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特許7536337リチウム金属電池用負極集電体、その製造方法およびそれを含むリチウム金属電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】リチウム金属電池用負極集電体、その製造方法およびそれを含むリチウム金属電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20240813BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240813BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/38 Z
H01M4/134
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022578928
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 KR2021018152
(87)【国際公開番号】W WO2022119359
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168163
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170445
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520337569
【氏名又は名称】ポステック リサーチ アンド ビジネス デベロップメント ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】POSTECH RESEARCH AND BUSINESS DEVELOPMENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】(Jigok-dong) 77, Cheongam-ro, Nam-gu, Pohang-si, Gyeongsangbuk-do 37673 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ウ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソルジ・パク
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウォンテ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンホ・シン
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170128(JP,A)
【文献】特表2015-512129(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056488(WO,A1)
【文献】特開平06-231749(JP,A)
【文献】特開2020-064824(JP,A)
【文献】特開2016-076487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0131617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属電池用負極集電体であって、
金属集電基材、および前記金属集電基材の少なくとも一面に形成されており、強誘電体、リチウムと合金可能な物質、導電材、およびバインダーを含むコート層を含み、
前記リチウムと合金可能な物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Sb、As、P、Au、Ag、Zn、Al、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上である、負極集電体。
【請求項2】
前記金属集電基材は銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、異種金属で表面処理された銅、異種金属で表面処理されたステンレススチール、およびアルミニウム-カドミウム合金からなる群より選ばれる1種である、請求項1に記載の負極集電体。
【請求項3】
前記金属集電基材は銅を含む金属である、請求項1に記載の負極集電体。
【請求項4】
前記コート層はコート層100重量部に対して、強誘電体75~85重量部、リチウムと合金可能な物質3~10重量部、導電材5~10重量部、およびバインダー5~15重量部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項5】
前記強誘電体は、
BaTiO、KNbO、NaTiO、KTaO、Pb(Zr、Ti)O、SrBiTa、BiTiO12、LiTaO、LiNbO、WO、およびKHPOまたはNaKC・4HOがポリマーとともに含まれる有機強誘電体からなる群より選ばれた1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項6】
前記リチウムと合金可能な物質は、Si、Ge、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項7】
前記リチウムと合金可能な物質は、10nm~10μmの粒子の大きさ(D50)を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項8】
前記バインダーはポリアクリル酸(PAA)水系バインダーである、請求項1からのいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項9】
前記コート層は1~5μm厚さで形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項10】
請求項1による負極集電体を製造する方法であって、
(a)粉末状態の強誘電体、リチウムと合金可能な物質、および導電材を混合して混合物を製造する過程;
(b)前記混合物に水系バインダーを混合してコート層スラリーを製造する過程;
(c)金属集電基材に前記コート層スラリーを塗布する過程;および
(d)前記コート層スラリーが塗布された金属集電基材を空気雰囲気下で1次乾燥し、真空雰囲気で2次乾燥する過程
を含み、
