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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】オリゴデンドロサイトの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/079 20100101AFI20240813BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240813BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240813BHJP
【FI】
C12N5/079
C12N15/12
C12N15/113 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022578285
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001814
(87)【国際公開番号】W WO2022163466
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】63/141,626
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517123221
【氏名又は名称】アイ ピース,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515238909
【氏名又は名称】田邊 剛士
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田邊 剛士
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-501533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0322981(US,A1)
【文献】国際公開第2007/069666(WO,A1)
【文献】PAWLOWSKI M. et al.,Inducible and Deterministic Forward Programming of Human Pluripotent Stem Cells into Neurons, Skelet,Stem Cell Reports,2017年04月11日,Vol.8, No.4,pp.803-812,DOI:10.1016/j.stemcr.2017.02.016
【文献】EHRLICH M. et al.,Rapid and efficient generation of oligodendrocytes from human induced pluripotent stem cells using t,Proc Natl Acad Sci U S A,2017年02月28日,E2243-E2252,DOI: 10.1073/pnas.1614412114
【文献】CHANOUMIDOU K. et al.,One-step Reprogramming of Human Fibroblasts into Oligodendrocyte-like Cells by SOX10, OLIG2, and NKX,Stem Cell Reports,2021年04月13日,Vol.16, No.4,pp.771-783,DOI: 10.1016/j.stemcr.2021.03.001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
iPS細胞又はES細胞にOLIG及びSOXの組み合わせ、又はOLIG及びNKXの組み合わせを含む誘導因子を導入することを含前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項2】
前記誘導因子がOLIG、NKX、及びSOXを含む、請求項1に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項3】
前記誘導因子がASCLをさらに含む、請求項1又は2に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項4】
iPS細胞又はES細胞にOLIG及び細胞増殖を促進する因子を含む誘導因子を導入することを含前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項5】
前記誘導因子がSOX、ASCL、及びNKXからなる群から選択される少なくともいずれかを含む、請求項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項6】
リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングせずにiPS細胞を作製することと、
前記iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、
を含
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項7】
リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングせずに播種し、iPS細胞を作製することと、
前記iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、
を含
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項8】
リプログラミング因子を導入された細胞を培養器から剥離し、剥離した細胞の少なくとも一部を混合して播種し、iPS細胞を作製することと、
前記iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、
を含み、
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項9】
リプログラミング因子を導入された細胞を培養器から回収し、回収した細胞の少なくとも一部を混合して播種し、iPS細胞を作製することと、
前記iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、
を含み、
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項10】
リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーのそれぞれをピックアップせずにiPS細胞を作製することと、
前記iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、
を含み、
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項11】
リプログラミング因子を導入された細胞であって、異なるシングルセル由来の細胞同士混合して播種してiPS細胞を作製することと、
前記iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、
を含み、
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項12】
前記播種することにおいて、前記リプログラミング因子を導入された細胞同士を混合する、請求項、及び11のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項13】
前記播種することにおいて、前記リプログラミング因子を導入された細胞のクローン同士を混合する、請求項11、及び12のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項14】
前記リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーを互いに分離することを含まない、請求項から13のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項15】
前記播種することにおいて、前記リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーを互いに混合する、請求項1112、及び13のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項16】
前記リプログラミング因子を導入された細胞が形成する単一のコロニーをクローニングすることを含まない、請求項から15のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項17】
前記リプログラミング因子を導入された細胞であって、培養器に付着している細胞を回収し、回収した細胞の少なくとも一部を培地に播種する、請求項から16のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項18】
前記リプログラミング因子を導入された細胞を遺伝子発現状態で区別することなく播種する、請求項から17のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項19】
前記リプログラミング因子を導入された細胞をリプログラミングの程度で区別することなく播種する、請求項から18のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項20】
前記誘導因子がSOX、ASCL、及びNKXからなる群から選択される少なくともいずれかを含む、請求項から19のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項21】
体細胞にOLIG、SOX、ASCL、NKXを含む誘導因子を導入することを含み、
前記誘導因子が、細胞増殖を促進する因子を含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、
