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特許7536212大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関用燃料弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-08
(45)【発行日】2024-08-19
(54)【発明の名称】大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関用燃料弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/10 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
F02M61/10 R
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024102449
(22)【出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】PA202330133
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ヘーイン ピーダ
(72)【発明者】
【氏名】シュー ムソル ヤコブ
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-219831(JP,A)
【文献】米国特許第4398519(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃焼室内に液体燃料を噴射する燃料弁であって、
後端と前端とを有する縦長の燃料弁ハウジングと、
複数のノズル孔を有するノズルであって、前記燃料弁ハウジングの前記前端に配置されるノズルと、
前記縦長の燃料弁ハウジングに設けられ、加圧された液体燃料の供給源に接続するための燃料入口ポートと、前記燃料弁ハウジングのボア内に受容されるプランジャピストン及び前記ボア内のプランジャ室と、
前記燃料入口ポートと連通する入口端と、燃料噴射経路と連通する出口端とを有する燃料ダクトと、
前記燃料ダクトの前記入口端を前記プランジャ室に接続する燃料入口経路と、前記プランジャ室を前記燃料ダクトの前記出口端に接続する燃料出口経路と、
を備えると共に、
前記燃料ダクト内において、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で移動可能なスピンドル弁部材を備え、
前記第1の位置において、前記スピンドル弁部材は、燃料が、前記入口経路を通って前記プランジャ室へと流れ、前記プランジャ室を燃料で満たすことを可能にする一方、燃料が、前記出口経路を通って前記燃料噴射経路に入ることを阻止し、
前記第2の位置において、前記スピンドル弁部材は、燃料が、前記プランジャ室から、前記出口経路を通って、前記ノズルに燃料を供給するための前記燃料噴射経路に流れることを可能にする一方、燃料が、前記入口経路を通って前記プランジャ室に入ることを阻止し、
前記燃料弁は更に、前記プランジャ室を燃料で満たすために前記スピンドル弁部材が前記第1の位置にあるときに、前記出口経路から前記燃料噴射経路への一定の漏れを提供する手段を備える、燃料弁。
【請求項2】
前記スピンドル弁部材は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の第3の中間位置において、燃料が前記入口経路を経由して前記プランジャ室に入ることと、燃料が前記出口経路を経由して前記燃料噴射経路に入ることの両方を遮断する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項3】
前記スピンドル弁部材が、前記燃料ダクト内に挿入される不動のハウジング内に搭載され、前記スピンドル弁部材が、少なくとも前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記ハウジング内を動くことが可能である、請求項に記載の燃料弁。
【請求項4】
前記燃料ダクトの前記入口端に向かう方向に前記スピンドル弁部材に力を加えるための強制部材を備える、請求項に記載の燃料弁。
【請求項5】
前記強制部材はばねである、請求項4に記載の燃料弁。
【請求項6】
前記スピンドル弁部材は端部停止面を備え、前記端部停止面は、前記スピンドル弁部材が前記第2の位置にあるとき、すなわち燃料が前記プランジャ室から前記燃料噴射経路へと前記出口経路を通って流れることが可能であるとき、前記燃料ダクト又は前記ハウジングに設けられた対応する面に当接する、請求項に記載の燃料弁。
