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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   B65G 13/06 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
B65G13/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023197612
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2022148584の分割
【原出願日】2022-09-16
(65)【公開番号】P2024043534
(43)【公開日】2024-03-29
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 英一
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-10021(JP,A)
【文献】特開2000-179566(JP,A)
【文献】特許第7123442(JP,B1)
【文献】特開2001-32853(JP,A)
【文献】特開2021-123482(JP,A)
【文献】実開昭56-132208(JP,U)
【文献】特開2010-155683(JP,A)
【文献】特開平8-2643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 13/00-13/12
B65G 39/00-39/20
B65G 47/22-47/32
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を備えたアキュムレーティングコンベヤにおいて用いられる搬送ローラであって、
柱状の軸部材に対して回転できるように前記軸部材が挿入される円筒状のローラ本体と、
前記軸部材の軸方向において前記ローラ本体の外側に設けられる被駆動部を有し、前記軸部材および前記ローラ本体に対して回転できるように前記軸部材が挿入されかつ前記被駆動部が前記駆動源に回転駆動されることによって前記軸部材に対して回転する回転部材と、
前記ローラ本体の内側に設けられ、前記回転部材および前記ローラ本体のうちの一方に固定された永久磁石と、
前記ローラ本体の径方向において前記永久磁石に対向するようにかつ前記永久磁石から離隔するように前記回転部材および前記ローラ本体のうちの他方に固定され、前記永久磁石との間でヒステリシストルクを生じさせるヒステリシス材と、
を備え
前記回転部材に対する前記ローラ本体の前記軸方向における位置を調整する調整機構をさらに備える、搬送ローラ。
【請求項2】
前記回転部材は、少なくとも一部が前記ローラ本体の内側に位置し、かつ前記軸部材を回転中心として前記被駆動部と一体回転する円筒状の支持部を有し、
前記永久磁石は、前記支持部の外周面および前記ローラ本体の内周面のうちの一方に固定され、
前記ヒステリシス材は、前記外周面および前記内周面のうちの他方に固定される、
請求項1に記載の搬送ローラ。
【請求項3】
前記支持部に支持され、前記回転部材に対して前記ローラ本体が回転できるように前記ローラ本体を支持する第1軸受と、
前記軸部材に支持され、前記軸部材に対して前記ローラ本体が回転できるように前記ローラ本体を支持する第2軸受と、
をさらに備える、
請求項2に記載の搬送ローラ。
【請求項4】
前記第1軸受は、前記回転部材に対して前記軸方向に移動できるように前記回転部材に支持され、
前記第2軸受は、前記軸部材に対して前記軸方向に移動できるように前記軸部材に支持される、
請求項3に記載の搬送ローラ。
【請求項5】
前記永久磁石は、円筒形状を有し、かつ周方向において異なる極が交互に着磁された構成を有している、請求項1から4のいずれかに記載の搬送ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレーティングコンベヤにおいて用いられる搬送ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において物品を搬送するために利用されるローラコンベヤの一種として、アキュムレーティングコンベヤが知られている。アキュムレーティングコンベヤは、搬送中の物品を一時的に滞留させることができる機能を有している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたローラコンベヤ装置は、複数の搬送ローラと、搬送ローラを回転させる駆動手段と、搬送ローラにより搬送される物体を搬送ローラ上で一時的に滞留させるストッパとを備えている。搬送ローラは、シャフトと、軸受を介してシャフトの外周に配置されたローラ本体と、ローラ本体の一端に面接触するように配置された回転体と、回転体とシャフトとの間に配置された少なくとも二つの回転体用軸受とを備えている。ストッパは、複数の搬送ローラによって形成される搬送面に対して突出可能に設けられている。
