(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】アイソレーター内において滅菌物品の搬送及び除去を行うコンテナー及び方法、並びにアイソレーターとアイソレーターにドッキングしたコンテナーとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
B01L 1/00 20060101AFI20240813BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B01L1/00 C
B65B55/04 M
(21)【出願番号】P 2022521257
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 DE2020200080
(87)【国際公開番号】W WO2021069034
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】102019007042.9
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518277044
【氏名又は名称】株式会社Atec Japan
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン ハンス-ワーナー
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016004200(DE,A1)
【文献】特開平02-015993(JP,A)
【文献】特表2015-508460(JP,A)
【文献】特表2016-536227(JP,A)
【文献】欧州特許第02823828(EP,B1)
【文献】特開昭62-219509(JP,A)
【文献】特表2019-509219(JP,A)
【文献】特表2019-501005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 99/00
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソレーター(14)のクリーンルーム(12)内において無菌材料の搬送及び該
無菌材料の除去を行うコンテナー(10)であって、
開口部(26)、及び、
ラピッドトランスファーポートシステムのコンテナー側部分(18)であって、前記開口部(26)を閉鎖するコンテナー蓋(20)と、該コンテナー(10)を前記ラピッドトランスファーポートシステム
のアイソレーター側部分(16)にドッキングする手段(46)とを備えるコンテナー側部分(18)、を備え、かつ、
該コンテナー(10)に対して移動可能な材料受け部(30)であって、搬送位置においては閉鎖した該コンテナー(10)内に全体が位置しており、該コンテナー(10)がドッキングされ、前記コンテナー蓋(20)が開いているとき、該材料受け部(30)が前記開口部(26)を通じて前記クリーンルーム(12)内に少なくとも部分的に突出する除去位置へと、リニアガイド(34)に沿って移動可能である、材料受け部(30)をさらに備えたコンテナー(10)において、
強磁性体及び/又は永久磁
石である少なくとも1つの磁性体(62)を
有し、
前記磁性体(62)は、前記材料受け部(30)に取り付けられるとともに該コンテナー(10)の周壁(22)の近くに配置されており、少なくとも1つの磁石(64)又は強磁
性体によって前記リニアガイド(34)に対して平行に移動可能であり、
少なくとも1つの前記磁石(64)又は強磁
性体は、
オペレーターの前記アイソレーター(14)への
立入を伴わずに前記材料受け部(30)を前記除去位置へと移動させること及び前記搬送位置へと戻すことを行うために、該コンテナー(10)の外部で前記周壁(22)に沿って直線移動し、前記周壁(22)を通じて磁気引力によって非接触で前記磁性体(62)に作用する、コンテナー。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナー(10)であって、2つの対向する端部と、前記2つの対向する端部の間のコンテナー断面とを
有し、前記材料受け部(30)が前記搬送位置にあるとき、前記開口部(26)は一方の前記端部に配置されており、前記磁性体(62)は他方の前記端部の近くに配置される、コンテナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンテナー(10)であって、前記周壁(22)は、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼からなる、コンテナー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のコンテナー(10)であって、少なくとも1つの前記磁性体(62)、及び/又は、少なくとも1つの前記磁石(64)
又は強磁性体は、前記周壁(22)と前記磁性体(62)及び/又は前記磁石(64)
又は強磁性体の対向する表面との間に空隙(68、76)が存在するように、前記周壁(22)から離れている、コンテナー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のコンテナー(10)であって、前記周壁(22)が円筒形であり、少なくとも1つの前記磁性体(62)及び/又は少なくとも1つの前記磁石(64)
