(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】中高粘度液体の塗布方法,装置およびノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/04 20060101AFI20240813BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240813BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240813BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B05B1/04
B05B12/00 A ZAB
B05C5/00 101
B05D1/02 Z
(21)【出願番号】P 2024508931
(86)(22)【出願日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2023007535
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2022177943
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513321308
【氏名又は名称】Shimada Appli合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】島田 ▲隆▼治
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088046(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114552(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0196970(US,A1)
【文献】国際公開第2016/156883(WO,A1)
【文献】特開2014-155904(JP,A)
【文献】実開平07-007771(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00- 3/18
B05C5/00- 5/04
7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間がある筒部と,
前記筒部に連続し,かつ液体の吐出方向に突出するように設けられ,その先端中心を通る縦断面に関して左右対称の空間を有する頂部と,
少なくとも前記頂部内に乱流形成空間を残して前記筒部内に密に挿入される乱流形成部材とを有し,
前記頂部には,前記先端中心を通り,前記縦断面の表面に現われる線を中心線とする細長い一定幅のスリットが形成され,
前記乱流形成部材の内部には,液体が供給される主流路と,この主流路から分岐する複数の分岐流路とが形成され,前記主流路は液体の入口側の中心に開口し,複数の前記分岐流路は,前記スリットの中心線に関して対称な位置において前記乱流形成空間側に開口している,
液膜塗布用ノズル。
【請求項2】
前記頂部の内部空間は前記スリットの中心線に直交する線に関しても対称であり,前記乱流形成部材の複数の分岐流路は,前記スリットの中心線に直交する線上,または該線に関して対称な位置に開口している,請求項1に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項3】
前記頂部が半球形状である,請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項4】
前記頂部が,円錐形状または円錐台形状である,請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項5】
前記頂部が,角錐形状または角錐台形状である,請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項6】
前記半球形状頂部の半球形の半径が2mm未満である,請求項
3に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項7】
前記スリットの幅が長さの10分の1以下である,請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項8】
前記スリットの幅が長さの15分の1以下である,請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項9】
前記スリットの幅が0.1mm以上0.3mm以下である,請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズル。
【請求項10】
請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズルを,前記頂部の前記スリットから吐出される液膜が塗布対象物表面に到達する高さ位置において,前記スリットの長手方向とは直交する方向に一定速度で移動させながら液膜を塗布する方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の液膜塗布用ノズルと,
