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特許7536293規則性多孔質固体電解質構造体、それを含む電気化学デバイス、その製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】規則性多孔質固体電解質構造体、それを含む電気化学デバイス、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240813BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240813BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240813BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240813BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240813BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20240813BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240813BHJP
   H01M 10/054 20100101ALN20240813BHJP
   H01M 8/1016 20160101ALN20240813BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/058
H01M4/38 Z
H01B1/06 A
H01G11/56
H01M10/052
H01M10/054
H01M8/1016
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020543368
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019018349
(87)【国際公開番号】W WO2019161301
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】62/631,324
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501073817
【氏名又は名称】ユニバシティ オブ メリーランド カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】ワックスマン,エリック,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マクオーウェン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,ユンフィ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ヤン
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/116599(WO,A2)
【文献】特表2016-517146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/058
H01M 10/052
H01M 10/054
H01M 10/0565
H01B 1/06
H01M 8/1016
H01G 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のイオン伝導性材料からなり、第1の表面を有する基板と、
前記基板の前記第1の表面上に配置された第1の規則性多孔質ミクロ構造体であって、少なくとも1つの特徴により画定された細孔を有し、前記少なくとも1つの特徴が、300μm以下の少なくとも1つの寸法を有し、前記少なくとも1つの特徴が、第2のイオン伝導性材料からなり、前記少なくとも1つの特徴がであり、前記第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、前記基板の前記第1の表面上に配列された平行な柱の第1の層を含む、第1の規則性多孔質ミクロ構造体と、
を備える、固体型電解質構造体。
【請求項2】
前記第2のイオン伝導性材料が、前記第1のイオン伝導性材料と同じかまたは異なる、請求項1に記載の固体型電解質構造体。
【請求項3】
前記第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、平行な柱の前記第1の層上に配置された平行な柱の第2の層を備える、請求項1に記載の固体型電解質構造体。
【請求項4】
平行な柱の前記第2の層が、前記第1の層の前記平行な柱に対して格子角度をなす、請求項3に記載の固体型電解質構造体。
【請求項5】
前記基板が、前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有し、前記基板の前記第2の表面上に配置された第2の規則性多孔質ミクロ構造体をさらに含み、前記第2の規則性多孔質ミクロ構造体が、少なくとも1つの第2の特徴により画定された細孔を有し、前記少なくとも1つの第2の特徴が、200μm未満の寸法を有し、前記少なくとも1つの第2の特徴が、第3のイオン伝導性材料を含む、請求項1に記載の固体型電解質構造体。
【請求項6】
前記第3のイオン伝導性材料が、前記第1のイオン伝導性材料および/もしくは前記第2のイオン伝導性材料と同じである、または前記第1のイオン伝導性材料および/もしくは前記第2のイオン伝導性材料と異なる、請求項に記載の固体型電解質構造体。
【請求項7】
前記第2の規則性多孔質ミクロ構造体が、複数の柱状構造1つの格子構造または1つの多層格子構造を備える、請求項に記載の固体型電解質構造体。
【請求項8】
前記イオン伝導性材料が、リチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料またはマグネシウムイオン伝導性材料である、請求項1に記載の固体型電解質構造体。
【請求項9】
前記リチウムイオン伝導性材料がリチウム-ガーネット材料である、請求項に記載の固体型電解質構造体。
【請求項10】
前記第1の規則性多孔質ミクロ構造体の少なくとも一部に配置されたカソード材料をさらに含む、請求項1に記載の固体型電解質構造体。
【請求項11】
前記カソード材料が、硫黄、空気または酸素である、請求項10に記載の固体型電解質構造体。
【請求項12】
第1のイオン伝導性材料からなり、第1の表面および前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する基板と、
前記基板の前記第1の表面上に配置された第1の規則性多孔質ミクロ構造体であって、少なくとも1つの特徴により画定された細孔を有し、前記少なくとも1つの特徴が300μm以下の少なくとも1つの寸法を有し、前記少なくとも1つの特徴が第2のイオン伝導性材料からなる、第1の規則性多孔質ミクロ構造体と、
前記基板の前記第2の表面上に配置された第2の規則性多孔質ミクロ構造体であって、少なくとも1つの第2の特徴により画定された細孔を有し、前記少なくとも1つの第2の特徴が200μm未満の1つの寸法を有し、前記少なくとも1つの第2の特徴が第3のイオン伝導性材料を含む、第2の規則性多孔質ミクロ構造体と、
を備える、固体型電解質構造体。
【請求項13】
前記第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、複数の柱状構造1つの格子構造、1つの多層格子構造またはそれらの組合せを備える、請求項12に記載の固体型電解質構造体。
【請求項14】
前記第2の規則性多孔質ミクロ構造体が、複数の柱状構造1つの格子構造または1つの多層格子構造を備える、請求項12または13に記載の固体型電解質構造体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の固体型電解質構造体を備える固体型イオン伝導性バッテリーである、電気化学デバイス。
【請求項16】
規則性多孔質固体型電解質の製造方法であって、
a)緻密層上に配置された規則性固体型電解質前駆体材料の第1の層が形成されるように、前記緻密層上に配置された3D印刷可能な組成物の第1の層を形成するために、あらかじめ選択された量の前記3D印刷可能な組成物を堆積させることであって、
前記3D印刷可能な組成物が、
i)イオン伝導性材料、または
ii)加熱されたときイオン伝導性無機材料を形成する前駆体材料の組合せ、および
iii)分散剤、バインダー、可塑剤または溶媒のうちの少なくとも1つ、を含む、
堆積させることと、
b)規則性固体型電解質前駆体材料の第2の層が形成され、規則性固体型電解質前駆体材料の前記第2の層が規則性固体型電解質前駆体材料の前記第1の層の少なくとも一部に配置されるように、前記3D印刷可能な組成物の第2の層を形成するために、あらかじめ選択された量の前記3D印刷可能な組成物を任意選択で堆積させることと、
c)任意選択で、所定の時間待つこと、および/または前記層を加熱することと、
d)任意選択で、b)の前記堆積を繰り返すこと、および、任意選択で、c)を所望の回数繰り返すことと、
e)規則性固体型電解質前駆体材料の前記層を乾燥することと、
f)前記規則性多孔質固体型電解質を形成するために、規則性固体型電解質前駆体材料構造体の前記層を加熱することと、
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月15日に出願された米国特許仮出願第62/631,324号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載
本発明は、NASAグレン研究センターから受けたNNC16CA03Cおよびエネルギー省から受けたDE-EE0008201の下、政府の支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は概して、規則性固体型電解質構造体に関する。
とりわけ本開示は概して、規則性固体型電解質構造体の製造方法および電気化学デバイスにおける規則性固体型電解質構造体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ガーネット型LiLaZr12(LLZ)などの固体型リチウム伝導体は、バッテリー技術に革命をもたらし得るこれらの材料が持つ利点のために、固体型リチウムバッテリー用電解質として非常に大きな関心を生んだ。それらは一般に、より安全な不燃性材料であり、従来のLiイオンバッテリー電解質において使用される、これらのバッテリーが発火する恐れがある主な理由と見なされている揮発性のカーボネート溶媒および反応性のリチウム塩とは異なる。さらに、ガーネット型リチウム伝導体の多くは、高い電気化学的安定性を有する。LLZは特にリチウム金属に対して安定であり、選ばれたリチウム金属のバッテリーアノードは、任意の電極において最も高い比容量および最も負の酸化還元電位を有する。しかし、リチウム金属は、セルを短絡させて破局故障を招くLiデンドライト成長のために、液体電解質を含む従来のLiイオンバッテリーでは使用することができない。Li金属なしでは、達成可能なバッテリーのエネルギー密度は限定される。
【0005】
固体型バッテリーにおけるLLZおよび類似の固体電解質の商業化を妨げている主な障害は、高いセル面積比抵抗(ASR)であり、これは、厚い電解質のインピーダンスおよび不十分な電極-電解質の接触によって引き起こされる界面インピーダンスの両方の寄与による。電解質の高インピーダンスは、それ自体、2つの因子:比較的低い伝導度および長い拡散距離によって引き起こされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不十分な電極-電解質の接触は問題を悪化させる。液体電解質は濡らすことができ、電極表面と共形となることができるが、固体電解質では不可能であり、これは、電極と電解質との間の全領域の界面を大幅に制限する。
さらに、ガーネット電解質および他のセラミック電解質は、典型的には平坦な平面形態で研究され、すなわち、電解質粉末がペレットにプレスされ、焼結されて、均一な高密度を達成し、これにより、強度および高い伝導度が与えられる。しかし、ペレットの平面形状は、電極とのあらゆる界面が幾何学的な接触領域のみに限定されることを意味する。電解質と電極との間の均一な固体-固体接触の実現における困難に関連するこの因子は、固体電解質が知られている高い界面インピーダンスに寄与する。これらの因子のそれぞれが高抵抗セルに寄与し、バッテリーにおいて実現可能な電流密度を著しく制限し、これでは標準的な液体電解質Liイオン技術と競うことができない。
【0007】
3D印刷技術は、様々な構造-特性関係を広範囲の長さスケールで迅速に探索することができるその能力で有名ではある。しかし、固体電解質の3D印刷の報告は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、規則性多孔質ミクロ構造体を含む固体型電解質構造体およびその使用を提供する。固体型電解質構造体は、固体型電解質として使用することができる。本開示はまた、規則性多孔質ミクロ構造体を含む固体型電解質の製造方法およびそれを製造するための組成物も提供する。
【0009】
ある態様において、本開示は規則性多孔質固体型電解質構造体を提供する。規則性多孔質固体型電解質構造体は、本開示の1種または複数種の3D印刷可能な組成物を使用して、および/または本開示の3D印刷の方法により製造することができる。
【0010】
固体型電解質構造体は、イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオン)を、例えば、アノードとカソードとの間で伝導する。固体型電解質構造体は、基板であってよい緻密領域(例えば、緻密層)を有し、これは、1つまたは複数の規則性多孔質ミクロ構造体(例えば、規則性多孔質層)により支持されている。固体型電解質構造体の規則性多孔質ミクロ構造体は規則性多孔質構造を有する。規則性多孔質構造は、固体型電解質構造体の1つまたは複数の特徴により形成されている。固体型電解質構造体は、固体型電解質構造体の規則性ミクロ構造体の少なくとも一部に配置されたカソード材料および/またはアノード材料を有してよい。
【0011】
ある態様において、本開示は、規則性多孔質固体型電解質構造体を3D印刷するための組成物を提供する。この組成物は、本開示の固体型電解質を製造するために(例えば、本開示の方法において)使用されてよい。3D印刷可能な組成物は、イオン伝導性材料(例えば、イオン伝導性ポリマー性材料、例えば、イオン伝導性ポリマーなど、イオン伝導性無機材料、例えば、イオン伝導性無機粉末など、またはイオン伝導性ハイブリッドポリマー/無機材料)、または加熱されたときイオン伝導性無機材料(例えば、イオン伝導性セラミック材料)を生成する前駆体材料(例えば、粉末)(例えば、金属酸化物、カーボネート、ナイトレートおよび同種のものなど)の組合せ;および分散剤、バインダー、可塑剤または溶媒のうちの少なくとも1つ(例えば、1種もしくは複数種の分散剤、1種もしくは複数種のバインダー、1種もしくは複数種の可塑剤、またはさらに1種の溶媒、あるいはそれらのうちの1つもしくは複数の任意の組合せまたはそれらの任意の組合せ)を含む。
