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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電動操作装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20240813BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20240813BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
E03C1/22 C
A47K1/14 B
E03C1/23 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018190059
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059984
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】石垣 征樹
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】居島 一仁
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-329591(JP,A)
【文献】特開2016-938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/298
A47K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を遠隔操作するための電動操作装置であって、
所定の取付対象物に取付けられ、所定方向に沿って延びる移動部収容筒部を有してなるケースと、
前記移動部収容筒部内に配置され、前記所定方向に沿って往復移動可能な移動部と、
前記移動部の移動に伴い移動可能に構成され、前記移動部の変位による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するための往復移動可能な伝達部と、
通電により動作可能な通電動作部と、
前記通電動作部の動作により回転する回転体と、
前記回転体の先端面であって前記回転体の回転軸からずれた位置にて突出形成されるとともに、前記回転体の回転により回転しつつ前記所定方向に沿って往復移動可能であり、かつ、前記移動部収容筒部内に配置される押圧突起と、
前記移動部に対しその復動方向に沿った付勢力を加える付勢部と
前記伝達部が所定位置を越える位置まで往動する度に、前記伝達部及び前記移動部の往動した状態でのロック、及び、前記伝達部及び前記移動部のロック解除を交互に行うことが可能なロック機構とを備え、
前記通電動作部は、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えるときも、前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるときも、前記押圧突起を、初期位置から移動開始させて、前記伝達部が前記所定位置を越えることになる位置まで往動させ、その後復動させて前記初期位置に戻すように、同一方向に一回転させるように構成されており、
前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるときには、前記押圧突起が回転しつつ往動することによって前記伝達部が前記所定位置を越える位置まで往動することにより、前記ロック機構によって前記伝達部及び前記移動部が往動した状態でロックされるとともに、前記伝達部及び前記移動部がロックされた状態のままで前記押圧突起が回転しつつ復動して前記初期位置に戻るように構成されており、
前記移動部は、前記押圧突起に非連結の状態とされるとともに、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える場合においては、前記押圧突起が回転しつつ往動するときに当該押圧突起に直接接触しつつ当該押圧突起に押圧されて往動可能である一方、前記押圧突起が回転しつつ復動するときに当該押圧突起に押圧されない構成とされており、
前記排水口を閉状態から開状態へと切換える場合において前記押圧突起が回転しつつ復動するときに当該押圧突起の復動方向に当該押圧突起と直接接触する部位を備えないことを特徴とする電動操作装置。
【請求項2】
前記移動部に取付けられ、前記移動部を手動により移動させる際の操作対象となる手動操作部を備え、
前記押圧突起は、前記通電動作部の非動作時には前記移動部の往復移動を阻害しない前記初期位置に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動操作装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記押圧突起が回転しつつ往動するときに、当該押圧突起により押圧される被押圧部を有し、
前記押圧突起を前記初期位置に配置するとともに、前記移動部を最も復動させた位置に配置した状態において、前記押圧突起及び前記被押圧部が離間した状態となるように構成されていることを特徴とする請求項に記載の電動操作装置。
【請求項4】
前記ケースは、前記移動部収容筒部から枝分かれして延びるとともに、前記移動部収容筒部内に向けて開口し、かつ、前記回転体が挿設される突出筒部を有し、
前記回転体における前記移動部収容筒部側に位置する先端部には、前記移動部収容筒部内に配置されるとともに、前記回転体の回転軸から遠ざかる側に向けて突出する突起状又は鍔状をなす外向突起部が設けられ、
前記外向突起部は、前記移動部収容筒部の内面に接触又は近接した状態で配設されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電動操作装置。
【請求項5】
前記ケースは、前記移動部収容筒部から枝分かれして延びるとともに、前記移動部収容筒部内に向けて開口し、かつ、前記回転体が挿設される突出筒部を有し、
前記回転体における前記移動部収容筒部側に位置する先端部は、前記突出筒部における前記移動部収容筒部側に位置する開口に配置されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電動操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を電動操作するための電動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
槽体(例えば、浴槽や洗面ボウル等)やその近傍に、槽体の底部に形成された排水口の開閉状態を遠隔操作によって切換えるための操作装置を設けることがある。
