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特許7536351UV-LED付き音声ドライバーおよびイヤホン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】UV-LED付き音声ドライバーおよびイヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
H04R1/10 104E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023177299
(22)【出願日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】202322667353.4
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520272961
【氏名又は名称】ウェンジョウ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Wenzhou University
【住所又は居所原語表記】Chashan Academic Town, Ouhai, Wenzhou, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】井芹 寧
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ 愛民
(72)【発明者】
【氏名】熊 柄
(72)【発明者】
【氏名】鄭 向勇
(72)【発明者】
【氏名】趙 敏
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0955033(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0337294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤホンに用いられる音声ドライバーであって、
外気を内部に取り込む吸気口を有する筐体と、
前記筐体内に設けられた音声ドライバーユニットであって、前記音声ドライバーユニットに入力される音声電気信号に基づいて振動する振動板を備える前記音声ドライバーユニットと、
前記筐体内に設けられ、前記イヤホンが耳に装着された状態で前記筐体内部と外耳道とを通気させることができる通気部と、
前記筐体に設けられ、前記イヤホンが耳に装着された状態で前記外耳道の内部と外部を連通させる排気部と、
前記筐体内に設けられ、前記筐体内の空気を照射するUV-LEDモジュールと
を備えることを特徴とするUV-LED付き音声ドライバー。
【請求項2】
前記吸気口には吸気弁が設けられ、前記通気部には通気弁が設けられ、前記排気部には排気弁が設けられており、
前記振動板が前記筐体の内部から離れる方向を前方向とし、筐体の内部に近づく方向を後方向とする前後方向を設定した場合に、
前記振動板が前記音声電気信号に基づいて前記前方向に振動すると、前記吸気弁が開き、前記通気弁が閉じられ、前記排気弁が開き、
前記振動板が前記音声電気信号に基づいて前記後方向に振動すると、前記吸気弁が閉じられ、前記通気弁が開き、前記排気弁が閉じられる
ことを特徴とする請求項1に記載のUV-LED付き音声ドライバー。
【請求項3】
前記通気部は、前記振動板を前記筐体に支持する部分に開口した開口部として形成され、前記開口部に前記通気弁が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のUV-LED付き音声ドライバー。
【請求項4】
前記UV-LEDモジュールは、発光波長が253~315nm内のUV-LEDを備えることを特徴とする請求項2に記載のUV-LED付き音声ドライバー。
【請求項5】
前記UV-LEDモジュールは、発光波長が275~280nm内のUV-LEDと発光波長265nmのUV-LEDとを備える複合UV-LEDモジュールであることを特徴とする請求項4に記載のUV-LED付き音声ドライバー。
【請求項6】
前記吸気口が形成された壁と前記音声ドライバーユニットとの間の前記筐体の側壁には、前記筐体の内部空間を前記前後方向に仕切り、部分的に開口している仕切り板と、前記前後方向において前記仕切り板と離間して前記仕切り板の開口を遮蔽するように配置されたバッフルとが設けられ、
前記UV-LEDモジュールは、前記吸気口が形成された前記壁と前記仕切り板と前記バッフルとで囲まれた空間内に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のUV-LED付き音声ドライバー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のUV-LED付き音声ドライバーを備えることを特徴とするイヤホン。
【請求項8】
イヤホンであって、
外気を内部に取り込む吸気口を有し、耳に入る側に放音ノズルを有するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、前記ハウジングの内部を前記放音ノズル側の前部空気室と前記吸気口側の後部空気室とに分割する音声ドライバーユニットであって、前記音声ドライバーユニットに入力される音声電気信号に基づいて振動する振動板を備える音声ドライバーユニットと、
前記ハウジング内に設けられ、前記後部空気室と前記前部空気室とを通気させる通気部と、
前記放音ノズルの壁に外嵌され、外耳道内に挿入されるイヤーピースと、
前記ハウジング内に設けられ、前記ハウジング内の空気を照射するUV-LEDモジュールと
を備え、
前記イヤーピースには、前記イヤホンが耳に装着された状態で外耳道の内部と外部を連通させる排気部が穿設されていることを特徴とするイヤホン。
【請求項9】
前記吸気口には吸気弁が設けられ、前記通気部には通気弁が設けられ、前記排気部には排気弁が設けられており、
