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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】冷却塔送風機用ベルト伝動機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20240813BHJP
   F16H 7/18 20060101ALI20240813BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F16H7/18 A
F28F27/00 501A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020066166
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021162121
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】清國 栄治
(72)【発明者】
【氏名】神代 昭文
(72)【発明者】
【氏名】加留部 敦志
(72)【発明者】
【氏名】吉見 武将
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094940(JP,A)
【文献】実開昭55-018647(JP,U)
【文献】特開平05-280606(JP,A)
【文献】特開2019-019842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
F16H 7/18
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機による誘引通風で外部から取り入れた空気と冷却対象の熱媒体とを熱交換させる冷却塔における、送風機の羽根車に電動機からの回転駆動力を伝えるためのベルト伝動機構において、
前記電動機の出力軸と一体に配設される駆動側プーリと、
前記送風機の羽根車における回転軸と一体に配設される従動側プーリと、
前記駆動側プーリと従動側プーリとの間に掛け渡される無端の平ベルトであるベルトと、
前記送風機が誘引通風を行う各プーリの正回転状態で、所定の順方向に走行する前記ベルトの緩み側となる区間における所定部位のベルト外周面に接触し、ベルトの撓みを防ぐと共にベルトの動きを制御して蛇行を抑える張力調整部と、
前記従動側プーリの近傍で前記ベルトの下方への動きを制限するベルト案内部とを備え、
前記張力調整部が、前記ベルトの前記所定部位外周面に押し付けられて回転可能なテンションプーリを有し、当該テンションプーリを前記従動側プーリに近い所定領域内に位置させるように配設され、
前記ベルト案内部が、前記順方向に走行する前記ベルトの張り側となる区間における所定箇所の下側に配置される案内面を有し、
当該案内面が、前記張力調整部のテンションプーリより従動側プーリに近い所定位置で、案内面の最上部位置を、従動側プーリ外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させるようにして配設され
前記張力調整部が、前記送風機の正回転状態で前記順方向に走行する前記ベルトに対しては、ベルトの蛇行を抑制する制御で、前記従動プーリ外周面における上下方向の略中央部をベルトが走行するようにして、ベルト下端部を前記ベルト走行可能範囲の下限位置から離し、
前記ベルト案内部が、案内面の最上部位置を前記従動側プーリにおける前記ベルト走行可能範囲の下限位置より上側に達しないよう制限された配置状態とされ、前記順方向に走行するベルトに対して、案内面を離隔させることを
特徴とする冷却塔送風機用ベルト伝動機構。
【請求項2】
前記請求項1に記載の冷却塔送風機用ベルト伝動機構において、
前記ベルト案内部が、回転可能に支持される案内ローラを有し、当該案内ローラ外周の円筒面部分を前記案内面とされ、
前記案内ローラが、ローラ回転軸方向を前記従動側プーリの回転軸方向と直角をなす向きとし、且つ案内面の最上部位置の接線方向を前記所定位置上でのベルト走行方向に対し平行として配設されることを
特徴とする冷却塔送風機用ベルト伝動機構。
【請求項3】
前記請求項2に記載の冷却塔送風機用ベルト伝動機構において、
前記案内ローラが、案内面の外径変化に関わりなく、案内面におけるベルト端部と接触可能な部位の最上部位置を、前記従動側プーリ外周面におけるベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させるよう、上下方向位置調整可能として配設されることを
特徴とする冷却塔送風機用ベルト伝動機構。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の冷却塔送風機用ベルト伝動機構において、
冷却塔上に送風機を支持する支持枠に取り付けられて、前記電動機の出力軸と送風機羽根車の回転軸との間に位置する架台部を備え、
前記張力調整部が、前記架台部における第一の所定位置に取り付けられて、前記駆動側プーリと従動側プーリとの間に配設され、
前記ベルト案内部が、前記架台部における第二の所定位置に取り付けられて、前記従動側プーリの近傍に配設されることを
特徴とする冷却塔送風機用ベルト伝動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環使用する液相の熱媒体を熱交換部で空気と熱交換させる冷却塔に関し、特に、冷却塔における通風用の送風機を電動機で動かすためのベルト伝動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や空気調和設備などで循環使用する水などの液相の熱媒体の冷却を目的として屋外に設置される冷却塔では、冷却塔内部の熱交換部において、ファン(送風機)の作動に伴って外部から取込まれる空気(外気)と熱媒体とを、直接あるいは間接的に熱交換させ、冷却を行う仕組みとなっている。
【0003】
こうした冷却塔で用いられる送風機は、通常、羽根車を電動機で回転駆動するものであり、従来から、羽根車と電動機との間にベルト伝動機構などの駆動力伝達機構を介在させ、電動機を羽根車から離して配置するものが主に利用されていた。そして、こういった駆動力伝達機構としては、電動機側と羽根車側にプーリをそれぞれ配し、これらプーリ間にベルトを巻掛けたベルト伝動機構が多く用いられていた。