【0003】
操作装置としては、手動式のものと電動式のものとが知られている。電動式の操作装置(電動操作装置)は、通電により動作可能な通電動作部(例えばモータ等)を有しており、当該通電動作部の動作により生じた駆動力を用いて、排水口に対応して設けられた栓蓋を上下動させるものである。
【0004】
従来、電動操作装置として、所定の取付対象物(例えば槽体やその近傍の構造物など)に取付けられたケース(ケーシング)と、当該ケース内において往復移動可能な状態で配置された移動部(支持部材)と、当該移動部の移動に伴い往復移動可能とされ、移動部の変位による駆動力を栓蓋側へと伝達する伝達部(コイル部)と、移動部へと連結され、通電動作部(モータ)の動作により動作することで移動部を移動させる連結部とを有するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載の電動操作装置では、連結部としてのピニオンが移動部に設けられたラックへと噛合されて連結されており、通電動作部の動作に伴いピニオンが回転することで、移動部及び伝達部が移動して排水口の開閉状態が切換えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-211457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した電動操作装置では、連結部(ピニオン)及び移動部(ラック)が噛合されて連結されるといった構成となっている。そのため、装置の構造が複雑化してしまい、装置の組立やメンテナンスの際に面倒で手間のかかる作業が必要となってしまったり、製造コストの増大を招いてしまったりするおそれがある。
【0007】
また、連結部(ピニオン)及び移動部(ラック)間に異物が挟み込まれることで、移動部の往復移動が阻害されてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素化されたシンプルな構造とすることで、組立やメンテナンスに係る作業性の向上等を図ることができるとともに、動作安定性を向上させることができる電動操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.槽体に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を遠隔操作するための電動操作装置であって、
所定の取付対象物に取付けられ、所定方向に沿って延びる移動部収容筒部を有してなるケースと、
前記移動部収容筒部内に配置され、前記所定方向に沿って往復移動可能な移動部と、
前記移動部の移動に伴い移動可能に構成され、前記移動部の変位による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するための往復移動可能な伝達部と、
通電により動作可能な通電動作部と、
前記通電動作部の動作により回転する回転体と、
前記回転体の先端面であって前記回転体の回転軸からずれた位置にて突出形成されるとともに、前記回転体の回転により回転しつつ前記所定方向に沿って往復移動可能であり、かつ、前記移動部収容筒部内に配置される押圧突起と、
前記移動部に対しその復動方向に沿った付勢力を加える付勢部と
前記伝達部が所定位置を越える位置まで往動する度に、前記伝達部及び前記移動部の往動した状態でのロック、及び、前記伝達部及び前記移動部のロック解除を交互に行うことが可能なロック機構とを備え、
前記通電動作部は、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えるときも、前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるときも、前記押圧突起を、初期位置から移動開始させて、前記伝達部が前記所定位置を越えることになる位置まで往動させ、その後復動させて前記初期位置に戻すように、同一方向に一回転させるように構成されており、
前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるときには、前記押圧突起が回転しつつ往動することによって前記伝達部が前記所定位置を越える位置まで往動することにより、前記ロック機構によって前記伝達部及び前記移動部が往動した状態でロックされるとともに、前記伝達部及び前記移動部がロックされた状態のままで前記押圧突起が回転しつつ復動して前記初期位置に戻るように構成されており、
前記移動部は、前記押圧突起に非連結の状態とされるとともに、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える場合においては、前記押圧突起が回転しつつ往動するときに当該押圧突起に直接接触しつつ当該押圧突起に押圧されて往動可能である一方、前記押圧突起が回転しつつ復動するときに当該押圧突起に押圧されない構成とされており、
前記排水口を閉状態から開状態へと切換える場合において前記押圧突起が回転しつつ復動するときに当該押圧突起の復動方向に当該押圧突起と直接接触する部位を備えないことを特徴とする電動操作装置。
【0011】
上記手段1によれば、移動部を押圧するための押圧突起は、回転体の先端面であって当該回転体の回転軸からずれた位置にて突出形成されるとともに、回転体の回転により回転しつつ、所定方向(移動部の移動方向)に沿って往復移動可能とされている。また、移動部は、押圧突起に非連結の状態とされ、押圧突起が回転しつつ往動するときに当該押圧突起に押圧されて往動可能である一方、押圧突起が回転しつつ復動するときに当該押圧突起に押圧されない構成とされている。すなわち、押圧突起は、回転体の回転という簡単な動作によって所定方向に往復移動するというシンプルな構造のものであり、さらに、移動部は、押圧突起が回転して往動するときに当該押圧突起によって単に押圧され得るものであって、押圧突起に連結されていないという非常にシンプルな構造のものとされている。従って、装置を極めて簡素化されたシンプルな構造とすることができる。その結果、装置の組立やメンテナンスに係る作業性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。また、仮に移動部及び押圧突起間に異物が入ったとしても、移動部及び押圧突起を連結した構造と比較して、異物の影響による移動部の移動阻害を生じにくくすることができ、動作安定性をより高めることができる。
【0012】