前記ノズルが先端部に取付けられ,前記ノズルに液体を供給する塗布用ガンと,
前記塗布用ガンを支持し,前記ノズルの前記スリットから吐出される液膜が塗布対象物表面に到達する高さ位置において,前記スリットの長手方向とは直交する方向に一定速度で前記塗布用ガンを移動させるロボット装置と,
を備える液膜を塗布する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は中高粘度液体の塗布方法,装置およびノズルに関する。
【0002】
中高粘度液体とは粘度が約150センチポイズ(以下,「CPS」という)以上でおおよそ5000CPS以下の流体を指し,塗料のみならず,マスキング材料,防湿材料,絶縁材料,防湿絶縁材料を含み,脱炭素や揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制の対策のために,好ましくは無溶剤の液体が含まれる。また,この発明による塗布方法および装置で用いられるノズルは細長いスリット状の吐出口を持つエアレスノズルであり,エアレスノズルから吐出される液膜部分(フィルム状液部分)により対象物を塗装するものである(いわゆるフィルムコーティング)。
【背景技術】
【0003】
エアレススプレイノズルは元々液体を霧化して対象物に塗布するものである。対象物に塗布を禁止する部分がある場合(塗り分け,または選択的塗布)には,塗布すべきでない部分にマスキングを施さなければならない。このマスキングの施工と塗布後のマスクの除去はかなりめんどうな作業である。
【0004】
エアレススプレイノズルで対象物を塗布する場合に,ノズルから吐出される液体に加える圧力をやや低目にすると,ノズルから吐出された直後に液膜部分が生じ,その先で霧化されるという現象が生じる。この液膜部分を対象物に直接に当てれば,境界の明確なコーティングが行なえる。これにより,マスキングを省略して塗り分けが達成できる。この方法は,比較的低い加圧圧力を用いるので,粘度の低い液体に適している(たとえば,特許文献1では粘度が50CPS,100CPS,特許文献2では50CPS,100CPS,特許文献4では125-155(144)CPSの液体が例示されている)。これらはプリント配線基板(以下,「PCB」という)等の比較的小型の対象物に塗装するものであった(塗布幅は10mm程度)。
【0005】
他方,自動車ボディーの塗装や保護膜の塗布などの大型の対象物の塗装のために液膜部分による塗布のニーズが現われ,これに適したエアレスノズルが開発された(特許文献6)。特許文献6には,具体例として,塗布幅が80mm~330mm,ノズル吐出圧力0.1MPa~1.0MPa,液体材料粘度2000-3700CPSが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-129181号公報
【文献】特開昭62-154794号公報
【文献】米国特許第4753819号明細書(特許文献2の対応米国特許)
【文献】特許第2690149号公報
【文献】欧州特許第0347058号明細書(特許文献4の対応欧州特許)
【文献】特許第5054884号公報
【0007】
近年の脱炭酸,揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制の社会的要求に応えるために,無溶剤ないしは低溶剤の液体を使用した塗布の必要性が高まってきている。これらの無溶剤ないしは低溶剤の液体は粘度が比較的高い(中高粘度)。特許文献6に記載のエアレスノズルを無溶剤ないし低溶剤の液体に適用することは可能であるが,一挙に幅広い範囲にわたって液体を塗布してしまうので,PCB等の小型の対象物の塗装,とりわけ場所を選択的に塗装(塗り分け)しなければならない対象物に対しては不向きである。
【0008】
このような小型の対象物に適用するために特許文献6に記載のエアレスノズルを小型化し,液体の吐出スリット開口の幅を狭くすることが考えられる。塗布すべき液体は粘度が中,高域にあるから,ノズルを小型化,スリット幅を狭くすると,供給する液体に加える圧力を高くしなければ安定な液膜部分が得られない(特許文献6の[0019]にはノズルをあまり小さくすることはできないと記載されている)。圧力をより高くすると,ノズルから吐出される液体の量が増加し塗膜が厚くなってしまう。吐出量を抑えるためにスリット幅をさらに狭くすると,液体に加える圧力をさらに高くしなければならない。圧力をさらに高くすると,ノズルから吐出される液体の塗布幅が不安定となり境界がきれいにならない(変動する),ノズルをオフしたときに液垂れが多く出やすくなる,ノズルから吐出される液体が対象物に強く衝突してはね返りが生じ,まわりに飛散してしまう等という問題が生じる。
【発明の概要】
【0009】
この発明は,中高粘度の液体であっても比較的小型の対象物に液膜部分を安定に塗布することができるようにすることを目的とする。より具体的には塗布幅と塗布膜厚の変動を小さくできるようにする。
【0010】
この発明はまた,中高粘度の液体を比較的小型の対象物に塗り分け塗布(場所に応じて選択的に塗装)することができるようにすることを目的とする。より具体的には塗布幅の変動を小さくし,かつノズルをオフしたときの滴垂れが生じにくい,または小量に抑えることができるようにする。
