(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ホログラム表示システム、ホログラム表示方法、及びホログラム
(51)【国際特許分類】
G03H 1/24 20060101AFI20240813BHJP
G03H 1/08 20060101ALI20240813BHJP
G03B 35/18 20210101ALI20240813BHJP
【FI】
G03H1/24
G03H1/08
G03B35/18
(21)【出願番号】P 2021057938
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】松島 恭治
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-134537(JP,A)
【文献】特開2001-109362(JP,A)
【文献】特表2019-508726(JP,A)
【文献】特開2017-219824(JP,A)
【文献】国際公開第2012/098607(WO,A1)
【文献】特表平10-504909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0261185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00- 5/00
G03B35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のホログラム画像を切り替えて表示する、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システムであって、
コンピュータホログラフィによる干渉縞が形成される干渉縞形成媒体と、
前記干渉縞形成媒体を照明する照明光源と、
前記照明光源の照明パターンを制御する制御装置と、
を備え、
前記干渉縞形成媒体における前記干渉縞のデータは、
複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、前記抽出した各々の前記干渉縞データの一部を一つに統合することにより、生成されるものであり、
前記制御装置は、
前記照明光源からの前記照明パターンを、前記所定の空間分割パターンに合わせて切り替え、前記干渉縞形成媒体に照射することにより、前記複数のホログラム画像を切り替えて表示させる、
ホログラム表示システム。
【請求項2】
前記所定の空間分割パターンが、縞パターンである、
請求項1に記載のホログラム表示システム。
【請求項3】
前記所定の空間分割パターンが、格子状パターンである、
請求項1に記載のホログラム表示システム。
【請求項4】
前記制御装置が、前記照明パターンの照明部分と非照明部分との境界にグラデーションを配置するように前記照明パターンを制御する、
請求項1に記載のホログラム表示システム。
【請求項5】
コンピュータホログラフィによる干渉縞が形成された干渉縞形成媒体に、照明光源により照明光を照射することにより、ホログラム画像を表示するホログラム表示方法であって、
前記干渉縞形成媒体における前記干渉縞のデータを、
複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、前記抽出した各々の前記干渉縞データの一部を一つに統合することにより、生成し、
制御装置により、前記照明光源からの照明パターンを、前記所定の空間分割パターンに合わせて切り替え、前記干渉縞形成媒体に照射することにより、前記複数のホログラム画像を切り替えて表示する、
ホログラム表示方法。
【請求項6】
複数のホログラム画像を切り替えて表示する、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システムであって、
転写により体積型屈折率分布による干渉縞が形成される干渉縞形成媒体と、
前記干渉縞形成媒体を照明する照明光源と、
前記照明光源の照明パターンを制御する制御装置と
を備え、
前記転写により形成される前記干渉縞の、転写元の干渉縞のデータは、
複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、前記抽出した各々の前記干渉縞データの一部を一つに統合することにより、生成されるものであり、
前記制御装置は、
前記照明光源からの
前記照明パターンを、前記所定の空間分割パターンに合わせて切り替え、前記干渉縞形成媒体に照射することにより、前記複数のホログラム画像を切り替えて表示させる、
ホログラム表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム表示システム、ホログラム表示方法、及びホログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学ホログラフィに対して、コンピュータ上で仮想物体からの光波を計算し、物体光と参照光を数値合成することでホログラムを作製する技術は、コンピュータホログラフィと呼ばれる。更に、作製されるホログラムは、計算機合成ホログラム (Computer-Generated Hologram;CGH) と称される。コンピュータホログラフィでは、数値データで表現された非実体の物体やシーンの再生が可能である。
【0003】
静止画像を映し出すCGHは、例えば、ガラス基板上にリソグラフィのような微細加工技術で金属膜(層)や凹凸パターンを形成することにより作製される。静止画像のためのこのようなCGHは、相応の視域角を備え、よって複数人が同時に見ることができるホログラムと成り得る。但し、干渉縞の画素ピッチは微細になり、それに対応して画素数は膨大なもの(例えば、数百億のピクセル数)になる。
【0004】
このような膨大な画素数により微細加工技術で作製されるCGHにおいては、現在の画像技術では、例えば、動画表示等の、瞬時での切り替え表示を行うことは困難である。
【0005】
なお、引用文献1では、複数のホログラムを空間的に分割して一つのホログラムにまとめる、というホログラムの製造方法及びその記録媒体が開示されている。このホログラム記録媒体は、観察者が視点位置を比較的大きく変えることによって、複数の異なる再生像を見ることができる、というものである。引用文献2でも、複数のホログラムを空間的に分割して一つのホログラムにまとめる、という光学式3次元動画表示装置が開示されているが、この発明は奥行きのある構造の奥行きを強調するためのものである。引用文献1に開示の施術も引用文献2に開示の技術も、複数人が視点を変えずに同時に見ることができる同じ再生像を瞬時に切り替えて表示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-187027号公報
【文献】特開2000-066136号公報