さらに、上記手段によれば、ロック機構によって、所定位置を越える位置まで伝達部を往動させる度に、伝達部のロック及びロック解除を交互に行うことができる。従って、前記所定位置を越える位置まで伝達部を往動させることで、ロック機構により伝達部をロックして排水口を開状態で維持したり、伝達部のロックを解除して排水口を閉状態へと切換えたりすることができる。すなわち、移動部を往動させることで、排水口を開状態から閉状態へと切換えること、及び、排水口を閉状態から開状態へと切換えることの双方を行うことができる。
【0013】
その上で、通電動作部によって排水口の開閉状態を電動により切換えるときにおいて、つまり、電動により排水口を開状態から閉状態へと切換えるとき及び排水口を閉状態から開状態へと切換えるときの双方において、押圧突起は、初期位置から移動開始して、伝達部が前記所定位置を越えることになる位置まで往動し、その後復動して初期位置に戻るように同一方向に一回転する。従って、排水口を閉状態から開状態へと切換えるときであっても、排水口を開状態から閉状態へと切換えるときであっても、押圧突起は同一の回転動作を行う。そのため、押圧突起の駆動源となる通電動作部における動作の複雑化をより確実に防止することができる。その結果、製造コストの更なる低減や動作安定性の一層の向上などを図ることができる。
【0014】
尚、移動部は、例えばばね等によって構成された付勢部から加わる付勢力により復動させることができる。付勢部は、移動部へと付勢力を直接加えるものであってもよいし、伝達部を介して移動部へと付勢力を加えるものであってもよい。
【0015】
手段2.前記移動部に取付けられ、前記移動部を手動により移動させる際の操作対象となる手動操作部を備え、
前記押圧突起は、前記通電動作部の非動作時には前記移動部の往復移動を阻害しない前記初期位置に配置されるように構成されていることを特徴とする手段1に記載の電動操作装置。
【0016】
上記手段2によれば、押圧突起は、常には(通電動作部の非動作時には)移動部の往復移動を阻害しない初期位置に配置されるように構成されている。従って、手動操作部を操作して手動により移動部を移動させるときに、押圧突起が邪魔となることなく移動部を移動させることができる。これにより、押圧突起が初期位置に配置された状態であれば、手動によって排水口の開閉状態を切換えることが可能となり、電動操作のみならず手動操作によっても排水口の開閉状態を切換えることができる。そのため、使用者の都合などに合わせて電動操作及び手動操作を使い分けること等が可能となり、使用者にとっての利便性の向上を図ることができる。
【0017】
手段.前記移動部は、前記押圧突起が回転しつつ往動するときに、当該押圧突起により押圧される被押圧部を有し、
前記押圧突起を前記初期位置に配置するとともに、前記移動部を最も復動させた位置に配置した状態において、前記押圧突起及び前記被押圧部が離間した状態となるように構成されていることを特徴とする手段に記載の電動操作装置。
【0018】
上記手段によれば、押圧突起を初期位置に配置するとともに、移動部を最も復動させた位置に配置した状態において、押圧突起及び被押圧部が離間した状態となる。従って、押圧突起が初期位置に配置された状態で付勢部により移動部を復動させたときに、押圧突起に対し被押圧部が接触しないようにすることができる。そのため、被押圧部及び押圧突起の接触に伴う、異音の発生や押圧突起における異常の発生をより確実に防止することができる。
【0019】
手段.前記ケースは、前記移動部収容筒部から枝分かれして延びるとともに、前記移動部収容筒部内に向けて開口し、かつ、前記回転体が挿設される突出筒部を有し、
前記回転体における前記移動部収容筒部側に位置する先端部には、前記移動部収容筒部内に配置されるとともに、前記回転体の回転軸から遠ざかる側に向けて突出する突起状又は鍔状をなす外向突起部が設けられ、
前記外向突起部は、前記移動部収容筒部の内面に接触又は近接した状態で配設されていることを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載の電動操作装置。
【0020】
尚、「近接した状態」とあるのは、例えば、回転体の回転軸方向に沿った外向突起部と移動部収容筒部の内面との間の距離が3mm以下(より好ましくは2mm以下)とされていることをいう。
【0021】
上記手段によれば、回転体の先端部には外向突起部が設けられており、外向突起部は、移動部収容筒部の内面に接触又は近接した状態で配設されている。従って、外向突起部によって回転体及び突出筒部間の隙間に蓋をすることができ、回転体及び突出筒部間への異物の侵入をより確実に防止することができる。その結果、回転体のより円滑な回転を図ることができ、動作安定性をより一層高めることができる。
【0022】
尚、外向突起部に対応して押圧突起を設ける場合(押圧突起の少なくとも一部が回転体の先端面のうち外向突起部に対応する部位から突出形成される場合)には、押圧突起から回転軸までの距離(すなわち押圧突起の回転半径)を十分に確保しつつ、回転体のうち突出筒部内に配置される部位の外径を小さなものとすることができる。これにより、押圧突起の往復移動量を十分に大きなものとしつつ、回転体における回転抵抗の低減や回転体及び突出筒部間への異物の侵入防止を効果的に図ることができる。
【0023】
手段.前記ケースは、前記移動部収容筒部から枝分かれして延びるとともに、前記移動部収容筒部内に向けて開口し、かつ、前記回転体が挿設される突出筒部を有し、
前記回転体における前記移動部収容筒部側に位置する先端部は、前記突出筒部における前記移動部収容筒部側に位置する開口に配置されることを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載の電動操作装置。
【0024】
上記手段によれば、回転体の先端部は、突出筒部の開口に配置されているため、回転体の全体又はほぼ全体を突出筒部内に配置することができる。そのため、仮に移動部収容筒部内に異物が入り込んだとしても、当該異物が回転体に引っ掛かるといった事態をほとんど生じないようにすることができる。これにより、回転体及び突出筒部間への異物の侵入を一層確実に防止することができ、動作安定性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】電動操作装置の断面図である。
図2図1のJ-J線断面図である。
図3】別の実施形態における回転体を示す電動操作装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。電動操作装置は、浴槽の排水口(図示せず)に対応して設けられた栓蓋(図示せず)を遠隔操作し、当該栓蓋を上下動させることで前記排水口を開閉するためのものである。
【0027】
図1及び図2に示すように、電動操作装置1は、槽体としての浴槽100の側壁部上部から外側に向けて突出形成されたフランジ部101に取付けられている。本実施形態では、フランジ部101が取付対象物に相当する。フランジ部101は、その板厚方向に貫通する平面視円形状の取付孔102を備えている。
