(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】平行型フラックスゲートセンサおよびこれを用いた磁気検出回路、装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/04 20060101AFI20240813BHJP
H01F 1/03 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01R33/04
H01F1/03 104
(21)【出願番号】P 2020206910
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110952
【氏名又は名称】ニッカ電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一実
(72)【発明者】
【氏名】並木 浩
(72)【発明者】
【氏名】門間 一倫
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-271598(JP,A)
【文献】特開平1-219580(JP,A)
【文献】特開2019-86352(JP,A)
【文献】特開2012-78087(JP,A)
【文献】特開2011-163832(JP,A)
【文献】特開昭53-35586(JP,A)
【文献】特開平11-202035(JP,A)
【文献】特開2020-197381(JP,A)
【文献】特開2020-118523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/04
H01F 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、前記励磁コイルを各々逆極性で駆動し、前記検出コイルを並列もしくは直列結線してな
り、前記コアに取り付けられた前記励磁コイルと前記検出コイルは前記コア全長の1/10以下の距離に設置されていることを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項2】
対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、前記励磁コイルを各々逆極性で駆動し、前記検出コイルを並列もしくは直列結線してな
り、前記励磁コイルと前記検出コイルとは前記コアの長手方向中心からコア端部までの距離の7割以下の範囲に設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項3】
前記対をなす平行なコアは二本の磁心を構造的に分離可能とし、感磁領域の分布を自由に調整することができるようにしてなることを特徴とする請求項1
または2に記載の平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項4】
前記コアは熱膨張係数1~25ppm/℃の非磁性材料でアモルファス金属を挟む構造とする請求項1または2に記載の平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項5】
前記コアはガラスエポキシ板でアモルファス金属を挟む構造とすることを特徴とする請求項1または2に記載の平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項6】
前記コアに設けられる前記励磁コイル又は前記検出コイルの中心軸と、前記コアの長手方向中心軸のなす角度が25度以下であることを特徴とする請求項1
または2に記載の平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項7】
前記励磁コイルと前記検出コイルとは同一方向で巻回されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項8】
前記励磁コイルと前記検出コイルとは同一回数で巻回されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の平行型フラックスゲートセンサ。
【請求項9】
対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、前記励磁コイルを各々逆極性で駆動し、前記検出コイルを並列結線してな
り、前記コアに取り付けられた前記励磁コイルと前記検出コイルは前記コア全長の1/10以下の距離に設置されている、又は前記励磁コイルと前記検出コイルとは前記コアの長手方向中心からコア端部までの距離の7割以下の範囲に設けた平行型フラックスゲートセンサを備え、前記検出コイルには前記励磁コイルへの通電開始時期より遅れて誘導起電力の検波を開始する検波開始遅れ時間調整手段と、前記励磁コイルへの通電終了する以前に誘導起電力の検波を終了する検波終了時間調整手段とを設けたことを特徴とする平行型フラックスゲートセンサを用いた磁気検出回路。