、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項22】
体細胞にOLIG及び細胞増殖を促進する因子を含む誘導因子を導入することを含み、前記細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCから選択される少なくともいずれかである、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項23】
前記誘導因子がSOX、ASCL、及びNKXからなる群から選択される少なくともいずれかを含む、請求項22に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項24】
前記体細胞がiPS細胞又はES細胞でない、請求項21から23のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項25】
前記体細胞が血液細胞である、請求項21から23のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項26】
前記体細胞が単核球である、請求項21から23のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【請求項27】
前記体細胞が線維芽細胞である、請求項21から23のいずれか1項に記載のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞技術に関し、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系のミエリン形成細胞であるオリゴデンドロサイトは、遺伝性及び後天性白質ジストロフィーの細胞移植に有用である可能性がある(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、従来の幹細胞からオリゴデンドロサイトを誘導する方法は、時間がかかり、効率的でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6541577号公報
【文献】国際公開第2011/091048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率的なオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、iPS細胞又はES細胞にOLIG及びSOXを含む誘導因子を導入することを含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0006】
本発明の態様によれば、iPS細胞又はES細胞にOLIG及びNKXを含む誘導因子を導入することを含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0007】
本発明の態様によれば、iPS細胞又はES細胞にOLIG、NKX、及びSOXを含む誘導因子を導入することを含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0008】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、誘導因子が、細胞増殖を促進する因子をさらに含んでいてもよい。
【0009】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。MYCは、c-MYCであってもよい。
【0010】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、誘導因子がASCLをさらに含んでいてもよい。
【0011】
また、本発明の態様によれば、iPS細胞又はES細胞にOLIG及び細胞増殖を促進する因子を含む誘導因子を導入することを含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0012】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。MYCは、c-MYCであってもよい。
【0013】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、誘導因子がSOX、ASCL、及びNKXからなる群から選択される少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明の態様によれば、リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングせずにiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0015】
また、本発明の態様によれば、リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングせずに播種してiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0016】
また、本発明の態様によれば、リプログラミング因子を導入された細胞を培養器から剥離し、剥離した細胞の少なくとも一部を混合して播種し、iPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0017】
また、本発明の態様によれば、リプログラミング因子を導入された細胞を培養器から回収し、回収した細胞の少なくとも一部を混合して播種し、iPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0018】
また、本発明の態様によれば、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーそれぞれをピックアップせずにiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0019】
また、本発明の態様によれば、リプログラミング因子を導入された細胞であって、異なるシングルセル由来の細胞同士混合して播種してiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0020】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種することにおいて、細胞をクローニングしなくともよい。
【0021】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種することにおいて、リプログラミング因子を導入された細胞同士を混合してもよい。
【0022】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種することにおいて、リプログラミング因子を導入された細胞のクローン同士を混合してもよい。
【0023】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種することにおいて、リプログラミング因子を導入された細胞の異なるクローン同士を混合してもよい。
【0024】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種する前に、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーを互いに分離することを含まなくともよい。
【0025】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種する前に、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーのそれぞれをピックアップしなくともよい。
【0026】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、播種することにおいて、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーを互いに混合してもよい。
【0027】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する単一のコロニーをクローニングすることを含まなくともよい。
【0028】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、リプログラミン因子を導入された細胞が形成するコロニーをピックアップすることを含まなくともよい。
【0029】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、リプログラミング因子を導入された細胞であって、培養器に付着している細胞を回収し、回収した細胞の少なくとも一部を培地に播種してもよい。
【0030】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、リプログラミング因子を導入された細胞を遺伝子発現状態で区別することなく播種してもよい。
【0031】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、リプログラミング因子を導入された細胞をリプログラミングの程度で区別することなく播種してもよい。
【0032】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、誘導因子がSOX、ASCL、及びNKXからなる群から選択される少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0033】
また、本発明の態様によれば、体細胞にOLIG、SOX、ASCL、NKXを含む誘導因子を導入することを含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0034】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、誘導因子が、細胞増殖を促進する因子をさらに含んでいてもよい。
【0035】