【0011】
この発明はさらに,ノズルから吐出される液体の対象物からのはね返りを無くする,ないしは少なくできるようにすることを目的とする。
【0012】
この発明による液膜塗布用ノズルは,内部に空間がある筒部と,前記筒部に連続し,かつ液体の吐出方向に突出するように設けられ,その先端中心を通る縦断面に関して左右対称の空間を有する頂部と,少なくとも前記頂部内に乱流形成空間を残して前記筒部内に密に挿入される乱流形成部材とを有し,前記頂部には,前記先端中心を通り,前記縦断面の表面に現われる線を中心線とする細長い一定幅のスリットが形成され,前記乱流形成部材の内部には,液体が供給される主流路と,この主流路から分岐する複数の分岐流路とが形成され,前記主流路は液体の入口側の中心に開口し,複数の前記分岐流路は,前記スリットの中心線に関して対称な位置において前記乱流形成空間側に開口しているものである。
【0013】
この発明による液膜塗布用ノズルは,液膜塗布方法または液膜塗布装置で用いることができる。その場合,ノズルに供給される液体はノズル内に配置された乱流形成部材の主流路から分岐流路に入り,さらに複数の分岐流路から乱流形成空間内に入り,液体の乱流が形成される。乱流の形成により,主に液体の圧力がほぼ均等化され,その状態で長さ方向に一定幅のスリットから液体が吐出される。ノズルのスリットはその長さ方向に広がっているから(長いから)中高粘度の液体であっても,スリットの全長にわたって広がりながらノズルから吐出されるので,スリットの全長よりも幅の広い液膜が形成される。液膜は,スリットの幅方向および長さ方向でほぼ均等に安定してスリットから吐出されるので,そのまま対象物表面に塗布される。液膜塗布方法または液膜塗布装置において,ノズルをスリットの長手方向に直交する方向に一定速度で移動させていくと,ほぼ一定幅の帯状の塗膜が対象物表面に形成される。すなわち,液膜は安定してスリットから吐出されるから,対象物表面に塗布されて形成される塗膜の幅はほぼ一定で,膜厚の変動も少ない。また,塗布するときに液体に加える圧力も比較的(乱流形成部材が無い場合に比べて)低くなるので,これによっても塗布幅の変動は小さく抑えられ,かつノズルをオフしたときの液垂れが生じにくい,または小さく抑えることが可能となる。さらに,液体が対象物に勢いよく衝突することがないから,はね返りの発生を抑え,または無くすることができる。
【0014】
ノズルが取付けられる塗布ガンに液体の供給をオン,オフする弁装置を設けておくと,特にオフ時の液垂れが少ないので,選択的塗布も可能となる。
【0015】
好ましい実施態様では,前記頂部の内部空間は前記スリットの中心線に直交する線に関しても対称であり,前記乱流形成部材の複数の分岐流路は,前記スリットの中心線に直交する線上,または該線に関して対称な位置に開口している。
【0016】
一実施態様では,前記頂部が半球形状である。この場合,望ましくは半球形の半径(内径)が2mm未満である。
【0017】
他の実施態様では,前記頂部が,円錐形状または円錐台形状である。
【0018】
さらに他の実施態様では,前記頂部が,角錐形状または角錐台形状である。
【0019】
望ましい実施態様では,前記スリットの幅は0.1mm以上0.3mm以下である。
【0020】
さらに望ましくは,スリットの幅対長さの比は1対10以上である。さらに望ましくは1対15以上である。
【0021】
この発明による塗布方法は,上記の液膜塗布用ノズルを,前記頂部の前記スリットから吐出される液膜が塗布対象物表面に到達する高さ位置において,前記スリットの長手方向とは直交する方向に一定速度で移動させながら液膜を塗布するものである。
【0022】
この発明による塗布装置は,上記の液膜塗布用ノズルと,前記ノズルが先端部に取付けられ,前記ノズルに液体を供給する塗布用ガンと,前記塗布用ガンを支持し,前記ノズルの前記スリットから吐出される液膜が塗布対象物表面に到達する高さ位置において,前記スリットの長手方向とは直交する方向に一定速度で前記塗布用ガンを移動させるロボット装置とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図1の塗布システムにおける円Eで示す範囲,すなわちプリント配線実装基板の表面に塗布している様子を拡大して示す斜視図である。
【
図3a】塗布用ガンの縦断面図であり,
図3bのa-a線に沿う断面図である。
【
図3b】塗布用ガンの縦断面図であり,
図3aのb-b線に沿う断面図である。
【
図4a】
図3aのピストン付近の拡大断面図であり,バルブ(弁装置)がオンしている状態を示す。
【
図4b】
図3aのノズル付近の拡大断面図であり,バルブがオンしている状態を示す。
【
図5a】
図3aのピストン付近の拡大断面図であり,バルブがオフしている状態を示す。
【
図5b】
図3aのノズル付近の拡大断面図であり,バルブがオフしている状態を示す。
【
図6a】ノズルの拡大縦断面図であり,
図6bのa-a線に沿う断面図である。
【
図6b】ノズルの拡大縦断面図であり,
図6aのb-b線に沿う断面図である。
【
図8a】乱流形成部材を組込んだノズルの縦断面図であり,