【文献】特開2017-219824号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】K. Matsushima: Introduction to Computer Holography, (Springer, 2020). ISBN 978-3-030-38435-7
【文献】K.Matsushima: Very Large-scale computer-generated hologram for 3D display, 11th International Conference on Optics-photonics, Design & Fabrication, 30S4-02 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、相応の視域角を備え、よって複数人が同時に見ることができるホログラム画像を、複数、瞬時に切り替えて表示することができる、ホログラム立体画像表示システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のホログラム表示システムは、複数のホログラム画像を切り替えて表示する、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システムである。
当該ホログラム表示システムは、コンピュータホログラフィによる干渉縞が形成される干渉縞形成媒体と、前記干渉縞形成媒体を照明する照明光源と、前記照明光源の照明パターンを制御する制御装置と、を備える。
前記干渉縞形成媒体における前記干渉縞のデータは、複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、前記抽出した各々の前記干渉縞データの一部を一つに統合することにより、生成されるものである。
前記制御装置は、前記照明光源からの前記照明パターンを、前記所定の空間分割パターンに合わせて切り替え、前記干渉縞形成媒体に照射することにより、前記複数のホログラム画像を切り替えて表示させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のホログラム表示システムは、相応の視域角を備え、よって複数人が同時に見ることができるホログラム画像を、複数、瞬時に切り替えて表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施の形態1に係るホログラム表示システムのCGHにおける、干渉縞パターンデータの分割と統合の様子の例を模式的に示す図である。
【
図1B】実施の形態1に係るホログラム表示システムのCGHにおける、コンピュータによる干渉縞パターンデータの分割と統合の処理を示すフローチャートである。
【
図2A】実施の形態1に係るホログラム表示システムの構成図(1)である。
【
図2B】実施の形態1に係るホログラム表示システムの構成図(2)である。
【
図2C】実施の形態1に係るホログラム表示システムの構成図(3)である。
【
図2D】実施の形態1に係るホログラム表示システムの構成図(4)である。
【
図3】実施の形態1に係るホログラム表示システムのCGHにおける、干渉縞パターンデータの分割の第1例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係るホログラム表示システムのCGHにおける、干渉縞パターンデータの分割の第2例を示す図である。
【
図5】実施の形態2に係るホログラム表示システムの照明パターンの変形例である。
【
図6A】実施の形態3に係るホログラム表示システムで用いられる赤色緑色青色のためのCGH、及びカラーフィルタを模式的に示す図である。
【
図6B】
図6B(a)は、ガードギャップを設けていない干渉縞層を示す図である。
図6B(b)は、ガードギャップを設けている干渉縞層を示す図である。
図6B(c)は、
図6B(c)に示すように、RGBブロックのストライプが水平のものである干渉縞層を示す図である。
【
図7A】金属膜高解像度の原版CGHの、記録材料への転写の様子を示す概略図である。
【
図7B】実施の形態4に係るホログラム表示システムで用いられる赤色緑色青色のためのCGHの作製方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、本発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
1.本開示に至る経緯
コンピュータホログラフィは、コンピュータ上の仮想物体からの光波をコンピュータで計算し、物体光と参照光を数値合成することでホログラムを作製する技術である。このコンピュータホログラフィにより作製されるホログラムは、計算機合成ホログラム(CGH)である。コンピュータホログラフィでは、コンピュータ上の仮想物体からの光が計算されて干渉縞が作成されるため、実際の物体は必要ないという大きな利点がある。また、実際の物体と仮想物体をミックスして再生することもできる。
【0015】
また、作成される干渉縞パターンはデジタルデータであるため、干渉縞パターンデータは、デジタルデータを記録する通常の記録媒体に保存されたり、転送されたり、複製されたりすることが可能である。
【0016】
一方、複数人が同時に見ることができる程度にCGHの視域角を広くするには、干渉縞の画素ピッチをより微細にする必要がある。大面積のCGHでは膨大なピクセル数が必要とされ、コンピュータによるそれらピクセルに関する計算には大量のメモリと長い時間とが必要とされる。
【0017】
非特許文献1と2に開示されるCGHである「Toy Train」も以下のように、微細な画素ピッチ(ピクセル間隔)及び膨大な画素(ピクセル)数を要する。
【0018】
【0019】
上述の「Toy Train」のように、微細加工技術で作製されるCGHは、従来、静止画のホログラムであり、微細な画素ピッチ及び相応の視域角を持つホログラフィを実現することができる。
【0020】
ところが、複数人が同時に見ることができる程度に相応の視域角(例えば、30°)を備えつつ、再生像を瞬時に、然も複数回、切り替えて表示できる、CGHのための表示装置は、従来存在しなかった。というのは、上述のような微細加工技術で作製されるCGHは、再生像を静止させて表示するのに適するが、基板の物理的な入れ替えには物理的な作業を要することから、再生像の瞬時での切り替えには全く適さないからである。また、表示デバイスとして商業的に入手可能なデジタルディスプレイデバイスを利用しようとしても、高解像度CGHの膨大なピクセル数(例えば、数百億数)を表示し得るデジタルディスプレイデバイスが現実に存在しないからである。例えば、現在広く普及しているフルHDは、ディスプレイ解像度が207万画素に過ぎず、同じく広く普及している4Kテレビジョンは、ディスプレイ解像度が829万画素に過ぎない。