前記リチウムと合金可能な物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Sb、As、P、Au、Ag、Zn、Al、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上である、負極集電体の製造方法。
【請求項11】
前記強誘電体は、
BaTiO、KNbO、NaTiO、KTaO、Pb(Zr、Ti)O、SrBiTa、BiTiO12、LiTaO、LiNbO、WO、およびKHPOまたはNaKC・4HOがポリマーとともに含まれる有機強誘電体からなる群より選ばれた1種以上である、請求項10に記載の負極集電体の製造方法。
【請求項12】
前記水系バインダーはポリアクリル酸(PAA)バインダーである、請求項10または11に記載の負極集電体の製造方法。
【請求項13】
請求項1による負極集電体上にLi金属が堆積された負極、正極、および前記負極と正極の間に介在する分離膜を含む電極組立体、ならびにリチウム非水系電解質を含む、リチウム金属電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年12月4日付韓国特許出願第10-2020-0168163号および2021年12月1日付韓国特許出願第10-2021-0170445号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明はリチウム金属電池用負極集電体、その製造方法およびそれを含むリチウム金属電池に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の商用化されたすべてのリチウム二次電池の負極として黒鉛が使用されているが、高い容量密度および出力を有する高性能二次電池の開発が台頭することによりリチウム金属を負極として使用しようとする試みが増加している。
【0004】
第一に、黒鉛はLi完全充電時、372mAh/gの小さい理論容量と10-12~10-14cm・s-1の低いリチウムイオン伝導度によって2Cレート(rate)基準の理論容量に対して30%未満の低い容量を実現する。体積当たり容量および高い出力を要求する高性能二次電池に黒鉛を負極として使用するには黒鉛は本来の電気化学物性に優れず、次世代電池負極物質としての使用に適合しない。
【0005】
第二に、黒鉛の場合、安定的に使用できる電解質の種類が制限的である。層間物質である黒鉛はリチウムイオンだけでなく陰イオン、溶媒分子とも層間化合物を形成する。代表的にプロピレンカーボネート(Propylene carbonate(PC))液体電解質を使用する場合、リチウムイオンと溶媒分子が同時に黒鉛内部に入るコインターカレーション(co-intercalation)現象により黒鉛をなすグラフェン層の剥離が誘発されてそれによる容量減少が徐々に加速化して長時間使用に問題がある。
【0006】
反面、黒鉛とは異なりリチウム金属の場合、上記の問題から自由である。リチウム金属は黒鉛に対して10倍以上の高い理論容量(3862mAh/g)と2.0mA/cm以上の電流密度条件でも90%以上のリチウム金属堆積/脱着効率を有するので高性能二次電池の負極として使用することができる。
【0007】
しかし、リチウム金属は繰り返される充/放電過程で金属表面に現れるリチウム金属デンドライト成長により多孔性構造および短絡、デッド(Dead)Liと呼ばれるリチウム微細粉末が形成されて安全上の問題および長時間の寿命特性に問題がある。リチウム金属デンドライトの形成は代表的にサンドタイムモデル(Sand time model)と説明され、リチウム金属表面に存在するリチウムイオン濃度の急減とそれにともなう陽イオン、陰イオンの電荷不均衡によりリチウム金属デンドライトの成長が触発される。このような問題はリチウム金属表面にセラミック層やグラフェンコーティングにより緩和できるが、リチウム金属デンドライトの成長を物理的に圧迫する方案に止まっている。リチウム金属デンドライトを効果的に抑制するためには、リチウム金属デンドライトの核形成段階から成長段階まで分析する必要性があり、これを調節できる負極集電体の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は負極集電体の周囲のリチウムイオン濃度および核形成シードサイトの調節によりデンドライト形成を抑制し、均一なLi成長挙動および向上した電気化学性能を示すリチウム金属電池用負極集電体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、それを含むリチウム金属電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例による負極集電体は、リチウム金属電池用負極集電体であって、金属集電基材、および前記金属集電基材の少なくとも一面に形成されており、強誘電体、リチウムと合金可能な金属物質、導電材、およびバインダーを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記金属集電基材は銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、異種金属で表面処理された銅、異種金属で表面処理されたステンレススチール、およびアルミニウム-カドミウム合金からなる群より選ばれる1種であり得、詳細には、銅を含む金属であり得る。
【0012】
一つの具体的な例で、前記コート層はコート層100重量部に対して、強誘電体70~89重量部、リチウムと合金可能な金属物質3~10重量部、導電材3~10重量部、およびバインダー5~20重量部を含み得る。
【0013】
一つの具体的な例で、前記強誘電体はBaTiO、KNbO、NaTiO、KTaO、Pb(Zr、Ti)O、SrBiTa、BiTiO12、LiTaO、LiNbO、WO、およびKHPOまたはNaKC・4HOがポリマーとともに含まれる有機強誘電体からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0014】
一つの具体的な例で、前記リチウムと合金可能な金属物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Sb、As、P、Au、Ag、Zn、Al、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上であり得、詳細にはSi、Ge、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0015】
この時、前記リチウムと合金可能な金属物質は、10nm~10μmの粒子の大きさ(D50)を有し得る。
【0016】
前記バインダーはポリアクリル酸(PAA)水系バインダーであり得る。