又は強磁性体は、前記周壁(22)に対向して円弧状の断面を有する表面を有する、コンテナー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のコンテナー(10)であって、少なくとも1つの前記磁性体(62
)は、耐錆性材料から作製される被覆(80)
に包まれる、コンテナー。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコンテナー(10)であって、少なくとも1つの前記磁性体(62)は、鉄又は鋼からなる、コンテナー。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコンテナー(10)であって、少なくとも1つの前記磁性体(62)及び/又は少なくとも1つの前記磁石(64)
又は強磁性体は、部分的に又は全体的に、希土類の永久磁
石又はフェライト材料からなる、コンテナー。
【請求項9】
請求項8に記載のコンテナー(10)であって、前記磁性体(62)の前記希土類の永久磁
石は、SH、UH又はEHの記号が付いた少なくとも1つのネオジム(NdFeB)磁石を含む、コンテナー。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のコンテナー(10)であって、少なくとも1つの前記磁性体(62)は、前記材料受け部(30)の下方に配置される、コンテナー。
【請求項11】
クリーンルーム(12)を有するアイソレーター(14)と、ラピッドトランスファーポートシステムのアイソレーター側部分(18)と、該アイソレーター(14)にドッキングした請求項1から1
0のいずれか一項に記載のコンテナー(10)とから構成される組み合わせにおいて、
少なくとも1つの磁石(64)又は強磁
性体を
有し、
少なくとも1つの前記磁石(64)又は強磁
性体は、前記コンテナー(10)の外部で該コンテナー(10)の前記周壁(22)に沿って直線移動可能であり、その直線移動時に、少なくとも1つの
前記磁性体(62)を伴って前記リニアガイド(34)に対して平行に移動するために、また、
オペレーターの前記アイソレーター(14)への
立入を伴わずに、前記材料受け部(30)を前記除去位置へと移動させること及び前記搬送位置へと戻すことを行うために、前記周壁(22)を通じて磁気引力によって非接触で前記少なくとも1つの前
記磁性体(62)に作用する、組み合わせ。
【請求項12】
請求項11に記載の組み合わせであって、前記コンテナー(10)を支持するとともに、前記少なくとも1つの磁石(64)又は強磁
性体のためのリニアガイド(72)を有する、テーブル(58)又はトロリー
を有する、組み合わせ。
【請求項13】
コンテナー(10)内の無菌材料を搬送するとともに、アイソレーター(14)のクリーンルーム(12)内の前記
無菌材料を除去する方法であって、
前記コンテナー(10)は、開口部(26)と、前記開口部(26)を閉鎖するコンテナー蓋(20)を有するラピッドトランスファーポートシステムのコンテナー側部分(18)と、前記コンテナー(10)に対して移動可能な材料受け部(30)とを備え、
前記アイソレーター(14)は、前記コンテナー(10)をドッキングするための前記ラピッドトランスファーポートシステム
のアイソレーター側部分(16)を備え、
搬送位置にある前記材料受け部(30)は、閉鎖した前記コンテナー(10)の内部に位置しており、前記コンテナー(10)がドッキングしかつ前記コンテナー蓋(20)が開いているとき、前記
無菌材料を除去するための除去位置へとリニアガイド(34)に沿って移動し、前記除去位置において、前記材料受け部
(30)は、前記開口部(26)を通じて前記クリーンルーム(12)へと少なくとも部分的に突出している、方法において、
前記コンテナー(10)をドッキングしかつ前記コンテナー蓋(20)を開いた後、前記材料受け部(30)上で前記コンテナー(10)の周壁(22)の近くに取り付けられ
る強磁性体及び/又は永久
磁石である少なくとも1つの磁性体(62)によって、及び、前記コンテナー(10)の外部で前記周壁(22)に沿って直線移動するとともに、前記アイソレーター(14)への
オペレーターの立入を伴わずに、前記周壁(22)を通じて磁気引力によって非接触で少なくとも1つの前
記磁性体(62)に作用する少なくとも1つの磁石(64)又は強磁
性体によって、前記材料受け部(30)は、前記リニアガイド(34)に沿って前記除去位置へと移動する及び前記搬送位置へと戻る、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のコンテナーと、請求項12のプリアンブルに記載の、アイソレーター及びアイソレーターにドッキングしたそのようなコンテナーとの組み合わせと、請求項14のプリアンブルに記載の方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品業界及び研究室において、クリーンルームを囲むアイソレーターがしばしば必要になる。「アイソレーター」という用語は、RABSシステムも本特許出願の範囲内に含むことを意図したものである。
【0003】
