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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】小動物侵入防止装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/30 20110101AFI20240813BHJP
   E04B 1/92 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A01M29/30
E04B1/92
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021106030
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023004400
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300086366
【氏名又は名称】株式会社クレアーレ
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 康裕
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3217998(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/30
E04B 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル状設備が挿入される構造物に設置される小動物侵入防止装置であって、
前記ケーブル状設備が挿入される設備用開口の一部を構成する第一開口形成部と、
前記第一開口形成部と分離可能な態様で前記設備用開口の残部を構成し、前記第一開口形成部と協働して前記設備用開口を形成する第二開口形成部と、
前記設備用開口の一部を覆う侵入防止プレートと、
前記第一開口形成部及び/又は前記第二開口形成部に設けられて、前記侵入防止プレートが固定されるプレート被締結部と、
を備えることを特徴とする小動物侵入防止装置。
【請求項2】
前記構造物に固定されるベース部を備え、
前記第一開口形成部及び/又は前記第二開口形成部は、前記ベース部に対して着脱自在となることを特徴とする、
請求項1に記載の小動物侵入防止装置。
【請求項3】
前記ベース部は、前記設備用開口の少なくとも一部の周縁近傍に沿う内縁を有しており、
前記内縁が非環状となることを特徴とする、
請求項2に記載の小動物侵入防止装置。
【請求項4】
前記ベース部の前記内縁は、前記設備用開口の一部の周縁近傍に沿うL字状又はコ字状であることを特徴とする、
請求項3に記載の小動物侵入防止装置。
【請求項5】
前記第一開口形成部及び前記第二開口形成部は、前記設備用開口の軸方向に延在する延長部を有しており、
前記プレート被締結部における前記侵入防止プレートの被締結面は、前記構造物から前記軸方向に離れた場所に配置されることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の小動物侵入防止装置。
【請求項6】
前記延長部における前記被締結面よりも前記構造物側に、前記ケーブル状設備を結束するベルトを通すためのベルト挿入部が形成されることを特徴とする、
請求項5に記載の小動物侵入防止装置。
【請求項7】
ケーブル状設備が挿入される構造物に設置される小動物侵入防止装置であって、
前記ケーブル状設備が挿入される設備用開口を構成する開口形成部と、
前記設備用開口の一部を覆う侵入防止プレートと、
前記開口形成部に設けられて、前記侵入防止プレートが固定されるプレート被締結部と、を備え、
前記プレート被締結部を利用して、一つの前記設備用開口に対して、複数枚の前記侵入防止プレートが固定されることを特徴とする小動物侵入防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物が侵入するような構造物に設置される小動物侵入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル、タワー、駅、ターミナル、橋梁、高速道路等の様々な構造物(建造物を含む)では、内外や上下階に亘って、電力を供給する電力ケーブル、コンピュータやセンサー、デジタル機器等の通信機器用の情報伝送ケーブル(光ケーブル)、ガス配管、水道管、換気ダクトなどの様々な長尺設備(以下、ケーブル状設備)が張り巡らされている。このケーブル状設備は、例えば、構造物となる外壁や基礎に設けられる専用口、点検口、換気口等に通される。また、ケーブル状設備は、構造物の上下階につながる竪抗のパイプスペースに通される。さらにケーブル状設備は、パイプスペースの開口から各階のフロアに通されて、各種電気設備や通信機器等に接続される。