【請求項7】
前記漏れを提供する手段は、前記スピンドル弁部材に設けられるオリフィスを備える、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項8】
前記オリフィスは、前記スピンドル弁部材が前記第1の位置で前記プランジャ室に燃料を充填しているときにのみ、前記出口経路から前記燃料噴射経路への一定の漏れを生じさせるように、前記スピンドル弁部材に設けられる、請求項7に記載の燃料弁。
【請求項9】
前記燃料ダクトは前記燃料弁ハウジングに設けられるボアである、請求項に記載の燃料弁。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の燃料弁を備える、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃焼室内に液体燃料を噴射する燃料弁に関する。この燃料弁は、後端と前端とを有する縦長の燃料弁ハウジングと、複数のノズル孔を有するノズルであって、前記燃料弁ハウジングの前記前端に配置されるノズルと、前記縦長の燃料弁ハウジングに設けられ、加圧された液体燃料の供給源に接続するための燃料入口ポートと、前記燃料弁ハウジングのボア内に受容されるプランジャピストン及び前記ボア内のプランジャ室と、前記燃料入口ポートと連通する入口端と、燃料噴射経路と連通する出口端とを有する燃料ダクトと、前記燃料ダクトの前記入口端を前記プランジャ室に接続する燃料入口経路と、前記プランジャ室を前記燃料ダクトの前記出口端に接続する燃料出口経路とを備える。
【0002】
本発明はまた、そのような燃料弁を備える大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関に関する。
【発明の背景】
【0003】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関は、通常、コンテナ船などの大型外航船や発電所の原動機として使用される。このタイプの機関は、重油や燃料油で運転されることが非常に多い。
【0004】
近年、大型2ストロークディーゼルエンジンにおいて、別の種類の燃料を使用できるようにしたいという要望が生じている。例えば、メタノール、LPG、LNG、エタン、アンモニアなどのガス燃料に対応することが求められている。このような燃料は、大型低速ユニフローターボ過給式2ストローク内燃機関の燃料として使用した場合、例えば重油を燃料として使用した場合と比較して、排ガス中の亜硫酸成分、NOx、CO2が大幅に低減されるため、比較的クリーンな燃料であると言える。
【0005】
冒頭で述べたタイプの燃料噴射弁は、US4398519Aに知られている。
【0006】
燃料の種類が異なれば異なる燃料弁を使うことが一般的である。以下では、既知の3つの異なる燃料弁について説明するが、いずれも同じような欠点がある。図1から図3には、公知の燃料弁1の3つの異なる例が示されている。3つの図において、対応する要素には同じ参照番号が使用されている。
【0007】
図1から3に示す燃料弁1は全て、後端3と前端4を有する縦長の燃料弁ハウジング2を備える。ハウジング2の前端には、燃焼室60に燃料を噴射するための複数のノズル孔9を有するノズル5が設けられている。燃料弁1はまた、縦長の燃料弁ハウジング2に燃料入口ポート6を備えている。燃料入口ポート6は、図示されない加圧液体燃料源に接続している。燃料は、燃料ダクト7を介して、前記弁ハウジング2内のボア13内に設けられたプランジャ室14に供給される。プランジャ室14は、前記ボア13内に受容された軸方向に変位可能なプランジャピストン12によって画定されている。プランジャピストン12は、プランジャ室14の充填時及び排出時にそれぞれ前後に移動する。公知の燃料弁1は、プランジャ室14から燃料弁1の前端部4のノズル5へと延設される燃料噴射経路11を備える。燃料弁1は、燃料弁1を通る燃料の流れを制御するために、軸方向に変位可能な弁針30を有する。弁針30は閉位置と開位置とを有する。閉位置において、弁針30は弁座31に接触しており、燃料がノズル5へ流れるのを防いでいる。閉位置において、弁針30は弁座31からリフトしており、それによって、燃料が燃料弁1を通ってノズル孔9へ流れることを可能にする。
【0008】
公知の燃料弁1はいずれも、燃料入口ポート6からプランジャ室14への燃料経路に配置された吸引弁40を備えており、この吸引弁40は、プランジャ室14への燃料充填時に加圧燃料によって与えられる圧力によって開かれる。
【0009】
