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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/06 20060101AFI20240813BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20240813BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F16D41/06 E
F16D41/08 Z
F16D41/067
F16D41/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020152845
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047107
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】山田 飛高
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00-41/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部(24)を有し、回転トルクが入力される入力部材(10)と、
前記入力部材(10)から伝達される回転トルクを出力する出力部材(80)と、
前記入力部材(10)と、前記出力部材(80)とを回転可能に保持するケース部材(90)と、を備え、
前記出力部材(80)は、前記凹部(24)に挿入され、回転トルクが伝達されるトルク中継部(82)を有し、
前記入力部材(10)は、前記凹部(24)に配置されており、前記トルク中継部(82)が挿入される中空部(43)を有するトルク伝達部材(40)と、前記トルク伝達部材(40)を付勢するスプリング(50)と、を有し、前記出力部材(80)から所定値以上の回転トルクが入力された場合に前記ケース部材(90)に接触して、前記入力部材(10)に制動力が作用する、クラッチ。
【請求項2】
前記トルク中継部(82)と、それに対応する前記トルク伝達部材(40)とが、それぞれ複数設けられており、周方向等間隔にそれぞれ配置されている、請求項に記載のクラッチ。
【請求項3】
前記トルク中継部(82)は、回転可能に保持され、前記トルク伝達部材(40)に接触して回転トルクが伝達されるローラ(60)を有している、請求項又はに記載のクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された回転トルクを伝達するクラッチに関し、特に出力軸から所定値以上の回転トルク入力がある場合に回転を停止させるクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転トルクを伝達する伝達装置において、入力軸が逆回転する場合には入力トルクが伝達されない一方向クラッチが知られている。特許文献1に開示されているクラッチでは、特許文献1の図2等に示されているように、入力軸1と、出力外輪3との間にローラ13が配置された構造を備えている。入力軸1が一方向に回転すると、ローラ13は入力軸1と、出力外輪3との間に設けられている楔形状空間に押し込まれる。押し込まれたローラ13は、入力軸1と、出力外輪3との間に入り込んで固定され、両者を一体化する連結部材となり、入力軸1と、出力外輪3とが連結状態になる。その結果、入力軸1と、出力外輪3とは、一体的に回転する。
【0003】
一方、入力軸が上記に対して逆回転する場合、又は出力軸に入力と同方向で所定値以上のトルク入力がある場合には、ローラ13は楔形状空間から解放され、入力軸1と、出力外輪3とは、入力トルクが伝達されない非連結状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-15173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ローラ13は、周囲の部材に対して常に滑りながら移動しているため、安定作動の点から、高速回転では用いることが困難であった。そのため、例えばモータ出力を入力する場合は、モータ出力回転をクラッチの許容回転数以下に減速して入力していた。