また、本発明の態様によれば、体細胞にOLIG及び細胞増殖を促進する因子を含む誘導因子を導入することを含む、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法が提供される。
【0036】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、誘導因子がSOX、ASCL、及びNKXからなる群から選択される少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0037】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、細胞増殖を促進する因子が、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。MYCは、c-MYCであってもよい。
【0038】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、体細胞がiPS細胞又はES細胞でなくともよい。
【0039】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、体細胞が血液細胞であってもよい。
【0040】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、体細胞が単核球であってもよい。
【0041】
上記のオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法において、体細胞が線維芽細胞であってもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、効率的なオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施例1に係るフローサイトメーターによる測定結果を示すグラフである。
図2】実施例1に係るPCRの結果を示すグラフである。
図3】実施例1に係るTRA1-60陽性細胞を示す写真である。
図4】実施例1及び実施例2に係るクローナルエフィシエンシーを示すグラフである。
図5】実施例3に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図6】実施例3に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図7】実施例4に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図8】実施例5から9に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図9】実施例10に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図10】実施例11に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図11】実施例12に係る細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図12】実施例13から18の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお以下の示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための材料、物質、薬品、及び方法等を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部材の組み合わせ等を下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0045】
実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、体細胞にOLIG、SOX、ASCL、NKXを含む誘導因子を導入することを含む。
【0046】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、iPS細胞(Induced pluripotent stem cell)又はES細胞(Embryonic stem cell)にOLIG及びSOXを含む誘導因子を導入することを含む。
【0047】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、iPS細胞又はES細胞にOLIG及びNKXを含む誘導因子を導入することを含む。
【0048】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングせずにiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む。
【0049】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングせずに播種してiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む。
【0050】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、リプログラミング因子を導入された細胞を培養器から剥離し、剥離した細胞の少なくとも一部を混合して播種し、iPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む。
【0051】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、リプログラミング因子を導入された細胞を培養器から回収し、回収した細胞の少なくとも一部を混合して播種し、iPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む。
【0052】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーそれぞれをピックアップせずにiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む。
【0053】
また、実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法は、リプログラミング因子を導入された細胞であって、異なるシングルセル由来の細胞同士混合して播種してiPS細胞を作製することと、iPS細胞にOLIGを含む誘導因子を導入することと、を含む。
【0054】
誘導因子は、OLIGとASCLを含んでいてもよい。誘導因子は、OLIG、ASCL、及びSOXを含んでいてもよい。誘導因子は、OLIG、SOX、ASCL、及びNKXを含んでいてもよい。
【0055】
OLIGは、例えば、OLIG2である。SOXは、例えば、SOX10である。ASCLは、例えば、ASCL1である。NKXは、例えば、NKX2.2又はNKX6.1である。
【0056】
誘導因子が、細胞増殖を促進する因子をさらに含んでいてもよい。細胞増殖を促進する因子の例としては、p53遺伝子を抑制する因子、Rb遺伝子を抑制する因子、及びMYCが挙げられる。細胞増殖を促進する因子は、ガン化を促進する因子、アポトーシスを抑制する因子、あるいはクロマチンをユークロマチンに誘導する因子であり得る。
【0057】
p53は、ガン抑制タンパク質である。p53遺伝子を抑制する因子は、例えば、p53のドミナントネガティブ変異体である。p53のドミナントネガティブ変異体は、体細胞に内在する野生型p53タンパク質と競合的に作用して、野生型p53タンパク質の機能を阻害し得る限り特に限定されない。p53のドミナントネガティブ変異体の例としては、マウスp53のDNA結合領域に位置する275位(ヒトの場合は278位)のプロリンをセリンに点変異させたp53P275S、マウスp53の14-301位(ヒトp53では11-304位に対応)のアミノ酸を欠失させたp53DD、マウスp53の58位(ヒトの場合は61位)のセリンをアラニンに点変異させたp53S58A、ヒトp53の135位(マウスの場合は132位)のシステインをチロシンに点変異させたp53C135Y、マウスp53の135位(ヒトの場合は138位)のアラニンをバリンに点変異させたp53A135V、マウスp53の172位(ヒトの場合は175位)のアルギニンをヒスチジンに点変異させたp53R172H、マウスp53の270位(ヒトの場合は273位)のアルギニンをヒスチジンに点変異させたp53R270H、及びマウスp53の278位(ヒトの場合は281位)のアスパラギン酸をアスパラギンに点変異させたp53D278Nが挙げられる。あるいは、p53遺伝子を抑制する因子は、p53遺伝子に干渉する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、及びsiRNAのようなRNAであってもよい。
【0058】
Rbは、ガン抑制タンパク質である。Rb遺伝子を抑制する因子は、例えば、Rb遺伝子に干渉する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、及びsiRNAのようなRNAであってもよい。
【0059】
MYCは、細胞周期制御の機能を喪失させ、ガン化を誘導する。MYCは、c-MYCであってもよい。
【0060】
誘導因子はDNAであってもよいし、RNAであってもよい。RNAは、mRNAであってもよい。なお、ここでは遺伝子記号はヒトで記載しているが、大文字・小文字表記によって、種を制限することを意図するものではない。例えば、全て大文字表記していても、マウス又はラットの遺伝子を含むことを排除するものではない。ただし、実施例においては、実際に使用した生物種に則って、遺伝子記号を表記している。
【0061】
体細胞は、例えば、幹細胞ではない細胞である。体細胞は、例えば、iPS細胞及びES細胞ではない細胞である。体細胞の例としては、線維芽細胞、血液細胞、歯髄幹細胞、ケラチノサイト、毛乳頭細胞、口腔上皮細胞、及び体性幹前駆細胞等が挙げられる。血液細胞の例としては、T細胞、並びにマクロファージ、モノサイト、単核球、B細胞、及びロゼット非形成細胞のようなT細胞以外の血液細胞(non-T細胞)が挙げられる。体細胞は、尿に含まれる細胞であってもよい。尿に含まれる細胞の例としては、膀胱上皮細胞が挙げられる。