【0017】
一つの具体的な例で、前記コート層は1~10μm厚さで形成され得る。
【0018】
本発明のまた他の一実施例による負極集電体の製造方法は、
(a)粉末状態の強誘電体、リチウムと合金可能な金属物質、および導電材を混合して混合物を製造する段階;
(b)前記混合物に水系バインダーを混合してコート層スラリーを製造する段階;
(c)金属集電基材に前記コート層スラリーを塗布する段階;および
(d)前記コート層スラリーが塗布された金属集電基材を空気雰囲気下で1次乾燥し、真空雰囲気で2次乾燥する段階を含み得る。
【0019】
一つの具体的な例で、前記強誘電体はBaTiO、KNbO、NaTiO、KTaO、Pb(Zr、Ti)O、SrBiTa、BiTiO12、LiTaO、LiNbO、WO、およびKHPOまたはNaKC・4HOがポリマーとともに含まれる有機強誘電体からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0020】
一つの具体的な例で、前記リチウムと合金可能な金属物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Sb、As、P、Au、Ag、Zn、Al、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0021】
前記水系バインダーはポリアクリル酸(PAA)バインダーであり得る。
【0022】
本発明のまた他の一実施例によれば、前記負極集電体上にLi金属が堆積された負極、正極、および前記負極と正極の間に介在する分離膜を含む電極組立体、ならびにリチウム非水系電解質を含むリチウム金属電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例による負極集電体にLiが堆積した単純化された図である。
図2】実施例1によるコーティング負極集電体の上面SEM写真である。
図3】比較例3による負極集電体にLiが堆積された形態である。[図3の1-1]0.5mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。[図3の1-2]0.5mA/cmの電流密度で8時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。[図3の2-1]4.0mA/cmの電流密度で7分30秒Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。[図3の2-2]4.0mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。
図4】実施例1による負極集電体にLiが堆積された形態である。[図4の1-1]0.5mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。[図4の1-2]0.5mA/cmの電流密度で8時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。[図4の2-1]4.0mA/cmの電流密度で7分30秒Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。[図4の2-2]4.0mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。
図5】実験例2により実施例1および比較例1、3の負極集電体を用いて0.5mA/cm電流密度で測定したクーロン効率実験結果である。
図6】実験例3により、比較例1~比較例3の負極集電体を用いて0.5mA/cm、2.0mA/cm、3.0mA/cmの最初のクーロン効率テストの電圧プロファイル(Voltage profile)を示す図である。
図7】実験例4により実施例1~2、および比較例3の負極集電体を用いて4.0mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した時の電圧プロファイル(Voltage profile)である。
図8】実験例4により実施例1、3~5、および比較例3の負極集電体を用いて、0.5mA/cmの電流密度で2時間Li堆積した時の電圧プロファイル(Voltage profile)である。
図9】実験例4により実施例1、実施例3~5の負極集電体を0.5mA/cmの電流密度で2時間Li堆積を実施した後これをSEMで撮影した上面および断面イメージである。
図10】実験例4により実施例1、実施例3~5の負極集電体を0.5mA/cmの電流密度で2時間Li堆積を実施した後これをSEMで撮影した上面および断面イメージである。
図11】実験例4により実施例1、実施例3~5の負極集電体を0.5mA/cmの電流密度で2時間Li堆積を実施した後これをSEMで撮影した上面および断面イメージである。
図12】実験例4により実施例1、実施例3~5の負極集電体を0.5mA/cmの電流密度で2時間Li堆積を実施した後これをSEMで撮影した上面および断面イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付する図面を参照して本発明の好ましい実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0025】
また、本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常的、かつ辞書的な意味で解釈されるべきではなく、発明者らはその発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈すべきである。したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示す構成は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらの代わりとなる多様な均等物と変形例があり得、本発明の範囲は次に記述する実施例に限定されるものではない。
【0026】
本発明は一実施例によれば、リチウム金属電池用負極集電体であって、金属集電基材、および前記金属集電基材の少なくとも一面に形成されており、強誘電体、リチウムと合金可能な金属物質、導電材、およびバインダーを含むコート層を含む負極集電体が提供される。
【0027】
この時、前記金属集電基材は銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、異種金属で表面処理された銅、異種金属で表面処理されたステンレススチール、およびアルミニウム-カドミウム合金からなる群より選ばれる1種であり得、詳細には、負極集電体であって、銅を含む金属であり得る。