【0004】
このような従来の冷却塔送風機用のベルト伝動機構で、駆動力を伝えるベルトとしては、一般的にVベルトが採用されていた。ベルト伝動機構にVベルトを用いる場合、電動機側や送風機側の各プーリ外周に設けられたV字状の溝にVベルトがはまり込んで駆動力を伝達する特徴から、ベルト走行中におけるベルトの蛇行やプーリからの脱落は生じにくかった。しかし、厚さ方向の寸法が大きくなるVベルトの構造上、ベルトの曲げ剛性が大であることから、これに伴って駆動力伝達に係る損失が大きくなってしまうという問題を抱えていた。
【0005】
また、ベルトの経年変化により、ベルトに伸び、撓みが発生すると、電動機側やファン側の各プーリ表面からベルトの一部が浮いて滑る状態となりやすく、ベルトの伝動効率が低下することから、定期的に電動機とファンとの間の軸間距離を調整するなどしてベルトの張り具合を一定に維持する必要があり、メンテナンスの手間がかかってしまうという問題もあった。
【0006】
こうしたVベルトを用いた機構の問題点に対応し、送風機用の伝動用ベルトとして平ベルトを用い、羽根車駆動の効率化を図ると共に、メンテナンスフリーを実現可能にするベルト伝動機構が、本出願人より提案されている。そうした冷却塔送風機用のベルト伝動機構の例として、特開2019-94940号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-94940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の冷却塔送風機用のベルト伝動機構は、前記特許文献に示されるものであり、送風機用の伝動用ベルトとして平ベルトを用いると共に、ベルトの撓みとベルト走行時の蛇行を抑える張力調整部を適切な位置に配設することで、平ベルト使用に基づく駆動効率化と長期のメンテナンスフリー化に加えて、送風機の羽根車が逆回転してベルトの走行方向が変化した場合でも、ベルトのずれを抑えることができるものとなっている。
【0009】
すなわち、冷却塔において電動機を停止させて送風機を作動させない状況で、外部からの強風や隣接冷却塔からの排気等に由来して羽根車に加わる風圧により、電動機駆動による通常作動時とは逆向きに羽根車が回転し、ベルト伝動機構のベルトが通常とは逆方向に走行する状態となる場合でも、それが短時間にとどまるようであれば、各プーリとベルトとの関係はほとんど変わらず、電動機の作動再開時には適切な通常の送風状態に移行できる仕組みであった。
【0010】
しかしながら、冷却塔で熱交換される熱媒体を利用する主設備の稼動状態と冷却塔の熱交換能力との関係で、冷却塔の送風機を停止制御する期間が長くなり、それに伴って羽根車が他からの影響で逆向きに回転し、ベルトも逆方向に走行する状態が長時間続くような場合には、ベルトの通常とは逆向きの動きに対して、張力調整部がその構造上、蛇行抑制制御を有効に機能させられない分、ベルトの自重によるずれ下がりが徐々に進行し、やがてベルトが羽根車側のプーリのフランジに接触したり乗り上げるようになって、ベルト側端部(耳部)が摩耗、欠損、あるいは破断し、ベルトの駆動力を伝達する能力の低下や、ベルトの製品寿命の減少を招くおそれがあるという課題を有していた。
【0011】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、平ベルトを用いた送風機用の伝動機構において、ベルトの蛇行を抑える張力調整部を採用すると共に、従動側プーリ近傍に別途ベルト案内部を設けて、ベルトの逆方向走行状態が長時間に及んでもベルトのずれによる劣化、損傷を防止でき、メンテナンスフリー化を確実なものとする、冷却塔送風機用ベルト伝動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構は、送風機による誘引通風で外部から取り入れた空気と冷却対象の熱媒体とを熱交換させる冷却塔における、送風機の羽根車に電動機からの回転駆動力を伝えるためのベルト伝動機構において、前記電動機の出力軸と一体に配設される駆動側プーリと、前記送風機の羽根車における回転軸と一体に配設される従動側プーリと、前記駆動側プーリと従動側プーリとの間に掛け渡される無端の平ベルトであるベルトと、前記送風機が誘引通風を行う各プーリの正回転状態で、所定の順方向に走行する前記ベルトの緩み側となる区間における所定部位のベルト外周面に接触し、ベルトの撓みを防ぐと共にベルトの動きを制御して蛇行を抑える張力調整部と、前記従動側プーリの近傍で前記ベルトの下方への動きを制限するベルト案内部とを備え、前記張力調整部が、前記ベルトの前記所定部位外周面に押し付けられて回転可能なテンションプーリを有し、当該テンションプーリを前記従動側プーリに近い所定領域内に位置させるように配設され、前記ベルト案内部が、前記順方向に走行する前記ベルトの張り側となる区間における所定箇所の下側に配置される案内面を有し、当該案内面が、前記張力調整部のテンションプーリより従動側プーリに近い所定位置で、案内面の最上部位置を、従動側プーリ外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させるようにして配設されるものである。
【0013】
このように本発明によれば、電動機出力軸と一体の駆動側プーリから羽根車と一体の従動側プーリに回転駆動力を伝える、平ベルトであるベルトに対し、張力調整部のテンションプーリでベルトの撓みを防ぐと共に走行中のベルトの蛇行を抑え、且つ、ベルト案内部を従動側プーリ近傍に位置させ、その案内面の最上部位置を従動側プーリ外周面におけるベルト走行可能範囲の下限位置に合わせることにより、送風機作動停止時における外部からの影響等に伴う羽根車逆回転状態で張力調整部の蛇行抑制制御の効かない状況が長く続く場合でも、駆動側及び従動側の各プーリに接するベルトの位置が過剰に下がるのをベルト案内部で適切に規制でき、ベルト位置を各プーリ外周面での走行可能範囲内に維持して、ベルト端部のプーリフランジ部への接触や乗り上げによるベルト側端部の摩耗や損傷を防止でき、仮に送風機羽根車の逆回転が多く生じる冷却塔運転状態であってもベルトを劣化させず、ベルトの交換頻度を減らせるなどメンテナンスに係る負担を確実に軽減できる。
【0014】