【0004】
特許文献1に開示されたローラコンベヤ装置では、駆動手段によって各搬送ローラの回転体が回転駆動される。回転体の回転は、回転体とローラ本体との間に生じる摩擦力によってローラ本体に伝達される。これにより、複数の搬送ローラのローラ本体が回転し、物体が搬送される。
【0005】
また、ストッパの先端を搬送面に対して突出させて物体に接触させることにより、物体の移動を停止させることができる。この際、回転体はローラ本体に対して滑りながら回転する。すなわち、搬送ローラは、アキュムレーティングローラとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-123482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された搬送ローラがアキュムレーティングローラとして機能する際には、上記のようにローラ本体に対して回転体が滑りながら回転することによって、回転体が摩耗する。回転体の摩耗量が大きくなると、回転体からローラ本体へ効率よく回転伝達を行うことができなくなる。すなわち、搬送ローラとしての機能が低下する。このように、特許文献1に開示された構成では、搬送ローラがアキュムレーティングローラとして機能する時間の長さに応じて回転体が摩耗する。このため、搬送ローラの寿命を向上させることが難しい。
【0008】
そこで、本発明は、アキュムレーティングローラとして機能することができる長寿命の搬送ローラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の搬送ローラを要旨とする。
【0010】
(1)駆動源を備えたアキュムレーティングコンベヤにおいて用いられる搬送ローラであって、
柱状の軸部材に対して回転できるように前記軸部材が挿入される円筒状のローラ本体と、
前記軸部材の軸方向において前記ローラ本体の外側に設けられる被駆動部を有し、前記軸部材および前記ローラ本体に対して回転できるように前記軸部材が挿入されかつ前記被駆動部が前記駆動源に回転駆動されることによって前記軸部材に対して回転する回転部材と、
前記ローラ本体の内側に設けられ、前記回転部材および前記ローラ本体のうちの一方に固定された永久磁石と、
前記ローラ本体の径方向において前記永久磁石に対向するようにかつ前記永久磁石から離隔するように前記回転部材および前記ローラ本体のうちの他方に固定され、前記永久磁石との間でヒステリシストルクを生じさせるヒステリシス材と、
を備え
前記回転部材に対する前記ローラ本体の前記軸方向における位置を調整する調整機構をさらに備える、搬送ローラ。
【0011】
(2)前記回転部材は、少なくとも一部が前記ローラ本体の内側に位置し、かつ前記軸部材を回転中心として前記被駆動部と一体回転する円筒状の支持部を有し、
前記永久磁石は、前記支持部の外周面および前記ローラ本体の内周面のうちの一方に固定され、
前記ヒステリシス材は、前記外周面および前記内周面のうちの他方に固定される、
上記(1)に記載の搬送ローラ。
【0012】
(3)前記支持部に支持され、前記回転部材に対して前記ローラ本体が回転できるように前記ローラ本体を支持する第1軸受と、
前記軸部材に支持され、前記軸部材に対して前記ローラ本体が回転できるように前記ローラ本体を支持する第2軸受と、
をさらに備える、
上記(2)に記載の搬送ローラ。
【0013】
(4)前記第1軸受は、前記回転部材に対して前記軸方向に移動できるように前記回転部材に支持され、
前記第2軸受は、前記軸部材に対して前記軸方向に移動できるように前記軸部材に支持される、
上記(3)に記載の搬送ローラ。
【0014】
(6)前記永久磁石は、円筒形状を有し、かつ周方向において異なる極が交互に着磁された構成を有している、上記(1)から(4)のいずれかに記載の搬送ローラ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アキュムレーティングローラとして機能することができる長寿命の搬送ローラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る搬送ローラを備えたアキュムレーティングコンベヤを示す概略平面図である。
図2図2は、搬送ローラを示す概略図である。
図3図3は、ヒステリシストルクの調整方法を説明するための図である。
図4図4は、調整機構の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る搬送ローラについて詳細に説明する。本発明に係る搬送ローラは、複数のローラを備えたアキュムレーティングコンベヤにおいて、アキュムレーティングローラとして利用することができる。まず、アキュムレーティングコンベヤについて簡単に説明する。