【0003】
ネズミ、ハクビシン、アライグマ、イタチなどの小動物にとって、このケーブル状設備は、掴まりながら移動できる恰好の通路となる。小動物は、ケーブル状設備を利用して、外部から構造物内に侵入し、上層階に移動する。この小動物には、ネズミ等の4本足の動物に限られず、鳥類も含まれる。特にネズミは、門歯等の前歯が伸び続け、そのままでは口が閉まらなくなったり、口が開かなくなったりして餓死するため、硬い物質を噛むことで、門歯を定期的に摩滅させる習性がある。電力ケーブルや情報伝送ケーブルには、内部に金属製ワイヤーが存在しており、この金属製ワイヤーは、ネズミにとって門歯を摩滅させる最適材料となる。構造物内に侵入したネズミが、電力ケーブルや情報伝送ケーブルを噛むことで金属製ワイヤーに達すると、電力供給異常や情報通信遮断等が生じる。例えば鉄道用の構造物であれば制御室や信号所、機器室、変電所などで電力異常や通信不具合が生じると、電車が全線停止する。航空管制用設備の場合は管制不能に陥る。高速道路等の場合ETC課金システムが機能不全になる。音楽スタジオでは、デジタル機器の故障や情報通信遮断等が生じる。ビル、住宅等のあらゆる建造物においては、漏電火災の発生要因となる。また、コンピュータシステムがダウンすると、企業活動が停止する等の甚大な被害が発生する。
【0004】
このような被害を防止するために、パイプスペースの途中に、小動物侵入防止用の障壁を設置し、この障壁に形成される穴にケーブル状設備を通すことで、小動物を自由に徘徊させない構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3218695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の小動物侵入防止用の障壁は、新築時に予め設置しておく必要があり、事後的に障壁を設置しようとすると、ケーブル状設備の配置をやりなおす必要があるという問題があった。
【0007】
また、情報通信機器の台数増や、構造物をセンシングするセンサーの増大に伴い、ケーブル状設備の入れ替えや増設が頻繁に行われる。しかしながら、ケーブル状設備の納入業者は小動物に関する知識が乏しい。結果、納入業者が、既に設置されている小動物侵入防止用の障壁を適切に利用できないという問題があった。更に、ケーブル状設備におけるケーブルの本数や太さはバラバラであるため、その隙間を適切に塞ぐことが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、事後的な設置を可能とし、また、ケーブル状設備のメンテナンスを容易とする小動物侵入防止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本手段は、ケーブル状設備が挿入される構造物に設置される小動物侵入防止装置であって、前記ケーブル状設備が挿入される設備用開口の一部を構成する第一開口形成部と、前記第一開口形成部と分離可能な態様で前記設備用開口の残部を構成し、前記第一開口形成部と協働して前記設備用開口を形成する第二開口形成部と、前記設備用開口の一部を覆う侵入防止プレートと、前記第一開口形成部及び/又は前記第二開口形成部に設けられて、前記侵入防止プレートが固定されるプレート被締結部と、を備えることを特徴とする小動物侵入防止装置である。
【0010】
上記小動物侵入防止装置に関連して、前記構造物に固定されるベース部を備え、前記第一開口形成部及び/又は前記第二開口形成部は、前記ベース部に対して着脱自在となることを特徴とできる。、
上記小動物侵入防止装置に関連して、前記ベース部は、前記設備用開口の少なくとも一部の周縁近傍に沿う内縁を有しており、前記内縁が非環状となることを特徴とできる。
【0011】
上記小動物侵入防止装置に関連して、前記ベース部の前記内縁は、前記設備用開口の一部の周縁近傍に沿うL字状又はコ字状であることを特徴とできる。
【0012】
上記小動物侵入防止装置に関連して、前記第一開口形成部及び前記第二開口形成部は、前記設備用開口の軸方向に延在する延長部を有しており、前記プレート被締結部における前記侵入防止プレートの被締結面は、前記構造物から前記軸方向に離れた場所に配置されることを特徴とできる。
【0013】
上記小動物侵入防止装置に関連して、前記延長部における前記被締結面よりも前記構造物側に、前記ケーブル状設備を結束するベルトを通すためのベルト挿入部が形成されることを特徴とできる。
【0014】
