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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】安全弁試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/003 20190101AFI20240813BHJP
   G01L 7/16 20060101ALI20240813BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01M13/003
G01L7/16
F16K17/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021206053
(22)【出願日】2021-12-20
(65)【公開番号】P2023091352
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521123024
【氏名又は名称】株式会社プレックス
(73)【特許権者】
【識別番号】390031439
【氏名又は名称】株式会社フォルム
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸長
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸誠
(72)【発明者】
【氏名】石本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】松本 有
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 信行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真悟
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-229343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107605823(CN,A)
【文献】特開2001-165812(JP,A)
【文献】実開昭59-031047(JP,U)
【文献】特開平07-293724(JP,A)
【文献】実開昭56-033542(JP,U)
【文献】特開平04-093746(JP,A)
【文献】米国特許第04557136(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K17/00-17/168
G01L 7/00-23/32
27/00-27/02
G01M 3/00- 3/40
13/00-13/045
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁棒に取り付けられた弁体が安全弁用ばねにより付勢されて閉じられ前記弁体に所定以上の圧力が前記安全弁用ばねの付勢方向と逆方向にかかると作動して開く安全弁に取り付けられる安全弁試験装置であり、
前記弁棒は前記安全弁の上面から外側に突出して設けられ、
前記安全弁の前記上面から突出した前記弁棒の端部に、軸方向が一致して連結される引張ボルトが設けられ、前記引張ボルトには、前記引張ボルトが挿通する挿通孔を有し前記引張ボルトに交差して移動可能に取り付けられる板材である一対のプレートと、前記一対のプレートの間に設けられ伸縮方向が前記引張ボルトの軸方向に対して略平行な載荷重用ばねと、前記引張ボルトの、前記弁棒が取り付けられた端部とは反対の端部に螺合され前記プレートの外側に位置する載荷重用ナットが設けられ、
前記載荷重用ナットを締めることで前記一対のプレートは間隔が狭くなり前記載荷重用ばねを圧縮し、前記安全弁の前記弁棒に、前記安全弁用ばねの付勢方向と逆方向の力が前記載荷重用ばねにより前記引張ボルトを介して加えられ、前記安全弁の前記弁体が前記安全弁用ばねの力に抗して開き、前記弁体が開いた作動点の前記載荷重用ばねの力を圧力に換算して前記安全弁の安全弁作動圧力を測定可能としたことを特徴とする安全弁試験装置。
【請求項2】
前記載荷重用ナットは手動で締める構造であり、前記載荷重用ばねは手動で長さを測定する構造であり、
