(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240813BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20240813BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C5/14 A
C08L23/22
(21)【出願番号】P 2021028557
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】吉住 拓真
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 尚也
(72)【発明者】
【氏名】青木 大地
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-278021(JP,A)
【文献】特開2007-24695(JP,A)
【文献】特開2018-154306(JP,A)
【文献】特開2013-226853(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010755(WO,A1)
【文献】特開2016-78520(JP,A)
【文献】国際公開第2007/100111(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
23/00- 23/04
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を内蔵するための電子部品取付部材が、タイヤ内側部材の表面に取り付けられているタイヤであって、
前記電子部品取付部材は、前記電子部品を収納する電子部品収納部と、前記電子部品取付部材を前記タイヤ内側部材の表面に取り付ける接合面を備える接合部とを備えており、
前記電子部品取付部材のアセトン抽出量AE
r(質量%)と、前記タイヤ内側部材のアセトン抽出量AE
i(質量%)とが、下記(式1)を満たしていることを特徴とするタイヤ。
AE
r/AE
i>1 ・・・・・・・・・・・・・(式1)
【請求項2】
前記電子部品取付部材のアセトン抽出量AE
rが、12質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記電子部品取付部材の前記接合部と前記タイヤ内側部材との接着面積が、12cm
2以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記電子部品取付部材の前記接合部と前記タイヤ内側部材との接着面積が、75cm
2未満であることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記接合部の70℃における複素弾性率E
*
r(MPa)、および、前記タイヤ内側部材の70℃における複素弾性率E
*
i(MPa)が、下記(式2)を満たしていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
0.5E
*
i≦E
*
r≦3.0E
*
i・・・・・・・・・・・・・(式2)
【請求項6】
前記タイヤ内側部材の70℃における損失正接(70℃tanδ
i)が、0.18以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤ内側部材の損失正接(70℃tanδ
i)が、0.15以下であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤ内側部材が、ゴム成分100質量部中、70質量部以上のブチル系ゴムを含有するゴム組成物によって形成されたインナーライナーであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ブチル系ゴムに、30質量部以下の再生ブチルゴムが含有されていることを特徴とする請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記電子部品取付部材の前記電子部品収納部において、前記接合面と対向する側が、開放されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記電子部品取付部材が、タイヤ内側部材の表面に、接着剤を用いて取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
タイヤ断面において、トレッド接地幅を形成する両接地端間を4等分する線をタイヤ半径方向に平行に延長した線で区切られる4つの領域のうち、タイヤ赤道面に最も近い中央2領域内に、前記電子部品取付部材の中心が位置していることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
乗用車用タイヤであることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が内蔵された電子部品取付部材が、タイヤ内腔部に配置されたタイヤ内側部材の表面に設けられているタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を快適に走行させるためには、装着されたタイヤの空気圧が適切に管理されていることが重要であると考えられ、近年、内部にタイヤ圧力監視システム(Tire Pressure Monitoring System:TPMS)を装着することが一般的になりつつある(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-016185号公報
【文献】特開2018-199396号公報
【文献】特開2019-023594号公報
【文献】特開2019-026218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TPMSのようなセンサは、一般的に金属製の電子部品であるため、ゴム製のタイヤに直接取り付けて高速走行した場合、走行中に、タイヤ内側部材にクラックが発生して、タイヤのエアー漏れや電子部品取付部材の剥落などが発生することがあり、さらなる改善が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、高速走行中、タイヤ内側部材にクラックが発生せず、タイヤのエアー漏れや電子部品取付部材の剥落の発生が抑制されたタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
電子部品を内蔵するための電子部品取付部材が、タイヤ内側部材の表面に取り付けられているタイヤであって、
前記電子部品取付部材は、前記電子部品を収納する電子部品収納部と、前記電子部品取付部材を前記タイヤ内側部材の表面に取り付ける接合面を備える接合部とを備えており、
前記電子部品取付部材のアセトン抽出量AEr(質量%)と、前記タイヤ内側部材のアセトン抽出量AEi(質量%)とが、下記(式1)を満たしていることを特徴とするタイヤである。
AEr/AEi>1 ・・・・・・・・・・・・・(式1)
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記電子部品取付部材のアセトン抽出量AErが、12質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記電子部品取付部材の前記接合部と前記タイヤ内側部材との接着面積が、12cm2以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記電子部品取付部材の前記接合部と前記タイヤ内側部材との接着面積が、75cm2未満であることを特徴とする請求項3に記載のタイヤである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
前記接合部の70℃における複素弾性率E*
r(MPa)、および、前記タイヤ内側部材の70℃における複素弾性率E*
i(MPa)が、下記(式2)を満たしていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタイヤである。
0.5E*
i≦E*
r≦3.0E*
i・・・・・・・・・・・・・(式2)
【0012】
請求項6に記載の発明は、
前記タイヤ内側部材の70℃における損失正接(70℃tanδi)が、0.18以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のタイヤである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、
前記タイヤ内側部材の損失正接(70℃tanδi)が、0.15以下であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、