すなわち、クラッチの許容回転数以下の入力回転数でのみ使用可能という制限があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、高速回転でも回転トルクを伝達するとともに、入力軸への回転トルクに対し出力軸からの所定値以上の回転トルク入力がある場合には、入力回転トルクを伝達しないクラッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態に係るクラッチは、凹部を有しており、回転トルクが入力される入力部材と、入力部材から伝達される回転トルクを出力する出力部材と、入力部材と出力部材とを回転可能に保持するケース部材と、を備え、出力部材は、凹部に挿入され、回転トルクが伝達されるトルク中継部を有し、入力部材は、凹部に配置されており、トルク中継部が挿入される中空部を有するトルク伝達部材と、トルク伝達部材を付勢するスプリングと、を有し、出力部材から所定値以上の回転トルクが入力された場合にケース部材に接触して、入力部材に制動力が作用する。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本実施の形態に係るクラッチは、従来のような楔空間に部材が入り込んで連結する構造を備えずに構成されている。よって、高回転速度で回転トルクを伝達できるとともに、出力軸から逆入力があったときは、クラッチの回転を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係るクラッチを示した斜視図である。
図2図1のクラッチの回転軸に平行な断面による断面図である。
図3図1のクラッチの構成部品を示した概要図である。
図4図1のクラッチの第1部材を示した正面図である。
図5図1のクラッチの第1部材を示した左側面図である。
図6図1のクラッチの第1部材を示した右側面図である。
図7図1のクラッチの第2部材を示した正面図である。
図8図1のクラッチの第2部材を示した右側面図である。
図9図1のクラッチのトルク伝達部材を示した正面図である。
図10図1のクラッチのトルク伝達部材を示した左側面図である。
図11図1のクラッチのローラを示した正面図である。
図12図1のクラッチのローラを示した左側面図である。
図13図1のクラッチの出力部材を示した正面図である。
図14図1のクラッチの出力部材を示した左面図である。
図15図1のクラッチの出力部材を示した右面図である。
図16図1のクラッチの回転軸に垂直な断面による断面図である。
図17図16におけるA部の部分拡大図である。
図18図17におけるD部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態>
図1図3を参照しながら、本実施の形態に係るクラッチ100を説明する。図1は、クラッチ100を示した斜視図である。図2は、図1のクラッチ100の回転軸Xに平行な断面による断面図である。図3は、クラッチ100の構成部品を示した概要図である。
【0011】
図1に示されているとおり、クラッチ100は、入力軸23を有して回転トルクが入力される入力部材10と、入力部材10から回転トルクが伝達され、出力軸83を有している出力部材80と、入力部材10及び出力部材80を回転可能に保持しているケース部材90とを備えている。入力部材10と、出力部材80とは、ともに円形の外径形状を有しており、円筒形状のケース部材90はそれらの外縁部全周を囲んでいる。
【0012】
次に、図1図3に加えて、図4図18を参照しながら、クラッチ100が備えている部材を説明する。
【0013】
入力部材10は、回転トルクが入力される第1部材20と、第1部材20に固定されている第2部材30と、第1部材20と第2部材30とを固定している締結部材70と、第1部材20に収容されている、トルク伝達部材40とスプリング50とを有している。
【0014】
図4図6は、第1部材20を示しており、それぞれ正面図、左側面図、及び右側面図である。第1部材20は、回転トルクが入力される部材である。第1部材20は、円筒形状に形成された円筒部21と、円筒部21の一方の端面である端面22と、端面22に設けられている入力軸23とを有している。第1部材20は、第1部材20の回転軸X1がクラッチ100の回転軸Xと同軸になるように配置されている。
【0015】
図6の右側面図が示しているとおり、入力軸23が設けられている面に対し反対側の面には、凹部24が長手方向を径方向にして、周方向に180°間隔で2つ設けられている。各々の凹部24は、凹部24の外周側に配置されている外周側凹部24aと、外周側凹部24aより内周側に配置されている内周側凹部24bとをそれぞれ有している。外周側凹部24aと、内周側凹部24bとは径方向に直列しており、接続部には対向する互いの壁に向かって、突部25がそれぞれ設けられている。円筒部21の凹部24が設けられている面には、締結部材70が挿入される嵌合穴が、4つ設けられている。各々の凹部24には、トルク伝達部材40と、スプリング50とがそれぞれ収容されている。
【0016】
図9図10は、トルク伝達部材40を示しており、それぞれ正面図、及び左側面図である。トルク伝達部材40は、外形がほぼ四角で枠形状に形成されており、内側に中空部43を有する枠部41と、枠部41に接続しているスプリング保持部42とを有している。枠部41は、外径部45と、外径部45に対向する内径部44と、外径部45と内径部44とを接続している径方向部46と、を有している。