また、本発明に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構は必要に応じて、前記張力調整部が、前記送風機の正回転状態で前記順方向に走行する前記ベルトに対しては、ベルトの蛇行を抑制する制御で、前記従動プーリ外周面における上下方向の略中央部をベルトが走行するようにして、ベルト下端部を前記ベルト走行可能範囲の下限位置から離し、前記ベルト案内部が、案内面の最上部位置を前記従動側プーリにおける前記ベルト走行可能範囲の下限位置より上側に達しないよう制限された配置状態とされ、前記順方向に走行するベルトに対して、案内面を離隔させるものである。
【0015】
このように本発明によれば、送風機羽根車の正回転状態でベルトが順方向に走行する際には、張力調整部がベルトの蛇行を抑制して、ベルトを従動プーリの走行可能範囲の下限位置に到達させないようにして、この下限位置と同じ高さである案内部の案内面がベルトに接触しない一方、羽根車が逆回転してベルトが逆方向に走行する状態が続くと、ずれて位置を下げたベルトが走行可能範囲の下限位置に至る一方で案内部の案内面に接して案内される状態となり、ベルトがそれ以上下がらない状態となることにより、羽根車が逆回転した場合の、プーリにおけるフランジへのベルトの接触や乗り上げを防いで、ベルトの劣化を抑えられると共に、羽根車の正回転状態では案内面をベルトと接触させず、案内面とベルトとの接触に伴う案内面やベルト側端部のわずかな摩耗も阻止でき、案内部及びベルトの長寿命化が図れ、さらに摩耗による粉塵発生も抑えられることとなる。
【0016】
また、本発明に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構は必要に応じて、前記ベルト案内部が、回転可能に支持される案内ローラを有し、当該案内ローラ外周の円筒面部分を前記案内面とされ、前記案内ローラが、ローラ回転軸方向を前記従動側プーリの回転軸方向と直角をなす向きとし、且つ案内面の最上部位置の接線方向を前記所定位置上でのベルト走行方向に対し平行として配設されるものである。
【0017】
このように本発明によれば、ベルト案内部に回転可能な案内ローラが設けられ、この案内ローラの外周円筒面部分が案内面をなしてベルトと接触可能とされ、案内面最上部の接線方向をベルト走行方向と平行とするなど、ベルトに対し適切な配置とされてベルトの走行移動に沿って回転するようにされた案内ローラが、羽根車の逆回転に伴い通常と逆方向に走行移動するベルトの下端部に転がり接触しつつ、移動するベルトを適切な高さで従動側プーリ側へ案内して、プーリにおけるベルトの下方へのずれを抑えることにより、無理なくベルトを案内してベルトの下がりとそれに伴うベルトのプーリフランジ部との接触等を防ぎつつ、案内面とベルトとの摩擦を必要最小限としてベルトの劣化を抑えられる。
【0018】
また、本発明に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構は必要に応じて、前記案内ローラが、案内面の外径変化に関わりなく、案内面におけるベルト端部と接触可能な部位の最上部位置を、前記従動側プーリ外周面におけるベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させるよう、上下方向位置調整可能として配設されるものである。
【0019】
このように本発明によれば、案内ローラにおける案内面のベルトと接触可能な部位が従動側プーリ外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致するように、案内ローラが上下位置調整され、羽根車の逆回転状態でベルトが逆方向に走行する際に、下限位置まで下がったベルトに案内ローラの案内面が接触可能とされることにより、案内ローラの案内面がベルトとの接触による摩耗で磨り減ってその外径を小さくした場合でも、適度な位置調整でベルトと接触してこれを案内する状態を継続でき、ベルト走行方向が逆向きとなった場合に案内部でベルトを適切に案内して下降を抑え、ベルトを劣化させない状態を長期間維持できる。
【0020】
また、本発明に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構は必要に応じて、冷却塔上に送風機を支持する支持枠に取り付けられて、前記電動機の出力軸と送風機羽根車の回転軸との間に位置する架台部を備え、前記張力調整部が、前記架台部における第一の所定位置に取り付けられて、前記駆動側プーリと従動側プーリとの間に配設され、前記ベルト案内部が、前記架台部における第二の所定位置に取り付けられて、前記従動側プーリの近傍に配設されるものである。
【0021】
このように本発明によれば、送風機を支持する支持枠に架台部を取り付け、この架台部に張力調整部を取り付けてベルトの張力調整と蛇行抑止を行わせると共に、同じ架台部に別途ベルト案内部を取り付けて、羽根車の逆回転状態でベルト走行方向が逆向きとなった際に、ベルト案内部がベルトを適切な高さで従動側プーリに向かうよう案内することにより、支持枠に取り付けた架台部で張力調整部及びベルト案内部を支持して、ベルトから力が加わる張力調整部及びベルト案内部を確実に固定でき、張力調整部ではテンションプーリの他プーリに対する平行度のずれを防止でき、且つ、ベルト案内部では、案内面のベルトから加わる力による変位を生じにくくして、ベルトの案内精度への悪影響とそれに伴うベルトのプーリフランジ部との接触による劣化を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るベルト伝動機構を適用した冷却塔の平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るベルト伝動機構のカバー上部開放状態説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係るベルト伝動機構における電動機の支持状態説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係るベルト伝動機構におけるベルトの順方向への走行状態説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係るベルト伝動機構におけるベルトの逆方向への走行状態説明図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るベルト伝動機構における案内ローラ未摩耗時のベルト案内状態説明図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るベルト伝動機構における案内ローラ摩耗進行時のベルト案内状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るベルト伝動機構を前記図1ないし図5に基づいて説明する。本実施形態においては、直交流形(クロスフロータイプ)として誘引通風用の送風機のある中央部を挟んで二つの熱交換部を対向配置される冷却塔に適用した例について説明する。