【0012】
ある態様において、本開示は、規則性多孔質固体型電解質構造体を3D印刷する方法を提供する。この方法では、本開示の1種または複数種の組成物が使用されてよく、および/またはこの方法が、本開示の規則性多孔質固体型電解質構造体を製造するために使用されてよい。この方法では、緻密層上に配置された規則性固体型電解質前駆体材料の1つまたは複数の層を形成するために、同じかまたは異なる組成物を使用することができる。この方法は、同じ特徴、または少なくとも1つの異なる形状を有する前駆体材料特徴の組合せの堆積を含んでよい。この前駆体材料は、(例えば、個々の特徴および/もしくは層が堆積される間に、または前駆体材料の特徴および/もしくは層のすべてが堆積された後に)乾燥させてよい。堆積が完了した後、規則性固体型電解質前駆体材料は、固体型電解質構造体を提供するために加熱される(例えば、焼結される)。この方法は、3Dプリンタ上で行われてよい。規則性多孔質固体型電解質の製造方法の非限定的な例が本明細書に記載されている。
【0013】
ある態様において、本開示は電気化学デバイスを提供する。このデバイスは、本開示の1つまたは複数の固体型電解質構造体を含む。デバイスの非限定的な例には、バッテリー、電解セル、キャパシタ、燃料電池または燃料電池/バッテリーデバイスが含まれる。このデバイスは、リチウムイオン伝導性デバイス、ナトリウムイオン伝導性デバイスまたはマグネシウムイオン伝導性デバイスであってよい。
【0014】
本開示の性質および目的をより完全に理解するために、以下の詳細な説明を添付図面と併せて参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】固体電解質構造体を3D印刷するためのプロセスの概略図である。この場合、インクはLLZ基板上に印刷され、これは、共形インクを使用して3D印刷されたLLZ膜、またはLLZテープであり得る。構造体の高さは層を加えることにより高くなり、異なる設計を基板のいずれの側にも印刷することができる。乾燥したら、3D印刷されたLLZインクおよび基板は、バインダーの完全燃焼および焼結のために炉内に置かれ、そうすると、バッテリーアセンブリを完成させるための電極浸透の準備が整う。
図2(a)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、サブミクロンLLZ粉末の粒子サイズ分布および(挿入)SEM像を示す図である。
図2(b)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、堆積直後の自己支持性インクの安定性を示す、-50°傾けた堆積されたインクの写真である。
図2(c)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、純粋な立方相ガーネットを示す、インクを調製するために使用されたLLZのXRDを示す図である。
図2(d)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、ニュートン挙動および粘度450cPを有する共形インク(緑色)と対比した、降伏応力(τ)280Paおよび粘度1500cPを有する自己支持性インクのレオロジーデータを示す図である。
図2(e)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、使用される溶媒の量を変更することにより粘度を制御した3種の共形インクのレオロジーデータを示す図である。1.0(緑色)、1.1(黒色)および1.2(灰色)の規格化した溶媒割合の増加は、粘度(η)の低下に対応する。
図2(f)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、共形インクの堆積された単層の写真である。
図2(g)】LLZ粉末およびそれから調製されたインクの特性を示し、5~10μm厚を有する焼結後のインクの単層のSEM断面像を示す図である。
図3】線パターン(a、d、g)、格子パターン(b、e、h)および柱パターン(c、f、i)を含む、印刷および焼結された共形インク(d~f)および自己支持性インク(g~i)を比較する、3D印刷されたLLZミクロ構造体の図(a~c)およびSEM像(d~i)である。各パターンは、インクの異なるレオロジー特性に適応するように変更を加えた類似の印刷スクリプトを使用して印刷された。
図4(a)】LLZ基板上の積層配列パターンの3D印刷されたLLZ格子間のLi充填細孔の概略図である。
図4(b)】3D印刷されたLLZ|Li金属界面(赤線)の断面SEMを示す図である。
図4(c)】様々な電流密度におけるLi|3D印刷されたLLZ|Li金属セルのDCサイクルを示す図である。各プレーティング/ストリッピングサイクルの長さは1h(h=時間)であった。
図5】ポロジェンありとなしでインクを3D印刷して、多層構造体内に不規則な孔を作り出す能力を示す、多孔質-緻密二層構造体のSEM断面像を示す図である。
図6】自己支持性インクを使用した印刷されたままの柱の写真である。
図7(1)】3D印刷プロセスのビデオスクリーンショットを示す図である。セラミックノズルが基板表面に近づき、分配インクが基板に接触する。
図7(2)】3D印刷プロセスのビデオスクリーンショットを示す図である。このノズルが上向きに動き、柱を作り出す。
図7(3)】3D印刷プロセスのビデオスクリーンショットを示す図である。このノズルが上向きに動き、柱を作り出す。
図7(4)】3D印刷プロセスのビデオスクリーンショットを示す図である。次いで、このノズルが右に動いて、次の柱を印刷する。上述の4つの画像は約1秒間にわたる。
図8】印刷のために使用されたLLZ粉末の粒子サイズ分布およびX線回折パターンを示す図である。
図9(a)】ガーネット:バインダー比2.08:1を有する3D印刷LLCZNガーネットインクのレオロジーデータを示す図である。
図9(b)】ガーネット:バインダー比1.85:1を有する3D印刷LLCZNガーネットインクのレオロジーデータを示す図である。溶媒wt%が各線上に示されている。
図10(a)】3D印刷された低粘度LLCZNインクの5×5cm単層薄膜の写真である。
図10(b)】焼結された膜のSEM断面像である。
図10(c)】低粘度共形インクを使用して印刷された焼結されたLLCZN線パターンのSEM断面像である。
図10(d)】高粘度自己支持性インクを使用して印刷された焼結されたLLCZN線パターンのSEM断面像である。
図11(a)】3D印刷されたLLCZNガーネットインクの画像であり、典型的な印刷領域の写真である。
図11(b)】3D印刷されたLLCZNガーネットインクの画像であり、ラスタパターンおよび他の印刷変数を調整することにより様々な線の太さおよび間隔を有する線パターンの顕微鏡像である。
図11(c)】3D印刷されたLLCZNガーネットインクの画像であり、ラスタパターンおよび他の印刷変数を調整することにより様々な線の太さおよび間隔を有する線パターンの顕微鏡像である。
図11(d)】3D印刷されたLLCZNガーネットインクの画像であり、ラスタパターンおよび他の印刷変数を調整することにより様々な線の太さおよび間隔を有する線パターンの顕微鏡像である。
図12】ガーネット基板上のアスペクト比0.65~1.8を有する印刷されたままの3D印刷された多層柱構造体の写真(上)およびガーネット基板上のアスペクト比0.65~1.8を有する焼結された3D印刷された多層柱構造体のSEM像(下)である。
図13】ガーネット基板上の印刷されたままの3D印刷された多層格子構造体の写真(上)およびガーネット基板上の焼結された3D印刷された多層格子構造体のSEM像(下)である。
図14】化学拡散(左)対電気移動(右)の図である。
図15】セルが放電されるときの電極内のLi濃度を可視化した図である(初期は濃青色)。初期(充電)状態が左に示されており、右に向かって放電状態になる。
図16】放電中のガーネットピラー内のリチウム輸送を示す図である。
図17】平均リチウムにより決定される所与のボクセルの電位を決定するために使用されたリチウム化曲線を示す図である。
図18】層格子構造内のリチウム輸送に対する電解質特徴の影響を示す図である。
図19(a)】格子構造体について(電解質構造体の多孔度を85%、高さを200μmに固定することにより)固定された電極負荷および様々な特徴直径を用いた時間に応じた電極リチウム化のモデル化を示す図である。
図19(b)】柱構造体について(電解質構造体の多孔度を85%、高さを200μmに固定することにより)固定された電極負荷および様々な特徴直径を用いた時間に応じた電極リチウム化のモデル化を示す図である。
図19(c)】特徴直径に応じたこれらの構造体の相対(充電/放電)Cレートを示す図である。
図20】選択された実証された3Dガーネット構造体:特徴直径75μmならびに間隔300μmおよび500μm(それぞれ多孔度80%および89%)を有する二層格子構造体、直径150μm、高さ225μmおよび間隔500μm(多孔度93%)を有する柱構造体、ならびに比較のための二層のモデル化を示す図である。
図21(a)】質量負荷約14mg/cm NMCおよび電流密度10~30mA/gに対するカソード側に二層格子構造体を使用した60℃でのLi-NMCバッテリーの電気化学的性能を示し、室温(青色)および60℃(赤色)での全セルのEISを示す図である。
図21(b)】質量負荷約14mg/cm NMCおよび電流密度10~30mA/gに対するカソード側に二層格子構造体を使用した60℃でのLi-NMCバッテリーの電気化学的性能を示し、サイクル数に対する放電容量を示す図である。
図21(c)】質量負荷約14mg/cm NMCおよび電流密度10~30mA/gに対するカソード側に二層格子構造体を使用した60℃でのLi-NMCバッテリーの電気化学的性能を示し、選択されたサイクル1および5(10mA/g)ならびにサイクル10および13(30mA/g)の電圧プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特許請求される主題が特定の実施形態および例に関して説明されるが、本明細書に記載の利益および特徴をすべて提供するわけではない実施形態および例を含む他の実施形態および例も本開示の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく構造的に、論理的に、プロセスステップに、および電子的に様々な変更を加えることができる。
【0017】
値の範囲が本明細書に開示される。この範囲は下限値および上限値の例を示す。他に記載されていない限り、この範囲は、最小値(下限値または上限値のいずれか)の大きさまでのすべての値および記載された範囲の値の間の範囲を含む。
【0018】
本開示は、規則性多孔質ミクロ構造体を含む固体型電解質構造体およびその使用を提供する。固体型電解質構造体は、固体型電解質として使用することができる。本開示はまた、規則性多孔質ミクロ構造体を含む固体型電解質の製造方法およびそれを製造するための組成物も提供する。
【0019】
ある態様において、本開示は規則性多孔質固体型電解質構造体を提供する。規則性多孔質固体型電解質構造体は、本開示の1種または複数種の3D印刷可能な組成物を使用して、および/または本開示の3D印刷の方法により製造することができる。
【0020】
固体型電解質構造体は、イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオンまたは同種のもの)を、例えば、アノードとカソードとの間で伝導する。固体型電解質構造体は、基板であってよい緻密領域(例えば、緻密層)を有し、これは、1つまたは複数の規則性多孔質ミクロ構造体(例えば、規則性多孔質層)により支持されている。規則性多孔質ミクロ構造体は、同じイオン伝導性材料または、独立して、異なるイオン伝導性材料を含んでよい。
【0021】
固体型電解質構造体の規則性多孔質ミクロ構造体は規則性多孔質構造を有する。規則性多孔質構造は、固体型電解質構造体の1つまたは複数の特徴により形成されている。規則性多孔質ミクロ構造体が存在する場合、2つのミクロ構造体の細孔構造は同じでも、異なっていてもよい。個々のミクロ構造体の細孔構造は、例えば、その後のスクリーン印刷ステップまたは浸透ステップにおいて、例えば、加工ステップに適応させ(例えば、ある種の細孔構造は、電極材料(例えば、電荷貯蔵材料)(例えば、カソード材料またはアノード材料)で充填するのがより容易な場合がある)、所望の電極材料容量、すなわち、伝導性材料(例えば、Li、Na、Mg2+)が電極材料中に貯蔵される程度を達成するよう選択されてよい。ミクロ構造体はまた、緻密相(固体電解質)のイオン伝導を電極層内に広げて、電極内のイオン伝導および電極/電解質界面での電荷移動反応に起因する界面抵抗の両方の点から電極抵抗を低減し、後者は、より大きい電極/電解質界面積を有することにより改善される。
【0022】
固体型イオン伝導性電解質材料は、バッテリーの充電および/または放電の間、固体型イオン伝導性電解質材料の多孔質領域(例えば、多孔質層)内に、かつそこからイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオン)が拡散するように構成されている。ある実施形態において、固体型イオン伝導性バッテリーは、バッテリーの充電および/または放電の間、固体型イオン伝導性電解質材料の多孔質領域内に、かつそこからイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオン)が拡散するように構成された1つまたは2つの多孔質領域(例えば、多孔質層)を含む固体型イオン伝導性電解質材料を含む。
【0023】
固体型電解質構造体は、基板と呼ばれることもあるイオン伝導性材料の緻密層の表面上に配置された少なくとも1つの規則性多孔質ミクロ構造体を含む。この構造体は、イオン伝導性材料の緻密層の両側に配置された2つの規則性多孔質ミクロ構造体を有してよい。
【0024】
規則性多孔質ミクロ構造体は細孔を備える。細孔はボイドと呼ばれることもある。細孔は、イオン伝導性材料を含む特徴により画定される。特徴の非限定的な例には、柱、線、格子、それらの組合せおよび同種のものが含まれる。特徴は、3D印刷により形成することができる。規則性多孔質ミクロ構造体は多層構造体(例えば、2~100層、その間のすべての整数の層および範囲を含む)であってよい。多層構造体には、柱、線、格子、それらの組合せおよび同種のものが含まれ得る。