【0028】
尚、浴槽100の底部には、前記排水口を通過した排水が流れ込む所定の配管(図示せず)が固定されている。当該配管は、排水の流れ込む筒状の流路部と、当該流路部から突出し、内部が前記流路部の内部と連通した状態とされた筒状の被接続筒部(それぞれ不図示)とを備えた構成とされている。
【0029】
電動操作装置1は、ケース2、電動機構部3、継手部4、ガイドチューブ5、伝達機構部6、移動部7及び手動操作部としての操作ボタン8を備えている。
【0030】
ケース2は、電動機構部3等を収容するとともに、フランジ部101へと取付けられるものである。ケース2は、筒状部21、ケース基部22及び蓋部23を備えている。
【0031】
筒状部21は、円筒状をなしており、自身の中心軸が前記取付孔102のほぼ中心を通るようにして当該取付孔102に挿通されている。筒状部21は、円筒状をなす筒状本体部21Aと、当該筒状本体部21Aの一端部(上端部)から外側に突出する鍔部21Bとを有している。
【0032】
筒状本体部21Aは、その長手方向に沿った一端(上端)から中央部よりもやや下方にかけての内径が一定とされており、この一定の内径部分にて操作ボタン8の移動をガイドする。また、筒状本体部21Aの外周には、所定の雄ねじ部21Cが形成されている。本実施形態では、所定のナット部材(図示せず)を雄ねじ部21Cの外周に螺着し、鍔部21B及び前記ナット部材によりフランジ部101を挟み込んだ状態とすることで、筒状部21ひいてはケース2がフランジ部101に取付けられた状態となっている。尚、水密性の向上を図るべく、鍔部21Bの裏面とフランジ部101の表面との間などにシール部材を設けることとしてもよい。
【0033】
さらに、筒状本体部21Aの外周であって前記雄ねじ部21Cよりも下方には、筒状本体部21Aの周方向に沿って連続的に延びる環状の凹部21Dが設けられている。凹部21Dは、筒状部21及びケース基部22を接続するために利用される。
【0034】
ケース基部22は、上下方向に延びるとともに、少なくとも両端部が円筒状をなし、筒状部21に対し直列的に接続される直筒部22Aと、当該直筒部22Aから枝分かれして延びるとともに、当該直筒部22A内に向けて開口する突出筒部22Bとを備えている。
【0035】
直筒部22Aは、伝達機構部6や移動部7等の収容空間として機能するものである。また、直筒部22Aにおける一端側外周には、第一Cリング22Cが嵌合されている一方、直筒部22Aにおける他端側外周には、直筒部22Aの周方向に沿って連続的に延びる環状の溝部22Dが設けられている。溝部22Dは、ケース2に対し継手部4を接続するために利用される。
【0036】
第一Cリング22Cは、一部にて途切れた環状(つまりC字状)をなしており、前記途切れた部分を拡幅させることで拡径可能に構成されている。第一Cリング22Cは、その内周部分が直筒部22Aを内外に貫通する貫通孔を通って直筒部22Aの内周面から突出した状態となっている(図2参照)。第一Cリング22Cが前記凹部21Dに配置されることで、筒状部21及び直筒部22A(ケース基部22)が直列的に接続された状態となっている。本実施形態では、筒状部21及び直筒部22Aによって、上下方向に沿って延びる移動部収容筒部24が構成されている。
【0037】
尚、筒状部21に対するケース基部22の取付けは、筒状部21及び直筒部22Aを同軸状に配置した上で、筒状部21に向けてケース基部22を押し込むことにより行われる。より詳しくは、筒状部21の外周に直筒部22Aの一端部(上端部)を配置し、筒状部21及び直筒部22Aを同軸状に配置した上で、筒状部21に向けてケース基部22を押し込むことにより、第一Cリング22Cが徐々に拡径しつつ凹部21Dへと接近していき、最終的に凹部21Dへと至ると、第一Cリング22Cの拡径が解除されて第一Cリング22Cの内周部分が凹部21Dへと入り込む。その結果、筒状部21へとケース基部22が取付けられた状態となる。従って、本実施形態では、筒状部21に対しケース基部22をワンタッチで取付けることができる。
【0038】
また、筒状部21にケース基部22を取付けた状態において、筒状部21の外周面と直筒部22Aの内周面との間には、弾性変形可能な材料により形成されたシール部材10が配置される。当該シール部材10によって、筒状部21及びケース基部22間における水密性の向上が図られる。
【0039】
蓋部23は、突出筒部22Bにおける直筒部22Aとは反対側の開口を塞ぎつつ、突出筒部22Bの内部にて電動機構部3を保持するためのものである。蓋部23は、水密性向上のためのシール部材25を突出筒部22Bとの間において挟み込んだ状態で、突出筒部22Bの前記開口に対応して取付けられている。
【0040】
電動機構部3は、前記排水口を電動開閉するための動力を発生させる機構である。電動機構部3は、通電により動作可能なモータ31と、回転可能な駆動軸32と、当該駆動軸32に固定されて当該駆動軸32とともに回転可能な回転体33と、当該回転体33の先端部に設けられた押圧突起34とを備えている。本実施形態では、モータ31が通電動作部に相当する。
【0041】
モータ31は、前記排水口を電動開閉するための駆動源であり、図示しない電源からの電力供給により回転する棒状のモータ軸(図示せず)を有している。当該モータ軸の回転による駆動力は、図示しない歯車を介して駆動軸32へと伝達されるようになっている。
【0042】
駆動軸32は、モータ31から回転体33に対する駆動力の伝達経路を構成するものであり、モータ31の動作により回転する。
【0043】
回転体33は、突出筒部22Bに挿設されており、モータ31の動作により回転する円柱状部材である。回転体33の先端部には、移動部収容筒部24(直筒部22A)内に配置され、外側に突出する鍔状の外向突起部33Aが設けられている。当該外向突起部33Aは、移動部収容筒部24の内面に接触又は近接した状態で配設されている。尚、「近接した状態」とあるのは、例えば、回転体33の回転軸方向に沿った外向突起部33Aと移動部収容筒部24の内面との間の距離が3mm以下(より好ましくは2mm以下)とされていることをいう。
【0044】
押圧突起34は、回転体33の先端面であって当該回転体33の回転軸からずれた位置にて突出形成された柱状部位である。押圧突起34は、回転体33の回転により回転しつつ上下方向(つまり、移動部収容筒部24の延びる方向)に沿って往復移動可能であり、かつ、移動部収容筒部24内に配置されている。また、押圧突起34は、回転体33の先端面のうち外向突起部33Aに対応する位置に設けられている。すなわち、押圧突起34の少なくとも一部は、外向突起部33Aから突出した状態とされている。