【0017】
内径部44には、円筒形状のスプリング保持部42が接続されている。スプリング保持部42の先端側には、スプリング保持部42の他の部分に比べ、外径が大きく形成された先端拡径部47が設けられている。中空部43には、出力部材80のトルク中継部82に回転可能に保持されたローラ60がそれぞれ挿入されている。
【0018】
図18には、枠部41の一部の周辺部が示されている。外径部45の内面45aは、外径部45の両端部ほど、すなわち径方向部46に近づくほど、内径部44側に張り出して形成されている。後述するように、ローラ60は、クラッチ100の停止状態、及び、入力軸23に回転トルクが入力され、かつ出力軸83からの回転トルク入力がない場合には、外径部45の内面45aの左右方向の中央部に位置している。
【0019】
トルク伝達部材40とスプリング50とは、スプリング50にスプリング保持部42が挿入されて一体に組み立てられた状態で、凹部24にそれぞれ収容されている。枠部41は外周側凹部24aに、スプリング保持部42とスプリング50とは内周側凹部24bに収容されている。この状態で、スプリング50の一端部は突部25に接しており、他端部はスプリング保持部42の先端拡径部47に接している。したがって、トルク伝達部材40は、スプリング50によりトルク伝達部材40の中心である回転軸X1方向に付勢されている。
【0020】
トルク伝達部材40はスプリング50により回転軸X1に向かって付勢されているので、トルク伝達部材40の外径部45の内面45aは、ローラ60の外周面に押し付けられている。また、トルク伝達部材40の外径部45の内面45aは、外径部45の両端部ほど、内径部44側に張り出して形成されている。ローラ60は、入力軸23に入力される回転トルクに対し、出力軸83に所定値以上の回転トルクが入力された時に、外径部45の内面45a上を移動する。すなわち、ローラ60が外径部45の内面45a上を移動するには、外径部45の両端部側ほど急斜面に形成されている外径部45の内面45a上を、回転軸X1に向かって付勢しているスプリング50の付勢力に打ち勝つ周方向の回転トルクがトルク中継部82を介してローラ60に作用する必要がある。入力部材10に制動力がかかる出力軸83への回転トルク入力の所定値は、外径部45の内面45aの斜面形状、すなわち斜面度合と、スプリング50の付勢力とにより決定される。したがって、これらを変えることで、入力部材10に制動力がかかる時の出力軸83への回転トルク入力値を変更することができる。
【0021】
図7図8には、第2部材30が示されている。図7は第2部材30の正面図、図8は第2部材30の右側面図である。第2部材30は、凹部24にトルク伝達部材40とスプリング50とが収容された状態で、凹部24を塞ぐように、複数の締結部材70で第1部材20に固定されている。第2部材30は、第1部材20の円筒部21の外径と同径に形成された円板である。第2部材30は、第2部材30の回転軸X2がクラッチ100の回転軸Xと同軸になるように配置されている。第2部材30には、第1部材20に接する一端面30aから反対面である他端面30bまで貫通する第1貫通孔31が、周方向において180°間隔で2つ設けられている。
【0022】
また、第2部材30には、第1貫通孔31を避けた位置、かつ第1部材20に設けられている4つの嵌合穴26に対応する位置に、締結部材70が挿入される第2貫通孔32がそれぞれ設けられている。第2貫通孔32は、他端面30b側に、第2貫通孔32の直径より大きい円形溝である拡径部33が、第2貫通孔32と同軸に形成されている。締結部材70は、頭部71を有している部材であり、例えばボルトである。拡径部33は、第2貫通孔32に通される締結部材70の頭部71を収容する溝である。第2部材30を第1部材20に締結している締結部材70の頭部71が拡径部33に収容されることで、頭部71が第2部材30の他端面30bから出っ張ることがなく、他端面30bがフラットになる。それにより、他端面30b側に配置される出力部材80は、わずかな隙間を介して他端面30bに接近して配置することができ、クラッチ100の軸方向寸法を小さくすることができる。
【0023】
図13図15には、出力部材80が示されている。図13図15は、それぞれ出力部材80の正面図、左側面図、及び右側面図である。出力部材80は、出力部材80の回転軸X3がクラッチ100の回転軸Xと同軸になるように配置されている。出力部材80は、円板部81と、円板部81の第1部材20側である一端面81aにおいて、第1貫通孔31に対応して円周方向に180°間隔で設けられている円筒形状のトルク中継部82と、円板部81の一端面81aの反対面である他端面81bの中心部に設けられている出力軸83とを有している。出力部材80は、トルク中継部82が第2部材30の第1貫通孔31にそれぞれ挿入されて、第2部材30に組み立てられている。