【0025】
細孔は、様々なサイズを有してよい。例えば、規則性多孔質ミクロ構造体は、基板(例えば、第1の表面)に平行な平面内で測定される1μm~2000μm(例えば、1~1000μm)の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有する複数の細孔を備え、および/または規則性多孔質ミクロ構造体は、(例えば、基板(例えば、第1の表面)に対して垂直に測定される1μm~2000μm(例えば、1~1000μm)の高さを有する複数の細孔を備える。細孔は、実質的に同じ(または同じ)サイズを有してよく、または1つもしくは複数の異なるサイズを有してよい。「実質的に」によって、個々の細孔サイズの差が5%以下または1%以下であることを意味する。
【0026】
特徴は、様々なサイズを有してよい。例えば、規則性多孔質ミクロ構造体は、複数の特徴を備え、かつ300μm以下の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有する少なくとも1つの特徴により画定された細孔を有する。様々な例において、規則性多孔質ミクロ構造体は、1μm~200μmおよびその間の整数のミクロン値を含むすべての値の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有する少なくとも1つの特徴により画定された細孔を有する複数の特徴を備える。特徴は、実質的に同じ(または同じ)サイズを有してよく、または1つもしくは複数の異なるサイズを有してよい。
【0027】
特徴は、様々な量の緻密層(例えば、基板)表面上に配置されてよい。例えば、特徴は、緻密層の外面の10~90%(その間のすべての整数%値および範囲を含む)の上に配置されている。他の例では、特徴は、緻密層の外面の15~50%または20~40%の上に配置されている。
【0028】
規則性多孔質ミクロ構造体は、様々な厚さを有してよい。厚さは、ミクロ構造体の高さと呼ばれることもある。厚いミクロ構造体(例えば、最大2000μm(例えば、最大1000μm)の厚さを有するミクロ構造体)を有することが望ましい。
【0029】
緻密層は、様々な厚さを有してよい。例えば、緻密層は、100μm以下(例えば、5~30μm)の厚さを有する。緻密層は基板と呼ばれることもある。
【0030】
緻密層および規則性多孔質ミクロ構造体は、様々なイオン伝導性材料(例えば、リチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料およびマグネシウムイオン伝導性材料)から形成することができる。イオン伝導性材料は、イオン伝導性無機(例えば、セラミック)材料、イオン伝導性ポリマー性(例えば、イオン伝導性ポリマー材料)、またはイオン伝導性ハイブリッド材料(例えば、イオン伝導性無機(例えば、セラミック材料)およびイオン伝導性ポリマー性(例えば、ポリマー)材料の両方を含むであってよい。緻密層および規則性多孔質ミクロ構造体は、同じかまたは異なるイオン伝導性材料であってよい。個々のミクロ構造体は、同じかまたは異なるイオン伝導性材料の特徴を有してよい。
【0031】
緻密層は、イオン伝導性ポリマー材料を含んでよい。様々なイオン伝導性ポリマー材料を使用することができる。ポリマー材料は、1種もしくは複数種のイオン伝導性ポリマー、1種もしくは複数種のイオン伝導性コポリマーまたはそれらの組合せを含んでよい。この(複数種の)ポリマーおよび/または(複数種の)コポリマーの分子量は特に限定されない。例えば、デバイス(例えば、固体型イオン伝導性バッテリー)の性能(例えば、イオン伝導度)要件に応じて、(複数種の)ポリマーおよび/または(複数種の)コポリマーは、幅広い分子量を有することができる。ポリマー性材料は、(複数種の)伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)伝導性コポリマーならびに(複数種の)非伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)非伝導性コポリマーの混合物を含んでよい。
イオン伝導性ポリマーの例が本明細書に記載されている。(複数種の)ポリマーおよび/またはコポリマーは、様々な構造(例えば、二次構造)を有することができる。様々な例において、(複数種の)ポリマーおよび/または(複数種の)コポリマーは、非晶性、結晶性またはそれらの組合せである。(複数種の)ポリマーおよび/またはコポリマーが低い結晶化度を有することが望ましい場合がある。
【0032】
緻密層は、無機材料を含んでよい。緻密層は、規則性多孔質ミクロ構造体のものと同じ無機材料であってよい。
【0033】
一例として、緻密層はガーネット材料である。ガーネット材料の非限定的な例には、リチウムガーネット材料、ドープリチウムガーネット材料、リチウムガーネット複合材料およびそれらの組合せが含まれる。リチウムガーネット材料の非限定的な例には、Li相リチウムガーネットSSE材料(例えば、LiTe12(式中、Mは、Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Taなどのランタニドまたはそれらの組合せである)およびLi3+xNdTe2-x12(式中、xは、0.05~1.5である)、Li相リチウムガーネットSSE材料(例えば、LiLa 12(式中、Mは、Nb、Zr、Ta、Sbまたはそれらの組合せである)、カチオン置換LiLa 12、例えば、LiLa 12(式中、Mは、Mg、Ca、Sr、Baまたはそれらの組合せである)およびLiLa 12(式中、Mは、Zr、Snまたはそれらの組合せである)など;Li相リチウムガーネットSSE材料(例えば、LiLa 12(式中、Mは、Mg、Ca、Sr、Baまたはそれらの組合せであり、Mは、Nb、Taまたはそれらの組合せである);カチオンドープLiLaBaTa12;カチオンドープLiBaY 12(式中、Mは、Nb、Taまたはそれらの組合せであり、カチオンドーパントは、バリウム、イットリウム、亜鉛またはそれらの組合せである)、Li相リチウムガーネットSSE材料(例えば、立方晶LiLaZr12およびLiZr12、);カチオンドープLiLaZr12;Li5+2xLa、Ta2-x12(式中、xは、0.1~1である)、Li6.8(La2.95,Ca0.05)(Zr1.75,Nb0.25)O12(LLCZN)、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512またはLi6.75BaLaTa1.75Zn0.2512)、リチウムガーネット複合材料(例えば、リチウムガーネット-伝導性炭素マトリックスまたは他の材料との複合材)が含まれる。リチウムイオン伝導性SSE材料の他の例には、3mol% YSZドープLi7.06LaZr1.940.0612および8mol% YSZドープLi7.16LaZr1.940.0612などの立方晶ガーネット型材料が含まれる。適したLi-ガーネットSSE材料の追加の例には、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512またはLi6.75BaLaTa1.75Zn0.2512が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
緻密層はナトリウムイオン伝導性材料であり得る。例えば、緻密層材料は、β’’-Al、NaZrSiPO12(NASICON)またはカチオンドープNASICON(例えば、NaZrAlSiPO12、NaZrFeSiPO12、NaZr1.940.06SiPO12、NaZrSbSiPO12またはNaZrDySiPO12)を含む。
【0035】
緻密層はマグネシウムイオン伝導性材料であり得る。例えば、緻密層材料は、Mg1+x(Al,Ti)(PO、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料(例えば、Mg1-2x(Zr1-x24)またはMg1-2x(Zr1-x)(WO(式中、xは、0.01~0.5である)を含む。
【0036】
固体型電解質構造体のイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料またはマグネシウムイオン伝導性材料であってよい。固体型電解質構造体のイオン伝導性材料は、無機イオン伝導性材料、ポリマー性イオン伝導性材料またはそれらの組合せであってよい。
【0037】
規則性多孔質ミクロ構造体のイオン伝導性材料はイオン伝導性ポリマー性材料であってよい。様々な伝導性ポリマー性材料を使用することができる。ポリマー性材料は、1種もしくは複数種のイオン伝導性ポリマー、1種もしくは複数種のイオン伝導性コポリマーまたはそれらの組合せを含んでよい。この(複数種の)ポリマーおよび/または(複数種の)コポリマーの分子量は特に限定されない。例えば、デバイス(例えば、固体型イオン伝導性バッテリー)の性能(例えば、イオン伝導度)要件に応じて、(複数種の)ポリマーおよび/または(複数種の)コポリマーは、幅広い分子量を有することができる。ポリマー性材料は、(複数種の)伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)伝導性コポリマーならびに(複数種の)非伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)非伝導性コポリマーの混合物を含んでよい。適した伝導性ポリマーの例は、当技術分野において既知である。
【0038】
ポリマー性材料は、伝導性塩を含んでよい。塩の非限定的な例には、リチウム塩(例えば、LiTFSEおよび同種のもの)、ナトリウム塩およびマグネシウム塩ならびにイオン性液体が含まれる。適した塩およびイオン性液体の例は、当技術分野において既知である。
【0039】
(複数種の)ポリマーおよび/またはコポリマーは、様々な構造(例えば、二次構造)を有することができる。様々な例において、(複数種の)ポリマーおよび/または(複数種の)コポリマーは、非晶性、結晶性またはそれらの組合せである。(複数種の)ポリマーおよび/またはコポリマーが低い結晶化度を有することが望ましい場合がある。
【0040】
イオン伝導性ポリマー性材料の非限定的な例には、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、PEO含有コポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)-PEOコポリマーおよびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEOコポリマー)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-co-メチルアクリレート)、PVdF含有コポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-co-HFP))、PMMAコポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート))およびそれらの組合せから選ばれたイオン伝導性ポリマーならびに、任意選択で、伝導性塩(例えば、イオン性液体)を含む材料が含まれる。
【0041】
規則性多孔質ミクロ構造体のイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料またはマグネシウムイオン伝導性材料であってよい。規則性多孔質ミクロ構造体のイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料またはマグネシウムイオン伝導性材料であってよい。適したリチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料およびマグネシウムイオン伝導性材料の例は、当技術分野において既知である。イオン伝導性材料は、様々な構造および/または組成を有してよい。リチウムイオン伝導性材料はセラミック材料であってよい。リチウムイオン伝導性材料はリチウム-ガーネット材料であってよい。イオン伝導性材料の例が本明細書に記載されている。
【0042】
固体型電解質構造体は、固体型電解質構造体の規則性ミクロ構造体の少なくとも一部に配置されたカソード材料および/またはアノード材料を有してよい。カソード材料およびアノード材料の例が本明細書に記載されている。
【0043】
ある種のカソード材料を含む特定のミクロ構造体を使用することが望ましい場合がある。ミクロ構造体とカソード材料とのある種の組合せは、プロセスの利点および/または改善されたデバイス性能をもたらすことができる。例えば、ミクロ構造体はカソード側多孔質ミクロ構造体であり、このミクロ構造体は複数の柱状構造を備え、カソード材料はリチウム含有材料である。別の例において、ミクロ構造体は格子構造または多層格子構造を備え、カソード材料は硫黄である。
【0044】
固体型電解質は、基板の一部に配置された不規則な多孔質ミクロ構造体を含んでよい。適した不規則な多孔質ミクロ構造体の非限定的な例が、2014年3月21日に出願された国際出願番号PCT/US14/31492、2016年11月30日に出願された米国特許出願第15/364,528号に記載されており、多孔質層に関するこれらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
ある態様において、本開示は、規則性多孔質固体型電解質構造体を3D印刷するための組成物を提供する。この組成物は、本開示の固体型電解質を製造するために(例えば、本開示の方法において)使用されてよい。
【0046】
本開示は、固体電解質組成物(本明細書においてインクと呼ばれることもある)を提供し、これは、ミクロンスケールの特徴を印刷するために使用することができ、基板の表面と共形であり、例えば、5~10μmの焼結された固体電解質膜を作り出すものから、自己支持性であり、例えば、積層配列構造体または「ログ-キャビン」型構造体などの構造体をもたらすものにわたる構造体を作り出すように調整することができる。これらのインクは、
特定の目的、例えば、所望のレオロジー特性および/または構造特性のためにインクの組成を変更することにより操作することができる幅広いレオロジー特性を有することができる。一例として、固体電解質材料はLLZガーネットである。
【0047】