上記目的を達成する本手段は、ケーブル状設備が挿入される構造物に設置される小動物侵入防止装置であって、前記ケーブル状設備が挿入される設備用開口を構成する開口形成部と、前記設備用開口の一部を覆う侵入防止プレートと、前記開口形成部に設けられて、前記侵入防止プレートが固定されるプレート被締結部と、を備え、前記プレート被締結部を利用して、一つの前記設備用開口に対して、複数枚の前記侵入防止プレートが固定されることを特徴とする小動物侵入防止装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、事後的な設置を可能とし、また、ケーブル状設備のメンテナンスを容易とする小動物侵入防止装置を得ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る小動物侵入防止装置の全体構成を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図である。
図2】同小動物侵入防止装置のベース部を示す(A)平面図、(B)正面図、(C)左側面図である。
図3】同小動物侵入防止装置の第一開口形成部を示す(A)平面図、(B)左側面図、(C)正面図、(D)背面図であり、更に、同小動物侵入防止装置の第一プレート被締結部を示す(E)平面図、(F)左側面図、(G)正面図である。
図4】同第一開口形成部と第一プレート被締結部を組み立てる態様を示す(A)は正面図、(B)は(A)のA-A矢視断面図、(C)は(A)のC-C矢視断面図であり、更に、同第一開口形成部と第二開口形成部を連結する態様を示す(D)は連結前の平面図、(E)は連結後の平面図である。
図5】(A)は、同ベース部を構造物に固定する態様を示す正面図であり、(B)は同ベース部に第一開口形成部と第二開口形成部を固定する態様を示す正面図である。
図6】(A)は、同ベース部を構造物に固定する態様を示す斜視図であり、(B)は同ベース部に第一開口形成部と第二開口形成部を固定する態様を示す斜視図である。
図7】(A)から(C)は、侵入防止プレートを示す正面図である。
図8】(A)は第一開口形成部と第二開口形成部に対して、結束バンドでケーブル状設備を固定する態様を示す正面図であり、(B)は、更に侵入防止プレートを固定する態様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の小動物侵入防止装置1の全体構造を示す。本小動物侵入防止装置1は、構造物Xに形成される構造物側開口XLに対して設置される。この構造物側開口XLには、電力を供給する電力ケーブルや、コンピュータやセンサー等の通信機器用の情報伝送ケーブル、ガス配管、水道管、換気ダクトなどの様々な長尺設備(以下、ケーブル状設備P/図8参照)が挿入される。なお、ここでは、鉛直方向に延在する壁状の構造物X及び構造物側開口XLに対して、小動物侵入防止装置1を設置する場合を例示する。結果、本実施形態における図中における上下方向は、小動物侵入防止装置1の鉛直方向となり、図中における左右方向は、小動物侵入防止装置1の左右方向(幅方向)となる。一方で、この小動物侵入防止装置1は、水平方向に延在する構造物Xや構造物側開口XLに対して設置することも可能であり、その場合は、図中における上下方向は、小動物侵入防止装置1の前後方向(奥行方向)となり、図中における左右方向は、小動物侵入防止装置1の左右方向(幅方向)となる。
【0019】
<全体構成>
小動物侵入防止装置1は、構造物Xの壁面に固定されるベース部10と、ベース部10に着脱自在に固定される第一開口形成部20Aと、ベース部10に着脱自在に固定される第二開口形成部20Bと、第一開口形成部20Aに設けられる第一プレート被締結部60Aと、第二開口形成部20Bに設けられる第二プレート被締結部60Bと、第一プレート被締結部60A及び/又は第二プレート被締結部60Bに固定される侵入防止プレート70(図7参照)を備える。なお、本小動物侵入防止装置1では、第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bが、一つのセット(以下、開口形成セット20)となって互いに連結される。開口形成セット20は環状となることから、内部に設備用開口15を形成する。本実施形態では、単一の構造物側開口XLに対して、合計2セットの開口形成セット20が並列配置される態様となる。ただし、この開口形成セット20のセット数は特に限定されない。
【0020】
<ベース部>