【0024】
前記各図に示すように、本実施形態に係るベルト伝動機構10は、冷却塔50の送風機60に電動機70からの駆動力を伝えるためのものであり、具体的には、電動機70の出力軸71と一体に配設される駆動側プーリ11と、送風機60の羽根車61における回転軸と一体に配設される従動側プーリ12と、駆動側プーリ11と従動側プーリ12との間に掛け渡されるベルト13と、このベルト13に接してベルト13の撓みを防ぐと共にベルト13の動きを制御して蛇行を抑える張力調整部14と、従動側プーリ12の近傍でベルト13の下方への動きを制限するベルト案内部15と、電動機70を送風機60の側方に位置調整可能に支持する支持装置16と、駆動側プーリ11、従動側プーリ12、ベルト13、張力調整部14、及び、ベルト案内部15を覆うカバー17とを備える構成である。
【0025】
本実施形態に係るベルト伝動機構10を適用する冷却塔50は、直交流形(クロスフロータイプ)として中央の通風用空間を挟んで二つの熱交換部(図示を省略)を対向配置され、中央上部の排気側開口部に配設される送風機60による誘引通風で、各熱交換部に側方から外部の空気を取り入れ、この空気と冷却対象の熱媒体とを熱交換させる装置であり、ベルト伝動機構10以外の冷却塔50の各部、例えば、循環水と外部空気との間で熱交換を行わせる熱交換部や、この熱交換部の上下に配設される上部水槽と下部水槽、電動機70の駆動制御を行う制御系など、については、公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0026】
この冷却塔50における送風機60の側方に、支持装置16を介して電動機70が配設される。そして、電動機70の出力軸71の回転がベルト伝動機構10により送風機60の羽根車61に伝えられ、羽根車61が回転して誘引通風を実行する仕組みである。
【0027】
この他、冷却塔50には、この冷却塔上に送風機60を支持する支持枠63や、この支持枠63に取り付けられて、張力調整部14とベルト案内部15を支持する架台部62が設けられる。このうち、架台部62は、電動機70の出力軸71と送風機羽根車の回転軸61aとの間に配設され、張力調整部14及びベルト案内部15を支持枠63と連結することで確実に固定可能とするものである。
【0028】
前記駆動側プーリ11は、電動機70の出力軸71に固定配設され、この出力軸71と一体に回転可能とされるものであり、電動機70の出力軸71の回転に伴って回転し、巻掛けられたベルト13を従動側プーリ12との間で走行させることとなる。
【0029】
前記従動側プーリ12は、送風機60における羽根車61の回転軸61aに固定配設され、羽根車61と一体に回転可能とされるものである。この従動側プーリ12は、駆動側プーリ11より外径を大きくして形成され、電動機70の出力軸71に対し羽根車61をより低い回転数に減速させた状態で回転させる仕組みである。
【0030】
前記ベルト13は、無端平ベルトとして形成され、駆動側プーリ11と従動側プーリ12との間に掛け渡されて、駆動側プーリ11の回転に伴って走行移動し、従動側プーリ12に回転を生じさせるものである。このベルト13の走行方向は、送風機60が誘引通風を行う各プーリの正回転状態で、駆動側プーリ11の回転を従動側プーリ12に伝えるようにベルト13が移動する向きを順方向とされる。一方、電動機70の停止時に、羽根車61に対し冷却塔50の内向きに加わる風圧で、羽根車61が電動機駆動による通常作動時とは逆向きに回転するなど、従動側プーリ12が前記正回転状態とは逆向きに回転する逆回転状態で、この従動側プーリ12の逆向きの回転を駆動側プーリ11に伝えるようにベルトが移動する向きを、逆方向としている。
【0031】
前記張力調整部14は、冷却塔50上部における駆動側プーリ11と従動側プーリ12との間に配設され、送風機60が誘引通風を行う各プーリの正回転状態で前記順方向に走行するベルト13の緩み側となる区間における所定部位のベルト外周面に接触し、ベルト13の撓みを防ぐと共にベルト13の動きを制御して蛇行を抑えるものである。
【0032】
より具体的には、張力調整部14は、冷却塔50上部の架台部62に固定設置されるベース部14aと、このベース部14aの一端部に、従動側プーリ12の回転中心軸と平行な軸線周りに傾動可能として取り付けられるアーム部14bと、ベース部14aの他端部とアーム部14bの先端に両端をそれぞれ取り付けられ、アーム部14bの先端をベース部14aの他端部に近付ける向きに付勢する付勢手段としてのばね14cと、アーム部14bの先端に従動側プーリ12の回転中心軸と平行な中心軸周りに回転可能とし、且つ、中心軸方向の位置を従動側プーリ12の位置に適合させて取り付けられるテンションプーリ14dとを備える構成である。
【0033】
この張力調整部14は、駆動側プーリ11と従動側プーリ12との間における、前記順方向に走行するベルト13の緩み側となる区間における、所定部位のベルト外周面に対し、テンションプーリ14dを押し付け可能とするように配設される。
【0034】
特に、張力調整部14のアーム部14bがばね14cで従動側プーリ12に近付く向きに付勢されて傾動し、このアーム部14b上のテンションプーリ14dがベルト13を押す状態となるように、ベース部14aが架台部62における第一の所定位置に取り付けられる。ベース部14aに対しアーム部14bを所定の向きに傾動させてテンションプーリ14dを動かす機構とすることで、テンションプーリ14dを除く張力調整部14の主要部を、ベルト13が走行する部分の下側にコンパクトに集約配置でき、この張力調整部14の配置に起因する送風機60の送風抵抗を必要最小限に抑えることができる。
