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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】計測装置、計測システム及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/10 20060101AFI20240813BHJP
   G01F 1/68 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01P5/10 A
G01F1/68 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020085465
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021179383
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔1〕 公開日:令和01年5月15日(開催日 令和1年5月15日~17日) 集会名、開催場所:5th International Conference on Polygeneration(ICP 2019) I▲2▼CNER(カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所) 1号館 国立大学法人九州大学 伊都キャンパス <資 料>ICP2019 開催概要ウェブページ及びプログラム <資 料>ICP2019 ポスターセッション 発表資料 〔2〕 発行日:令和1年9月2日 刊行物:2019年度日本機械学会年次大会 講演論文集 一般社団法人 日本機械学会 発行 <資 料>2019年度日本機械学会 講演論文集 掲載論文 〔3〕 公開日:令和01年9月10日(開催日 令和1年9月8日~11日) 集会名、開催場所:2019年度日本機械学会年次大会 国立大学法人秋田大学 手形キャンパス 一般教育2号館 講演室A3 <資 料>2019年度日本機械学会概要ウェブページ及びプログラム
(73)【特許権者】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 修一
(72)【発明者】
【氏名】村上 政幸
(72)【発明者】
【氏名】宮田 一司
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205310(JP,A)
【文献】中国実用新案第202420579(CN,U)
【文献】特開2015-148508(JP,A)
【文献】特開平04-339218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/10 ~ 5/12
G01F 1/68 ~ 1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の配管軸方向に異なる少なくとも2以上の地点の温度を取得する温度取得部と、
前記配管の壁部の外側表面を周方向に一様に加熱する加熱装置により、前記配管の壁部の外側表面に与えられる加熱量を取得する加熱量取得部と、
記憶部に記憶された情報であり、事前に前記配管の形状を再現したモデルを用いてコンピュータによる計算が行われることにより得られたパラメータについての情報であるパラメータ情報を取得するパラメータ取得部と、
取得した前記配管の壁部の外側表面の地点の温度差を、取得した前記加熱量で除した値と前記パラメータ情報とに基づいて算出された熱伝導率に基づいて、前記流体の流速を算出する演算部と、
前記演算部により算出された前記流速を出力する出力部と
を備える計測装置。
【請求項2】
前記流体は、前記配管の上流から下流に流れ、
前記温度取得部は、前記加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における2以上の異なる地点の温度を取得する
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記温度取得部が取得した2以上の地点のうち2つの地点の温度差を、取得した前記加熱量で除すことにより得られる値に基づいて熱伝達率を算出する熱伝達率算出部を更に備え、
前記熱伝達率算出部により算出された複数の熱伝達率に基づいて、前記流体の前記流速を算出する
請求項1又は請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記温度取得部は、異なる2つの地点の温度を取得する
請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記温度取得部は、異なる3以上の地点の温度を取得し、
前記熱伝達率算出部は、前記温度取得部が取得した異なる3以上の地点のうち、2つの地点の温度差を、取得した前記加熱量で除すことにより得られる値に基づいて熱伝達率を算出し、
前記演算部は、前記熱伝達率算出部により算出された複数の熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出する
請求項3に記載の計測装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記熱伝達率算出部により算出された複数の熱伝達率の平均値に基づいて、前記流体の流速を算出する
請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記熱伝達率算出部は、前記温度取得部により取得された2つの地点の温度差を、取得した前記加熱量で除すことにより得られる値の対数を変数とする二次関数の式に基づいて、前記熱伝達率を算出する
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置により、前記配管の壁部の外側表面に与えられる加熱量を制御する加熱量制御部を更に備え、
前記加熱量制御部は、前記温度取得部が温度を取得する2以上の地点の温度差が所定値以上であるよう制御する
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記加熱量制御部は、前記温度取得部が温度を取得する2以上の地点の温度差が10℃以上であるよう制御する
請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記配管の壁部の外側表面の温度を測定する温度測定装置と、
前記配管の壁部の外側表面を加熱する前記加熱装置と、
前記温度測定装置により測定された前記配管の壁部の外側表面の温度と、前記加熱装置により前記配管の壁部の外側表面に与えられた前記加熱量とに基づき、前記配管に流れる前記流体の前記流速を算出する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の計測装置と
を備える計測システム。
【請求項11】
流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の配管軸方向に異なる少なくとも2以上の地点の温度を取得する温度取得ステップと、
前記配管の壁部の外側表面を周方向に一様に加熱する加熱装置により、前記配管の壁部の外側表面に与えられる加熱量を取得する加熱量取得ステップと、