3D印刷可能な組成物は、イオン伝導性材料(例えば、イオン伝導性ポリマー性材料、例えば、イオン伝導性ポリマーなど、イオン伝導性無機材料、例えば、イオン伝導性無機粉末など、またはイオン伝導性ハイブリッドポリマー/無機材料)、または加熱されたときイオン伝導性無機材料(例えば、イオン伝導性セラミック材料)を生成する前駆体材料(例えば、粉末)(例えば、金属酸化物、カーボネート、ナイトレートおよび同種のものなど)の組合せ;および分散剤、バインダー、可塑剤または溶媒のうちの少なくとも1つ(例えば、1種もしくは複数種の分散剤、1種もしくは複数種のバインダー、1種もしくは複数種の可塑剤、またはさらに1種の溶媒、あるいはそれらのうちの1つもしくは複数の任意の組合せまたはそれらの任意の組合せ)を含む。様々な例において、イオン伝導性材料または前駆体材料ならびに、存在する場合、(複数種の)分散剤、(複数種の)バインダー、(複数種の)可塑剤および(複数種の)溶媒の組合せの重量%は100%に等しい。
【0048】
イオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性材料、ナトリウムイオン伝導性材料またはマグネシウムイオン伝導性材料であってよい。イオン伝導性材料は、無機イオン伝導性材料、ポリマー性イオン伝導性材料またはそれらの組合せであってよい。
【0049】
様々なイオン伝導性ポリマー性材料を使用することができる。イオン伝導性ポリマー性材料は、1種もしくは複数種のイオン伝導性ポリマー、1種もしくは複数種のイオン伝導性コポリマーまたはそれらの組合せを含んでよい。(複数種の)イオン伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)イオン伝導性コポリマーの分子量は特に限定されない。例えば、デバイス(例えば、固体型イオン伝導性バッテリー)の性能(例えば、イオン伝導度)要件に応じて、(複数種の)イオン伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)イオン伝導性コポリマーは、幅広い分子量を有することができる。(複数種の)イオン伝導性ポリマーおよび/または(複数種の)イオン伝導性コポリマーの非限定的な例には、ポリ(エチレン)(PE)類、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)類、ポリ(プロピレン)(PP)類、ポリ(プロピレンオキシド)類、PEO含有コポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)-PEOコポリマーおよびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEOコポリマー)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-co-メチルアクリレート)、PVdF含有コポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-co-HFP))、PMMAコポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート))およびそれらの組合せが含まれる。ポリマー性材料は、伝導性塩(例えば、イオン性液体)を含んでよい。
【0050】
イオン伝導性材料は無機材料であってよい。例えば、イオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性無機材料、ナトリウムイオン伝導性無機材料またはマグネシウムイオン伝導性無機材料である。イオン伝導性無機材料は、粒子の形態であってよい。この無機材料は、本明細書に記載の様々な量およびサイズで存在してよい。
【0051】
組成物は、1種もしくは複数種の分散剤、1種もしくは複数種のバインダー、1種もしくは複数種の可塑剤、1種もしくは複数種の溶媒またはそれらの組合せを含むことができる。個々の分散剤、バインダー、可塑剤または溶媒は、分散剤、バインダー、可塑剤、溶媒またはそれらの組合せと見なすこともできる。分散剤、バインダー、可塑剤および溶媒の様々な例が本明細書に記載されている。(複数種の)分散剤、(複数種の)バインダー、(複数種の)可塑剤または(複数種の)溶媒は、本明細書に記載の様々な量で存在してよい。組成物は、分散剤、バインダー、可塑剤、溶媒またはそれらの組合せとして働く1種または複数種の成分を有してよい。
【0052】
組成物が、その組成物を3D印刷可能にする1つまたは複数の特性を有することが望ましい。例えば、組成物は、100~1,000,000cP(例えば、500~50,000cP)(その間のすべての整数のcP値および範囲を含む)の粘度を有し、および/または降伏応力は0Paより大きい、もしくは0Paに等しい。
【0053】
ある態様において、本開示は、規則性多孔質固体型電解質構造体を3D印刷する方法を提供する。この方法では、本開示の1種または複数種の組成物が使用されてよく、および/またはこの方法が、本開示の規則性多孔質固体型電解質構造体を製造するために使用されてよい。
【0054】
この方法では、緻密層上に配置された規則性固体型電解質前駆体材料の1つまたは複数の層を形成するために、同じかまたは異なる組成物を使用することができる。この方法は、同じ特徴、または少なくとも1つの異なる形状を有する前駆体材料特徴の組合せの(例えば、単層または複数の層への)堆積を含んでよい。この前駆体材料は、(例えば、個々の特徴および/もしくは層が堆積される間に、または前駆体材料の特徴および/もしくは層のすべてが堆積された後に)乾燥させてよい。堆積が完了した後、規則性固体型電解質前駆体材料は、固体型電解質構造体を提供するために加熱される(例えば、焼結される)。この方法は、3Dプリンタ上で行われてよい。規則性多孔質固体型電解質の製造方法の非限定的な例が本明細書に記載されている。
【0055】
ある態様において、本開示は電気化学デバイスを提供する。このデバイスは、本開示の1つまたは複数の固体型電解質構造体を含む。
【0056】
様々な電気化学デバイスが、本開示の1つまたは複数の固体型電解質構造体を含むことができる。デバイスの非限定的な例には、バッテリー、電解セル、キャパシタ、燃料電池または燃料電池/バッテリーデバイスが含まれる。このデバイスは、リチウムイオン伝導性デバイス、ナトリウムイオン伝導性デバイスまたはマグネシウムイオン伝導性デバイスであってよい。
【0057】
バッテリーは固体型バッテリーであってよく、これは再充電可能なバッテリーであってよい。固体型バッテリー(例えば、リチウムイオン固体型電解質バッテリー、ナトリウムイオン固体型電解質バッテリーまたはマグネシウムイオン固体型電解質バッテリー)は、様々な追加の構造部品(バイポーラ板、外装、およびワイヤを接続するための電気接点/リードなどを備えてよい。ある実施形態において、バッテリーはバイポーラ板をさらに備える。ある実施形態において、バッテリーは、バイポーラ板および外装、ならびにワイヤを接続するための電気接点/リードをさらに備える。ある実施形態において、リピートバッテリーセルユニットがバイポーラ板により分離されている。
【0058】
カソード材料(存在する場合)、アノード材料(存在する場合)、SSE材料、カソード側(第1の)集電体(存在する場合)およびアノード側(第2の)集電体(存在する場合)がセルを形成してよい。この場合、固体型イオン伝導性バッテリーは、1つまたは複数のバイポーラ板により分離された複数のセルを備える。バッテリー内のセルの数はバッテリーの性能要件(例えば、電圧出力)によって決まり、製作上の制約によってのみ制限される。例えば、固体型イオン伝導性バッテリーは、1~500個のセル(その間のすべての整数個のセルおよび範囲を含む)を備える。
【0059】
一例として、固体型イオン伝導性バッテリーは、a)カソード材料;b)本開示の金属合金層を備えるアノード;c)固体型電解質材料;およびd)任意選択で、カソード材料またはリチウム金属アノードの少なくとも一部に配置された集電体を含む。
【0060】
固体型バッテリーは、様々なカソード材料を含むことができる。カソード材料の例には、イオン伝導性(例えば、リチウム、ナトリウムまたはマグネシウムイオン伝導性)バッテリーにおいて使用される既知のカソード材料が含まれるが、これに限定されない。カソード材料は、金属合金層に対して特異的であってよい。
【0061】
カソード材料の例には、伝導性炭素材料、硫黄(S)、酸素(O)、有機硫化物または多硫化物(例えば、カルビン多硫化物および共重合硫黄)および同種のものが含まれるが、これらに限定されない。伝導性炭素材料は、任意選択で、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含む。
【0062】
カソード材料は空気電極であり得る。空気電極に適した材料の例には、空気カソードを備える固体型リチウムイオンバッテリーにおいて使用されるもの、例えば、メッシュ(例えば、PVDFバインダーなどのポリマーバインダー)内に束縛された大表面積炭素粒子(例えば、伝導性カーボンブラックであるSuper P)および触媒粒子(例えば、α-MnOナノロッド)が含まれる。
【0063】
リチウムイオン伝導性バッテリーの場合、カソード材料はリチウム含有材料であり得る。例えば、リチウムイオン伝導性カソード材料は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC、LiNiMnCo(式中、x+y+z=1))、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、リチウムマンガン酸化物(LMO)、例えばLiMn、LiNi0.5Mn1.5、リン酸鉄リチウム(LFP)、例えばLiFePO、LiMnPOおよびLiCoPO、ならびにLiMMn(式中、Mは、Fe、Coおよびそれらの組合せから選択される)である。イオン伝導性カソード材料は高エネルギーイオン伝導性カソード材料、例えばLiMMn(式中、Mは、Fe、Coおよびそれらの組合せから選択される)であり得る。一例として、リチウムイオン伝導性カソード材料はLiCoOである。
【0064】
ナトリウムイオン伝導性バッテリーの場合、カソード材料はナトリウム含有材料であり得る。ナトリウム含有材料の例には、NaMO材料(x=0.17~0.67、M=Mn、Ni、Coまたはそれらの組合せ)(例えば、NaMnO、Na[NiMn1-y]O、y=0~1)、NaCoO、Na[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O)、NaMPO(M=Fe、Mn)材料、NaFe(SO材料、Na(PO材料および同種のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
マグネシウムイオン伝導性バッテリーの場合、カソード材料は、マグネシウム含有材料、FeS材料、MoS材料、TiS材料および同種のものであり得る。マグネシウム含有材料の例には、MgMSiO(M=Fe、Mn、Co)材料およびMgFePOF材料および同種のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
電子伝導性材料をイオン伝導性カソード材料の一部として使用することが望ましい場合がある。例えば、イオン伝導性カソード材料は、導電性炭素材料(例えば、グラフェンまたはカーボンブラック)も含み、イオン伝導性カソード材料は、任意選択で、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含む。電子伝導性材料は、イオン伝導性カソード材料から分離していてよい。例えば、電子伝導性材料(例えば、グラフェン)は、SSE電解質構造体の多孔質領域の表面(例えば、細孔表面)の少なくとも一部に配置されており、イオン伝導性カソード材料は、導電性材料(例えば、グラフェン)の少なくとも一部に配置されている。
【0067】
様々な集電体を使用することができる。集電体の例には、伝導性金属または伝導性金属合金が含まれるが、これらに限定されない。適した集電体は、当技術分野において既知である。
【0068】
カソード材料、アノード、SSE材料および集電体は、セルを形成することができる。一例として、固体型バッテリーは複数のセルを備え、セルの各隣接対はバイポーラ板により分離されている。
【0069】
様々な製造品が、本開示の1つまたは複数のデバイスを備えることができる。製造品の非限定的な例には、消費者製品、例えば、デジタルカメラ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話(例えば、スマートフォン)、腕時計、電動工具、温度計、リモートカーロック、レーザポインタ、MP3プレーヤ、補聴器、電卓、玩具(例えば、リモコン玩具)、電源(例えば、バックアップシステム、例えば、非常用電源バックアップ、無停電電源、ならびに風力および太陽光発電システムなどの代替エネルギー源用電力貯蔵)、監視または警報システム、医療デバイス/機器、移動装置(例えば、電動車椅子および階段昇降機)、ポータブルパワーパック、輸送手段(例えば、電動の乗り物、例えば、車、バスおよびモーターサイクル)、充電ステーションおよび同種のものなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書に開示の様々な実施形態および例に記載の方法のステップは、本開示の方法を行うのに十分である。したがって、一例として、ある方法は、本明細書に開示の方法のステップの組合せから実質的になる。別の例において、ある方法は、そのようなステップからなる。
【0071】
以下のステートメントは、本開示の固体型電解質構造体、電気化学デバイス、固体型電解質構造体の製造方法、および3D印刷可能な組成物の非限定的な例を提供する。
ステートメント1.本明細書に記載の第1のイオン伝導性材料からなり、第1の表面を有する本明細書に記載の基板;および基板の第1の表面上に配置された本明細書に記載の第1の規則性多孔質ミクロ構造体であって、少なくとも1つの特徴により画定された細孔を有し、少なくとも1つの特徴が、300μm未満(例えば、1μm~300μm)の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有し、特徴が、本明細書に記載の第2のイオン伝導性材料からなる、第1の規則性多孔質ミクロ構造体を含む、固体型電解質構造体。特徴は、緻密層の外面の10~90%、15~50%または20~40%の上に配置されてよい。複数の特徴が多層構造体を形成してよい。