図2に示されるように、ベース部10は、全体視すると矩形状の板材で構成されており、ここでは金属プレートを用いる。ベース部10には、その周縁に沿って、締結治具となるボルト12(図1参照)によって構造物Xに固定するための締結孔13が複数形成される。締結治具としては、コンクリートビスの他に、構造物Xのコンクリート躯体内にねじ込まれるアンカーボルト等を利用できる。ベース部10は、内部において、矩形状のベース側開放空間14が2つ並列形成される。各ベース側開放空間14の少なくとも一部(ここでは大半)は、後に詳述する開口形成セット20による設備用開口15と重畳している。更に、各ベース側開放空間14の少なくとも一部(ここでは大半)は、構造物側開口XLと重畳している。
【0021】
各ベース側開放空間14は、ベース部10に完全に取り囲まれていない。ここでは上側が開放されている。換言すると、ベース部10には、設備用開口15の少なくとも一部の周縁近傍に沿う内縁16を有するが、この内縁16は非環状(つまり、一体的な部材で閉じられた縁ではない状態)となっており、ここでは上方が解放されるコ字形状となる。なお、この内縁16の形状(ベース側開放空間14の形状)は特に限定されず、L字形状(矩形の2辺が解放される形状)としてもよく、その他の形状であってもよい。
【0022】
図5(A)に示すように、非環状のベース側開放空間14によって、構造物側開口XLに予め設置されるケーブル状設備Pとの干渉を回避しながら、必要に応じてケーブル状設備Pを移動させつつ、ケーブル状設備Pをベース側開放空間14内に位置決め可能となる。結果、ベース部10を構造物Xに容易に固定できる。
【0023】
ベース部10は、構造物Xとは反対側の面において、開口形成セット20に対する係合治具となる雌ねじ体18が立設される。この雌ねじ体18と、これに螺合するナット58を利用して、開口形成セット20が、ベース部10に対して着脱自在に固定される。なお、本実施形態では、開口形成セット20と係合するためのすべての雌ねじ体18が、単一のベース部10に一体的に設けられている。結果、複数の雌ねじ体18の相対位置の誤差が小さくて済むので、現場での作業時間を短縮できる。
【0024】
<開口形成セット及びプレート被締結部>
図3(A)から(D)には第一開口形成部20Aを示し、図3(E)から(G)には第一プレート被締結部60Aを示す。なお、第二開口形成部20Bと第二プレート被締結部60Bは、第一開口形成部20A及び第一プレート被締結部60Aと線対称形状である。従って、ここでは第一開口形成部20Aと第一プレート被締結部60Aの詳細構造を説明し、第二開口形成部20Bと第二プレート被締結部60Bは、以下の説明文の「第一」を「第二」に置換し、符号「A」を「B」に置換して援用することで、説明を省略する。
【0025】
(第一開口形成部)
図3(A)から(D)に示すように、第一開口形成部20Aは、設備用開口15の一部(ここでは左半分)を構成する。具体的に第一開口形成部20Aは、第一部分筒22Aを有する。図3(B)に示すように、この第一部分筒22Aは、金属製の帯状部材を、帯幅方向Wに折り線が形成されるようにコ字形状に二段階に折り曲げて構成される。これにより第一部分筒22Aは、設備用開口15の左側の縁に相当する側辺領域、設備用開口15の上側の縁に相当する(左半分の)上辺領域、設備用開口15の下側の縁に相当する(左半分の)下辺領域を有することになる。また、第一部分筒22Aの帯幅方向Wは、設備用開口15の軸方向Jと一致する。
【0026】
第一部分筒22Aの帯長手方向Lの両端は、更に上下方向に拡張する方向に90度で折り返されて上下一対の第一当接部24Aが形成される。この一対の第一当接部24Aは、第二開口形成部20B側の第二部分筒22Bの第二当接部24Bと当接可能となっている。図3(B)に示すように、第一当接部24Aには、第二当接部24Bとボルト54及びナット56で締結可能な第一締結孔26Aが形成される。図4(D)及び(E)に示すように、第一開口形成部20Aの第一部分筒22Aの第一当接部24Aと、右半分を構成する第二開口形成部20Bの第二部分筒22Bの第二当接部24Bを、互いに当接させてから、第一締結孔26Aと第二締結孔26Bに、ボルト54を挿入してナット56で締結する。このように、第一開口形成部20Aの第一部分筒22Aを、互いに分離可能な状態とすることで、事後的に、第一開口形成部20Aの第一部分筒22Aを分解可能となっている。なお、ここでいう「分離可能」とは、ボルト54やナット56等の締結治具を利用して、第一開口形成部20Aの第一部分筒22Aを互いに着脱自在にする態様の他に、爪等の係合機構や凹凸の嵌め合い機構によって、第一開口形成部20Aの第一部分筒22Aを互いに着脱自在にするような態様を含む。
【0027】