記憶部に記憶された情報であり、事前に前記配管の形状を再現したモデルを用いてコンピュータによる計算が行われることにより得られたパラメータについての情報であるパラメータ情報を取得するパラメータ取得ステップと、
取得した前記配管の壁部の外側表面の地点の温度差を、取得した前記加熱量で除した値と前記パラメータ情報とに基づいて算出された熱伝導率に基づいて、前記流体の流速を算出する演算ステップと、
前記演算ステップにより算出された前記流速を出力する出力ステップと
を備える計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測システム及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管に流れる流体の流量を計測する場合、配管を破壊せずに配管の外部から計測する技術として、ヒータ法を用いて流体の流量を計測する技術があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-72424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような技術によれば、有限要素法による理論式のフィッティングを行っており、温度の計測に要する計測点が多く、計測時間も長くかかっている。すなわち、従来技術による方法では、測定に時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、配管を破壊せずに配管の外部から、配管の内部を流れる流体の流速を、短時間で測定可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る計測装置は、流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の配管軸方向に異なる少なくとも2以上の地点の温度を取得する温度取得部と、前記配管の壁部の外側表面を周方向に一様に加熱する加熱装置により、前記配管の壁部の外側表面に与えられる加熱量を取得する加熱量取得部と、記憶部に記憶された情報であり、事前に前記配管の形状を再現したモデルを用いてコンピュータによる計算が行われることにより得られたパラメータについての情報であるパラメータ情報を取得するパラメータ取得部と、取得した前記配管の壁部の外側表面の地点の温度差を、取得した前記加熱量で除した値と前記パラメータ情報とに基づいて算出された熱伝導率に基づいて、前記流体の流速を算出する演算部と、前記演算部により算出された前記流速を出力する出力部とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記流体は、前記配管の上流から下流に流れ、前記温度取得部は、前記加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における2以上の異なる地点の温度を取得する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記演算部は、前記温度取得部が取得した2以上の地点のうち2つの地点の温度差を、取得した前記加熱量で除すことにより得られる値に基づいて熱伝達率を算出する熱伝達率算出部を更に備え、前記熱伝達率算出部により算出された複数の熱伝達率に基づいて、前記流体の前記流速を算出する。
【0009】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記温度取得部は、異なる2つの地点の温度を取得する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記温度取得部は、異なる3以上の地点の温度を取得し、前記熱伝達率算出部は、前記温度取得部が取得した異なる3以上の地点のうち、2つの地点の温度差を、取得した前記加熱量で除すことにより得られる値に基づいて熱伝達率を算出し、前記演算部は、前記熱伝達率算出部により算出された複数の熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出する。
【0011】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記演算部は、前記熱伝達率算出部により算出された複数の熱伝達率の平均値に基づいて、前記流体の流速を算出する。
【0012】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記熱伝達率算出部は、前記温度取得部により取得された2つの地点の温度差を、取得した前記加熱量で除すことにより得られる値の対数を変数とする二次関数の式に基づいて、前記熱伝達率を算出する。
【0013】
また、本発明の一態様に係る計測装置は、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置により、前記配管の壁部の外側表面に与えられる加熱量を制御する加熱量制御部を更に備え、前記加熱量制御部は、前記温度取得部が温度を取得する2以上の地点の温度差が所定値以上であるよう制御する。
【0014】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記加熱量制御部は、前記温度取得部が温度を取得する2以上の地点の温度差が10℃以上であるよう制御する。
【0015】
また、本発明の一態様に係る計測システムは、前記配管の壁部の外側表面の温度を測定する温度測定装置と、前記配管の壁部の外側表面を加熱する前記加熱装置と、前記温度測定装置により測定された前記配管の壁部の外側表面の温度と、前記加熱装置により前記配管の壁部の外側表面に与えられた前記加熱量とに基づき、前記配管に流れる前記流体の前記流速を算出する計測装置とを備える。
【0016】
また、本発明の一態様に係る計測方法は、流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の配管軸方向に異なる少なくとも2以上の地点の温度を取得する温度取得ステップと、前記配管の壁部の外側表面を周方向に一様に加熱する加熱装置により、前記配管の壁部の外側表面に与えられる加熱量を取得する加熱量取得ステップと、記憶部に記憶された情報であり、事前に前記配管の形状を再現したモデルを用いてコンピュータによる計算が行われることにより得られたパラメータについての情報であるパラメータ情報を取得するパラメータ取得ステップと、取得した前記配管の壁部の外側表面の地点の温度差を、取得した前記加熱量で除した値と前記パラメータ情報とに基づいて算出された熱伝導率に基づいて、前記流体の流速を算出する演算ステップと、前記演算ステップにより算出された前記流速を出力する出力ステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配管を破壊せずに配管の外部から、配管の内部を流れる流体の流速を、短時間で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る計測システムの概略機能構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るヒータ法による温度測定方法を説明するための図である。