【0021】
本発明者は、CGHを用いれば干渉縞の一部からでも再生像が形成され得ることに着目して、CGHそのものを切り替えず、再生照明光源として用いるレーザプロジェクタの照明パターンに構造を持たせ、その構造の切り替えを制御することにより、再生像の瞬時での切り替えを実現することに想到した。再生像を瞬時に、然も複数回、切り替えて表示することによって、ホログラムの動画を表示することも可能になる。
【0022】
2.実施の形態1
2.1.ホログラム表示システムの構成
図2Aは、実施の形態1に係る、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システム1の構成図である。
図2Aに示すホログラムは反射再生のものである。実施の形態1に係るホログラム表示システム1は、照明光源であるプロジェクタ6と、コンピュータホログラフィで形成した干渉縞の媒体、即ち、干渉縞層(干渉縞形成媒体)2を備えるホログラム4と、プロジェクタ(照明光源)6の照明、特に、後で説明する照明パターンを制御するパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と言う)(制御装置)8とを含む。プロジェクタ6の光源は、例えば、レーザダイオードであるが、他のものでもよい。他の実施の形態における光源においても同様である。
【0023】
なお、本実施の形態では、照明光源は単色光源であり、例えば、照明光は赤色(波長:630nm)である。
【0024】
PC8は、HDMI(登録商標)ケーブル10でプロジェクタ(照明光源)6と接続する。プロジェクタ支持台14に載せられるプロジェクタ(照明光源)6は、その下方にてホログラム支持台12により斜め方向に配置されるホログラム4に対して、斜めの照明光を当てる。ホログラム4の正面から眺める観察者94は、何にも遮られること無くホログラム画像を見ることができる。但し、ホログラム4をプロジェクタ(照明光源)6に対し斜めに配置しているために、ホログラム4の上部と下部とで照明光に歪みが生じ高解像度CGHを正確に照明し難い可能性はある。また、ホログラム4をプロジェクタ(照明光源)6に対し斜めに配置していることから、CGHの周辺に照明光(照明光)が台形状に広がることとなりやすいため、後で説明するように台形補正という位置合わせ補正が行われることが望ましい。
【0025】
図2Cも、実施の形態1に係る、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システム1の構成図であり、
図2Aに示すものに類似するが、
図2Cに示すホログラムは透過再生のものである。
【0026】
図2Bも、実施の形態1に係る、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システム1の構成図である。
図2Bに示すホログラムも反射再生のものである。
図2Bに示す実施の形態1に係るホログラム表示システム1も、プロジェクタ(照明光源)6と、コンピュータホログラフィに基づく干渉縞が形成される干渉縞層(干渉縞形成媒体)2を備えるホログラム4と、プロジェクタ(照明光源)6の照明パターンを制御するPC8とを含む。PC8とプロジェクタ(照明光源)6とはHDMIケーブル10で接続される。
【0027】
プロジェクタ支持台14に載せられるプロジェクタ(照明光源)6は、ホログラム支持台12により配置されるホログラム4に対して、正面から照明光を当てる。
図2Bに示すホログラム表示システムの構成では、ホログラム4の上部と下部とで照明光に歪みが生じにくい。但し、ホログラム4の正面から眺める観察者94には、プロジェクタ(照明光源)6自身が視界に入りホログラム画像(ホログラム)の観察の妨げになる可能性はある。
【0028】
図2Dも、実施の形態1に係る、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システム1の構成図であり、
図2Bに示すものに類似するが、
図2Dに示すホログラムは透過再生のものである。
【0029】
本実施の形態では観察者94の便宜に応じて、
図2A、
図2B、
図2C、若しくは
図2Dに示す、いずれの構成のホログラム表示システム1も選択され得る。
【0030】
2.2.干渉縞パターンのデータの構成
干渉縞層(干渉縞形成媒体)2に実際に形成される干渉縞パターンに関するデータは、コンピュータにより生成される。レーザ描画装置又は電子線描画装置を用いたリソグラフィ、あるいは他の方法により、干渉縞パターンを形成する。
【0031】
例えば、当該リソグラフィでは、例えば、以下のように干渉縞層(干渉縞形成媒体)2が形成される。まず、ガラス基板上に金属膜(例えば、Cr膜)及びレジスト層が積層される。レーザ照射または電子線照射により、干渉縞パターンのデータに従って、レジスト層が露光される。次に、感光した部分のレジスト層が除去され、露出した金属膜(例えば、Cr膜)がエッチングされ、最後に、レジスト層が除去される。レジスト層が除去された金属膜が、干渉縞形成媒体(干渉縞層)2となる。
【0032】
干渉縞の生成方法は、上述のリソグラフィに限定されるものではない。CGHの干渉縞は、主として下記(1)~(4)の媒体及び方法で形成できる。
(1)写真フィルムのような感光材料(銀塩材料)の黒化パターン。
(2)フォトポリマ、漂白した銀塩材料、重クロム酸ゼラチンなどで形成した屈折率分布。
(3)レーザリソグラフィや電子線リソグラフィによる金属膜。
(4)レーザリソグラフィや電子線リソグラフィによるレジストやガラス等の透明基材の凹凸パターン、あるいは、それをインプリトした、通常プラスチック素材における凹凸パターン。
上述では(3)の金属膜に干渉縞が形成されている。
【0033】
図1Aは、実施の形態1に係るホログラム表示システム1のCGHにおける、コンピュータによる、干渉縞パターンのデータの分割と統合の様子の例を模式的に示す図である。
図1Bは、実施の形態1に係るホログラム表示システム1のCGHにおける、コンピュータによる干渉縞パターンデータの分割と統合の処理を示すフローチャートである。
【0034】
図1Bに示すコンピュータによる干渉縞パターンデータの分割と統合の処理では、先ず、複数のホログラム画像のための干渉縞データについて、各々の一部を、所定の空間分割パターンに従って抽出する(S04)。次に、抽出された各々の干渉縞データの一部を、一つに統合して、統合後干渉縞パターンデータ3を生成する(S06)。
【0035】
図1Aに示す干渉縞パターンの例にて処理の流れを示す。まず、「分割前干渉縞」の行に示されるように、(1)、(2)、(3)及び(4)の、4つの干渉縞データが用意される。これらの各々に対して、「分割後干渉縞」の行に示されるように、干渉縞データが空間分割される。