前記振動板を前記放音ノズルに近づく方向を前方向とし、前記放音ノズルから離れる方向を後方向とする前後方向を設定した場合に、
前記振動板が前記音声電気信号に基づいて前記前方向に振動すると、前記吸気弁が開き、前記通気弁が閉じられ、前記排気弁が開き、
前記振動板が前記音声電気信号に基づいて前記後方向に振動すると、前記吸気弁が閉じられ、前記通気弁が開き、前記排気弁が閉じられる
ことを特徴とする請求項8に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記UV-LEDモジュールは、発光波長が253~315nm内のUV-LEDを備えることを特徴とする請求項9に記載のイヤホン。
【請求項11】
前記UV-LEDモジュールは、発光波長が275~280nm内のUV-LEDと発光波長265nmのUV-LEDとを備える複合UV-LEDモジュールであることを特徴とする請求項10に記載のイヤホン。
【請求項12】
前記イヤホンの動作を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、
ユーザからの動作モードを指示するモード命令を受け取り、当該モード命令に基づいて前記イヤホンの前記動作モードを切り替え、弁制御命令と光源制御命令と出力するモード切替部と、
前記モード切替部からの前記弁制御命令を受け取り、当該弁制御命令に基づいて前記吸気弁と前記通気弁と前記排気弁の各弁のロック要否を制御する弁制御部と、
前記モード切替部からの前記光源制御命令を受け取り、当該光源制御命令に基づいて前記UV-LEDモジュールのオンオフを制御する光源制御部と
を備えることを特徴とする請求項に記載のイヤホン。
【請求項13】
前記動作モードは、少なくとも密閉モードと開放モードを含み、
前記モード切部は、受け取った前記モード命令が前記密閉モードを示すと判定した場合、弁ロック命令と光源オフ命令を出力し、
前記弁制御部は、前記モード切部からの前記弁ロック命令に基づいて前記吸気弁と前記通気弁と前記排気弁の各弁を閉状態にロックし、
前記光源制御部は、前記モード切部からの前記光源オフ命令に基づいて前記UV-LEDモジュールをオフにし、
前記モード切部は、受け取った前記モード命令が前記開放モードを示すと判定した場合、弁ロック解除命令と光源オン命令を出力し、
前記弁制御部は、前記モード切部からの前記弁ロック解除命令に基づいて、前記振動板の振動に伴って前記各弁が自由に開閉できるように、前記各弁のロックを解除し、
前記光源制御部は、前記モード切部からの前記光源オン命令に基づいて、前記UV-LEDモジュールをオンにする、
ことを特徴とする請求項12に記載のイヤホン。
【請求項14】
前記外耳道内の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記動作モードは、睡眠誘導モードをさらに含み、
前記モード切替部は、受け取った前記モード命令が前記睡眠誘導モードを示すと判定した場合、弁ロック解除命令と光源調節命令を出力し、
前記弁制御部は、前記モード切替部からの前記弁ロック解除命令に基づいて、前記振動板の振動に伴って前記各弁が自由に開閉できるように、前記各弁のロックを解除し、
前記光源制御部は、前記モード切替部からの前記光源調節命令に基づいて、前記UV-LEDモジュールをオンにするとともに、前記温度センサが検出する前記外耳道内の温度を取得し、当該外耳道内の温度に基づいて、前記外耳道内の温度が所定温度になるように、前記UV-LEDモジュールの波長、照度又は照射時間の少なくとも1つを制御する、
ことを特徴とする請求項13に記載のイヤホン。
【請求項15】
前記イヤホンに設けられ、前記ユーザの前記モード命令の入力を受け付け、入力された前記モード命令を電気信号として前記制御部に伝送するモードボタンをさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のイヤホン。
【請求項16】
前記制御部は、外部装置から前記ユーザが入力した前記モード命令を無線通信または有線通信により受信する通信部をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、イヤホンの分野に関し、特に、イヤホン用の音声ドライバーおよびイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速なスマートフォンや小型音楽プレイヤーの普及に伴い、イヤホンを装着して音楽を鑑賞する人々が増加している。従来のイヤホンの多くは装着時に外耳道の密閉するタイプである。例えば、インイヤーイヤホンの耳への装着は樹脂製のイヤーピースを外耳道に挿入し密着させる。また、ヘッドホンの装着は、イヤパッドを耳に密着させる。このような密閉の状態では、外耳道は外気から隔離され、長時間の装着はユーザーに不快感を与えるとともに、外耳道の湿潤化による細菌類や真菌類の増殖が原因となって、外耳道の皮膚炎等の疾病が発生する恐れがある。
【0003】
従来、特許文献1のように、モーターファンを利用して換気するイヤホンが提案されているが、このような換気方法は、モータの稼働の騒音が音楽鑑賞に影響するため、複雑なノイズキャンセリング機構を必要とし、汎用性に乏しい。
【0004】
また、疾病防止に関連する技術として、皮膚と接するイヤーピースの素材を抗菌仕様にする程度で、抜本的対策技術は、現時点では開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】CN212324316U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、イヤホンを耳に装着している時、外耳道内の空気は密閉された状態で、体温と同程度の温度に安定し、体表から発生する水分による湿度の増加が問題となる。温度安定化と湿度の増加による細菌類、真菌類の増殖が生じ、外耳炎などの疾病の発生が生じる。イヤホン装着による外耳の発病を防ぐためには、外耳道内の空気の換気や浄化が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願では、上記した課題の少なくとも1つを解決するために、UV-LED付き音声ドライバーおよびイヤホンを提出する。