図3】第1の実施形態に係る計測装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る演算部の機能構成の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る配管の壁部の外側表面の温度分布の一例を説明するための図である。
図6】第1の実施形態に係る計測装置の一連の動作を説明するためのフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る配管の呼び口径が50Aである場合において、コリオリ流量計の測定値と流速予測値との比較結果を説明するための図である。
図8】第1の実施形態に係る配管の呼び口径が25Aである場合において、コリオリ流量計の測定値と流速予測値との比較結果を説明するための図である。
図9】配管の上流側と下流側における、局所熱伝達率と一様熱伝達率との熱伝達率比について説明するための図である。
図10】第2の実施形態に係る計測システムの概略機能構成の一例を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る計測装置の機能構成の一例を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る演算部の機能構成の一例を示す図である。
図13】第2の実施形態に係る配管の壁部の外側表面の温度分布の一例を説明するための図である。
図14】第2の実施形態に係る計測装置の一連の動作を説明するためのフローチャートである。
図15】第3の実施形態に係る配管の壁部の外側表面の温度分布の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る計測装置10、計測システム1及び計測方法の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
[計測システム1]
図1は、第1の実施形態に係る計測システム1の概略機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、第1の実施形態に係る計測システム1の概略機能構成の一例について説明する。
【0021】
計測システム1は、配管30の内部を流れる流体Fの流速を、配管30の外側から計測する。本実施形態における流体Fとは、液体、気体及び粉体等を広く含む。流体Fとは、例えば、水や液体窒素等の液体、ガスや蒸気等の気体、セメントやポリエチレン等の粉体であってもよい。流体Fは、配管30の上流から下流へ流れる。
【0022】
計測システム1は、計測装置10と、温度測定装置20と、リングヒータ(加熱装置)40と、加熱制御装置41と、第1記憶部(記憶部)50と、第2記憶部60とを備える。
【0023】
加熱制御装置41は、リングヒータ40を介して配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱する。加熱制御装置41が、リングヒータ40を介して配管30及び、配管30の内側を流れる流体Fに与えた加熱量をヒータ加熱量Qと記載する。加熱制御装置41は、ヒータ加熱量Qを計測装置10に提供する。
なお、加熱制御装置41は、不図示の制御信号により計測装置10が制御するよう構成してもよい。
【0024】
リングヒータ40は、リング状のヒータから構成される加熱装置である。リングヒータ40は、配管30の壁部32の外側表面31に巻回して設置される。リングヒータ40は、加熱制御装置41に制御される。リングヒータ40は、加熱制御装置41から取得した制御信号に基づき、配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱する。
【0025】
なお、本実施形態においては、リングヒータ40が配管30と接触することにより配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱する場合の一例について説明するが、本実施形態はこの一例に限定されない。例えば、リングヒータ40の代わりに、不図示の加熱装置により配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱するよう構成してもよく、当該加熱装置は、例えば非接触で加熱する方法(レーザー光照射等)等により配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱するよう構成してもよい。
【0026】
温度測定装置20は、配管30の壁部32の外側表面31の温度を測定する。温度測定装置20は、2以上の地点における、配管30の壁部32の外側表面31の温度を計測する。第1温度測定装置21は、配管30の壁部32の外側表面31における第1の地点P1の温度を測定する。第2温度測定装置22は、配管30の壁部32の外側表面31における第2の地点P2の温度を測定する。第1の地点P1と第2の地点P2とは、配管30の管軸方向において異なる地点である。具体的には、第2の地点P2は、第1の地点P1よりも、流体Fが流れる上流側の地点である。第1の地点P1及び第2の地点P2は、いずれも、リングヒータ40よりも、流体Fが流れる上流側の地点である。第1温度測定装置21と、第2温度測定装置22とを区別しない場合には温度測定装置20と記載する。
【0027】
なお、温度測定装置20とは、具体的には熱電対等である。
【0028】
第1記憶部50は、情報を記憶する記憶部である。具体的には、第1記憶部50は、パラメータ情報Iを記憶する。計測装置10は、第1記憶部50からパラメータ情報Iを取得する。
【0029】
なお、本実施形態において、計測装置10は、計測装置10の外部に備えられた第1記憶部50からパラメータ情報Iを取得する構成について説明するが、本実施形態はこの一例に限定されない。例えば、第1記憶部50は、計測装置10に内蔵され、或いはネットワークを介してアクセスされる不図示の記憶装置(NAS(Network Attached Storage))により実現されてもよい。計測装置10は、NASである第1記憶部50に直接アクセスしてもよいし、第1記憶部50を管理する装置に要求することによりパラメータ情報Iを取得してもよいし、第1記憶部50を管理する装置からプッシュ通知等の形態でパラメータ情報Iを取得してもよい。
【0030】
計測装置10は、加熱制御装置41からヒータ加熱量Qを取得し、温度測定装置20から温度情報を取得し、第1記憶部50からパラメータ情報Iを取得する。この一例において、計測システム1は、第1温度測定装置21及び第2温度測定装置22により、2つの異なる地点の温度を測定する場合の一例について説明するため、計測装置10は、第1温度測定装置21から第1温度Tを取得し、第2温度測定装置22から第2温度Tを取得する。
【0031】
なお、計測装置10は、不図示の加熱量制御部を更に備えていてもよい。加熱量制御部は、配管30の壁部32の外側表面31を加熱するリングヒータ40により、配管30の壁部32の外側表面31に与えられるヒータ加熱量Qを制御する。計測装置10が加熱量制御部を備える場合、加熱量制御部は、2以上の地点(例えば、第1の地点P1及び第2の地点P2)の温度差が所定値以上であるよう制御する。具体的には、加熱量制御部は、2以上の地点の温度差が10℃以上であるよう制御する。