【0062】
体細胞は、ヒト由来であってもよいし、非ヒト動物由来であってもよい。体細胞は、一人のヒト由来であってもよいし、複数人のヒト由来であってもよい。体細胞は、一匹の非ヒト動物由来であってもよいし、複数匹の非ヒト動物由来であってもよい。体細胞は、胎児由来であってもよい。
【0063】
iPS細胞及びES細胞は、ヒト由来であってもよいし、非ヒト動物由来であってもよい。iPS細胞及びES細胞は、一人のヒト由来であってもよいし、複数人のヒト由来であってもよい。iPS細胞及びES細胞は、一匹の非ヒト動物由来であってもよいし、複数匹の非ヒト動物由来であってもよい。iPS細胞は、胎児由来であってもよい。
【0064】
iPS細胞は、例えば、リプログラミング因子を導入された細胞を培養することと、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収した細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代することと、を含む、培養方法によって誘導されてもよい。
【0065】
リプログラミング因子を導入される細胞は特に限定されないが、例としては、線維芽細胞、血液細胞、歯髄幹細胞、ケラチノサイト、毛乳頭細胞、口腔上皮細胞、及び体性幹前駆細胞等が挙げられる。リプログラミング因子を導入される細胞は、尿に含まれる細胞であってもよい。尿に含まれる細胞の例としては、膀胱上皮細胞が挙げられる。リプログラミング因子を導入される細胞は、ヒト由来であってもよいし、非ヒト動物由来であってもよい。リプログラミング因子を導入される細胞は、一人のヒト由来であってもよいし、複数人のヒト由来であってもよい。リプログラミング因子を導入される細胞は、一匹の非ヒト動物由来であってもよいし、複数匹の非ヒト動物由来であってもよい。
【0066】
細胞に導入されるリプログラミング因子は、例えば、RNAである。RNAは、例えば、mRNAである。細胞に導入されるリプログラミング因子は、例えば、OCT3/4等のOCTのRNA、SOX2等のSOXのRNA、KLF4等のKLFのRNA、及びc-MYC等のMYCのRNAを含む。リプログラミング因子RNAとして、OCT3/4を改良したMOを使用してもよい。また、リプログラミング因子RNAは、LIN28A、FOXH1、LIN28B、GLIS1、p53-dominant negative、p53-P275S、L-MYC、NANOG、DPPA2、DPPA4、DPPA5、ZIC3、BCL-2、E-RAS、TPT1、SALL2、NAC1、DAX1、TERT、ZNF206、FOXD3、REX1、UTF1、KLF2、KLF5、ESRRB、miR-291-3p、miR-294、miR-295、NR5A1、NR5A2、TBX3、MBD3sh、TH2A、TH2B、及びP53DDからなる群から選択される少なくとも一つの因子のRNAをさらに含んでいてもよい。これらのRNAは、TriLinkから入手可能である。
【0067】
p53は、ガン抑制タンパク質である。p53のドミナントネガティブ変異体は、体細胞に内在する野生型p53タンパク質と競合的に作用して、野生型p53タンパク質の機能を阻害し得る限り特に限定されない。p53のドミナントネガティブ変異体の例としては、マウスp53のDNA結合領域に位置する275位(ヒトの場合は278位)のプロリンをセリンに点変異させたp53P275S、マウスp53の14-301位(ヒトp53では11-304位に対応)のアミノ酸を欠失させたp53DD、マウスp53の58位(ヒトの場合は61位)のセリンをアラニンに点変異させたp53S58A、ヒトp53の135位(マウスの場合は132位)のシステインをチロシンに点変異させたp53C135Y、マウスp53の135位(ヒトの場合は138位)のアラニンをバリンに点変異させたp53A135V、マウスp53の172位(ヒトの場合は175位)のアルギニンをヒスチジンに点変異させたp53R172H、マウスp53の270位(ヒトの場合は273位)のアルギニンをヒスチジンに点変異させたp53R270H、及びマウスp53の278位(ヒトの場合は281位)のアスパラギン酸をアスパラギンに点変異させたp53D278Nが挙げられる。
【0068】
RNAは、プソイドウリジン(Ψ)又は5-メチルウリジン(5meU)で修飾されていてもよい。RNAは、ポリアデニル化されていてもよい。
【0069】
細胞に導入されるRNAは、例えば、1本鎖RNAであり、2本鎖RNAが実質的に除去されていてもよい。また、細胞に導入されるRNAは、短鎖RNA及び夾雑物等の不純物が実質的に除去されていることが好ましい。2本鎖RNAを実質的に除去するために、細胞に導入する1本鎖RNAを、精製及び/又は濃縮してもよい。細胞に導入する1本鎖RNAを精製する方法としては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる精製方法が挙げられる。例えば、HPLCによって、2本鎖RNAが、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、あるいは90%以上除去される。あるいは、2本鎖RNAを実質的に除去するために、細胞に導入するRNAを、2本鎖RNAを分解するリボヌクレアーゼで処理してもよい。
【0070】
細胞に導入されるRNAは、OCT3/4のRNAの完全長に直接接続されたMYODの転写活性化ドメイン(TAD)のRNAをさらに含んでいてもよい。
【0071】
リプログラミング因子は、例えば、リポフェクション法により細胞に導入される。リポフェクション法とは、陰性荷電物質である核酸と、陽性荷電脂質と、の複合体を、電気的な相互作用により形成し、複合体をエンドサイトーシスや膜融合により細胞内に取り込ませる方法である。リポフェクション法は、細胞へのダメージが少なく、導入効率に優れており、操作が簡便であり、時間がかからない等の利点を有する。
【0072】
リプログラミング因子は、例えば、RNAトランスフェクション試薬を用いて培養されている細胞に導入される。例えば、細胞が単核球である場合、血液から単核球を分離した直後に、単核球にRNAを導入してもよい。
【0073】
あるいは、細胞には、例えば、ウイルスベクターを用いてリプログラミング因子を導入する。ウイルスベクターは、RNAウイルスベクターであってもよい。RNAウイルスベクターは、センダイウイルスベクターであってもよい。センダイウイルスベクターは、所定の温度以上でウイルス核酸の安定性が低下する温度感受性センダイウイルスベクターであってもよい。温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸は、所定の温度未満で安定である。ウイルス核酸は、ウイルスDNAであってもよいし、ウイルスRNAであってもよい。ウイルス核酸はウイルスゲノムであってもよい。ウイルス核酸の安定性の低下とは、ウイルス核酸が分解すること、及びウイルス核酸の複製又は増殖が抑制されることと、の少なくとも一方であってもよい。ウイルス核酸の安定性が低下すると、ウイルス核酸の増殖、ウイルス核酸の複製速度及び遺伝子発現レベルの少なくとも一方が低下する。所定の温度とは、例えば、36.5℃以上37.5℃以下である。温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸の安定性、すなわち、増殖、複製速度及び遺伝子発現レベルの少なくとも一方は、所定の温度未満で高く、所定の温度以上で低くなる。例えば、温度感受性センダイウイルスベクターは、32℃で培養されている細胞における増殖速度又は遺伝子発現レベルと比較して、37℃で培養されている細胞における増殖速度又は遺伝子発現レベルが、1/2以下である。
【0074】
センダイウイルスは、N遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F/HN遺伝子、及びL遺伝子をコードする。HNタンパク質は、センダイウイルスが細胞に付着する際に細胞表面のシアル酸を認識してウイルス粒子を細胞に繋留させる。Fタンパク質は、細胞外のプロテアーゼにより切断活性化されて、繋留されているセンダイウイルスのエンベロープと標的細胞の細胞膜の融合を触媒して感染を成立させる。Lタンパク質は、その修飾タンパク質であるPタンパク質とともに、感染後に細胞質でウイルス核酸の複製と複製された多コピーの核酸からの転写を触媒する。
【0075】
センダイウイルスベクターにおいてF遺伝子を欠失させることにより、遺伝子導入細胞から感染可能なウイルス粒子が産生されることを抑制することが可能である。また、L遺伝子及びP遺伝子の少なくとも一方に変異を導入することにより、センダイウイルスベクターを温度感受性にすることが可能である。
【0076】
センダイウイルスの温度感受性(TS)変異の例としては、TS7(Lタンパク質のY942H/L1361C/L1558I変異)、TS12(Pタンパク質のD433A/R434A/K437A変異)、TS13(Pタンパク質のD433A/R434A/K437A変異及びLタンパク質のL1558I変異)、TS14(Pタンパク質のD433A/R434A/K437A変異及びLタンパク質のL1361C変異)、TS15(Pタンパク質のD433A/R434A/K437A変異及びLタンパク質のL1361C/L1558I変異)等が挙げられる。
【0077】
センダイウイルスベクターは、例えば、Mタンパク質にG69E、T116A、及びA183Sの変異を有し、HNタンパク質にA262T、G264R、及びK461Gの変異を有し、Pタンパク質にL511F変異を有し、Lタンパク質にN1197S及びK1795E変異を有するF遺伝子欠失(ΔF)型センダイウイルスベクターであって、上記のTS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入したセンダイウイルスベクターである。ただし、センダイウイルスベクターの温度感受性変異は、これらに限定されない。
【0078】