図8bのa-a線に沿う断面図である。
【
図8b】乱流形成部材を組込んだノズルの縦断面図であり,
図8aのb-b線に沿う断面図である。
【
図9a】乱流形成部材を組込んだノズルから液体を吐出している状態を示す縦断面図であり,
図9bのa-a線に沿う断面図である。
【
図9b】乱流形成部材を組込んだノズルから液体を吐出している状態を示す縦断面図であり,
図9aのb-b線に沿う断面図である。
【
図10a】乱流形成部材を組込んだノズルの変形例を示す
図8a相当の断面図である。
【
図10b】乱流形成部材を組込んだノズルの変形例を示す
図8b相当の断面図である。
【
図11a】ノズルの他の実施例を示すもので,
図6a相当の断面図である。
【
図11b】ノズルの他の実施例を示すもので,
図6b相当の断面図である。
【
図12a】乱流形成部材を組込んだ
図11aに示すノズルから液体を吐出している状態を示す
図9a相当の断面図である。
【
図12b】乱流形成部材を組込んだ
図11bに示すノズルから液体を吐出している状態を示す
図9b相当の断面図である。
【
図13a】ノズルのさらに他の実施例を示すもので,
図6a相当の断面図である。
【
図13b】ノズルのさらに他の実施例を示すもので,
図6b相当の断面図である。
【
図14a】他の実施例の乱流形成部材を組込んだノズルの
図8a相当の断面図である。
【
図14b】他の実施例の乱流形成部材を組込んだノズルの
図8b相当の断面図である。
【
図15d】乱流形成部材を組込み,かつ頂部が四角錐状のノズルの斜視図である。
【
図16a】分岐流路の開口が2つの乱流形成部材の縦断面図である。
【
図16b】分岐流路の開口が2つの乱流形成部材の底面図である。
【
図17a】分岐流路の開口が4つの乱流形成部材の縦断面図であり,
図17bのa-a線に沿う断面図である。
【
図17b】分岐流路の開口が4つの乱流形成部材の底面図である。
【
図18a】実験1において乱流形成部材無しのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度300mm/secの場合)。
【
図18b】実験1において乱流形成部材無しのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度400mm/secの場合)。
【
図18c】実験1において乱流形成部材無しのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度500mm/secの場合)。
【
図19a】実験1において乱流形成部材有りのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度300mm/secの場合)。
【
図19b】実験1において乱流形成部材有りのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度400mm/secの場合)。
【
図19c】実験1において乱流形成部材有りのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度500mm/secの場合)。
【
図20a】実験2において乱流形成部材無しのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度300mm/sec)。
【
図20b】実験2において乱流形成部材無しのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度400mm/sec)。
【
図20c】実験2において乱流形成部材無しのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度500mm/sec)。
【
図21a】実験2において乱流形成部材有りのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度300mm/secの場合)。
【
図21b】実験2において乱流形成部材有りのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度400mm/secの場合)。
【
図21c】実験2において乱流形成部材有りのノズルからの塗布によって形成される塗膜を示す(スキャン速度500mm/secの場合)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はこの発明の実施例による塗布システム(装置)の全体を示している。
【0025】
この塗布システムは,特に中高粘度流体(たとえば無溶剤ないしは低溶剤の塗料,マスキング剤,防湿材料,絶縁材料,防湿絶縁材料などを含む)の塗布に適したもので,塗布用ガン2,塗布用ガン2を三次元直交軸に沿って移動させるとともに,水平軸および垂直軸を中心に回転させるロボット装置(システム)1,および塗布の対象物(たとえば,プリント配線基板上に電子部品等が実装された基板(実装基板)(以下,単に「PCB」という)16を載置する機台(図示略)を含む。ロボット装置1は機台上に設置してもよいし,機台をロボット装置1の一部として位置付けてもよい。
【0026】