本願では、上記の課題の少なくとも1つを解決するために、耳に装着した状態で紫外線照射して殺菌した空気を外耳道内に送り通気し、細菌類、真菌類の増殖を防ぎ、外耳炎などの耳の病気を予防することができるイヤホンに用いられるUV-LED付き音声ドライバーおよびイヤホンを提出する。
【0008】
本願の第1の側面によれば、イヤホンに用いられる音声ドライバーであって、外気を内部に取り込む吸気口を有する筐体と、筐体内に設けられた音声ドライバーユニットであって、音声ドライバーユニットに入力される音声電気信号に基づいて振動する振動板を備える音声ドライバーユニットと、筐体内に設けられ、イヤホンが耳に装着された状態で筐体内部と外耳道とを通気させることができる通気部と、筐体に設けられ、イヤホンが耳に装着された状態で外耳道の内部と外部を連通させる排気部と、筐体内に設けられ、筐体内の空気を照射するUV-LEDモジュールとを備えるUV-LED付き音声ドライバーを提出する。
【0009】
好ましくは、吸気口には吸気弁が設けられ、通気部には通気弁が設けられ、排気部には排気弁が設けられており、振動板が筐体の内部から離れる方向を前方向とし、筐体の内部に近づく方向を後方向とする前後方向を設定した場合に、振動板が音声電気信号に基づいて前方向に振動すると、吸気弁が開き、通気弁が閉じられ、排気弁が開き、振動板が音声電気信号に基づいて後方向に振動すると、吸気弁が閉じられ、通気弁が開き、排気弁が閉じられる。
【0010】
好ましくは、通気部は、振動板を筐体に支持する部分に開口した開口部として形成され、開口部に通気弁が設けられている。
【0011】
好ましくは、UV-LEDモジュールは、発光波長が253~315nm内のUV-LEDを備える。
【0012】
好ましくは、UV-LEDモジュールは、発光波長が275~280nm内のUV-LEDと発光波長265nmのUV-LEDとを備える複合UV-LEDモジュールである。
【0013】
好ましくは、吸気口が形成された壁と音声ドライバーユニットとの間の筐体の側壁には、筐体の内部空間を前後方向に仕切り、部分的に開口している仕切り板と、前後方向において仕切り板と離間して仕切り板の開口を遮蔽するように配置されたバッフルとが設けられ、UV-LEDモジュールは、吸気口が形成された壁と仕切り板とバッフルとで囲まれた空間内に設けられている。
【0014】
本願の第2の側面によれば、上記のUV-LED付き音声ドライバーを備えるイヤホンを提出する。
【0015】
本願の第3の側面によれば、外気を内部に取り込む吸気口を有し、耳に入る側に放音ノズルを有するハウジングと、ハウジング内に設けられ、ハウジングの内部を放音ノズル側の前部空気室と吸気口側の後部空気室とに分割する音声ドライバーユニットであって、音声ドライバーユニットに入力される音声電気信号に基づいて振動する振動板を備える音声ドライバーユニットと、ハウジング内に設けられ、後部空気室と前部空気室とを通気させる通気部と、放音ノズルの壁に外嵌され、外耳道内に挿入されるイヤーピースと、ハウジング内に設けられ、ハウジング内の空気を照射するUV-LEDモジュールとを備え、イヤーピースには、イヤホンが耳に装着された状態で外耳道の内部と外部を連通させる排気部が穿設されているイヤホンを提出する。
【0016】
好ましくは、吸気口には吸気弁が設けられ、通気部には通気弁が設けられ、排気部には排気弁が設けられており、振動板を放音ノズルに近づく方向を前方向とし、放音ノズルから離れる方向を後方向とする前後方向を設定した場合に、振動板が音声電気信号に基づいて前方向に振動すると、吸気弁が開き、通気弁が閉じられ、排気弁が開き、振動板が音声電気信号に基づいて後方向に振動すると、吸気弁が閉じられ、通気弁が開き、排気弁が閉じられる。
【0017】
好ましくは、UV-LEDモジュールは、発光波長が253~315nm内のUV-LEDである。
【0018】
好ましくは、UV-LEDモジュールは、発光波長が275~280nm内のUV-LEDと発光波長265nmのUV-LEDとを備える複合UV-LEDモジュールである。
【0019】
好ましくは、上記イヤホンは、イヤホンの動作を制御する制御部をさらに備え、制御部は、ユーザからの動作モードを指示するモード命令を受け取り、当該モード命令に基づいてイヤホンの動作モードを切り替え、弁制御命令と光源制御命令と出力するモード切替部と、モード切替部からの弁制御命令を受け取り、当該弁制御命令に基づいて吸気弁と通気弁と排気弁の各弁のロック要否を制御する弁制御部と、モード切替部からの光源制御命令を受け取り、当該光源制御命令に基づいてUV-LEDモジュールのオンオフを制御する光源制御部とを備える。
【0020】
好ましくは、動作モードは、少なくとも密閉モードと開放モードを含み、モード切換部は、受け取ったモード命令が密閉モードを示すと判定した場合、弁ロック命令と光源オフ命令を出力し、弁制御部は、モード切換部からの弁ロック命令に基づいて吸気弁と通気弁と排気弁の各弁を閉状態にロックし、光源制御部は、モード切換部からの光源オフ命令に基づいてUV-LEDモジュールをオフにし、モード切換部は、受け取ったモード命令が開放モードを示すと判定した場合、弁ロック解除命令と光源オン命令を出力し、弁制御部は、モード切換部からの弁ロック解除命令に基づいて、振動板の振動に伴って各弁が自由に開閉できるように、各弁のロックを解除し、光源制御部は、モード切換部からの光源オン命令に基づいて、UV-LEDモジュールをオンにする。
【0021】
好ましくは、上記イヤホンは、外耳道内の温度を検出する温度センサをさらに備え、動作モードは、睡眠誘導モードをさらに含み、モード切替部は、受け取ったモード命令が睡眠誘導モードを示すと判定した場合、弁ロック解除命令と光源調節命令を出力し、弁制御部は、モード切替部からの弁ロック解除命令に基づいて、振動板の振動に伴って各弁が自由に開閉できるように、各弁のロックを解除し、光源制御部は、モード切替部からの光源調節命令に基づいて、UV-LEDモジュールをオンにするとともに、温度センサが検出する外耳道内の温度を取得し、当該外耳道内の温度に基づいて、外耳道内の温度が所定温度になるように、UV-LEDモジュールの波長、照度又は照射時間の少なくとも1つを制御する。