【0036】
「分割後干渉縞」の行における(1)~(4)の干渉縞パターンの各々では、縦細の干渉縞が置かれ、続いてその縦縞三つ分の影部分(即ち、非照明部分)が置かれている。(1)の干渉縞パターンと(2)の干渉縞パターンとを対比すると、(2)の縦細の干渉縞部分は、(1)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。同様に、(3)の縦細の干渉縞部分は、(2)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。(4)の縦細の干渉縞部分は、(3)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。更に、(1)の縦細の干渉縞部分は、(4)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。
【0037】
従って、「分割後干渉縞」の行における(1)~(4)の干渉縞パターンのデータは、重畳すること無く統合されて、
図1Aの右下部に示すように、統合後干渉縞パターンデータ3となる。
【0038】
なお、
図1Aに示す干渉縞パターンでは、本発明者は、例えば、128本の縦縞を用いて、10.4cm角のCGHを構成する等行っており、この際、縞間隔、即ち、縦細の干渉縞部分の幅は、0.8mmである。
【0039】
また、
図1Aに示す干渉縞パターンの例では、干渉縞は4つに分割されている。分割の数は、2以上であれば幾つであっても構わない。干渉縞の有効面積と分割の(コマ)数とは、トレードオフの関係にある。
【0040】
2.3.干渉縞に対応するホログラム画像の再生動作
一般にホログラムは干渉縞の一部からでも再生できる特性を持つ。この特性を利用して、本実施の形態では、統合後干渉縞パターンデータ3の干渉縞が形成された干渉縞形成媒体(干渉縞層)2及びホログラム4に対して、プロジェクタ(照明光源)6により、
図1Aの「分割後干渉縞」の行における(1)~(4)の各々の干渉縞パターンのうち、縦細の干渉縞部分にのみ照明光を当てて、
図1Aの「分割前干渉縞」の行における(1)~(4)の各々の干渉縞パターンに対応するホログラム画像を再生させる。
【0041】
例えば、
図1Aの「分割後干渉縞」の行の(1)の干渉縞パターンのうち縦細の干渉縞部分に対応する部分にのみ照明光を当てて、
図1A「分割前干渉縞」の行における(1)の干渉縞に対応するホログラム画像を再生させる。このとき、縦細の干渉縞部分以外の影部分は、非照明部分である。プロジェクタ(照明光源)6は、縦細の干渉縞部分に対応する部分に照明光を当て、影部分(非照明部分)には何も当てないように、PC8により制御される。
【0042】
なお、本実施の形態では、上述のような、プロジェクタ(照明光源)6の照明パターンを制御するため、例えば、Unity Technologies社が提供するゲーム開発ツールであるUnityを利用している。UnityはPC8に導入されている。他の実施の形態も同様である。なお、勿論、照明パターンを制御するための別のツールが用いられてもよい。
【0043】
図1Aの「分割後干渉縞」の行の(2)、(3)、及び(4)の各々、並びに、
図1Aの「分割前干渉縞」の行の(2)、(3)、及び(4)の各々についても、同様に、PC8及びプロジェクタ(照明光源)6により照明光を制御することにより、夫々のホログラム画像が再生される。
【0044】
従って、PC8及びプロジェクタ(照明光源)6により、照明光を、
図1Aの分割後干渉縞の(1)、(2)、(3)、及び(4)の各々の干渉縞パターンに対応する照明パターンの間で、切り替えることにより、再生される画像が、
図1Aの分割前干渉縞の(1)、(2)、(3)、及び(4)の夫々に対応するホログラム画像に、瞬時に切り替わることになる。
【0045】
2.4.干渉縞データの空間分割パターンとそれに対応する照明光源の照明パターンの、二つの構成例
図3は、実施の形態1に係るホログラム表示システム1のCGHにおける、干渉縞パターンデータの空間分割の第1の例を示す図である。
図3に示す、干渉縞パターンデータの空間分割の第1の例は、
図1Aに示す干渉縞パターンデータの空間分割パターンと、同様のものである。
【0046】
図3の(1a)、(2a)、(3a)、及び(4a)の干渉縞パターンの各々では、
図1Aに示す干渉縞パターンデータの空間分割パターンと同様に、縦細の干渉縞が置かれ、続いてその縦縞三つ分の影部分(即ち、非照明部分)が置かれている。
図3の(1b)、(2b)、(3b)、及び(4b)は、夫々、
図3の(1a)、(2a)、(3a)、及び(4a)の干渉縞パターンの各々の一部を、拡大したものである。
【0047】
(1a)及び(1b)の干渉縞パターンと(2a)及び(2b)の干渉縞パターンとを対比すると、(2a)及び(2b)の縦細の干渉縞部分は、(1a)及び(1b)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。同様に、(3a)及び(3b)の縦細の干渉縞部分は、(2a)及び(2b)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。(4a)及び(4b)の縦細の干渉縞部分は、(3a)及び(3b)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。更に、(1a)及び(1b)の縦細の干渉縞部分は、(4a)及び(4b)の縦細の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦細分だけ右にずれている。
【0048】
図3の(1a)及び(1b)、(2a)及び(2b)、(3a)及び(3b)、並びに、(4a)及び(4b)の干渉縞パターンの各々に対しては、縦細の干渉縞部分に対応する部分にのみ照明光を当てて、各々におけるホログラム画像の全体を再生させる。このとき、縦細の干渉縞部分以外の影部分には何の光も当てられない。ここでの照射及び非照射の制御は、PC8における、例えばUnity等のツールにより行われる。
【0049】
なお、
図3に示す干渉縞パターンでも、本発明者は、例えば、128本の縦縞を用いて、10.4cm角のCGHを構成する等行っており、この際、縞間隔、即ち、縦細の干渉縞部分の幅は、0.8mmである。
【0050】
次に、
図4は、実施の形態1に係るホログラム表示システム1のCGHにおける、干渉縞パターンデータの空間分割の第2の例を示す図である。
【0051】
図4の(1b)、(2b)、(3b)、及び(4b)も、夫々、
図4の(1a)、(2a)、(3a)、及び(4a)の干渉縞パターンの各々の一部を、拡大したものである。