無菌材料をアイソレーターの内部に供給するために、いわゆるラピッドトランスファーポート(RTP:Rapid Transfer Port)システムが通常使用される。RTPシステムを通じて、コンテナーの無菌内部に収容された材料がアイソレーターへと送られる。
【0004】
無菌材料は、例えば、バイアル又は注入ボトルのゴム製又はプラスチック製のストッパーとすることができ、これらは、アイソレーターの外部で洗浄及び滅菌され、アイソレーター内に導入された後、バイアル又は注入ボトルを閉鎖するためにクリーンルーム内の機械に供給される。そのような材料の洗浄及び滅菌は、ここで、例えば、本出願人名義の特許文献1に記載されているような処理装置において行うことができる。
【0005】
一方で、無菌材料は、例えば、クリーンルーム内のフォーマット変更のために、例えば機械内に設置される交換部品又はフォーマット部品でもあり得る。
【0006】
前者の場合には、洗浄及び滅菌した材料を、処理装置において使用される処理コンテナーからアイソレーターへと直接移送することができる。後者の場合には、予備洗浄した材料を有するコンテナーを、コンテナー内部の材料を滅菌するために、アイソレーターへの搬送時にオートクレーブを通過させる。コンテナーは、材料をコンテナー内に導入する際及び材料をコンテナーから除去する際に通す開口部を有する。
【0007】
RTPシステムは、無菌材料をコンテナーの無菌内部から、無菌でない環境を伴うアイソレーターの無菌なクリーンルームへと非接触で移送するために使用される。RTPシステムは、コンテナーの開口部に取り付けられるコンテナー側部分(通常、ベータ部と称される)と、アイソレーターに取り付けられる相補的なアイソレーター側部分(通常、アルファ部と称される)とを備える。材料の移送前に、コンテナー側部分を有するコンテナーは、アイソレーター側部分にドッキング又は機械連結される。
【0008】
コンテナー側部分は、コンテナーの開口部の前に配置されるとともに、挿入されたシールを有する環状フランジと、搬送時に開口部を密閉するコンテナー蓋と、アイソレーター側部分にドッキングするためのドッキング手段とを備える。アイソレーター側部分は、挿入されたシールを有する環状フランジによって囲まれるポート開口部と、ポート開口部を密封し、コンテナーをドッキングしたときにのみ開くことができるポートドアと、コンテナーのドッキング手段に対して相補的であるとともに、コンテナーがドッキングしたとき、一方では2つの環状フランジ同士の機械係止を確保し、他方ではコンテナー蓋とポートドアとの機械係止を確保するドッキング手段とを備える。ドッキングしたコンテナーがポート開口部の中心軸周りに回転可能である場合、これは、例えばコンテナーを回転させることにより実現することができる。
【0009】
閉鎖蓋がポートドアに係止されると、閉鎖蓋及びポートドアの無菌でない対向する表面が互いに押し付けられてシールが形成されるか、又はポートドアと閉鎖蓋との間で密着する。その後、ポートドア及びコンテナー蓋は、係止状態で共にアイソレーター内部の開位置に移動し、無菌材料をコンテナーからクリーンルームへと移送するために開口部及びポート開口部を解放する。クリーンルーム側でポートドアの操作を行うRTPシステムの場合、これは、オペレーターがグローブポートを使用して、クリーンルーム内部でポートドアの操作ハンドルを掴んで開位置に移動させることによって、実現される。この開位置は、通常、ポート開口部の側に位置する。外部からポートドアの操作を行うRTPシステムの場合、クリーンルームの外部にいるオペレーターが、アイソレーターの壁にあってポートドアを開位置に移動させる機構を操作する。材料をコンテナーから除去した後、ポートドア及びコンテナー蓋は共に閉位置に戻り、まず開口部及びポート開口部を閉鎖し、次に2つの環状フランジ同士と閉鎖蓋及びポートドアとを係止解除し、最後に、RTPシステムの2つの部品を係止解除して分離することにより、コンテナーをアイソレーターからドッキング解除して離れる方向に移動させる。
【0010】
本出願人の特許文献2及び特許文献3において、導入部で述べた種類のコンテナー、組み合わせ及び方法が既に開示されている。そこでは、材料受け部は、コンテナーに対して移動可能であるとともに、注入可能材料を受ける有孔バスケットからなる。搬送時、バスケットは、閉鎖したコンテナーの内部で搬送位置にある。材料を除去するために、バスケットをリニアガイドに沿って除去位置に移動させることができる。除去位置において、バスケットは、開口部を通じてクリーンルーム内に部分的に突き出る。この操作は、オペレーターがグローブポートを介してクリーンルームからバスケットのハンドルを掴み、バスケットをコンテナーから引き出すことによって行われる。
【0011】
スペア部品等の個々の物体のための引き出し式材料受け部を有するコンテナーであって、物体を載置するための引き出しがレール上に取り付けられる、コンテナーがhttp://www.castus.pro/en/gamma-equipment/drawer-and-rail-system/において入手可能である。ここでも、物品を除去するには、オペレーターがクリーンルームから引き出しを掴んでコンテナーから引き出さなければならない。
【0012】