【0022】
好ましくは、上記イヤホンは、イヤホンに設けられ、ユーザのモード命令の入力を受け付け、入力されたモード命令を電気信号として制御部に伝送するモードボタンをさらに備える。
好ましくは、制御部は、外部装置からユーザが入力したモード命令を無線通信または有線通信により受信する通信部をさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
本出願によれば、外耳道に送る空気を照射して殺菌するUV-LEDモジュールを設けるとともに、外部空気を取り入れ、外耳道に通気することで外耳道内の換気を行う換気路を構築することにより、細菌類・真菌類の増殖を防ぎ、ひいては外耳炎などの耳疾患を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係るイヤホンに用いられる音声ドライバーの構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るイヤホンの構成を示す模式図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係るイヤホンの制御部の構成を示す模式図である。
図4】上記制御部の各動作モードでの制御を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願の発明目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下、図面をを参照して本願の実施形態を詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記述された実施形態は単に本願を説明するためであり、本願を限定するものではない。
【0026】
以下、図1を参照して、本願に係るイヤホンに用いられるの音声ドライバーについて説明する。本願に係る音声ドライバーは、インイヤー型イヤホン、ハーフインイヤー型イヤホン、ヘッドホン等の各種のイヤホンに搭載され、入力された音声電気信号に基づいて音声信号を生成して出力することができる。図1は、本出願の第1の実施形態による音声ドライバー1の構成を示す模式図である。
【0027】
図1に示すように、音声ドライバー1は、筐体11と、筐体11内に取り付けられた音声ドライバーユニットとを備えている。この音声ドライバーユニットは、支持部材111を介して筐体11に固定された振動板121と、振動板121に支持されたボイスコイル122と、ボイスコイル122の内側又は外側に配置されたマグネット123とを備えている。ここで、説明の便宜上、振動板121が筐体11の内部から離れる方向を前方向又は前方とし、振動板121が筐体1の内部に近づく方向を後方向又は後方とする前後方向を設定する。磁界中のボイスコイル122に音声電気信号が入力されると、音声電気信号に伴って変化する磁界が発生し、この磁界と磁石123の磁界とが相互作用して、ボイスコイル122を図中の前後方向に沿って振動させ、振動板121を駆動して周囲の空気に相応の前後振動を発生させ、これにより機械エネルギー(運動エネルギー)を音エネルギーに変換し、音を発生させる。
【0028】
音声ドライバー1は、筐体11に外気が筐体11内に入る吸気口112が開口している。吸気口112には、吸気弁1121が設けられており、吸気弁1121は、振動板121が音声電気信号に基づいて前方に移動(振動)したときに開き、振動板121が後方に移動(振動)して元の位置に復帰したときに閉じる。
【0029】
音声ドライバー1は、通気部113をさらに備える。通気部113は、筐体11内に設けられ、音声ドライバー1が搭載されたイヤホンが耳に装着された状態で、筐体11内と外耳内とを通気させることができる。通気部113は、筐体11の内部と外部とを連通するチャネル状に形成されてもよいし、例えば筐体11に開口した開口状に形成されてもよい。本実施形態では、図1に示すように、通気部113は、支持部材111に開口することで開口状に形成されている。ただし、筐体11内部と外耳道内部との通気が可能であれば、その構成や設置位置は特に限定されない。また、通気部113に通気弁1131を設けてもよい。通気弁1131は、振動板121が音声電気信号に基づいて前方に移動したときに閉じ、振動板121が後方に移動して元の位置に復帰したときに開く。
【0030】
音声ドライバー1は、さらに、排気部114を備える。排気部114は、筐体11に設けられ、音声ドライバー1が搭載されたイヤホンが耳に装着された状態で外耳道の内部と外部を連通させる。さらに、排気部114は、外耳道内の空気を外耳道と音声ドライバー1の外部に排出させるように構成されてもよい。排気部114は、チャネル状に形成されてもよいし、開口状に形成されてもよく、耳に装着された場合に外耳道と外部とが連通可能であれば、その構成や設置位置は特に限定されない。本実施形態では、例えば、図1に示す筐体11の側壁の一部の内側に内壁を設け、当該側壁と内壁とにより排気部114としての前後端が開放しているチャネルを形成してもよい。また、このチャネル内又はその前方開口に排気弁1141を設けてもよい。排気弁1141は、振動板121が音声電気信号に基づいて前方に移動したときに開き、振動板121が後方に移動して元の位置に復帰したときに閉じる。
【0031】