【0035】
また、張力調整部14は、そのテンションプーリ14dを従動側プーリ12に近い所定領域内に位置させるように配設される。
詳細には、張力調整部14は、テンションプーリ14dの回転中心を、従動側プーリ12の回転中心位置からの距離が駆動側プーリ11と従動側プーリ12の軸間距離の約35%以下となる領域内、より好ましくは約24~31%となる領域内、に位置させるように配設されることとなる。
【0036】
テンションプーリ14dは、プーリ間に掛け渡されて走行する平ベルトに接して、平ベルトの蛇行やベルト幅方向への偏りを防止する、例えば、特許第3680083号公報や特許第4365713号公報に記載されるような公知の蛇行防止用機構を有するものである。
【0037】
このようなテンションプーリ14dが、アーム部14bと共に従動側プーリ12に近付く向きに付勢されて傾動し、ベルト13に接して張力を付与するようにされることにより、ベルト13の走行方向に関わりなく、ベルト13を張り状態として撓まないように保持できる。加えて、テンションプーリ14dは、各プーリの正回転状態で前記順方向に走行するベルト13に対し、ベルト13の幅方向の動きを制御して蛇行等を抑えられ、ベルト走行方向前方の従動プーリ12に対し、その外周面における上下方向の略中央部を走行するようにベルト13を案内でき、結果として駆動側プーリ11も含めて、ベルト13をその幅方向への振れを最小限として安定的に走行させられる仕組みである。
【0038】
そして、張力調整部14におけるテンションプーリ14dの回転中心を、従動側プーリ12寄りの所定領域に位置するように配設することで、仮にベルト13の走行方向が前記逆方向に変化した場合でも、テンションプーリ14dによる蛇行抑制に係る制御を受けなくなったベルト13の幅方向への動きを最小限にとどめることができ、各プーリに対するベルト13のずれを問題ない程度に抑えられる。
【0039】
冷却塔の送風機は、電動機の停止時に、強風時などの外気の流動や近接配置された他の冷却塔からの吸排気に由来して、羽根車に対し冷却塔の外から内向きに加わる風圧により、電動機駆動による通常作動時とは逆向きに羽根車が回転しうる、という特徴を有している。
【0040】
こうした冷却塔の送風機において、平ベルトとこれに対応した蛇行防止用機構を有するテンションプーリを、羽根車の逆回転が生じ得ない一般的な送風機と同様に採用する場合、羽根車が通常作動時とは逆向きに回転した際に、テンションプーリからベルトに加わる力とベルトの走行方向との関係変化に伴って、テンションプーリの蛇行防止機能が正常に発揮されなくなり、幅方向にずれやすい平ベルトの欠点がそのまま現れる状態となって、ベルトが駆動側や従動側の各プーリにおける外周面のベルト走行可能範囲から大きくずれて、ベルトが脱落する事態に陥りやすい、という問題が本出願人により明らかとなっていた。
【0041】
これに対して、張力調整部14のテンションプーリ14dの位置を上記のように従動側プーリ12寄りの所定領域に設定することで、羽根車61の逆回転とそれに基づいてベルトが逆方向に走行する状況が生じても、それが短時間であれば、駆動側や従動側の各プーリに対するベルト13のずれを最小限に抑えて、ベルト13とテンションプーリ14dとの相互の関係もほとんど変化させず、電動機70の作動による送風機60の誘引通風再開時に問題なくテンションプーリ14dの蛇行防止機能を維持できることが、本出願人により確認された。
【0042】
前記ベルト案内部15は、前記順方向に走行するベルト13の張り側となる区間における従動側プーリ近傍の所定箇所の下側に配置される案内ローラ15aと、架台部62における張力調整部14から離れた第二の所定位置に取り付けられ、案内ローラ15aを回転可能に支持するローラ支持部15bとを有する構成であり、従動側プーリ12の近傍においてベルト13の下方への動きを制限するものである。
【0043】
ベルト案内部15は、案内ローラ15aの外周の円筒面部分を、ベルト13側端部と接触可能とされてこのベルト13の走行を案内する案内面とされる。そして、ベルト案内部15は、この案内ローラ15aの案内面が、張力調整部14のテンションプーリ14dより従動側プーリ12に近い所定位置にあり、且つ、案内面の最上部位置を、従動側プーリ外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させるようにして配設される。
【0044】
また、ベルト案内部15のローラ支持部15bは、案内ローラ15aが、そのローラ回転軸方向を従動側プーリ12の回転軸方向と直角をなす向きとし、且つローラ外周の案内面の接線方向をこの案内面位置上でのベルト走行方向に対し平行とするように、架台部62上で案内ローラ15aを支持することとなる。
【0045】
ベルト案内部15における案内ローラ15aの案内面の最上部位置を、従動側プーリ12における前記ベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させ、下限位置より上側に達しないよう配置することで、羽根車61が正回転状態にあって、順方向に走行するベルト13が張力調整部14で蛇行を抑制されて従動側プーリ12外周面の中央部から大きくずれない状態においては、ベルト13に対して、案内ローラ15aの案内面を離隔させることとなる(図4参照)。
【0046】
このように、ベルト13の通常の順方向への走行状態では、案内ローラ15aの案内面をベルト13と接触させないことで、案内面とベルト13との接触に伴う案内面やベルト側端部のわずかな摩耗も阻止でき、ベルト案内部15及びベルト13の長寿命化が図れる。
【0047】
一方、電動機70の停止時に羽根車61が逆回転して、ベルト13の走行方向が逆方向となる場合、張力調整部14による蛇行抑制制御が行われないことで、ベルト13は下方にずれやすくなる。この下方にずれたベルト13が走行可能範囲の下限位置に至ると、ベルト13は案内ローラ15aの案内面に接して案内される状態となり(図5参照)、ベルト13がそれ以上下がらなくなることで、各プーリ11、12におけるフランジ部へのベルト13の接触や乗り上げを防げる仕組みである。
【0048】
前記支持装置16は、電動機70を送風機60の側方に位置調整可能に支持するものである。詳細には、支持装置16は、送風機60と一体化される基部16aと、この基部16aに対する位置や向きを微調整可能として基部16aに取り付けられ、電動機70を固定される調整枠部16bとを備える構成である。