機関の運転中に弁針30が動かなくなった場合、シリンダの燃焼室に燃料が過剰に供給され、その結果、シリンダカバーが浮き上がり、機関が故障するという危険性がある。このようなシリンダへの過剰燃料供給を防止するために、図1に示す燃料弁1は、図示しない外部ELBI弁(電子噴射遮断弁,Electronic block injection valve)を備えており、プランジャ室に燃料が供給されるべきではないときに、燃料弁1への燃料供給を遮断する。図2及び図3に示す燃料弁1はいずれも、燃料がプランジャ室14から燃料噴射経路11を経てノズル5にのみ流れ、プランジャ室14に向かって逆方向には流れないようにする逆流防止弁41を備えている。逆流防止弁41は、弁針30が動かなくなった場合に、シリンダへの過剰燃料供給が起こらないようにする。
【0010】
図1に示す燃料弁1に関連して、ELBIは、燃焼室圧力が燃料供給圧力を下回ると燃料弁への燃料供給を遮断するため、弁針が開位置で止まっている場合、過剰給油を防ぐことができる。しかし、ELBI弁は、次の噴射までの噴射弁の充填時間を制限し、燃料によっては、ELBI弁と燃料弁の間に閉じ込められた容積がシリンダカバーの浮き上がりを引き起こすのに十分なエネルギーを含んでいる場合、シリンダカバーの浮き上がりを防止できないことがある。図2及び図3に示す燃料弁1に関連して、逆止弁は運転中に監視することができないため、この逆止弁が適切に機能せず、燃料噴射弁が開位置で立ち往生した場合、過剰給油、ひいてはシリンダカバーの浮き上がりが発生する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、冒頭で述べた種類の燃料弁であって、燃焼室への過剰給油に関する上述の課題が少なくとも著しく低減された、燃料弁を提供することである。
【0012】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や明細書、図面から明らかになるだろう。
【0013】
第1の捉え方によれば、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃焼室内に液体燃料を噴射するための燃料弁が提供される。この燃料弁は、
後端と前端とを有する縦長の燃料弁ハウジングと、
複数のノズル孔を有するノズルであって、前記燃料弁ハウジングの前記前端に配置されるノズルと、
前記縦長の燃料弁ハウジングに設けられ、加圧された液体燃料の供給源に接続するための燃料入口ポートと、前記燃料弁ハウジングのボア内に受容されるプランジャピストン及び前記ボア内のプランジャ室と、
前記燃料入口ポートと連通する入口端と、燃料噴射経路と連通する出口端とを有する燃料ダクトと、
前記燃料ダクトの前記入口端を前記プランジャ室に接続する燃料入口経路と、前記プランジャ室を前記燃料ダクトの前記出口端に接続する燃料出口経路と、
を備えると共に、
前記燃料ダクト内において、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で移動可能なスピンドル弁部材を備え、
前記第1の位置において、前記スピンドル弁部材は、燃料が、前記入口経路を通って前記プランジャ室へと流れ、前記プランジャ室を燃料で満たすことを可能にする一方、燃料が、前記出口経路を通って前記燃料噴射経路に入ることを阻止し、
前記第2の位置において、前記スピンドル弁部材は、燃料が、前記プランジャ室から、前記出口経路を通って、前記ノズルに燃料を供給するための前記燃料噴射経路に流れることを可能にする一方、燃料が、前記入口経路を通って前記プランジャ室に入ることを阻止し、
前記燃料弁は更に、前記プランジャ室を燃料で満たすために前記スピンドル弁部材が前記第1の位置にあるときに、前記出口経路から前記燃料噴射経路への一定の漏れを提供する手段を備える。
【0014】
上に特定される燃料弁によれば、弁針が開位置で動かなくなった場合でも、燃料の過剰注入やシリンダカバーの浮き上がりが起こらないことを保証する、自己点検式の安全機能が得られる。これは、吸引弁と逆流防止弁を1つの部品又は弁に統合することによって得られるものである。この部品又は弁は2つの位置のいずれかにしか留まることができない。すなわち、プランジャ室を燃料で満たすための開位置と、プランジャ室からシリンダの燃焼室に燃料を噴射するための開位置のどちらか一方にしか、留まることができない。このため、燃料注入ポートから燃焼室への直接の開放ラインは決して存在できない。
【0015】
燃料が、燃料ダクトの燃料入口端からプランジャ室を経由して燃料ダクトの出口端に直接流れるのを避けるために、スピンドル弁部材は、第1の位置と第2の位置との間の第3の中間位置において、燃料が入口経路を経由してプランジャ室に入ることと、燃料が出口経路を経由して燃料噴射経路に入ることの両方を遮断することができる。これは、プランジャ室への入口経路とプランジャ室からの出口経路の両方を同時に遮断するのに十分な長さのスピンドル弁部材を設けることによって、可能とすることができる。スピンドル弁部材は、この第3の中間位置で停止することはない。