ステートメント2.第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、2000μm以下(例えば、1000μm以下)(例えば、1~2000μmまたは1~1000μm)の高さを有する、ステートメント1に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント3.細孔がそれぞれ、1μm~2000μm(例えば、1~1000または1μm~200μm))(両端を含む)およびその間の整数値を含むすべての値の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有する、ステートメント1または2に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント4.少なくとも1つの特徴の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)が1μm~200μm(両端を含む)およびその間の整数値を含むすべての値である、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント5.基板が、100μm以下(例えば、5~30μm)の厚さを有する、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント6.第2のイオン伝導性材料が、第1のイオン伝導性材料と同じかまたは異なる、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント7.第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、1つの柱状構造、複数の柱状構造、1つの線構造、1つの格子構造、1つの多層格子構造またはそれらの組合せを備える、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント8.特徴が線であり、第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、基板の第1の表面上に配列された平行線の層である、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント9.複数の平行線が、近接した線から形成されたラスタパターンである、ステートメント8に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント10.第1の規則性多孔質ミクロ構造体が、平行線の第1の層上に配置された平行線の第2の層を備える、ステートメント8に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント11.平行線の第2の層が、第1の層の平行線に対して格子角度をなす、ステートメント10に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント12.格子角度が1~90(両端を含む)およびその間の整数値を含むすべての値である、ステートメント11に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント13.第1の規則性多孔質ミクロ構造体が複数の層(例えば、2~100層)を備え、各層が、平行線の隣接層上に配置された第2のイオン伝導性材料の平行線を備える、ステートメント8に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント14.特徴が、基板の第1の表面に対して概して垂直な方向に延びる柱であり、ミクロ構造体が、基板の第1の表面上に2次元配列で配列された複数の特徴である、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント15.各柱が、1μm~1000μm(両端を含む)およびその間の整数値を含むすべての値の高さを有する、ステートメント14に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント16.各柱が、50μm~200μm(両端を含む)およびその間の整数値を含むすべての値の高さを有する、ステートメント15に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント17.基板が、第1の表面とは反対側の第2の表面を有し、基板の第2の表面上に配置された本明細書に記載の第2の規則性多孔質ミクロ構造体をさらに含み、第2の規則性多孔質ミクロ構造体が、少なくとも1つの第2の特徴により画定された細孔を有し、少なくとも1つの第2の特徴が、200μm未満の直径を有し、第2の特徴が、第3のイオン伝導性材料を含む、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント18.本明細書に記載の第3のイオン伝導性材料が、第1のイオン伝導性材料および/もしくは第2のイオン伝導性材料と同じである、または第1のイオン伝導性材料および/もしくは第2のイオン伝導性材料と異なる、ステートメント17に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント19.第2の規則性多孔質ミクロ構造体が、複数の柱状構造、1つの線構造、1つの格子構造または1つの多層格子構造を備える、ステートメント17に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント20.固体型電解質構造体(例えば、第1の規則性多孔質ミクロ構造体、第2の規則性多孔質ミクロ構造体、基板またはそれらの組合せ)が、イオン伝導性ポリマー材料、イオン伝導性無機材料(例えば、セラミック材料)またはそれらの組合せを含む(例えば、イオン伝導性ポリマー材料、イオン伝導性無機材料(例えば、セラミック材料)またはそれらの組合せである)、ステートメント17に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント21.基板が、第1の表面とは反対側の第2の表面を有する、基板の第2の表面上に配置されたイオン伝導性材料を含む本明細書に記載の不規則性多孔質ミクロ構造体をさらに含む、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント22.イオン伝導性材料がイオン伝導性ポリマー性材料である、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント23.イオン伝導性ポリマー性材料が、本明細書に記載のイオン伝導性ポリマー(例えば、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、PEO含有コポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)-PEOコポリマーおよびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEOコポリマー)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-co-メチルアクリレート)、PVdF含有コポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-co-HFP))、PMMAコポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート))およびそれらの組合せから選ばれたイオン伝導性ポリマー)ならびに、任意選択で、伝導性塩(例えば、リチウム塩、例えば、LiTFSEなど、またはイオン性液体)を含む、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント24.イオン伝導性材料が、本明細書に記載のリチウムイオン伝導性材料、本明細書に記載のナトリウムイオン伝導性材料または本明細書に記載のマグネシウムイオン伝導性材料である、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント25.リチウムイオン伝導性材料が本明細書のリチウム-ガーネット材料である、ステートメント24に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント26.リチウム-ガーネット材料がLi7-xLa3-y Zr2-z 12(式中、0より大きく、かつ2未満のx、Mは、Ba、Ca、Yおよびそれらの組合せから選ばれ、Mは、Nb、Taおよびそれらの組合せから選ばれる)である、ステートメント25に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント27.リチウム-ガーネット材料が、カチオンドープLiLa 12(式中、Mは、Nb、Zr、Taまたはそれらの組合せである)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12またはカチオンドープLiBaY 12(式中、Mは、Nb、Zr、Taまたはそれらの組合せである)であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛またはそれらの組合せである、ステートメント25に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント28.リチウム-ガーネット材料が、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、Li6.75BaLaTa1.75Zn0.2512またはそれらの組合せである、ステートメント25に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント29.ナトリウム伝導性材料が、NaZrSiPO12(NASICON)またはβ-アルミナである、ステートメント24に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント30.マグネシウム伝導性材料がMgZr24である、ステートメント24に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント31.イオン伝導性材料が、結晶ドメイン、多結晶ドメイン、非晶ドメインまたはそれらの組合せを含む(例えば、多結晶性もしくは非晶性またはそれらの組合せである)、ステートメント25に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント32.第1の規則性多孔質ミクロ構造体の少なくとも一部に配置されたカソード材料をさらに含む、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント33.イオン伝導性カソード材料が伝導性炭素材料を含み、イオン伝導性カソード材料が、任意選択で、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含む、ステートメント32に記載の電気化学デバイス。
ステートメント34.カソード材料が、硫黄、空気または酸素である、ステートメント32に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント35.カソード材料が、リチウム含有カソード材料、ナトリウム含有カソード材料またはマグネシウム含有カソード材料である、ステートメント32に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント36.リチウム含有カソード材料が、LiCoO、LiFePO、LiMMn(式中、Mは、Fe、Coおよびそれらの組合せから選択される)、LiMn、LiNiCoAlO、LiNiMnCo(式中、x+y+z=1(例えば、0.5:0.3:0.2))およびそれらの組合せから選ばれる、ステートメント35に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント37.ナトリウム含有材料が、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2、Na(PO、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2@グラフェン複合材、ならびにそれらの組合せから選ばれる、ステートメント35に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント38.マグネシウム含有材料が、ドープマンガン酸化物およびその組合せから選ばれる、ステートメント36に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント39.第1の規則性多孔質ミクロ構造体の少なくとも一部に配置された本明細書に記載のアノード材料をさらに含む、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント40.アノードが本明細書に記載の金属アノード(例えば、リチウム金属、ナトリウム金属またはマグネシウム金属)である、ステートメント39に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント41.アノードが、本明細書に記載のリチウム含有アノード材料、本明細書に記載のナトリウム含有材料または本明細書のマグネシウム含有材料である、ステートメント39に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント42.リチウム含有アノード材料が、チタン酸リチウム(LiTi12)およびその組合せから選ばれる、ステートメント41に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント43.ナトリウム含有アノード材料が、Na、Na0.66Li0.22Ti0.78およびそれらの組合せから選ばれる、ステートメント41に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント44.マグネシウム含有アノード材料が、MgSiおよびその組合せから選ばれる、ステートメント43に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント45.アノードが、炭素、ケイ素、スズまたはそれらの組合せ(例えば、Si-C、Sn-C、SiSn、SiOおよび同種のもの)を含む、ステートメント39に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント46.ミクロ構造体がカソード側多孔質ミクロ構造体であり、ミクロ構造体が複数の柱状構造を備え、カソード材料がリチウム含有材料である、またはミクロ構造体が格子構造もしくは多層格子構造を備え、カソード材料が硫黄である、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント47.固体型電解質構造体の基板(例えば、緻密層)が、1μm~100μm(例えば、5μm~30μmまたは10μm~20μm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/またはその上に配置されたカソード材料を有する固体型電解質構造体の規則性多孔質ミクロ構造体が、1μm~1mm(例えば、20μm~200μm)の少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)を有し、および/またはその上に配置されたアノード材料を有する固体型電解質構造体の規則性多孔質ミクロ構造体が、少なくとも1つの寸法(例えば、厚さ)1μm~1mm(例えば、20μm~200μm)を有する、先行するステートメントのいずれか1項に記載の固体型電解質構造体。