【0049】
この支持装置16は、送風機作動時の動荷重による送風機各部の弾性変形に伴う傾動が電動機出力軸71に生じた段階で、駆動側プーリ11の回転中心軸が従動側プーリ12の回転中心軸と平行となるような電動機70の支持状態を、基部16aに対する調整枠部16bの位置調整により得る仕組みである。
【0050】
冷却塔では、必要とされる性能に応じて、送風機の大きさと、送風機を駆動する電動機の出力の組合せを複数通り設定される。この冷却塔の必要性能に応じた送風機と電動機の複数の組合せについて、支持装置16上の電動機70をその出力軸71が送風機回転軸と平行となる向きとして固定した状態で、送風機作動時の動荷重に相当する力を加えて送風機各部を弾性変形させた際の、出力軸71の傾き度合いが把握され、調整用データとして利用可能とされる。
【0051】
実際に電動機70を冷却塔50に固定する場合には、支持装置16を用いた電動機70の位置調整により、電動機出力軸71の向きを送風機作動時に傾く側とは反対側に、既知の傾き量に対応する所定角度分傾斜させた所定の電動機支持状態を得るようにする。これにより、送風機作動時に駆動側プーリ11の回転中心軸が従動側プーリ12の回転中心軸と平行となり、且つ、駆動側プーリ11の中心軸方向の位置が従動側プーリ12の中心軸方向の位置に適合して、これら二つのプーリに掛け渡されるベルトの向きが各プーリの中心軸方向に対し直角となるように、電動機70を固定できる。
【0052】
こうして、ベルト13を走行させる送風機作動時に、駆動側プーリ11、従動側プーリ12、及びテンションプーリ14dにおける各中心軸の相互の平行度を確保できることで、走行するベルト13に、これを幅方向にずらそうとする余分な力が加わらず、張力調整部14のテンションプーリ14dによるベルトの蛇行防止機能を適切に発揮させることができる。
【0053】
また、事前に軸の傾き量を把握した調整用データを利用することで、冷却塔の設置現場ごとに、送風機を試運転して、作動状態の送風機の各部変形による各プーリ間の位置ずれを把握し、それを踏まえて電動機の位置を微調整して各プーリの位置関係を適切な状態とする作業の手間が省ける。
【0054】
前記カバー17は、略箱状に形成されて送風機60の上側に配設され、駆動側プーリ11、従動側プーリ12、ベルト13、張力調整部14、及び、ベルト案内部15を覆うものである。このカバー17により、雨などの外部から送風機60に向かう水や、誘引通風で冷却塔内部から送風機60に達する空気に含まれる水滴等が伝動機構各部に達して悪影響を与えることを防いでいる。
【0055】
カバー17における張力調整部14やベルト案内部15の周囲部分では、カバー下側に架台部62上の張力調整部14やベルト案内部15をカバー内に通すための開口部が設けられているが、この開口部周縁でカバー17と架台部62との間の隙間は弾性材等で塞がれ、カバー内部と外部とを通じさせる開口部がない状態とされる。張力調整部14やベルト案内部15の周囲の開口部をなくすことで、水や冷却塔内部からの湿った空気を張力調整部14やベルト案内部15に接触させないようにして、張力調整部14やベルト案内部15の劣化を防いでいる。
【0056】
一方、カバー17における駆動側プーリ11下側の電動機出力軸周囲部分と、従動側プーリ12下側の羽根車回転軸周囲部分との少なくとも一方又は両方には、カバー内から外に水を通せる開口部が存在するようにする。カバー17におけるこれらの部分は、カバー内に収められる駆動側プーリ11や従動側プーリ12に対し、電動機出力軸や羽根車回転軸をそれぞれ連結するために、少なくともこれらを通す大きさの貫通孔が当初から設けられており、前記開口部はこうした貫通孔の一部、すなわち、貫通孔に通された軸等の部材で塞がれずに残った隙間部分として生じさせることができる。ただし、これに限られるものではなく、カバー17の電動機出力軸周囲部分や羽根車回転軸周囲部分に開口部となる貫通孔を別途穿設するようにしてもよい。
【0057】
こうしたカバー17の開口部を通じて、カバー17内に外部の空気が出入りすることで、カバー内外の温度差による結露発生を防ぐことができ、結露により発生した水がカバー内に溜まらない状態を確保して、張力調整部14やベルト案内部15の他、送風機60や電動機70の要部と水との接触を阻止できる。
【0058】
なお、これらカバー17の電動機出力軸周囲部分や羽根車回転軸周囲部分の開口部は、下向きであり、且つ、送風機60で送風される空気の流路から外れた位置となるため、この開口部から水がカバー内に浸入するおそれはない。
【0059】
次に、前記構成に基づく冷却塔送風機用ベルト伝動機構の作動状態について説明する。
公知の冷却塔同様に、通常の冷却塔運転状態では、冷凍機や空気調和機器等で熱を吸収し温まった循環水などの冷却対象の熱媒体が、所定の循環経路から取出されて冷却塔50の熱交換部内側に流通し、熱交換後再び循環経路に戻る過程が繰返されている。そして、送風機60による誘引通風で熱交換部に外部の空気が導入され、熱媒体は熱交換部において空気と熱交換して冷却される一方、熱交換後の空気は熱交換部から送風機60を経て冷却塔50上方に排気される。
【0060】
この運転状態では、負荷の状況(循環水温、循環水量他)に応じたON・OFF等、所定の制御下で電動機70が作動し、電動機70の出力軸71及びこれと一体の駆動側プーリ11があらかじめ設定された回転方向に回転する。この駆動側プーリ11が回転するのに伴い、駆動側プーリ11に巻掛けられているベルト13が順方向に走行移動し、駆動力を伝達して従動側プーリ12を駆動側プーリ11と同じ回転方向に回転させ、正回転状態とすることとなる。
【0061】
走行するベルト13は、駆動側プーリ11側から従動側プーリ12に達する直前で、張力調整部14のテンションプーリ14dと接し、ばね14cで付勢されて傾動するテンションプーリ14dに押されて、ベルト13は内周側に張り出し、適度な張り状態となる。
【0062】
また、テンションプーリ14dは、走行するベルト13に接した状態で、このベルト13の蛇行やベルト幅方向への偏りを防ぐ、公知の蛇行防止機能を発揮しており、ベルト13はその幅方向の動きを制御されることで、蛇行や偏りを抑えられることとなる。
【0063】