【請求項10】
請求項
9に記載の磁気検出回路の複数個を、それぞれの平行型フラックスゲートセンサを構成する対を成すコアが平行となるよう、並列に設置したことを特徴とする磁気検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラックスゲートセンサおよびこれを用いた磁気検出回路、装置に係り、特に食品などに混入する金属片を検出できる平行型フラックスゲートセンサおよびこれを用いた磁気検出回路、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラックスゲートセンサは高透磁率材料の磁化飽和性を利用して磁場の1方向成分を検出するものである。フラックスゲートとは軟磁性体の高透磁率を利用したものであり、スポンジが水をよく吸うように、高透磁率の軟磁性体は外部磁界を吸収する。このため軟磁性体のコア(磁心)にコイルを巻き、コイルに電流を流して磁気飽和させると、吸収していた外部磁界を放出する。そこで別のコイルを検出コイルとして巻いておき、励磁電流を加えると、軟磁性体は外部磁界の吸収・放出を繰り返すため、トランスと同原理で誘起電圧が発生する。
【0003】
フラックスゲート方式の磁気センサは、微小な静磁界でも検出できるため、高感度な磁気センサなどに用いられてきた。直交型フラックスゲートは電流を流した導線の周囲には磁界が発生することを利用したもので、
図6に示すようにコア材料として導電性の高い軟磁性体が必要となり、これには例えばアモルファス金属が用いられる。このアモルファス金属からなるコア1の端部を電極端2とし、これに銅線等の導体を接合し、直接通電させて磁化飽和をなすようにしている。そして、このコア1の周囲に検出コイル3を巻き、外部磁界による磁束変化を検出器4で捉えるようにしている。
【0004】
ところが、非結晶体であるアモルファス金属は、銅線等の導体に比較して、電気的な接合が非常に困難である。したがって、アモルファス金属に直接電流を流して、通電電流により発生する磁界によって磁気飽和を発生させる直交型とすることは、歩留まりを低下させる原因であった。
【0005】
一方、平行型フラックスゲートセンサは、アモルファス金属の周囲に励磁コイルを巻き、励磁コイルに通電することで発生する磁界によって、アモルファス金属を磁気飽和させるので、アモルファス金属に何らかの電気的な接合は必要なく、製造が容易である利点がある。この様子を
図7に示す。アモルファス金属からなる一対の平行コア5に励磁コイル6を巻き、さらにその2個のコア5を一まとめとして全体に検出コイル7を巻き付けている。2個のコア5をそれぞれの励磁コイル6で逆磁界方向に交流励磁し、外部印加磁界による2個のコア5の磁束変化による誘導起電力の和を、2個のコア5を一まとめにして巻回された検出コイル7で検出し、磁界検出出力を得ている。したがって、2個のコア5に印加された外部磁界による誘導起電力の和を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-081300号公報
【文献】特開2001-133530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この方法だと製造方法が煩雑になり、且つ磁心に対する密着性が高くできないため、検出コイルに現れる起電力も低下する。したがって、従来方法では感度が低くなり、更に2個のコア5の磁束変化による誘導起電力に重畳する同相ノイズ成分も加算され、s/n比が悪くなっていた。また、コア5への励磁コイル6の巻き付け、2個のコア5の併設、2個のコア5を一まとめにした状態で検出コイル7の巻き付けという工程では、製造工程数が多く、煩雑となっていた。更にアモルファス金属がフィルムまたは細線からなる場合には、そのままでは機械的な強度がないので支持構造が必要となるとともに、コイルの巻回作業は一層困難となっていた。また、2個まとめて検出コイル7を巻き付けることはコア5との結合度が弱く、検出コイルに現れる起電力も低下し、その分だけ検出感度が落ちる問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これらの問題の解決方法として、対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、励磁コイルを各々逆極性で駆動し、検出コイルを並列または直列結線してなり、前記コアに取り付けられた前記励磁コイルと前記検出コイルは前記コア全長の1/10以下の距離に設置した平行型フラックスゲートセンサ構造とした。