ロボット装置1は,塗布用ガン2を支持して塗布用ガン2を水平軸を中心に回転(施回)させるαアクチュエータ11A,αアクチュエータ11Aを支持してガン2を垂直軸を中心に回転させるθアクチュエータ11B,θアクチュエータ11Bを支持してガン2を鉛直方向(Z方向)に動かすZ軸アクチュエータ12,Z軸アクチュエータを支持して
図1の左右方向(Y方向)に移動させるY軸アクチュエータ13,およびY軸アクチュエータ13を支持してY軸およびZ軸に直交する方向に動かすX軸アクチュエータ14を含む。PCB16はXY平面上(Z軸に垂直な面)上にある。
【0027】
ロボット装置1に支持された塗布用ガン2の吐出ノズル21(
図2)は,PCB16の基板面上に液体をエアレススプレーする,いわゆるエアレスノズル(エアレス・コーティング・ノズル,エアレス塗布ノズル)である。エアレススプレーではノズルの吐出スリット(後に詳述する)から吐出される液体はまず液膜部分(フィルム状液部分)を形成し,その先で霧化される。
図2に拡大して示すように,この液膜部分Fが対象物であるPCB16の表面に当り,液体の塗布が達成される(霧化される部分を使用しない塗布)。
【0028】
図1および
図2を参照して(特に拡大された
図2を参照して),液膜部分Fはノズル21のスリットから偏平状(平坦状)に吐出される。ノズル21はガン2の移動にともなって液膜部分Fの平坦面に直交する方向に移動するから,幅広の液膜部分FがPCB16面上を帯状に液体を塗布していくことになる。塗布により形成された帯状塗布膜を代表的にS(
図1)で示し,現在形成されつつある塗布膜をS
0(
図2)で示す。ガン2はPCB16の所定高さ上方(塗布高さ)をY方向に移動し,基板16の側部に至ると塗布膜Sの幅よりも少し短い距離X方向に移動し,Y方向に前回とは逆方向に移動していく。このように,ノズル21はY方向往復運動と,両端部におけるX方向移動の連続によって実装基板16のほぼ全面(両側,両端部を除く)を塗布していくことになる。(
図2において,帯状塗布膜S
i‥‥S
2,S
1,S
0の順に塗布が行なわれていく)。ノズル21のX方向移動距離は帯状塗布膜の幅よりも若干小さいから,帯状塗布膜はその両側縁において一部重なる(液体であるから重なり部分はしばらくすると流動して平らになる)。Y方向移動の両端部において,ノズルはオフされるので,X方向移動の間,塗布は一時的に停止する。また,実装基板16の電子部品の形状,大きさ等によっては,その部品部分を通過するときにノズルはオフされ,塗布は停止し,その部分だけ塗布は行なわれない(選択的塗布,塗り分け塗布)。必要ならば,部品の上を通過するときに,ノズル21と部品との衝突を避けるために,ノズル21(ガン2)はZ方向に上昇する。塗り残された部分は,一般的には最後にその位置でスポット塗布,横方向,斜め方向からの塗布等により電子部品の全表面に液体が塗布される(塗布しないまま残す場合もある)。
【0029】
図3a,
図3bは,ガン2の縦断面図であり,ガン2の中心を通り互いに直交する断面を表わしている。すなわち,
図3aは
図3bのa-a線に沿う断面図,
図3bは
図3aのb-b線断面図である。ノズル21から吐出される液体はノズル21の先端の近傍では扁平な液膜Fを形成しており,その先では霧状になる(霧化される)。この液膜Fの部分のみが図示されており,塗布に用いられる。
【0030】
図4a,
図4bおよび
図5a,
図5bは,ガン2の部分拡大図である。
図4a,
図4bはノズル21が開いた状態(オン)を示し,液膜Fが吐出されている。これに対して
図5a,
図5bではノズル21が閉じた状態(オフ)を示し,液膜Fの吐出は停止している。
図4aおよび
図5aはノズルの開閉を行うエアシリンダ装置のピストン付近を示し,
図4b,
図5bはノズル21を含むガンの先端部分を示している。
【0031】
これらの図面を参照して塗布用ガン2は,上から,アジャスター70,エアシリンダ装置40,メインボディ50およびエクステンション60から構成される。メインボディ50がベース51によりαアクチュエータ11Aに取付け固定される。
【0032】
エアシリンダ装置40は,メインボディ50上に,メインボディ50と同軸に設けられかつ固定されたエア流入出ボディ42と,このエア流入出ボディ42の上に,ボディ42と同軸に設けられかつ固定されたシリンダ41を含んでいる。シリンダ41の内部にはピストン44が配置され,ピストン44はシリンダ41の内周面に沿って気密に上下動自在である。ボディ42の内部は円筒状の空間であり,ここに昇降案内体43がボディ42との間に気密を保って固定的に配置されている。ピストン44の下面とボディ42および昇降案内体43との間には,加圧空間56が設けられている。この加圧空間56は,ボディ42およびベース51の内部に形成されたエア供給路52を経て,エア供給ホース54(
図1)とつながっている。また,ボディ42内の昇降案内体43よりも下方の空間57は,ボディ42およびベース51に形成されたエア流通路53を経て,エア流通ホース55(
図1)とつながっている。
【0033】