センダイウイルスベクターは、例えば、SeV(PM)/TSΔF、SeV18+/TSΔF、又はSeV(HNL)/TSΔFであって、上記のTS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入したセンダイウイルスベクターである。ただし、センダイウイルスベクターの温度感受性変異は、これらに限定されない。
【0079】
細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、温度感受性センダイウイルスベクターと温度非感受性センダイウイルスベクターとの組み合わせであってもよい。あるいは、細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、温度感受性センダイウイルスベクターのみであり、温度非感受性センダイウイルスベクターを含まなくともよい。例えば、細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、TS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入した温度感受性センダイウイルスベクターのみであり、温度非感受性センダイウイルスベクターを含まなくともよい。例えば、細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、TS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入した温度感受性センダイウイルスベクターと同じ以上温度感受性を有するセンダイウイルスベクターのみであり、温度非感受性センダイウイルスベクターを含まなくともよい。例えば、細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、TS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入した温度感受性センダイウイルスベクターと同じ以上温度感受性を有するセンダイウイルスベクターのみであり、TS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入した温度感受性センダイウイルスベクターより温度感受性が低いセンダイウイルスベクターを含まなくともよい。
【0080】
細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、任意のリプログラミング因子を搭載する。細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、例えば、KLFのRNA、OCTのRNA、及びSOXのRNAをこの順序で含み、MYCのRNAを含まない温度感受性センダイウイルスベクターと、MYCのRNAを含み、KLFのRNA、OCTのRNA、及びSOXのRNAを含まない温度感受性センダイウイルスベクターと、の組み合わせである。ただし、センダイウイルスベクターに搭載するリプログラム因子の数、組み合わせ、及び順序は任意であり、特に限定されない。
【0081】
細胞に導入されるセンダイウイルスベクターは、KLFのRNAを含み、OCTのRNA及びSOXのRNAを含まないセンダイウイルスベクターを含んでいてもよい。KLFのRNAを含み、OCTのRNA及びSOXのRNAを含まないセンダイウイルスベクターは、温度感受性センダイウイルスベクターであってもよいし、温度非感受性センダイウイルスベクターであってもよい。
【0082】
KLFのRNA、OCTのRNA、及びSOXのRNAを含む温度感受性センダイウイルスベクターは、例えば、Mタンパク質にG69E、T116A、及びA183Sの変異を有し、HNタンパク質にA262T、G264R、及びK461Gの変異を有し、Pタンパク質にL511F変異を有し、Lタンパク質にN1197S及びK1795E変異を有するF遺伝子欠失型センダイウイルスベクターであって、上記のTS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を有するセンダイウイルスベクターである。温度感受性変異は、例えばTS7又はTS12、あるいはTS12である。
【0083】
KLFのRNA、OCTのRNA、及びSOXのRNAを含む温度感受性センダイウイルスベクターは、例えば、SeV(PM)KOS/TS7ΔF又はSeV(PM)KOS/TS12ΔFであり、あるいはSeV(PM)KOS/TS12ΔFである。
【0084】
MYCのRNAを含む温度感受性センダイウイルスベクターは、例えば、Mタンパク質にG69E、T116A、及びA183Sの変異を有し、HNタンパク質にA262T、G264R、及びK461Gの変異を有し、Pタンパク質にL511F変異を有し、Lタンパク質にN1197S及びK1795E変異を有するF遺伝子欠失型センダイウイルスべクターであって、上記のTS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を有するセンダイウイルスベクターである。温度感受性変異は、例えばTS15である。
【0085】
MYCのRNAを含む温度感受性センダイウイルスベクターは、例えば、SeV(HNL)MYC/TS12ΔF、SeV(HNL)MYC/TS13ΔF、又はSeV(HNL)MYC/TS15ΔFであり、あるいはSeV(HNL)MYC/TS15ΔFである。
【0086】
KLFのRNAを含み、OCTのRNA及びSOXのRNAを含まないセンダイウイルスベクターは、例えば、Mタンパク質にG69E、T116A、及びA183Sの変異を有し、HNタンパク質にA262T、G264R、及びK461Gの変異を有し、Pタンパク質にL511F変異を有し、Lタンパク質にN1197S及びK1795E変異を有するF遺伝子欠失型センダイウイルスベクターである。KLFのRNAを含み、OCTのRNA及びSOXのRNAを含まないセンダイウイルスベクターは、例えば、上記のTS7、TS12、TS13、TS14、又はTS15の変異を導入したセンダイウイルスベクターより温度感受性が弱く、所定の温度以上でもKLF遺伝子を発現可能である。
【0087】
KLFのRNAを含み、OCTのRNA及びSOXのRNAを含まないセンダイウイルスベクターは、例えば、SeV18+KLF4/TSΔFである。
【0088】
複数種類のセンダイウイルスベクターを細胞に導入する際には、例えば、複数種類のセンダイウイルスベクターを同時に細胞に導入する。あるいは、ある種類のセンダイウイルスベクターを細胞に導入してから、48時間以内に、全ての種類のセンダイウイルスベクターを細胞に導入することが好ましい。
【0089】
細胞を感染させる際のセンダイウイルスベクターの感染多重度(MOI)は、例えば、0.1以上である。また、MOIは、例えば、100以下である。
【0090】
細胞をセンダイウイルスベクターに感染させる際の温度は、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸の安定性が低下する所定の温度未満、つまり、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸が安定である温度であってもよいし、所定の温度以上であってもよい。センダイウイルスベクターが温度感受性センダイウイルスベクターのみであり、温度非感受性センダイウイルスベクターを含まない場合、細胞をセンダイウイルスベクターに感染させる際の温度は、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸の安定性が低下する所定の温度より低い温度、つまり、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸が安定である温度であることが好ましい。
【0091】
リプログラミング因子を導入される細胞は、接着培養されていてもよいし、浮遊培養されていてもよい。
【0092】
リプログラミング因子を導入される体細胞は、Matrigel(Corning)、CELLstart(登録商標、ThermoFisher)、Laminin511(iMatrix-511、nippi)、ファイブロネクチン、及びビトロネクチン等の基底膜マトリックスを用いて、フィーダーフリーで培養されていてもよい。
【0093】
リプログラミング因子を導入される細胞が培養される培地としては、例えば、Primate ES Cell Medium(ReproCELL)、Stemfit AK02N、Stemfit AK03(Ajinomoto)、及びTeSR-E8(STEMCELL Technologies)等のヒトES/iPS培地等の幹細胞培地を使用可能である。幹細胞培地は、例えば、ディッシュ、ウェル、又はチューブ等の培養器に入れられる。
【0094】
細胞をセンダイウイルスベクターに感染させた後、少なくとも2日、あるいは2日以上10日以下、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸の安定性が低下する所定の温度より低い温度、つまり、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸が安定である温度で細胞を培養してもよい。その後、所定の温度以上で細胞を培養してもよい。所定の温度以上で細胞を培養する間、例えば2日に1回、培地を交換してもよい。
【0095】
細胞をセンダイウイルスベクターに感染させた後、少なくとも2日、あるいは2日以上10日以下、例えば、4.0℃以上であり、37.0℃未満の温度で細胞を培養してもよい。その後、温度を上昇させ、36.5℃以上であり、40.0℃以下の温度で細胞を培養してもよい。温度は1回で上げてもよいし、段階的に上げてもよい。温度を上昇させた後、細胞を培養する間、例えば2日に1回、培地を交換してもよい。
【0096】
細胞をセンダイウイルスベクターに感染させた後、幹細胞様のコロニーが現れ始めるまで、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸の安定性が低下する所定の温度未満、つまり、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸が安定である温度で細胞を培養してもよい。幹細胞様のコロニーが現れ始めた後、所定の温度以上で細胞を培養してもよい。所定の温度以上で細胞を培養する間、例えば2日に1回、培地を交換してもよい。