【0024】
トルク中継部82は、中空円筒形状のローラ60の中空部61に挿入されて、それぞれがローラ60を回転可能に保持している。すなわち、それぞれのトルク中継部82は、第2部材30の第1貫通孔31を貫通した状態で、ローラ60の中空部61に挿入されている。第1貫通孔31の内径は、トルク中継部82の外径より大きく形成されている。そのため、出力部材80は、第2部材30に組み立てられている状態において、出力軸83の回転軸X3を中心に、ローラ60が枠部41の何れか一方の径方向部46にあたるまで、回転軸X3を中心に回転することができる。
【0025】
図2に示されているように、ケース部材90は、連結した状態の第1部材20と、第2部材30と、出力部材80とを回転可能に保持している。図3に示されているように、ケース部材90は、ケース本体91と、ケース本体91の内周面に全周にわたって配置されている複数のコロ92と、複数のコロ92を周方向に一定間隔で回転可能に保持しているコロ保持器93とを有している。
【0026】
ケース本体91は、円形である入力部材10と、出力部材80とを外側全周を囲んでいる中空の円筒形状部材である。ケース本体91の両端面は、円筒形状の端部から中心方向に向かって所定の長さの側面部94がそれぞれ設けられている。側面部94は、複数の円筒形状のコロ92を保持しているコロ保持器93の軸方向の両端部に届く長さに形成されており、コロ保持器93の軸方向の両端部との間にわずかな隙間を有して、コロ保持器93を抜け止め保持している。コロ保持器93は、複数のコロ92を等間隔で保持するために、コロ92よりわずかに大きい複数の穴が周方向等間隔に設けられている。
【0027】
上記のように、クラッチ100は、入力部材10と、出力部材80とが連結された状態で、ケース部材90の内部に回転可能に保持されて構成されている。
【0028】
<クラッチ100の作動説明>
図16図18を参照しながら、クラッチ100の作動について説明する。図16は、クラッチ100の回転軸Xに垂直な面での断面、すなわちクラッチ100を輪切りにした状態の断面図である。図17図16のA部における部分拡大図であり、図18図17のD部における部分拡大図である。入力軸23に回転トルクが入力された時のクラッチ100の作動は、出力軸83からの入力がない場合と、出力軸83からの所定値以上の入力がある場合とで異なる。出力軸83からの入力がない場合は、入力軸23に入力された回転トルクは、出力軸83に伝達される。出力軸83からの何れかの回転方向の入力がある場合は、入力部材10に制動力が発生して回転が停止する。以下に、それぞれの場合について説明する。
【0029】
クラッチ100に回転トルク入力がない時には、入力部材10と、出力部材80とは、ケース部材90に対して相対回転せず、回転が停止した状態にある。その状態では、ローラ60の外周面は、トルク伝達部材40の枠部41を構成する外径部45の内面45aに接触している。また、ローラ60の外周面は、枠部41の径方向部46の何れにも接触しておらず、隙間を有して径方向部46から離間している。
【0030】
(1)出力軸83からの回転トルク入力がない場合のクラッチ100の作動
(1-1)
図16において、左回転方向の回転トルクが入力されると、第1部材20と、第1部材20が有しているトルク伝達部材40が、回転軸Xを中心に回転し始める。
(1-2)
トルク伝達部材40の枠部41内に収容されているローラ60は、スプリング50により回転軸Xに向かって付勢されている。また、図18に示されているように、外径部45の内面45aは、両端部側に向かってローラ60が転がり上がる斜面Eに形成されており、両端部ほど急傾斜に形成されている。出力軸83からの回転トルク入力がない場合には、スプリング50によるB方向への付勢力と、斜面Eとにより、ローラ60は内面45a上を転がり上がらずに、ローラ60が外径部45のほぼ中央部に接触したまま、ローラ60を介してトルク中継部82に回転軸Xを中心に回転させる力が働く。
(1-3)
ローラ60が外径部45の内面45aのほぼ中央部に位置したまま、ローラ60と、ローラ60に挿入されているトルク中継部82とが、トルク伝達部材40と同じ回転方向に動き始め、出力部材80が入力部材10と同じ回転方向に動き出して、入力トルクが出力される。
【0031】
(2)出力軸83からの所定値以上の回転トルク入力がある場合のクラッチ100の作動
(2-1)
図16において、入力部材10に左回転方向の回転トルクが入力軸23に入力されると、上記(1-1)と同様に、トルク伝達部材40が回転軸Xを中心に回転し始める。
(2-2)