結果、設備用開口15の一部を構成する第一部分筒22Aと、設備用開口15の残部を構成する第二部分筒22Bが協働することで、矩形筒形状となる完全筒が構成され、その内部が設備用開口15となる。なお、本実施形態では、第一部分筒22Aと第二部分筒22Bが線対称形状であることから、第一部分筒22Aが設備用開口15の左半分を構成し、第二部分筒22Bが設備用開口15の左半分を構成しているが、その構成比率は特に限定されず、左右非対称であってもよい。更に、分割方向は左右ではなく、上下方向に分割されていてもよく、また更に、第二部分筒が更に小片に分割される構造(つまり、三分割以上の構造)であってもよい。
【0028】
なお、この第一部分筒22Aと第二部分筒22Bは、本発明における「設備用開口の軸方向に延在する延長部」に相当しており、ベース部10から軸方向手前側に突出する構造となる。これにより、後述する第一プレート被締結部60Aを、ベース部10(または構造物側開口XL)から離反させることができる。その結果として、第一プレート被締結部60Aの少なくとも一部を、構造物側開口XL及び/設備用開口15の外縁よりも外側に配置できる。その分だけ、設備用開口15の占有領域を広く確保できる。
【0029】
図3(A)から(D)に戻って、第一開口形成部20Aは、ベース部10に対する固定部(ベース部固定部)に相当する第一奥側フランジ部30Aを有する。この第一奥側フランジ部30Aは、第一部分筒22Aの側辺領域における帯幅方向Wのベース部10側に連続するように一体的に形成される。この第一奥側フランジ部30Aは、ベース部10の平面と平行となる帯状のプレート材で構成されており、第一部分筒22Aを基準として、設備用開口15と反対側(ここでは左側)に拡張するように延在する。より詳細に、図3(D)に示すように、設備用開口15を背面側から軸視する際に、第一奥側フランジ部30Aの帯長手方向が上下方向、帯幅方向が左右方向となる。この第一奥側フランジ部30Aには、ベース部10の雌ねじ体18が挿入される第一締結孔32Aが複数形成される。ベース部10と第一奥側フランジ部30Aを、雌ねじ体18及びこれに螺合するナット58(図1参照)を利用して締結することで、第一開口形成部20Aがベース部10に固定される。
【0030】
第一開口形成部20Aは、更に、第一手前側フランジ部40Aを有する。この第一手前側フランジ部40Aは。第一プレート被締結部60Aを保持・固定する部材(第一プレート被締結部固定部)に相当する。第一手前側フランジ部40Aは、第一部分筒22Aの側辺領域、上辺領域、下辺領域のそれぞれに計3か所設置される。各々の第一手前側フランジ部40Aは、第一部分筒22Aにおける帯幅方向Wの中央近傍から立設するように、溶接等によって一体的に形成される。第一手前側フランジ部40Aは、ベース部10の平面と平行となる帯状のプレート材で構成されており、第一部分筒22Aを基準として、内側の設備用開口15と反対側(外側)に拡張するように延在する。この第一手前側フランジ部40Aには、第一プレート被締結部60Aを固定するためのタッピングねじ48(図4(A)から(C)参照)が挿入される第一締結孔42Aが複数形成される。第一手前側フランジ部40Aの手前側(ベース部10と反対側)に、第一プレート被締結部60Aを配置してから、背面側から挿入されるタッピングねじ48によって、第一手前側フランジ部40Aと第一プレート被締結部60Aを固定する。
【0031】
なお、第一部分筒22Aの側辺領域に設けられる第一手前側フランジ部40Aに、タッピングねじ48をアクセスさせようとすると、それよりも背面側に位置する第一奥側フランジ部30Aが邪魔になる。そこで、図3(D)に示すように、第一奥側フランジ部30Aには、第一締結孔42Aと同軸位置に形成されて、タッピングねじ48全体が通過可能となる第一アクセス用開口34Aが形成される。従って、作業者は、図4(B)に示すように、タッピングねじ48を、第一奥側フランジ部30Aの第一アクセス用開口34Aを通過させながら、第一手前側フランジ部40Aの第一締結孔42Aに挿入して、第一プレート被締結部60Aを固定できる。
【0032】
第一部分筒22Aにおいて、第一手前側フランジ部40A(又はベース部10や構造物X)と第一奥側フランジ部30Aの間には第一ベルト挿入口28Aが形成される。第一ベルト挿入口28Aは、ケーブル状設備Pを結束するベルト(結束バンド)Q(図8(A)参照)を通すためのベルト挿入部となる。この第一ベルト挿入口28Aは、第一部分筒22Aの帯長手方向(筒の周方向)に沿って複数配置されており、作業者が、任意の第一ベルト挿入口28Aを選択して利用できる。
【0033】
(第一プレート被締結部)