【0016】
スピンドル弁部材は、原理的には、燃料が燃料ダクトの入口端から出口端まで流れるための唯一の方法が、入口経路、プランジャ室及び出口経路を経由するものであることを確実にする、任意の適切な方法で構成されうる。従って、単純な実施形態では、スピンドル弁部材は、燃料ダクトにきつく嵌まる断面を含んで構成されうる。しかし、スピンドル弁部材が、燃料ダクト内に挿入される不動のハウジング内に搭載され、スピンドル弁部材が、少なくとも前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記ハウジング内を動くことが可能であることが好ましい。不動ハウジングは、好ましくは、燃料ダクトの入口端と出口端との間で、不動ハウジングと燃料ダクトとの間の隙間又は空間を通じて燃料が漏れるのを避けるために、燃料ダクトに隙間なく嵌合されるべきである。一実施形態では、アセンブリはプレスフィットとして作ることができる。
【0017】
燃料弁の作動中、プランジャ室を燃料で満たすとき、スピンドル弁部材は、好ましくは、燃料入口ポートを通じて燃料ダクトに入る加圧された液体燃料によって与えられる力によって、燃料ダクトの入口端部から出口端部に向かう方向に移動させられる。これは、その瞬間において、燃料ダクトの入口端部の圧力が出口端部の圧力よりも高いためである。スピンドル弁部材が前記プランジャ室を燃料で満たすための第1の位置にあるときに、出口経路から燃料噴射経路への意図された漏れのために、プランジャ室が満杯になったとき、液圧は燃料ダクトの入口端と出口端で等しくなる。燃料をプランジャ室から燃料噴射経路に供給しなければならないときに、スピンドル弁部材を第2の位置に向かって反対方向に移動させ、プランジャ室からの出口経路の閉塞を解除するために、任意の適切な手段を備えることができる。そこで本発明による燃料弁は、燃料ダクトの入口端に向かう方向にスピンドル弁部材に力を加えるための強制部材を備えることが好ましい。前記強制部材はばねであることが好ましい。
【0018】
スピンドル弁部材は更に、端部停止面を備えることが好ましい。この端部停止面は、スピンドル弁部材がその第2の位置にあるとき、すなわち燃料がプランジャ室から燃料噴射経路へと出口経路を通って流れることが可能であるとき、燃料ダクト又はハウジングに設けられた対応する面に当接する。
【0019】
出口経路から燃料噴射経路への一定の漏れを提供するための手段は、原則として、少なくともスピンドル弁部材が前記プランジャ室を燃料で満たすための第1の位置にあるときに、プランジャ室から燃料噴射経路への燃料の一定の所定の流れを確保する手段であればどのようなものであってもよい。しかしそのような手段は、スピンドル弁部材に設けられたオリフィスを有することが好ましい。燃料弁にオリフィスのような漏出手段を設けることにより、上述のように、プランジャ室が完全に充填されたときに燃料ダクトの入口端と出口端とで等しい液圧を得ることが可能となり、それ故、ばね等の付勢部材がスピンドル弁部材を燃料ダクトの入口端の方向に第2の位置まで移動させることが可能となる。
【0020】
オリフィスは、スピンドル弁部材がその第1の位置で前記プランジャ室に燃料を充填しているときにのみ、出口経路から燃料噴射経路への一定の漏れを生じさせるように、スピンドル弁部材に設けられることが好ましい。
【0021】
燃料ダクトは、原則として、任意の適切な断面を有するように形成することができるが、燃料ダクトは、燃料弁ハウジングに設けられたボアであることが好ましい。
【0022】
本発明はまた、添付の特許請求の範囲に定義される燃料弁を備える大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
図1】公知の燃料弁の第1の例を示している。
図2】公知の燃料弁の第2の例を示している。
図3】公知の燃料弁の第3の例を示している。
図4】本発明に係る燃料弁の一実施形態を示す図である。
図5図5a-図5c本発明に係る燃料弁の断面をより詳細に示している。
【詳細説明】
【0024】
以下の詳細説明では、本発明による燃料弁を、クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関で使用するように説明する。ただし内燃機関は他のタイプであってもよいことは理解されたい。
【0025】