【0028】
本出願の発明者らがリチウム金属電池の問題を認識して、リチウムデンドライト形成の抑制できる根本的な方法に対する鋭意研究を重ねた結果、前記負極集電体の表面のリチウムイオン濃度を高めることができるようにリチウムイオンと相互作用が可能な物質と、リチウム金属核のシード(Seed)として作用できる物質からなる複合コート層を集電体表面に形成する場合、効果的なリチウムデンドライト形成の抑制が行われることを確認して本発明を完成するに至った。
【0029】
具体的には、リチウムイオンと相互作用が可能な代表的な物質としては分極(Polarity)を有する誘電体物質があり、強誘電体(Ferroelectric)物質の場合は一般誘電体(dielectric)物質より非常に大きい分極特性を有しており、イオンとの相互作用に優れることを確認した。また、Li金属核のシードとして使用できる物質としてリチウム(Li)と合金可能な金属物質が存在するので、上記の二つの物質を用いてコート層を形成して本発明の効果を得ることができた。
【0030】
ただし、また、このようなコート層を形成するために、CVDのような堆積方法が用いられるが、このような製造方法は高価でコート層の形成が遅く、二つの物質間の副反応が起こり得る問題があることを確認したため、このような二つの物質間の副反応および高い価格を解決できる製造方法を研究し、リチウム金属電池用負極集電体として商用化を可能にするためにはこのような問題を解決すべきであることを認識した。
【0031】
さらに、コート層の形成方式の他にも、コート層と集電体の間の結合力も重要であり、コート層と電極の間の結合力が低い場合は電解質内でコート層の剥離が起きるのでコート層と電極の間の結合力を強く形成しなければならないことを認識して本発明を完成するに至った。
【0032】
具体的には、本発明による負極集電体に形成されるコート層は、コート層100重量部に対して、強誘電体70~89重量部、リチウムと合金可能な金属物質3~10重量部、導電材3~10重量部、およびバインダー5~20重量部を含むことができる。詳細には、コート層100重量部に対して、強誘電体75~85重量部、リチウムと合金可能な金属物質3~10重量部、導電材5~10重量部、およびバインダー5~15重量部を含むことができる。
【0033】
前記前記範囲を満たす場合、前記で説明した結合力、リチウムイオンとの相互作用、リチウム核形成シードなどの作用が効果的に行われるので好ましい。
【0034】
この時、前記強誘電体は、BaTiO、KNbO、NaTiO、KTaO、Pb(Zr、Ti)O、SrBiTa、BiTiO12、LiTaO、LiNbO、WO、およびKHPO、またはNaKC・4HOがポリマーとともに含まれる有機強誘電体からなる群より選ばれた1種以上であり得、詳細には、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O、SrBiTa、およびBiTiO12からなる群より選ばれた1種以上であり得、より詳細には、BaTiOであり得る。
【0035】
また、前記リチウムと合金可能な金属物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Sb、As、P、Au、Ag、Zn、Al、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上であり得、詳細にはSi、Ge、Sn、Agおよびこれらの酸化物からなる群より選ばれる1種以上であり得、より詳細には、Si、Ge、およびこれらの酸化物からなる群より選ばれた1種以上であり得、最も詳細には、最もシードの役割に好ましく、容易に使用できるSiであり得る。
【0036】
一方、この時、前記リチウムと合金可能な金属物質は、10nm~10μmの粒子の大きさ(D50)を有するものであり得る。すなわち、多様な大きさの粒子を使用することができ、使用されるリチウムと合金可能な金属物質によってより好ましい粒子の大きさが選択され得る。例えば、Siの場合、0.1~1μmの粒子の大きさ(D50)を有するものであり得、Snの場合、50~400nmの粒子の大きさ(D50)を有するものであり得る。
【0037】
前記粒子の大きさ(D50)は粒径による粒子個数累積分布のn%地点での粒径(直径)を意味する。すなわち、D50は粒径による粒子個数累積分布の50%地点での粒径である。
【0038】
前記D50はレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えばMicrotrac S3500)に導入して粒子がレーザービームを通過する時粒子の大きさによる回折パターンの差異を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子直径を算出することによって、測定することができる。
【0039】
前記導電材は当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用することができる。
【0040】
市販の導電材の具体的な例としては、アセチレンブラック系であるシェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)およびスーパー(Super)P(Timcal社製品)などがある。
【0041】
前記バインダーはそれぞれ、従来の当業界に知られている種類のバインダーとして、電極成分の接着力向上が可能な種類であれば限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニルアルコール、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、フッ素ゴム、水系バインダーとしてポリアクリル酸(PAA)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる1種以上であり得る。詳細には水系バインダーであり得、より詳細にはポリアクリル酸(PAA)水系バインダーであり得る。
【0042】
一方、前記コート層は1~10μm厚さ、詳細には2~5μmで形成されることができる。
【0043】
前記範囲を外れて、過度に厚さが薄いと、それだけ本願が意図した効果を達成することが難しく、過度に厚いと効果的な側面の増加は減り、全体的な体積が増加して、体積に対してエネルギ密度などが低下し得るので、好ましくない。
【0044】
一方、本発明のまた他の一実施例によれば、前記負極集電体を製造する方法であって、