前記タイヤ内側部材が、ゴム成分100質量部中、70質量部以上のブチル系ゴムを含有するゴム組成物によって形成されたインナーライナーであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のタイヤである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、
前記ブチル系ゴムに、30質量部以下の再生ブチルゴムが含有されていることを特徴とする請求項8に記載のタイヤである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、
前記電子部品取付部材の前記電子部品収納部において、前記接合面と対向する側が、開放されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のタイヤである。
【0017】
請求項11に記載の発明は、
前記電子部品取付部材が、タイヤ内側部材の表面に、接着剤を用いて取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のタイヤである。
【0018】
請求項12に記載の発明は、
タイヤ断面において、トレッド接地幅を形成する両接地端間を4等分する線をタイヤ半径方向に平行に延長した線で区切られる4つの領域のうち、タイヤ赤道面に最も近い中央2領域内に、前記電子部品取付部材の中心が位置していることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のタイヤである。
【0019】
請求項13に記載の発明は、
乗用車用タイヤであることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のタイヤである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高速走行中、タイヤ内側部材にクラックが発生せず、タイヤのエアー漏れや電子部品取付部材の剥落の発生が抑制されたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るタイヤの構成を示す断面図である。
【
図2】(A)は、本発明の他の実施の形態に係るタイヤのトレッドの表面の形状を示す図であり、(B)は、本発明の他の実施の形態に係るタイヤの構成を示す断面図である。
【
図3】(A)は、本発明の一実施の形態における電子部品取付部材を接合面と対向する側から見た斜視図であり、(B)は、接合面側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態における電子部品取付部材を接合面と対向する側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1]本発明に係るタイヤの特徴
最初に、本発明に係るタイヤの特徴について説明する。
【0023】
1.概要
本発明に係るタイヤは、電子部品を内蔵するための電子部品取付部材が、タイヤ内腔部に配置されたタイヤ内側部材の表面に取り付けられているタイヤである。そして、電子部品取付部材は、電子部品を収納する電子部品収納部と、電子部品取付部材をタイヤ内側部材の表面に取り付ける接合面を備える接合部とを備えている。さらに、電子部品取付部材のアセトン抽出量AEr(質量%)と、タイヤ内側部材のアセトン抽出量AEi(質量%)とが、下記(式1)を満たしていることを特徴としている。
AEr/AEi>1 ・・・・・・・・・・・・・(式1)
【0024】
上記のようなタイヤとすることにより、後述するように、高速走行中であっても、タイヤ内側部材のクラックの発生が抑制されて、走行中におけるタイヤのエアー漏れや電子部品取付部材の剥落などの発生を抑制することができる。
【0025】
なお、上記の記載において、アセトン抽出量AE量は、電子部品取付部材とタイヤ内側部材のそれぞれから切り出された各試験片について、JIS K 6229に準拠してアセトン抽出量の測定を行い、抽出により減少した量(質量)の比率(質量%)である。
【0026】
2.本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズム
本発明に係るタイヤにおける効果発現のメカニズムは、以下のように考えられる。
【0027】
前記したように、本発明に係るタイヤにおいて、電子部品取付部材は、タイヤ内腔部に配置されたタイヤ内側部材の表面に取り付けられる。しかしながら、インナーライナー等のタイヤ内側部材には、通常、オイルなどの軟化剤成分が添加されており、この軟化剤成分は時間の経過と共にタイヤ内側部材から抜けていくため、タイヤ内側部材は経時的に硬化して、柔軟性を失っていく。
【0028】
そして、このように硬化した箇所に、電子部品取付部材のような硬さが異なる部材が取り付けられていると、互いの剛性差の影響によって、接合部に大きなストレスが加わるため、高速走行中にクラックの発生を招いて、タイヤのエアー漏れが発生したり、電子部品取付部材を剥落させてしまう。
【0029】
そこで、本発明においては、電子部品取付部材のアセトン抽出量AEr(質量%)と、タイヤ内側部材のアセトン抽出量AEi(質量%)とが、AEr/AEi>1(式1)を満足するようにしている。
【0030】
即ち、アセトン抽出量AEは、移行し易い軟化剤成分などの含有量を示す指標と考えることができるため、上記のAEr/AEi>1(式1)は、電子部品取付部材の軟化剤成分がタイヤ内側部材における軟化剤成分よりも多いことを示している。なお、AEr/AEiは、1.1超であることが好ましく、1.2超であるとより好ましく、1.3超であるとさらに好ましい。一方、1.65未満であることが好ましく、1.60未満であるとより好ましく、1.55未満であるとさらに好ましい。
【0031】
このように、電子部品取付部材の軟化剤成分をタイヤ内側部材における軟化剤成分よりも多くすることにより、電子部品取付部材の軟化剤成分がタイヤ内側部材に移行していくため、タイヤ内側部材の経時的な硬化が抑制されて、高速走行中のクラックの発生が抑制されると考えられる。この結果、高速走行中におけるタイヤのエアー漏れや電子部品取付部材の剥落などの発生を抑制することができると考えられる。
【0032】
上記したアセトン抽出量の測定は、JIS K 6229:2015に準拠して行うことができる(抽出時間:10時間)。
【0033】
なお、電子部品取付部材のアセトン抽出量AErは、12質量%未満であることが好ましく、11.5質量%未満であるとより好ましく、11質量%未満であるとさらに好ましい。一方、6.5質量%超であることが好ましく、7質量%超であるとより好ましく、7.5質量%超であるとさらに好ましい。
【0034】
また、タイヤ内側部材のアセトン抽出量AEiは、13質量%未満であることが好ましく、12質量%未満であるとより好ましく、11質量%未満であるとさらに好ましい。一方、6.5質量%超であることが好ましく、7質量%超であるとより好ましく、7.5質量%超であるとさらに好ましい。
【0035】
3.本発明に係るタイヤの好ましい態様
また、本発明に係るタイヤは、以下の態様を採ることが好ましい。
【0036】
(1)電子部品取付部材の接合部とタイヤ内側部材との接着面積
本発明に係るタイヤにおいて、電子部品取付部材の接合部とタイヤ内側部材との接着面積は、12cm2以上であることが好ましい。
【0037】
上記した軟化剤成分の移行は、電子部品取付部材の接合部とタイヤ内側部材との接着部において行われるため、接着面積は大きいほうが好ましく、具体的には、12cm2以上であると、クラックの発生を十分に抑制できるだけの軟化剤成分を移行させることができる。そして、接着面積は13cm2以上であるとより好ましく、14cm2以上であるとさらに好ましい。一方、75cm2未満であることが好ましく、70cm2未満であるとより好ましく、65cm2未満であるとさらに好ましい。
【0038】
(2)電子部品取付部材およびタイヤ内側部材の複素弾性率
本発明において、接合部の70℃における複素弾性率E*
r(MPa)、および、タイヤ内側部材の70℃における複素弾性率E*
i(MPa)が、0.5E*
i≦E*
r≦3.0E*
i(式2)を満足していることが好ましい。複素弾性率E*
r(MPa)、および、複素弾性率E*
i(MPa)は、測定温度:70℃、初期歪み:10%、動歪み:±1%、周波数:10Hz、変形モード:伸長の条件下で測定される。
【0039】
複素弾性率E*は、剛性と関係するパラメーターであり、0.5E*
i≦E*
r≦3.0E*
i(式2)となるように、電子部品取付部材の複素弾性率E*
rおよびタイヤ内側部材の複素弾性率E*