図4の(1a)及び(1b)、(2a)及び(2b)、(3a)及び(3b)、並びに、(4a)及び(4b)の干渉縞パターンの各々では、全体の1/4が干渉縞部分に当たる、格子状パターンが配置されている。干渉縞部分は、多数の矩形の単位部分により構成されている。つまり、矩形の干渉縞部分が並ぶ行(即ち、横)の方向では、矩形の干渉縞部分と、影部分とが交互に配置され、矩形の干渉縞部分の横幅と、当該影部分の横幅とが等しく、更に、矩形の干渉縞部分が並ぶ列(即ち、縦)の方向でも、矩形の干渉縞部分と、影部分とが交互に配置され、矩形の干渉縞部分の縦幅と、当該影部分の縦幅とが等しい。ただし、干渉縞部分の横幅(あるいは縦幅)と、影部分の横幅(あるいは縦幅)は、等しくなくてもよい。
【0052】
(1a)及び(1b)の干渉縞パターンと(2a)及び(2b)の干渉縞パターンとを対比すると、(2a)及び(2b)の矩形の干渉縞部分は、(1a)及び(1b)の矩形の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦縞分だけ右(若しくは左)にずれている。同様に、(3a)及び(3b)の矩形の干渉縞部分は、(2a)及び(2b)の矩形の干渉縞部分に対して、一つの縦縞分だけ左(若しくは右)に及び一つの横縞分だけ上(若しくは下)にずれている。(4a)及び(4b)の矩形の干渉縞部分は、(3a)及び(3b)の矩形の干渉縞部分に対して、ちょうど一つの縦縞分だけ右(若しくは左)にずれている。更に、(1a)及び(1b)の矩形の干渉縞部分は、(4a)及び(4b)の矩形の干渉縞部分に対して、一つの縦縞分だけ左(若しくは右)に及び一つの横縞分だけ下(若しくは上)にずれている。
【0053】
図4の(1a)及び(1b)、(2a)及び(2b)、(3a)及び(3b)、並びに、(4a)及び(4b)の干渉縞パターンの各々に対しても、矩形の干渉縞部分に対応する部分にのみ照明光を当てて、各々におけるホログラム画像の全体を再生させる。このとき、矩形の干渉縞部分以外の影部分には何の光も当てられない。ここでの照射及び非照射の制御も、PC8における、例えばUnity等のツールにより行われる。
【0054】
なお、
図4に示す干渉縞パターンでも、本発明者は、例えば、128×128の格子を用いて、10.4cm角のCGHを構成する等行っており、この際、格子間隔、即ち、干渉縞部分の矩形の縦横幅は、0.8mmである。
【0055】
2.5.干渉縞データの空間分割パターンとそれに対応する照明光源の照明パターンの、その他の構成
干渉縞データの空間分割パターンとそれに対応する照明光源の照明パターンの構成は勿論、
図1Aや、
図3や、
図4に示されるものに限定されない。
図3では、直線状の縦縞による空間分割パターンが示されているが、空間分割パターンは、直線状の横縞によるものであってもよい。また、波線状の縦縞若しくは横縞によるものであってもよい。
【0056】
また、分割対象の平面(空間)を多数の微小な正三角形によって区切り、それら全体の多数の正三角形を複数のグループに均等に分け、それら複数のグループの各々を、一つの空間分割パターンとするようにしてもよい。同様に、分割対象の平面(空間)を多数の微小な正六角形によって区切り、それら全体の多数の正六角形を複数のグループに均等に分け、それら複数のグループの各々を、一つの空間分割パターンとするようにしてもよい。このように平面充填パターンであれば、どのような空間分割パターンでもよい。
【0057】
2.6.実施の形態1のまとめ
以上のように、本実施の形態に係るホログラム表示システム1は、複数のホログラム画像を切り替えて表示する、計算機合成ホログラムによるホログラム表示システムである。当該ホログラム表示システム1は、コンピュータホログラフィによる干渉縞が形成される干渉縞形成媒体2と、干渉縞形成媒体2を照明するプロジェクタ6と、プロジェクタ6の照明パターンを制御するPC8と、を備える。干渉縞形成媒体2における干渉縞のデータは、複数のホログラムの各々の干渉縞データの一部を所定の空間分割パターンに従って抽出し、抽出した各々の干渉縞データの一部を一つに統合することにより、生成されるものである。PC8は、プロジェクタ6からの照明パターンを、所定の空間分割パターンに合わせて切り替え、干渉縞形成媒体2に照射することにより、複数のホログラム画像を切り替えて表示させる。
【0058】
以上のようなホログラム表示システム1では、相応の視域角を備え、よって複数人が同時に見ることができるホログラム画像を、複数、瞬時に切り替えて表示することができる。尚、本実施の形態では、4つの干渉縞データを用いることにより、4つの異なる画像を表示させる例を示した。しかし、干渉縞データは4つに限らない。干渉縞データの数を多くすることにより、多くの画像を切り替えることが可能となり、アニメーションのような動画表示が可能となる。
【0059】
図3に示す縞状の干渉縞パターンを用いて、動画やアニメーションのための統合後干渉縞パターンデータ3を作製すると、動画やアニメーションの再生時には、再生像が例えば、右に流れて見えることがあることに、本発明者は気が付いた。これは、
図1Aに示すように、縞パターンを左から右に順に割り当てたからであると考えられる。これに対して、
図4に示す干渉縞パターンを用いて、動画やアニメーションのための統合後干渉縞パターンデータ3を作製すると、再生像が流れて見えるという事象は見られないことにも、本発明者は気が付いている。
【0060】
3.実施の形態2
実施の形態2に係るホログラム表示システム1は、実施の形態1に係るホログラム表示システム1と略同様のものであるので、主として両者の差異を説明する。
【0061】
図2Aに示す、計算機合成ホログラム(CGH)によるホログラム表示システム1では、ホログラム4をプロジェクタ(照明光源)6に対し斜めに配置していることから、台形補正という位置合わせ補正が行われることが望ましい。
【0062】
但し、その際ホログラム画像には、位置合わせ誤差とジャギーが発生することがある。
【0063】
これに対しては、PC8の制御部は、照明パターンにおける干渉縞部分、即ち、照明部分と、影部分、即ち、非照明部分との境界にグラデーションを配置することにより、位置合わせ誤差軽減とアンチエイリアシングを行う。
図5(1)は、プロジェクタ(照明光源)6からの照明パターンの例であり、円内は、照明パターンの一部の拡大図である。これに対して、
図5(2)に示す照明パターンでは、照明部分と非照明部分との境界にグラデーションが配置されている。円内は同様に、照明パターンの一部の拡大図である。
【0064】
グラデーションの配置により、位置合わせ誤差が軽減され、ジャギーの発生が抑制される。
【0065】
4.実施の形態3
4.1.カラーホログラムを再生するホログラム表示システムの構成