昇降案内体43の中心軸を貫いて連結棒45が摺動自在かつ気密に通っている。この連結棒45の上端部はピストン44の中心を貫いてピストン44に固定され,下端部は中間体46を経てニードル(ニードル弁)61に固定的に連結されている。中間体46はメインボディ50内部の円筒状空間内にゆるく(上下動可能に)収まっている。中間体46には環状突起46aが設けられ,案内体43の下面と環状突起46aとの間に復帰ばね(圧縮コイルばね)58が設けられている。
【0034】
ピストン44の上面には,環状のスラストベアリング73が設けられている。圧縮エア供給ホース54,供給路52を通して,ピストン44の下側の空間56に圧縮エアが供給されると,ピストン44が上昇し,ピストン44上のスラストベアリング73が,アジャスター70の調整ねじ71の下端のストッパ部71aに当り,ピストン44の上昇はその位置で止まる。ピストン44が上昇すると,連結体45,中間体46を経てニードル61が上昇し,その先端61aがエクステンション60の下部の液体流出孔62aから離れる(弁が開かれる)(バルブオン)(
図4a,
図4bの状態)。復帰ばね58は圧縮される。
【0035】
圧縮エアの供給を停止すると,ピストン44を上昇させる力は止むから復帰ばね58が伸張し,中間体46を押下げる(これに伴ってピストン44も下る)。中間体46が押下げられるとニードル61も下り,その先端61aがエクステンション下部の流体流出孔62aを塞ぐ(弁が閉じられる)(バルブオフ)(
図5a,
図5bの状態)。これがガン2の弁装置である。
【0036】
アジャスター70の調整ねじ71を回転させると,その下端のストッパ部71aが上下動して,ピストン44の上限位置が変わる。これによりニードル61の下端部(先端)61aの位置が変わるから,バルブの開き具合を変え,液体の吐出量を調整することができる。
【0037】
メインボディ50の下端部にはエクステンション60が軸方向に挿入され,かつ固定されている。エクステンション60の内部にはメインボディ50や案内体43と同軸に,液体供給路62が円筒状に形成されている。液体供給路62はメインボディ50の流体入口63につながり,流体供給装置(図示略)から,塗布用の液体が供給される。この液体供給路62の中心部をニードル61がその周囲に間隙をあけて通っている。したがって,供給路62の内周面とニードル61との間の環状空間に液体が通る。液体供給路62はその先端部において漏斗状(円錐状)に径が狭くなって,液体流出孔62aに連続している。円柱状のニードル61の先端部61aも先にいくほど細くなっている(円錐状)。ニードル61の先端のテーパ角(中心軸と表面との間の角度)は液体供給路62先端部のテーパ角よりも小さい(鉛い)。したがって,ニードル61が上昇すると,その先端部61aは流出孔62aから離れ,供給路61の漏斗状部分との間にすき間ができる。このすき間を通って流体が流出する。ニードル61が下降するとその先端部61aが流出孔62aを塞ぎ,液体の流出が止まる。
【0038】
エクステンション60の先端には,内部に乱流形成部材31が収容されたノズル21がノズル固定用ナット64によって着脱自在に固定されている。エクステンション60の流体流出孔62aとノズル21または乱流形成部材31の流入孔とはそれらの中心を一致させた状態で連通する。
【0039】
【0040】
ノズル21は,円筒状の筒部22と,筒部22の先端部に軸方向に突出し,かつ筒部22の先端部を閉塞するように形成された半球状の頂部(または冠部)23と,筒部22の基部に径方向外方に突出するように形成された取付け用フランジ24とにより構成される。これらの筒部22と頂部23とフランジ24とは一体であり,一般には金属(たとえば高速度工具鋼またはステンレス鋼)により形成される。半球状の頂部23には,頂部23の頂点を通り,経線に沿って一定幅の細長いスリット25が形成されている。スリット25の両端は筒部22との境界まで延びているが,境界まで延びずに,そのやや手前まで形成されていてもよい。
【0041】
ノズル21は比較的小さいものであり,寸法の一例を挙げれば,筒部22の直径(内径)Dは3.2mm,長さNは6.0mm,半球状の頂部23の半径(内径)Rは1.6mmである。スリット25の幅はその長さ(1.6mm×π,すなわち約5.0mm)全体にわたって一定で,0.2mmである。スリット25の幅は0.1mm~0.3mm程度が好ましい。スリット25の長さを5mmとすれば,スリットの長さと幅の比は,好ましくは50対1ないし16対1である。すなわち,スリットの幅はスリットの長さの15分の1以下が好ましい。スリットの幅がスリットの長さの10分の1以下でもよい。半球状の頂部23の半径Rは2.0mm以下(スリット25の長さは約6.3mm以下)が好ましい。
【0042】
図7aおよび
図7bは乱流形成部材31を示している。乱流形成部材31は,ノズル21の筒部22内にぴったりと嵌る胴部32と,その基端に一体的に設けられた取付け用のフランジ33とを有している。胴部32には,フランジ側一端面から軸方向に延びるように形成された主流路34と,主流路34から分岐し胴部32の他端面まで延び開口する2つの分岐流路35が形成されている。これらの流路34,35の内壁はいずれも円筒形で,一例を挙げれば,主流路34の直形は1mm,支流流路35の直径は0.8mmである。筒部32の長さMはフランジ33も含めて6.0mmである。乱流形成部材31も金属(たとえば高速度工具鋼またはステンレス鋼)により形成される。