しかしながら、コンテナー蓋がポートドアと係止していることが原因でポートドアがクリーンルーム内側の比較的深くまで延在していることから、開いたポートドアにわたってオペレーターがグローブポートを介して材料受け部を掴み、クリーンルーム内へと引き寄せる又はコンテナー内へと完全に戻すことは、困難であるか又は不可能である。これは、クリーンルーム側からポートドアを操作するRTPシステムにおいて、2つのグローブポートがRTPに隣接する両側に必要であり、一方は、コンテナー蓋と係止したポートドアを開閉するためのものであり、他方は、材料を除去した後に材料受け部を引き出す又は戻すためのものであることを意味する。そして、これにより、これらのRTPシステムが必要とする空間が増大する。加えて、RTPシステムにおけるグローブポートは、可能な限り避けるべきである。
【0013】
グローブポートを通じて材料受け部を手動で移動させることから、自動化の度合いも低く、材料の除去に必要な時間も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許出願公開第2823828号
【文献】独国特許出願公開第102016001027号
【文献】国際公開第2017/129362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これに基づき、本発明の目的は、RTPシステムにおけるグローブポートの数を最小限に留め得るとともに、より高度な自動化と、材料の除去に要する時間の削減とを実現し得るように、導入部において説明した種類のコンテナー、組み合わせ及び方法を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、請求項1、請求項12及び請求項14において特徴づけられた部分の特徴が、本発明に従って提案される。
【0017】
したがって、少なくとも1つの強磁性体及び/又は永久磁性体は、材料受け部に取り付けられるとともにコンテナーの周壁の近くに配置されており、少なくとも1つの磁石又は強磁石であって、コンテナーの外部で周壁に沿って直線移動し、周壁を通じて磁気引力によって非接触で磁性体に作用する、少なくとも1つの磁石又は強磁石によって、リニアガイドに対して平行に移動可能である又は移動する。
【0018】
強磁性体及び/又は永久磁性体並びに磁石及び/又は強磁石が、互いに引き付け合うように周壁の両側において対向している場合、均衡状態が確立され、磁性体と磁石との間の磁力線が周壁に対して垂直に方向付けされる。例えば、磁石を周壁に沿って磁性体から離れる方向に直線移動させることによって均衡状態が崩れると、磁力線が曲がる。これにより、均衡を回復しようとして駆動力が磁性体に対して同じ方向に作用する。この駆動力により、磁気引力が移動に対抗する摩擦力に打ち勝ち、安定した磁気結合をもたらすのに十分大きいときに、磁性体は磁石と同期して移動する。後者は、磁気引力を可能な限り最大化するとともに距離を可能な限り最小化することによって実現される。
【0019】
本発明に係る特徴の組み合わせにより、クリーンルームへの介入を伴わずにアイソレーターの外部に位置するオペレーターによって、材料受け部を搬送位置から除去位置へと移動させること、及び搬送位置へと戻すことが可能になる。これは、クリーンルーム側でポートドアの操作を行うRTPシステムにおいては、単一のグローブポートのみが必要とされることを意味する。加えて、必要に応じて、ステッパーモーター、又は空圧シリンダー若しくは油圧シリンダーを使用して、少なくとも1つの磁石又は強磁石をコンテナーの外側に沿って移動させることによって、材料を除去するのに必要な時間を削減することができ、自動化の度合いを増大させることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態は、2つの対向する端部と、これらの端部の間の概ね一定のコンテナー断面とを有するコンテナーにおいて、RTPシステムへの無菌材料の搬送に一般的であるように、材料受け部が搬送位置にあるとき、開口部は一方の端部に位置し、磁性体は他方の端部の近くに位置するものとする。このようにして、磁性体をリニアガイドに沿って開口部の近くへと移動させることによって、除去位置にある材料受け部をコンテナーから特に遠ざけてクリーンルーム内へ移動させることができる。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態によれば、コンテナーの周壁は、非磁性材料から作製され、これにより、磁気引力が壁を通じて乱れず伝達され、したがって、磁力によって磁性体を移動させることが可能になる。原理上、周壁は、プラスチック又は金属からなり得る。好ましくは、非常に良好な滅菌が可能であるため、周壁は、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼からなる。
【0022】
本発明の有利な実施の形態によれば、少なくとも1つの磁石及び/又は少なくとも1つの強磁性体及び/又は永久磁性体が、希土類磁石、好ましくはネオジム(NdFeB)磁石を含む場合、最大の引力、ひいては最大の駆動力が比較的低コストで実現される。なぜなら、ネオジム磁石は、磁気引力が非常に大きく、一方で、比較的低コストで利用可能であるからである。材料受け部を有するコンテナーは、温度が通常120℃を超えるオートクレーブ内で滅菌されることが通例であるため、SH、UH又はEHの記号が付いたネオジム磁石を使用することが有利である。
【0023】
