(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】カバーソケット、ハンドリング装置及び半導体検査書き込み装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20240813BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R31/26 Z
(21)【出願番号】P 2020079136
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502059009
【氏名又は名称】株式会社ロムテック
(74)【代理人】
【識別番号】100115613
【氏名又は名称】武田 寧司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼良 元
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-216279(JP,A)
【文献】特開平09-281184(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122471(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0154023(US,A1)
【文献】国際公開第2005/053015(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/114457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みに用いるカバーソケットであって、
前記半導体デバイスの外形に対応する対応形状を有するデバイスカバー部を備える先端具と、当該先端具を収容する収容部を有するとともに前記半導体デバイスの端子に接触するピンを保持する基体具とを有し、
前記先端具には上方から下方に貫通する貫通孔を有し、前記基体具には前記対応形状を形成するカバー片と前記先端具に露出するエア通路とを有し、当該エア通路及び前記貫通孔を通じて前記半導体デバイスを吸引して前記対応形状を形成する前記カバー片に前記半導体デバイスを吸着して前記ピンに対する前記半導体デバイスの位置を位置決め可能なカバーソケット。
【請求項2】
前記カバー片は、前記半導体デバイスに対する付勢力の無いカバー片である請求項1記載のカバーソケット。
【請求項3】
前記カバー片は、前記先端具の下面を形成する4辺から突出し、前記半導体デバイスの外縁に当接する4片からなるものである請求項1又は請求項2記載のカバーソケット。
【請求項4】
前記半導体デバイスがその片面にのみ電極を有する半導体デバイスであり、当該半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みに用いる請求項1~請求項3何れか1項記載のカバーソケット。
【請求項5】
前記先端具は前記収容部内を上下動可能であり、前記先端具の突出状態と引き込み状態を位置決めするストッパー機構を有する請求項1~請求項4何れか1項記載のカバーソケット。
【請求項6】
前記先端具が半導体デバイスに当接した状態で前記ピンが前記半導体デバイスの端子の上面に接触可能な請求項1~請求項5何れか1項記載のカバーソケット。
【請求項7】
請求項1~請求項6何れか1項記載の前記カバーソケットを備えるハンドリング装置。
【請求項8】
請求項7記載のハンドリング装置と、前記半導体デバイスに対する検査又はプログラム等の書き込みを行う装置本体部と、制御装置とを備える半導体検査書き込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスのテストや、プログラム、データ等の書き込みを効率良く行うためのカバーソケット、ハンドリング装置、半導体検査書き込み装置及び半導体検査書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは製造された後、トレーの収容部に一つずつ収容され、この半導体デバイスのテストやプログラム等の書き込みを行う次作業現場に運ばれる。テストや書き込み工程では、トレーから半導体デバイスがピックアップ装置によって取り出されオープントップやクラムシェルといった所定のソケットに移される。ソケットにはライターやテスター等が接続されており、ソケットに置かれた状態で半導体デバイスのテストや書き込みが行われる。そしてテストや書き込みが終了すれば、半導体デバイスをソケットから再びピックアップ装置で取り出してトレーに移し、コンピュータ等に半導体デバイスを組み込む製造工程を行う次作業現場に運ばれる。