ステートメント48.先行するステートメントのいずれか1項に記載の1つまたは複数の固体型電解質構造体を含む電気化学デバイス。
ステートメント49.イオン伝導性バッテリー、電解セル、キャパシタ、燃料電池または燃料電池/バッテリーである、ステートメント48に記載の電気化学デバイス。
ステートメント50.カソード材料またはアノード材料(例えば、本明細書に記載のカソード材料またはアノード材料);固体型電解質構造体(例えば、例えば、ステートメント1に記載の固体型電解質構造体などの固体型電解質構造体)であって、カソード材料またはアノード材料は、固体型電解質構造体の規則性多孔質領域の少なくとも一部に配置されており、緻密領域は、カソード材料およびアノード材料を含まない、固体型電解質構造体、ならびにカソード材料またはアノード材料の少なくとも一部に配置された集電体(例えば、本明細書に記載の集電体)を含む固体型イオン伝導性バッテリーである、ステートメント48に記載の電気化学デバイス。
ステートメント51.固体型電解質構造体が、カソード側集電体;またはアノード側集電体を含む、ステートメント50に記載の電気化学デバイス。
ステートメント52.集電体またはカソード側集電体もしくはアノード側集電体が、伝導性金属、伝導性金属合金であるか、または炭素を含む(もしくは、である)、ステートメント50または51に記載の電気化学デバイス。例えば、集電体は、独立して伝導性金属、伝導性金属合金であるか、または炭素を含む(もしくは、である)。
ステートメント53.カソード材料(存在する場合)、アノード材料(存在する場合)、固体型電解質構造体および集電体がセルを形成し、固体型イオン伝導性バッテリーが複数のセルを備え、セルの各隣接対がバイポーラ板により分離されている、ステートメント50~52のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
ステートメント54.イオン伝導性固体型バッテリーの固体型電解質構造体が、バッテリーの充電および/または放電の間、固体型電解質構造体の規則性多孔質領域内に、かつそこからイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはマグネシウムイオン)が拡散するように構成されている、ステートメント50~53のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
ステートメント55.i)本明細書に記載のイオン伝導性材料(例えば、本明細書に記載のイオン伝導性ポリマー、本明細書に記載のイオン伝導性無機材料、例えば、イオン伝導性無機材料(例えば、粉末)など、または本明細書に記載のイオン伝導性ハイブリッドポリマー/無機材料(例えば、本明細書に記載のイオン伝導性ポリマー性材料および本明細書に記載のイオン伝導性無機材料を含む))、またはii)加熱されたとき本明細書に記載のイオン伝導性無機材料(例えば、イオン伝導性セラミック材料)を生成する本明細書に記載の前駆体材料(例えば、粉末)(例えば、金属酸化物、カーボネート、ナイトレートおよび同種のものなど)の組合せ;および本明細書に記載の分散剤、本明細書に記載のバインダー、本明細書に記載の可塑剤または本明細書に記載の溶媒のうちの少なくとも1つを含む、3D印刷可能な組成物。例えば、イオン伝導性材料または前駆体材料ならびに、存在する場合、(複数種の)分散剤、(複数種の)バインダー;(複数種の)可塑剤および(複数種の)溶媒の組合せの重量%は100%に等しい。
ステートメント56.イオン伝導性材料がポリマー性材料(例えば、イオン伝導性ポリマー、イオン伝導性コポリマーまたはそれらの組合せを含む)である、ステートメント55に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント57.ポリマー性材料が、本明細書に記載のイオン伝導性ポリマー(例えば、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、PEO含有コポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)-PEOコポリマーおよびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEOコポリマー)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-co-メチルアクリレート)、PVdF含有コポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-co-HFP))、PMMAコポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート))から選ばれたイオン伝導性ポリマー)およびそれらの組合せを含む、ステートメント56に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント58.ポリマー性材料が、本明細書に記載の伝導性塩(例えば、イオン性液体)を含む、ステートメント56または57に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント59.イオン伝導性材料、または前駆体材料(例えば、金属酸化物、カーボネート、ナイトレートおよびまたは同種のもの)の組合せが、(組成物の全重量に基づいて)10~90wt.%(例えば、50~80wt.%または60~66wt.%)で存在する、ステートメント55~58のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント60.イオン伝導性材料が、本明細書に記載のリチウムイオン伝導性材料、本明細書に記載のナトリウムイオン伝導性材料または本明細書に記載のマグネシウムイオン伝導性材料である、ステートメント55~59のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント61.リチウムイオン伝導性材料が、本明細書に記載のリチウム-ガーネットセラミック材料である、ステートメント60に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント62.リチウム-ガーネットセラミック材料がLi7-xLa3-yyZr2-z 12(式中、0より大きく、かつ2未満のx、Mは、Ba、Ca、Yおよびそれらの組合せから選ばれ、Mは、Nb、Taおよびそれらの組合せから選ばれる)である、ステートメント61に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント63.リチウム-ガーネット材料が、カチオンドープLiLa 12(式中、Mは、Nb、Zr、Taまたはそれらの組合せである)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12またはカチオンドープLiBaY 12(式中、Mは、Nb、Zr、Taまたはそれらの組合せである)であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛またはそれらの組合せである、ステートメント61に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント64.リチウム-ガーネットセラミック材料が、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、Li6.75BaLaTa1.75Zn0.2512またはそれらの組合せである、ステートメント61に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント65.ナトリウム伝導性材料が、NaZrSiPO12(NASICON)またはβ-アルミナである、ステートメント60に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント66.マグネシウム伝導性材料がMgZr24である、ステートメント60に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント67.イオン伝導性材料が、結晶ドメイン、多結晶ドメイン、非晶ドメインもしくはそれらの組合せを含む(例えば、多結晶性または非晶性である)、または単結晶性である、ステートメント55~66のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント68.イオン伝導性材料がイオン伝導性材料含有粒子(例えば、リチウム含有、ナトリウム含有またはマグネシウム含有材料粒子)であり、イオン伝導性材料含有粒子(例えば、リチウム含有、ナトリウム含有またはマグネシウム含有材料粒子)が、10~10,000nm(例えば、50~500nm)の平均サイズ(例えば、最長寸法)を有する、または本明細書に記載のセラミック粉末粒子が、10~10,000nm(例えば、50~500nm)の平均サイズ(例えば、最長寸法)を有する、ステートメント55~67のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント69.分散剤が、(組成物の全重量に基づいて)0.01~10wt.%(例えば、0.5~1wt%)で存在する、ステートメント55~68のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント70.分散剤が、ブローンメンヘーデン魚油、トウモロコシ油、サフラワー油、亜麻仁油、グリセロールトリオレエート、ポリ(ビニルブチラール)、脂肪酸エステルおよびそれらの組合せから選ばれる、ステートメント55~69のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント71.バインダーが、(組成物の全重量に基づいて)20~50wt.%(例えば、30~38wt%)で存在する、ステートメント55~70のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント72.バインダーが、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルおよび同種のもの)、アクリルポリマー(例えば、ポリアクリレートエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレートおよび同種のもの)、セルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび同種のもの);ポリエチレン、ポリプロピレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンおよびESL 441(商標登録されたテキサノールベースの組成物)ならびにそれらの組合せ(例えば、α-テルピネオール溶媒とのバインダーの使用としてのエチルセルロース)から選ばれる、ステートメント55~71のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント73.可塑剤が、(組成物の全重量に基づいて)0~20wt.%で存在する、ステートメント55~72のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント74.可塑剤が、フタレート(例えば、アルキルフタレート、例えば、n-ブチルフタレート、ジメチルフタレートおよび同種のものなど、ならびにアリールフタリエート、例えば、ベンジルブチルフタレート(BBP)および同種のものなど)、ポリオール(例えば、グリセロール、グリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコールおよび同種のものなど)、トリアルキルホスフェート(例えば、トリ-n-ブチルホスフェートおよび同種のもの)および同種のもの、ならびにそれらの組合せから選ばれる、ステートメント55~73のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント75.溶媒が、(組成物の全重量に基づいて)0~10wt.%(例えば、0.01~3wt.%)で存在する、ステートメント55~74のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント76.溶媒が、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール(例えば、イソプロパノールおよびn-プロパノールなど)、ブタノール(例えば、n-ブタノールなど)、ペンタノール、ヘキサノールおよび同種のもの)、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、α-テルピネオール、水およびそれらの組合せから選ばれる、ステートメント55~75のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント77.100~1,000,000cP(例えば、500~50,000cP)の粘度を有し、および/または降伏応力が0Paより大きい、もしくは0Paに等しい、ステートメント55~76のいずれか1項に記載の3D印刷可能な組成物。
ステートメント78.規則性多孔質固体型電解質の製造方法であって、緻密層上に配置された(例えば、本明細書に記載の1つの特徴または複数の特徴を備える)前駆体材料(すなわち、規則性固体型電解質前駆体材料)の第1の層が形成されるように、緻密層上に配置された(例えば、本明細書に記載の1つの特徴または複数の特徴を備える)ステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物の第1の層を形成するために、あらかじめ選択された量のステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物を堆積させること;(例えば、本明細書に記載の1つの特徴または複数の特徴を備える)前駆体材料(すなわち、規則性固体型電解質前駆体材料)の第2の層において形成され、(例えば、本明細書に記載の1つの特徴または複数の特徴を備える)前駆体材料(すなわち、規則性固体型電解質前駆体材料)の第2の層が、前駆体材料(すなわち、規則性固体型電解質前駆体材料)の第1の層の少なくとも一部に配置されるように、ステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物の第2の層を形成するために、あらかじめ選択された量のステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物を任意選択で堆積させること;任意選択で、所定の時間待つこと、および/または層を加熱すること;任意選択で、b)の堆積を繰り返すこと、および、任意選択で、c)を所望の回数繰り返すこと;ならびにe)前駆体材料(すなわち、規則性固体型電解質前駆体材料/構造体)の層を乾燥すること(例えば、(複数種の)液体、例えば、(複数種の)溶媒などを除去すること);ならびにe)規則性多孔質固体型電解質を形成するために、母セラミック粉末床内の前駆体材料(すなわち、規則性固体型電解質前駆体材料/構造体)の層)規則性固体型電解質前駆体材料構造体を加熱すること(例えば、例えば、ある雰囲気中、例えば、酸素雰囲気中などで焼結すること)を含む、製造方法。