原理上、永久磁石を使用する代わりに、磁石(複数の場合もある)を電磁石によって構成してもよく、電磁石を用いて非常に大きい磁気引力を実現することもできる。
【0024】
大きな引力を実現するために、有利には、少なくとも1つの磁石及び/又は少なくとも1つの強磁性体及び/又は永久磁性体は両方とも、周壁から見て外側を向く磁石又は磁性体の側における磁力線を周壁に隣接する側に方向付けし直す強磁性ポット又はヨークを備える、1つ以上のポット磁石又はヨーク磁石を備え得る。
【0025】
材料の滅菌時に蒸気がコンテナーの内部に供給されることが通例であるため、本発明の更に好ましい実施の形態は、少なくとも1つの磁性体には、耐錆性材料から作製されるシェル又はコーティングが付与されるものとする。好ましくは、磁性体は、ステンレス鋼板の薄肉シェルによって覆われ、これは、アーク溶接時にアーク放電が磁力線によって偏向しないため、強磁性体に関して実施がより容易である。一方、磁性体は、例えば、コンテナー内の材料の酸化、ひいては汚染を防止するためにクロムめっき又はニッケルめっき処理することができる。
【0026】
他方では、更なる有利な実施の形態によれば、材料受け部をリニアガイドに沿ってローラー上で移動させることによって、材料受け部の移動に対して反作用する摩擦力を最小化することが有利である。強磁性体及び/又は永久磁性体は、材料受け部によって支持されており、コンテナーの周壁又はリニアガイドに接して支持されてはいない。
【0027】
摩擦が誘発する材料の減耗、ひいてはコンテナー内の無菌材料が汚染する可能性を防止するために、少なくとも1つの磁性体は、リニアガイドに沿った移動時に周壁から短い距離を常に置き、周壁の内面と磁性体の対向する面との間に空隙が存在することが有利である。この空隙は、磁石と磁性体との間の距離を最小限に留め、移動時の安定した磁気結合を確保するために、少なくとも0.5mmから最大3mmの厚さを有することが好ましい。
【0028】
使用時の周壁の外面への擦過傷を避けるために、コンテナーの外部の少なくとも1つの磁石と周壁の外面との間にも小さい空隙を設けるべきである。一方、代替的には、磁石には、周壁に対向する側において、例えばPTFEから作製される薄い摩擦低減層を設けてもよい。
【0029】
磁気引力が相応して減少することなく、少なくとも1つの磁性体のサイズ及び重量を最小化するために、磁性体は、周壁に対向する側において、周壁の断面形状に適合されるとともに、コンテナーが概ね円筒形である場合には、対応する曲率半径を有する円弧状の断面を有する、表面形状を有することが有利である。磁性体が複数の永久磁石を収容する場合、これらは、周壁に隣接する磁性体の側において円弧に沿って配置されることが好ましい。
【0030】
原理上、単一の大きな希土類永久磁石、好ましくはネオジム磁石を、コンテナーの外部の磁石として使用することができ、この磁石には、コンテナー内部の単一の強磁性体及び/又は永久磁性体、例えば、述べた第1の事例において、鉄若しくは鉄材から作製される単一のより大きな磁性体又は単一の大きな永久磁石、好都合には、希土類磁石又はフェライト磁石のいずれかが対向する。
【0031】
しかしながら、複数の円盤状の又は板状の永久磁石をコンテナーの外部に、周方向においては隣同士に、及び/又は移動方向においては前後に、好都合には、コンテナー内部の単一の強磁性体又は複数の永久磁性体、好都合には、対応する数の円盤状の又は板状の永久磁石に対向して配置することによって、磁気結合に影響を及ぼすことなく磁石及び/又は磁性体の重量を軽減できることが分かった。後者の場合、対向する永久磁石の配置及び磁化は、コンテナー内部の周壁を向くN極が、コンテナーの外部の周壁を向くS極と対向するように選択される。円盤状の又は板状の永久磁石は、ここで、厚さが周壁に対して平行な平面において磁石の直径の半分よりも小さい、又は磁石の側面寸法の半分よりも小さい磁石として参照される。
【0032】
特に、材料受け部が個々の物体を受けるために平坦な支持面を有する場合、少なくとも1つの磁性体は、有利には、材料支持部の下方に配置され、これにより、支持面の上方の材料がより多くの空間を利用可能となる。そして、この場合、少なくとも1つの磁石又は強磁石をコンテナーの下方で移動させることができる。ただし、磁性体を材料支持部の上方に配置してもよく、磁石又は強磁石をコンテナーの上方で変位可能としてもよい。
【0033】
本発明の更なる有利な実施の形態によれば、アイソレーターとドッキングしたコンテナーとの組み合わせは、コンテナーを支持するとともに、磁石のためのリニアガイドが設けられる、テーブル又はトロリーを備える。原理上、周壁の外面がリニアガイドとしての役割を果たしてもよい。
【0034】
材料受け部及び磁石の移動経路に沿って磁性体と磁石との間の一定距離を確保するために、少なくとも1つの磁石は、好ましくは、テーブル又はトロリーのリニアガイドに沿って変位可能であり、磁石の移動は、好都合には、材料受け部の搬送位置及び除去位置にある止め部によって制限される。
【0035】