【0003】
上記のように、半導体デバイスが問題なく機能するかどうかのテストや、プログラム等を書き込むための工程においては、ピックアップ装置からソケットの上に正確に半導体デバイスを載置するのが困難な場合があり、位置ズレが生じると正確なテストやプログラムの書き込みができないという課題があった。また、トレーから半導体デバイスを取り出して、また元のトレーに戻すという作業を行っていたため、ソケットに乗せる際やトレーに戻す際に、半導体デバイスの端子(リード)部分がソケットの樹脂部分や、トレーの角などに接触し、端子が曲がってしまうという不都合が生じる場合があった。そして、ピックアップ装置で半導体デバイスをピックアップし、再びトレーに戻すというハンドリングタイムに非常に時間がかかるという課題があった。
【0004】
こうした課題に対し、トレーから複数の半導体デバイスを一度に所定の装置に移し、その装置で複数の半導体デバイスに対して同時にテストや書き込みを行う技術が特開2007-309787号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2007-309787号に記載された技術は、所定の装置を、半導体デバイスが収容されているトレーに合わせた大きさ形状に設計するするため、汎用性が低い方法であった。また装置が大掛かりになり、これまでになかった工程が増えるなどの問題もあった。本発明は、特開2007-309787号公報に記載されたような技術とは別のアプローチでこれまでの課題を解決するものであって、半導体デバイスに対するテストや書き込み工程にかかる時間を短縮し、半導体デバイスの端子の損傷を防ぐことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は次に掲げる技術を提供する。
本発明の一態様は、半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みに用いるカバーソケットであって、前記半導体デバイスの外形に対応する対応形状を有するデバイスカバー部を備える先端具と、当該先端具を収容する収容部を有するとともに前記半導体デバイスの端子に接触するピンを保持する基体具とを有するカバーソケットである。
半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みに用いるカバーソケットについて、半導体デバイスの外形に対応する対応形状を有するデバイスカバー部を備える先端具を有しているため、この先端具を半導体デバイスに当接させることで半導体デバイスに対する先端具の相対的な位置取りを確実にし、半導体デバイスに対してカバーソケットを正確に位置決めし確実な導通を図ることができる。
【0008】
本発明は、前記先端具が半導体デバイスに当接した状態で前記ピンが前記半導体デバイスの端子の上面に接触可能なカバーソケットとすることができる。
先端具が半導体デバイスに当接した状態で前記ピンが前記半導体デバイスの端子の上面に接触可能なカバーソケットとしたため、半導体デバイスとカバーソケットとの位置関係を所定の位置関係に確実に置くことができ、両者の位置ズレを防止することができる。そして、カバーソケットに設けたピンを半導体デバイスの端子の上面に接触させるため、半導体デバイスが既に回路に接続され、端子の下面が既に回路と接続されて解放されていない場合においても、半導体デバイスのテストや、プログラム等のさらなる書き込みを行うことができる。よって、新品の半導体デバイスだけでなく、使用済み又は使用中の半導体デバイスに対するテストや、プログラム等の書き込みを行うことができる。また、ピンを端子の上面に上方から接触させるため、端子の側面や下面に接触させる場合に比べて端子の変形を起こし難く、傷つけ難い。端子の上面から接触し押圧しても端子の下面が接地しており安定であるのに対し、端子の側面や底面から接触し押圧すると、その反対面は固定されていないため、不安定であるからである。
【0009】
前記先端具は、前記対応形状を形成するカバー片を有するカバーソケットとすることができる。
前記先端具は、前記対応形状を形成するカバー片を有するため、カバー片を半導体デバイスの外縁に当接させることができ、先端具と半導体デバイスの位置関係を確定し両者を位置決めすることができる。また、カバー片により半導体デバイスと当接させるため、カバー片の傾き等の調整により簡単に当接状態を微調整できる。
【0011】