【0032】
計測装置10は、取得したヒータ加熱量Q、温度情報(第1温度T及び第2温度T)及びパラメータ情報Iに基づき、流体Fの流速を算出する。計測装置10は、算出した流速を出力情報Iとして出力する。計測装置10は、例えば、出力情報Iを第2記憶部60に出力する。
【0033】
第2記憶部60は、情報を記憶する記憶部である。具体的には、第2記憶部60は、計測装置10により出力された出力情報Iを記憶する。第2記憶部60は、不図示のネットワークを介して接続されていてもよいし、クラウド上の記憶部であってもよい。なお、計測装置10は、出力情報Iを第2記憶部60に出力することに代えて、出力情報Iをディスプレイ等の不図示の表示装置に表示するよう構成してもよい。
【0034】
図2は、第1の実施形態に係るヒータ法による温度測定方法を説明するための図である。同図を参照しながら、第1の実施形態に係るヒータ法による温度測定方法を説明する。
図2(A)は、配管30内を流れる流体Fの流速が第1速度である場合における、リングヒータ40から配管30内を流れる流体Fへの熱の流れ等を示す図である。図2(B)は、配管30内を流れる流体Fの流速が第1速度である場合における、配管30の壁部32の外側表面31の温度分布を示す図である。図2(C)は、配管30内を流れる流体Fの流速が第2速度である場合における、リングヒータ40から配管30内を流れる流体Fへの熱の流れ等を示す図である。ここで、第2速度とは、第1速度に比べて流速が遅い速度である。図2(D)は、配管30内を流れる流体Fの流速が第2速度である場合における、配管30の壁部32の外側表面31の温度分布を示す図である。
【0035】
図2(B)及び図2(D)の横軸は、配管Aの管軸方向の位置を示している。つまり、図2(A)の左右方向の位置と、図2(B)の横軸上の位置とが対応している。また、図2(C)の左右方向の位置と、図2(D)の横軸上の位置とが対応している。すなわち、図2(B)の極大値は、配管30内を流れる流体Fの流速が第1速度である場合のリングヒータ40の温度を示している。図2(D)の極大値は、配管30内を流れる流体Fの流速が第2速度である場合のリングヒータ40の温度を示している。
【0036】
図2(A)に示すように、配管30内を流れる流体Fの流速が大きい場合、管内熱伝達が増加し、配管30の壁部32の管軸方向へ伝導する熱量が減少する。一方、図2(C)に示すように、配管30内を流れる流体Fの流速が小さい場合、管内熱伝達が減少し、配管30の壁部32の管軸方向へ伝導する熱量が増加する。そのため、図2(B)及び図2(D)に示すように、配管30内の流速が大きい場合のリングヒータ40の温度(図2(B)の極大値)は、配管30内の流速が小さい場合のリングヒータ40の温度(図2(D)の極大値)よりも低くなる。具体的には、配管30内の流速が大きい場合、図2(B)に示すように、配管30の壁部32の外側表面31に極大値温度が低く、幅が小さい温度分布が生じる。一方、配管30内の流速が小さい場合、図2(D)に示すように、配管30の壁部32の外側表面31に極大値温度が高く、幅が大きい温度分布が生じる。
【0037】
本実施形態では、計測装置10は、例えば流体の運動に関する方程式(例えばオイラー方程式など)をコンピュータで解くことによって、配管30内の流体の流れを観察する数値解析を実行する。計測装置10は、例えば前処理、解析、後処理の手順によって数値解析を実行する。前処理では、例えば配管30に関する情報に基づいて、配管30の形状を再現した3次元モデルまたは2次元モデルが作成される。数値流体力学(CFD)では、空間が離散的に扱われるため、物体形状および周りの空間を離散化する必要がある。そのため、前処理では、配管30および周りの空間を離散化して表現するための格子(グリッド、メッシュ)が生成される。
【0038】
解析では、コンピュータが反復計算を実行することによって、格子毎の流れ方程式の近似解が計算される。計算結果として、格子毎の流速、温度などが得られる。
前処理及び後処理により算出された値は、パラメータ情報Iとして第1記憶部50に記憶される。
【0039】
後処理では、例えば配管30内を流れる流体Fの速度と配管30の壁部32の外側表面31の温度分布との関係などが、数値として出力される。
計測装置10は、算出された配管30の壁部32の外側表面31の温度分布と、配管30内を流れる流体Fの速度と配管30の壁部32の外側表面31の温度分布との関係とに基づいて、配管30内を流れる流体の速度を算出する。
【0040】
[計測装置10]
図3は、第1の実施形態に係る計測装置10の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、計測装置10の機能構成の一例について説明する。
計測装置10は、温度取得部110と、加熱量取得部115と、パラメータ取得部116と、演算部117と、出力部118とを備える。
【0041】
温度取得部110は、流体Fが流れる配管30の壁部32の外側表面31の温度を取得する。また、温度取得部110は、配管30の配管軸方向に異なる少なくとも2以上の地点の温度を取得する。この一例において、温度取得部110は、第1温度取得部111と、第2温度取得部112とを備えることにより、配管30の配管軸方向に異なる少なくとも2以上の地点の温度を取得する。温度取得部110は、取得した温度を、演算部117に提供する。
【0042】
第1温度取得部111は、第1温度測定装置21から第1温度Tを取得する。第1温度取得部111は、取得した第1温度Tを演算部117に提供する。第2温度取得部112は、第2温度測定装置22から第2温度Tを取得する。第2温度取得部112は、取得した第2温度Tを演算部117に提供する。
【0043】
加熱量取得部115は、リングヒータ40により配管30の壁部32の外側表面31に与えられるヒータ加熱量Q(加熱量)を取得する。リングヒータ40は、加熱制御装置41により配管30の壁部32の外側表面31を加熱するよう制御される。本実施形態において、加熱量取得部115は、加熱制御装置41からヒータ加熱量Qを取得する。加熱量取得部115は、取得したヒータ加熱量Qを演算部117に提供する。
【0044】
パラメータ取得部116は、第1記憶部50に記憶されたパラメータ情報Iを取得する。パラメータ取得部116は、取得したパラメータ情報Iを演算部117に提供する。
【0045】
演算部117は、温度取得部110から流体Fが流れる配管30の壁部32の外側表面31の温度を取得し、加熱量取得部115からヒータ加熱量Qを取得し、パラメータ取得部116からパラメータ情報Iを取得する。この一例において温度取得部110は第1温度取得部111と第2温度取得部112とを備えるため、演算部117は、第1温度取得部111から第1温度Tを取得し、第2温度取得部112から第2温度Tを取得する。
【0046】
図4は、第1の実施形態に係る演算部117の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、演算部117の機能構成の一例について説明する。