(a)粉末状態の強誘電体、リチウムと合金可能な金属物質、および導電材を混合して混合物を製造する段階;
(b)前記混合物に水系バインダーを混合してコート層スラリーを製造する段階;
(c)金属集電基材に前記コート層スラリーを塗布する段階;および
(d)前記コート層スラリーが塗布された金属集電基材を空気雰囲気下で1次乾燥し、真空雰囲気で2次乾燥する段階を含む負極集電体の製造方法が提供される。
【0045】
すなわち、本発明によれば、前記で説明したように、本発明は堆積などの方法で形成されず、非常に簡単な方法でスラリー形態でコート層を形成する。
【0046】
この時、前記段階(a)で粉末状態の強誘電体、リチウムと合金可能な金属物質、および導電材の種類、混合比は前記で説明したコート層に含まれる割合で混合することができる。
【0047】
ここに、段階(b)で水系バインダーを追加混合するときにも、前記説明した割合で混合することができる。前記水系バインダーの例も前記で説明したとおりである。
【0048】
前記段階(c)のコート層スラリーを塗布する方法は、限定されず、従来のリチウム二次電池の活物質層を形成する方法を同様に用いることができ、例えば、ドクターブレード(Doctor Blade)を用いてキャスティング(Casting)する方法などでコートすることができる。
【0049】
その後、前記コート層は段階(d)の1次および2次の乾燥段階を行うことによって形成される。
【0050】
前記1次乾燥段階は、本発明が水系バインダーを使用することによって水を蒸発させる過程であり得、その後、2次乾燥段階は、より高い温度で真空状態で加熱することによって、集電基材およびコート層に残っていることがある溶媒および不純物を除去する過程である。
【0051】
ここで、前記1次乾燥は例えば、60℃~100℃の範囲で3時間~8時間の間加熱して行われることができ、前記2次乾燥は例えば、100℃~150℃の範囲で6時間~24時間の間加熱して行われることができる。
【0052】
一方、本発明のまた他の一実施例によれば、前記負極集電体上にLi金属が堆積された負極、正極、および前記負極と正極の間に介在する分離膜を含む電極組立体、ならびにリチウム非水系電解質を含むリチウム金属電池が提供される。
【0053】
本発明による負極集電体を使用して、Li金属を堆積する場合、図1に示すように、リチウムと合金が可能な金属物質がシードとして作用してSi-Li合金(alloy)反応が起き、その後、Si-Li合金(Alloy)を中心に分極特性が大きい強誘電体とともに大きさが大きいLi顆粒(granule)が主に形成される。
【0054】
以下では、このような構成の本発明によるリチウム金属電池用負極集電体を使用して本発明が意図した電気化学性能分析し、これを説明する。
【0055】
実験には、代表的に強誘電体であるBaTiOとリチウムと合金可能な金属物質として、Si、Ge、Sn、SnOを選択して強誘電体/リチウムと合金可能な金属物質コート層の例として説明するが、強誘電体特性を有するいかなる物質や、Liと合金可能な他のすべての物質にも適用される。
【0056】
具体的には、前記実験は強誘電体とリチウムと合金可能な金属物質の組成を異にしてコート層スラリーを形成する段階;コート層スラリーがコートされたCu集電基材での溶媒揮発段階;コート層スラリーがコートされたCu集電基材でのリチウム堆積挙動分析段階;強誘電体の役割を分析する段階;リチウムと合金可能な金属物質の役割を分析する段階;電気化学性能分析段階により効果を確認した。
【0057】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0058】
[実施例1]
銅集電基材の表面にBaTiO/Micro Siコーティングを形成した。
【0059】
粉末状態のBaTiO(サムスン電機)112.5mg、Micro Si(シグマアルドリッチ、D50:0.1~1μm)7.5mg、super P(IMERYS)7.5mgを乳鉢で混合した。
【0060】
次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)1.125gと混合した後バイアルで6時間撹拌した。二次粒子を最大に減らすために撹拌子とバイアル表面の摩擦を用いて二次粒子を粉砕する。この時、コーティングスラリーの粘度を確認した時、濃厚な場合は脱イオン水(DI water)を20μLずつ添加してコーティングスラリー濃度を薄くする。
【0061】
前記コーティングスラリーをコートする厚さ20μmの電極用銅箔(Wellcos)表面の有機物と無機物を脱イオン水(DI water)とアセトン(Acetone)で除去する。
【0062】
前記コーティングスラリーを洗浄された銅箔の上に塗布した後、ドクターブレードを用いて高さ12μmにキャスティングする。
【0063】
スラリーコートされた電極を空気雰囲気、80℃で6時間乾燥して溶媒を揮発させた後、真空雰囲気、130℃で12時間乾燥して残っている溶媒および不純物を除去する。
【0064】
前記過程により、銅電極の上に厚さ3~5μmのBaTiO/Micro Siコート層を形成して負極集電体を製造した。図2は形成されたBTO/Micro Si負極集電体の上面を示した。
【0065】
[実施例2]
銅集電電極の表面にBaTiO/Micro Siコーティングを形成した。
【0066】
粉末状態のBaTiO(サムスン電機)105mg、Micro Si(シグマアルドリッチ、D50:0.1~1μm)15mg、super P(IMERYS)15mgを乳鉢で混合した。
【0067】
次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)0.75gと混合した後バイアルで6時間撹拌したことを除いては前記実施例1と同様に負極集電体を製造した。
【0068】
[実施例3]
銅集電電極の表面にBaTiO/Micro Geコーティングを形成した。
【0069】
粉末状態のBaTiO(サムスン電機)112.5mg、Micro Ge(シグマアルドリッチ、D50:0.1~1μm)7.5mg、super P(IMERYS)7.5mgを乳鉢で混合した。
【0070】
次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)1.125gと混合した後バイアルで6時間撹拌したことを除いては前記実施例1と同様に負極集電体を製造した。
【0071】
[実施例4]
銅集電電極の表面にBaTiO/Nano Snコーティングを形成した。
【0072】
粉末状態のBaTiO(サムスン電機)112.5mg、Nano Sn(シグマアルドリッチ、D50:50~400nm)7.5mg、super P(IMERYS)7.5mgを乳鉢で混合した。