図3(E)から(G)に示すように、第一プレート被締結部60Aは、コ字状の部材で構成される。具多的に第一プレート被締結部60Aは、設備用開口15の左側の縁に配置される第一側辺領域62A、設備用開口15の上側の縁に配置される第一上辺領域63A、設備用開口15の下側の縁に配置される第一下辺領域64Aを有する。なお、ここでは、第一側辺領域62A、第一上辺領域63A、第一下辺領域64Aが予め一体化されている場合を例示しているが、それぞれが分割されていてもよい。
【0034】
図4(A)から(C)に示すように、第一側辺領域62A、第一上辺領域63A、第一下辺領域64Aのそれぞれは、対応する三ケ所の第一手前側フランジ部40Aに対して、タッピングネジ48で固定される。
【0035】
第一プレート被締結部60Aは、自身を第一手前側フランジ部40Aに固定するタッピングネジ48や、後述する侵入防止プレート70が固定されるタッピングネジ80が螺合されることから、主として木材で構成されている。しかし、その材料は特に限定されない。例えば、第一プレート被締結部60Aが、その強度・耐久性を向上させるために強化繊維を含むことが好ましい。複数の木材シートと、複数のガラスクロス(シート)を、タッピングネジ48,80の進行方向に交互に積層させて、互いに接着剤で固化(一体化)することで、第一プレート被締結部60Aを構成することが好ましい。
【0036】
第一プレート被締結部60Aにおける最も手前側(第一手前側フランジ部40Aと反対側)の面は、侵入防止プレート70が載置・固定される第一被締結面66Aとなる。この第一被締結面66Aは、設備用開口15(第一部分筒22A)における手前側の縁と同じ位置か、それよりも手前側に突出した位置となる。結果として、第一被締結面66Aは、構造物X(またはベース部10)の壁面から面直角方向に離れた位置となっており、このようにすると、侵入防止プレート70の一部が、第一被締結面66Aよりも外側に飛び出す場合(図8参照)であっても、周囲の構造物X(またはベース部10)との干渉を低減できることになる。特に第一被締結面66Aは、構造物Xから4cm以上離すことが好ましく、より望ましくは、6cm以上離反させることが望ましい。
【0037】
更に、第一被締結面66Aは、設備用開口15(第一部分筒22A)の周囲に沿って配置される帯状領域を有する。従って、この帯状領域内で任意の場所を選択し、後述するタッピングネジ80を利用して、複数枚の侵入防止プレート70を好みの位置に固定することで、設備用開口15とケーブル状設備Pの間に形成される余裕隙間を自在に埋めることが可能となっている。なお、本実施形態では、第一被締結面66Aによって提供される帯状領域が、設備用開口15の全周を取り囲む場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、一部を取り囲むようにしてもよい。この際、矩形の設備用開口15の場合、少なくとも対辺(両側辺の二か所、上下辺の二か所)に沿って第一被締結面66Aの帯状領域を設けることが好ましい。また、第一被締結面66Aは、設備用開口15の周囲の複数個所に分割配置されていてもよい。
【0038】
なお、繰り返しになるが、上述の第一開口形成部20A及び第一プレート被締結部60Aの説明文において、「第一」を「第二」に置換し、符号「A」を符号「B」に置換すれば、第二開口形成部20Bと第二プレート被締結部60Bの説明文となることから、適宜読み替えて援用できる。
【0039】
<侵入防止プレート>
図7に示すように、侵入防止プレート70は、金属製の板状部材で構成されており、対象物となる小動物の歯の咬む力や首の力なので、変形や破壊が生じない程度の強度を有する。錆びにくい材料として、ステンレスが好ましい。強度面から、アルミを除く金属製の場合では、厚みは0.6mm以上が好ましく、アルミの場合は1.0mm以上が好ましい。侵入防止プレート70は、複数の孔部72を有する。この孔部72は、侵入防止プレート70を貫通する。本実施形態では、複数の孔部72が格子状配置または千鳥状配置となっている。この孔部72は、図8(B)に示すように、侵入防止プレート70をタッピングネジ80で第一プレート被締結部60Aや第二プレート被締結部60Bに固定する場合に利用される。更に、この孔部72は、複数の侵入防止プレート70同士をタッピングネジ80や他の治具で結合する際にも利用される。
【0040】
図7(A)に示す侵入防止プレート70は、外形が矩形かつ長尺のものを示す。図7(B)に示す侵入防止プレート70は、外形が矩形かつ図7(A)よりも短尺のものを示す。図7(C)に示す侵入防止プレート70は、矩形における長手方向の一方の端がV字形状に凸となり、他方の端がV字形状に凹となる。このような、様々な形状の侵入防止プレート70を、複数枚で、適宜組み合わせることで、図8(B)に示すように、ケーブル状設備Pの周囲に形成される隙間を埋めることができる。なお、この侵入防止プレート70の形状は特に限定されず、様々な形状を採用できる。