【0018】
(コンベヤの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送ローラを備えたアキュムレーティングコンベヤを示す平面図である。図1に示すように、アキュムレーティングコンベヤ1は、本発明の一実施形態に係る複数の搬送ローラ10と、複数の搬送ローラ10を支持する一対のフレーム2と、複数の搬送ローラ10を回転駆動するための駆動源3と、駆動源3によって発生される駆動力を複数の搬送ローラ10に伝達するための伝達部材4とを備えている。
【0019】
なお、フレーム2としては、公知のローラコンベヤにおいて利用されているフレームを用いることができるので詳細な説明は省略するが、本実施形態では、フレーム2は、正面視において略C字形状を有するように、上壁部2a、上壁部2aに対向するように上壁部2aの下方に設けられる下壁部(図示せず)、および上壁部2aと下壁部とを接続するように上下方向に延びる縦壁部2bを有している。また、駆動源3および伝達部材4としては、公知のローラコンベヤにおいて利用されている駆動源および伝達部材を用いることができるので詳細な説明は省略するが、駆動源3は、例えば電動モータであり、伝達部材4は、例えばローラチェーンである。
【0020】
(搬送ローラの構成)
図2は、搬送ローラ10を示す概略図であり、(a)は、搬送ローラ10の平面図、(b)は、(a)のb-b部分を示す断面図である。図2(b)に示すように、搬送ローラ10は、軸部材12、ローラ本体14、回転部材16、複数の永久磁石18および複数のヒステリシス材20を備えている。
【0021】
本実施形態では、軸部材12は、略円柱形状を有している。図1に示すように、軸部材12の両端部はそれぞれ、フレーム2(縦壁部2b)に支持されている。本実施形態では、軸部材12は、一対のフレーム2に対する回転が規制された状態で一対のフレーム2に取り付けられる。なお、軸部材12のフレーム2への取り付け方法は、公知のアキュムレーティングコンベヤにおける軸部材のフレームへの取り付け方法と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
図1および図2に示すように、ローラ本体14は、円筒形状を有している。ローラ本体14は、例えば、非磁性材料からなる。本実施形態では、ローラ本体14を貫通するようにローラ本体14に軸部材12が挿入されている。詳細は後述するが、ローラ本体14は、軸部材12および回転部材16に対して回転できるように軸部材12および回転部材16に支持されている。
【0023】
図2に示すように、回転部材16は略円筒形状を有している。本実施形態では、回転部材16を貫通するように回転部材16に軸部材12が挿入されている。本実施形態では、回転部材16は、軸部材12の軸方向(長さ方向)に移動できるように軸部材12に支持される。なお、以下の説明において単に軸方向という場合は、軸部材12の軸方向(長さ方向)を意味する。
【0024】
回転部材16は、スプロケット部60、支持部62、および調整部64を有する。スプロケット部60、支持部62および調整部64は、一体形成されている。本実施形態では、スプロケット部60が被駆動部に対応する。
【0025】
スプロケット部60は、軸方向においてローラ本体14の外側に設けられている。スプロケット部60の外周部には、複数の歯60aが設けられている。支持部62は、円筒形状を有している。支持部62は、ローラ本体14の内側に設けられている。より具体的には、支持部62は、軸部材12およびローラ本体14と同軸状に設けられている。
【0026】
調整部64は、円筒形状を有している。調整部64は、軸方向においてスプロケット部60と支持部62との間に設けられている。調整部64の外周面には複数の環状の溝64aが形成されている。
【0027】
回転部材16は、軸部材12に対して回転できるように、軸部材12に支持されている。本実施形態では、スプロケット部60の内側に軸受30が設けられている。なお、軸受30としては、公知の種々の軸受(転がり軸受、滑り軸受等)を用いることができる。後述する軸受32,34,36についても同様である。
【0028】
図1に示すように、伝達部材(ローラチェーン)4は、各搬送ローラ10のスプロケット部60に架け渡されている。駆動源3によって発生される駆動力は、伝達部材4を介して複数の搬送ローラ10の各スプロケット部60に伝達される。すなわち、複数のスプロケット部60が駆動源3によって同時に回転駆動される。その結果、各搬送ローラ10において、回転部材16が軸部材12に対して回転する。
【0029】
