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  • 特許-発進坑口のエントランス装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】発進坑口のエントランス装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240813BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
E21D11/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023204951
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390027661
【氏名又は名称】株式会社金澤製作所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 光雄
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-238278(JP,A)
【文献】特開2021-067049(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190336(JP,U)
【文献】特開平7-102877(JP,A)
【文献】特開2004-270252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンが発進する発進坑口のエントランス装置であって、
前記シールドマシンが挿入進行可能なように環状に形成されたエントランスフレームと、
前記エントランスフレームの内周面に固定された環状のシートであり、トンネル掘削時に前記シールドマシンの外周面に密着するパッキンと、
前記パッキンに対して前記シールドマシンの進行方向後方に配設され、前記パッキンの周方向に沿って環状に並べられ、前記シールドマシンの進行方向に回動可能なフラップと、
前記シールドマシンと前記エントランスフレームとの間に形成される空間に流入し堆積した土砂や泥を前記エントランスフレームの内周面から前記発進坑口の外部に向かって排出する排出路と、
前記エントランスフレームの内周面に形成した前記排出路の入り口に破砕具と、を備える前記発進坑口のエントランス装置。
【請求項2】
前記破砕具が1枚または複数の刃物から構成される請求項1記載の排出路。
【請求項3】
シールドマシンが発進する発進坑口のエントランス装置であって、
前記シールドマシンが挿入進行可能なように環状に形成されたエントランスフレームと、
前記エントランスフレームの内周面に固定された環状のシートであり、トンネル掘削時に前記シールドマシンの外周面に密着するパッキンと、
前記パッキンに対して前記シールドマシンの進行方向後方に配設され、前記パッキンの周方向に沿って環状に並べられ、前記シールドマシンの進行方向に回動可能なフラップと、
前記シールドマシンと前記エントランスフレームとの間に形成される空間に流入し堆積した土砂や泥を前記エントランスフレームの内周面から前記発進坑口の外部に向かって排出する排出路と、
前記エントランスフレームの内周面に形成した前記排出路の入り口に向かって前記排出路の出口から圧縮気体を送るための圧縮機と、を備える前記発進坑口のエントランス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドマシンを用いてトンネルを掘削する際に、シールドマシンの発進坑口に設置するエントランス装置に関するものであり、具体的には、エントランス装置の止水性を確保し、同時にシールドマシンの走行を維持するために、シールドマシンとエントランス装置との間に形成される空間に流入し堆積した土砂や泥を排出するための排出路に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中を掘削し、地下鉄などの軌道や自動車道路を構築するために、シールドマシンマシンと呼ばれるトンネル掘削機が多く利用されている。これは、まず地盤を掘り起こして発進立坑1と呼ばれる坑道を形成して図1に示すようなシールドマシン2を搬入し、次に発進立坑1の側壁1aに発進坑口3を設けてからシールドマシン2を発進坑口3に挿入し、地中を堀削する。
【0003】
通常、トンネル4は地下水位より深い地中に構築されるため、トンネル4には多量の水やガスが発生する。そこで、トンネル4内の水抜きやガス抜きと、発進坑口3とシールドマシン2との間の止水とを目的として、特許文献1に記載されているエントランス装置5が設けられる。
【0004】