演算部117は、温度差算出部1170と、熱伝達率算出部1171と、流速算出部1173とを備える。
【0047】
温度差算出部1170は、温度取得部110により取得された温度の温度差を算出する。
図5は、第1の実施形態に係る配管30の壁部32の外側表面31の温度分布の一例を説明するための図である。同図を参照しながら、温度差算出部1170が算出する温度差について説明する。同図における横軸zは、配管30の配管軸方向の位置を、縦軸Tw,outは、配管30の壁部32の外側表面31の温度を示す。
同図における地点oは、リングヒータ40が設置された位置である。同図における地点aは、第1温度測定装置21が設置された位置(すなわち、第1の地点P1)である。同図における地点bは、第2温度測定装置22が設置された位置(すなわち、第2の地点P2)である。
【0048】
図5に示されるように、地点aにおける温度は温度Tであり、地点bにおける温度は温度Tである。温度差算出部1170は、温度差ΔTabを算出する。この一例においては、温度取得部110が2地点の温度を取得する場合の一例について説明しているため、温度差算出部1170は温度差ΔTabを算出するが、温度取得部110が3地点以上の温度を取得する場合においては、温度差算出部1170は、複数の温度差を算出する。
【0049】
図4に戻り、熱伝達率算出部1171は、温度差算出部1170により算出された温度差を、加熱量取得部115により取得されたヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値に基づいて熱伝達率αdeを算出する。熱伝達率αdeとは、配管30の壁部32の外側表面31を一様加熱した場合の一様熱伝達率である。例えば、呼び口径が50Aである配管30における熱伝達率αdeは、下の式(1)で算出される。
【0050】
【数1】
【0051】
式(1)に示されるように、熱伝達率αdeの算出式は、温度差ΔTabをヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった一次の項と、温度差ΔTabをヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった二次の項とを含む。すなわち、熱伝達率算出部1171は、温度取得部110により取得された2つの地点の温度差ΔTabを、取得したヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった一次の項と、温度取得部110により取得された2つの地点の温度差ΔTabを、取得したヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった二次の項とに基づいて、熱伝達率αdeを算出する。
【0052】
また、例えば、呼び口径が25Aである配管30における熱伝達率αdeは、下の式(2)で算出される。
【0053】
【数2】
【0054】
図4に戻り、流速算出部1173は、グニーリンスキー(Gnielinski)の式に基づき、流体Fの流速uを算出する。具体的には、流体Fの流速uは、下の式(3)に、熱伝達率算出部1171で算出された熱伝達率αdeを適用することにより算出される。
【0055】
【数3】
【0056】
すなわち、演算部117は、取得した配管30の壁部32の外側表面31の地点の温度差を、取得した加熱量Qで除した値に基づいて、流体Fの流速を算出する。
【0057】
図3に戻り、出力部118は、演算部117により算出された、配管30を流れる流体Fの流速uを出力する。出力部118は、演算部117により算出された流速uを、例えば第2記憶部60に対して出力する。出力部118は、不図示のネットワークを介して第2記憶部60に流速uを出力するよう構成してもよいし、不図示の表示部に流速uを表示させるよう構成してもよい。
【0058】
図6は、第1の実施形態に係る計測装置10の一連の動作を説明するためのフローチャートである。同図を参照しながら、計測装置10の一連の動作について説明する。
(ステップS110)まず、加熱制御装置41は、リングヒータ40を加熱することにより、配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱する。加熱制御装置41は、計測装置10により制御されてもよい。
(ステップS120)リングヒータ40が加熱されてから所定時間経過後、演算部117は、温度取得部110から配管30の壁部32の外側表面31の温度を取得し、加熱制御装置41からヒータ加熱量Qを取得する。所定時間とは、例えば、リングヒータ40の加熱による過渡状態の経過後、すなわち配管30の壁部32の外側表面31の温度が定常状態に変化するのに十分な時間である。この一例において、温度取得部110は、2つの地点の温度を取得する。
【0059】
(ステップS130)温度差算出部1170は、取得した2つの地点の温度に基づき、温度差を算出する。温度取得部110が、地点aにおける温度Tと、地点bにおける温度Tとを取得した場合、温度差算出部1170は、温度Tと温度Tとの差分を温度差ΔTabとして算出する。
(ステップS140)熱伝達率算出部1171は、取得した温度差に基づき、配管30を一様加熱した場合の熱伝達率αdeを算出する。具体的には、熱伝達率算出部1171は、式(1)や、式(2)に示される数式に基づいて、配管30を一様加熱した場合の熱伝達率αdeを算出する。式(1)や、式(2)等の熱伝達率αdeを算出するための数式は、例えば、第1記憶部50に記憶されており、測定対象の配管30に応じて、パラメータ取得部116がパラメータ情報Iとして取得する。
【0060】
(ステップS150)流速算出部1173は、熱伝達率算出部1171により算出された熱伝達率αdeを式(3)に適用することにより流速uを算出する。流速uを算出するための式(3)は、例えば、第1記憶部50に記憶されており、パラメータ取得部116がパラメータ情報Iとして取得する。パラメータ取得部116は、第1記憶部50に記憶された式(3)を、例えば、測定対象の配管30に応じて取得する。
(ステップS160)出力部118は、算出された流速uを出力する。出力部118は、算出された流速uを、例えば第2記憶部60に対して出力する。
【0061】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、計測装置10は、CFD(数値流体力学)に基づいて作成された理論式を用いる。また、計測装置10は、温度取得部110により取得された2つの地点の温度差ΔTabを、取得したヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった値(すなわち、(T-T)/Q)を重要パラメータとして、理論式を構築している。
計測装置10は、温度取得部110と、加熱量取得部115と、パラメータ取得部116とを備えることにより、取得した温度と、CFDに基づいて作成された理論式とに基づいて、流体Fの流速uを算出する。以上説明した実施形態によれば、温度計測数は2点だけで測定することができる。また、以上説明した実施形態によれば、計測時間を大幅に短縮することができる。
【0062】