【0043】
図8a,
図8b,
図8c,
図8dは上記のノズル21と乱流形成部材31とを組合せて使用する状態を示している。
【0044】
上述したように,ノズル21の筒部22の中に乱流形成部材31の胴部32が,筒部22の内周面と部材31の胴部32の外周面との間にすき間なく,ぴったりと嵌る。フランジ24と33はぴったりと重なり,
図4b,
図5bに拡大して示すように,エクステンション60の先端部にフランジ33が当り,両フランジ24,33が固定用ナット64により締付けられ,ノズル21およびその内部の乱流形成部材31がエクステンション60の先端部に,それらの中心軸を一致させた状態で取付け固定される。取付けられた状態では,乱流形成部材31の主流路34はエクステンション60の流出孔62aに開口し(一致し),分岐流路35はノズル21の頂部の内部(乱流形成室26)に開口する。
【0045】
乱流形成部材31のノズル21に関する角度位置関係は次の通りである。すなわち,細長いスリット25(その中心を通る直線)に関して,2つの分岐流路35は線対称の位置に開口している(
図8cの底面図においてみた場合。
図8cに
図8dを組合せて考えれば理解できる)。
図8a,
図8bにおいては,乱流形成室(乱流形成空間)26はノズル21の筒部22の先端部の内部の空間と頂部23の内部の空間を含む。頂部23の内部の空間のみを乱流形成空間としてもよい。
【0046】
図9aおよび
図9bは乱流形成部材31が組込まれたノズル21から液体が吐出される様子を示している。液体はエクステンション60の液体供給路62から流出孔62aを通り,乱流形成部材31の主流路34内に入り,さらに分岐路35を通って2つの開口から乱流形成室26内に流入する。分岐路35の2つの開口はスリット25の真上ではなく,側方に外れた位置にあるから,分岐流路35から出射した液体は乱流形成室26内で乱流を形成し,液体圧力の均一化が生じる。液体はスリット25から液膜の状態(液体が連続しかつフィルム状に広がった状態)で吐出される。
図9aに示すように,スリット25の幅方向では液膜Fの幅はほぼ一定である。
図9bに示すように,スリット25の長さ方向では,スリット25の近くではスリット25の長さ方向に広がり,その後,ほぼ真直ぐ下に流れる。この液膜部分Fの幅(スリット25の長さ方向)をWとする。液膜はさらに先では霧化するが,霧化する前の位置に塗布対象物(PCB)16を置くと,対象物16上に流体が塗布される。この塗布に適した高さ(塗布高さ)(霧化に至らない高さ)をHとする。Hはノズル21の先端から対象物16までの距離である。
【0047】
上述したように乱流形成室26は半球形状であり,分岐流路35はスリット25に関して線対称であり,さらにスリット25の幅はその長さ方向に一定である。したがって,スリット25から吐出される液膜Fはその幅方向(Wの方向)にほぼ均質である。このため,ロボット装置1によってノズル21を,スリット25の長さ方向とは直交する方向に,かつ高さHを一定に保って移動させていくと,ほぼ一定幅の(一例について定量的には後述する)の塗布膜が対象物16上に形成される。
【0048】
図10aおよび
図10bは,ノズルおよび乱流形成部材の変形例を示している。ノズル21Aの筒部22Aの長さが
図8a,
図8bに示すものよりも長く,乱流形成部材31Aの胴部32Aの長さは
図8a,
図8bに示すものよりも短い。したがって,乱流形成室26Aの容積は
図8a,
図8bに示すものよりも大きい。逆に,ノズルの筒部の長さを短くし,乱流形成部材の胴部の長さを長くして,乱流形成室の容積を小さくしてもよい。ノズルの頂部の内部空間のみが乱流形成室であってもよい。
【0049】
図11aおよび
図11bは,ノズルの他の実施例を示している。ノズル21Bの頂部23Bは錐状に形成されている。筒部22Bが円筒状であれば頂部23Bは円錐形状であり,筒部22Bがその断面が正方形状の角筒状であれば頂部23Bは四角錐状となる。スリット25Bは頂部23Bの頂点を通り頂部23Bをスリットに関して線対称に分ける位置に,一定の幅で形成されている。
【0050】
図12a,
図12bは,
図11a,
図11bに示す錐状の頂部を持つノズル22Bに,
図7aに示す乱流形成部材31を組合せて,液膜Fが吐出される様子を示すものである。乱流形成部材31の分岐流路35の2つの開口はスリット25Bに関して線対称の位置にある。このようなノズルと乱流形成部材の組合せでも液膜Fにより,ほぼ一定幅の塗布膜が得られる。
【0051】
図13a,
図13bは頂部の錐状の角度を,
図11a,
図11bに示すものよりも鋭角にした変形例のノズル21Bを示すものである。
【0052】
図14a,
図14bは,胴部の先端を錐状にした乱流形成部材の変形例を示すものである。この変形例の乱流形成部材31Cでは,2つの分岐流路35Cが錐状(円錐状または四角錐状)の斜面に開口している。この乱流形成部材31Cに,
図6a,
図6bに示すノズル21(または
図8a,
図8b)に示すノズル21が組合されている。乱流形成部材31Cの分岐路35Cの開口は,ノズル21のスリット25に関して線対称の位置に形成されている。
【0053】
図15a~