エントランス装置5は、図2に示すように発進坑口3の内径と同じ外径を有する環状に形成されたエントランスフレーム6を有する。エントランスフレーム6には、図2に示すように、トンネル4内に発生した水やガスをトンネル4内から発進坑口3に向かって除去するために、その内周面6aに水・ガス抜き配管7が設けられる。
【0005】
水・ガス抜き配管7は、図2に示すように、エントランスフレーム6の径方向上側の内周面6aと、下側の内周面6aに設置される。設置される数は限定されず、堀削の状況に応じて決められる。トンネル4内に発生した水やガスは、自らが持つ圧力によって、水・ガス抜き配管7を経由して発進坑口3の外部に導かれる。
【0006】
発進坑口3とシールドマシン2との間の止水のために、エントランスフレーム6には、図2に示すようにエントランスフレーム6の内周面6aにパッキン押えリング8を挟んでパッキン9とフラップ10が固定される。
【0007】
パッキン9はシールドマシン2の外周面2aに密着して止水を行い、同時にシールドマシン2の振動を吸収するための部材であり、可撓性および弾性を有するゴム部材等によって構成された環状の1枚のシートであり、シールドマシン2の外周径よりも小さな内周径を有する。図3に示すように、シールドマシン2の推進に伴い、パッキン9の自由端9aがシールドマシン2の進行方向に屈曲してシールドマシン2の外周面2aに密着することにより、発進坑口3とシールドマシン2との間を止水する。
【0008】
フラップ10は図3に示すようにパッキン9に対してシールドマシン2の進行方向後方に配設された複数の短冊状の部材からなり、パッキン9の周方向に沿って環状に並べられ、シールドマシン1の進行方向に対して回動可能になっている。フラップ10は、鋼製のフラップ部10aと、鋼製のベース板10bと、ヒンジ10cを含む。フラップ部10aの端部が、ヒンジ10cを介してベース板10bに回動可能に連結されている。そして、シールドマシン2の進行に伴い、フラップ10がシールドマシン2の進行方向に回動してパッキン9を押さえつけることにより、パッキン9の自由端9aが裏返ることを防止する。
【0009】
図3に示すように、エントランスフレーム6の内周面6aに内周面6aからシールドルドマシン2に向かって、パッキン9の固定端9b、パッキン押えリング8、フラップ10のベース板10bの順に積み重ねられ、これらがボルト11によってエントランスフレーム6に固定されている。
【0010】
特許文献1の方法によって止水は可能なものの、図3のようにシールドマシン2とエントランスフレーム6との間に形成される空間12に土砂や泥13が流入し、パッキン9に接触するまで堆積すると、堆積した土砂や泥13の締め付け力によってパッキン9の自由端9a近傍が抑圧される。この状態でシールドマシン2が進行すると、パッキン9の自由端9aがシールドマシン2の進行方向に引き伸ばされ、引きちぎられるという事故が発生している。このため、十分な止水性が得られない、シールドマシン2を支えることができず、シールドマシン2の走行を維持することができない問題があった。
【0011】
水・ガス抜き配管7が設けられているが、その口径は一般には2インチであるため、堆積した土砂や泥13を排出するには不十分な寸法であり、パッキン9が引き伸ばされ、引きちぎられる事故を防止することはできない。また、この問題を解決するための装置や方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2020―143563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、シールドマシンとエントランスフレームとの間に形成される空間に流入し堆積する土砂や泥を排出し、エントランスフレームに固定されたパッキンの損傷を防止して十分な止水性を確保し、シールドマシンを支障なく支持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本課題を解決するため、本発明の第1の形態は、図1、2、および3に示すシールドマシン2が発進する発進坑口3のエントランス装置5であって、シールドマシン2が挿入進行可能なように環状に形成されたエントランスフレーム6と、エントランスフレーム6の内周面6aに固定された環状のシートであり、トンネル掘削時にシールドマシン2の外周面に密着するパッキン9と、パッキン9に対してシールドマシン2の進行方向後方に配設され、パッキン9の周方向に沿って環状に並べられ、シールドマシン2の進行方向に回動可能なフラップ10と、シールドマシン2とエントランスフレーム6との間に形成される空間12に流入し堆積した土砂や泥13をエントランスフレーム6の内周面6aから発進坑口3の外部(発進立坑1側)に向かって排出する排出路14と、を備える発進坑口3のエントランス装置5である。
【0015】