また、対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、励磁コイルを各々逆極性で駆動し、検出コイルを並列または直列結線してなり、前記励磁コイルと前記検出コイルとは前記コアの長手方向中心からコア端部までの距離の7割以下の範囲に設けた平行型フラックスゲートセンサ構造とした。
【0009】
また、前記対のコアは二本の磁心を構造的に分離可能とし、感磁領域の分布を自由に調整することができるようにしてなることを特徴としている。
さらに、前記コアは熱膨張率が1~25ppm/℃の材料で構成することにより、周囲温度変化による磁界検出精度の低下を防いでいる。
なお、前記コアは例えばガラスエポキシ板でアモルファス金属を挟む構造としている。
【0010】
前記励磁コイルと検出コイルは、前記コアに巻き線用ボビンを兼用して直接巻き付ける他に、予めボビン上または空芯で巻き付けたコイルを前記コアに装着しても構わない。
前記コアに設けられる励磁コイルまたは検出コイルの中心軸と、コアの長手方向中心軸のなす角度が25度以下であることを特徴としている。
前記コアに取り付けられた励磁コイルと検出コイルはコア全長の1/10以下の距離に設置されていることを特徴としている。
【0011】
前記励磁コイルと検出コイルとはコアの長手方向中心からコア端部までの距離の7割以下の範囲に設けたことを特徴としている。
前記励磁コイルと検出コイルとは同一方向で巻回されていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る平行型フラックスゲートセンサを用いた磁気検出回路は、対をなす平行なコアのそれぞれに励磁コイルと検出コイルを設け、励磁コイルを各々逆極性で駆動し、検出コイルを並列結線してなり、前記コアに取り付けられた前記励磁コイルと前記検出コイルは前記コア全長の1/10以下の距離に設置、又は前記励磁コイルと前記検出コイルとは前記コアの長手方向中心からコア端部までの距離の7割以下の範囲に設けた平行型フラックスゲートセンサを備え、前記検出コイルには前記励磁コイルへの通電開始時期より遅れて誘導起電力の検波を開始する検波開始遅れ時間調整手段と、前記励磁コイルへの通電終了する以前に誘導起電力の検波を終了する検波終了時間調整手段とを設けたことを特徴としている。
【0013】
また、前記平行型フラックスゲートセンサを用いた磁気検出回路の複数個を、各平行型フラックスゲートセンサを構成する一対のコア同士が平行となるように設置することで、広範囲において各フラックスゲートセンサの感磁領域を可変としつつ感磁領域を分布させることが可能となっている。
【発明の効果】
【0014】
励磁電流で誘起する検出コイルでの大きな起電力を相殺させ、検出したい磁界の変動分のみ抽出するようになっている。
特に二本のコアを分離可能としているため、検査機械でこのセンサを利用する場合に感度ムラや検査幅の確保をすることができる。
【0015】
また、コアは熱膨張係数1~25ppm/℃範囲にある材料で熱膨張係数4~15ppm/℃のアモルファス金属を挟む構造とすることで、コアの構成材料が周囲温度の変化によって伸縮することで発生する応力が及ぼす、アモルファス金属の磁歪効果を低減し、磁気検出精度を向上させている。
前記コアの材料は、価格、入手性、微細加工性を考慮し、プリント基板で使用されるガラスエポキシ板2枚でアモルファス金属を挟む構造とできる。
【0016】
さらに、前記コアが励磁コイルと検出コイルの巻き線用ボビンを兼ねたときは、各コイルにボビンを必要とせずに材料コストを抑えることができる。
一方、予め別途設けたボビン上または空芯で巻き付けた励磁コイル及び検出コイルを前記コアに装着する場合は、各コイルの製造工程が単純かつ画一化でき、製造コストを抑えることが可能となる。
【0017】
前記コアに設けられる励磁コイルの中心軸とコアの長手方向中心軸のなす角度θは、コアに対する励磁磁界の強度がcosθの比率で低下し、磁界検出感度の精度に影響を及ぼす。また、検出コイルとコアの長手方向中心軸のなす角度も同様に余弦の比率で変化し、同様に、磁界検出感度の精度に影響を及ぼす。したがって、各コイルの中心軸とコアの長手方向中心軸のなす角度θは小さいほど良く、磁界検出感度の誤差を10%以下程度とすることが望ましい。この場合、各コイルの中心軸とコアの長手方向中心軸のなす角度θは25度以下とすると良い。
【0018】
本発明における平行型フラックスゲートセンサにおいては、軟磁性体のコア(磁心)に磁気飽和発生用コイル(励磁コイル)を設置し、コイルに励磁電流を流して磁気飽和させ、外部印加磁界によって起きるコアの磁気変化によって生じる誘導起電力を、前記コアに設置した磁界変化検出コイル(検出コイル)によって検出している。
したがって、励磁コイルと検出コイルの距離は小さいほど効率よく外部印加磁界を検出できる。
【0019】