測定時には、前記載荷重用ナットを手動で締めて前記安全弁の前記弁体が前記安全弁用ばねの力に抗して開いた作動点の前記載荷重用ばねの長さを手動で測定し、前記載荷重用ナットを締める前の圧縮前の前記載荷重用ばねの長さと、作動点の前記載荷重用ばねの長さとの変位量から、前記載荷重用ばねのばね定数により前記載荷重用ばねの力を算出し、作動点の前記載荷重用ばねの力を圧力に換算し、前記安全弁の安全弁作動圧力を測定可能とした請求項1記載の安全弁試験装置。
【請求項3】
前記引張ボルトには、前記載荷重用ナットと前記プレートの間に、スラストベアリングが設けられている請求項1記載の安全弁試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全弁の作動圧力を測定する安全弁試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安全弁は、圧力流体を扱うあらゆる産業で、使用される圧力容器等の装置に取り付けられ、装置の圧力が異常に上昇した時に装置を破壊から守る装置である。装置内の圧力が異常に上昇して予め定められた圧力になった時に、安全弁が開いて装置から蒸気やガス等の流体を逃がし、圧力が所定の値に下降すると再び閉じる。このような安全弁が予め定められた圧力で弁体が開くことを試験する安全弁試験装置がある。
【0003】
例えば、特許文献1の安全弁試験方法及び安全弁試験装置は、安全弁の弁体をリフトする油圧シリンダと、油圧シリンダにより安全弁の弁体のリフトの前後で、弁入口圧力と油圧シリンダの内圧及びリフト量をそれぞれ計測する計測手段と、この計測手段による計測値から安全弁作動巾の揚弁力とバネ力の関係から安全弁の特性を算出する演算手段とが設けられている。この演算手段による算定結果をモデル弁の実証試験結果と比較して安全弁の作動試験結果を得ることができる。
【0004】
特許文献2に開示されている安全弁の作動圧力測定装置は、安全弁の弁棒に、ロードセルを介して油圧ジャッキが連結されている。油圧ジャッキは油圧ポンプで駆動され、ロードセルからの信号はアナライジングレコーダの表示部に荷重-時間のグラフとして表示される。油圧ジャッキで弁棒をリフトさせた後、油圧ポンプをリリーフする。ロードセルに加わる荷重は徐々に減少し、シート面が再び閉止した後に荷重の減少率は変化する。この変曲点における荷重から、安全弁の作動圧力を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001―165812号公報
【文献】特開平5-87261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の場合、荷重を加える手段として油圧ジャッキやそのための油圧ポンプを必要とし、装置は大掛かりで高価なものになる。また油圧で載荷する場合は、微妙な載荷が困難であるという問題もある。荷重計測のためには、高価なロードセルが必要であり、試験用ばねにひずみゲージを貼り付けて専用のセンサー制作とひずみ用のアンプが必要である。この点でも装置が大がかりで、複雑となり、持ち運びに不便であり、現場で種々の装置に取り付けられた安全弁の作動圧力の試験を行うことは難しい。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、簡単な作業により、安全弁の作動圧力の測定を行う安全弁試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、弁棒に取り付けられた弁体が安全弁用ばねにより付勢されて閉じられ前記弁体に所定以上の圧力が前記安全弁用ばねの付勢方向と逆方向にかかると作動して開く安全弁に取り付けられる安全弁試験装置であり、前記弁棒は前記安全弁の上面から外側に突出して設けられ、前記安全弁の前記上面から突出した前記弁棒の端部に、軸方向が一致して連結される引張ボルトが設けられ、前記引張ボルトには、前記引張ボルトが挿通する挿通孔を有し前記引張ボルトに交差して移動可能に取り付けられる板材である一対のプレートと、前記一対のプレートの間に設けられ伸縮方向が前記引張ボルトの軸方向に対して略平行な載荷重用ばねと、前記引張ボルトの、前記弁棒が取り付けられた端部とは反対の端部に螺合され前記プレートの外側に位置する載荷重用ナットが設けられ、前記載荷重用ナットを締めることで前記一対のプレートは間隔が狭くなり前記載荷重用ばねを圧縮し、前記安全弁の前記弁棒に、前記安全弁用ばねの付勢方向と逆方向の力が前記載荷重用ばねにより前記引張ボルトを介して加えられ、前記安全弁の前記弁体が前記安全弁用ばねの力に抗して開き、前記弁体が開いた作動点の前記載荷重用ばねの力を圧力に換算して前記安全弁の安全弁作動圧力を測定する安全弁試験装置である。