【0097】
細胞をセンダイウイルスベクターに感染させた後、幹細胞様のコロニーが現れ始めるまで、例えば、4.0℃以上であり、37.0℃未満の温度で細胞を培養してもよい。幹細胞様のコロニーが現れ始めた後、温度を上昇させ、36.5℃以上であり、40.0℃以下の温度で細胞を培養してもよい。温度は1回で上げてもよいし、段階的に上げてもよい。温度を上昇させた後、細胞を培養する間、例えば2日に1回、培地を交換してもよい。
【0098】
細胞にリプログラミング因子を導入し、細胞を培養した後、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種する継代を少なくとも1回実行してもよい。継代することにおいて、リプログラミング因子を導入された細胞のクローン同士を混合してもよい。継代することにおいて、リプログラミング因子を導入された細胞の異なるクローン同士を混合してもよい。その後、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代することを、複数回実施してもよい。幹細胞が樹立するまで、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収した混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代してもよい。なお、回収した混じり合った細胞の全てを培地に播種してもよい。
【0099】
ここで、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代するとは、例えば、リプログラミング因子を導入された細胞を、遺伝子発現状態で区別することなく継代することをいう。例えば、継代時に、リプログラミング因子を導入された細胞を、遺伝子発現状態で区別することなく、同じ培養器に播種してもよい。あるいは、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代するとは、例えば、リプログラミング因子を導入された細胞を、リプログラミングの程度で区別することなく継代することをいう。例えば、継代時に、リプログラミング因子を導入された細胞を、リプログラミングの程度で区別することなく、同じ培養器に播種してもよい。
【0100】
あるいは、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代するとは、例えば、リプログラミング因子を導入された細胞を、形態で区別することなく継代することをいう。例えば、継代時に、リプログラミング因子を導入された細胞を、形態で区別することなく、同じ培養器に播種してもよい。あるいは、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代するとは、例えば、リプログラミング因子を導入された細胞を、大きさで区別することなく継代することをいう。例えば、継代時に、リプログラミング因子を導入された細胞を、大きさで区別することなく、同じ培養器に播種してもよい。
【0101】
またあるいは、リプログラミング因子を導入された細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代するとは、リプログラミング因子を導入された細胞をクローニングすることなく継代することをいう。例えば、クローニングすることなく継代する場合、リプログラミング因子を導入された細胞が形成するコロニーをピックアップしなくともよい。例えば、クローニングすることなく継代する場合、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する複数のコロニーを互いに分離しなくともよい。例えば、継代時に、複数の異なるコロニーを形成した細胞同士を混合して、同じ培養器に播種してもよい。また、例えば、クローニングすることなく継代する場合、リプログラミング因子を導入された細胞が形成する単一のコロニーをクローニングしなくともよい。例えば、継代時に、コロニー同士を混合して、同じ培養器に播種してもよい。
【0102】
例えば、リプログラミング因子を導入された細胞が接着培養されている場合、接着培養されている細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代してもよい。例えば、継代時に、培養器から細胞を剥離し、剥離して混じり合った細胞の少なくとも一部を同じ培養器に播種してもよい。例えば、剥離液で培養器から細胞を剥がし、剥がして混じり合った細胞全体を継代してもよい。例えば、コロニーを形成していない細胞を継代してもよい。リプログラミング因子を導入された細胞が浮遊培養されている場合、浮遊培養されている細胞全体を継代してもよい。
【0103】
リプログラミング因子を導入された細胞を継代する際、細胞は低濃度で培地あるいは培養器に播種されてもよい。ここで、低濃度とは、例えば、1cell/cm以上であり、0.25×10cells/cm以下、1.25×103cells/cm以下、0.25×10cells/cm以下、0.25×10cells/cm以下、あるいは0.25×10cells/cm以下である。あるいは、低濃度とは、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、あるいは2個以下の細胞同士が接触可能であり、11個以上の細胞同士が接触しない濃度である。なお、10個以下の細胞同士が接触した細胞塊が複数あってもよい。あるいは、細胞容器底面全体が細胞で覆われた状態を100%コンフルエントとして、低濃度とは、5%以下コンフルエント、4%以下コンフルエント、3%以下コンフルエント、2%以下コンフルエント、1%以下コンフルエント、0.5%以下コンフルエント、0.1%以下コンフルエント、0.05%以下コンフルエント、あるいは0.01%以下コンフルエントである。またあるいは、低濃度とは、例えば、播種された細胞においてシングルセル同士が接触しない濃度である。例えば、ウェルプレートのウェルに、シングルセルを播種してもよい。ウェルプレートは、12ウェルプレートや96ウェルプレートであってもよい。本発明者らの知見によれば、リプログラミング因子を導入された細胞を継代する際、低濃度で細胞を培地に播種することにより、細胞から誘導される多能性幹細胞におけるセンダイウイルスの残存を抑制することが可能である。誘導される多能性幹細胞において、センダイウイルスが残存する細胞の割合は、例えば4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下あるいは0%である。
【0104】
温度感受性センダイウイルスベクターを用いた場合、継代後、温度感受性センダイウイルスベクターのウイルス核酸の安定性が低下する所定の温度以上で細胞を培養してよい。継代後、例えば、36.5℃以上38.0℃未満の温度で細胞を培養する。継代後、例えば、細胞間接着が開始するまで36.5℃以上38.0℃未満の温度で細胞を培養し、細胞間接着が開始した後、細胞間接着が開始するまでより高い温度、例えば、37.5℃以上であり、42.0℃以下の温度で細胞を培養してもよい。継代後、細胞間接着が開始する前から、37.5℃以上であり、42.0℃以下の温度で細胞を培養してもよい。
【0105】
リプログラミング因子を導入された細胞は、閉鎖された培養器内で培養され、継代されてもよい。閉鎖された培養器は、例えば、外部と気体、ウイルス、微生物及び不純物等の交換をしない。また、リプログラミング因子を導入された細胞を二次元培養で拡大培養してもよいし、三次元培養で拡大培養してもよい。
【0106】
リプログラミング因子を導入された細胞が多能性幹細胞に誘導され、多能性幹細胞が樹立された後、接着培養されている細胞全体を、多能性幹細胞として凍結保存してもよい。例えば、剥離液で培養器から剥がれた細胞全体を多能性幹細胞として凍結保存してもよい。また、リプログラミング因子を導入された細胞が多能性幹細胞に誘導された後、浮遊培養されている細胞全体を、多能性幹細胞として凍結保存してもよい。
【0107】
誘導された多能性幹細胞は、ES細胞に類似する扁平なコロニーを形成し、アルカリホスファターゼを発現し得る。誘導された多能性幹細胞は、未分化細胞マー力一であるNanog、OCT4、及びSOX2等を発現し得る。誘導された多能性幹細胞は、TERTを発現し得る。誘導された多能性幹細胞は、テ口メラーゼ活性を示し得る。
【0108】
また、細胞が多能性幹細胞に誘導されたか否かは、フローサイトメータで、未分化であることを示す細胞表面マーカーであるTRA-1-60、TRA-1-81、SSEA-1、及びSSEA5から選択される少なくとも一つの表面マーカーが陽性であるか否かを分析することにより行ってもよい。TRA-1-60は、iPS/ES細胞に特異的な抗原である。iPS細胞はTRA-1-60陽性画分からのみできることから、TRA-1-60陽性細胞はiPS細胞の種と考えられる。
【0109】
細胞にオリゴデンドロサイトへの誘導因子を導入する方法は、特に限定されない。誘導因子は、例えば、エレクトロポレーション法により細胞に導入される。あるいは、誘導因子は、例えば、リポフェクション法により細胞に導入される。また、あるいは、細胞には、例えば、ウイルスベクターを用いて誘導因子を導入する。誘導因子は、インテグレーションフリーで細胞に導入されてもよい。
【0110】
オリゴデンドロサイトへの誘導因子を導入される細胞は、接着培養されていてもよいし、浮遊培養されていてもよい。
【0111】
オリゴデンドロサイトへの誘導因子を導入される体細胞は、Matrigel(Corning)、CELLstart(登録商標、ThermoFisher)、Laminin511(iMatrix-511、nippi)、ファイブロネクチン、及びビトロネクチン等の基底膜マトリックスを用いて、フィーダーフリーで培養されていてもよい。
【0112】
オリゴデンドロサイトへの誘導因子を導入される細胞が培養される培地としては、例えば、Stem fit (味の素)、mTeSR (Stem cell technologies)等の幹細胞培地を使用可能である。