【0073】
次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)1.125gと混合した後バイアルで6時間撹拌したことを除いては前記実施例1と同様に負極集電体を製造した。
【0074】
[実施例5]
銅集電電極の表面にBaTiO/Nano SnOコーティングを形成した。
【0075】
粉末状態のBaTiO(サムスン電機)112.5mg、Nano SnO(シグマアルドリッチ、D50:30~200nm)7.5mg、super P(IMERYS)7.5mgを乳鉢で混合した。
【0076】
次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)1.125gと混合した後バイアルで6時間撹拌したことを除いては前記実施例1と同様に負極集電体を製造した。
【0077】
[比較例1]
厚さ20μmの電極用銅箔(Wellcos)の表面にいかなるコート層処理も行わず、脱イオン水(Di water)およびアセトン(Acetone)で無機物/有機物を除去した後真空雰囲気、130℃、12時間乾燥してコート層形成以外の実験条件を同様にした。
【0078】
[比較例2]
誘電体(Dielectric)物質Alを用いて厚さ20μmの電極用銅箔(Wellcos)の表面にコート層を形成した。
【0079】
具体的には、粉末状態のAl(シグマアルドリッチ、D50:0.1~1μm)を遊星ボールミル(Planetary ball mill)を用いて粉砕した。ZrO筒に0.5mm、1.0mm直径のZrOボールと2:1:1の体積比で混合した後アセトンを入れて500rpmで10時間粉砕した。その後、篩でZrOボールを濾してホットプレートを使用して空気(Air)雰囲気、120℃で加熱した。
【0080】
粉砕されたAl 120mg、super P(IMERYS)7.5mgを乳鉢で混合した。次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)1.5gと混合した後バイアルで6時間撹拌した。二次粒子を最大に減らすために撹拌子とバイアル表面の摩擦を用いて二次粒子を粉砕する。この時、コーティングスラリーの粘度を確認した時濃厚な場合は脱イオン水(DI water)を20μLずつ添加してコーティングスラリー濃度を薄くした。
【0081】
ただし、前記コーティングスラリーの粘度が非常に濃厚な場合は、シンキーミキサー(Thinky mixer)を用いた。前記コーティングスラリーをシンキー(Thinky)コンテナに入れた後1mm ZrOボール(ball)5EAを添加して二次粒子を粉砕できるようにする。2000RPMで2分ずつ混合して、粘度を合わせるために脱イオン水(DI water)を20μLずつ添加する。粘度を調節した後2000RPMで20分混合した。
【0082】
前記混合スラリーをコートする厚さ20μmの電極用銅箔(Wellcos)の表面の有機物と無機物を脱イオン水(DI water)とアセトン(Acetone)で除去した。
【0083】
前記コーティングスラリーを洗浄された銅箔の上に塗布した後、ドクターブレードを用いて高さ12μmでキャスティングした。
【0084】
スラリーコートされた電極を空気(Air)雰囲気、80℃、6時間乾燥して溶媒を揮発させた後、真空雰囲気、130℃、12時間乾燥して残っている溶媒および不純物を除去した。
【0085】
前記過程により、銅電極の上に厚さ3~5μmのAlコート層を形成して負極集電体を製造した。
【0086】
[比較例3]
銅集電基材の表面にBaTiOコーティングを形成した。
【0087】
粉末状態のBaTiO(サムスン電機、300~400nm)112.5mg、super P(IMERYS)7.5mgを乳鉢で混合した。
【0088】
次に前記混合物をPAA水系バインダー(2wt%)1.5gと混合した後バイアルで6時間撹拌したことを除いては前記実施例1と同様に負極集電体を製造した。
【0089】
[実験例1]
リチウム堆積および構造評価
前記実施例1および比較例3により製造された負極集電体を用いて、リチウム堆積および堆積されたリチウムの構造を確認するためにSEM写真を撮影して分析を実施し、これによる結果を図3および図4に示した。
【0090】
直径11mmの負極集電体、直径10mmのLi金属を用いて負極集電体の表面に直径10mmのLiを堆積した。これは、前記負極集電体の大きさがリチウム金属より小さい場合、縁にリチウムが堆積される現象が発生するので前記負極集電体の大きさは使用するリチウム金属の直径より大きくした。
【0091】
このときの反応面積はLiの直径である10mmであるから、10mmを基準として電流を計算した。この時、0.5mA/cm電流密度の場合は各1時間、8時間Li堆積をし、4.0mA/cmの場合は7分30秒、1時間Li堆積してLi堆積量を0.5mAh/cm、4.0mAh/cmに合わせてLiを負極集電体上に形成した。
【0092】
この時、1M LiTFSIがDOL(1,3-ジオキソラン(dioxolane)):DME(1,2-ジメトキシエタン(dimethoxyethane))が1:1v/vの溶媒に溶けた電解質に1wt%のLiNOを添加した電解質を使用した。
【0093】
その後、Liの堆積挙動を調べるために、セルを分解した後、Li堆積されたサンプルを回収してAr雰囲気グローブボックスの内部でDOL(1,3-ジオキソラン(Dioxolane))揮発性溶剤に1分間洗浄した後溶媒を揮発させた。回収したサンプル(Sample)のSEMイメージ撮影のために堆積されたリチウムが外部空気と反応することを最小化するためにArガスで満たしたバイアルに入れた後SEM撮影直前まで空気中の露出を最小化した。堆積されたLiの中央付近の複数の地点を任意に選択して測定して代表できるイメージを取得した。
【0094】
図3は比較例3、BTOのみコートされた負極集電体での堆積されたLi形態である。具体的には、図3の1-1は、0.5mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージであり、図3の1-2は、0.5mA/cmの電流密度で8時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。図3の2-1は、4.0mA/cmの電流密度で7分30秒Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージであり、図3の2-2は、4.0mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。