実施の形態1及び2に係るホログラム表示システム1では、照明光は単色である。以下にて説明する実施の形態3及び4に係るホログラム表示システム1では、照明光は、RGBの照明光を含む白色光源であり、当該ホログラム表示システム1は、フルカラーホログラムを再生する。
【0066】
図6A、
図6B、
図7A、及び、
図7Bを用いて説明する、以下の実施の形態3及び4は、フルカラーホログラムを再生する、本発明に係るホログラム表示システムである。この実施の形態3及び4以外でも、別のカラー化の仕組み・構成があれば、どんな仕組み・構成でも、本発明は適用可能である。
【0067】
図6Aは、実施の形態3に係るホログラム表示システム1で用いられる赤色緑色青色(RGB)のためのCGH、及びカラーフィルタ24を模式的に示す図である。実施の形態3に係るホログラム表示システム1は、
図6Aに示すように、カラーフィルタ24を用いて、単板の干渉縞層2によりフルカラー計算機合成ホログラム(CGH)の画像を表示するものである。実施の形態3に係るホログラム表示システム1の、特に、干渉縞層2の作製では、まず、単板の干渉縞層2を空間的にRGBブロック(24r、24g、24b)に分割して各色の干渉縞を描画する。干渉縞は金属膜に形成される。干渉縞が形成された金属膜に対しては、それらRGBブロックの各々に対応した色のカラーフィルタ(24r、24g、24b)が貼り合わせられて並置される。実施の形態3に係るカラーフィルタ方式のホログラム表示システム1は、並置された干渉縞層2及びカラーフィルタ24に対して、照明光である白色光を照射することでフルカラー再生が行われる。この白色光は白色光源(照明光源)から照射される。カラーフィルタ24を通過した(若しくは通過する)各色の再生照明光が、対応したブロックをそれぞれ照明することで各色の像が再生される。
【0068】
高精度のカラーフィルタ24は様々な方法により作成することができ、例えば、画像データを3原色レーザを用いてリバーサルフィルムに直接描画するディジタル銀塩レーザプリント技術によって作成することができる。
【0069】
次に、干渉縞内に作製するガードギャップについて説明する。原理上、高反射率膜(Cr膜)面上にカラーフィルタ24を正確に装着すれば、ホログラム表示システムによるフルカラー再生が可能である。しかしながら、実際には、誤差が生じること無く干渉縞層2が形成された高反射率膜(Cr膜)とカラーフィルタ24とを貼り合わせることは、不可能であり、通常、干渉縞層2とカラーフィルタ24との位置がずれてしまう。このように干渉縞層2とカラーフィルタ24との位置にずれがあるとき、誤差部分には干渉縞の計算時(更には、記録時)と異なる波長の照明光が照射されることで色収差が生じてしまい、再生像が劣化する。
【0070】
このような再生像の劣化に対処するために、本実施の形態では、
図6B(b)に示すように、各色の干渉縞ブロックの境界に隙間18を設けて誤差に対する許容量を与えている。この隙間18をガードギャップ(Guard Gap)と称する。ここでガードギャップは全ての光を透過する。なお、
図6B(a)は、ガードギャップ18を設けていない干渉縞層2を示す図である。色収差が生じていた反射型のホログラム表示システム1の干渉縞層2に対して、ガードギャップ18を設けると、色収差の原因となっていた記録時と異なる波長の照明光を透過させてしまうので、これら照明光は再生光に影響を与えなくなる。
【0071】
なお、ホログラム表示システム1が透過型のものである場合には、ガードギャップ18は全ての光を遮断するものとして干渉縞層2に設けられる。反射型のホログラム表示システム1と透過型のホログラム表示システム1とでは、ガードギャップ18の役割が異なるため、用途に応じて設計が為される必要がある。
【0072】
また、ガードギャップ幅があまりに広いと再生像が劣化することについても、本発明者は知見を得ている。シミュレーションと光学再生を繰り返した結果、本発明者は、RGBブロックのストライプ幅については100μmが、ガードギャップ幅については50μmが、最適値であると判断している。
【0073】
実施の形態3に係るホログラム表示システム1では、以上のようにして形成される、RGBブロック(2r、2g、2b)及びガードギャップ18を含む複数の(例えば、4つの)干渉縞パターンのデータについて、コンピュータにより、
図1Aに示すような空間分割と統合を行って、統合後干渉縞パターンデータ3を形成する。つまり、複数の(例えば、4つの)、RGBブロック(2r、2g、2b)及びガードギャップ18を含むホログラム画像のための干渉縞データについて、コンピュータにより、各々の一部が所定の空間分割パターンに従って抽出され(
図1B・S04参照)、抽出された各々の干渉縞データの一部が一つに統合される(
図1B・S06参照)。
【0074】
まず、「分割前干渉縞」パターンのデータとして、例えば4つの、RGBブロック(2r、2g、2b)及びガードギャップ18を含む干渉縞パターンのデータが用意される(
図1Aの「分割前干渉縞」の行を参照)。ここで複数の(例えば、4つの)干渉縞パターンのデータの各々における、RGBブロック(2r、2g、2b)及びガードギャップ18の配置は、一つのカラーフィルタ24に適合的なものとなっている。これらの各々に対して、例えば、
図1Aの「分割後干渉縞」の行に示されるように、コンピュータにより、干渉縞パターンのデータが空間分割される。
【0075】
分割された、例えば4つの、RGBブロック(2r、2g、2b)及びガードギャップ18を含む干渉縞パターンのデータは、コンピュータにより、重畳すること無く統合されて、統合後干渉縞パターンデータ3となる。
【0076】
前述のように、
図1Aに示す干渉縞パターンでは、縦細の干渉縞部分の幅は、0.8mm程度であることが想定されている。また前述のように、干渉縞パターンのRGBブロックのストライプ幅は、100μm=0.1mm程度、ガードギャップ幅は、50μm=0.05mm程度であることが想定されている。従って、縦細の干渉縞部分の主方向と、RGBブロックのストライプの主方向とが同じであるならば、一つの縦細の干渉縞部分には、RGBブロックのストライプが6本弱程度入ることになる。よって、縦細の干渉縞部分に入るRGBブロックに拠ってもフルカラーの再生像が形成され得る。
【0077】
なお、
図6B(c)に示すように、干渉縞層2におけるRGBブロック(2r、2g、2b)のストライプは、水平のものであってもよい。即ち、RGBブロック(2r、2g、2b)のストライプは横細のものであってもよい。
図6B(c)の干渉縞層2においてもガードギャップ18が各色の干渉縞ブロックの境界に設けられることが望ましい。RGBブロック(2r、2g、2b)のストライプが水平のものである場合には、カラーフィルタのストライプも、それに合わせて水平のものになる。
【0078】
干渉縞パターンのデータへの空間分割パターンは、勿論、縦縞だけに限定されず、横縞状のものでも、格子状のものでも、その他のものでもよい。