図2(b)に示すように、軸方向におけるローラ本体14の一方側の端部は、軸受32を介して回転部材16の支持部62に支持され、軸方向におけるローラ本体14の他方側の端部は、軸受34を介して軸部材12に支持されている。これにより、ローラ本体14は、軸部材12および回転部材16に対して回転することができる。本実施形態では、軸受32が第1軸受に対応し、軸受34が第2軸受に対応する。なお、本実施形態では、ローラ本体14は、支持部62の先端部(軸方向における支持部62の他方側の端部)に設けられた軸受36によっても支持されている。
【0030】
本実施形態では、軸受32、軸受34および軸受36は、ローラ本体14に対して軸方向に移動できないようにローラ本体14に取り付けられている。また、軸受32および軸受36は、支持部62(回転部材16)に対して軸方向に移動できるように支持部62に支持され、軸受30および軸受34は、軸部材12に対して軸方向に移動できるように軸部材12に支持されている。
【0031】
図2に示すように、調整部64の複数の溝64aの一つに、リング状の係止部材38が嵌められている。係止部材38としては、例えば、公知の止め輪を用いることができる。軸方向における回転部材16の一方側において、軸部材12に円筒状のカラー40aが嵌められている。図1に示すように、カラー40aは、フレーム2の縦壁部2bと回転部材16との間に設けられている。詳細な説明は省略するが、本実施形態では、軸方向におけるカラー40aの一方側の端部は、フレーム2の縦壁部2bに係止可能に設けられ、軸方向におけるカラー40aの他方側の端部は、軸受30に係止可能に設けられている。このような構成において、軸部材12に対して回転部材16が軸方向における一方側に移動することは、軸受30、カラー40aおよび縦壁部2bによって規制される。
【0032】
また、軸方向における軸受34の他方側において、軸部材12に円筒状のカラー40bが嵌められている。さらに、軸方向におけるカラー40bの他方側において、軸部材12に締結部材42が嵌められている。締結部材42としては、例えば、ナットが用いられる。この場合、軸部材12の外周面に、ナットを取り付けるためのねじ溝が形成される。
【0033】
本実施形態では、締結部材42を締め付けることによって、カラー40bを軸受34に押し付けることができる。これにより、軸部材12に対して、ローラ本体14およびローラ本体14に取り付けられた軸受32が、軸方向における一方側に向かって押される。その結果、軸受32が、調整部64に取り付けられた係止部材38に係止される。これにより、回転部材16に対するローラ本体14の軸方向における位置が固定される。なお、ローラ本体14および軸受32が軸方向における一方側に押されることによって、係止部材38を介して軸受32に係止された回転部材16も、軸方向における一方側に押される。しかしながら、上述したように、軸部材12に対して回転部材16が軸方向における一方側に移動することは、軸受30、カラー40aおよび縦壁部2bによって規制される。このような構成により、締結部材42を適切に締め付けることができる。詳細は後述するが、本実施形態では、複数の溝64a、カラー40bおよび締結部材42が、回転部材16に対するローラ本体14の軸方向における位置を調整する調整機構として機能する。
【0034】
複数の永久磁石18は、支持部62の外周面に固定されている。本実施形態では、複数の永久磁石18は、軸方向において互いに離隔するように支持部62の外周面に固定されている。また、本実施形態では、永久磁石18は、円筒形状を有しかつ周方向において異なる極が交互に着磁された構成を有している。
【0035】
永久磁石18としては、フェライト磁石および希土類磁石等の公知の磁石を用いることができる。搬送ローラ10の小型化および後述するヒステリシストルクの向上の観点からは、永久磁石18として、例えば、Nd-Fe-B系磁石、Sm-Fe-N系磁石、およびSm-Co系磁石等の希土類磁石を用いることが好ましい。
【0036】
複数のヒステリシス材20は、ローラ本体14の径方向において複数の永久磁石18に対向するように、かつローラ本体14の径方向において複数の永久磁石18から離隔するように、ローラ本体14に固定されている。本実施形態では、ヒステリシス材20は円筒形状を有し、固定部材22を介してローラ本体14の内周面に固定されている。固定部材22は、円筒状の外周部22aと、外周部22aから径方向内側に突出する突出部22bとを有する。ヒステリシス材20は、突出部22bの先端部に固定されている。固定部材22は、例えば、樹脂材料からなる。
【0037】
ヒステリシス材20は、例えば、半硬質磁性材料からなる。具体的には、例えば、Fe-Cr-Co系合金またはFe-Co系合金等の半硬質磁性材料に所定の磁場処理を行うことによってヒステリシス材20を製造することができる。本実施形態では、ヒステリシス材20の残留磁束密度は、0.7T以上であることが好ましく、保磁力は、10kA/m以上であることが好ましい。
【0038】
(搬送ローラの動作)