【0095】
図4は実施例1、BTO/Mciro Siコートされた負極集電体での堆積されたLi形態である。具体的には、図4の1-1は、0.5mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージであり、図4の1-2は、0.5mA/cmの電流密度で8時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。図4の2-1は、4.0mA/cmの電流密度で7分30秒Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージであり、図4の2-2は、4.0mA/cmの電流密度で1時間Li堆積した後それをSEMで撮影したイメージである。
【0096】
図3を参照すると、BTOコーティングサンプル(Sample)の場合、堆積初期段階には細長い(Elongated)Liで構成されたLiクラスター(cluster)が形成された後、互いに成長して合わさって最終的に稠密(Dense)なLi構造体(structure)が形成された。これはいかなるコート層も形成されない比較例1においても類似に示された。
【0097】
ただし、4.0mA/cm電流密度条件でコート層が形成されていない負極集電体の場合、Li堆積初期段階で小さいLi核(nuclei)が銅電極全面に密に形成された後これらが垂直方向に成長して最終的に多孔性Li構造を形成することを確認した。
【0098】
一方、図3および図4を参照すると、4.0mA/cm電流密度条件でBTOコーティング負極集電体の場合、Li堆積初期段階で大きさが小さい細長い(elongated)Liクラスター(cluster)が形成された後、これらが成長して合わさって銅集電電極の場合より稠密(Dense)なLi構造体(structure)が形成された。
【0099】
ただし、4.0mA/cm電流密度条件でBTO/Siコーティング負極集電体の場合、Li堆積初期段階にはSi-Li合金(alloy)反応が起き、その後、Si-Li合金(Alloy)を中心に大きさが大きいLi顆粒(granule)が主に形成されることを確認することができる。
【0100】
[実験例2]
電気化学性能の評価
実施例1ならびに比較例1および3により準備された負極集電体を使用して実験例1のように製造したリチウム金属電池の電気化学特性評価は定電流法を用いて行われ、1.0mAh/cmのLi堆積後、同じ電流密度で0.5V電圧に到達するまでLi脱着を行って堆積されたLiに対して脱着されたLi量の比率(クーロン効率)を分析する。電流密度は0.5mA/cm、2.0mA/cm、3.0mA/cmの強度で常温で行った。
【0101】
実施例1ならびに比較例1および3により製造された負極集電体のサイクルによる電気化学性能の評価結果を図5および下記の表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1に示すように、本発明のコート層を形成した実施例1および比較例3により製造した負極集電体を使用する場合、0.5mA/cm基準100サイクル後のクーロン効率を調べると、97.66%、98.51%で比較例1と比較して14%以上の電気化学効率を有することを確認することができる。
【0104】
2.0mA/cm基準100サイクル後のクーロン効率を調べると、94.39%、95.96%で比較例1と比較して11%以上の電気化学効率を有することを確認した。
【0105】
3.0mA/cm基準100サイクル後のクーロン効率を調べると、68%、95.08%、97.39%で比較例1と比較して17%以上の電気化学効率を有することを確認した。
【0106】
ただし、BTOのみコート層に含む場合(比較例3)に比べて、Siも共に含ませる場合(実施例1)に向上率がより高いことを確認することができる。
【0107】
また、図5で確認できるように実施例1によりコート層を形成したサンプルの場合、コート層を形成しなかった比較例1とBTOのみを含むコート層を形成した比較例3に比べて安定的でかつ全体平均クーロン効率が増加したことを確認することができ、比較例1<比較例3<実施例1の順にこのような傾向がサイクルが増加するほど目立つことが分かる。
【0108】
[実験例3]
コート層の効果分析・強誘電体物質の効果
使用したコート層に含まれた強誘電体物質の効果を確認するために電極表面に蓄積されたイオンの量を測定するキャパシタンスを測定する。比較例1~3の方法で形成された直径11mm負極集電体と、対極としてLi金属を使用して、二つの電極のショートを防ぐために分離膜を追加してセルを構成した。
【0109】
前記セルに50μAの電流で電圧が0V~1.5Vになるまで電流を加え、このとき、集電電極表面に蓄積されたキャパシタンスの量を測定するために放電段階のキャパシタンスを測定する。この時、比較例1の場合、コート層がない純水集電体であるから重量当たりキャパシタンスを測定できないので、面積キャパシタンス(Areal Capacitance)を測定し、その方法は下記式のとおりである。
【0110】
【数1】
【0111】
I:電流大きさ、Δt:充電(放電)時間、A:電極断面積、ΔV:電圧範囲
【0112】
【表2】
【0113】
前記表2で確認できるようにBaTiOコーティング>Alコーティング>コーティングXの順にキャパシタンスが大きく測定され、測定された値の傾向が分極の大きさと同一であることを確認した。
【0114】
すなわち、BaTiOの高い分極(Polarity)特性により電極の周囲に高いイオン濃度領域が形成されたといえる。
【0115】
