレーパ3側の面に少なくとも接触可能な長さL7(ここでは最寄りの追加第二角材組14′と同一である段数二段の高さ)を有する追加縦置角材15Cを配置した後、一段、すなわち一本の第二角材12を配置する。この一段の第二角材12は、スクレーパ3の往復動作の方向、すなわちX軸方向に複数本並べて配置してもよい。
【0063】
上述した実施形態および各変形例によれば、従来に比べて角材の本数や容積を減らしつつ、清掃具10の浮き上がりを防止して、灰押出装置1の清掃作業を効率良く安全に実施することができる。
なお、実施形態及び各変形例の清掃方法において、各角材組の積層される本数、縦置きの角材の本数、往復方法に向けて並べて配置される組数または本数は、
図3~
図21に示す例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に沿って適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 灰押出装置
2 冷却槽
3 スクレーパ(3a 上板、3b 押出板、3c 側板、3d 先端)
4 駆動装置(4a 駆動軸、4b アーム)
5 導入口
6 排出口
7 底面(7a 第一傾斜面、7b 第二傾斜面、7c 最下面)
8 点検口(8a 点検口の前端、8b 点検口の後端)
9 側壁(9a 第一側壁、9b 第二側壁)
10 清掃具(10A 第一ブロック、10B 第二ブロック)
11、11′ 第一角材
12、12′、12x、12y、12z 第二角材(12a 角材の一端、12b 角材の他端)
12A 第二角材組
13 携帯ジャッキ
14、14′ 追加第二角材組
15、15A、15B、15C、15′ 追加縦置角材
16 第三角材
Df 前進方向
Dr 後進方向
【要約】
【課題】清掃作業を効率良く安全に実施できる灰押出装置の清掃方法を提供する。
【解決手段】焼却灰の排出口6を備えた冷却槽と、焼却灰を押し出すスクレーパ3とを備え、冷却槽の底面7は排出口側へ上り傾斜をなし、スクレーパ3を前後往復動作させる灰押出装置1の清掃方法であって、冷却槽から排水しスクレーパ3を後進させる工程と、清掃具10を点検口8から挿入し、清掃具10よりもスクレーパ3側に第一角材11を配置した後、第一角材11よりもスクレーパ3側に第二角材組12Aを配置してスクレーパ3を点検口の前端8aで停止させる工程と、第二角材組12Aの第二角材12をジャッキ13で固定する工程と、スクレーパ3を点検口の後端8b近傍に後進させ、固定した第二角材12とスクレーパと3の間に追加第二角材組14を配置する工程と、ジャッキ13を外し、スクレーパ3を前進させる工程とを有する。
【選択図】
図9