ステートメント79.曝露および形成が3Dプリンタを使用して行われる(例えば、分配が、少なくとも1つの印刷ヘッドからである)、ステートメント78に記載の方法。
ステートメント80.規則性固体型電解質材料の層のすべてが、同じ公称組成を有する(例えば、同じ3D印刷可能な組成物から形成されている)、ステートメント78または79に記載の方法。
ステートメント81.規則性固体型電解質材料の層のうちの2つ以上が、異なる公称組成を有する(例えば、2種以上の3D印刷可能な組成物から形成されている)、ステートメント78~80のいずれか1項に記載の方法。
ステートメント82.ステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物の第1の層の堆積が、異なる公称組成を有する領域を有する第1の層を形成するために、ステートメント55~77のいずれか1項に記載の第1の組成物、およびステートメント55~77のいずれか1項に記載の第1の組成物を堆積させることを含む、ステートメント78~81のいずれか1項に記載の方法。
ステートメント83.ステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物の第1の層の堆積が、第1の構造体を形成し、ステートメント55~77のいずれか1項に記載の組成物の第2の層の堆積が、第2の構造体を形成し、第1の構造体および第2の構造体が、異なる形状を有する、ステートメント78~81のいずれか1項に記載の方法。
【0072】
以下の実施例は、本開示を例示するために提示される。それらは、いかなる点においても限定するものではない。
【実施例1】
【0073】
この実施例では、固体型電解質構造体、固体型電解質構造体を含むデバイスおよびその特性評価、固体型電解質構造体の製造方法、ならびに3D印刷可能な組成物を説明する。
【0074】
この実施例では、LLZ固体電解質からなる薄い非平面状の複雑な構造を明らかにする、印刷および焼結された構造体のサンプリングを説明する。ガーネットインクの有効性を実証するために、対称なLi|3D印刷されたLLZ|Liセルを低ASRでサイクルさせる。他の設計も本開示に記載のインクを用いて得ることができる。本明細書に記載の材料を用いた3D印刷を使用して、固体型バッテリーに、より低い全セルASRならびにより高いエネルギーおよび電力密度を与えることができる。
【0075】
図1は、3D印刷プロセスを使用したセル製作の概要を示す。
この方法は、系統的な研究のための他の方法では実験室規模での生成が困難であり得る多種多様な規則性高表面積LLZ構造体を印刷することができる。これらの構造体の例には、線、格子、柱、積層配列または組合せが含まれる。まず、印刷された特徴の幅は、印刷ヘッドにおいて使用されているノズルのサイズに依存し、これは、12.5~125μmの範囲である。次いで、特徴の高さは、追加の層を印刷することにより容易に高くなる。しかし、印刷された特徴の厳密な形状およびそれらがどのように互いにかつ基板に接続するかは、インク自体の特性に強く依存する。具体的には、粒子サイズ、バインダー系、溶媒ブレンドおよび割合は、インクレオロジーおよびその結果得られる構造型にとって極めて重要である。ミクロンスケールの特徴を印刷するために、固体電解質粒子は、好ましくは、所望の特徴幅よりも1桁を超えて小さい。加えて、サブミクロン粒子は、より容易に分散し、懸濁して保たれ、これは、印刷および保管を通じてインク特性を一定に保つのに役立つ。LLZ電解質の粒子サイズは、単純なボールミル粉砕またはゾルゲル合成経路により減少させることができる。図2aは、インクに使用されたLLZの典型的な粒子サイズ分布(平均粒子サイズ約300nm)およびSEM像を示す。
【0076】
インクを構成するために2つのバインダー系を選んだ。そのそれぞれは、分配されたインクのインクレオロジーおよび特性に異なる影響を与える。ベンジルブチルフタレート(BBP)可塑剤を含むポリビニルブチラール(PVB)バインダーが第1のバインダー系であり、商標登録されたテキサノールベースの組成物であるESL 441が第2のバインダー系である。図2bおよび図2dに示す通り、2つのバインダー系によるインクのレオロジーは劇的に異なる。PVB-BBPバインダーベースのインクは、ニュートン挙動を示し、粘度1090cPを有するが、粘度は、インク中の溶媒の量を変更することにより容易に変更することができる(図2e)。ESLバインダーベースのインクは、降伏応力280Paおよび粘度1500cPと共に、根本的に異なるビンガム塑性挙動を示す。ビンガム塑性挙動は、ESLバインダー系自体の結果であり、それによってインクは高剪断応力下でない限りその形状を保持する。バインダー系の異なる特性を利用して、異なるタイプの印刷された構造体を生成することができる。PVB-BBPバインダー系は、そのレオロジー挙動のために、その上が印刷される表面を部分的に濡らし、かつその表面と共形となるインクを生成する(図3d)。PVB-BBPインク(以下、「共形インク」と呼ぶ)は、その共形性およびパターン内の他の線との継ぎ目のない接合のために、固体電解質の薄い均質な膜の印刷に適切である。共形インクを使用して印刷された5×5cmの均質な膜の実証を図2fに示した。この膜の単層を焼結することにより、高純度の立方相LLZガーネット(図2c)による5~10μmの自立型高密度膜が実現した(図2g)。大部分の領域において、この膜は全体にわたって単一結晶粒のみである。これは、費用がかかる、または生産量が少ない薄膜堆積法(例えば、PLD、ALDなど)を用いずに10μm未満のLLZ電解質の緻密層を製作する能力を初めて実証するものである。PVB-BBPバインダー系を同じく使用した、さらに規模を拡大できる類似のテープキャスティング法では最近、14μmの緻密層が実現した。不規則な多孔質-緻密二層、例えばHitzらによって最近実証されたものも、類似のインクを用いた3D印刷により製造することができる(図5)。したがって、例外的に薄い高密度を生成できる。
【0077】
LLZ電解質を生成することが可能であり、これは、固体型バッテリーの高インピーダンスの問題を解決するのに役立ち得る。規則性構造体を作り出すために使用されるとき、共形インクは、低いアスペクト比を有する丸みのある線または柱を作り出す(図3d~図3f)。これは、インクの低粘度および濡れ性に起因する。共形インクの別の特性は、互いに交差する線を印刷したとき継ぎ目のない接合部を作り出すその能力であり(図3e)、これは、高強度構造部材を作り出したり、またはイオン伝導経路の数を増やしたりするのに有用であり得る。
【0078】
共形インクとは異なり、ESLバインダーインクのビンガム塑性挙動は、印刷直後にその形状を保つ構造的特徴を作り出す(図3g~図3i)。注目すべきことに、このインク(以下、「自己支持性」インクと呼ぶ)のその後の印刷された層は、それぞれ積層配列構造体および柱構造体を示す図3h~図3iに示す通り、印刷後および焼結プロセスを通じて垂れることなくそれ自身を支持することができる。共形インク(図3d~図3f)または自己支持性インク(図3g~図3i)のいずれかを用いて印刷された類似の設計を比較すると、自己支持性インクを用いて印刷されたものが、より高いアスペクト比、したがって、より大きい表面積を有することは明らかである。例えば、共形インク(図3d)および自己支持性インク(図3g)を用いて印刷された線パターンのアスペクト比は、それぞれ0.37および0.83である。積層配列構造体は、第2の印刷された層の下側により作り出された露出部のために、表面積がさらに大きい。
【0079】
2つの異なるタイプのLLZインクのみを使用して多種多様な構造体を印刷することができ、おそらく、セル特性および性能に対する電解質-電極界面構造特性(屈曲、表面積など)の影響の迅速な調査が可能になる。
【0080】
結果は、他の方法により生成されたLLZペレットと同じ特性を有することができるLLZ固体電解質を3D印刷する能力を実証するものである。固体電解質を3D印刷する能力は、特有の規則性構造体の製作を可能にするのに対し、ダイプレス法およびテープキャスティング法は、平面形状および不規則な孔に限定される。
2つのタイプの3D印刷可能なLLZインクが、異なる構造上の目的のために開発された。「共形」インクおよび「自己支持性」インクを使用して、均一な膜から柱、積層「ログ-キャビン」型構造体まで多種多様な異なる構造体を作り出し、探索することができる。これらのインク組成物はLLZに限定されず、他のセラミック材料を印刷するために使用することができることに留意されたい。これらのインクは、安全で高エネルギー密度の固体型バッテリーを実現するための固体電解質の研究を可能にし、その中の1つが、電気化学的特性および機械的特性(すなわち、電極/電解質界面接触、セルインピーダンス、機械的強度など)に対する、固体電解質を使用した3次元電解質構造の影響である。
【0081】
方法。LLZ合成。CaドープおよびNbドープLiLaZr12ガーネットを、先述の固相合成またはゾル-ゲル法により調製した。固相合成については、化学量論量のLa(GFS Chemicals、99.9%)、ZrO(Inframat Advanced Materials)、CaCO(Carolina、Laboratory Grade)、Nb(Alfa Aesar、99.9%)および10%過剰LiOH-HO(Alfa Aesar、98%)を、イソプロパノール中の直径5mmのY安定化ZrO(YSZ)粉砕媒体を用いて1日間ミル粉砕した。次いで、前駆体を乾燥し、900℃で焼成した。X線回折による相分析を図2cに示した。所望の粒子サイズを得るために、焼成した粉末を5mmのYSZ粉砕媒体を用いてイソプロパノール中でミル粉砕し、続いて2mmの媒体でミル粉砕して、粒子サイズを1μm未満にさらに減少させた。ゾル-ゲル法については、化学量論量のLa(NO(99.9%、Alfa Aesar)、ZrO(NO(99.9%、Alfa Aesar)、LiNO(99%、Alfa Aesar)、NbCl(99.99%、Alfa Aesar)およびCa(NO(99.9%、Sigma Aldrich)を脱イオン水に溶解し、5%wt過剰LiNOを加えて、高温プロセス中のリチウム揮発を補った。前駆体を800℃で10時間焼成し、200プルーフエタノール中で48時間ボールミル粉砕して、立方相ガーネット粉末(平均粒子サイズ300nm)を得た。各方法により生成された粉末は特性上類似していた。
【0082】
インク組成物。「共形インク」については、LLZ粉末(37%)をまず、n-ブタノール(99%、Alfa Aesar):α-テルピネオール(96%、Alfa Aesar)の7:3混合物中の分散剤としての少量のブローンメンヘーデン魚油(Z-3、Tape Casting Warehouse,Inc.)と振動ミルで24時間混合した。混合物が均質になったら、ポリビニルブチラールバインダー(PVB、B-98、Tape Casting Warehouse,Inc.)およびブチルベンジルフタレート可塑剤(BBP、S-160、Tape Casting Warehouse,Inc.)を重量比1.6:1で加えて、全固形分負荷を30%にした。印刷前にインクを振動ミル内で24時間混合した。
【0083】
ガーネット粉末20%、Electro Science Lab(ESL)441テキサノールベースのバインダー系10%および200プルーフエタノール70%から構成される希薄懸濁液をまず生成することにより「自己支持性インク」を生成し、2mmのイットリア安定化ジルコニア球状ミル粉砕媒体を使用して24時間ボールミル粉砕して、ガーネット粉末を分散させた。ボールミル粉砕後、懸濁液をThinkyミキサー内の250ml HDPEジャーに移し、1,500rpmで30分間混合して、溶媒を蒸発させ、印刷スラリーを生成する。
【0084】
3D印刷。2つのSmartPumpを備え、ノズル開口部が12.5、25または125μmのセラミックノズルを用いたnScrypt 3Dn-300プリンタを使用してインクを印刷した。均一で均質な膜を製作するために、インクをマイラーシート上に印刷した。規則性構造体を印刷するために、構造支持のための、3D印刷された均一な膜と特性上同一である先述の多孔質-緻密多層LLZテープ基板上にインクを印刷した。すべての場合において、印刷ステージを30~35℃まで加熱して、乾燥プロセスを促進した。次いで、3D印刷された構造体を他の場所に記載の焼結法と類似の管状炉内で母粉末床内で焼結した。
【0085】
材料特性評価。LLZ粉末の相特性評価をメリーランド大学のX線結晶学センターでBruker D8 X線回折計を使用して実施した。粒子サイズデータをN-メチル-2-ピロリジノン溶媒中のLLZおよびTriton X-100分散剤の希薄溶液についてHoriba Partica LA-950レーザ回折粒子サイズ分布分析装置を使用して収集した。レオロジーデータを1~100Hz、25℃でTA Instruments DHR-2レオメーターを使用して収集した。UMD AIMLabのHitachi SU-70 SEMおよびUMD FabLabのHitachi S-3400 SEMをLLZ粉末および焼結されたLLZ 3D印刷された層を画像化するために使用した。
【実施例2】
【0086】
この実施例では、固体型電解質構造体、固体型電解質構造体を含むデバイスおよびその特性評価、固体型電解質構造体の製造方法、ならびに3D印刷可能な組成物を説明する。
【0087】
この実施例では、低屈曲ガーネット骨格の3D印刷を説明する。本方法により調製される3D多孔質固体型電解質構造体は規則性であり、電極内の速いイオン輸送を容易にしながら電極支持体として働くことができる。これにより、より高いバッテリーCレートおよびより高い負荷のためのより厚い電極が可能になる。3D構造体は、固体型バッテリーの機械的強度を高めることもできる。
【0088】