【0009】
前記載荷重用ナットは、手動で締める構造であり、前記載荷重用ばねは手動で長さを測定する構造であり、測定時には、前記載荷重用ナットを手動で締めて前記安全弁の前記弁体が前記安全弁用ばねの力に抗して開いた作動点の前記載荷重用ばねの長さを手動で測定し、前記載荷重用ナットを締める前の圧縮前の前記載荷重用ばねの長さと、作動点の前記載荷重用ばねの長さとの変位量から、前記載荷重用ばねのばね定数により前記載荷重用ばねの力を算出し、作動点の前記載荷重用ばねの力を圧力に換算し、前記安全弁の安全弁作動圧力を測定可能としたものである。
【0010】
前記引張ボルトには、前記載荷重用ナットと前記プレートの間に、スラストベアリングが設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の安全弁試験装置は、簡単な構造で、簡単な作業により、安全弁の作動圧力の測定を行うことができる。手動でナットを締め込み、ナットで締め込まれて圧縮された載荷重用ばねの長さを手動で測定するため、大掛かりな装置が不要であり、軽量で持ち運びに便利である。載荷重用ばねを使用するため、安価であり、載荷重用ばねを強さが異なるものに交換することにより色々な強さの安全弁の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態の安全弁試験装置の正面図と安全弁の縦断面図である。
図2】この実施形態の安全弁試験装置の正面図である。
図3】この実施形態の安全弁試験装置の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図2はこの発明の一実施形態を示すもので、図1は安全弁試験装置10を、ばね式の安全弁101に取り付けた状態を示している。
【0014】
ここで、安全弁101について説明する。安全弁101の弁座102は、入口103と出口104を有しており、入口103に図示しない仕切弁等を介して圧力容器等の装置が接続連通され、装置の運転時にはベース圧力Pbがかけられている。出口104は、入口103にかかる圧力がベース圧力Pbを超えて異常に高くなった時に、蒸気やガス等の流体を逃がすものである。弁座102に取り付けられた弁収容筒105内には、安全弁用ばね106を介して弁棒107が設けられ、弁棒107の、弁座102内に位置する端部には弁体108が取り付けられている。弁体108は、安全弁用ばね106の力により、弁座102の入口103と出口104の間にあるシート面109に所定の力で押し付けられて、入口103と出口104を閉じ、入口103にかかるベース圧力Pbを保持する。
【0015】
安全弁用ばね106の強さは、弁収容筒105と安全弁用ばね106の間に介装された調整ねじ110により適宜に設定されている。この安全弁101は、入口103から弁体108に加わる圧力がベース圧力Pbを一定の値以上超えた時に、弁体108がリフトしてシート面109から開き、出口104から流体を逃がし、装置を破壊から守る。入口103の圧力が所定の値に降下すれば、再び安全弁用ばね106の力で、弁体108がシート面109に閉じる。
【0016】
安全弁101の弁収容筒105の上面105aには弁棒107が上方に突出し、弁棒107を必要な時にリフトするための図示しないレバーが取り付けられている。弁収容筒105の上面105aには、弁棒107とレバーの基端部を覆う図示しないキャップが取り付けられ、キャップに設けられた透孔から、レバーの先端が突出している。この実施形態の安全弁試験装置10は、安全弁101の作動圧力を測定する際に、安全弁101からレバーとキャップを外した状態で、弁収容筒105の上面105aに取り付けて使用する。
【0017】
次に、安全弁試験装置10について説明する。安全弁試験装置10は、鉄やアルミ等の金属製の複数の部材が組み立てられて形成されている。鉄よりも、アルミの方が軽量で適している。安全弁試験装置10は、安全弁101の弁収容筒105の上面105aに接する円筒形の円筒脚12を有し、円筒脚12の側面には、弁収容筒105の上面105aに取り付ける操作を行うための円形の開口部13が設けられている。円筒脚12の、挿通方向の一方の端部には、円筒脚12の外径よりも大きい正方形の板材であるブリッジ下プレート14がボルト等で取り付けられ、円筒脚12の開口を閉鎖している。
【0018】