iを制御することにより、互いの剛性差が必要以上に大きくなることが抑制されるため、接合部へ掛かるストレスを抑制して、クラックの発生を抑制することができる。1.0E*
i≦E*
r≦2.95E*
iであるとより好ましく、1.5E*
i≦E*
r≦2.9E*
iであるとさらに好ましい。
【0040】
なお、上記の記載において、E*
rおよびE*
iは、例えば、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」などの粘弾性測定装置を用いて、JIS K 6394の規定に準じて、測定することができる。
【0041】
(3)タイヤ内側部材の損失正接
本発明において、タイヤ内側部材の70℃における損失正接(70℃tanδi)が、0.18以下であることが好ましい。損失正接(70℃tanδi)は、測定温度:70℃、初期歪み:10%、動歪み:±1%、周波数:10Hz、変形モード:引張の条件下で測定される。
【0042】
損失正接tanδは、損失弾性率(E'')/貯蔵弾性率(E')で示すことができ(tanδ=E''/E')、tanδが小さいことは、粘性成分が少ないことを意味している。
【0043】
70℃tanδi≦0.18と、タイヤ内側部材における粘性成分を少なくすることにより、電子部品取付部材とタイヤ内側部材との間における軟化剤成分の濃度勾配とも相俟って、電子部品取付部材からタイヤ内側部材への軟化剤成分の移行が生じやすくなるため、タイヤ内側部材の硬化がより十分に抑制されて、クラックの発生を抑制することができる。なお、70℃tanδiは、0.15以下であるとより好ましく、0.13以下であるとさらに好ましい。下限は限定されないが、例えば、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であるとより好ましく、0.1以上であるとさらに好ましい。
【0044】
なお、上記の記載において、tanδiは、E*の測定と同様に、例えば、GABO社製「イプレクサー(登録商標)」などの粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
【0045】
[2]具体的な実施の形態
次に、本発明の具体的な実施の形態について説明する。なお、以下では、電子部品取付部材としてゴム製の電子部品取付部材、タイヤ内側部材としてインナーライナーを例に挙げて説明するが、上記した(式1)を満足する関係にあれば、特に限定されるものではなく、プラスチック製の電子部品取付部材であってもよく、また、インナーライナー以外のタイヤ内側部材であってもよい。
【0046】
1.タイヤの構成
図1は、本実施の形態に係るタイヤの構成を示す断面図である。
図1において、1はタイヤ、2は電子部品取付部材である。そして、11はトレッド、12はベルト、13はサイドウォール、14はカーカス層、15はビードコア、16はビードエイペックス、17はチェーファー、18はクリンチ、19はタイヤ内側部材(インナーライナー)、31は周方向溝である。また、Iはタイヤの内腔面、CLはタイヤの幅方向のセンターラインである。
【0047】
図1に示すように、電子部品取付部材2は、まず、タイヤの内腔面I、即ち、インナーライナー19の表面に配置されている。このとき、電子部品取付部材へ加わる衝撃を和らげるため、電子部品取付部材のタイヤ内腔面との接合面の中心点を通り、トレッド部の表面プロファイルに対して垂直な線が、トレッド部の表面3に形成された周方向溝31を通らないように配置されている。
【0048】
ここで、トレッド部の表面プロファイルは、「正規リム」に組み付け「正規内圧」を加え、無負荷の状態においたタイヤのトレッド部の接地面を形成する陸部表面を繋ぎ合わせて形成される表面形状であり、例えば、タイヤ半径方向に幅2センチ程度で切り出した、セクションのビード部を適用リム幅に合わせて固定し、隣り合う陸部間を仮想的につなぎ合わせることで確認することができる。
【0049】
また、モニタリング情報を精度高く、安定して得るためには、電子部品付部材が、タイヤ断面において、トレッド接地幅を形成する両接地端間を4等分する線をタイヤ半径方向に平行に延長した線で区切られる4つの領域のうち、タイヤ赤道面に最も近い中央2領域内に、電子部品取付部材の中心が位置していることが好ましい。
図1では、その一例として、電子部品付部材2が、タイヤ内腔面のタイヤ幅方向中央部、即ち、センターラインCL上に取り付けられている例を示している。なお、図示しないが、電子部品は、電子部品取付部材2に内蔵されている。ここで、タイヤのセンターラインCL上は特に変形量が大きいため、センターラインCLと電子部品取付部材の中心とがずれていることが好ましく、そのずれ幅はタイヤ軸方向において1~50mmであることが好ましい。
【0050】
図2は、本発明の他の実施の形態に係るタイヤの図面であり、(A)はトレッドの表面の形状を示す図であり、(B)は、タイヤの構成を示す断面図である。
図2(A)において、VLはトレッド接地幅を形成する両接地端および両接地端を4等分する仮想線である。また、
図2(B)において、clは電子部品取付部材2の中心線であり、mは電子部品取付部材の中心のタイヤのセンターラインCLからのずれ幅である。そして、34、35は、仮想線VLで4等分された領域であり、34はタイヤ赤道面に最も近い領域、35はタイヤ軸方向外側の領域である。なお、
図2(A)において、32dは、中央部の横溝であり、32aは、タイヤ軸方向外側端部に飾り溝を備える横溝である。また、33はサイプである。
【0051】
本実施の形態のタイヤは、トレッド部の表面3のタイヤのセンターラインCL上、即ち赤道上に1本、その両側にそれぞれ1本の周方向溝31が形成されている。このように赤道上に周方向溝31が形成されているタイヤにおいては、両接地端および両接地端間を4等分する線をタイヤ半径方向に平行に延長した仮想線VLで区切られる4つの領域、具体的には両接地端間を4等分するタイヤ表面のプロファイル上の位置から、同プロファイルに垂直に延びる仮想線VLで区切られる4つの領域のうち、タイヤ赤道面に最も近い中央2領域34内に、前記電子部品取付部材の中心を位置させることが好ましい。
【0052】
ここで、「トレッド接地幅を形成する両接地端」とは、タイヤを「正規リム」に組み付け「正規内圧」を加えて、平板上に垂直姿勢で静止配置した後、「正規荷重」を負荷したときの平板との接触面におけるタイヤ軸方向最大直線距離を形成する端部を言い、具体的には、例えば、トレッドの表面に墨を塗ったタイヤに「正規荷重」を負荷して厚紙に押しつけ、転写させることにより特定することができる。
【0053】
さらに、前記両接地端間を4等分することで区切られた4つの領域のうち、タイヤ赤道面に最も近い中央2領域内に、電子部品取付部材が位置しているかは、例えば幅2センチ程度に切り出したセクション断面上に接地端位置を転記し、表面プロファイルに沿ってタイヤを4等分することにより確認することができる。
【0054】
また、トレッド部の表面に形成されている溝については、「正規リム」に組み付け「正規内圧」を加え、無負荷の状態においたタイヤのトレッドの表面に形成されるラジアスにより求められるトレッドプロファイルから知ることができ、具体的には、例えば、タイヤ半径方向に幅2センチ程度で切り出した、セクションのビード部を適用リム幅に合わせて固定することにより、簡易的に計測することができる。
【0055】
なお、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0056】
そして、「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE” を指す。
【0057】
「正規荷重」とは、前記各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、タイヤに負荷されることが許容される最大の質量を言い、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”とする。
【0058】
次に、電子部品取付部材2は、電子部品を収納する電子部品収納部と、電子部品取付部材2をインナーライナー19の表面に取り付ける接合面を備える接合部とを備えている。
【0059】
図3(A)は本実施の形態における電子部品取付部材2を接合面と対向する側から見た斜視図であり、
図3(B)は接合面側から見た斜視図である。また、
図4は、他の実施の形態における電子部品取付部材2を接合面と対向する側から見た斜視図である。
【0060】
図3および
図4において、21は電子部品収納部であり、22は接合部である。そして、Aはインナーライナー19に接合される接合面、E
1は電子部品収納部21の接合面と対向する側の上端部、E
2は電子部品収納部の接合面側の下端部であり、Sは電子部品の収納スペースである。そして、