同様に、図6は比較例1~3を用いて電流密度によるLi堆積電圧プロファイル(deposition voltage profile)を示す図である。図6で確認できるように、比較例3の場合、比較例1と比較したとき、初期Li核生成(nucleation)段階で大きなLi核生成アンダーポテンシャル(nucleation under potential)が示されることを確認した。これは、集電電極の上にコートされた不導体層によるもので、Li核生成(nucleation)が起きにくいからである。とりわけ、比較例3の場合、アンダーポテンシャル(Under-potential)が早く回復してLi成長(growth)段階で比較例1よりかえって小さいアンダーポテンシャル(Under-potential)を有することを確認した。誘電体(Dielectric)物質を使用した比較例2の場合、Li核生成(nucleation)段階およびLi成長(growth)段階すべてにおいて比較例1より大きいアンダーポテンシャル(Under-potential)を有することを確認した。まとめると、BaTiOの高い分極特性により電極の周囲に高いLiイオン濃度領域が形成されてイオン空乏領域が緩和されることができた。これによって、高い電流密度でもLi成長挙動(growth behavior)が多孔性構造を引き起こすデンドライト成長(Dendritic Growth)よりは0.5mA/cm電流密度条件と類似の成長挙動(growth behavior)を示して稠密(Dense)なLi構造を形成させることができる。したがって、誘電体として、誘電率が増加するほど線形的にキャパシタンスが増加し、したがって、一般的な誘電体を使用するときより強誘電体を使用することが優れた効果を有し得ることが分かる。結論的に、BTOと類似の誘電率の強誘電体を使用する場合、本願の効果を達成することができる。
【0116】
[実験例4]
コート層の効果分析-リチウムと合金可能な金属物質の効果
使用したコート層に含まれたSi物質の効果を確認するためにBTO/Siコート層のSi wt%を調節してリチウム堆積実験およびその時の電圧プロファイル(Voltage profile)を確認する。すなわち、比較例3、実施例1~2の方法で形成された直径11mm負極集電体を使用して、対極としてLi金属を使用し、二つの電極のショートを防ぐために分離膜を追加してセルを構成した。
【0117】
Li核生成(nucleation)および成長(Growth)段階のアンダーポテンシャル(Under-potential)を分析するために4.0mAh/cmのLiを4.0mA/cm電流密度で1時間Liを堆積し、この時、測定された電圧プロファイル(Voltage profile)のLi核生成アンダーポテンシャル(nucleation under-potential)を分析してwt%による核生成アンダーポテンシャル(Nucleation-under potential)を確認した。その結果を図7に示した。
【0118】
図7で確認できるようにBTO/Siコート層に含まれたSi wt%が増加するほど、核生成(Nucleation)段階でのLiアンダーポテンシャル(under-potential)が減ってSiを含まない比較例3より小さいアンダーポテンシャル(Under-potential)を有することを確認することができる。すなわち、Siが含まれる場合、核生成アンダーポテンシャル(Nucleation under potential)が減って、Si量が増加するほど減少幅が大きくなることから、コート層に含まれたSiはLi核生成サイト(nucleation site)として作用すると解釈することができる。
【0119】
また、使用したコート層に含まれたリチウムと合金可能な金属物質の効果を確認するためにリチウムと合金可能な金属物質を変更して(Ge、Sn、SnO)リチウム堆積実験およびその時の電圧プロファイル(Voltage profile)を確認する。すなわち、比較例3、実施例1、3~5の方法で形成された直径11mm負極集電体を使用して、対極としてLi金属を使用し、二つの電極のショートを防ぐために分離膜を追加してセルを構成した。
【0120】
Li核生成(nucleation)および成長(Growth)段階のアンダーポテンシャル(Under-potential)を分析するために1.0mAh/cmのLiを0.5mA/cm電流密度で2時間Liを堆積し、この時、測定された電圧プロファイル(Voltage profile)のLi核生成アンダーポテンシャル(nucleation under-potential)を分析し、その結果を図8に示し、図9図12にはLi堆積された形状を示したSEM上面、および断面写真を示した。
【0121】
図8を参照すると、Siを含まない比較例3よりSn、SnO、Ge、Siすべてより小さいアンダーポテンシャル(Under-potential)を有することを確認することができる。さらに、SiとGeが含まれる場合、核生成アンダーポテンシャル(Nucleation under potential)が最も多く減って、SnおよびSnOはSiやGeよりは少ないが、比較例3よりは多く減少することを確認することができる。
【0122】
一方、図9図12を参照すると、Si、またはGeを添加した場合、同様にLi核生成サイト(nucleation site)として作用してBTO/Si層またはBTO/Ge層の内部にリチウム堆積が誘導されることを確認することができ、この場合、核生成(Nucleation)段階でのLiアンダーポテンシャル(under-potential)が減少したことも確認した。
【0123】
反面、Sn、またはSnOのように粒子大きさが小さい物質を添加した場合、内部堆積が抑制されて主にコート層の上部で球状様(sphere-like)Liが堆積されたことを確認することができる。したがって、前記図8からわかるように、核生成(Nucleation)段階でのLiアンダーポテンシャル(under-potential)が減少するが、SiやGe程度に効果的ではないことを確認することができる。
【0124】
このように前記実施例の結果から、本発明による方法によれば、強誘電体の高い分極特性とリチウムイオン間の相互作用によって電極の周囲に高いリチウムイオン濃度領域が形成され、リチウムと合金が可能な金属物質によってリチウム核生成サイトが形成されることにより、高い電流密度条件でも向上した電気化学リチウム堆積挙動およびそれによる稠密なリチウム堆積構造の形成、向上したそして安定したクーロン効率を得ることができる。
【0125】
また、本発明による方法はスラリーキャスティング工程による低い価格、高い生産性そしてシンプルな工程により大量生産に適する長所がある。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明による負極集電体は、強誘電体物質とLiイオンの間の相互作用により、電極の周囲の高いLiイオン濃度を形成し、Liと合金反応を起こすリチウムと合金可能な金属物質が核生成シードとして作用して核生成に必要なアンダーポテンシャル(Under-potential)を低くして3D構造を有する稠密なLi構造形成および電気化学性能を向上させることができる。
【0127】
また、本発明によりスラリー形態でコート層を製造することによって、既存の堆積などのコーティング工程に比べて工程コストおよび時間を低減させることができ、大量生産に適する長所がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12