【0045】
さらに、押圧突起34は、常には(モータ31の非動作時には)上下方向に沿った移動範囲内における最上方位置である初期位置に配置された状態(図1参照)とされる。そして、前記排水口の開閉状態を切換える際、押圧突起34は、回転体33の回転に伴い往動(下動)した後に復動(上動)するといった往復移動を行う。押圧突起34の往動に伴い、当該押圧突起34によって移動部7の後述する被押圧部71が押圧され、ひいては後述する伝達部62を往動(下動)させることが可能である。
【0046】
尚、本実施形態では、前記電源からモータ31への電力供給を制御するための操作パネル(図示せず)が浴室内などに設置されている。当該操作パネルは、液晶等からなり各種情報を表示するための表示画面と、押しボタン等からなり、前記排水口の開閉状態を切換える際に操作される入力部とを備えている。入力部を操作することで、前記電源からモータ31へと所定量の電力を供給することが可能である。
【0047】
また、前記電源からモータ31へと所定量の電力が供給されることで、押圧突起34は、同一方向にちょうど一回転するようになっている。すなわち、押圧突起34は、前記初期位置から移動開始して、最往動位置まで往動した後に復動し、最終的に前記初期位置に戻るように回転移動する。この押圧突起34の動作は、前記排水口を開状態から閉状態へと切換える場合であっても、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える場合であっても同様に行われる。尚、回転体33(押圧突起34)が所定位置に配置されたことを検知するためのセンサを設け、当該センサからの出力に基づき押圧突起34をちょうど一回転させるように構成してもよい。
【0048】
さらに、押圧突起34は、前記最往動位置に配置されたときに、移動部7を介して後述する伝達部62を押圧し、当該伝達部62を所定位置を越えることになる位置まで往動した状態とすることが可能である。つまり、押圧突起34が前記最往動位置に配置されると、伝達部62が前記所定位置を越える位置まで往動するように構成されている。尚、伝達部62が所定位置を越える位置まで往動すると、後述する案内歯61Aによって後述する回転リング64が回転することになる。
【0049】
加えて、押圧突起34は、前記初期位置に配置された状態において、移動部7の移動を阻害しない位置に配置される。特に本実施形態では、押圧突起34を前記初期位置に配置するとともに、移動部7を最も復動(上動)させた位置に配置したときに、押圧突起34と移動部7の後述する被押圧部71とが離間し、両者間に隙間が形成された状態となるように構成されている。
【0050】
継手部4は、その内部にて伝達機構部6を保持するとともに、ガイドチューブ5が直列的に接続されるものである。継手部4は、継手本体部41及び第二Cリング42を備えている。
【0051】
継手本体部41は、所定の樹脂等によって全体として円筒状に形成されており、その一端側に、比較的大径の大径部41Aと、当該大径部41Aの内側に位置する機構保持部41Bとを備えている。また、継手本体部41における大径部41Aよりも他端側には、ガイドチューブ5が外嵌されており、これにより、継手部4及びガイドチューブ5が接続された状態となっている。さらに、機構保持部41Bは、自身の内周に突起を備えており、当該突起によって自身の内周に挿通された伝達機構部6を保持している。
【0052】
第二Cリング42は、大径部41Aの外周に配置されており、その内周部分が大径部41Aを内外に貫通する貫通孔を通って大径部41Aの内周面から突出した状態となっている(図1参照)。そして、第二Cリング42が前記溝部22Dに配置されることで、ケース2(ケース基部22)及び継手部4が直列的に接続された状態となっている。
【0053】
尚、ケース2(ケース基部22)に対する継手部4の取付けは、ケース2(ケース基部22)に対し継手部4を同軸状に配置した上で、ケース2(ケース基部22)に向けて継手部4を押し込むことにより行われる。より詳しくは、ケース2(ケース基部22)の外周に大径部41Aを配置し、ケース2(ケース基部22)と継手部4とを同軸状に配置した上で、ケース2(ケース基部22)に向けて継手部4を押し込むことにより、第二Cリング42が徐々に拡径しつつ溝部22Dへと接近していき、最終的に溝部22Dへと至ると、第二Cリング42の拡径が解除されて第二Cリング42の内周部分が溝部22Dへと入り込む。その結果、ケース2へと継手部4が直列的に取付けられた状態となる。従って、本実施形態では、ケース2に対し継手部4をワンタッチで取付けることができる。
【0054】
加えて、ケース2へと継手部4を取付けた状態において、ケース2と継手部4との間には、シール部材11が配置される。当該シール部材11によって、ケース2及び継手部4間における水密性の向上が図られる。
【0055】
ガイドチューブ5は、長尺円筒状をなしており、その内部に後述する伝達部62(特に後述するインナーワイヤ622)が配置されるものである。ガイドチューブ5は、一端部が継手部4に接続され、他端部が前記配管の前記被接続筒部へと接続されており、ケース2側から前記栓蓋側に向けて伝達部62を案内したり、ケース2内に浸入した水を前記配管側へと流したりするといった役割を有している。
【0056】
伝達機構部6は、前記排水口を開状態で維持するためのロック機能を備えるとともに、電動操作又は手動操作により生じた駆動力を前記栓蓋側へと伝達するための機構である。伝達機構部6は、ベース部61、伝達部62、付勢部63及び回転リング64を備えている(尚、図1等では、付勢部63の断面のみを示す)。
【0057】
ベース部61は、自身の中心に伝達部62の挿通される貫通孔を備えた円筒状をなしており、その外周が前記機構保持部41Bによって支持されている。さらに、ベース部61の内部には、上下方向に沿って相対向する案内歯61A及び係合歯61Bが設けられている。
【0058】
案内歯61Aは、ベース部61の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。案内歯61Aは、所定の傾斜面を具備しており、当該傾斜面へと接触した回転リング64を所定方向に回転させるという役割を有する。
【0059】
係合歯61Bは、上下方向に沿って延びる突起状をなしており、ベース部61の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。係合歯61Bの先端部(下端部)には、回転リング64(より詳しくは、回転リング64の後述する被係合歯)が係合される被係合部分が設けられている。また、隣接する係合歯61B間には、上下方向に沿って延びる溝が形成されている。