図3(A)において、Dは接合面の直径(外径)、Tは接合部の厚さ、Wはフランジの幅、Hは電子部品取付部材の厚さ(高さ)である。
【0061】
図3および
図4に示すように、電子部品収納部21は筒状に形成されており、その内側に電子部品の収納スペースSを備えている。また、電子部品収納部21の下端部E
2にフランジ状の接合部22が形成されており、接合部22の下面には接合面Aが形成されている。接合部22をフランジ状にすることにより、接合面Aの大きさを大きくして、タイヤ内側部材との間に十分な接着面積を確保できるため、接合強度をより高くすることができる。
【0062】
収納スペースSの横断面の形状、サイズおよび深さは、収納する電子部品の形状とサイズに応じて適宜決定される。横断面の形状としては、例えば、図示した円形の他に、楕円形、多角形など、適宜設定することができる。なお、筒の側壁は、接合部22に対して垂直ではなく、収納スペースSの横断面のサイズが下端部E2側で大きく、上端部E1側で小さくなるように、円錐台状に形成されていることが好ましい。
【0063】
電子部品収納部21の下端部E
2側は、開口して形成されていることが好ましく、これにより、例えば、センサを直接タイヤのタイヤ内側部材に接触させることができるため、より高い感度で正確な情報を取得することができる。一方、上端部E
1側が、
図3Aに示すように開放されて開口していることが好ましく、これにより、電子部品を着脱自在に装着することができ、容易に交換することもできる。なお、
図4に示すように、上端部E
1側は閉塞していてもよく、この場合には、電子部品を収納スペースS内に密封して収納することができ、安定した環境に置くことができる。
【0064】
なお、接合面Aの直径(外径)Dは、20mm以上であることが好ましく、25mm以上であるとより好ましく、30mm以上であるとさらに好ましい。一方、60mm以下であることが好ましく、55mm以下であるとより好ましく、50mm以下であるとさらに好ましい。
【0065】
また、電子部品取付部材の厚さ(高さ)Hは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であるとより好ましく、20mm以上であるとさらに好ましい。一方、40mm以下であることが好ましく、35mm以下であるとより好ましく、30mm以下であるとさらに好ましい。
【0066】
また、接合部の厚さTは、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であるとより好ましく、0.8mm以上であるとさらに好ましい。一方、1.4mm以下であることが好ましく、1.3mm以下であるとより好ましく、1.2mm以下であるとさらに好ましい。
【0067】
また、フランジの幅Wは、4mm以上であることが好ましく、6mm以上であるとより好ましく、8mm以上であるとさらに好ましい。一方、16mm以下であることが好ましく、14mm以下であるとより好ましく、12mm以下であるとさらに好ましい。
【0068】
そして、電子部品と電子部品取付部材とを合わせた重量は、50g以下であることが好ましく、40g以下であるとより好ましく、30g以下であるとさらに好ましい。
【0069】
2.タイヤ内側部材(インナーライナー)
次に、具体的なタイヤ内側部材の一例としてインナーライナーについて説明するが、前記した通り、タイヤ内側部材はインナーライナーに限定されるものではない。
【0070】
(1)タイヤ内側部材(インナーライナー)を構成するゴム組成物
本実施の形態において、タイヤ内側部材(インナーライナー)は、例えば、以下の示す各配合材料が配合されたゴム組成物(インナーライナー用ゴム組成物)を用いて形成される。
【0071】
(a)ゴム成分
インナーライナー用ゴム組成物のゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムやブチル系ゴムを挙げることができる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ゴムの内でも、空気遮断性および耐熱性に優れるという理由から、ブチル系ゴムを主たるゴム成分として含有することが好ましい。
【0072】
(a-1)ブチル系ゴム
ブチル系ゴムとしては、タイヤ工業で通常に使用されるものを好適に使用することができ、具体的には、通常のブチルゴム(IIR)の他、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、フッ素化ブチルゴム(F-IIR)、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体(Exxon Mobil Chemical社製のExxpro 3035)などのハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)などが挙げられる。これらの内でも、天然ゴムを含有せずとも硫黄架橋が進行しやすいという理由から、Br-IIRが好ましく使用される。
【0073】
また、ブチル系ゴムとして、再生ブチル系ゴムを併用することもできる。再生ブチル系ゴムは、通常、ハロゲン化されていないブチルゴム(レギュラーブチルゴム)の含有率が高いため、ハロゲン化ブチルゴムと併用することで、良好な空気遮断性、加硫速度を確保することができる。特に、再生ブチル系ゴムを含む配合に脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物を添加した場合、シート加工性、空気遮断性の性能バランスが、相乗的に顕著に改善され好ましい。
【0074】
再生ブチル系ゴムとは、タイヤのチューブや、タイヤ製造時に使用するブラダー等のブチル系ゴムを多く含むゴム製品の粉砕物、又は該粉砕物を加熱・加圧したものに含まれるブチル系ゴム分であり、ゴム成分の架橋結合を切断(脱硫処理)し、再加硫可能としたものを含む。一般的に、粉砕物中の約50質量%が再生ブチル系ゴムである。なお、再生ブチル系ゴム中には硫黄分も存在するが、架橋に関与しない程度に失活している。
【0075】
再生ブチル系ゴムの市販品としては、ブチルチューブを加圧条件下で加熱処理して製造された村岡ゴム(株)製のチューブ再生ゴムや、ブラダーを押し出し機で粉砕して得られる(株)カークエスト製のブラダー再生ゴムなどが挙げられる。これらの再生ブチル系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
ゴム成分100質量部中におけるブチル系ゴムの含有量は、空気遮断性に優れるという理由から、70質量部以上であることが好ましく、75質量部以上であるとより好ましく、80質量部以上であるとさらに好ましい。上限としては特に限定されず、100質量部であってもよいが、シート加工性の観点から、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であるとより好ましい。
【0077】
なお、ここで、ゴム成分100質量部中における再生ブチル系ゴムの含有量は、再生ブチル系ゴムを用いることによるメリットの観点から、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であるとより好ましい。一方、十分な空気遮断性、加硫速度の確保の観点から、25質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であるとより好ましい。
【0078】
そして、全ブチル系ゴム100質量部中、再生ブチル系ゴムの含有量は、7質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であるとより好ましい。一方、35質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であるとより好ましい。
【0079】
(a-2)イソプレン系ゴム
そして、ゴム成分には、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できるという観点から、必要に応じて、イソプレン系ゴムが含有されていることが好ましい。
【0080】
イソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム等が挙げられる。NRには、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)も含まれ、改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。また、NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できるという理由から、NR、IRが好ましい。
【0081】
ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量としては、シート加工性、空気遮断性のバランスを考慮すると、5質量部以上が好ましく、10質量部以上であるとより好ましい。一方、30質量部以下が好ましく、25質量部以下であるとより好ましい。
【0082】
(a-3)その他のゴム
また、ブチル系ゴム、イソプレン系ゴム以外に、必要に応じて、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム等、タイヤ工業において一般的に使用されるゴムを含有していてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
(b)ゴム成分以外の配合材料
(b-1)相溶化剤
相溶化剤は、ポリマーとフィラー間や異種ポリマー間の界面の離反エネルギーを小さくし、相互に入り混じることを補助する目的で含有される。相溶化剤としては、特に制限されず、従来ゴム工業で使用されているものが使用できる。相溶化剤の具体例としては、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-メチルメタクリレートブロック共重合体、エチレン-スチレングラフト共重合体、塩素化ポリエチレン、芳香族炭化水素系樹脂および脂肪族炭化水素系樹脂混合物、不飽和脂肪酸の金属石鹸などの非反応性相溶化剤、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体へのスチレングラフト共重合体などの反応性相溶化剤があげられる。相溶化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
相溶化剤の含有量としては、特に制限されないが、空気遮断性を考慮すると、例えば、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であるとより好ましい。一方、15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であるとより好ましい。
【0085】
(b-2)軟化剤成分
インナーライナー用ゴム組成物には、シート加工性の観点から、オイル(伸展油を含む)や液状ゴム等を軟化剤成分として含有することが好ましい。これらの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であるとより好ましい。一方、9質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であるとより好ましい。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0086】
オイルとしては、タイヤ工業において一般的に用いられるオイルであれば、特に限定されず、鉱物油(一般にプロセスオイルと言われる)、植物油脂、またはその混合物が挙げられる。鉱物油(プロセスオイル)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
なお、プロセスオイルを使用する場合には、アロマ成分の含有量の少ないものを使用することが好ましい。アロマ成分の含有量が少ないものを使用することにより、ブチルゴムとの相溶性が良好となり、ゴムシート表面へのブリードが抑えられ、成形粘着性の低下を抑えることができる。
【0088】
具体的なプロセスオイル(鉱物油)としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0089】
軟化剤成分として挙げた液状ゴムとは、常温(25℃)で液体状態の重合体であり、かつ、固体ゴムと同様のモノマーを構成要素とする重合体である。液状ゴムとしては、ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体及びそれらの水素添加物等が挙げられる。
【0090】
ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在する。
【0091】
ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。
【0092】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
【0093】
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば、1.0×103超、2.0×105未満である。なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0094】
液状ゴムの含有量(液状ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体等の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超、100質量部未満である。
【0095】
液状ゴムとしては、例えば、クラレ(株)、クレイバレー社等の製品を使用できる。
【0096】
(b-3)充填剤
インナーライナー用ゴム組成物は、充填剤を含有することが好ましい。具体的な充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられ、この内でも、カーボンブラックが、補強剤として好ましく使用でき、シリカを併用してもよい。
【0097】
(イ)カーボンブラック
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であるとより好ましく、30質量部以上であるとさらに好ましい。一方、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であるとより好ましく、80質量部以下であるとさらに好ましい。
【0098】
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FTおよびMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPCおよびCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイト等を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、シート加工性の観点から、例えば、10m2/g以上、70m2/g以下が好ましく、20m2/g以上、40m2/g以下であるとより好ましい。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、例えば50ml/100g超、250ml/100g未満である。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定され、DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。
【0100】
具体的なカーボンブラックとしては特に限定されず、N550、N660,N762等が挙げられる。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
(ロ)シリカ
インナーライナー用ゴム組成物は、必要に応じて、さらに、シリカを含んでいてもよく、通常、シランカップリング剤と共に使用される。しかし、シリカを使用した場合には、シートを押出成形する際、シランカップリング剤に覆われていないシリカが再凝集してシート加工性の悪化を招く恐れがあるため、可能であれば、使用しないことが好ましい。
【0102】
使用する場合、シリカのBET比表面積は、140m2/g超が好ましく、160m2/g超がより好ましい。一方、250m2/g未満が好ましく、220m2/g未満であることがより好ましい。また、ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量は、5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。一方、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。なお、上記したBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定されるN2SAの値である。
【0103】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0104】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0105】
なお、シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシ系;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0107】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、3質量部超、25質量部未満である。