イヤホンが耳に装着された状態で音声ドライバー1に音声電気信号が入力されると、振動板121はボイスコイル122の前後振動によって前後に移動する。振動板121が前方に移動すると、音声ドライバー1の前方の空間とそれに連通する外耳道内の空間が加圧され、排気弁1141が開放されることで、外耳道内の空気が排気部114を介して外耳道及びイヤホン外に押し出されると同時に、音声ドライバー1内の空気が負圧になって、通気弁1131が閉じられ、吸気弁1121が開き、外部の新鮮な空気が吸気口112から筐体11内に取り込まれる。そして、振動板121が前方に移動した状態から後方に移動して元の位置に復帰すると、音声ドライバー1の前方の空間とそれに連通する外耳道内の空間が負圧になり、排気弁1141が閉じられると同時に、筐体11の内部が加圧され、吸気弁1121が閉じられ、通気弁1131が開き、筐体11内の空気が通気部113を介して外耳道内に入る。このように、振動板121の前後移動につれて、外部の新鮮な空気が吸気口112から筐体11を介して外耳道内に送り込まれ、外耳道内の空気が外部に排出されていく。外耳道の換気路を設けて外耳道を換気することで、細菌類や真菌類の増殖を防ぐことができる。また、吸気弁、通気弁及び排気弁等の弁を設けることにより、空気の一方向流通を確保することができ、外耳道の換気をより効率的に行うことができる。
【0032】
本実施形態における吸気弁、通気弁、排気弁などの各弁としては、逆止弁であってもよい。例えば、既存のマイクロ型逆止弁を利用してもよく、好ましくは、既存の閉弁状態のロックを電気的に制御可能なマイクロ型逆止弁を利用してもよい。
【0033】
また、図1に示すように、音声ドライバー1は、紫外線光源として、UV-LEDモジュール13を備えていてもよい。UV-LEDモジュール13は、筐体11内に設けられ、筐体11内の空気を照射して殺菌することにより、殺菌された空気を外耳道に送ることができ、細菌類や真菌類の増殖をさらに防止することができる。ここで、UV-LEDモジュール13は、発光源としてUV-LED(UV Light Emitting Diode)を利用するものである。その発光波長は特に限定されないが、例えば、発光波長が253~315nm内のUV-LEDを備えってもよい。好ましくは発光波長が253~285nm、より好ましくは253~265nm内のUV-LEDを備えってもよい。特に好ましくは、UV-LEDモジュール13は、発光波長が275~280nm内のUV-LEDと発光波長265nmのUV-LEDとを備える複合UV-LEDモジュールであってもよい。
【0034】
紫外線は、殺菌・消毒によく使われる。紫外線光源として、UV-LEDは、一般の低圧紫外線灯と比較して、小型で、消費エネルギーが極小である。また、オン・オフ制御が容易であり、長寿命でイヤホン用として非常に適当である。また、UV-LEDは、単一の主波長のUV-LEDモジュールの形で利用することもできるし、複数の異なる波長のLEDを組み合わせて殺菌に効率的な複合波長のUV-LEDモジュールの形で利用することもできる。
【0035】
本願発明者らは、複合波長のUV-LEDランプ、単一波長のUV-LEDランプおよび低圧水銀紫外線ランプの殺菌効果を調べるために実験を行った。この実験では、藍色細菌(Cyanobacteria)を細菌類の例とし、265nmと280nmの複合波長を持つUV-LEDランプ、それぞれ265nmと280nmの単一主波長を持つUV-LEDランプ、低圧水銀紫外線ランプ(主波長253.7nm)などの紫外線ランプの殺菌効果を調べた。具体的には、水層厚さ5mmの藍色細菌(Microcystis spp. 約1000cells/0.1mL)を用意した。そして、該水溶液を攪拌しながら、各紫外線ランプの電力量(V×A)を約8Wに調整、液面から約15cmの位置から8分間照射した後、照度3000Lux且つ25℃で培養生存を確認したことろ、次の表1のような藍色細菌殺滅率(紫外線処理後殺滅細胞数/紫外線未照射処理細胞数*100%)を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
上の表からわかるように、265nmと280nmの複合波長による殺菌効果は、単一波長よりもはるかに優れている。ここで、藍色細菌を例に各紫外線ランプの殺菌効果を調べたが、外耳道疾患を起こしやすい細菌類・真菌類に対する紫外線殺菌効果は藍色細菌と同様のDNA構造破壊に基づくことから、外耳道疾患の原因となる細菌類・真菌類についても、265nmと280nmの複合波長の方の殺滅力が優れていることが上記表から容易にわかる。
【0038】
また、図1に示すように、吸気口112が形成された壁と音声ドライバーユニットとの間の筐体11の側壁に仕切り板115とバッフル板116を設けてもよい。仕切り板115は、筐体11の内部空間を前後方向に仕切っており、空気が通過するように部分的に開口している。バッフル板116は、前後方向において仕切り板115と離間して仕切り板115の開口を遮蔽する位置に設けられている。よって、吸気口112から入ってくる空気が仕切り板115及びバッフル板116に衝突して方向を変え、後続する空気と合流して乱流を発生させる。つまり、バッフル板116は、空気が通過できるように筐体11の側壁の一部に設けられている。このような構成において、UV-LEDモジュール13は、乱流の近傍に、例えば仕切り板115とバッフル板116と吸気口112が設けられた筐体11の壁とによって囲まれた空間内に配置されることが好ましく、よって、空気をより十分に照射することができ、より殺菌を行うことができる。本実施形態では、仕切り板115とバッフル板116を設けたが、仕切り板115とバッフル板116を設けなくてもよく、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0039】