【0079】
統合後干渉縞パターンデータ3により、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムが作成される。本実施の形態3は、このフルカラー高解像度計算機合成ホログラムが、
図2Aや
図2Bに示すホログラム表示システム1において「ホログラム4」として用いられるものである。プロジェクタ(照明光源)6の光源は白色光源である。実施の形態3に係るホログラム表示システム1は、フルカラーホログラフィを再生する。
【0080】
実施の形態3に係るホログラム表示システム1は、相応の視域角を備え、よって複数人が同時に見ることができる、フルカラー高解像度のホログラム画像を、複数、瞬時に切り替えて表示することができる。すなわち、フルカラーの動画表示が可能になる。
【0081】
5.実施の形態4
5.1.カラーホログラフィを再生するホログラム表示システムの構成
以下にて説明する実施の形態4に係るホログラム表示システム1は、転写により作製されるデニシューク型体積型ホログラムを用いるホログラム表示システムであり、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムのためのホログラム表示システムである。
【0082】
まず
図7Aは、金属膜高解像度の原版CGHの、記録材料(干渉縞形成媒体)105への転写の様子を示す概略図である。
図7Aにおいては、金属膜高解像度の原版CGHの干渉縞が形成されたクロム膜88表面を密着して覆うガラス基板90に、記録材料(干渉縞形成媒体)105が貼り付けられて、記録媒体(干渉縞形成媒体)が形成されている。また、原版CGH作成のための仮想参照光球面波の中心位置と一致するように、再生照明光源96のスペイシャルフィルタ98のピンホール位置が設定されている。
【0083】
再生照明光源96から再生照明光82が、原版CGHの干渉縞が形成されたクロム膜88表面に照射されると、再生像86を伴う再生光84が生成(再生)される。この再生光が物体光103となり、更に、再生照明光源96からの再生照明光82が同時に参照光101となって、記録材料(干渉縞形成媒体)105に干渉縞が記録される。即ち、干渉縞形成媒体である記録媒体105に、転写により、体積型屈折率分布による干渉縞が形成される。このことは、金属膜高解像度の原版CGHの転写である。
【0084】
同時に、このことは、周知であるデニシューク型の体積型ホログラムの撮影(記録)形態にて、記録材料の背面に置いた物体の物体光の光波を記録することと同じである。よって、
図7Aに示すような転写により作製されるホログラムは、体積型ホログラムとなる。
【0085】
図7Aに示す記録材料(干渉縞形成媒体)105としては、銀塩フィルムやフォトポリマなどが用いられる。
図7Aでは、記録材料(干渉縞形成媒体)105は、金属膜高解像度の原版CGHの干渉縞が形成されたクロム膜88表面を密着して覆うガラス基板90に貼り付けられているが、記録材料(干渉縞形成媒体)105は、金属膜高解像度の原版CGHの干渉縞が形成されたクロム膜88表面に、貼り付けられてもよい。
【0086】
以上のように、転写により作製されるデニシューク型の体積型ホログラムは、レーザリソグラフィにより作製される金属膜高解像度の原版CGHが、反射型ホログラムとして高効率の再生を可能にすることを利用している。
【0087】
よって、転写により作製されるデニシューク型の体積型ホログラムは、白色光源や大きい光源などの様々な光源で再生可能な転写CGHとなり得る。また、白色再生光源を用いても、転写時に利用した光(再生照明光、再生光、及び参照光)の波長のみが、再生される。このことから、以下で説明するように、転写により作製されるデニシューク型の体積型ホログラムは、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムのためのホログラム表示システムに展開することが可能となる。
【0088】
次に
図7Bを用いて、転写により作製されるデニシューク型の体積型ホログラムの、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムのためのホログラム表示システムへの展開を説明する。
図7Bは、転写により作製されるデニシューク型体積型ホログラムをフルカラーのものとする、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムの作製方法及び作製装置を示す図である。まず、原版CGH・R110r、原版CGH・G110g、及び、原版CGH・B110bは、夫々、R(赤色)G(緑色)B(青色)の各色の、CGHの干渉縞層を表している。最初に、原版CGH・R110rを、R(赤色)レーザを(
図7Aにおける)再生照明光82及び参照光101とすることにより、体積型ホログラムR(赤色)112rに転写する(記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)R(赤色)を作成する)。次に、原版CGH・R110gを、G(緑色)レーザを再生照明光82及び参照光101とすることにより、体積型ホログラムG(緑色)112gに転写する(記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)G(緑色)を作成する)。更に、原版CGH・R110bを、B(青色)レーザを再生照明光82及び参照光101とすることにより、体積型ホログラムB(青色)112bに転写する(記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)B(青色)を作成する)。
【0089】
最後に、記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)R、G及びBが重ね合わされて、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムが作製される。この
図7Bに示す作製方法では、原版CGHが3枚、転写ホログラムが3枚用いられ、転写ショット数が3回となる。勿論、転写により生成される記録材料(干渉縞形成媒体)R、G、Bの作製順序は、
図7Bに示すものと異なっていてもよい。記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)R、G及びBの、重ね合わせの順序も
図7Bに示すものと異なっていてもよい。
【0090】
本実施の形態4では、前述の、転写元である、原版CGH・R110r、原版CGH・G110g、若しくは、原版CGH・B110bの、各々の干渉縞パターンのデータについて、