本発明は、前記先端具は前記収容部内を上下動可能であり、前記先端具の突出状態と引き込み状態を位置決めするストッパー機構を有するカバーソケットとすることができる。
先端具は前記収容部内を上下動可能であり、前記先端具の突出状態と引き込み状態を位置決めするストッパー機構を有するため先端具を所定の突出状態と引き込み状態に置くことができる。また簡単な構造で先端具を所定の位置に留め置くことができる。あるいはまたこうしたストッパー機構を備えるため、ピンが端子に接触する位置で先端具が止まるようにストッパー機構を設定すれば、カバーソケットに設けたピンが半導体デバイスに設けた端子に対して過度に押圧することがない。したがって、端子の折れ曲がり等の変形や、損傷を防止することができる。
【0012】
前記ストッパー機構は、前記収容部と前記先端具の何れか一方に設けた突起と、前記収容部と前記先端具の何れか他方に設けた溝とで形成されるカバーソケットとすることができる。
ストッパー機構は、前記収容部と前記先端具の何れか一方に設けた突起と、前記収容部と前記先端具の何れか他方に設けた溝とで形成したため、突起と溝による簡単な嵌合構成でストッパー機能を発揮することができる。そのため構造が簡単で、カバーソケットの重さも軽くすることができる。
【0013】
本発明はまた、前記カバーソケットを備えるハンドリング装置とすることができる。
本発明を、前記カバーソケットを備えるハンドリング装置としたため、テストやプログラム等の書き込みの対象となる半導体デバイスをピックアップすることなく、目的のテストやプログラム等の書き込みを行うことができる。また、多用途で用いられているピックアップ装置を利用、又は転用して用いることができる。
【0014】
本発明はさらに、前記ハンドリング装置と、前記半導体デバイスに対する検査又はプログラム等の書き込みを行う装置本体部と、制御装置とを備える半導体検査書き込み装置とすることができる。
前記ハンドリング装置と、前記半導体デバイスに対する検査又はプログラム等の書き込みを行う装置本体部と、制御装置とを備える半導体検査書き込み装置としたため、制御装置がハンドリング装置や装置本体部の動作を制御することができ、前記ハンドリング装置に半導体デバイスと導通接触させるカバーソケットを設けることができ、装置本体部が半導体デバイスに対するテストや、プログラム等の書き込みを行うことができる。
【0015】
あるいはまた、本発明は半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みを行う半導体検査書き込み方法について、前記半導体デバイスの外形に対応する対応形状を有するデバイスカバー部を備える先端具と、当該先端具を収容する収容部を有するとともに前記半導体デバイスの端子に接触するピンを保持する基体具とを有するカバーソケットを前記半導体デバイスの上方から接触させて、半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みを行う半導体検査書き方法とすることができる。
【0016】
半導体デバイスのテスト又はプログラム等の書き込みを行う半導体検査書き込み方法について、前記半導体デバイスの外形に対応する対応形状を有するデバイスカバー部を備える先端具と、当該先端具を収容する収容部を有するとともに前記半導体デバイスの端子に接触するピンを保持する基体具とを有するカバーソケットを用いたため、先端具で半導体デバイスに対する位置決めを確実にしながらピンを端子に接触させることができるため、両者の導通を確実にすることができる。
また、半導体デバイスの上方からカバーソケットに設けたピンを接触させるため、既に回路等に組み込まれ取り付けられている半導体デバイスに対するテストや、プログラム等の書き込みを行うことができる。そのため、新品の半導体デバイスだけでなく、製品に組み込まれた既使用の半導体デバイスに対して適用することができる。
【0017】
そして、前記カバーソケットをハンドリング装置に設け、当該ハンドリング装置を動かして前記カバーソケットのピンを半導体デバイスの端子に接触させる半導体検査書き込み方法とすることができる。
カバーソケットをハンドリング装置に設けたため、カバーソケットを半導体デバイスに対して相対的に動かすことができる。そして、当該ハンドリング装置を動かして前記カバーソケットのピンを半導体デバイスの端子に接触させるため、半導体デバイスをピックアップするなど動かす必要がない。そのため、半導体デバイスを動かすことによる端子の折れ曲がり等の変形や損傷を防ぐことができる。また、半導体デバイスを動かすことによるハンドリング時間よりもハンドリング装置を動かすハンドリング時間の方が短くできるため、作業時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体デバイスに対するテストや書き込み工程に対する時間を短縮し、半導体デバイスの端子の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】半導体検査書き込み装置のブロック図である。