【0108】
(ハ)その他の充填剤
インナーライナー用ゴム組成物には、上記したカーボンブラック、シリカの他に、タイヤ工業において一般的に用いられている、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤をさらに含有してもよい。中でも、空気遮断性およびシート加工性に優れる扁平水酸化アルミニウムが好ましい。なお、これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、200質量部未満である。
【0109】
(b-4)老化防止剤
インナーライナー用ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上であることが好ましく、0.7質量部以上であるとより好ましい。一方、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であるとより好ましく、2.0質量部以下であるとさらに好ましい。
【0110】
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、ポリ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
なお、老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0112】
(b-5)ステアリン酸
インナーライナー用ゴム組成物は、ステアリン酸を含んでもよい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、10.0質量部未満である。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0113】
(b-6)酸化亜鉛
インナーライナー用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超、10質量部未満である。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0114】
(b-7)架橋剤および加硫促進剤
インナーライナー用ゴム組成物は、硫黄等の架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、10.0質量部未満である。
【0115】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0117】
硫黄以外の架橋剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0118】
インナーライナー用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.3質量部超、10.0質量部未満である。
【0119】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
(2)タイヤ内側部材(インナーライナー)の作製
前記インナーライナー用ゴム組成物は、一般的な方法、例えば、ゴム成分とカーボンブラック等の充填剤とを混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とを混練する仕上げ練り工程とを含む製造方法により作製される。
【0121】
混練は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの公知の(密閉式)混練機を用いて行うことができる。
【0122】
ベース練り工程の混練温度は、例えば、50℃超、200℃未満であり、混練時間は、例えば、30秒超、30分未満である。ベース練り工程では、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤などを必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0123】
仕上げ練り工程では、前記ベース練り工程で得られた混練物と架橋剤とが混練される。仕上げ練り工程の混練温度は、例えば、室温超、80℃未満であり、混練時間は、例えば、1分超、15分未満である。仕上げ練り工程では、上記成分以外にも、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0124】
このとき、例えば、カーボンブラックやシリカなどの充填剤の配合量を調整したり、オイルの配合量を調整することによって、インナーライナーのアセトン抽出量AEiや、70℃におけるE*
iおよびtanδiを、前記した条件を満たすように、調整することができる。例えば、充填剤を増やすことでE*やtanδを高くすることができる。
【0125】
そして、得られたインナーライナー用ゴム組成物を用いて、所定の厚みで成形することにより、インナーライナーを作製する。
【0126】
3.電子部品取付部材
次に、具体的な電子部品取付部材の一例としてゴム製の電子部品取付部材について説明するが、前記した通り、ゴム製に限定されるものではない。
【0127】
(1)電子部品取付部材を構成するゴム組成物
電子部品取付部材を構成するゴム組成物(電子部品取付部材用ゴム組成物)は、前記インナーライナー用ゴム組成物の場合と同じ配合材料を用いて形成することができるが、前記インナーライナー用ゴム組成物とは異なるゴム成分、例えば、低温特性に優れたBRと、機械的特性に優れたNBRとを主たるゴム成分として使用してもよく、また、その他の、例えば、イソプレン系ゴム、SBR、SIBR、CR等のジエン系ゴムを適宜、使用してもよい。
【0128】
なお、ゴム成分としてSBRおよびNRを使用する場合、ゴム成分100質量部中におけるSBRの含有量は、例えば、40~60質量部であり、NRの含有量は、例えば、40~60質量部である。
【0129】
以下、タイヤ内側部材を構成するゴム組成物においては詳しく説明しなかったSBRについて説明する。SBRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。SBRのスチレン含量は、例えば、5質量%超が好ましく、10質量%超がより好ましく、20質量%超がさらに好ましい。一方、50質量%未満が好ましく、40質量%未満がより好ましく、35質量%未満がさらに好ましい。SBRのビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、例えば、5質量%超、70質量%未満である。なお、SBRの構造同定(スチレン含量、ビニル結合量の測定)は、例えば、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて行うことができる。
【0130】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
【0131】
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0132】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
【0133】
また、変性SBRとして、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRを使用できる。
【0134】
【0135】
なお、式中、R1、R2およびR3は、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。R4およびR5は、同一または異なって、水素原子またはアルキル基を表す。R4およびR5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0136】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等)を使用できる。
【0137】
R1、R2およびR3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R4およびR5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R4およびR5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0138】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