アイソレーターの壁が透明でない場合、コンテナー内部の少なくとも1つの磁性体が、少なくとも1つの磁石の直線移動時に伴って移動しているか否かを、オペレーターが窓からクリーンルームを覗くことなく判断することは容易に可能ではない。外部からのそのような判断を可能にするために、本発明の好ましい実施の形態は、磁性体と磁石との間の引力を、磁性体がコンテナー内部の磁石と対向したときに、磁石がコンテナーの外部に付着するほどの大きさにするものとする。その場合、強磁性材料又は永久磁性材料が移動方向において磁性体の前後に存在しない場合、磁石は周壁から離れる方向へ移動する。この移動は、オペレーターが視認できるものであり、磁気結合が存在しなくなったことを示す。したがって、周壁への磁石の付着は、直線移動時に磁石と磁性体との間の一定距離を常に確保することからも有利である。
【0036】
以下、図面に示す幾つかの例示的な実施形態を参照しながら本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1a】コンテナー蓋がある状態の本発明に係るコンテナーと物置テーブルとの斜視図である。
【
図1b】コンテナー蓋がある状態の本発明に係るコンテナーと物置テーブルとの斜視図である。
【
図1c】コンテナー蓋がない状態の本発明に係るコンテナーと物置テーブルとの斜視図である。
【
図1d】コンテナー蓋がない状態の本発明に係るコンテナーと物置テーブルとの斜視図である。
【
図2a】
図1cと同様のコンテナー及び物置テーブルの拡大斜視図である。
【
図2b】
図1dと同様のコンテナー及び物置テーブルの拡大斜視図である。
【
図3a】
図1cに係るコンテナー及び物置テーブルの拡大側面図である。
【
図3b】
図1dに係るコンテナー及び物置テーブルの拡大側面図である。
【
図4】
図3aの線IV-IVに沿ったコンテナー及び物置テーブルの一部の拡大断面図である。
【
図5a】RTPシステムのコンテナー側部分をアイソレーター側部分にドッキングした後の、物置テーブル上のコンテナーと、アイソレーターの一部との拡大縦断面図であり、コンテナーの材料受け部は搬送位置にある。
【
図5b】対応する縦断面図であるが、RTPシステムのポートドア及びコンテナー蓋を開けた後の図であり、材料受け部は除去位置にある。
【
図6】第1の例示的な実施形態に係る
図4の細部VIの拡大断面図である。
【
図7】第2の例示的な実施形態に係る
図4の細部VIの拡大断面図である。
【
図8】第3の例示的な実施形態に係る
図4の細部VIの拡大断面図である。
【
図9】第4の例示的な実施形態に係る
図4の細部VIの拡大断面図である。
【
図10】第5の例示的な実施形態に係る
図4の細部VIの拡大断面図である。
【
図11】第6の例示的な実施形態に係る
図4の細部VIの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1から
図9に示す本発明に係るコンテナー10は、材料、本事例において個々の物体、例えば、アイソレーター14のクリーンルーム12内の機械又は装置、例えば、シリンジ充填機、又は注入ボトル若しくはバイアルの充填及び閉鎖を行う機械(図示せず)のための交換部品又はフォーマット部品を搬送又は滅菌するために使用される。コンテナー10に事前に導入された材料の滅菌は、例えば、オートクレーブ内において過熱蒸気をコンテナー10内に供給することによって、コンテナー10内で行われる。その後、滅菌材料を有するコンテナー10は、アイソレーター14にコンテナー10をドッキングし、材料をクリーンルーム12内に導入するために、アイソレーター14に搬送される。
【0039】
アイソレーター14への搬送及びアイソレーター14へのドッキング時のコンテナー10内の無菌材料の汚染を防止するために、アイソレーター14及びコンテナー10は、ラピッドトランスファーポート(RTP)システムを備える。ここで、アイソレーター14には、RTPシステムのアイソレーター側部分16(アルファ部とも称される)が設けられており、一方、コンテナー10には、RTPシステムの相補的なコンテナー側部分18(ベータ部とも称される)が設けられている。適切なラピッドトランスファーポート(RTP)システムが、例えば、Getinge-LaCalhene社によって提供されている。
【0040】
図1に最も良く示すように、コンテナー10は、概ね円筒形の周壁22を有し、一端が平坦な端壁24によって閉鎖されており、他端には、材料をコンテナー10内に導入する及びコンテナー10から除去することができる開口部26が設けられている。開口部26は、コンテナーの搬送時にコンテナー蓋20によって閉鎖される。少なくとも周壁22は、オーステナイト系ステンレス鋼、例えば非磁性V2A鋼からなる。開口部26の開放断面は、周壁22の内部断面に実質的に対応する。コンテナー10には4つの脚部28が設けられており、そのうちの一対は端壁24の近くに配置され、一対は開口部26の近くに配置される。
【0041】
端壁24上において、コンテナー10は、フィルターとの媒体接続部(図示せず)を有することができ、フィルターを通して、材料を滅菌するために過熱蒸気を閉鎖したコンテナー10の内部へと送ることができる。
【0042】
材料の搬送及び除去のために、コンテナー10には、材料を載置することができる材料受け部30が設けられる。搬送位置において(
図2a及び
図5a)、材料受け部30は完全にコンテナー10の内部にある。コンテナー蓋20が開いているとき、材料受け部30は、コンテナー10の長手方向中心軸32に対して平行なリニアガイド34に沿って移動し、材料受け部30が開口部26を通じてコンテナー10から部分的に突き出る除去位置へと移ることができる。
【0043】