図4には、本発明による燃料弁1が示されている。図1に示す燃料弁1は、図1から3に示される既知の燃料弁と同様に、後端3と前端4とを有する縦長の燃料弁ハウジング2を有する。ハウジング2の前端には、燃焼室60に燃料を噴射するための複数のノズル孔9を有するノズル5が設けられている。燃料弁1はまた、縦長の燃料弁ハウジング2に燃料入口ポート6を備えている。燃料入口ポート6は、図示されない加圧液体燃料源に接続している。燃料は、燃料ダクト7及び燃料入口経路15を介して、弁ハウジング2のボア13内に設けられたプランジャ室14に供給される。燃料ダクト7は、燃料入口ポート6と連通する入口端8と、出口端10とを有する。プランジャ室14は、ボア13と、ボア13内に受容される軸方向に変位可能なプランジャピストン12とによって画定される。プランジャピストン12は、プランジャ室14の充填時及び排出時に、それぞれ前後に移動する。
【0026】
本発明による燃料弁1はまた、燃料ダクト7の出口端10から延設される燃料噴射経路11を備える。燃料噴射経路11には、プランジャ室14から、プランジャ室14と燃料ダクト7とを接続する燃料出口経路16を通じて燃料が供給される。燃焼室60への燃料の噴射中、プランジャ室14内の燃料はプランジャピストン12によって加圧され、燃料噴射経路11を通って燃料弁1の前端4のノズル5に向かって流れる。燃料弁1を通る燃料の流れを制御するために、燃料弁1は、軸方向に変位可能な弁針30を備えている。軸方向に変位可能な弁針30は、弁座31に着座する閉位置を有する。閉位置においては、ノズル5への燃料の流出が妨げられている。また、軸方向に変位可能な弁針30が弁座31から離座する開位置も有する。開位置において、燃料は、燃料弁1を通ってノズル孔9へ流れることを可能とされる。弁針30は、プランジャピストン12によってプランジャ室14内に加圧された燃料によって開位置へと離座する。燃料噴射中、この加圧燃料が、弁針30に作用する力を与える。燃料噴射が終了し、燃料噴射経路11内の燃料圧力が緩和されると、スプリング32が弁針30を閉位置に付勢する。
【0027】
運転中に弁針30が動かなくなった場合、前述のように、シリンダの燃焼室に燃料が過剰に供給されるという大きな危険性があり、その場合は、シリンダカバーが浮き上がり、機関が故障する可能性がある。
【0028】
この問題を解決するために、本発明による燃料弁1は、燃料ダクト7内に配置され、燃料ダクト7内で第1の位置(図5a参照)と第2の位置(図5c参照)との間を移動可能なスピンドル弁部材17を備える。第1の位置では、スピンドル弁部材17は、燃料源から供給される加圧燃料によって燃料入口ポート6から離れる方向に移動し、燃料が入口ダクト7及び入口経路15を通ってプランジャ室14へ流れることを可能にし、それによって燃料がプランジャ室14内に充填される。スピンドル弁部材17がこの第1の位置にあるとき、出口経路16はスピンドル部材17によって閉じられ、従って燃料が燃料噴射経路11に入るのを阻止する。第2の位置では、スピンドル弁部材17は、ばね18によって燃料入口ポート6に向かう方向に動かされ、燃料をノズル5に供給するために、燃料がプランジャ室14から燃料噴射経路11へと出口経路16を通って流れることを可能にする。スピンドル弁部材17がこの第2の位置にあるとき、入口経路15はスピンドル部材17によって閉じられる。従って燃料が入口経路15を通ってプランジャ室14に入ることは阻止される。
【0029】
このように、本発明による燃料弁1では、公知の燃料弁に適用されている吸引弁と逆流防止弁とが1つの部品又は弁に組み合わされており、この部品又は弁は、2つの位置のいずれかにしか留まることができない。すなわち、プランジャ室14に燃料を充填するための開位置と、プランジャ室14からシリンダの燃焼室60に燃料を噴射するための開位置の、2つの位置のいずれかにしか、留まることができない。従って、燃料入口ポート6を燃焼室60に直接結ぶ開放ラインが形成されることはなく、弁針が開位置で動かなくなった場合でも、燃料の過剰注入、ひいてはシリンダカバーの浮き上がりが起こらない。
【0030】
本発明による燃料弁1は、オリフィス21を備えており、このオリフィス21は、スピンドル弁部材17が前記プランジャ室14に燃料を充填するための第1の位置にあるときに、出口経路16から燃料ダクトの出口端10及び燃料噴射経路11への一定の漏れを提供する。オリフィス21のような漏出手段を燃料弁に設けることにより、プランジャ室14が充填されたとき、燃料ダクト7の入口端部8と出口端部10における液圧が等しくなり、それゆえ、ばね18又は他の付勢部材が、スピンドル弁部材17を、燃料ダクト7の入口端部8の方向に(すなわち第2の位置へと)移動させることが可能になる。
【0031】