また、変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基および/または置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基および/または置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。なお、これらの変性SBRは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。なお、SBRは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
(2)電子部品取付部材用ゴム組成物の作製
電子部品取付部材用ゴム組成物は、前記したタイヤ内側部材(インナーライナー)の作製と同様にして得ることができる。このとき、タイヤ内側部材(インナーライナー)の作製と同様に、カーボンブラックやシリカなどの充填剤の配合量の調整や、オイルや樹脂成分の配合量を調整することによって、前記した条件を満たすように、アセトン抽出量AErや、70℃におけるE*
rを調整することができる。
【0142】
(3)電子部品取付部材の作製
次に、得られた電子部品取付部材用ゴム組成物を用いて、加硫機中で、所定の形状に加熱加圧することにより電子部品取付部材を作製する。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、例えば、120℃超、200℃未満であり、加硫時間は、例えば、5分超、15分未満である。なお、電子部品取付部材の収容部と接合部とは、それぞれ異なる材質であってもよいが、同じ材質で一体的に成形されることが好ましい。
【0143】
4.タイヤの製造
(1)電子部品取付部材取付前のタイヤの製造
本発明において、電子部品取付部材を取り付ける前のタイヤは、通常の方法によって製造することができる。即ち、上記によって作製されたインナーライナー(タイヤ内側部材)を、他のタイヤ部材と共に、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、まず、未加硫タイヤを作製する。
【0144】
具体的には、成形ドラム上に、タイヤの気密保持性を確保するための部材として作製されたインナーライナー、タイヤの受ける荷重、衝撃、充填空気圧に耐える部材としてのカーカス、両側縁部にカーカスの両端を固定すると共に、タイヤをリムに固定させるための部材としてのビード部を配置し、カーカス部を折り返してビード部を包み込む。次いで、ビード部のタイヤ幅方向外側になる様にビード部及びカーカスを保護して屈曲に耐える部材としてのビード補強層、クリンチ部、またサイドウォールを貼り合わせた後、これらをトロイド状に成形する。その後、外周の中央部に、カーカスを強く締付けトレッドの剛性を高める部材としてのベルトなどを巻回し、さらに外周にトレッドを配置することにより、未加硫タイヤを作製する。
【0145】
その後、作製された未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、電子部品取付部材が取り付けられていないタイヤを得る。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、例えば、120℃超、200℃未満であり、加硫時間は、例えば、5分超、15分未満である。
【0146】
(2)電子部品取付部材の取付
次に、所定の接着剤を用いて、作製されたタイヤ内側部材のタイヤ幅方向中央部に、別途作製された電子部品取付部材を取り付け、本実施の形態に係るタイヤの製造を完了する。なお、電子部品取付部材には、作製後、電子部品が収納されている。また、このように加硫後のタイヤに接着剤で電子部品取付部材を取り付けるのではなく、未加硫タイヤと電子部品取付部材とを同時に加硫してもよい。ただし、電子部品取付部材を交換しにくくなるため、加硫後のタイヤに接着剤で電子部品取付部材を取り付ける方が好ましい。
【0147】
タイヤ内側部材(内腔部)の表面には、加硫時の離型性を保つために、一般的に、離型剤が塗布されているため、この離型剤を除去した後に、電子部品取付部材を接着剤により取り付けることが好ましい。この離型剤の除去に当たっては、以下の2つの方法が考えられる。
【0148】
第1の方法は、バフ機などの研磨機を用いて離型剤を削り取る方法(バフ研磨)であり、研磨機を用いることにより大きな凹凸をなくすと共に、表面を荒らして十分な接触面積を確保して、接着させることができる。
【0149】
第2の方法は、レーザーなどを用いて離型剤を削り取る方法(レーザー研磨)であり、研磨機よりも精度の高い研磨をすることができると共に、電子部品取付部材との接触面を平滑にすることができる為、耐剥離性に優れると考えられる。
【0150】
なお、前記レーザーによる研磨方法については、研磨処理部と研磨未処理部の界面でのタイヤ内腔表面の段差が200μm以下であることを確認することにより、他の研磨方法と判別することができる。なお、研磨未処理部には、加硫時の離型剤層も含まれる。
【0151】
また、別の方法として、未加硫タイヤの内腔面に離型剤を塗布する際、電子部品取付部材を取り付け予定の箇所だけ離型剤の塗布を行わず、加硫後、その箇所に電子部品取付部材を取り付けてもよい。
【0152】
なお、接着剤としては、アクリルゴム系、クロロプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ブチルゴム系等、ゴム部材の接着に通常使用される市販のゴム系接着剤の中から適宜選択して使用することができるが、硬化後も軟らかさを維持できるゴム系接着剤であることが好ましい。
【0153】
5.用途
上記した本発明のタイヤは、空気入りタイヤでもよいし、非空気入りタイヤでもよい。また、乗用車用タイヤ、大型車用タイヤ、2輪自動車用タイヤ、農業用タイヤ、鉱山用タイヤ、航空機用タイヤなど、種々の用途に適用可能であるが、空気入りの乗用車用タイヤに適用することが最も好ましい。なお、ここで言う乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されるタイヤであって、最大負荷能力が1000Kg以下のタイヤを言う。
【0154】
最大負荷能力は、1000Kg以下であれば、特に限定されないが、一般的に最大負荷能力の増加に伴い、タイヤ重量が増加しやすく、タイヤに伝わる衝撃も大きくなりやすいことから、900Kg以下であることが好ましく、800Kg以下であることがより好ましく、さらに700Kg以下であることが好ましい。
【0155】
タイヤ重量は、タイヤに伝わる衝撃を和らげる観点から、20Kg以下であることが好ましく、15Kg以下であることがより好ましく、さらに12Kg以下、10Kg以下、8Kg以下であることが好ましい。なお、ここで言うタイヤ重量とは、上記した電子部品及び電子部品取付部材の重量を含み、内腔部にシーラント、スポンジなどを設けた場合には、それらも含めたタイヤ重量である。
【実施例】
【0156】
以下の実施例においては、
図1に示す構成のタイヤ(サイズ:195/65R15)を製造し、電子部品取付部材のタイヤ内側部材(インナーライナー)の耐クラック性について評価した。
【0157】
1.インナーライナーの製造
(1)インナーライナー用ゴム組成物の製造
最初に、インナーライナー用ゴム組成物の製造を行った。
【0158】
(a)配合材料
まず、以下に示す各配合材料を準備した。
【0159】
(a-1)ゴム成分
(イ)NR:RSS#3
(ロ)IIR-1:エクソン化学社製のブロモブチル2255(臭素化ブチルゴム)
(ハ)IIR-2:(株)カークエスト製の再生ブチル系ゴム
(ブチルゴム:50質量%)
【0160】
(a-2)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660
(ロ)炭酸カルシウム:竹原化学工業(株)製のタンカル200
(ハ)オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPA32
(パラフィン系プロセスオイル)
(ニ)相溶化剤:Flow Polymers Inc.製、PROMIX400
(脂肪族樹脂と芳香族樹脂の混合樹脂)
(ホ)老化防止剤:川口化学工業(株)製のアンテージRD
(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
(ヘ)ステアリン酸:日油(株)製の椿
(ト)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
(チ)硫黄:細井化学(株)製のHK-200-5(5質量%オイル含有)
(リ)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM
(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)
【0161】
(b)インナーライナー用ゴム組成物の製造