【0113】
誘導因子を導入された細胞を浮遊培養あるいは三次元培養する場合、例えば、ゲル培地が使用される。ゲル培地は、例えば、幹細胞培地にジェランガムを添加することにより調製される。
【0114】
ゲル培地は、ジェランガム、ヒアルロン酸、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物を含んでいてもよい。また、ゲル培地は、メチルセルロースを含んでいてもよい。メチルセルロースを含むことにより、細胞同士の凝集がより抑制される。
【0115】
あるいは、ゲル培地は、poly(glycerol monomethacrylate) (PGMA)、poly(2-hydroxypropyl methacrylate) (PHPMA)、Poly (N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)、amine terminated、carboxylic acid terminated、maleimide terminated、N-hydroxysuccinimide (NHS) ester terminated、triethoxysilane terminated、Poly (N-isopropylacrylamide-co-acrylamide)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-acrylic acid)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-butylacrylate)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-methacrylic acid)、Poly (N-isopropylacrylamide-co-methacrylic acid-co-octadecyl acrylate)、及びN-Isopropylacrylamideから選択される少なくとも1つの温度感受性ゲルを含んでいてもよい。
【0116】
ゲル培地は、例えば、basic fibroblast growth factor(bFGF)等の成長因子を含んでいてもよいし、含まなくともよい。あるいは、ゲル培地は、bFGF等の成長因子を、400μg/L以下、40μg/L以下、あるいは10μg/L以下の低濃度で含んでいてもよい。
【0117】
また、ゲル培地は、TGF-βを含んでいてもよいし、含まないか、TGF-βを600μg/L以下、300μg/L以下、あるいは100μg/L以下の低濃度で含んでいてもよい。
【0118】
ゲル培地は、撹拌されなくともよい。また、ゲル培地は、フィーダー細胞を含まなくともよい。
【0119】
ゲル培地は、カドヘリン、ラミニン、フィブロネクチン、及びビトロネクチンからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでいてもよい。
【0120】
実施形態に係るオリゴデンドロサイト及びその前駆細胞の作製方法によれば、細胞に誘導因子を導入してから、例えば、30日以内、20日以内、10日以内、あるいは7日以内に、細胞をオリゴデンドロサイトに誘導することが可能である。オリゴデンドロサイトの前駆細胞のような未成熟なオリゴデンドロサイト及び成熟なオリゴデンドロサイトは、O4、PLP(Myelin Proteolipid Protein)1から選択される少なくとも1つを発現する。成熟したオリゴデンドロサイトは、MOG(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein)及びPDGFRα(血小板由来増殖因子受容体α)を発現する。
【実施例
【0121】
(実施例1、実施例2)
ラミニン511をコートしたディッシュを、多能性幹細胞誘導用のディッシュとした。また、ヒト末梢血単核球細胞を血液培地に懸濁し、血球計算を用いて単核球細胞の数を測定して、血液培地における単核球細胞数を調整した。その後、単核球細胞を、37℃で1日間から7日間、多能性幹細胞誘導用のディッシュ上で二次元培養した。
【0122】
二次元培養されている単核球細胞に、SeV(PM)hKOS/TS12ΔFと、SeV(HNL)hC-Myc/TS15ΔFと、をMOIが5になるよう添加し、多能性幹細胞誘導用のディッシュを34℃のインキュベーターに収容して、細胞を培養した。インフェクションから2日後、血液培地をiPS細胞培地に交換した。その後、iPS細胞培地を用いて培地交換を2日に1回行った。途中から、温度を37℃、38℃に段階的に上げた。
【0123】
インフェクションから8日後、幹細胞様の細胞塊が生じた。インフェクションから14日目にほぼ全ての細胞がTRA1-60陽性細胞となり、iPS細胞様の形態を示した。インフェクションから14日後、ディッシュに細胞剥離剤であるトリプルセレクトを添加し、室温で1分静置してから、細胞を含む溶液を吸引し、細胞を含む溶液を37℃で5分から10分インキュベートした。その後、iPS細胞培地を添加し、細胞を含むiPS細胞培地を15mLチューブに回収した。血球計算を用いて細胞数を測定し、細胞を含む溶液の濃度を調整し、濃度が0.25×104cells/cm2以下となるよう細胞をウェルプレートに播種して1回目の継代をした。実施例1では、1回目の継代の際、ウェルプレートから全ての細胞を剥離させ、剥離して混じり合った細胞を、区別なく次のウェルプレートに播種した。これに対し、実施例2では、1回目の継代の際、コロニーピックして、クローニングした。なお、実施例1及び実施例2ともに、継代の際、11個以上の細胞同士が接触しないよう、細胞を播種した。
【0124】
次に、ウェルディッシュを37℃のインキュベーターに収容して、細胞を二次元培養した。細胞が分裂し始めてから、培養温度を38℃に上げた。その後、実施例1及び実施例2ともに、細胞が60%から80%コンフルエントになるごとに全ての細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代した。2回目以降の継代時も、濃度が0.25×10cells/cm以下となるよう細胞をウェルプレートに播種した。この際も、11個以上の細胞同士が接触しなかった。
【0125】
図1に示すように、抗センダイウイルス抗体を用いて継代を1回のみ行った細胞を染色し、実施例1に係る細胞に残存するセンダイウイルスをフローサイトメーターで評価したところ、細胞内のセンダイウイルスは消滅していた。図2に示すように、PCRによっても、実施例1に係る細胞に残存するセンダイウイルスは検出されたなかった。従来のように、11個以上の細胞同士が接着する高い濃度で細胞を播種した場合は、細胞にセンダイウイルスが残存していた。得らえたTRA1-60陽性細胞の免疫染色写真を図3に示す。
【0126】
また、細胞内のセンダイウイルスが消滅してから5日後に形成されたコロニー数を数えた。さらに、コロニー数を播種した細胞数で割り、クローナルエフィシエンシーを算出した。3回試験した結果を図4に示す。培地にmTeSR Plusを用いて1回目の継代時に全ての細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の一部を培地に播種して継代した場合、クローナルエフィシエンシーは約5%から約8%であり、ばらつきが小さかった。培地にmTeSR Plusを用いて1回目の継代の際にコロニーピックしてクローニングした場合、クローナルエフィシエンシーは1%未満になるときと、約6%になるときがあり、クローナルエフィシエンシーにばらつきがあった。培地にStemFitを用いて1回目の継代時に全ての細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の一部を培地に播種して継代した場合、クローナルエフィシエンシーは約10%から約15%であり、ばらつきが小さかった。培地にStemFitを用いて1回目の継代の際にコロニーピックしてクローニングした場合、クローナルエフィシエンシーは1%未満になるときと、約16%になるときがあり、クローナルエフィシエンシーにばらつきがあった。
【0127】
したがって、1回目の継代時にリプログラミング因子を導入された全ての細胞を回収し、回収して混じり合った細胞の少なくとも一部を培地に播種して継代することにより、クローナルエフィシエンシーが高くなり、かつ安定することが示された。
(実施例3)
可溶化基底膜調製品(Matrigel、Corning)でコートされたウェルディッシュを用意し、各ウェルに10nmol/mLの濃度でROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase/Rho結合キナーゼ)阻害剤(Selleck)を含むフィーダーフリー培地(mTeSR(登録商標)1、Stemcell Technologies)を入れた。
【0128】
ヒトiPS細胞を組織・培養細胞の剥離/分離/分散溶液(Accutase、Innovative Cell Technologies)で分散させ、ウェルディッシュに播種した。その後、iPS細胞を、フィーダーフリー培地中で、5%二酸化炭素濃度及び20%酸素濃度の気体条件下で、24時間培養した。
【0129】
剥離剤を用いてiPS細胞をウェルから剥がし、シングルセルの懸濁液を調製した。次に、Human Stem Cell Nucleofectorキット(登録商標、LONZA)及びエピソーマルプラスミドを用いて、エレクトロポレーションにより、誘導因子として、OLIG2、SOX10、ASCL1、NKX2.2をiPS細胞に導入した。その後、誘導因子を導入された細胞を、ウェルディッシュに播種し、mTeSRで培養した。
【0130】