図7は、第1の実施形態に係る配管30の呼び口径が50Aである場合において、コリオリ流量計の測定値と流速予測値との比較結果を説明するための図である。図7(A)は、測定条件およびシミュレーション条件を示す表である。図7(B)コリオリ流量計の測定値と流速予測値との比較結果を説明するための図である。
図7(A)に示すように、図7における比較は、“呼び口径(mm)”が“50A”であり、“流速u(m)”が“10-40”であり、“圧力P(kPaA)”が“300-900”であり、“加熱量Q(W)”が“150-160”である条件のもと行った。
なお、本シミュレーションには、上述した式(1)を用いて計算を行っている。
【0063】
図7(B)に示す図の横軸は流体Fの流速uのコリオリ流量計による実測値uexpを、縦軸は本実施形態に係る計測装置10による流体Fの流速uの計算値ucalを示す。同図に示すように、実測値uexpと、計算値ucalとは、略同一の値を示している。すなわち、本実施形態によれば、計測装置10は、配管30を破壊せずに、配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体Fの流速uを、短時間で測定することができる。
【0064】
図8は、第1の実施形態に係る配管の呼び口径が25Aである場合において、コリオリ流量計の測定値と流速予測値との比較結果を説明するための図である。図8(A)は、測定条件およびシミュレーション条件を示す表である。図8(B)コリオリ流量計の測定値と流速予測値との比較結果を説明するための図である。
図8(A)に示すように、図8における比較は、“呼び口径(mm)”が“25A”であり、“流速u(m)”が“15-45”であり、“圧力P(kPaA)”が“300-900”であり、“加熱量Q(W)”が“35-40”である条件のもと行った。
なお、本シミュレーションには、上述した式(2)を用いて計算を行っている。
【0065】
図8(B)に示す図の横軸は流体Fの流速uのコリオリ流量計による実測値uexpを、縦軸は本実施形態に係る計測装置10による流体Fの流速uの計算値ucalを示す。同図に示すように、実測値uexpと、計算値ucalとは、略同一の値を示している。すなわち、本実施形態によれば、計測装置10は、配管30を破壊せずに、配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体Fの流速uを、短時間で測定することができる。
【0066】
また、以上説明した実施形態によれば、流体Fは配管30の上流から下流へ流れ、温度取得部110は、リングヒータ40が備えられた地点よりも配管30の流体Fが流れる上流側における2以上の異なる地点の温度を取得する。
【0067】
図9は、配管30の上流側と下流側における、局所熱伝達率αと一様熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeについて説明するための図である。同図における横軸は配管30の管軸方向の位置を、縦軸は局所熱伝達率αと一様熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeを示している。同図には、流速u(m/s)又は流体圧力P(kPa)をそれぞれ変化させた場合の結果を示している。
z=0の地点にリングヒータ40が設置される。リングヒータ40が設置された地点より流体Fの流れにおける上流側(すなわち、z<0)では、局所熱伝達率αと一様熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeは、流速u又は流体圧力Pに拠らず一定である。また、リングヒータ40が設置された地点より流体Fの流れにおける下流側(すなわち、z>0)では、局所熱伝達率αと一様熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeは、流速u又は流体圧力Pに拠り異なる。
以上説明した実施形態によれば、計測装置10は、リングヒータ40が設置された地点より流体Fの流れにおける上流側の地点の温度を用いて計算を行うため、局所熱伝達率αと一様熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeが、流速u又は流体圧力Pに拠らず一定である。したがって、本実施形態によれば、計測装置10は、流速u又は流体圧力Pが変化する場合であっても、正確に流体Fの流速uを算出することができる。
【0068】
また、以上説明した実施形態によれば、温度取得部110は、2つの地点の温度を取得する。すなわち、計測装置10は、2つの地点の温度に基づき、流体Fの流速uを、算出する。したがって、以上説明した実施形態によれば、容易に流体Fの流速uを算出することができる。また、計測装置10は、2つの地点の温度に基づき、流体Fの流速uを算出するため、短時間で測定することができる。
【0069】
また、以上説明した実施形態によれば、計測装置10は、温度差ΔTabをヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった一次の項と、温度差ΔTabをヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値の対数をとった二次の項とに基づき、流体Fの流速uを算出する。したがって、以上説明した実施形態によれば、数式を簡易にすることができる。よって、本実施形態によれば、簡易な数式を用いるため、短時間で流体Fの流速uを測定することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る計測装置10A、計測システム1A及び計測方法の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図10は、第2の実施形態に係る計測システム1Aの概略機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、第2の実施形態に係る計測システム1Aについて説明する。第2の実施形態に係る計測システム1Aは、配管30の管軸方向における4点の異なる地点について計測を行う点において、第1の実施形態に係る計測システム1とは異なる。第1の実施形態の説明で既に説明した構成については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
【0071】
計測システム1Aは、温度測定装置20として、第3温度測定装置23と第4温度測定装置24とを備える点において、計測システム1とは異なる。第3温度測定装置23は、配管30の壁部32の外側表面31における第3の地点P3の温度を測定する。第4温度測定装置24は、配管30の壁部32の外側表面31における第4の地点P4の温度を測定する。第1の地点P1、第2の地点P2、第3の地点P3及び第4の地点P4は、それぞれ配管30の管軸方向において異なる地点である。また、第1の地点P1、第2の地点P2、第3の地点P3及び第4の地点P4は、いずれも、リングヒータ40よりも、流体Fが流れる上流側の地点である。第1温度測定装置21と、第2温度測定装置22と、第3温度測定装置23と、第4温度測定装置24とを区別しない場合には温度測定装置20と記載する。
【0072】