UV-LEDモジュールで空気を照射すると、殺菌もできるし、空気を加熱することもできる。本発明者らは、外耳道内の空気温度が体温よりも若干高い場合、特に気温が低い場合に人が入眠しやすいことを見出した。本願において、UV-LEDモジュールを用いてイヤホン内の空気を照射することにより、イヤホン内の空気を殺菌するだけでなく、加熱することもできる。空気の加熱温度は、睡眠誘導の観点から体温よりも1~3℃程度高いことが好ましく、例えば、ユーザの正常体温が36℃であれば、空気を37~39℃程度に加熱することが好ましい。しかし、ユーザ個人の体質及び快適感に対する体験度が異なることを考慮して、個人の必要に応じて、空気の加熱温度を調整して、ユーザの最も快適な状態にすることができる。例えば、体温と同じ温度に設定してもよいし、体温よりも1℃以下高い温度であってもよいし、体温よりも3℃以上高い温度であってもよい。空気の加熱は、UV-LEDモジュールの波長、照度又は照射時間等の少なくとも1つを調節することにより、空気を予め設定された温度に加熱することができる。空気加熱のモニタリングは、本実施形態の音声ドライバー又はこれを搭載したイヤホンに温度センサを設置して行うことができる。ここで、温度センサは、外耳道内の温度として音声ドライバーやイヤホン内の空気温度を検出するように設けられていてもよいし、外耳道の温度を直接検出するように設けられていてもよい。UV-LEDモジュールの波長、照度又は照射時間の具体的な調節及び設定、温度センサの設置位置などは、当業者が本明細書を閲読した上、その専門知識を活用して、必要に応じて具体的に実現することができるので、ここでは説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、UV-LEDモジュール13は、仕切り板115及びバッフル板116の近傍に配置されているが、筐体11内の任意の位置に設けることができる。ここで、UV-LEDモジュールは、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数のUV-LEDモジュールを設置する場合、複数のUV-LEDモジュールが異なる位置に配置されてもよく、それぞれ波長、照度又は照射時間の少なくとも1つを設定して、各UV-LEDモジュールが異なる機能を果たすようにすることで、ユーザに良好な体験を持たせることができる。
【0041】
以上、本発明を各種のイヤホンに搭載可能な音声ドライバーとして実施する実施形態について説明したが、本発明は、イヤホンの形態で実施してもよい。以下、図2を参照して、本願の第2の実施形態に係るイヤホンについて説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係るイヤホン2の構成を示す模式図である。
【0042】
図2に示すように、イヤホン2は、ハウジング21を備えている。ハウジング21は、内部に外気を取り込む吸気口212を有し、また耳に入る側に放音ノズル215が設けられている。イヤホン2は、外耳道内に挿入されるイヤーピース24をさらに備え、該イヤーピース24は、放音ノズル215の壁に取り外し可能に外嵌されている。また、ハウジング21内には、ハウジング21内に支持部材219を介して固定された振動板221と、振動板221に支持されたボイスコイル222と、ボイスコイル222に嵌設されたマグネット222とを備える音声ドライバーユニットが取り付けられている。音声ドライバーユニットは、ハウジング21の内部を、放音ノズル側の前部空気室216と、吸気口側の後部空気室217とに分割する。本実施形態では、例えば、振動板221と支持部材211とによって、ハウジング21内部を前部空気室216と後部空気室217とに分割している。ここで、説明の便宜上、振動板221が放音ノズル215に近づく方向を前方向又は前方とし、振動板221が放音ノズル215から離れる方向を後方向又は後方とするする前後方向を設定する。第1の実施形態と同様に、磁界中のボイスコイル222に音声電気信号が入力されると、音声電気信号に伴って変化する磁界が発生し、この磁界と磁石222の磁界とが相互作用して、ボイスコイル222を図中の前後方向に沿って振動させ、振動板221を駆動して周囲の空気に相応の前後振動を発生させて、ことにより、機械エネルギーを音エネルギーに変換し、音を発生させる。
【0043】
吸気口212には、吸気弁2121が設けられており、吸気弁2121は、振動板221が音声電気信号に基づいて前方に移動したときに開き、振動板221が後方に移動して元の位置に復帰したときに閉じる。
【0044】
イヤホン2は、通気部213をさらに備える。通気部213は、ハウジング21内に設けられ、後部空気室216と前部空気室217とを通気させる。通気部213は、筐体の内部と外部とを連通するチャネル状としてもよいし、例えば筐体に開口した開口状としてもよい。本実施形態では、通気部213は、支持部材211に開口することで開口状に形成されている。ただし、後部空気室216と前部空気室217との通気が可能であれば、その構成や設置位置は特に限定されない。また、通気部213に通気弁2131を設けてもよい。通気弁2131は、振動板221が音声電気信号に基づいて前方に移動したときに閉じ、振動板221が後方に移動して元の位置に復帰したときに開く。
【0045】
また、イヤーピース23には、排気部214が穿設されている。排気部214は、イヤホン2が耳に装着された状態で外耳道の内部と外部を連通させる。さらに、排気部214は、外耳道内の空気を外耳道とイヤホン2の外部に排出させるように構成されてもよい。排気部214は、チャネル状に形成されていてもよいし、開口状に形成されていてもよく、耳に装着された場合に外耳道と外部とが連通可能であれば、その構成や設置位置は特に限定されない。また、排気部214に排気弁2141を設けてもよい。排気弁2141は、振動板221が音声電気信号に基づいて前方に移動したときに開き、振動板221が後方に移動して元の位置に復帰したときに閉じる。
【0046】
イヤホン2を耳に装着した状態でイヤホン2に音声電気信号が入力されると、振動板221はボイスコイル222の前後振動によって前後に移動する。振動板221が前方に移動すると、前部空気室216と放音ノズル215を介してそれに連通する外耳道の内部が加圧され、排気弁2141が開放されることで、外耳道内の空気が排気部214を介して外耳道及びイヤホンの外部に押し出されると同時に、後部空気室217内部の空気が負圧になって、通気弁2131が閉じられ、吸気弁2121が開き、外部の新鮮な空気が吸気口212から後部空気室217内に取り込まれる。そして、振動板221が前方に移動した状態から後方に移動して元の位置に復帰すると、前部空気室216とそれに連通する外耳道の内部が負圧になって、排気弁2141が閉じられると同時に、後部空気室217の内部が加圧され、吸気弁2121が閉じられ、通気弁2131が開き、後部空気室217内の空気が通気部213を介して前部空気室216に入り、さらに外耳道内に入る。このように、振動板121の前後移動につれて、外部の新鮮な空気が吸気口212からハウジング21を介して外耳道内に送り込まれ、外耳道内の空気が外部に排出されていく。外耳道の換気路を設けて外耳道内を換気することで、細菌類や真菌類の増殖を防ぐことができる。また、吸気弁、通気弁及び排気弁等の弁を設けることにより、空気の一方向流通を確保することができ、外耳道の換気をより効率的に行うことができる。