よく分散したガーネット粒子を含む安定なガーネットインクの開発。組成Li6.75La2.75Ca0.25Zr1.5Nb0.512(LLZ)を有するリチウムガーネット粉末を固相反応により合成した。XRD結果は、図8aにおいて純粋な立方相ガーネットを示す。次いで、媒体のサイズが減少する複数のステップで粉末をボールミル粉砕して粒子サイズを減少させた。粉末のd90は、3D印刷に適している255nmであった。次いで、インクをESLバインダーおよび200プルーフエタノールと混合して3D印刷インクを生成した。いくつかの系列のインクを調製して、粘度に対するバインダー、ガーネットの比、および溶媒濃度の影響を試験した。2つのガーネット:バインダー比を選んだ(2.08:1および1.85:1)。これらの混合物に15~50wt%の溶媒を加えた。図9は、異なるインクのレオロジー特性を示す。図9aおよび図9bは、それぞれ2.08:1および1.85:1のガーネット:バインダー比を有するインクを示す。異なる溶媒割合がプロット内にパーセントで示されている。最少量のバインダー(ガーネット:バインダー2.08:1)および溶媒(エタノール18%)を含む、したがって固形分負荷が最も高いインクは不安定であった(図9a)。他のすべてのインクは安定しており、粘度値345cP~52,000cPを有していた。最も粘性の高いインク(図9b)は、使用されたより多くの量のバインダーおよび限られた量の溶媒のために、シアシニング挙動も幾分示した。図9bの挿入写真は、高粘度インクが、シリンジのノズルを出た後、その形状をどれほど保持するかを示す。
【0089】
線配列構造体の印刷。LLCZNを3D印刷するために安定なインクを使用した。面積の広い均一な膜の単層を印刷するために低粘度インクを使用した。例の単層膜を図10aに示した。次いで、この膜を焼結して、厚さがわずか5~10μmの純粋なLLCZNガーネットの膜を得た(図10b)。様々な線パターンを同じく印刷して、高表面積の開孔構造体を生成した。パターンをLLCZNテープ基板上に印刷した。これは、焼結後、セルの電極分離緻密層として働くであろう。低粘度インクをまず高粘度インクと比較した。図10cおよび図10dは、より共形となる低粘度インク(図10c)およびより高粘度の自己支持性インク(図10d)を使用してLLCZN基板上に印刷された線パターンの断面SEM像を示す。より低粘度のインクは、低い接触角により観察される、表面と部分的に共形となる線になる。対照的に、より高粘度のインクは基板をそれほど濡らさず、線は円形を保つ。線パターン寸法の追加の変形形態を図11に示した。線幅200、220および285μmおよび線間隔110、200、260μmが得られ、3D印刷プロセスの制御が示された。
【0090】
柱構造体の印刷。様々な直径および高さのガーネット柱をガーネットテープ基板上に3D印刷した。印刷領域は1×1cm以上、中心間の柱間隔は0.5~1mmであった。印刷物の写真を図12に示す。柱を直径300μm~約75μmおよび高さの範囲50~200μmで印刷した。得られた最大アスペクト比は約2.0であった。これらの値は、バインダーの完全燃焼およびガーネットの緻密化のために著しい収縮が起こる焼結前に測定した。図12は、焼結された3D印刷された柱のSEM像を示す。焼結された柱の最大高さは約180μm、直径約100μmと測定され、アスペクト比は1.8となる。
【0091】
多層格子構造体の印刷。多層格子構造体などの自己支持性構造体にレオロジー特性を最適化するようインク処方を合わせることができた。加えて、乾燥速度を注意深く制御することが、印刷と焼結との間で構造劣化を防ぐために考慮すべき非常に重要な事項であった。
【0092】
3D印刷プロセスの制御により、3D多層格子構造体の印刷の成功を通じて改善が示された。これらのインクを使用して、図13に見られるようにガーネット基板上の1×1cm領域内にオーバレイ直交ラスタパターンを印刷して多層格子構造体を作り出した。焼結後の構造体は、275μm~約315μmの様々な線間距離を90~200μmの範囲の線の太さと共に有していた。
【実施例3】
【0093】
この実施例では、固体型電解質構造体、固体型電解質構造体を含むデバイスおよびその特性評価を説明する。
【0094】
3D印刷された積層配列LLZおよびリチウム電極を使用して作られた対称セルを製作して、3D印刷された電解質の有効性を検証した(図11)。実施例1にしたがって電解質を印刷した。ALD被覆をLLZの両側に施して、LLZ表面にリチウムが濡れるようにした。図11aはセル構造の図を示し、図11bは、LLZ積層配列構造体の細孔を充填するリチウム金属の近接画像を示す。リチウムとLLZとの間の密接な接触および3D印刷されたLLZパターンによりもたらされた接触面積の増加により、リチウム金属|LLZ電解質界面インピーダンスが確実に低くなる。
【0095】
図11cは、セルの対称なDCサイクルを示す。電流密度を0.1mA/cmから0.33mA/cmまで変化させ、低下させて0.1mA/cmに戻した。0.1mA/cmおよび0.33mA/cmにおける平均過電圧は2.3mVおよび7.2mVであり、そのいずれも、面積比抵抗(ASR)22Ω-cmに対応する。電流密度を0.1mA/cmまで低下させたとき、平均過電圧は2.0mVまで低下して戻り、これも20Ω-cmのASRに相当する。電流密度に依存しない一定のASRは、3D印刷されたLLZの高い伝導度を実証するものである。さらに、Li|LLZ界面インピーダンスがALD被覆により打ち消されるため、極めて低いASRは、すべての3D印刷されたLLZ層間の接続に継ぎ目がないことも示す。したがって、3D印刷されたLLZは、デンドライト成長を妨げる能力およびLLZ電解質に特徴的な高い伝導度を保つ連続的な多層規則性電解質構造を作り出す。
【0096】
Li浸透および対称セル試験。焼結された3D印刷されたLLZ層をまずALD表面被覆で処理して、Liの濡れおよびLLZ電解質に対するLi金属の界面接触を改善した。次いで、Li金属をArグローブボックス内で200℃で溶融することによりLLZ構造体の両側に被覆した。BioLogic VMP3ポテンショスタットで試験するため、対称セルをステンレス鋼集電体と共にコイン電池内にパッケージ化した。セルを0.10~0.33mA/cm、室温で1時間サイクルさせた。
【実施例4】
【0097】
この実施例では、固体型電解質構造体、固体型電解質構造体を含むデバイスおよびそのモデル化を説明する。
【0098】
Li-S全セルの性能を予測するための理論モデルの開発。3D印刷された構造体の性能および輸送特性を予測するための理論モデルの構築を2次元アプローチで開始した。以下の図14は、柱構造体のモデル化において使用された基本概念を示す。第1の構成要素は、化学的濃度勾配に起因する駆動力およびその結果としての拡散を示す。第2の構成要素は、電場によって引き起こされるイオンの電気移動である。これら2つの構成要素は、重なり合って充電状態に応じた全体的なリチウム濃度プロファイルを生じる多少異なるプロファイルを有する。
【0099】
図15は、充電状態に応じたガーネットピラー間の電極内の濃度プロファイルを示す。明らかに柱の高さならびに柱間隔に依存している。図16は、様々なピラー直径を有するガーネットピラー内のリチウム輸送を示し、これは、リチウムが電極に接近することができる速度にも影響を及ぼす。
【0100】
このモデルは、リチウムイオン-化学拡散および電磁力それぞれに影響を与える物理的力を考慮することにより、電解質内および硫黄電極内のリチウムイオンの動きを追跡する。
【0101】
化学拡散
【0102】
熱力学では、濃度に関係する拡散は、流束の確率モデルで記述される。
J=-D∇c
式中、流束Jは、拡散係数Dによる濃度cの一次空間導関数に関係する。それを保持する式とまとめると、質量は系内に保存される:
【数1】
【0103】
この式は、より認識できる熱-波動方程式(フィックの第2法則)に書き換えることができる。
【数2】
【0104】
電気拡散。濃度勾配中の粒子のランダムウォークに加えて、本発明者らの系内のリチウムイオンは電位の引力も受ける。特定点の電位は、その点の電極の化学量論、または多硫化リチウム中のリチウムの量によって決まる。各多硫化物の電位は実験的に決定され、図17に示した。
【数3】
(式中、zは、移動イオンに関連する電荷数(Liイオンの場合、z=1)であり、Fはファラデー定数であり、Rは理想気体定数であり、φは、ボクセルにおける電気化学ポテンシャルである)。全ボクセルのこの電位は、ボクセル内のリチウム濃度をその領域の平均と見なし、その電位を図17のリチウム化曲線に当てはめることにより決定される。
【0105】
全濃度変化は、すべての流束式を正味流束項にまとめた後、決定することができる:
【数4】
【0106】
このモデルでは、離散反復アプローチを利用して、リチウムイオンの濃度、ひいては3D体積全体にわたる多硫化リチウムの濃度を計算する。
【0107】
まず、各セルが数千の3次元ボクセルのうちの1つを表す3D配列を作り出す。各セルには、その位置に関する情報、例えば、最も優勢な材料(電極または電解質)、リチウムの量、そのリチウム化に関連する電荷および拡散係数を記憶するオブジェクトが格納されている。次いで、当該セルを出入りするイオンの動きに最近接サイトが及ぼす影響を考慮しながら、この配列をセル毎に評価する。次いで、これらの変化をすべてのセルに反復して適用する。この評価および適用は、情報伝達の遅延に伴う何らかの問題を回避するため、2つの異なるプロセスに分離される。このプロセスを図18に示した。
【0108】
初期リチウム濃度は、化学量論によって決まるように電極ドメインについては0、電解質ドメインについては6.75である。硫黄およびガーネットの相対密度を考慮した後、所与のボクセル内に含まれるリチウム原子の最大数を比較できる。
【0109】
連続モデルから離散モデルへ。連続モデルから離散モデルへのいかなる飛躍も、わずかに過大評価/過小評価を伴うことになるが、しかし、モデルの背後にある動力学および中核概念は変わらない。濃度に関する本発明者らの式には、離散的にする必要がある次の5つの連続成分が存在する-時間ステップdt、濃度の一次および二次空間導関数∇cおよび∇c;ならびに電位の一次および二次空間導関数∇φおよび∇φ。計算を反復アルゴリズムに分割すると、時間ステップが自動的に設定される。濃度に関する情報は一度に1つのブロックを伝わるので、律速段階は、ブロックの数、したがってブロックのサイズに依存する。モデルの空間分解能が高いほど、各時間ステップdtは短くなる。
【0110】
連続空間を離散空間に変換するプロセスは比較的単純である。1次元の任意の所与の特性vにおいて、
【数5】
ここで、単位サイズについてdx=1とすると、
【数6】
v=v(x-1)+v(x+1)-2v(x)
【0111】
同じプロセスを任意のデカルト座標に使用することができて、追加の各次元について式を線形結合することにより、より高い次元にスケーリングされる。3Dでは、これらの導関数を配列として処理することができる:
【数7】
【0112】
放電率と印刷された特徴のサイズとの間の関係を、85%の固定された多孔度および200μmのカソード厚さを使用してシミュレートした。これらの値は、カソード負荷、したがってエネルギー密度を固定する。モデル化されたセル設計パラメータに基づいて、これは900Wh/kgになると推定される。図19に示したモデル結果は、この場合、カソードのこの厚さにおいて十分な電力密度を実現するためにどんな構造および寸法が必要であるかを決定するのに有用である。比較のために、二層(3D印刷された構造体を含まない平坦な表面)もモデル化し、図19に含めた。全体として、モデルは、どの印刷された構造体も二層よりはるかに速い速度で電極を利用すること、および特徴サイズが減少するにつれて電極利用率が相応に増加することを示す。相対電力密度をさらに分析したものを図19cに示しており、これは、二層(概してC/10に限られる)をベースラインとして使用して、特徴直径に応じた相対Cレートをプロットしたものである。この結果は、柱が、セルを横切る、より直接的なイオン経路を与えるため、概して柱が格子構造体より幾分高い電力密度を有することを示唆する。加えて、約30μm未満の特徴直径では1を超えるCレートが達成可能であり、10μm未満では3Cを超えるレートが可能である。より小さい特徴は、セル性能の明らかな利点を有する。
【0113】
図20は、これまで示してきた3D印刷された構造体の一部のモデル化結果を示す。具体的には、比較のための二層と共に、線直径75μmと二層高さ(150μm)ならびに線間の間隔300および500μmを有し、その結果、層多孔度がそれぞれ80%および89%となる格子構造体;高さ225μmを有する直径150μmの柱および柱間隔500μm(多孔度93%)を有する柱構造体。これらの結果は明らかに、電力密度に対する3D印刷された構造体の利益を実証するものであり、これらの場合のそれぞれにおける理論エネルギー密度が700~1000Wh/kgになると推定されることも注目に値する。
【実施例5】
【0114】
この実施例では、固体型電解質構造体、固体型電解質構造体を含むデバイスおよびその特性評価、固体型電解質構造体の製造方法を説明する。
【0115】
市販のNMCカソードを使用した全セルを以下の通り製作した:ガーネット粒子の非ニュートン性インクを使用して、二層ガーネット格子構造体を多孔質-緻密二層ガーネット電解質の緻密層上に本明細書に記載の通り3D印刷した。次いで、この構造体を焼結し、格子粒子を互いにかつ二層に融合させた。格子構造体を構成する線は、直径およそ75μmおよび中心間の水平間隔385μmを有し、これは、層多孔度85%に相当する。Li金属を二層の裏側の不規則な多孔質層内に充填し、一方、市販の811 NMC粉末、PVDFおよびカーボンブラックを溶媒としてのNMPと共に格子構造体内に充填した。全NMC負荷は14mg/cmであった。セルサイクル結果を図21に示す。図21aの本発明者らの最初のセルのインピーダンス測定は室温で高抵抗を示し、これは、固体型バッテリーが極めて安定になる温度である60℃まで加熱されると劇的に低下する。充電/放電率C/20(10mA/g)では、185mAh/gのほぼ理論放電容量(200mAh/g)が達成される。5サイクル後、この率をC/7(30mA/g)まで増加させると、容量は170mAh/gまでわずかに減少した(カソード液の蒸発に起因)。
【0116】
1つまたは複数の特定の実施形態および/または例に関して本開示を説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく本開示の他の実施形態および/または例を行うことができることが理解されるであろう。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】
図2(g)】
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
図6
図7(1)】
図7(2)】
図7(3)】
図7(4)】
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19(a)】
図19(b)】
図19(c)】
図20
図21(a)】
図21(b)】
図21(c)】