図面に示す材料受け部30は、長手方向中心軸32の僅かに下方に配置される平坦なプレート36から実質的になり、プレートの2つの対向する縁部38は、周壁22に沿って下側方向に曲がっている。2つの縁部38のそれぞれには、4対の回転可能なローラー40が取り付けられる。ローラーの各対のローラー40は、いずれの場合にも一方は上方から、一方は下方からリニアガイド34の2つのガイドレール42の狭い側に当接し、転動する。平行なガイドレール42は、それらの広い側の1つが、周壁22を超えて内側方向に突出する脚部28の端部に締結される。
【0044】
図5a及び
図5bに最も良く示すように、ラピッドトランスファーポート(RTP)システムのベータ部18は、開口部26を囲むとともに周壁22の端フランジ44にねじ留めされる環状フランジ46と、環状フランジ46内に挿入される環状シール48と、コンテナー蓋20とを備える。コンテナー蓋20は、閉じたとき、円錐状の外周面が環状シール48の相補的な円錐状の内周面に密着し、材料の搬送時及び材料の滅菌時に開口部26を密封する。
【0045】
図5a及び
図5bに最も良く示すように、ラピッドトランスファーポート(RTP)システムのアルファ部16は、アイソレーター14の区画壁52に剛性接続されるとともに、円形の輪郭を有するポート開口部(図面では見えない)を囲む取り付けフランジ50と、取り付けフランジ50に対して回転可能な環状フランジ54と、環状フランジ54内に挿入される環状シール(図面では見えない)とを備える。アルファ部16は、取り付けフランジ50に旋回可能に取り付けられるとともに、円形の輪郭を有するポートドア56を更に備える。
【0046】
アルファ部16及びベータ部18は、相補的な係止装置(図面では見えない)を更に備える。相補的な係止装置は、コンテナー10がドッキングしているとき、一方では、それぞれアルファ部16及びベータ部18の2つの環状フランジ54及び46の相互係止を確保し、他方では、コンテナー蓋20及びポートドア56の相互係止を確保する。そのため、一方においては、コンテナー10がアイソレーター14に固定されており、他方においては、一方では2つの環状フランジ54及び46の対向する無菌でない表面と、他方ではポートドア56及びコンテナー蓋20の対向する無菌でない表面とが互いに接触し、互いに密接している。
【0047】
材料の滅菌後にコンテナー10をアイソレーター14にドッキングし、材料をアイソレーター14に供給するためには、まずコンテナー10をアイソレーター14に搬送し(
図1a)、コンテナー10の4本の脚部28をアイソレーター14の外部でテーブル58の上に載置する(
図1b)。テーブル58の高さは、ラピッドトランスファーポートシステムのアイソレーター側アルファ部16の高さと一致する。テーブル58の脚部60にはキャスター(図示せず)を設けることができる。ドッキング時、アルファ部16及びベータ部18の係止装置が互いに係合し、コンテナー10は、環状フランジ54を回転させることによってアイソレーター14に固定される。
【0048】
環状フランジ54ではなくコンテナーがドッキングのためにポート開口部の中心軸周りに回転する場合、コンテナー10の回転時に材料が材料受け部に対して滑らないように、材料受け部30には、クリップ又は他の締結手段が設けられる。
【0049】
コンテナー10をドッキングした後(
図5a)、コンテナー蓋20及びポートドア56は共に開き、ポート開口部が露出する。このために、アイソレーター14のポート開口部の近くには、単一のグローブポート(図示せず)が設けられる。グローブポートは、クリーンルーム12内に突出しており、このポート内にオペレーターが手を差し入れ、ポートドア56の係止解除レバー61を操作してポートドア56を係止解除する。その後、ポートドア56及びコンテナー蓋20は、
図5bに示すように、ポート開口部の横隣りに配置される鉛直旋回軸周りに一緒に片側に旋回してクリーンルーム12内に入る。
【0050】
ドッキング状態において、オペレーターがグローブを着けてクリーンルーム12内に手を伸ばし、ポート開口部を通じて材料受け部30をコンテナー10から引き出す必要なく、材料受け部30をコンテナー10から部分的に出してクリーンルーム12内に移動させるために、材料受け部30には強磁性体及び/又は永久磁性体62が取り付けられる。強磁性体及び/又は永久磁性体62は、磁石64がコンテナー10の外部且つ下方で周壁22に沿って直線移動することにより、磁気引力によってリニアガイド34に対して平行に周壁22を通じて非接触で移動し、磁性体62に固定接続された材料受け部30を搬送位置から除去位置へと移動させること、及び材料を除去した後に再び搬送位置に戻すことができる。
【0051】
図4、
図5a及び
図5bに最も良く示すように、磁性体62は、材料受け部30のプレート36にわたって下側方向に突出する。この磁性体はプレート36に剛性接続される。磁性体62は、周壁22のすぐ近くへと下側方向に延在する、拡張された下部66を有する。周壁22に隣接する磁性体62の下面は、
図6から
図11に最も良く示すように、周壁22の曲率に従って湾曲しており、0.5mmから1mmの一定の間隙幅を有する細い空隙68によって周壁22から隔てられる。
【0052】
材料受け部30が搬送位置にあるとき(
図5a)、磁性体62は端壁24の近くにある。材料受け部30が除去位置にあるとき(