また、軟磁性体のコアを磁気飽和させるために励磁コイルから印加される励磁磁界はコアの端部で反磁界を発生させ、励磁コイルがコアの端部近くに設置された場合は、コアを十分磁気飽和させることができない。
更に、コアの端部近くに検出コイルを設置させた場合は、検出コイルによって検出するコアの磁気変化は、外部印加磁界の影響によるものに加えて、励磁磁界の反磁界の影響も重畳させたものとなり、望ましくない。
【0020】
なお、発明者の鋭意研究の結果、励磁コイルと検出コイルとの間の距離とコアの全長との比率をコア全長の1/10以下とすると、外部印加磁界を十分な精度で検出することができた。
【0021】
また、同様に、発明者の鋭意研究の結果、励磁コイルと検出コイルはコアの長手方向中心からコア端部までの距離の7割以下の範囲に設置した場合、励磁コイルによる反磁界の効果に影響されることなく、外部印加磁界を十分な精度で検出できた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る平行型フラックスゲートセンサにおいて、検出コイルを並列に接続した場合の概念図である。
【
図2】コイルとコアの傾きの関係を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る平行型フラックスゲートセンサにおいて、検出コイルを直列に接続した場合の概念図である。
【
図4】実施形態に係る平行型フラックスゲートセンサを利用した磁気検出回路の構成図である。
【
図6】従来の直交型フラックスゲートセンサの概念図である。
【
図7】従来の平行型フラックスゲートセンサを概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る平行型フラックスゲートセンサおよびこれを用いた磁気検出回路の実施例を、図面を参照して、詳細に説明する。
実施形態に係る平行型フラックスゲートセンサ10は、
図1に示すように、一対の平行なコア12を有し、各コア12はそれぞれアモルファスフィルム14とそれを両側から挟む非磁性物質である厚板樹脂板16により挟着したものである。このアモルファスフィルム14は、例えば0.02mm×1.2mm×30mm(厚さ×幅寸法×長さ寸法)のものを使用し、他方、厚板樹脂板16はガラスエポキシが素材として用いられ、そのサイズは0.3mm×1.2mm×30mm(以下、同じ)のものを使用し、アモルファスフィルム14を厚板樹脂板16にてサンドイッチ状に挟み込んでいる。
【0024】
このようなコア12を一対平行に配置し、各コア12の間隔Dは12mmの距離に設定されている。この一対のコア12間の間隔Dは、限定的な値ではなく、検出感度や仕様によって異ならせることができる。具体的には、外部印加磁界が点磁界の場合、各コア12と磁界発生源のそれぞれの距離が、間隔Dと近いときほど、磁芯であるコア12間の磁束変化による誘導起電力が大きくなる。この際、誘導起電力に重畳する同相ノイズ成分を打ち消すことができれば、検出感度を高めることができる。このように、感磁領域の分布を自由に調整できるようになっている。これは特に検査機械にて、このセンサを利用する場合に感度ムラや検査幅の確保をする上で重要となる。
各コア12には励磁コイル20(20A、20B)と検出コイル22(22A、22B)を設けている。
【0025】
本実施形態における平行型フラックスゲートセンサ10、およびこの平行型フラックスゲートセンサ10を用いた磁気検出回路においては、軟磁性体のコア(磁心)12に磁気飽和発生用コイル(励磁コイル20)を設置し、励磁コイル20に励磁電流を流して磁気飽和させ、外部印加磁界によって起きるコア12の磁気変化によって生じる誘導起電力を、コア12に設置した磁界変化検出コイル(検出コイル22)によってより精度よく検出できる。したがって、励磁コイル20と検出コイル22との距離(隙間ΔL)は小さいほど効率よく外部印加磁界を検出できる。
【0026】
また、軟磁性体のコア12を磁気飽和させるために励磁コイル20から印加される励磁磁界はコア12の端部で反磁界を発生させ、励磁コイル20がコア12の端部近くに設置された場合は、コア12を十分磁気飽和させることができない。また、コア12の端部近くに検出コイル22を設置させた場合は、検出コイル22によって検出するコア12の磁気変化は、外部印加磁界の影響によるものに加えて、励磁磁界の反磁界の影響も重畳させたものとなり、望ましくない。
【0027】
発明者の鋭意研究の結果、各励磁コイル20(20A、20B)と、検出コイル22(22A、22B)との間の距離(隙間ΔL)とコア12の全長L0との比率をコア全長L0の1/10以下とすると、外部印加磁界を十分な精度で検出することができた。また、同様に、発明者の鋭意研究の結果、励磁コイル20(20A、20B)と検出コイル22(22A、22B)はコア12の長手方向中心Oを基点として、コア12の端部までの距離(L0/2)の7割以下の範囲に設置した場合、励磁コイル20(20A、20B)による反磁界の効果に影響されることなく、外部印加磁界を十分な精度で検出できた。