【0060】
さらに、ベース部61の下側部分には、後述するインナーワイヤ622が挿通される筒状のチューブ部材9の端部が取付けられている。
【0061】
伝達部62は、電動操作又は手動操作に伴う移動部7の変位による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するためのものである。伝達部62は、継手部4内において往復移動可能な状態で配置されており、移動部7の移動(往動)に伴い移動(往動)する。伝達部62は、操作軸621及びインナーワイヤ622を備えている。
【0062】
操作軸621は、棒状をなし、ベース部61の内周において往復移動(上下動)可能な状態で配置されている。また、操作軸621は、その下端部に、インナーワイヤ622の先端部が内周に挿通される挿通筒部621Aを備えている。挿通筒部621Aへとインナーワイヤ622の先端部が挿通されることで、インナーワイヤ622における座屈変形の防止が図られている。
【0063】
インナーワイヤ622は、例えば金属製のコアコイルや撚り線などによって構成されており、操作軸621の変位による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するためのものである。インナーワイヤ622は、前記チューブ部材9の内周に往復移動可能な状態で挿設されている。インナーワイヤ622は、その一端部が操作軸621(より詳しくは、挿通筒部621Aの底を構成する部位)と接触可能とされており、電動操作(モータ31の動作による押圧突起34の往動)や手動操作(操作ボタン8の押圧操作)に伴い、操作軸621が往動(下動)することで往動する。
【0064】
付勢部63は、伝達部62(操作軸621)を介して移動部7や操作ボタン8に対しその復動(上動)方向の付勢力を付与するためのものである。付勢部63は、伸縮変形可能なばねによって構成されており、ベース部61内において、ベース部61及び操作軸621間に圧縮変形した状態で設置されている。
【0065】
回転リング64は、円環状をなしており、操作軸621の外周において回転可能な状態で支持されている。回転リング64は、伝達部62(操作軸621)の往復移動時に、伝達部62(操作軸621)とともに往復移動する。さらに、回転リング64は、自身の外周面に、外側に突出する複数の被係合歯(不図示)を備えている。当該被係合歯は、回転リング64の周方向に沿って等間隔に設けられており、それぞれ同一形状とされている。本実施形態では、案内歯61A及び係合歯61Bを有するベース部61及び回転リング64によってロック機構65が構成されている。
【0066】
移動部7は、移動部収容筒部24内に配置され、上下方向に沿って往復移動可能な棒状部材である。移動部7は、後端部に設けられた嵌合穴へと操作軸621の先端部が嵌合されることで、操作軸621と直列的に接続されている。これにより、移動部7及び操作軸621は、一体的に上下方向に沿って往復移動可能となっている。また、移動部7は、筒状部21の端面へと接触することで、それ以上の復動(上動)が規制されるように構成されている。
【0067】
さらに、移動部7の後端側(下端側)外周には、外側に突出する被押圧部71が設けられている。被押圧部71は、前記排水口の開閉状態を切換えるべく、押圧突起34が回転しつつ往動(下動)するときに、当該押圧突起34によって押圧される部位である。加えて、移動部7は、押圧突起34と非連結の状態とされるとともに、押圧突起34が回転しつつ往動(下動)するときに、被押圧部71が押圧されることで往動する一方、押圧突起34が回転しつつ復動(上動)するときに、押圧突起34によって押圧されないように構成されている。
【0068】
尚、押圧突起34は、回転しつつ往動するときに、平面視、回転体33の回転軸と直交する方向(図1の紙面直交方向)に沿って位置変化するが、本実施形態において、被押圧部71は、この押圧突起34の位置変化に合わせて、平面視、回転体33の回転軸と直交する方向(図1の紙面直交方向)に沿って延びる比較的長い形状をなしている。これにより、押圧突起34の往動時に、押圧突起34が被押圧部71へと確実に接触するようになっている。
【0069】
操作ボタン8は、手動により前記排水口の開閉状態を切換えるべく、移動部7を手動により移動させる際の操作対象となる部位である。操作ボタン8は、円板状の押しボタンによって構成されており、筒状部21内において往復移動可能な状態で設けられている。また、本実施形態において、操作ボタン8は、その裏面に筒状の被取付筒部81を備えており、被取付筒部81へと移動部7の先端部が挿通されることにより、移動部7へと取付けられている。
【0070】
次いで、電動操作装置1の設置手法について説明する。尚、電動操作装置1を設置するとき、筒状部2は、浴槽100(フランジ部101)へと予め取付けられた状態とされる。まず、継手部4を、伝達機構部6が内周にて保持され、かつ、ガイドチューブ5が接続された状態とする。また、伝達機構部6における操作軸621の先端部に移動部7を接続した状態とする。その上で、継手部4(大径部41A)の内周に前記シール部材11を配置した状態で、被押圧部71が押圧突起34側に配置されるように移動部7の位置合わせを行いつつ、ケース基部22(直筒部22A)内に、移動部7及び伝達機構部6を挿通していく。尚、ケース基部22には予め電動機構部3が設置されるとともに蓋部23が取付けられており、押圧突起34が前記初期位置に配置された状態とされている。
【0071】
そして、ケース基部22(直筒部22A)の外周へと継手本体部41(大径部41A)を押し入れて、最終的に、第二Cリング42を溝部22Dへと配置した状態とする。これにより、ケース基部22へと継手部4がワンタッチで取付けられる。尚、本実施形態では、ケース基部22に継手部4を取付けた状態としたときに、自然と移動部7及び押圧突起34が上述した構成を満たす位置に配置されるようになっている。
【0072】
次いで、ケース基部22(直筒部22A)の内周に前記シール部材10を配置した状態で、筒状部21内に移動部7を挿通しつつ、筒状部21の外周へとケース基部22(直筒部22A)を押し入れて、最終的に、第一Cリング22Cを凹部21Dへと配置した状態とする。これにより、筒状部21に対しケース基部22がワンタッチで取付けられる。
【0073】
そして最後に、移動部7の先端部に操作ボタン8を取付けることで、操作ボタン8及び伝達部62(操作軸621)間に移動部7を設置し、操作ボタン8の移動(押圧操作)に伴い移動部7とともに伝達部62が移動する構成とする。つまり、前記排水口の開閉状態を手動により切換可能な構成とする。その結果、前記排水口の開閉状態を電動及び手動の双方により切換可能な電動操作装置1を設置することができる。