【
図2】トレーに収容された半導体デバイスの概略平面図と一部拡大図である。
【
図4】先端具の斜視図であり、分
図4(A)は先端具を上方から見た斜視図であり、分
図4(B)は先端具を下方から見た斜視図である。
【
図5】先端具のデバイスカバー部に有するカバー片の形状を説明する説明図である。
【
図6】カバーソケットの動作を説明する正面図であり、カバーソケットが所望の半導体デバイスの上方位置に移動する状態を示す。
【
図7】カバーソケットの動作を説明する正面図であり、カバーソケットの先端具が所望の半導体デバイスに当接する状態とその一部拡大図を示す。
【
図8】カバーソケットの動作を説明する正面図であり、カバーソケットの先端具がさらに押し込まれてカバーソケット内により深く収容されるとともにピンが半導体
デバイスの端子に接触する状態とその一部拡大図を示す。
【
図9】カバーソケットの動作を説明する側面図であり、分
図9(A)は
図6相当の状態を示し、分
図9(B)は
図7相当の状態とその一部拡大図を示し、分
図9(C)は
図8相当の状態とその一部拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の部位、材料、機能、作用効果等については、重複説明を省略する。
【0021】
第1実施形態:
本発明の半導体検査書き込み装置1のブロック図を
図1に示す。半導体検査書き込み装置1は、半導体デバイス(以下、単に「デバイス」ともいう)の検査又は書き込みを行うリーダーやライター等からなる装置本体部2と、個々のデバイスが置かれた位置にカバーソケット10を動かしてそのデバイスにカバーソケット10を接触させるハンドリング装置3と、装置本体部2とハンドリング装置3の動作を制御する制御装置4とを有している。
【0022】
半導体検査書き込み装置1は、カバーソケット10でデバイスを覆って装置本体部2と導通させることでデバイスに対するテストやプログラム等の書き込みを行い、このカバーソケット10を複数のデバイスに対して次々と移動させながら複数のデバイスのテストや書き込み等の処理を行う装置である。以下に、半導体検査書き込み装置1を構成する各部位についてより詳しく説明する。
【0023】
装置本体部2は、デバイスに対してテストやプログラム等の書き込みを行うためのリーダーやライターといった従来の装置をそのまま利用することができる。また、制御装置4は、こうした装置本体部2や、後述するハンドリング装置3の動作等を制御する機能を有する装置である。なお制御装置4は、装置本体部2及びハンドリング装置3とは別に設けるものとする他、装置本体部2及びハンドリング装置3のそれぞれに備わる制御部を利用するものでも良い。
【0024】
図2で示すように、製造されたデバイスDは、通常、トレーTの凹部Uに縦横に収容されて検査又はプログラム等の書き込み工程に持ち込まれる。こうしたデバイスDに対して、ハンドリング装置3は、後述するカバーソケット10をデバイスDの上方位置に位置するように動かすとともに、そのデバイスDに接触させるようにカバーソケット10を下方に動かし、所定の処理が終了すれば、そのデバイスDからカバーソケット10を離すように動かす機能を有する装置である。半導体製造時に半導体チップを持ち上げて配線基板上に置くピックアップ装置や、トレー内からデバイスを取り出して検査又は書き込みを行った後、トレーTに戻す際に用いるピックアップ装置等と同様に動作する装置を利用することができ、これらの装置を改良して用いることができる。
【0025】
カバーソケット10はハンドリング装置3の一部であり、トレー上に置かれたデバイスDに当接する部位となる。
図3で示すように、カバーソケット10は、取付部21と収容部22を備える基体具20と、先端具30とを備える。取付部21はハンドリング装置3の本体(図示せず)に取り付ける部位であり、収容部22は先端具30を収容する部位であり、またピン24を収容している。ピン24は、配線23を一端側に連結し、他端側はデバイスDの端子Pに接触する位置に設けている。
【0026】