ブリッジ下プレート14の4つの角部の少し内側には、ネジ孔16が貫通して形成され、ネジ孔16には、矩形の板体である一対のブリッジ側板18がボルトで取り付けられている。一対のブリッジ側板18は互いに同形状であり、厚み方向に交差する側面に、ブリッジ下プレート14のネジ孔16に各々連通するネジ孔16が設けられている。一対のブリッジ側板18は、ブリッジ下プレート14に対して直角に位置し、ブリッジ側板18のネジ孔16とブリッジ下プレート14のネジ孔16を合わせて図示しないボルトで固定されている。一対のブリッジ側板18は、ブリッジ下プレート14の一対の側縁部に取り付けられ、一対のブリッジ側板18は互いに平行に対面している。
【0019】
一対のブリッジ側板18の上には、ブリッジ下プレート14と同じ形状のブリッジ上プレート20が取り付けられている。ブリッジ上プレート20の4つの角部の少し内側には、ネジ孔16が貫通して形成され、ブリッジ側板18のネジ孔16と合わせて図示しないボルトで固定されている。ブリッジ上プレート20の、4つの辺の中間付近には、後述するガイド22用のネジ孔16が設けられている。ブリッジ上プレート20の上には、棒部材である4つのガイド22がネジ孔16に差し込まれて螺合して取り付けられている。各ガイド22の一端部はブリッジ上プレート20のネジ孔16に螺合する雄ネジが形成され、反対側の端部には雄ネジが形成されていない。
【0020】
ガイド22の上には、ブリッジ上プレート20と同じ形状の載荷重プレート24が取り付けられている。載荷重プレート24の、4つの辺の中間付近には、ガイド22が挿通可能な透孔25が厚みを貫通して形成されている。載荷重プレート24は、ガイド22が透孔25に挿通されることにより、水平方向に位置決めされ、上下方向に移動可能となる。
【0021】
ブリッジ下プレート14とブリッジ上プレート20、載荷重プレート24の中心には、挿通孔26が厚みを貫通して各々形成され、3つの挿通孔26は横方向には互いに一致し、上下方向に互いに所定間隔離間している。上下方向に離間して並んだ3つの挿通孔26には、上方の2つからは弁棒107とほぼ同じ径の引張ボルト28が、載荷重プレート24とブリッジ上プレート20を通過して挿通され、ブリッジ下プレート14とブリッジ上プレート20の間に達し、ブリッジ下プレート14とブリッジ上プレート20の間に達する端部28aには長ナット30が取り付けられている。なお、安全弁試験装置10を安全弁101に取り付けた時、3つの挿通孔26のうち下方の1つからは安全弁101の弁棒107が、ブリッジ下プレート14を通過して挿通され、ブリッジ下プレート14とブリッジ上プレート20の間に達し、ブリッジ下プレート14とブリッジ上プレート20の間に達する端部107aは、長ナット30により引張ボルト28の端部28aに、互いに同軸に連結される。
【0022】
ブリッジ上プレート20と載荷重プレート24の間には、ばね定数のわかっているコイルスプリングである載荷重用ばね32が設けられている。載荷重用ばね32の下端部はブリッジ上プレート20の上面20aに、上端部は載荷重プレート24の下面24aに当接し、載荷重用ばね32の伸縮方向がブリッジ上プレート20と載荷重プレート24の離間方向である。載荷重プレート24の下面24aには、挿通孔26の外側に、挿通孔26と同軸に筒状のバネセンター34が設けられ、載荷重用ばね32の内側に挿通され、載荷重用ばね32の水平方向への移動を制限している。
【0023】
載荷重プレート24の上面24bには、挿通孔26に引張ボルト28が挿通されて端部28aとは反対の端部が突出し、引張ボルト28には、ワッシャ36を介してベアリングセンター38が取り付けられ、ベアリングセンター38の円周に沿ってスラストベアリング39が設けられている。スラストベアリング39の上には、さらに2つのワッシャ36が取り付けられ、ワッシャ36の上には、載荷重用ナット40が螺合して取り付けられている。
【0024】
載荷重用ナット40を回転させて締め込むことにより、載荷重プレート24が引張ボルト28上の位置を移動し、載荷重用ばね32を圧縮することができる。載荷重用ばね32を圧縮することにより、引張ボルト28に連結されている弁棒107に、引き上げ方向に力を加えることができる。引張ボルト28の載荷重用ナット40の上方に突出する端部には、共回り防止の図示しないレバー等が固定されている。
【0025】
次に、この実施形態の安全弁試験装置10の使用方法について説明する。ここでは、安全弁101を図示しない圧力容器等の装置に取り付けた状態において、現場で作動圧力の測定を行う。
【0026】