【0074】
次いで、前記排水口の開閉状態の切換える際の電動操作装置1の動作について説明する。尚、本実施形態では、前記排水口が閉状態であるとき、前記係合歯61Bの間に位置する前記溝に回転リング64の前記被係合歯が配置されるようになっている。
【0075】
まず、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える際の電動操作装置1の動作について説明する。前記排水口の閉状態から開状態への切換えは、手動操作(操作ボタン8を押圧操作すること)及び電動操作(前記操作パネルの操作によりモータ31が動作すること)により行うことができる。すなわち、手動操作の場合には、操作ボタン8が押圧操作されることで、操作ボタン8とともに移動部7及び伝達部62が往動(下動)していく。電動操作の場合には、前記操作パネルの操作によりモータ31が動作することにより、前記初期位置に配置された押圧突起34が回転しつつ往動(下動)し、当該押圧突起34によって被押圧部71が押圧されることで、移動部7及び伝達部62が往動(下動)していく。
【0076】
そして、操作ボタン8の押圧操作やモータ31の動作に伴い、伝達部62が所定位置を越える位置まで往動すると、回転リング64の前記被係合歯が案内歯61Aへと接触しつつ当該案内歯61Aを摺動することで、回転リング64が若干回転する。また、伝達部62の往動に伴い、当該伝達部62(特にインナーワイヤ622)によって前記栓蓋(図示せず)が持ち上げられた状態となる。その結果、前記排水口が開状態となる。
【0077】
この状態で、操作ボタン8に対する押圧操作が解除されたり、押圧突起34が前記初期位置へと戻るように復動したりすることで、付勢部63からの付勢力により回転リング64や伝達部62等が復動する。これにより、回転リング64の前記被係合歯が係合歯61Bの先端部に設けられた前記被係合部分に係合された状態となり、回転リング64及び伝達部62は最大限往動した位置から若干復動した位置でロックされた状態となる。そして、このロックによって伝達部62は往動した状態で維持され、ひいては前記排水口が開状態のままで維持される。
【0078】
次いで、前記排水口を開状態から閉状態へと切換える際の電動操作装置1の動作について説明する。前記排水口の開状態から閉状態への切換えは、閉状態から開状態への切換えと同様に、手動操作(操作ボタン8を押圧操作すること)及び電動操作(前記操作パネルの操作によりモータ31が動作すること)により行うことができる。より詳しくは、前記排水口が開状態であるときに、操作ボタン8を押圧操作したり、モータ31を動作させたりすることで、伝達部62が所定位置を越える位置まで往動すると、回転リング64の前記被係合歯が案内歯61Aと接触しつつ当該案内歯61Aを摺動することで、回転リング64が若干回転する。
【0079】
この状態で、操作ボタン8に対する押圧操作が解除されたり、押圧突起34が前記初期位置へと戻るように復動したりすることで、付勢部63からの付勢力により回転リング64や伝達部62が復動(上動)する。その結果、回転リング64の前記被係合歯が各係合歯61B間の前記溝に入り込むこととなり、回転リング64や伝達部62のロックが解除される。このようにロック機構65は、伝達部62が所定位置を越える位置まで往動する度に、伝達部62のロック及びロック解除を交互に行うことが可能である。
【0080】
また、ロック解除に伴い、付勢部63からの付勢力によって移動部7及び操作ボタン8が復動(上動)する。さらに、ロック解除に伴い伝達部62が復動することで、自重などにより前記栓蓋が下動し、その結果、前記排水口が閉状態とされる。
【0081】
以上詳述したように、本実施形態によれば、押圧突起34は、回転体33の回転という簡単な動作によって所定方向(上下方向)に往復移動するというシンプルな構造のものであり、さらに、移動部7は、押圧突起34が回転して往動するときに当該押圧突起34によって単に押圧され得るものであって、押圧突起34に連結されていないという非常にシンプルな構造のものとされている。従って、装置を極めて簡素化されたシンプルな構造とすることができる。その結果、装置の組立やメンテナンスに係る作業性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。また、仮に移動部7及び押圧突起34間に異物が入ったとしても、移動部7及び押圧突起34を連結した構造と比較して、異物の影響による移動部7の移動阻害を生じにくくすることができ、動作安定性をより高めることができる。
【0082】
また、押圧突起34は、常には(モータ31の非動作時には)移動部7の往復移動を阻害しない初期位置に配置される。従って、操作ボタン8を操作して手動により移動部7を移動させるときに、押圧突起34が邪魔となることなく移動部7を移動させることができる。これにより、押圧突起34が初期位置に配置された状態であれば、手動によって前記排水口の開閉状態を切換えることが可能となり、電動操作のみならず手動操作によっても前記排水口の開閉状態を切換えることができる。そのため、使用者の都合などに合わせて電動操作及び手動操作を使い分けること等が可能となり、使用者にとっての利便性の向上を図ることができる。
【0083】
さらに、前記排水口の開閉状態を電動により切換えるときにおいて、つまり、電動により前記排水口を開状態から閉状態へと切換えるとき及び前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるときの双方において、押圧突起34は、初期位置から移動開始して、伝達部62が前記所定位置を越えることになる位置まで往動し、その後復動して初期位置に戻るように同一方向に一回転する。従って、前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるときであっても、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えるときであっても、押圧突起34は同一の回転動作を行う。そのため、押圧突起34の駆動源となるモータ31における動作の複雑化をより確実に防止することができる。その結果、製造コストの更なる低減や動作安定性の一層の向上などを図ることができる。
【0084】
加えて、押圧突起34を初期位置に配置するとともに、移動部7を最も復動させた位置に配置した状態において、押圧突起34及び被押圧部71が離間した状態となる。従って、押圧突起34が初期位置に配置された状態で付勢部63により移動部7を復動させたときに、押圧突起34に対し被押圧部71が接触しないようにすることができる。そのため、被押圧部71及び押圧突起34の接触に伴う、異音の発生や押圧突起34における異常の発生をより確実に防止することができる。