本発明の第2の形態は、図3に示すエントランスフレーム6の内周面6aに形成した排出路14の入り口14aに、破砕具15を備える排出路14である。破砕具15は、空間12に流入し堆積した土砂や泥13が塊状に固まって排出路14を塞ぐことを防止するためのものである。
【0016】
本発明の第3の形態は、図5に示すように破砕具15が1枚または複数の刃物16から構成される。刃物16によって、塊状に固まった土砂や泥13を破砕し、排出路14を塞ぐことを防止する。
【0017】
本発明の第4の形態は、排出路14の入り口14aに向かって圧縮気体を送るための圧縮機(図示せず)を備える。土砂や泥13が塊状に固まって排出路14を塞いだ場合、圧縮機から排出路14を通じて排出路14の入り口14aに向かって圧縮空気を送り、これによって土砂や泥13を排除する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シールドマシンとエントランスフレームとの間に形成される空間に流入し堆積する土砂や泥が、エントランスフレームに固定されるパッキンを損傷することがなく、止水性を損なうことが無い。また、シールドマシンも安定して支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一般的な発進立坑の地中方向に対する断面図である。
図2】一般的なエントランス装置のトンネル方向に対する断面図である。
図3】本発明に係る排出路のトンネル方向に対する断面図である。
図4】本発明に係るエントランスフレームのトンネル径方向の断面図である。
図5】本発明に係る破砕具の平面および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1および2に示すように、本発明のエントランス装置5は、発進坑口3の内径と同じ外径を有する環状に形成されたエントランスフレーム6を有し、エントランスフレーム6の内周面6aには、パッキン9とフラップ10が固定されている。エントランスフレーム6、パッキン9、およびフラップ10は従来のものをそのまま用いることができ、パッキン9およびフラップ10の設置位置も同様である。図2および3ではパッキン9およびフラップ10を3組記載しているが、その組数に制限はなく、シールドマシン2の大きさや止水の状況によって1組、あるいは2組以上を設置することができる。2組以上設置する場合には、エントランスフレーム6の内周面6aにシールドマシン2の進行方向に沿って一定の間隔で設置することが望ましい。
【0021】
本発明では、図3に示すようにシールドマシン2とエントランスフレーム6との間に形成される空間12に流入し堆積した土砂や泥13を、エントランスフレーム6の内周面6aに設けられた排出路14の入り口14aから排出路14を通して発進坑口3の外部(発進立坑1側)に向かって排出する。
【0022】
入り口14aが設けられる位置は、エントランスフレーム6の内周面6aであれば限定されないが、土砂や泥13はシールドマシン2の下側に流入および堆積しやすいため、エントランスフレーム6の径方向下側の内周面6aに設けることが好ましい。また、パッキン9の自由端9aに土砂や泥11が触れる前に土砂や泥11を排出できるように、図3に示すようにパッキン9の自由端9aがシールドマシン2の外周面2aに密着している点の下側に設けることが好ましい。
【0023】
排出路14は土砂や泥13の排出だけでなく、図2に示される従来の水・ガス抜き配管7の役割も担うため、エントランスフレーム6の径方向下側の内周面6aにこれまで設置されていた水・ガス抜き配管7は不要になる。
【0024】
シールドマシン2とエントランスフレーム6との間に形成される空間12には高い水圧が発生しているので、この水圧によって土砂や泥13を排出路14の入り口14aに導くことができる。
【0025】
図3に示すように、排出路14はエントランスフレーム6の内周面6aと発進坑口3の外部とを結ぶものであり、空間12に発生した水圧によってエントランスフレーム6の内周面6aに設けた入り口14aに導かれた土砂や泥13は、同じ水圧によって排出路14を通して発進坑口3の外部(発進立坑1側)に向かって排出される。
【0026】
図3に示すように排出路14の発進立坑1側には土砂や泥13を排出する排出路出口14bが設けられており、排出路出口14bには回収ピット17が接続されている。排出口14bから出た土砂や泥13は、回収ピット17にて回収される。
【0027】
排出路14の材質は、土砂や泥13を排出できるものであれば限定されるものではないが、強度を保つ点から鋼管であることが好ましい。
【0028】
排出路14および入り口14aの形状および寸法についても限定されるものではないが、例えば鋼管を利用した場合は、土砂や泥13が排出し易くなることからその断面は円形で、口径は2インチより大きいことが好ましく、特に4インチ以上であることが好ましい。