まず、安全弁101の入口103側の図示しない仕切弁を閉止する。次に安全弁101の図示しないレバーとキャップを取り外し、図1に示すように、安全弁試験装置10を装着する。円筒脚12は、安全弁101の弁収容筒105の上面105aに載置され、図示しないボルトで固定する。弁棒107は、円筒脚12の内側に挿通され、さらにブリッジ下プレート14の挿通孔26に挿通され、ブリッジ下プレート14とブリッジ上プレート20の間の空間に突出する。弁棒107の端部107aを、引張ボルト28の端部28aに長ナット30で連結する。セットが完了したら、仕切弁を開いて、ベース圧力Pbをかけ、試験を開始する。
【0027】
まず、載荷重用ナット40を手動で締め、手の力で軽く締まる所で止める。この時、載荷重用ばね32は圧縮されず、弁棒107をリフトする力はかからない。載荷重用ばね32による力は0であり、圧縮前のこの時点で、載荷重用ばね32の長さl1をデジタルノギス44で計測する。例えば図3に示すように、載荷重プレート24の下面24aと、ブリッジ上プレート20の上面20aの間の長さを計測する。載荷重プレート24の上面24bには、各辺の中心付近にアルファベット「A」~「D」からなる目印42が各々4ヶ所記されており、測定する位置を記してもよい。
【0028】
次に、モンキーレンチ等で載荷重用ナット40を締め込む。この時、引張ボルト28が載荷重用ナット40に追従して共回りしないように、図示しない共回り防止のレバーを保持して行う。載荷重用ナット40を締めていくと、載荷重プレート24に下向きの力が掛かり、載荷重プレート24は透孔25にガイド22が摺動可能に挿通されているだけであり、容易に下降し、ブリッジ上プレート20に近くなる。載荷重用ナット40の締め付けは、スラストベアリング39を介して荷重用ナット40を回転させるので、小さいトルクで回転可能である。
【0029】
載荷重プレート24がブリッジ上プレート20に対して近くなり、載荷重用ばね32が圧縮され、引張ボルト28と、引張ボルト28に連結された弁棒107に、リフト方向に徐々に力がかかる。弁棒107のリフト方向の力が大きくなると、安全弁101の安全弁用ばね106に抗して弁棒107がリフトし、弁体108がシート面109から開き、流体が出口104に流れ、空気漏れの音が確認される。この位置を作動点とし、作動点での載荷重用ばね32の長さl2をデジタルノギス44で計測する。圧縮前の載荷重用ばね32の長さl1から、作動点の載荷重用ばね32の長さl2を引いて載荷重用ばね32の変位量Dを求め、載荷重用ばね32の変位量Dにばね定数Fをかけて荷重値を計算し、この荷重値を入口103の断面積で割って圧力eに換算する。ベース圧力Pbに圧力eを足したものが、この安全弁101の安全弁作動圧力Pとなる。そして、安全弁試験装置10の安全弁作動圧力Pが正常であるか判定する。必要があれば調整を行う。
【0030】
安全弁作動圧力Pを求める計算式は以下の通りである。
P=Pb+e
e=(F×D)/A=(F×D)/{(a/2)×π}
よって P=Pb+[(F×D)/{(a/2)×π}]
P:安全弁作動圧力Mpa
Pb:ベース圧力Mpa
F:ばね定数kN/mm
D:ばねの変位量mm
a:入口103の管径cm
A:弁体面積cm
e:換算圧力Mpa
【0031】
なお、ここでは安全弁101を装置に接続連通してベース圧力Pbがかけられた状態で測定するが、装置に接続せずに測定することもできる。安全弁101を設備から取り外して試験する場合や、工場で出荷する場合には、ベース圧力Pbに相当する圧力をコンプレッサー等で安全弁101の入口103にかける。この場合、入口103に相フランジと圧力ポートが必要となる。また、載荷重用ナット40の回転には大きなトルクが必要であるが、この回転をスムーズにするためにスラストベアリングを採用する。これにより、手動で簡単に載荷重用ナット40を締め込むことができる。
【0032】
載荷重用ばね32の長さl1,l2は、デジタルノギス44以外にマイクロメータで測定してもよい。また載荷重用ナット40にロータリーエンコーダを取り付けてパルスの数を載荷重用ばね32の変位量Dに変換してもよい。デジタルノギス44やマイクロメータで長さを測定する方法が一番簡単は方法であるが、その代わりに変位を正確に測定できるセンサーを使用しても良く、センサーを使用することにより自動計測が可能となる。自動計測の場合は、ベース圧力Pbの計測には圧力変換器を使用し、載荷重用ナット40回転に減速機の接続されたサーボモーター等を用い、サーボモーターの回転にはロータリーエンコーダとボールねじの組み合わせの機構を接続してもよい。これにより、ロータリーエンコーダの回転パルスにより、変位センサー不要で載荷重用ばね32の変位量Dを換算することができる。また、サーボモーターは操作用の電源が必要であるが、代用でバッテリー式の電動ドリルを使用することにより、電源の無い現場でも、簡単に載荷することができる。載荷重用ばね32はスプリング以外でも良く、ボールねじでもよい。ボールねじを使用することにより、スラストベアリングが不要となり、よりスムーズに安全弁101の弁体108を引き上げることができる。