ピン24の一端から伸びる配線23は、基体具20に備わる通し孔25でまとめられて取付部21側に連なるように配置され、前記装置本体部2に接続している。また収容部22には外側からビス26がはめ込まれ、収容部22内に挿入される先端具30に設けたビス用溝35に当接させている。さらに基体具20の中央内部にはエア通路27を備え、そのエア通路27は収容部22に収容された先端具30に露出する。
【0027】
ピン24を配置する間隔、本数は、デバイスDの端子Pに対応する間隔、本数とすれば良いが、デバイスDの端子の本数よりも多く設け、端子Pの数が異なる種々のデバイスDに適用できる汎用性のあるカバーソケット10とすることができる。
また、ピン24の先端には汎用的なコンタクトプローブを用いることができ、その先端形状はニードルや、クラウンとすることができる。
【0028】
先端具30の斜視図を
図4(A)及び
図4(B)に示す。先端具30の下側には先端具30の下面31に対して交差する方向に突出するカバー片32を備えるデバイスカバー部33が形成されている。この4つのカバー片32の少なくとも内側面32aは、
図5で示すように、斜めに形成されており、先端具30の下面31から下方に向かって4つのカバー片32の内側面32aが広がったテーパー状となっている。そのため、4つの内側面32aとデバイスDの上方角とが対応した対応形状を形成するため、4つのカバー片32がデバイスDの外側形状を囲むことで、先端具30に対するデバイスDの位置を位置決めする機能を奏する。また、先端具30の上側には前記収容部22に収容される被収容部34を形成しており、この被収容部34にはビス用溝35を備えている。このビス用溝35に上記ビス26をはめ込むことで収容部22に対する先端具30の突出状態と引き込み状態の上限を確定し、収容部22に対する先端具30の突出位置を位置決めするストッパー機構として機能する。そして先端具30には上方から下方に貫通する貫通孔36を有している。
【0029】
なお、先端具30のデバイスカバー部33の形状は、先端具30の下面31を形成する四辺から4本のカバー片32が突出する形状として形成したが、対向する2辺のみにカバー片32を設けることもできる。長尺状のデバイスなどの場合にはその4辺で当接させることが難しくなり、2片で当接させることが合理的である。
【0030】
次に、半導体検査書き込み装置1の動作について説明する。
デバイスDの検査、又はデバイスDへのプログラム等の書き込み工程において、
図6及び
図9(A)で示すように、ハンドリング装置の本体(図示せず)の先端に設けたカバーソケット10は、操作対象となる次のデバイスDに向かって横方向に動き、また
図7及び
図9(B)で示すように、カバーソケット10がデバイスDの上部を覆うように下方に移動する。このとき、デバイスDの上部外形に対して、デバイスカバー部33のカバー片32が当接する対応形状に形成されており、またエア通路27及び貫通孔36を通じて吸引されるため、デバイスDの微細な位置ズレがあったとしても先端具30に対して正確に位置決めされる。この状態では
図7の部分拡大
図R1で示すように、先端具30はデバイスDの上部に接触しているものの、カバーソケット10に備わるピン24は接触していない。
【0031】
さらに
図8及び
図9(C)で示すように、カバーソケット10の基体具20をさらに下方に下げると、先端具30が収容部22内を上方にスライドし、
図8の部分拡大
図R2で示すように、収容部22に設けたピン24がデバイスDの端子Pに接触する。このとき、先端具30に設けたビス用溝35に
図3で示すビス26が当接し得る範囲までしか先端具30がスライドしないため、基体具20が必要以上に降下してピン24が過度に端子Pを押圧するのを防止する。端子Pとピン24の接触状態で、デバイスDに対する検査、又はプログラム等の書き込みが行われ、それが終了すれば、デバイスDに対する吸引を止め、カバーソケット10は、次の未処理のデバイスDに移動する。この際、先端具30がその自重によってカバーソケット10の収容部22からより突出した状態に下降する。そして次の処理デバイスDの上面に先端具30のデバイスカバー部33を接触させる。このようにして複数のデバイスDに対して上記の操作を同様に繰り返す。
【0032】
従来の装置では、トレーからデバイスをピックアップし、所定のソケットに移した後、検査又はプログラム等の書き込みを行い、再び元のトレーに戻すという操作を行っていたのに対し、半導体検査書き込み装置1では、ハンドリング装置3のカバーソケット10がデバイスからデバイスに移動するだけで済むため、ハンドリング時間の大幅な短縮を達成することができる。
【0033】