【0029】
排出路14は1本で本発明の効果を得ることができるが、排出の効率を高めるためには複数本の排出路14を設置することが好ましい。例えば、図4はトンネル4の径方向の断面図であり、ここにはエントランスフレーム6の内周面6aに3つの入口14aが設けられている。
【0030】
排出路14によって土砂や泥13を排出するが、空間12で土砂や泥13がパッキン9との接触などによって圧密化され塊状に固まって硬く固化した場合、土砂や泥13が排出路14の入り口14aを閉塞することがある。これを防止するため、圧密化され塊状に固まって硬く固化した土砂や泥13を破砕することを目的として、図3のように入口14aに破砕具15を備えることが好ましい。
【0031】
シールドマシン2とエントランスフレーム6との間の空間12には高い水圧が発生しているので、水圧によって土砂や泥13が破砕具15に押し付けられることで塊状に固まった土砂や泥13は破砕される。
【0032】
破砕具15は塊状に固まって硬く固化した土砂や泥13を破砕できるものであれば、その種類、構造および材質は限定されるものではないが、破砕し易さの点で鋼製の刃物16であることが好ましい。
【0033】
刃物16の形状や配置も限定されるものではないが、図5aのように排出路14の入り口14aを上から見た場合、直線状の1枚の刃物16を円形の入り口14aの径方向に平行に設けたものが好ましい。
【0034】
また、図5bのように排出路14の入り口14aを上から、および排出路14の入り口14aを排出路14に沿って横方向から見た場合、円形の入り口14aの中心部を頂点として入り口14aの円周部に向かって複数枚の刃物14を放射状に配置した破砕具15を用いることも好ましい。図5bでは入り口14aの中心部を頂点として3枚の刃物が入り口14aの円周部に向かって放射状に配置されている。
【0035】
複数枚の刃物16を有する破砕具15を作製する場合、1枚の刃物16を溶接などによって接合させてもよく、または鋳造などによって一体化してもよい。
【0036】
刃物16は入り口14aに固定するのが好ましいが、固定する方法は制限されない。溶接によって入り口14aに直に接合する、入り口14aと同様の形状を有するリングに刃物16を溶接し、これを14aに嵌め込む、などの方法が考えられる。
【0037】
土砂や泥13は、圧密化され塊状に固まって硬く固化したまま、排出路14に入り込んで排出路14を閉塞することがある。塊状に固まって硬く固化した土砂や泥13を排除するため、排出路14の入り口14aに向かって圧縮気体を送るための圧縮機(図示せず)を設置することが好ましい。
【0038】
圧縮機によって作られた圧縮気体が、塊状に固まって硬く固化した土砂や泥13に衝撃を与え、これを吹き飛ばす、あるいは細かく粉砕することができる。
【0039】
図3のように排出路14にはエアバルブ18に取り付けられており、エアバルブ18に配管を介して図示しない圧縮機が接続される。圧縮機を稼働する時は、まずエアバルブ18によって回収ピット17に通じる経路を閉じ、圧縮機と排出路14の入り口14aとの間を開く。次に圧縮機を稼働し、排出路14を閉塞している土砂や泥13に圧縮気体を送り、これらを吹き飛ばす、あるいは細かく粉砕する。
【0040】
圧縮機は圧縮気体を発生できるものであればその構造や種類は限定されるものではなく、一般的なものが利用される。圧縮気体の種類についても限定されるものではないが、扱いやすさの点で空気であることが好ましい。圧縮気体の圧力は、土砂や泥13の状態に応じて設定される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、シールドマシンが発進する発進坑口のエントランス装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 発進立坑
2 シールドマシン
3 発進坑口
4 トンネル
5 エントランス装置
6 エントランスフレーム
7 水・ガス抜き配管
8 パッキン押えリング
9 パッキン
10 フラップ
11 ボルト
12 空間
13 土砂や泥
14 排出路
15 破砕具
16 刃物
17 回収ピット
18 エアバルブ
【要約】
【課題】シールドマシンとエントランスフレームとの間に形成される空間に流入し堆積する土砂や泥を排出し、エントランスフレームに固定されたパッキンの損傷を防止して十分な止水性を確保し、シールドマシンを支障なく支持するエントランス装置の提供。
【解決手段】シールドマシンとエントランスフレームとの間に形成される空間に流入し堆積した土砂や泥を、エントランスフレームの内周面から発進坑口の外部に向かって排出する排出路を備えるトンネル坑口のエントランス装置。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5