図1Aに示すような、複数(例えば、4つ)に関する、空間分割と統合を行って、各色のための統合後干渉縞パターンデータ3を形成する。つまり、複数の(例えば、4つの)、原版CGH・R110r、原版CGH・G110g、若しくは、原版CGH・B110bのいずれかのための干渉縞データについて、コンピュータにより、夫々の一部が所定の空間分割パターンに従って抽出され(
図1B・S04参照)、抽出された夫々の干渉縞データの一部が一つに統合される(
図1B・S06参照)。
【0091】
まず、「分割前干渉縞」パターンのデータとして、例えば4つの、原版CGH・R110r、原版CGH・G110g、若しくは、原版CGH・B110bのいずれかのための、干渉縞パターンのデータが用意される(
図1Aの「分割前干渉縞」の行を参照)。4つのうち、一つ目の干渉縞パターン、二つ目の干渉縞パターン、三つ目の干渉縞パターン、及び、四つ目の干渉縞パターンは、R(赤色)G(緑色)B(青色)の各色において、同じホログラム画像のためのものである。ホログラム画像の数が「4」以外の数であっても同様である。
【0092】
用意される干渉縞パターンの各々に対して、コンピュータにより、例えば、
図1Aの「分割後干渉縞」の行に示されるように、干渉縞パターンのデータの空間分割が行われる。空間分割のパターンは、いずれの色のCGHの干渉縞パターンのデータに対しても同じである。
【0093】
分割された、例えば4つの、原版CGH・R110r、原版CGH・G110g、若しくは、原版CGH・B110bのいずれかのための干渉縞パターンのデータは、コンピュータにより、重畳すること無く統合されて、各色のための統合後干渉縞パターンデータ3となる。統合後干渉縞パターンデータ3は、R(赤色)G(緑色)B(青色)の、CGHの干渉縞の全てに関して作製される。
【0094】
R(赤色)G(緑色)B(青色)の各色のための統合後干渉縞パターンデータ3により、金属膜高解像度の原版CGH・R110r、原版CGH・G110g、及び、原版CGH・B110bが作製される。
【0095】
原版CGH・R110rが体積型ホログラムR(赤色)112rに転写され(即ち、記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)R(赤色)が作成され)、原版CGH・R110gが、体積型ホログラムG(緑色)112gに転写され(即ち、記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)G(緑色)が作成され)、更に、原版CGH・R110bが、体積型ホログラムB(青色)112bに転写される(記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)B(青色)が作成される)。記録後の記録材料(干渉縞形成媒体)R、G及びBが重ね合わされて、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムとされる。
【0096】
本実施の形態4は、このフルカラー高解像度計算機合成ホログラムが、
図2Aや
図2Bに示すホログラム表示システム1において「ホログラム4」として用いられるものである。プロジェクタ(照明光源)6の光源は白色光源である。実施の形態4に係るホログラム表示システム1は、フルカラーホログラムを再生する。
【0097】
なお、干渉縞データへの空間分割パターンは、勿論、縦縞だけに限定されず、横縞状のものでも、格子状のものでも、その他のものでもよい。
【0098】
図7A及び
図7Bに示す作製方法及び作製装置により、実施の形態4に係るホログラム表示システム1における、転写により作製されるデニシューク型体積型ホログラムであって、フルカラー高解像度計算機合成ホログラムが作製される。実施の形態4に係るホログラム表示システム1は、相応の視域角を備え、よって複数人が同時に見ることができる、フルカラー高解像度のホログラム画像を、複数、瞬時に切り替えて表示することができる。すなわち、フルカラーの動画表示が可能になる。
【0099】
なお、本実施の形態4の変形例として、例えば、赤色単色のための原版CGH・R110rの干渉縞パターンのデータのみについて、複数(例えば、4つ)に関する、空間分割と統合を行って、統合後干渉縞パターンデータ3を形成し、金属膜高解像度の原版CGH・R110rを作製し、当該原版CGH・R110rを体積型ホログラムR(赤色)112rに転写して、
図2Aや
図2Bに示すホログラム表示システム1において用いられる「ホログラム4」としてもよい。この場合、プロジェクタ(照明光源)6の光源は赤色光源である。このように赤色単色の光源のためのホログラム4が作製され得る。
【0100】
緑色単色の光源のためのホログラム4や、青色単色の光源のためのホログラム4も、同様にして作製され得る。
【0101】
6.他の実施の形態
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0102】
例えば、実施の形態4に係るホログラム表示システムの作製過程では、原版CGHが3枚、転写ホログラムが3枚用いられ、転写ショット数が3回となるが、用いられる転写ホログラムが1枚であってもよい。即ち、1枚の転写ホログラムに、3枚の原版CGHから転写されてもよい。
【0103】
また、フルカラーを実現する転写ホログラムを作製するにあたり、実施の形態3におけるRGBブロック及びガードギャップを含む干渉縞パターンを含む干渉縞層と、実施の形態4における転写に係る装置とが、組み合わせて用いられてもよい。
【0104】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0105】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0106】
1・・・ホログラム表示システム、
2・・・干渉縞形成媒体(干渉縞層)、
3・・・統合後干渉縞パターンデータ、
4・・・ホログラム、
6・・・プロジェクタ(照明光源)、
8・・・PC(パーソナルコンピュータ)、
10・・・HDMIケーブル、
12・・・ホログラム支持台、
14・・・プロジェクタ支持台、
16・・・照明パターン、
18・・・ガードギャップ、
24・・・カラーフィルタ、
82・・・再生照明光、
86・・・再生像、
84・・・再生光、
88・・・金属膜(クロム膜)、
90・・・ガラス基板、
96・・・再生照明光源、
94・・・観察者、
98・・・スペイシャルフィルタ、
100・・・白色光源、
101・・・照明光兼参照光、
103・・・物体光、
105・・・記録材料(干渉縞形成媒体)、
110r・・・原版CGH・R(赤色)、
110g・・・原版CGH・G(緑色)、
110b・・・原版CGH・B(青色)、
112r・・・体積型ホログラムR(赤色)、
112g・・・体積型ホログラムG(緑色)、
112b・・・体積型ホログラムB(青色)、
114・・・照明光。