【0028】
これらを踏まえ、本実施形態に係る平行型フラックスゲートセンサ10を構成すると、一例として、コイル20、22は、巻き長さL1、L2をそれぞれ5mmとなるように構成し、それぞれ励磁コイル20と検出コイル22との隙間ΔLを1mmとする。ここで、各コイル20、22の巻回数は、それぞれ200ターンとして製作する。このような構成とすることで、励磁コイル20と検出コイル22とは同一の巻回数で同一の巻き長さ(L1=L2)を持ったもので、励磁コイル20と検出コイル22との間隔(隙間ΔL)は、コア12の全長L0(30mm)の1/10以下となるように構成されていることとなる。また、励磁コイル20、検出コイル22はそれぞれ、コア12の長手方向中心位置Oを基点として、コア12の端部までの距離(L0/2)の7割以下の範囲内に設けられていることとなる。
【0029】
このような構成の平行型フラックスゲートセンサ10を構成する際、コア12が励磁コイル20(20A、20B)と検出コイル22(22A、22B)の巻き線用ボビンを兼ねたときは、各コイル20、22にボビンを必要とせずに材料コストを抑えることができる。
【0030】
一方、予め別途設けたボビン(不図示)上または空芯で巻き付けた励磁コイル20及び検出コイル22をコア12に装着する場合は、各コイル20、22の製造工程が単純かつ画一化でき、製造コストを抑えることが可能となる。
【0031】
ここで、コア12に対して、ボビンを用いて、あるいは空芯で巻回構成した励磁コイル20や検出コイル22を配置した場合、
図2(A)に示すように、コア12と励磁コイル20や検出コイル22を構成する巻き線との間に微小な隙間Δdが設けられることとなる。このため、コア12と励磁コイル20や検出コイル22との配置関係によっては、
図2(B)に示すように、コア12の中心軸O1と、励磁コイル20や検出コイル22の中心軸O2との間に角度θが生じることとなる。
【0032】
コア12に設けられる励磁コイル20の中心軸とコア12の長手方向中心軸のなす角度θは、コア12に対する励磁磁界の強度がcosθの比率で低下し、磁界検出感度の精度に影響を及ぼす。また、検出コイル22とコア12の長手方向中心軸のなす角度θも同様に余弦の比率で変化し、同様に、磁界検出感度の精度に影響を及ぼす。したがって、各コイル20、22の中心軸とコア12の長手方向中心軸のなす角度θは小さいほど良く、磁界検出感度の誤差を10%以下程度とすることが望ましい。この場合、各コイル20、22の中心軸O2と、コア12の中心軸O1のなす角度θは25度以下とすると良い。
【0033】
励磁コイル20Aと20Bは直列で互いに逆極性となるように接続され、駆動電源24により電流を流すと互いの磁界は逆向きとなるようになっている。また、検出コイル22Aと22B同士は並列接続され、それらは検出器26にて検出できるようになっており、励磁電流で誘起される電流を検知できるものとなっている。すなわち、近くを磁性体が通ることにより磁界の変動が生じ、この変動成分を検出できるようになっている。また、
図3には検出コイル22A、22Bを直列に接続した例が示され、このような構成でも検出ができる。
【0034】
このような平行型フラックスゲートセンサ10を用いた検出回路の構成は、すなわち、GND電圧をまたぎ正負両側に振幅を有する交流電流(両波)またはGND電圧をまたがない交流電流(片波)を励磁コイルに通電しコア12を励磁する。例えば、
図4に示すように、駆動電源24は、交流発信器30とこれに続く矩形波励磁電流生成器32から構成し、矩形波として励磁コイル20に入力させるようにしている。なお、交流電流とは、SIN波電流だけではなく、パルス波、三角波、ランプ波などを含む。
【0035】
また、平行型フラックスゲートセンサ10の検出コイル22には検波期間選択器34を介して信号増幅器36が接続され、増幅された信号を検出信号として出力するようにしている。前記検波期間選択器34には、交流発信器30から信号を取り込み、検波開始遅れ時間調整器38と検波終了時間調整器40の回路を介して、検出コイル22に入力させ、発生する誘導起電力の検波時間を調整できるようにしている。検出コイル22に生ずる誘導起電力を検波する際、交流電流の一波形において、励磁コイル20への励磁電流通電開始時期より遅れて検出コイル22に生ずる誘導起電力の検波を開始し、励磁コイル20への励磁電流通電期間が終了する以前に検出コイルに生ずる誘導起電力の検波を終了するようにしている。このような方法を採用することにより、