【0085】
併せて、回転体33の先端部に設けられた外向突起部33Aによって回転体33及び突出筒部22B間の隙間に蓋をすることができ、回転体33及び突出筒部22B間への異物の侵入をより確実に防止することができる。その結果、回転体33のより円滑な回転を図ることができ、動作安定性をより一層高めることができる。
【0086】
さらに、外向突起部33Aに対応して押圧突起34が設けられているため、押圧突起34から回転体33の回転軸までの距離(すなわち押圧突起34の回転半径)を十分に確保しつつ、回転体33のうち突出筒部22B内に配置される部位の外径を小さなものとすることができる。これにより、押圧突起34の往復移動量を十分に大きなものとしつつ、回転体33における回転抵抗の低減や回転体33及び突出筒部22B間への異物の侵入防止を効果的に図ることができる。
【0087】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0088】
(a)上記実施形態において、回転体33の先端部(外向突起部33A)は、突出筒部22B外に配置されているが、図3に示すように、回転体33の先端部を、突出筒部22Bにおける移動部収容筒部24(直筒部22A)側に位置する開口に配置し、回転体33の全体又はほぼ全体を突出筒部22B内に配置することとしてもよい。この場合には、仮に移動部収容筒部24内に異物が入り込んだとしても、当該異物が回転体33に引っ掛かるといった事態をほとんど生じないようにすることができる。これにより、回転体33及び突出筒部22B間への異物の侵入を一層確実に防止することができ、動作安定性をさらに高めることができる。
【0089】
(b)上記実施形態では、操作ボタン8や前記操作パネルを操作して前記排水口を閉状態へと切換えようとしない限り、前記排水口は開状態のままで維持されるように構成されている。これに対し、前記排水口が開状態に切換えられてから所定時間経過後に、前記排水口を自動的に閉状態とするようにモータ31の動作制御を行うこととしてもよい。すなわち、電動操作装置1に対し、前記排水口が開状態となってから所定時間経過後に、前記排水口を自動的に閉状態とする機能(自動閉栓機能)を設けることとしてもよい。この構成は、例えば、前記電源からモータ31へと電力を供給してからの経過時間を計測するタイマと、当該タイマにより計測された経過時間が予め設定された所定時間に至ったときに、前記電源からモータ31へと電力を供給するように前記電源を制御する制御部とを設けることで実現可能である。尚、この場合、押圧突起34が上記実施形態と同様の回転動作を行うように、前記電源からモータ31へと電力を供給することが好ましい。また、「所定時間」は、浴槽100に最大限の水を溜めた状態において、前記排水口を閉状態から開状態へと切換えてから、浴槽100内の水がほぼ全て排出されるまでに要する時間と同程度の時間又はこれよりも長い時間(例えば、30分以上など)とすることが好ましい。
【0090】
上記のように構成することで、浴槽100に水を溜めようとしたときに、前記排水口を開状態としたまま浴槽100に水を供給してしまうといった事態をより生じにくくすることができる。また、使用者においては、このような事態を防ぐべく前記排水口が閉状態であることを実際に見て十分に確認する、といった面倒な行動をとる必要がなくなる。これらの結果、浴槽100へと水が無駄に供給されてしまうことをより容易にかつより確実に防止できる。
【0091】
さらに、浴槽100へと水を溜めようとする度に、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えるといった面倒な手間を減らすことができる。その結果、使用者にとっての利便性を著しく向上させることができる。
【0092】
(c)上記実施形態において、外向突起部33Aは、鍔状をなし、回転体33の周方向全域に亘って設けられているが、外向突起部を、回転体33の周方向に沿った一部のみに形成し、回転体33の外周から突出する突起状をなすように構成してもよい。
【0093】
(d)上記実施形態では、筒状部21及びこれに接続された直筒部22Aによって移動部収容筒部24が構成されているが、移動部収容筒部を、3つ以上の筒状部材を連結することで構成してもよいし、1の筒状部材によって構成してもよい。
【0094】
(e)上記実施形態において、移動部7は伝達部62と別体とされているが、移動部7を伝達部62と一体としてもよい(移動部を伝達部の一部によって構成してもよい)。
【0095】
(f)上記実施形態において、付勢部63は、伝達部62(操作軸621)を介して移動部7へと付勢力を間接的に加えるように構成されているが、移動部7へと付勢力を直接加えるものであってもよい。
【0096】
(g)上記実施形態では、押圧突起34を前記初期位置に配置するとともに、移動部7を最も復動(上動)させた位置に配置したときに、押圧突起34及び被押圧部71が離間するように構成されているが、押圧突起34及び被押圧部71が接触した状態となるように構成してもよい。
【0097】
(h)上記実施形態において、ガイドチューブ5の他端部は前記配管(前記被接続筒部)に接続されるように構成されているが、ガイドチューブ5の他端部を前記配管に接続しない構成としてもよい。例えば、ガイドチューブ5の他端部を、浴槽100の下方に配設された所定の防水パン上に設置するような構成としてもよい。
【0098】
(i)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面ボウルやキッチンの流し台などの浴槽以外の槽体に対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【0099】
(j)上記実施形態において、電動操作装置1は、浴槽100のフランジ部101に取付けられているが、取付対象物は浴槽100のフランジ部101に限られるものではない。例えば、浴槽以外の槽体(例えば、洗面ボウルや流し台など)を取付対象物としてもよい。また、槽体の近傍に設けられた構造物(例えば、浴槽や洗面ボウル等の近傍に設けられたカウンタなど)を取付対象物としてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…電動操作装置、7…移動部、8…操作ボタン(手動操作部)、22B…突出筒部、24…移動部収容筒部、31…モータ(通電動作部)、33…回転体、33A…外向突起部、34…押圧突起、62…伝達部、63…付勢部、65…ロック機構、71…被押圧部、100…浴槽(槽体)、101…フランジ部(取付対象物)。
図1
図2
図3