図11は、第2の実施形態に係る計測装置10Aの機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、第2の実施形態に係る計測装置10Aについて説明する。第2の実施形態に係る計測装置10Aは、温度取得部110に代えて温度取得部110Aを備え、演算部117に代えて演算部117Aを備える点において、計測装置10とは異なる。第1の実施形態の説明で既に説明した構成については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
【0073】
温度取得部110Aは、異なる3以上の地点の温度を取得する点において、温度取得部110とは異なる。温度取得部110Aは、第3温度取得部113と、第4温度取得部114とを更に備える。第3温度取得部113は、第3温度測定装置23から第3温度Tを取得する。第3温度取得部113は、取得した第3温度Tを演算部117Aに提供する。第4温度取得部114は、第4温度測定装置24から第4温度Tを取得する。第4温度取得部114は、取得した第4温度Tを演算部117Aに提供する。
演算部117Aは、第3温度取得部113から第3温度Tを、第4温度取得部114から第4温度Tを更に取得する。
【0074】
図12は、第2の実施形態に係る演算部117Aの機能構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る演算部117Aは、平均率算出部1172を更に備える点において、演算部117とは異なる。第1の実施形態の説明で既に説明した構成については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
【0075】
第2の実施形態においては、配管30の管軸方向における4点の異なる地点について計測を行うため、計測装置10は、4つの異なる温度を取得する。この場合、温度差算出部1170は、複数の温度差を算出する。
図13は、第2の実施形態に係る配管30の壁部32の外側表面31の温度分布の一例を説明するための図である。同図を参照しながら、第2の実施形態において、温度差算出部1170が算出する温度差について説明する。同図における横軸zは、配管30の配管軸方向の位置を、縦軸Tw,outは、配管30の壁部32の外側表面31の温度を示す。
同図における地点oは、リングヒータ40が設置された位置である。同図における地点aは、第1温度測定装置21が設置された位置(すなわち、第1の地点P1)である。同図における地点bは、第2温度測定装置22が設置された位置(すなわち、第2の地点P2)である。同図における地点cは、第3温度測定装置23が設置された位置(すなわち、第3の地点P3)である。同図における地点dは、第4温度測定装置24が設置された位置(すなわち、第4の地点P4)である。
【0076】
図13に示されるように、地点aにおける温度は温度Tであり、地点bにおける温度は温度Tであり、地点cにおける温度は温度Tであり、地点dにおける温度は温度Tである。第2の実施形態においては、温度差算出部1170は、地点aにおける温度を基準とし、それぞれの地点における温度との温度差を算出する。すなわち、温度差算出部1170は、地点aにおける温度Tと地点bにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTabと、地点aにおける温度Tと地点cにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTacと、地点aにおける温度Tと地点dにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTadとを算出する。
【0077】
図12に戻り、熱伝達率算出部1171は、温度取得部110が取得した異なる3以上の地点のうち、2つの地点の温度差を、取得したヒータ加熱量Qで除すことにより得られる値に基づいて熱伝達率αdeを算出する。第2の実施形態においては、温度差算出部1170は、複数の温度差を算出するため、熱伝達率算出部1171は、算出された複数の温度差に応じた、複数の熱伝達率αdeを算出する。例えば、熱伝達率算出部1171は、式(1)で算出される地点a及び地点b間における熱伝達率αdeに加え、地点a及び地点c間における熱伝達率αdeと、地点a及び地点d間における熱伝達率αdeとを算出する。例えば、呼び口径が50Aである配管30において、地点a及び地点c間における熱伝達率αdeは、下の式(4)で算出される。
【0078】
【数4】
【0079】
また、例えば、呼び口径が50Aである配管30において、地点a及び地点d間における熱伝達率αdeは、下の式(5)で算出される。
【0080】
【数5】
【0081】
呼び口径が25Aである配管30における場合も同様に、熱伝達率算出部1171は、式(2)で算出される地点a及び地点b間における熱伝達率αdeに加え、地点a及び地点c間における熱伝達率αdeと、地点a及び地点d間における熱伝達率αdeとを算出する。例えば、呼び口径が25Aである配管30において、地点a及び地点c間における熱伝達率αdeは、下の式(6)で算出される。
【0082】
【数6】
【0083】
また、例えば、呼び口径が25Aである配管30において、地点a及び地点d間における熱伝達率αdeは、下の式(7)で算出される。
【0084】
【数7】
【0085】
演算部117は、熱伝達率算出部1171により算出された複数の熱伝達率に基づいて、流体Fの流速uを算出する。
平均率算出部1172は、算出された複数の熱伝達率αdeの平均値を算出する。流速算出部1173は、平均率算出部1172により算出された熱伝達率αdeの平均値に基づいて、流体Fの流速uを算出する。すなわち、演算部117Aは、熱伝達率算出部1171により算出された複数の熱伝達率αdeの平均値に基づいて、流体Fの流速uを算出する。
【0086】
なお、第2の実施形態においては、平均率算出部1172により、複数の熱伝達率αdeのうち、平均値により一の熱伝達率αdeを算出する場合の一例について説明したが、本実施形態は、この一例に限定されない。たとえば、演算部117は、不図示の統計処理部を備えることにより、所定の統計処理により、複数の熱伝達率αdeのうち、一の熱伝達率αdeを算出するよう構成してもよい。
【0087】
図14は、第2の実施形態に係る計測装置10Aの一連の動作を説明するためのフローチャートである。同図を参照しながら、計測装置10Aの一連の動作について説明する。同図に示すフローチャートは、図6で説明した計測装置10の一連の動作の変形例である。図6において説明した構成については、同様の符号を付すことにより、省略する場合がある。
【0088】
(ステップS120A)リングヒータ40が加熱されてから所定時間経過後、演算部117は、温度取得部110から配管30の壁部32の外側表面31の温度を取得し、加熱制御装置41からヒータ加熱量Qを取得する。この一例においては、配管30の管軸方向における4点の異なる地点について計測を行うため、温度取得部110は、4つの異なる温度を取得する。
【0089】