このようにベルト13が順方向に走行している状態でテンションプーリ14dの制御を受けることで、ベルト13は従動側プーリ12外周面の略中央部を走行し、走行可能範囲の下限位置から離れた状態となる。次いで、ベルト13が順方向走行時におけるベルト張り側の区間を従動側プーリ12から駆動プーリ11に向かう際、従動側プーリ12の近傍でベルト案内部15の案内ローラ15aが存在する位置を通るが、ベルト13が従動側プーリ12を離れても従動側プーリ12に接していた際の高さ位置をそのまま維持することで、前記走行可能範囲の下限位置に案内面最上部の位置が一致しているベルト案内部15の案内ローラ15aは、ベルト13とは接触せず、この案内ローラ15とベルト13に摩耗は生じない(図4参照)。
【0064】
こうして順方向への走行状態を継続するベルト13により駆動力を得て回転する従動側プーリ12は、一体の羽根車61を同様に回転させて正回転状態とする。これら従動側プーリ12と羽根車61の回転は、電動機出力軸71の回転に対し、駆動側プーリ11の外径と従動側プーリ12の外径から求められる減速比で減速されたものとなる。
従動側プーリ12及びこれと一体の羽根車61が正回転状態となって回転することで、送風が実行され、この送風に基づいて冷却塔への誘引通風がなされることとなる。
【0065】
ベルト伝動機構10においては、駆動側プーリ11とベルト13、及び、ベルト13と従動側プーリ12がそれぞれ常時接触し、これら相互の摩擦により駆動力が伝達されることで、送風機作動中の騒音発生は少ない上、ベルト13は平ベルトとされ、屈曲性に優れており、Vベルト等による伝動の場合と比べて騒音をより小さくすることができる。また、平ベルトの特長として、薄型で曲げによる歪みの影響が小さく、耐久性に優れると共に、屈曲抵抗を抑えられ、伝動効率を高くして送風機の駆動に係るエネルギー消費の低減が図れる。
【0066】
この他、冷却塔では、負荷や周囲環境の状況に応じて、一時的に送風機による送風を停止させる、すなわち、電動機を停止させて送風機を作動させないようにする制御が行われるが、こうして電動機を停止させている際に、強風や隣接冷却塔からの吸排気に由来して羽根車に対し冷却塔の外から内向きに加わる風圧により、電動機駆動による通常の送風機作動時とは逆向きに羽根車が回転することがある。
【0067】
このような場合、羽根車61と一体に回転する従動側プーリ12に巻掛けられているベルト13も、羽根車61の通常作動時とは逆方向に走行する状態となり、テンションプーリ14dのベルト13に対する蛇行抑制制御が正しく行われなくなる。ただし、張力調整部14のテンションプーリ14dを従動側プーリ12寄りに配置していることで、ベルト13の走行方向が逆方向となっても、ベルト13とテンションプーリ14dとの相互の関係をほとんど変えずに済み、駆動側や従動側の各プーリに対するベルト13のずれの進行度合いを小さくすることができる。このため、この逆回転の状態が短時間で終了して、送風のための電動機の作動が再開し、ベルトが順方向に走行する状態に復帰するようであれば、各プーリに対するベルト13のずれは問題ない程度に収まっていることで、無理なく羽根車61を正回転状態として送風機60の誘引通風を再開できると共に、テンションプーリ14dにベルト13の蛇行抑制制御をあらためて行わせて、各プーリにおけるベルト13の位置を目標の位置に戻せる。
【0068】
一方、羽根車61の逆回転状態が長時間に及ぶと、逆方向に走行するベルト13のずれ量が大きくなり、ベルト側端部が各プーリ外周面での走行可能範囲の下限位置に達するようになる。これに対し、従動側プーリ12の近傍に位置して、ベルト13が逆方向に走行する状態ではその走行方向について従動側プーリ12より前段側となるベルト案内部15の案内ローラ15aが、ベルト側端部(耳部)と転がり接触しながらこれを案内して従動側プーリ12へ導き、従動側プーリ12におけるベルト側端部位置を案内ローラ15aの案内面最上部位置、すなわち、プーリ外周面での走行可能範囲の下限位置に保持して、ベルト側端部のプーリフランジ部への接触や乗り上げを阻止することとなる(図5参照)。
【0069】
こうしたベルト案内部15の案内により、駆動側及び従動側の各プーリにおけるベルト位置を各プーリ外周面での走行可能範囲内に維持でき、各プーリに接するベルトの位置が過剰に下がるのを適切に規制して、ベルト側端部の摩耗や損傷を防止してベルトの劣化を阻止できる。
【0070】
この場合も、送風のための電動機70の作動が再開して、羽根車61の逆回転の状態が終了し、ベルト13が順方向に走行する状態に復帰すれば、各プーリ11、12とベルト13との接触に問題はないことから、ベルト13で駆動力を適切に伝達して、羽根車61を正回転状態として送風機60の誘引通風を再開できると共に、テンションプーリ14dの蛇行抑制制御をあらためて実行させて、各プーリ11、12におけるベルト13の位置を目標の位置に戻せる。
【0071】
このように、本実施形態に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構においては、電動機出力軸71と一体の駆動側プーリ11から羽根車61と一体の従動側プーリ12に回転駆動力を伝えるベルト13に対し、張力調整部14のテンションプーリ14dでベルト13の撓みを防ぐと共に走行中のベルト13の蛇行を抑え、且つ、ベルト案内部15を従動側プーリ12近傍に位置させ、その案内面の最上部位置を従動側プーリ外周面におけるベルト走行可能範囲の下限位置に合わせることから、送風機作動停止時における外部からの影響等に伴う羽根車逆回転状態で張力調整部14の蛇行抑制制御の効かない状況が長く続く場合でも、駆動側及び従動側の各プーリ11、12に接するベルト13の位置が過剰に下がるのをベルト案内部15で適切に規制でき、ベルト13の位置を各プーリ外周面での走行可能範囲内に維持して、ベルト13のプーリフランジ部への接触や乗り上げによるベルト側端部の摩耗や損傷を防止でき、仮に送風機羽根車61の逆回転が多く生じる冷却塔運転状態であってもベルトを劣化させず、ベルトの交換頻度を減らせるなどメンテナンスに係る負担を確実に軽減できる。
【0072】
なお、前記実施形態に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構において、ベルト伝動機構を適用する冷却塔は、直交流形とする構成としているが、これに限られず、送風機が冷却塔上部に配設されるものであれば、向流形など他の形式の冷却塔にも適用できる。