出力軸83に、右回転方向の所定値以上の回転トルクが作用すると、トルク中継部82を介して、ローラ60にはトルク伝達部材40の回転方向に対して逆回転方向、すなわち図16において回転軸Xを中心に右回転方向の力が作用する。すると、ローラ60は、スプリング50の付勢力による内面45aへの押付力に打ち勝って、内面45a上を転がりながら、トルク伝達部材40に対し右方向に移動する。
(2-3)
内面45aは、外径部45の両端部ほど、すなわち径方向部46に近づくほど、内径部44側に張り出している急斜面として形成されているため、ローラ60が外径部45に接した状態で回転しながら右方向に移動すると、外径部45の内面45aがローラ60の外周面に押圧されて、トルク伝達部材40には、クラッチ100の外周側に移動させる力が働く。
(2-4)
スプリング50のB方向への付勢力に打ち勝って、トルク伝達部材40は外周側であるC方向に移動する。
(2-5)
トルク伝達部材40が外周側に移動すると、外径部45の外面45bがケース部材90、具体的にはコロ92を押圧する。コロ92は、ケース本体91と、外径部45の外面45bとの間で挟まれることで回転しにくくなり、回転抵抗が発生する。発生した回転抵抗は、入力部材10に制動力として働き、クラッチ100の回転は停止する。
【0032】
なお、クラッチ100は、入力される回転トルクが何れの方向でもトルク伝達可能である。また、出力軸83から入力される回転トルクの回転方向は、入力軸23に入力される回転トルクの回転方向と逆回転方向である場合を説明したが、出力軸83から入力される回転トルクが入力軸23に入力される回転トルクより所定値以上大きい場合であって、両者が同回転方向の場合でも、上記と同じように、入力部材10に制動力が働き、回転が停止する。
【0033】
また、出力軸83からの回転トルク入力がある場合における、枠部41に対するローラ60の左右方向、すなわちクラッチ100の周方向への移動し易さは、スプリング50の付勢力、及び外径部45の内面45aの斜面度合いに応じて変化する。例えば、スプリング50の付勢力を強くするほど、又は、外径部45の内面45aの斜面形状を両端部ほど内径部44側に張り出す急傾斜とするほど、ローラ60は枠部41において左右方向、すなわちクラッチ100の周方向へ移動しにくくなり、出力軸83からの回転トルク入力に対して、クラッチ100に制動力がかかりにくくなる。また、上記と逆にすれば、クラッチ100に制動力がかかりやすくなる。
【0034】
本実施の形態に係るクラッチ100は、凹部24を有しており、回転トルクが入力される入力部材10と、入力部材10から伝達される回転トルクを出力する出力部材80と、入力部材10と、出力部材80とを回転可能に保持するケース部材90と、を備え、出力部材80は、凹部24に挿入されており、回転トルクが伝達されるトルク中継部82を有し、入力部材10は、出力部材80から所定値以上の回転トルクが入力された場合にケース部材90に接触して、入力部材10に制動力が作用する。
【0035】
したがって、クラッチ100は従来のようなローラ又はボールと、楔空間とを備えずに構成されている。よって、高回転速度で回転トルクを伝達できるとともに、出力軸から逆入力があったときは、クラッチの回転を停止させることができる。
【0036】
本実施の形態に係るクラッチ100の入力部材10は、凹部24に配置されており、トルク中継部82が挿入される中空部43を有するトルク伝達部材40と、トルク伝達部材40を付勢するスプリング50と、を有している。
【0037】
したがって、スプリング50の付勢力を最適値にすることで、確実にトルク伝達でき、所望の逆入力トルク値でクラッチ100を制動することができる。
【0038】
本実施の形態に係るクラッチ100は、トルク中継部82と、それに対応するトルク伝達部材40とが、それぞれ複数設けられており、周方向等間隔にそれぞれ配置されている。
【0039】
したがって、トルク中継部82と、それに対応するトルク伝達部材40との組を増やすことで、伝達トルクを増加させることができる。よって、高回転速度、かつ高回転トルクを伝達することができる。
【0040】
本実施の形態に係るクラッチ100のトルク中継部82は、回転可能に保持されており、トルク伝達部材40に接触して回転トルクが伝達されるローラ60を有している。
【0041】
したがって、ローラ60の断面形状が円形であるため、ローラ60は滑らかに動くことができる。よって、出力軸83からの入力時があった時には、効率的に作動することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 入力部材、 24 凹部、 40 トルク伝達部材、 43 中空部、
50 スプリング、 60 ローラ、 80 出力部材、 82 トルク中継部、
90 ケース部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18