従来の装置では、デバイスをソケットアダプタに装着して検査やプログラム等の書き込みをしていたため、ソケットアダプタに設けた金属部の上にデバイスの端子のうちリードフット(基板に接地する面)が乗るように装着していた。そのため、ソケットアダプタの金属部は、デバイスのリードフットの大きさと同じ大きさの金メッキ板が並び、多数のデバイスを処理すると、デバイスの「はんだくず」が蓄積して導通が悪くなるという不都合が生じ易かった。また、デバイスの端子は時間経過や不適切な環境下で酸化して前記金属部との接触不良が生じる場合があった。しかしながら半導体検査書き込み装置1では、ピン24がデバイスの端子の上側からコンタクトするため、はんだくずの問題は生じ難く、また、端子に接触するのは、金めっき板ではなく、ピン24であるため、その鋭利な先端で酸化膜を突き破って確実な導通が可能となる。
【0034】
また、個々のデバイスをピックアップしないため、従来の装置でトレーからピックアップして戻す際にデバイスの端子Pを傷つけるような不具合が生じない。加えて、個々のデバイスのピックアップが不要なことから、既に回路に組み込まれた後のデバイスについてもテスト又はプログラム等の追加書き込みができる。
ハンドリング装置3としては、従来のデバイステストやプログラム等の書き込みの際に用いていたピックアップ装置を利用してそのアーム部分の先端にカバーソケット10を取り付けることでハンドリング装置3に改良することができ、適用が容易である。
【0035】
加えて、従来の装置では、プログラム等の書き込みを行うROM書込み器にソケットアダプタを装着し、そのソケットアダプタ内にデバイスを正確に収納して電気接続を行う必要があったため、ROM書込み器は、デバイスをハンドリングするハンドリングアームの動作範囲内に設置する必要があった。しかし、半導体検査書き込み装置1では、ROM書込み器に通じる配線23をカバーソケット10につなげれば良いため、ROM書込み器をハンドリングアームの動作範囲内に設置する必要はなく、省スペース化が可能となる。
【0036】
また、従来の装置では、ある型式のデバイスに書込みできるROM書込み器が複数種類あっても、そのROM書込み器に対応したソケットアダプタを使うことしかできなかったため、ソケットアダプタが決まればそれに適用できるデバイスも限られてしまい、種々のROM書込み器が使えないという不都合があった。しかし、半導体検査書き込み装置1では、種々のROM書込み器から簡単にカバーソケット10を接続できるため、作業に必要なROM書込み器の選択肢が増えるといった利点がある。
【0037】
さらにまた、従来の装置では、ソケットアダプタに対するデバイスの位置を正確に制御するため、カメラによって補正する必要があったが、半導体検査書き込み装置1では、先端具30に設けたテーパー形状と、デバイスに対する吸引によって精度よくデバイスを位置決めできるため、従来の装置で用いていた位置決め補正カメラが不要になる。
【0038】
第2実施形態:
第1実施形態では、一つのカバーソケット10を、トレーT内に縦横に収容された複数のデバイスDに対して一つずつ動かして、デバイスDのテスト又はプログラム等の書き込みを行う例を挙げて説明したが、本実施形態の半導体検査書き込み装置(図示せず)は、予め複数個のカバーソケット10をハンドリング装置3に準備しておき、一度の動作で複数のカバーソケット10を動かして、複数の半導体デバイスDに対して同時に処理ができるようにしたものである。
こうした態様によれば、ハンドリング時間をさらに短縮することができる。
【0039】
変形形態:
上記実施形態ではハンドリング装置3を半導体デバイスに対して動かすものとしたが、半導体デバイスの入ったトレーTを動かすようにしても良い。こうした場合には、トレーTを保持する部位をハンドリング装置3に設け、カバーソケット10に対してトレーTを保持する部分を動かすように構成する。
【0040】
上記実施形態は本発明の一例であり、こうした形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度において、種々の変更や置換を行い得るものである。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体検査書き込み装置
2 装置本体部
3 ハンドリング装置
10 カバーソケット
20 基体具
21 取付部
22 収容部
23 配線
24 ピン
25 通し孔
26 ビス
27 エア通路
30 先端具
31 下面
32 カバー片
32a 内側面
33 デバイスカバー部
34 被収容部
35 ビス用溝
36 貫通孔
4 制御装置
D デバイス
P (デバイスの)端子
T トレー
U 凹部
R1~R4 部分拡大図