細胞に誘導因子を導入して3日目に、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。オリゴデンドロサイト用培地は、DMEM/F12、N2(1X)、B27(1X)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1X)、NEAA(1X)、インシュリン(25μg/mL、Sigma)、PDGF-AA(10ng/ml、PeproTech)、IGF(10ng/mL、PeproTech)、NT3(1ng/mL、PeproTech)、ビオチン(100ng/mL、Sigma)、及びcAMP(1μmol/L、Sigma)より調製した。さらに5日目にも、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。7日目に、ウェル中の培地を全て新鮮なオリゴデンドロサイト用培地に交換した。その後、ヒト線維芽細胞又はヒトグリア細胞の上に誘導因子を導入された細胞を播種し、21日目まで誘導因子を導入された細胞を培養した。誘導因子を導入されてから7日目の細胞を、抗O4抗体を用いて染色した。また、誘導因子を導入されてから21日目の細胞を、抗O4抗体、抗PLP1抗体、及び抗MOG抗体のそれぞれを用いて染色した。
【0131】
図5に示すように、誘導因子を導入されてから7日目の細胞は、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞のマーカーであるO4を発現していた。また、図6に示すように、誘導因子を導入されてから21日目の細胞は、O4、PLP1、及びMOGを発現していた。なお、誘導因子を導入されるiPS細胞が、実施例1で作製したiPS細胞であっても、実施例2で作製したiPS細胞であっても、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞のマーカーの発現は確認された。
【0132】
(実施例4)
誘導因子としてOLIG2、SOX10、ASCL1、NKX6.1を用いた以外は、実施例3と同様に、iPS細胞に誘導因子を導入した。図7に示すように、誘導因子を導入された細胞は、O4を発現していた。
【0133】
(実施例5)
誘導因子としてOLIG2、SOX10、ASCL1を用いた以外は、実施例3と同様に、iPS細胞に誘導因子を導入した。図8(a)に示すように、誘導因子を導入された細胞は、O4を発現していた。
【0134】
(実施例6)
誘導因子としてOLIG2、SOX10を用いた以外は、実施例3と同様に、iPS細胞に誘導因子を導入した。図8(b)に示すように、誘導因子を導入された細胞は、O4を発現していた。
【0135】
(実施例7)
誘導因子としてOLIG2、ASCL1を用いた以外は、実施例3と同様に、iPS細胞に誘導因子を導入した。図8(c)に示すように、誘導因子を導入された細胞は、O4を発現していた。
【0136】
(実施例8)
誘導因子としてOLIG2を用いた以外は、実施例3と同様に、iPS細胞に誘導因子を導入した。図8(d)に示すように、誘導因子を導入された細胞は、O4を発現していた。
【0137】
(実施例9)
誘導因子としてOLIG2、NKX2.2を用いた以外は、実施例3と同様に、iPS細胞に誘導因子を導入した。図8(e)に示すように、誘導因子を導入された細胞は、オリゴデンドロサイト及びその前駆細胞のマーカーであるO4を発現していた。
【0138】
(実施例10)
可溶化基底膜調製品(Matrigel、Corning)でコートされたウェルディッシュを用意し、各ウェルに培地を入れた。さらに、Ficoll(GE)で分離したヒト成人末梢血由来単核球を、ウェルディッシュに播種した。その後、単核球を、37℃で1日間から7日間、血液培地(StemSpan、登録商標、SFEM II、STEMCELL TECHNOLOGIES)で培養した。培地は、20ng/mLのFLT3、10ng/mLのTPO、50ng/mLのIL6、10ng/mLのGCSF、50ng/mLのSCF、20ng/mLのIL3、10ng/mLのGM-CSFを含んでいた。5%二酸化炭素濃度及び20%酸素濃度の気体条件下で、ディッシュ上で培養した。
【0139】
単核球をウェルから回収し、シングルセルの懸濁液を調製した。次に、CD34+細胞用Nucleofectorキット(登録商標、LONZA)及びエピソーマルプラスミドを用いて、エレクトロポレーションにより、誘導因子としてOLIG2、SOX10、ASCL1、NKX2.2を単核球に導入した。その後、誘導因子を導入された細胞を、ウェルディッシュに播種し、血液培地で培養した。
【0140】
細胞に誘導因子を導入して3日目に、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。さらに5日目にも、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。7日目に、ウェル中の培地を全て新鮮なオリゴデンドロサイト用培地に交換した。その後、ヒト線維芽細胞の上に誘導因子を導入された細胞を播種し、28日目まで誘導因子を導入された細胞を培養した。誘導因子を導入されてから28日目の細胞を、抗O4抗体、抗PLP1抗体、及び抗MOG抗体のそれぞれを用いて染色した。図9に示すように、誘導因子を導入されてから28日目の細胞は、O4、PLP1、及びMOGを発現していた。
【0141】
(実施例11)
可溶化基底膜調製品(Matrigel、Corning)でコートされたウェルディッシュを用意し、各ウェルに培地(10%FBS含有DMEM)を入れた。さらに、ヒト新生児線維芽細胞を、ウェルディッシュに播種した。その後、線維芽細胞を、37℃で1日間から7日間、5%二酸化炭素濃度及び20%酸素濃度の気体条件下で、ディッシュ上で培養した。
【0142】
剥離剤を用いて線維芽細胞をウェルから剥がし、シングルセルの懸濁液を調製した。次に、Human Dermal Fibroblast Nucleofectorキット(登録商標、LONZA)及びエピソーマルプラスミドを用いて、エレクトロポレーションにより、誘導因子としてOLIG2、SOX10、ASCL1、NKX2.2を線維芽細胞に導入した。その後、誘導因子を導入された細胞を、ウェルディッシュに播種し、10%FBS DMEM培地で培養した。
【0143】
細胞に誘導因子を導入して3日目に、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。さらに5日目にも、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。7日目に、ウェル中の培地を全て新鮮なオリゴデンドロサイト用培地に交換した。その後、ヒト線維芽細胞の上に誘導因子を導入された細胞を播種し、28日目まで誘導因子を導入された細胞を培養した。誘導因子を導入されてから28日目の細胞を、抗O4抗体、抗PLP1抗体、及び抗MOG抗体のそれぞれを用いて染色した。図10に示すように、誘導因子を導入されてから28日目の細胞は、O4、PLP1、及びMOGを発現していた。
【0144】
(実施例12)
可溶化基底膜調製品(Matrigel、Corning)でコートされたウェルディッシュを用意し、各ウェルに培地を入れた。さらに、ヒト成人末梢血由来T細胞を、ウェルディッシュに播種した。その後、T細胞を、37℃で1日間から7日間、5%二酸化炭素濃度及び20%酸素濃度の気体条件下で、ディッシュ上で拡大培養した。なお、拡大培養は、必ずしもしなくともよい。30U/mLのインターロイキン2及びヒトT細胞増殖刺激用ビーズ(Dynabeas CD3/CD28、BD)を添加した培地無血清培地(X-VIVO10、Lonza)を用いた。
【0145】
T細胞をウェルから回収し、シングルセルの懸濁液を調製した。次に、Tcell electroporationキット(登録商標、LONZA)及びエピソーマルプラスミドを用いて、エレクトロポレーションにより、誘導因子としてOLIG2、SOX10、ASCL1、NKX2.2をT細胞に導入した。その後、誘導因子を導入された細胞を、ウェルディッシュに播種し、30U/mLのインターロイキン2及びヒトT細胞増殖刺激用ビーズ(Dynabeas CD3/CD28、BD)を添加した無血清培地(X-VIVO10、Lonza)で培養した。
【0146】
細胞に誘導因子を導入して3日目に、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。さらに5日目にも、ウェルにオリゴデンドロサイト用培地を追加した。7日目に、ウェル中の培地を全て新鮮なオリゴデンドロサイト用培地に交換した。その後、ヒト線維芽細胞の上に誘導因子を導入された細胞を播種し、28日目まで誘導因子を導入された細胞を培養した。誘導因子を導入されてから28日目の細胞を、抗O4抗体、抗PLP1抗体、及び抗MOG抗体のそれぞれを用いて染色した。図11に示すように、誘導因子を導入されてから28日目の細胞は、O4、PLP1、及びMOGを発現していた。
【0147】
(実施例13)
誘導因子にp53DDを加えた以外は、実施例3と同様に、ヒトiPS細胞からオリゴデンドロサイトを誘導した。結果を図12に示す。p53DDを加えると、O4陽性を示す細胞の割合が上昇した。
【0148】
(実施例14)
誘導因子にRB遺伝子のshRNAを加えた以外は、実施例3と同様に、ヒトiPS細胞からオリゴデンドロサイトを誘導した。結果を図12に示す。Rb Shを加えると、O4陽性を示す細胞の割合が上昇した。
【0149】
(実施例15)
誘導因子にc-MYCを加えた以外は、実施例3と同様に、ヒトiPS細胞からオリゴデンドロサイトを誘導した。結果を図12に示す。c-MYCを加えると、O4陽性を示す細胞の割合が上昇した。
【0150】
(実施例16)
誘導因子にp53DDを加えた以外は、実施例10と同様に、ヒト成人末梢血由来単核球からオリゴデンドロサイトを誘導した。結果を図12に示す。p53DDを加えると、O4陽性を示す細胞の割合が上昇した。
【0151】
(実施例17)
誘導因子にRB Shを加えた以外は、実施例10と同様に、ヒト成人末梢血由来単核球からオリゴデンドロサイトを誘導した。結果を図12に示す。Rb Shを加えると、O4陽性を示す細胞の割合が上昇した。
【0152】
(実施例18)
誘導因子にc-MYCを加えた以外は、実施例10と同様に、ヒト成人末梢血由来単核球からオリゴデンドロサイトを誘導した。結果を図12に示す。c-MYCを加えると、O4陽性を示す細胞の割合が上昇した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12