【0041】
なお、特に図示しないが、侵入防止プレート70の周縁は、板材のエッジが丸まるように研磨加工されるか、内側に折り返されることが好ましい。ケーブル状設備Pを損傷させることを防止できる。
【0042】
<組み立て及び設置工程の説明>
次に、小動物侵入防止装置1の組み立て及び設置工程を説明する。まず、図4(A)から(C)に示すように、タッピングねじ48を利用して、第一開口形成部20Aに対して第一プレート被締結部60Aを固定し、第二開口形成部20Bに対して第二プレート被締結部60Bを固定する。
【0043】
次いで、図5(A)及び図6(A)に示すように、作業現場となる構造物Xに対して、ボルト12を利用してベース部10を固定する。この際、ベース部10の2つのベース側開放空間14が、構造物側開口XLと重畳するように位置決めされる。構造物側開口XLに、既にケーブル状設備Pが配置されている場合は、ケーブル状設備Pを適宜移動させることで、2つのベース側開放空間14内に適切に分配する。
【0044】
次いで、図5(B)及び図6(B)に示すように、雌ねじ体18及びこれに螺合するナット58を利用して、第一プレート被締結部60Aが保持される第一開口形成部20Aをベース部10に固定し、第二プレート被締結部60Bが保持される第二開口形成部20Bをベース部10に固定する。その際、第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bによって、ケーブル状設備Pを挟み込むようにすることで、設備用開口15内にケーブル状設備Pを位置決めする。
【0045】
その後、図4(D)から(E)に示すように、ボルト54およびナット56を利用して、上下二箇所において、第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bを連結して固定する。これにより、内部に設備用開口15を有する開口形成セット20が完成する。なお、ここでは、ベース部10に固定した後に、最後にボルト54およびナット56で第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bを締結する場合を説明するが、本発明はこれに限定されない。ケーブル状設備Pを挟み込むようにして、このボルト54およびナット56で第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bを筒状に締結し、この開口形成セット20を、まとめてベース部10に固定することもできる。
【0046】
その後、図8(A)に示すように、結束バンドQ、第一ベルト挿入口28A、第二ベルト挿入口28Bを利用して、設備用開口15の周壁に、ケーブル状設備Pを固定する。これにより、ケーブル状設備Pの位置・姿勢を安定させることができ、事後的に移動してケーブル状設備Pの周囲に想定外の空間が形成されることを抑止する。
【0047】
最後の、図8(B)に示すように、第一プレート被締結部60Aと第二プレート被締結部60Bに対して、複数枚の侵入防止プレート70を固定することで、設備用開口15とケーブル状設備Pの間に形成される余裕隙間を埋める。これにより、小動物の侵入が防止される。なお、小動物侵入防止装置1を分解する場合は、上記説明と反対の手順で作業すればよい。
【0048】
以上の通り、本実施形態の小動物侵入防止装置1によれば、設備用開口15を構成する第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bが互いに分離可能な状態となっているので、事後的に、ケーブル状設備Pを設備用開口15内に自在に挿入したり、また、ケーブル状設備Pを取り外したりできる。結果、ケーブル状設備Pのメンテナンスが容易になる。
【0049】
また、この小動物侵入防止装置1では、複数の設備用開口15における一つの設備用開口15(単位設備用開口)に対して、その周囲に形成される第一被締結面66Aの帯状領域を利用して、複数枚の侵入防止プレート70を好みの場所に固定できる。ケーブル状設備Pの本数や直径は、構造物Xによって様々であることから、設備用開口15とケーブル状設備Pの間に形成される余裕隙間の形状を予め把握できない。そこで本実施形態のように、一つの設備用開口15に対して、作業現場において余裕隙間の形状を確認しながら、複数枚の侵入防止プレート70を組み合わせることで、その余裕隙間を自在に埋める。特に、複数サイズの侵入防止プレート70を組み合わせて単位設備用開口15の隙間を埋めることが、作業効率上最も好ましい。この際、複数枚の侵入防止プレート70を、互いに一部同士が重なり合うように組み合わせて固定することが好ましく、重なり合う分だけ、侵入防止プレート70の強度も向上する。