(ステップS130A)温度差算出部1170は、取得した複数の温度に基づき、温度差を算出する。温度取得部110が、地点aにおける温度Tと、地点bにおける温度Tと、地点cにおける温度Tと、地点dにおける温度Tとを取得した場合、温度差算出部1170は、温度Tを基準とし、地点aにおける温度Tと地点bにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTabと、地点aにおける温度Tと地点cにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTacと、地点aにおける温度Tと地点dにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTadとを算出する。
【0090】
(ステップS140A)熱伝達率算出部1171は、取得した複数の温度差に基づき、配管30を一様加熱した場合の熱伝達率αdeを算出する。具体的には、熱伝達率算出部1171は、式(1)、式(2)、式(4)、式(5)式(6)及び式(7)等に示される数式に基づいて、配管30を一様加熱した場合の熱伝達率αdeを算出する。これらの熱伝達率αdeを算出するための数式は、例えば、第1記憶部50に記憶されており、測定対象の配管30に応じて、パラメータ取得部116がパラメータ情報Iとして取得する。
【0091】
(ステップS145)平均率算出部1172は、算出された複数の熱伝達率αdeの平均値を算出する。本実施形態においては、平均率算出部1172は、ステップ140Aにより算出された3つの熱伝達率αdeの平均を算出する。
計測装置10Aは、3つの熱伝達率αdeの平均値に基づき、流体Fの流速uを算出し、出力する。
【0092】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、計測装置10Aは、温度取得部110Aを備えることにより、配管30の壁部32の外側表面31における配管軸方向に異なる3点以上の温度を取得する。計測装置10Aは、温度差算出部1170を備えることにより、取得した複数の温度に基づいて、複数の温度差を算出する。計測装置10Aは、熱伝達率算出部1171を備えることにより、複数の温度差に基づいて、複数の熱伝達率αdeを算出する。演算部117Aは、複数の熱伝達率αdeに基づいて、流体Fの流速uを算出する。したがって、以上説明した実施形態によれば、計測装置10Aは、より正確に流体Fの流速uを算出することができる。
【0093】
また、以上説明した実施形態によれば、計測装置10Aは、平均率算出部1172を備えることにより、算出された複数の熱伝達率αdeの平均値に基づいて、流体Fの流速uを算出する。したがって、以上説明した実施形態によれば、計測装置10Aは、容易に体Fの流速uを算出することができる。
【0094】
[第3の実施形態]
以下、本発明に係る第3の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
第3の実施形態に係る計測装置10Bは、第2の実施形態に係る計測装置10Aの変形例である。第2の実施形態においては、取得した複数の温度のうち、一の温度を基準に、複数の温度差を算出したが、第3の実施形態においては、取得した複数の温度のうち、全ての組み合わせにおける温度差を算出する点において第2の実施形態とは異なる。
【0095】
図15は、第3の実施形態に係る配管30の壁部32の外側表面31の温度分布の一例を説明するための図である。同図を参照しながら、第2の実施形態において、温度差算出部1170が算出する温度差について説明する。同図における横軸zは、配管30の配管軸方向の位置を、縦軸Tw,outは、配管30の壁部32の外側表面31の温度を示す。
同図における地点oは、リングヒータ40が設置された位置である。同図における地点aは、第1温度測定装置21が設置された位置(すなわち、第1の地点P1)である。同図における地点bは、第2温度測定装置22が設置された位置(すなわち、第2の地点P2)である。同図における地点cは、第3温度測定装置23が設置された位置(すなわち、第3の地点P3)である。同図における地点dは、第4温度測定装置24が設置された位置(すなわち、第4の地点P4)である。
【0096】
図13に示されるように、地点aにおける温度は温度Tであり、地点bにおける温度は温度Tであり、地点cにおける温度は温度Tであり、地点dにおける温度は温度Tである。第3の実施形態においては、温度差算出部1170は、取得した複数の温度のうち、全ての組み合わせにおける温度差を算出する。すなわち、温度差算出部1170は、地点aにおける温度Tと地点bにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTabと、地点aにおける温度Tと地点cにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTacと、地点aにおける温度Tと地点dにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTadと、地点bにおける温度Tと地点cにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTbcと、地点bにおける温度Tと地点dにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTbdと、地点cにおける温度Tと地点dにおける温度Tとの温度差である温度差ΔTcdとを算出する。
【0097】
第3の実施形態における不図示の演算部117Bは、算出された複数の温度差それぞれに対応する熱伝達率αdeを算出する。演算部117Bは、算出された複数の熱伝達率αdeに基づいて、流体Fの流速uを算出する。
【0098】
[第3の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、計測装置10Bは、取得した複数の温度のうち、全ての組み合わせにおける温度差を算出する。したがって、第3の実施形態によれば、より正確に流体Fの流速uを算出することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【0100】
なお、上述した実施形態における計測装置10、計測装置10A及び計測装置10Bが備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0101】
1…計測システム、10…計測装置、20…温度測定装置、21…第1温度測定装置、22…第2温度測定装置、23…第3温度測定装置、24…第4温度測定装置、30…配管、31…外側表面、32…壁部、40…リングヒータ、41…加熱制御装置、110…温度取得部、111…第1温度取得部、112…第2温度取得部、113…第3温度取得部、114…第4温度取得部、115…加熱量取得部、116…パラメータ取得部、117…演算部、118…出力部、1170…温度差算出部、1171…熱伝達率算出部、1172…平均率算出部、1173…流速算出部、F…流体、Q…ヒータ加熱量、T…第1温度、T…第2温度、T…第3温度、T…第4温度、αde…熱伝達率、50…第1記憶部、60…第2記憶部
図1
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