表1に示す各配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た。なお、各配合量は、質量部である。なお、表1には、便宜上、後に測定したAEi、E*
i、tanδiを、併せて記載している。
【0162】
次に、得られた混練物に、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、インナーライナー用ゴム組成物を得た。
【0163】
【0164】
(2)インナーライナーの製造
次いで、得られたインナーライナー用ゴム組成物を用いて、所定の形状に成形して、インナーライナーを製造した。
【0165】
2.電子部品取付部材の製造
別途、電子部品取付部材の製造を行った。
【0166】
(1)電子部品取付部材用ゴム組成物の製造
(a)配合材料
まず、以下に示す各配合材料を準備した。
【0167】
(a-1)ゴム成分
(イ)NR:RSS#3
(ロ)SBR:JSR(株)製のJSR1502
【0168】
(a-2)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220
(ロ)シリカ:ローディア社製のZeosil 1115MP
(ハ)シランカップリング剤:デグサ社製のSi266
(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
(ニ)炭酸カルシウム:竹原化学工業(株)製のタンカル200
(ホ)オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX-260
(ヘ)老化防止剤-1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
(ト)老化防止剤-2:川口化学工業(株)製のアンテージRD
(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
(チ)ステアリン酸:日油(株)製の椿
(リ)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
(ヌ)硫黄:細井化学(株)製のHK-200-5(5質量%オイル含有)
(ル)加硫促進剤-1:大内新興化学工業(株)製のノクセラー CZ-G(CZ)
(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
(ヲ)加硫促進剤-2:大内新興化学工業(株)製のノクセラー D(DPG)
(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0169】
(b)電子部品取付部材用ゴム組成物の製造
表2に示す各配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得た。なお、各配合量は、質量部である。なお、表2には、便宜上、後に測定したAEr、E*
rを、併せて記載している。
【0170】
次に、得られた混練物に、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、電子部品取付部材用ゴム組成物を得た。
【0171】
【0172】
(2)電子部品取付部材の製造
次いで、得られた電子部品取付部材用ゴム組成物を、
図3に示した形状、即ち、横断面が円形の収納スペースSを有し、接合面Aの直径(外径)Dが40mm、厚さ(高さ)Hが25mm、接合部の厚さTが1mm、フランジの幅Wが10mmのサイズに加硫成形して、電子部品取付部材を製造した。
【0173】
3.試験用タイヤの製造
(1)電子部品取付部材取付前のタイヤの製造
まず、電子部品取付部材取付前のタイヤの製造を行った。
【0174】
具体的には、表3、表4に示す配合のインナーライナーを他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、電子部品取付部材取付前のタイヤを得た。
【0175】
(2)試験用タイヤの製造
次に、各々の電子部品取付部材取付前のタイヤの内腔面において、表3、表4に示す電子部品取付部材取付箇所を、表3、表4に示す研磨方法にて研磨して離型剤を取り除いた後、表3、表4に示す配合で作製された電子部品取付部材の収納スペースに所定の電子部品を収納した電子部品取付部材を、接着剤を用いて、表3、表4に示す各接着面積となるように取り付け、実施例1~6(表3)、比較例1~6(表4)の各試験用タイヤを製造した。なお、電子部品取付部材の中心のセンターラインCLからのずれ幅mを2mmとした。また、接着剤としては、市販のクロロプレンゴム系接着剤を用いた。
【0176】
なお、レーザー研磨は、移動ピッチ60μm、移動速度4000mm/sに調整されたレーザー光を用いて、電子部品取付部材取付箇所を数往復させることにより、離型剤およびゴム表面を削り取り、95μmの段差となるように行った。
【0177】
4.パラメーターの算出
その後、各試験用タイヤの各々から、トレッド部の内側のインナーライナー層からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの粘弾性測定用ゴム試験片を切り出し、各ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、測定温度:70℃、初期歪み:10%、動歪み:±1%、周波数:10Hzの条件下、伸長の変形モードで複素弾性率E*
i(MPa)、 引張の変形モードで損失正接(70℃tanδi)を測定した。
【0178】
併せて、電子部品取付部材の複素弾性率E*
r(MPa)については、接合部から長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで粘弾性測定試験片を採取し、上記と同様に測定した。結果を、表1、表2に示すと共に、表3、表4にも示す。
【0179】
次に、上記測定結果に基づいて、各試験用タイヤにおけるAEr/AEi、0.5E*
i、3.0E*
iを算出した。結果を、表3、表4に示す。
【0180】
5.評価試験
評価は、耐クラック性、即ち、所定の距離走行後のタイヤにおいて発生したクラックの程度について行った。
【0181】
(1)試験方法
各試験用タイヤを車輌(国産のFF車、排気量2000cc)の全輪に装着させて、内圧が230kPaとなるように空気を充填した後、乾燥路面のテストコース上を、80km/hの速度で1000km走行し、走行後、タイヤをリムから取り外して、タイヤ内面部材に発生しているクラックの本数、および各クラックの長さを計測した。
【0182】
評価は、長さ1mm以上のクラックの本数の合計長さに基づいて評価を行った。具体的には、下式のように、比較例1において求められたクラックの合計長さに対する各試験用タイヤにおいて求められたクラックの合計長さの比率の逆数として、指数化することにより相対的に評価した。数値が大きいほど、クラックの発生が少ないことを示す。
耐クラック性=(比較例1の合計長さ/各試験用タイヤの合計長さ)×100
【0183】
(2)評価結果
評価結果を、表3、表4に示す。
【0184】
【0185】
【0186】
表3と表4の比較より、AEr/AEi>1の場合(実施例1~6)、耐クラック性に優れたタイヤを提供できることが分かる。
【0187】
そして、表3の実施例同士の比較から、AEr/AEiが1.05以上の場合(実施例1,2、4~6)耐クラック性がより優れていることが分かる。また、これらの中でもAErが12質量%以下、E*
iとE*
rが0.5E*
i≦E*
r≦3.0E*
iを満たしており、且つ70℃tanδiが0.18以下の場合(実施例4~6)がさらに優れており、70℃tanδiが0.15以下の場合(実施例5、6)特に優れていることが分かる。
【0188】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0189】
1 タイヤ
2 電子部品取付部材
3 トレッド部の表面
11 トレッド
12 ベルト
13 サイドウォール
14 カーカス層
15 ビードコア
16 ビードエイペックス
17 チェーファー
18 クリンチ
19 タイヤ内側部材(インナーライナー)
21 電子部品収納部
22 接合部
31 周方向溝
32a、32d 横溝
33 サイプ
34 赤道面に最も近い領域
35 タイヤ軸方向外側の領域
dt トレッド部の厚さ
dr 電子部品取付用部材の厚さ
A 接合面
CL タイヤのセンターライン
cl 電子部品取付部材の中心線
D 接合面の直径(外径)
E1 (電子部品収納部の接合面と対向する側の)上端部
E2 (電子部品収納部の接合面側の)下端部
H 電子部品取付部材の厚さ(高さ)
I タイヤの内腔面
m 電子部品取付部材の中心のずれ幅
S 収納スペース
T 接合部の厚さ
VL 仮想線
W フランジの幅