【0050】
更にこの小動物侵入防止装置1では、構造物Xに固定されるベース部10に対して、第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bが着脱自在となっている。一般的に、構造物Xに対して、ベース部10を固定したり、構造物Xからベース部10を取り外したりする作業は、構造物Xの素材や強度も様々であることから、専門的な知識や経験を要する。この小動物侵入防止装置1では、ベース部10を構造物Xに固定する作業は初回に限定され、その後は、ベース部10に対して第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bを着脱するだけで、ケーブル状設備Pの交換や追加作業を容易に行うことができる。結果、ケーブル状設備P側のメンテナンス業者のみで、小動物侵入防止装置1を正しく分解・再設置を行うことが可能となる。これは、ケーブル状設備P側のメンテナンス業者によって無用に小動物侵入防止装置1が破壊されるリスクを低減する。
【0051】
更に、ベース部10から第一開口形成部20Aや第二開口形成部20Bを独立させることで、仮に、第一開口形成部20Aや第二開口形成部20B、第一プレート被締結部60Aや第二プレート被締結部60Bに何らかの損傷が生じた場合であっても、各部材を簡単に交換することが可能となる。
【0052】
更に本小動物侵入防止装置1では、第一開口形成部20Aと第二開口形成部20Bが、設備用開口15を軸方向に延長させる延長部を兼ねる。結果、第一プレート被締結部60Aと第二プレート被締結部60Bを、構造物Xやベース部10から手前側にオフセットさせることできる。結果、第一プレート被締結部60Aと第二プレート被締結部60Bの周囲に余裕空間が形成されるので、作業効率が向上する。更に、この延長部を利用して、結束バンドQを通すための第一ベルト挿入口28A、第二ベルト挿入口28Bが設けられているので、地震や振動などによるケーブル状設備Pの事後的な移動を抑制できる。
【0053】
なお、上記実施形態では、第一開口形成部20A及び第二開口形成部20Bと、第一プレート被締結部60A及び第二プレート被締結部60Bが別部材となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、両者を一体的に構成できる。例えば、第一開口形成部20A及び第一プレート被締結部60Aを、共通の木製で構成することで部材的に一体化可能である。
【0054】
また更に、上記実施形態では、第一開口形成部20A及び第二開口形成部20Bを、ベース部10を介在させて構造物Xに固定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、第一開口形成部20A及び第二開口形成部20Bを、構造物Xに直接固定することもできる。
【0055】
更にまた、上記実施形態では、第一開口形成部20A及び第二開口形成部20Bを組み合わせて一つの設備用開口15を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、枠状に構成される単一部材(互いに分離不能な枠体)の開口形成部によって、設備用開口15を形成する場合を含む。
【0056】
本発明の小動物侵入防止装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 小動物侵入防止装置
10 ベース部
12 ボルト
13 締結孔
14 ベース側開放空間
15 設備用開口
20 開口形成セット
20A 第一開口形成部
20B 第二開口形成部
22A 第一部分筒
22B 第二部分筒
28A 第一ベルト挿入口
28B 第二ベルト挿入口
30A 第一奥側フランジ部
30B 第二奥側フランジ部
32A 第一締結孔
32B 第二締結孔
34A 第一アクセス用開口
34B 第二アクセス用開口
40A 第一手前側フランジ部
40B 第二手前側フランジ部
42A 第一締結孔
42B 第二締結孔
48 タッピングネジ
54 ボルト
56 ナット
58 ナット
60A 第一プレート被締結部
60B 第二プレート被締結部
62A 第一側辺領域
62B 第二側辺領域
63A 第一上辺領域
63B 第二上辺領域
64A 第一下辺領域
64B 第二下辺領域
66A 第一被締結面
66B 第二被締結面
70 侵入防止プレート
72 孔部
80 タッピングネジ
P ケーブル状設備
Q 結束バンド
X 構造物
XL 構造物側開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8