【0033】
なお、ばね定数Fは、基準バネ校正試験器で正確に測定でき、校正証明書やトレーサビリティ証明を取得することができる。また、表計算ソフト等を使用して、測定した載荷重用ばね32の長さl1,l2やベース圧力Pbを入力して、簡単に安全弁作動圧力Pを計算することができる。表計算ソフトを有するモバイル端末を、測定する現場に持ち込むことにより、その場で簡単に安全弁作動圧力Pを計算することができる。
【0034】
ここで、実際に行った安全弁試験装置10の試験について説明する。図3に示すように、安全弁試験装置10の載荷重プレート24の上面24bに、各辺の中心付近にアルファベット「A」~「D」からなる目印42が各々4ヶ所記され、アルファベット「A」「B」「C」「D」の目印42の付近で、デジタルノギス44で載荷重用ばね32の長さを測定した。載荷重用ばね32の、圧縮前の長さl1と、作動点での載荷重用ばね32の長さl2を測定し、「A」「B」「C」「D」4つの平均を求め、以下の表に記す。なお、作動点での載荷重用ばね32の長さl2は、ベース圧力Pbが0.6Mpaの時と1.0Mpaの時の2種類について測定した。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0035】
表1より、圧縮前の載荷重用ばね32の長さの平均値87.99mmから、Pb0.6Mpa時の作動点の長さの平均値78.45mmを引いて、Pb0.6Mpa時のばねの変位量D9.54mmを求める。ばねの変位量D9.54mmを、前記の式に入れて、安全弁作動圧力Pを求める。そして、安全弁101の安全弁作動圧力PがPb0.6Mpa時において正常であるか判定する。同様に、圧縮前の載荷重用ばね32の長さの平均値87.99mmから、Pb1.0Mpa時の作動点の長さの平均値81.43mmを引いて、Pb1.0Mpa時のばねの変位量D6.56mmを求める。ばねの変位量D6.56mmを、前記の式に入れて、安全弁作動圧力Pを求める。安全弁101の安全弁作動圧力PがPb1.0Mpa時において正常であるか判定する。なお、Pbが、0.6Mpaと1.0Mp以外でも、同様の試験方法で測定することができる。
【0036】
この実施形態の安全弁試験装置10によれば、簡単な構造で、簡単な作業により、安全弁101の安全弁作動圧力を求め、作動圧力の試験を行うことができる。手動で載荷重用ナット40を締め込み、載荷重用ナット40で締め込まれて圧縮された載荷重用ばね32の長さをデジタルノギス44等で手動により測定するため、作業が容易であり、手動で微調整ができ、正確である。大掛かりな装置が不要であり、電源や各種の装置も不要であり、軽量で持ち運びに便利である。スプリングである載荷重用ばね32を使用するため、安価であり、軽量で持ち運びに便利である。載荷重用ばね32を強さが異なるものに交換することにより色々な強さの安全弁101の測定を行うことができる。圧力容器等の装置に接続され作動中の安全弁101の試験だけにとどまらず、コンプレッサーを用いることにより、装置から取り外した安全弁101の試験にも使用することができる。
【0037】
なお、この発明の安全弁試験装置は、上記実施の形態に限定されず、各部材の構造や形状は自由に変更可能である。載荷重用ばねの長さを測定する方法は、マイクロノギス以外でも良く、力の計測方法は、載荷重用ばねの変位量から算出する方法以外で行ってもよい。例えばロードセルで行ってもよい。しかし、ロードセルは高価であり、またジャッキとアンプと表示器が必要であり、装置が複雑で高価なものとなる。それに対して載荷重用ばねの変位量から算出する方法は、載荷重用ばねが安価であり、持ち運びも容易である。
【符号の説明】
【0038】
10 安全弁試験装置
20 ブリッジ上プレート
24 載荷重プレート
26 挿通孔
28 引張ボルト
28a 端部
32 載荷重用ばね
39 スラストベアリング
40 載荷重用ナット
101 安全弁
105a 上面
106 安全弁用ばね
107 弁棒
107a 端部
108 弁体
図1
図2
図3