【0073】
また、前記実施形態に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構において、張力調整部14は、固定のベース部14aに対しアーム部14bを傾動させ、アーム部14bに取り付けられたテンションプーリ14dをベルト13に押し付けるようにする構成としているが、これに限らず、張力調整部を、例えばテンションプーリが直線的に移動してベルトを一定方向に押し、ベルトに張力を与えるものなど、テンションプーリを傾動以外の動きでベルトに接触させる構成としてもかまわない。
【0074】
また、前記実施形態に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構においては、送風機60の支持枠63に架台部62を取り付け、この架台部62上に張力調整部14やベルト案内部15を取り付けて固定する構成としているが、これに限られるものではなく、例えば、カバーが、駆動側プーリ、従動側プーリ、ベルト、張力調整部、及び、ベルト案内部を上方から覆う上部カバーと、下方から覆う下部カバーとからなる分割構造とされる場合には、下部カバーに張力調整部やベルト案内部を取り付けて固定する構成としてもかまわない。この場合、カバー17を設けた時点で、張力調整部やベルト案内部の周囲においてカバーと隣接する他部材との間に開口部となる隙間が生じる場合は、弾性材等の挿入又は充填で開口のない状態とされる。
【0075】
また、前記実施形態に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構において、ベルト13の下方への動きを制限するベルト案内部15は、回転可能な案内ローラ15aを有して、この案内ローラ15aの外周面部分である円筒面状の案内面の最上部位置が従動側プーリ12外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致するようにして設けられ、羽根車61の逆回転状態で各プーリ外周面での走行可能範囲の下限位置に達したベルト側端部(耳部)に対し、案内ローラ15aを転がり接触させる構成としているが、これに限らず、案内面の最上部位置を前記下限位置の高さに一致させて配設されるものであれば、案内面を平面及び/又は曲面とされて、こうした案内面を静止状態としつつ、前記下限位置に達したベルト側端部にすべり接触させてベルト13を案内し、ベルト側端部位置を前記下限位置に保持する形式のベルト案内部を用いる構成としてもかまわない。
【0076】
また、前記実施形態に係る冷却塔送風機用ベルト伝動機構においては、ベルト案内部15における案内ローラ15aを、その外周面部分である案内面の最上部位置が従動側プーリ12外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致するようにして設ける構成としているが、この他、図6及び図7に示すように、案内ローラ15aを、その外周の案内面の外径変化に関わりなく、案内面におけるベルト端部と接触可能な部位の最上部位置を、従動側プーリ12外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致させるよう位置調整可能に配設する構成とすることもできる。
【0077】
この場合、ベルト案内部15の案内ローラ15aにおける外周の案内面のうち、ベルト13と接触可能な部位、例えば案内面の中央部分における最上部の位置が、従動側プーリ12外周面のベルト走行可能範囲の下限位置の高さに一致するように、案内ローラ15aが上下位置調整されることとなる。これにより、羽根車61の逆回転状態でベルト13が逆方向に走行する際の、下限位置まで下がったベルト13に対し、仮に案内ローラ15aの案内面がそれまでのベルト13との接触による摩耗で磨り減ってその外径を小さくしていた場合でも、適度な位置調整でベルト13と接触してこれを案内する状態を継続でき、ベルト案内部15でベルト13を適切に案内してその下降を抑え、ベルト13を劣化させない状態を長期間維持でき、ベルト13の交換頻度を減らせる。
【0078】
また、案内ローラ15aを上下位置調整できることで、仮にベルト13より案内ローラ15aが摩耗しやすい材質とされ、逆方向に走行するベルト13との接触で案内ローラ15aの摩耗が進んだとしても、問題なく案内できる。このように案内ローラ15aを摩耗しやすい材質とする場合、ベルト13の摩耗は大幅に減らすことができるため、ベルト13の摩耗による劣化を防げる。
【0079】
前記図6及び図7に示す具体例では、ベルト13に接する案内ローラ15a中央部分が摩耗してその外径を小さくすると、この中央部分にばね15gによる付勢で押し付けられる検出用ローラ15d及びこの検出用ローラ15dを回転可能に支持するローラ支持片15eが横にずれるのに伴って、ローラ支持片15eの溝15fに係合する案内ローラ15aの中心軸15c位置が上方にずれ、これにより案内ローラ15aが架台部62上のローラ支持部15bに対し摩耗量に合わせて上方に移動することとなり、案内ローラ15a中央部分がベルト13に接してこのベルト13を下側から案内する状態を維持できる仕組みである。
【0080】
なお、ベルト13が順方向に走行している状態では、ベルト13は従動側プーリ12外周面の略中央部を走行し、走行可能範囲の下限位置から離れた状態となっていることから、ベルト案内部15の案内ローラ15aは位置調整の有無に関わりなく、前記実施形態同様にベルト13とは接触せず、案内ローラ15に摩耗は生じない。
【符号の説明】
【0081】
10 ベルト伝動機構
11 駆動側プーリ
12 従動側プーリ
13 ベルト
14 張力調整部
14a ベース部
14b アーム部
14c ばね
14d テンションプーリ
15 ベルト案内部
15a 案内ローラ
15b ローラ支持部
15c 中心軸
15d 検出用ローラ
15e ローラ支持片
15f 溝
15g ばね
16 支持装置
16a 基部
16b 調整枠部
17 カバー
50 冷却塔
60 送風機
61 羽根車
61a 回転軸
62 架台部
63 支持枠
70 電動機
71 出力軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7