図5aから図5cを参照して、本発明による燃料弁1をより詳細に説明する。図示されるように、スピンドル弁部材17は、燃料ダクト7内に挿入される不動のハウジング20内に取り付けられている。スピンドル弁部材17は、ハウジング20内で第1位置と第2位置との間で移動可能である。また、スピンドル弁部材17に燃料ダクト7の入口端に向かう方向の力を加えるためのばね18を有する。スピンドル弁部材17は端部停止面25を有する。図5cに示されるように、端部停止面25は、スピンドル弁部材17が第2の位置にあるときに、固定ハウジング20に設けられた対応する面26に当接する。このとき、燃料は、プランジャ室14から燃料噴射経路11へと出口経路16を通って流れることを可能にされる。
【0032】
図示の実施形態では、燃料ダクト7は、燃料弁ハウジング2に中ぐり7として設けられており、静止ハウジング20は、円筒体として形成され、この円筒体は、両端部37及び38、すなわち燃料ダクト7の入口端部8及び出口端部10に対してそれぞれ開口している。固定ハウジング20には、2つの環状凹部33、34が設けられており、それぞれ入口経路15及び出口経路16と連通するように配置されている。両環状凹部33、34の底部には、不動ハウジング20にそれぞれ複数の孔35、36が設けられている。孔35は、スピンドル弁部材17が図5aに示す第1の位置にあるとき、液体燃料が、燃料ダクト7の入口端8から、ハウジング20の入口端8側の開放端37を通って環状凹部33に流れ、更に入口経路15を通ってプランジャ室14に流れることを可能にする。
【0033】
一方、孔36は、スピンドル弁部材17が図5cに示す第2の位置にあるとき、液体燃料が、プランジャ室14から出口経路15を通って環状凹部34に流れ、孔36を通り、更にハウジング20の開放端38を通って燃料ダクト7の出口端10に流れることを可能にする。
【0034】
図5bにおいて、スピンドル弁部材17は、第1の位置と第2の位置との間の第3の中間位置に示されている。スピンドル弁部材17は、第1の位置に移動するときも、第2の位置に移動するときも、この中間位置を経由するが、この中間位置で静止することはない。中間位置において、スピンドル弁部材17は、燃料が入口経路15を介してプランジャ室14に入ることと、出口経路16を介して燃料噴射経路11に入ることの両方を阻止する。このようにして、燃料入口ポート6から燃焼室60への直接の開放経路が決して存在しないことが更に保証される。
【要約】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関の燃焼室内に液体燃料を噴射する燃料弁1が開示される。この燃料弁は、後端3と前端2とを有する縦長の燃料弁ハウジング2と、前端2に配置され、複数のノズル孔9を有するノズルと、燃料弁ハウジング2に設けられ、加圧された液体燃料の供給源に接続するための燃料入口ポート6と、燃料弁ハウジング2のボア内13に受容されるプランジャピストン12及びボア13内のプランジャ室14と、燃料入口ポート6と連通する入口端8及び燃料噴射経路と連通する出口端10とを有する燃料ダクト7と、入口端8をプランジャ室14に接続する燃料入口経路15と、プランジャ室14を出口端10に接続する燃料出口経路16と、燃料ダクト7内において第1の位置と第2の位置との間で移動可能なスピンドル弁部材17を備える。前記第1の位置において、スピンドル弁部材17は、燃料が、入口経路15を通ってプランジャ室14へと流れ、プランジャ室14を燃料で満たすことを可能にする一方、燃料が、出口経路16を通って燃料噴射経路11に入ることを阻止し、前記第2の位置において、スピンドル弁部材17は、燃料が、プランジャ室14から、出口経路16を通って、ノズル5に燃料を供給するための燃料噴射経路11に流れることを可能にする一方、燃料が、入口経路15を通ってプランジャ室14に入ることを阻止する。燃料弁1は更に、プランジャ室14に燃料を充填するためにスピンドル弁部材17が前記第1の位置にあるときに、出口経路16から燃料噴射経路11への一定の漏れを提供する手段を備える。この燃料弁によれば、弁針が開位置で動かなくなった場合でも、燃料の過剰注入やシリンダカバーの浮き上がりが起こらないことを保証する、自己点検式の安全機能が得られる。これは、吸引弁と逆流防止弁を1つの部品又は弁に統合することによって得られるものである。この部品又は弁は2つの位置のいずれかにしか留まることができない。すなわち、プランジャ室を燃料で満たすための開位置と、プランジャ室からシリンダの燃焼室に燃料を噴射するための開位置のどちらか一方にしか、留まることができない。このため、燃料注入ポートから燃焼室への直接の開放ラインは決して存在できない。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5