図5b)、磁性体62は、開口部26の近くにあるが依然としてコンテナー10内部にある。
【0053】
図4に最も良く示すように、磁石64はキャリッジ70の一部であり、キャリッジ70は、テーブル58の水平上面に対して平行なリニアガイドとしての役割を果たす2本の丸棒72に沿って変位可能である。丸棒72の端部は、テーブルの上面の上方に突出する2つの支持体74によって保持され、これらの支持体の高さは、コンテナー10の脚部28の高さに適合される。このようにして、磁石64は、丸棒72に沿って周壁22の下側から変位可能である。周壁22に隣接する磁石の上面は、周壁22の曲率に従って湾曲しており、コンテナー10をテーブルの上面に載置し、コンテナー10の鉛直長手方向中心面を丸棒72の間の中心に且つ丸棒72に対して平行に方向付けした後、0.5mmから1mmの一定の間隙幅を有する細い空隙76によって周壁22から隔てられる。キャリッジ70を2本の丸棒72に沿って変位させるために、片側に突出するハンドル78が使用される。
【0054】
図6から
図10における例示的な実施形態において、磁性体62は、軟鉄製の単一の強磁性体62であり、非磁性の薄いステンレス鋼板製の被覆80に包まれる。
【0055】
図6における例示的な実施形態において、磁石64は、単一の立方体状のネオジム(NdFeB)磁石82であり、プラスチック又は金属からなるキャリッジ70内に埋め込まれる又は挿入される。
【0056】
図7における第2の例示的な実施形態は、キャリッジ70内に単一の円筒形状のフェライト磁石84が埋め込まれ又は挿入されており、この磁石の、
図7の平面における周壁22を向く表面は、磁石84を周壁22に近づけるために、周壁22の曲率半径に対応する曲率半径を有するという点において、
図6における第1の例示的な実施形態とは異なる。
【0057】
図8に示す第3の例示的な実施形態において、複数の円盤状のネオジム(NdFeB)磁石86が、周方向においては隣同士に、キャリッジ70の移動方向においては前後に、キャリッジ70内に埋め込まれ又は挿入されており、これらの磁石の端面は、周壁22の対向部分に対して最大限平行に方向付けされる。ネオジム磁石86は、N極及びS極が、周壁22に対向して、周壁22に沿って且つ移動方向において互い違いになるように、方向付けされる。
【0058】
図9に示す第4の例示的な実施形態において、U字形状の断面を有する強磁性鋼ヨーク90を備える複数の棒状の(NdFeB)磁石88が、周方向において隣同士になってキャリッジ70内に埋め込まれる又は挿入される。ヨーク90は、周壁22から見て外側を向く磁石88の側における磁力線を周壁22に隣接する側に向けて偏向することにより、磁石88と磁性体62との間の引力が増大する。
【0059】
図10に示す第5の例示的な実施形態において、磁石64は、鉄心94がキャリッジ70の穴96内に挿入された電磁石92である。鉄心94は、曲率半径が周壁22の曲率半径に適合された湾曲した端面を有する。
【0060】
図11における第6の例示的な実施形態において、永久磁性体及び強磁性体62は、鋼製の強磁性ポット98が設けられた複数の円筒形状のネオジム(NdFeB)磁石100を備え、これらの磁石は、周方向においては隣同士に、移動方向においては前後に、磁性体62内に埋め込まれる又は挿入される。対応するネオジム磁石102が、キャリッジ70内に挿入され又は埋め込まれ、鋼製の強磁性ポット104を備える。磁石100及び102は、キャリッジ70内の磁石102のN極が、磁性体62内の磁石100のS極を向き、その逆も同様であるように方向付けされる。
【0061】
磁性体62内のポット磁石100及びキャリッジ70内のポット磁石102の代わりに、円筒形、円盤状又は別様の形状の永久磁石をそこに設けてもよい。単一の磁性体62の代わりに、複数の別個の磁性体(図示せず)を材料受け部30に締結してもよく、別個の磁性体のそれぞれには、1つ以上の外部磁石(図示せず)が作用する。
【0062】
原理上、
図6から
図8の例示的な実施形態とは逆向きにするのも可能であり、このとき、材料受け部30に強固に取り付けられるとともに、1つ以上の磁石を有する永久磁性体が、コンテナー10の外部に配置される強磁性体によって、例えば、強磁性のキャリッジ70によって移動することになる。
【0063】
ポートドア56及びコンテナー蓋20を開けた後、オペレーターは、ハンドル78によってキャリッジ70をアイソレーター14の区画壁52の方向に移動させる。その際、周壁22を通じて非接触で磁石64と磁性体62との間に作用する磁気引力により、磁気結合によって磁性体62は磁石64を伴ってアイソレーター14の方向に移動する。その結果、材料受け部30もアイソレーター14の方向にレール42に沿って移動し、引力が十分に大きい場合にはレール42における転がり摩擦に打ち勝つ。その際、材料受け部30は、ポート開口部を通じてその除去位置へと移動し、そこでは、
図5bに示すように、材料受け部30がクリーンルーム12内に短い距離だけ突き出る。この位置を超える材料受け部30の移動は、キャリッジ70がアイソレーター14に隣接する支持体74にぶつかることによって防止される。
【0064】
材料を除去したら、オペレーターは、アイソレーター14から離れた支持体74にキャリッジが接して、材料受け部30が再び搬送位置に戻るまで、キャリッジ70を再びアイソレーター14から離れる方向へ移動させる。