【0047】
第1実施形態と同様に、本実施形態における吸気弁、通気弁、排気弁などの各弁としては、逆止弁であってもよい。例えば、既存のマイクロ型逆止弁を利用してもよく、好ましくは、閉弁状態のロックを電気的に制御可能なマイクロ型逆止弁を利用してもよい。
【0048】
また、第1実施形態と同様に、イヤホン2は、紫外線光源として、UV-LEDモジュール23を備えていてもよい。UV-LEDモジュール23は、ハウジング21内に設けられ、ハウジング21内の空気を照射して殺菌することにより、殺菌された空気を外耳道に送ることができ、細菌類や真菌類の増殖をさらに防止することができる。ここで、UV-LEDモジュール23は、発光源としてUV-LEDを利用するものである。その発光波長は特に限定されないが、例えば、発光波長が253~315nm内のUV-LEDを備えってもよい。好ましくは発光波長が253~285nm、より好ましくは253~265nm内のUV-LEDを備えってもよい。特に好ましくは、UV-LEDモジュール23は、発光波長が275~280nm内のUV-LEDと発光波長265nmのUV-LEDとを備える複合UV-LEDモジュールであってもよい。
【0049】
UV-LEDモジュールの設置位置は、特に限定されず、前部空気室216内に設けられていてもよいし、後部空気室217内に設けられていてもよいし、前部空気室216と後部空気室217との両方に設けられていてもよい。UV-LEDモジュールは、十分な照射殺菌の観点から、前部空気室216内の空気を照射可能な位置に設けることが好ましい。UV-LEDモジュールは、例えば、図2に示すように、前部空気室216内における通気部217に近い位置に設けられている。本実施形態では、外気が後部空気室217に入った後に通気部213を介して前部空気室216に入り、前部空気室216内の空気が外耳道に入ることから、通気部213は外耳道内に外気が入り込むための通過点であるため、UV-LEDモジュールをハウジング21内で通気部213に近い位置に設けることで、空気をより十分に照射することができ、空気中の細菌類や真菌類などをより十分に死滅させることができる。しかしながら、これに限定されず、UV-LEDモジュールは、前部空気室内における放音ノズル215に近い位置に設けられてもよい。
【0050】
また、第1実施形態で述べたように、UV-LEDモジュールで空気を照射すると、殺菌もできるし、空気を加熱することもできる。これにより、外耳道に送られる空気を適切な温度に加熱することで、睡眠誘導の効果を奏することができる。空気の加熱は、UV-LEDモジュールの波長、照度、照射時間等の少なくとも1つを調節することにより、予め設定された温度に加熱することができる。空気加熱のモニタリングは、本実施形態のイヤホンに温度センサを設けることにより行うことができる。UV-LEDモジュールの波長、照度又は照射時間の具体的な調節及び設定、温度センサの設置位置などは、当業者が本明細書を閲読した上、その専門知識を活用して、必要に応じて具体的に実現することができるので、ここでは説明を省略する。
【0051】
また、UV-LEDモジュールは、第1実施形態と同様に、1つであってもよく、複数であってもよく、その数は特に限定されない。複数のUV-LEDモジュールを設置する場合、複数のUV-LEDモジュールが異なる位置に配置されてもよく、それぞれ、波長、照度又は照射時間を設定して、各UV-LEDモジュールが異なる機能を果たすようにすることで、殺菌対象の細菌類、真菌類の殺菌及び其の他ウィルス等の殺滅に有効な組み合わせを設定することができる。
【0052】
第1、第2の実施形態のように、本願は、換気路を構築することにより、イヤホンの装着状態で外耳道に通気するとともに、外耳道に送られる空気をUV-LEDモジュールで照射して、殺菌、加熱することができる。
【0053】
この場合、本出願に係るイヤホンは、換気路における弁及びUV-LEDモジュールの動作を制御して、異なる動作モードで動作することができる。例えば、換気路の開閉を制御することにより、換気機能を発揮する開放モード又は換気路を閉鎖して音漏れや外部音声取り入れを防止する密閉モードで動作することができる。また、UV-LEDモジュールによる発熱により、睡眠誘導モードでも動作することができる。
【0054】
以下、図3図4を参照して、本出願の第3の実施形態に係るイヤホンの動作モードの制御について説明する。図3は、本出願の第3の実施形態に係るイヤホンの制御部の構成を示す模式図である。図4は、上記制御部の各動作モードでの制御を模式的に示すフローチャートである。ここで、本実施形態では、イヤホンに換気路とUV-LEDモジュールが設けられているとする。
【0055】
図3に示すように、本出願に係るイヤホンは、ユーザからの動作モードを指示するモード命令を受け取り、当該モード命令に基づいてイヤホンの動作モードを切り替える制御部3をさらに備える。具体的には、制御部3は、モード切替部31と、弁制御部32と、光源制御部33とを備える。モード切替部31は、ユーザからの動作モードを指示するモード命令を受け取り、当該モード命令に基づいてイヤホンの動作モードを切り替え、弁制御部32に弁制御命令を出力し、光源制御部33に光源制御命令を出力する。弁制御部32は、モード切替部31からの弁制御命令に基づいて、換気路における吸気弁、通気弁及び排気弁に弁ロック要否信号を出力する。光源制御部33は、モード切替部31からの光源制御命令に基づいてUV-LEDモジュールに光源制御信号を出力する。