図5に示されるように、コア12の励磁または検出コイル22に生ずる誘導起電力の検波時に、コア12のBH特性の正と負の残留磁束密度±Br間の領域を使用せず、飽和磁束密度Bsと残留磁束密度Brの間の領域を使用することができる。このような方法を採用することで、バルクハウゼンノイズの影響を避け、S/N比を向上させた平行フラックスゲートセンサ10を用いた検出回路とすることができる。
【0036】
また励磁コイル20と検出コイル22を設置した2個のコア12を併設し、検出コイル22を並列接続することで、各検出コイル22に生ずる誘導起電力の差を得ることができ、2個のコア12の磁束変化による誘導起電力に重畳する同相ノイズ成分を打ち消し、ノイズ低減を図ることができる。
【0037】
このように本発明では、平行型フラックスゲートセンサ10は、周辺磁界の変化を検出する媒体であるコア12として高透磁率で且つ軟磁性である材料(アモルファス金属)を使用し、コア12に対して周期的に磁気非飽和状態(=高透磁率)と、磁気飽和状態(磁気非飽和状態よりも著しく小さい透磁率)を繰り返し発生させて、磁心に通過する周辺磁界による磁束通過と排出を繰り返し発生させることで、周辺磁界の変化量を磁束の通過と排出の変化量に変換し、これを検出コイル22の誘導起電力の変化量に変換することで、周辺磁界の変化を検出することができる。
【0038】
非結晶であるアモルファス金属は銅線等の導体に対して電気的な接合が難しく、アモルファス金属に直接電流を流し、通電電流により発生する磁界によって磁気飽和を発生させる直行型は製造が難しいが、本実施形態では、平行型として電気的接続がないため、直交型の問題はない。
【0039】
平行型はアモルファス金属の周囲に励磁コイル20を設け、励磁コイル20に通電することで発生する磁界によってアモルファス金属の磁気飽和を発生させるので、アモルファス金属に何らかの電気的な接合は必要なく、しかもコイル20、22は同じ形態であるので製造が容易である利点がある。
【0040】
また、励磁電流はプラスのみ又はマイナスのみの単極性の電流で駆動し、励磁電流のONより後に検波ゲートをONし、励磁電流のOFFより前に検波ゲートをOFFすることで高感度となっている。
【0041】
このように、本実施形態によれば、励磁コイル20と検出コイル22を設けたコア12を平行に設置する。したがって、製作時にコイル巻回設置工程を連続して行うことができる。またコア12を非磁性物質で保持(例えば、2枚の樹脂板で挟み込む)することによって、各コイルの巻回設置工程が簡略化できる利点がある。さらに、磁界検出出力2(Vp-p)/(uTp-p)以上、残留ノイズレベル500(uVp-p)以下であり、S/N>4000以上、分解能0.25(nT)以上を得ている。
【0042】
以上のように、本実施形態では、励磁電流で誘起する検出コイルでの大きな起電力を相殺させ、検出したい磁界の変動分のみ抽出するようになっている。特に二本のコア12を分離可能としているため、検査機械でこのセンサを利用する場合に感度ムラや検査幅の確保をすることができる。
【0043】
また、コア12は熱膨張係数1~25ppm/℃範囲にある材料で熱膨張係数4~15ppm/℃のアモルファス金属を挟む構造とすることで、コア12の構成材料が周囲温度の変化によって伸縮することで発生する応力が及ぼす、アモルファス金属の磁歪効果を低減し、磁気検出精度を向上させている。コア12の材料は、価格、入手性、微細加工性を考慮し、プリント基板で使用されるガラスエポキシ板2枚でアモルファス金属を挟む構造とすることもできる。
【0044】
また、対をなす平行なコア12のそれぞれに励磁コイル20(20A、20B)と検出コイル22(22A、22B)を設け、励磁コイル20Aと励磁コイル20Bを各々逆極性で駆動し、検出コイル22(22A、22B)を励磁コイル20(20A、20B)に対して並列もしくは直列結線してなる平行型フラックスゲートセンサを複数個、それぞれのフラックスゲートセンサを構成する対を成すコア12が平行となるよう、並列に設置した磁気検出回路装置とすることで、優れた磁気検出ができるものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は食品に混入した鉄片などを検出することができる平行型フラックスゲートセンサおよびこれを用いた磁気検出回路、装置に関する。
【符号の説明】
【0046】
10………平行型フラックスゲートセンサ、12………コア、14………アモルファスフィルム、16………厚板樹脂板、20(20A、20B)………励磁コイル、22(22A、22B)………検出コイル、24………駆動電源、26………検出器、30………交流発信器、32………矩形波励磁電流生成器、34………検波期間選択器、36………信号増幅器、38………検波開始遅れ時間調整器、40………検波終了時間調整器。