図15dは,乱流形成部材と組合されたさまざま形のノズルを斜視的に示すものである。
【0054】
図15aは
図8a,
図8b(または
図6a,
図6b)に示すノズル21,
図15bは
図11a,
図11b(または
図12a,
図12b)に示すノズル21B,
図15cは
図13a,
図13bに示すノズル21Bを示している。いずれも筒部は円筒状である。
図15dは,円筒状の筒部を持つノズルにおいて,頂部23Dを四角錐状に4つの等しい形状の斜面で形成したノズル21Dである。スリット25Dは,
図15dに示すように頂部23Dを形成する斜面の中央に,または隣接する斜面の境界(稜線)に形成される。
【0055】
図16a,
図16b,
図17a,
図17bは乱流形成部材の分岐路をまとめたものである。
図16a,
図16bは既に述べた
図7a,
図7bに示すような2つの分岐路を持つ乱流形成部材を示している。
図17a,
図17bは,4つの分岐流路35Dを持つ乱流形成部材31Dを示す。この場合も,分岐流路35Dの開口は,ノズルのスリット25(鎖線で示す)に関して,線対称の位置にあけられる。
【0056】
最後に,
図6aおよび
図6bに示すノズル(寸法は先に一例として示したもの)を用いた実験結果(乱流形成部材無)を示す。このノズルに
図7aおよび
図7bに示す乱流形成部材(寸法は先に一例として示したもの)を組合せたもの(
図8a,
図8bに示す組合せ)を用いた実験結果(乱流形成部材有)も示す。
【0057】
塗布高さHはノズル先端から対象物の塗布面までの距離(
図9a参照)を示す。塗布速度はロボットによるガンのY方向移動(ノズルのスリットの長さ方向に直交する方向)の速度(スキャン速度)。各塗布速度について,対象物表面に形成された塗布膜の厚さ(膜厚)と,幅(塗布幅)(最大幅W1と最小幅W2)およびノズルをオフしたときに生じる液垂れの長さLを測定した。実験は,乱流形成部材無の場合(塗布高さHは10mmのみ)と,乱流形成部材有の場合(塗布高さHは10mmの場合と,15mmの場合)について行った。液体圧力は,ガンに供給する液体に加える圧力の意味。吐出量はノズルからの液体の吐出量。
【0058】
実験1
塗布材料:防湿絶縁材 型式Dow Corning 1-2577,粘度 950CPS,種類 溶剤型シリコーン系(溶剤含有料27.7%),材料メーカー Dow Corning社
【0059】
【0060】
【0061】
実験2
塗布材料:防湿絶縁材 型式 602MCF-1000,粘度 1000CPS,種類 無溶剤型ウレタン系 UV硬化タイプ,材料メーカー 富士化学産業(株)
【0062】
【0063】
【0064】
これらの表1~表4および
図18a~
図21cから分るように実験1,実験2のいずれにおいても,乱流形成部材の存在によって安定した液体の塗布が可能となっている。すなわち,塗布幅についてみると,乱流形成部材無しの場合には,塗布幅の変動(最大幅W1と最小幅W2との差)が10%前後またはそれ以上であるのに対して,乱流形成部材有りの場合には,塗布幅の変動は5%未満に抑えられている。乱流形成部材有りの場合には,塗布厚さの変動も5%前後に抑えられている。さらに,ノズルをオフしたときの液垂れ長さLは乱流形成部材を設けた場合には極端に短くなっている(乱流形成部材無しと比べて1/3より短くなっているケースもある)。乱流形成部材有の場合には,乱流形成部材無しの場合に比べて,液体圧力(加圧圧力)が低くなり,吐出量が少なくなっている。液体圧力が低くなることは,塗布膜の膜幅や膜厚の変動が小さくなり,ノズルのオフ時の液垂れ長さも小さくなることに寄与していると思われる。乱流形成部材を設けることによって,すべての観点においてすぐれた塗布が達成されている。実験結果(図面)には示されていないが,液体のはね返りの発生が無くなるか,少なくなることも視認できた。
【符号の説明】
【0065】
1 ロボット装置
2 塗布用ガン
16 プリント配線基板(PCB)(塗布対象物)
21,21A,21B,21D ノズル
22,22A,22B 筒部
23,23B,23D 頂部
24 フランジ
25,25B,25D スリット
26,26A 乱流形成室(空間)
31,31A,31C,31D 乱流形成部材
32,32A 筒部
33 フランジ
34 主流路
35,35C,35D 分岐流路
40 エアシリンダ
41 シリンダ
44 ピストン
47 復帰コイルばね
50 メインボディ
60 エクステンション
61 ニードル
61a ニードル先端部
62a 流出孔
64 ノズル固定用ナット
F 液膜
S,S0,S1,S2,Si 塗布膜
【要約】
中高粘度の流体であっても,比較的小型の対象物に,飛散を生じさせることなく,均一に塗布でき,そして塗り分け(選択的塗布)を可能とする。筒状のノズルの先端部に,液体吐出方向に突出した半円球状,錐状,錐台状の頂部を設け,この頂部にスリットを形成する。ノズルの筒状部分には乱流形成部材を配置する。乱流形成部材には,液体が供給される1つの主流路と,この主流路から分岐した2つの分岐流路を形成する。2つの分岐流路から流出する液体はノズル先端の筒状部分および頂部の空間内で乱流を形成し,ほぼ均一化された圧力でスリットから幅のある液膜として吐出される。液膜が霧化する前の位置で液膜を対象物に塗布する。