【0056】
具体的には、図4を参照して、モード切替部31は、ユーザからの動作モードを指示するモード指示を受け取る(ステップS1)。ここで、本出願に係るイヤホンは、ユーザのモード命令の入力を受け付け、当該モード命令を電気信号としてモード切替部31に伝送するモードボタンをさらに備えてもよい。あるいは、本発明に係るイヤホンは、外部装置からユーザが入力したモード命令を無線通信または有線通信により受信する通信部を備えてもよい。外部装置は、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、タブレット、車載コンピュータ、スマートウォッチ等であってもよい。
【0057】
モード切替部31は、モード指示を受け取ると、ステップS2において、モード指示の種類を判定する。
【0058】
ステップS2において、モード制御部31は、モード命令が密閉モードを示すと判定した場合、弁制御部32に弁制御命令として弁ロック命令を出力し、光源制御部33に光源制御命令として光源オフ命令を出力する。
【0059】
ステップS3において、弁制御部32は、弁ロック命令に基づいて、換気路における吸気弁、通気弁及び排気弁等の各弁に弁ロック信号を出力して、各弁を閉状態にロックする。光源制御部33は、光源オフ命令に基づいて、光源としてのUV-LEDモジュールに光源オフ信号を出力してUV-LEDモジュールをオフにする。
【0060】
このように、密閉モードでは、UV-LEDモジュールが動作しないため、電気エネルギーを無駄にすることはない。また、吸気弁、排気弁、通気弁は閉状態にロックされ、振動板121の前後振動に伴って開閉することがなく、換気路を通じて音が漏れる現象や外部音がイヤホン内に入る現象が回避される。これにより、音漏れや外部音声の取り入れを防止できて、個人のプライバシーを保護するだけでなく、緻密でクリアな音質の音声再生ができ、ユーザに良好な音楽鑑賞環境を持たせることもできる。
【0061】
ステップS2において、モード制御部31は、モード命令が開放モードを示すと判定される場合、弁制御部32に弁制御命令として弁ロック解除命令を出力して、光源制御部33に光源制御命令として光源オン命令を出力する。
【0062】
ステップS4において、弁制御部32は、弁ロック解除命令に基づいて、振動板の前後振動に伴って換気路における吸気弁、通気弁および排気弁等の各弁が開閉自在となるように、各弁に弁ロック解除信号を出力する。光源制御部33は、光源オン命令に基づいて、UV-LEDモジュールに光源オン信号を出力してUV-LEDモジュールをオンにする。
【0063】
このように、開放モードでは、UV-LEDモジュールがイヤホン内の空気を照射し、吸気弁、排気弁、通気弁が振動板の前後振動に伴って開閉することにより、イヤホンが耳に装着された場合に、照射殺菌された空気を外耳道内に送気するとともに、外耳道内の空気をタイムリーに外部に排出することができ、外耳道の内部が密閉され、且つ湿熱化による細菌類や真菌類の発生が防止され、ひいては耳炎等の耳部疾患を予防することができる。また、開放モードでは、自然で広い音場の音声の再生もできる。
【0064】
以上のように、本願発明は、開放モードと密閉モードとで切り替えることにより、音質の変化を楽しむことも可能となる。
【0065】
また、ステップS2において、モード制御部31は、モード命令が睡眠誘導モードを示すと判定される場合、弁制御部32に弁制御命令として弁ロック解除命令を出力し、光源制御部33に光源制御命令として光源調節命令を出力する。
【0066】
ステップS5において、弁制御部32は、弁ロック解除命令に基づいて、振動板の前後振動に伴って換気路における吸気弁、通気弁および排気弁等の各弁が開閉可能となるように、各弁に弁ロック解除信号を出力する。光源制御部33は、光源調節命令に基づいて、UV-LEDモジュールをオンにし、またイヤホンに設けられた温度センサが検出する外耳道内の温度を取得し、当該外耳道内の温度に応じて、外耳道内の温度が所定温度になるように、UV-LEDモジュールの照射を制御する。例えば、波長、照度および照射時間などの少なくともいずれか1つを制御する。
【0067】
このように、睡眠誘導モードでは、UV-LEDモジュールを用いて殺菌、加熱された空気を外耳道内に送気することで、外耳道内の温度をあらかじめ設定された温度(例えば37~39℃程度)に加熱することができる。これにより、例えば、外耳道内に音楽と伴に殺菌空気、温熱も供給して睡眠を促すことができる。特に、冬場のような低温時期には、外耳道内を温熱に加熱することで、さらに良好な睡眠に誘導することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更、修正が可能である。上述した各実施形態は、実質的に同一の態様を含み、適宜組み合わせることもできる。本開示の実施形態に基づいて、当業者は、創造的な労力を払わずに取得されたすべての他の実施形態も、本願の保護範囲に含まれることは明らかである。
【要約】      (修正有)
【課題】UV-LED付き音声ドライバー及びイヤホンを提供する。
【解決手段】UV-LED付き音声ドライバー1は、外気を内部に取り込む吸気口112を有する筐体11と、筐体内に設けられ、入力される音声電気信号に基づいて振動する振動板121を備える音声ドライバーユニットと、筐体内に設けられ、イヤホンが耳に装着された状態で筐体内部と外耳道とを通気させることができる通気部113と、筐体に設けられ、イヤホンが耳に装着された状態で外耳道の内部と外部を連通させる排気部114と、筐体内に設けられ、筐体内の空気に照射するUV-LEDモジュール13と、を備える。
【効果】外耳道内に通気することができ、細菌類や真菌類の増殖を防止し、ひいては外耳炎等の耳部疾患を予防することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4