アキュムレーティングコンベヤ1によって物品を搬送する際には、駆動源3によって各搬送ローラ10の回転部材16を回転駆動する。これにより、各搬送ローラ10において、軸部材12を回転中心として永久磁石18が回転し、永久磁石18とヒステリシス材20との間にヒステリシストルクが発生する。その結果、複数の永久磁石18の回転に連動して、複数のヒステリシス材20、複数の固定部材22およびローラ本体14が、軸部材12を回転中心として回転する。このようにして複数の搬送ローラ10のローラ本体14を回転させることによって、物品を搬送することができる。
【0039】
一方、アキュムレーティングコンベヤ1上において、図示しないストッパにより物品の搬送が止められた場合には、回転部材16からローラ本体14への回転の伝達を遮断することができる。具体的には、物品からローラ本体14に与えられる負荷が、複数の永久磁石18と複数のヒステリシス材20との間に発生するトルク(磁気的吸引力)を超えると、ローラ本体14および複数のヒステリシス材20に対して、回転部材16および複数の永久磁石18が空転する。このようにして、本実施形態に係る搬送ローラ10は、アキュムレーティングローラとして機能する。
【0040】
なお、本実施形態では、回転部材16に対するローラ本体14の軸方向における位置を調整することによって、複数の永久磁石18と複数のヒステリシス材20との間に発生するヒステリシストルクの大きさを調整することができる。図3は、ヒステリシストルクの調整方法を説明するための図である。なお、図3には、搬送ローラ10のうち、回転部材16の周辺部が示されている。
【0041】
上述したように、回転部材16の調整部64の外周面には、複数の溝64aが形成されている。本実施形態では、図3に示すように、係止部材38を嵌める溝64aを変えることによって、回転部材16に対するローラ本体14の位置を変えることができる。例えば、図3(a)に示す搬送ローラ10では、複数の溝64aのうち、最も支持部62側の溝64aに係止部材38が嵌められている。一方、図3(b)に示す搬送ローラ10では、複数の溝64aのうち、支持部62側から数えて3番目の溝64aに係止部材38が嵌められている。上述したように、本実施形態では、締結部材42(図2参照)を締め付けて、軸受32を係止部材38に係止させることによって、回転部材16に対するローラ本体14の軸方向における位置が固定される。したがって、図3(a)に示す搬送ローラ10に比べて、図3(b)に示す搬送ローラ10では、ローラ本体14が軸方向において支持部62側に位置している。
【0042】
本実施形態では、複数の永久磁石18は回転部材16(支持部62)に固定され、複数のヒステリシス材20は、ローラ本体14に固定されている。このため、上記のようにして回転部材16に対するローラ本体14の軸方向における位置を調整することによって、ローラ本体14の径方向における永久磁石18とヒステリシス材20との対向面積を調整することができる。その結果、永久磁石18とヒステリシス材20との間に作用するヒステリシストルクの大きさを調整することができる。
【0043】
(搬送ローラの効果)
以上のように、本実施形態に係る搬送ローラ10では、永久磁石18とヒステリシス材20との間に作用するヒステリシストルクによって、ローラ本体14を回転させることができる。この場合、永久磁石18とヒステリシス材20とを接触させることなく回転部材16とローラ本体14との間で回転を伝達できる。これにより、摩擦力によって回転を伝達する従来のアキュムレーティングローラにおいて生じるような、摩耗による劣化が生じない。その結果、搬送ローラの寿命を向上させることができる。
【0044】
また、摩擦力によって回転を伝達する構成を有するアキュムレーティングローラでは、回転を伝達する部材同士が互いに対して滑り始める直前(すなわち、静止摩擦状態から動摩擦状態に変わる直前)に、ローラ本体に作用するトルクが高くなってしまう。これにより、アキュムレーティングコンベヤにおいて物品の搬送を停止する際に、ストッパから物品に衝撃が加わる場合がある。これに対して、本実施形態に係る搬送ローラ10では、上記のように、永久磁石18とヒステリシス材20とが接触しないので、回転部材16がローラ本体14に対して空転する際に、ローラ本体14に与えられるトルクが高くなることを防止できる。したがって、アキュムレーティングコンベヤ1において物品の搬送を停止する際に、ストッパから物品に衝撃が加わることを防止することができる。
【0045】
なお、摩擦力によって回転を伝達する構成を有するアキュムレーティングローラにおいて、物品の搬送を停止する際にストッパから物品に衝撃が加わることを防止するために、駆動源からローラ本体に与えられるトルク(設定値)を小さくすることが考えられる。しかしながら、この場合には、アキュムレーティングローラの再駆動時にトルクが不足し、物品の搬送に遅れが生じるおそれがある。この点について、本実施形態に係る搬送ローラ10では、上記のように、永久磁石18とヒステリシス材20とが接触しないので、物品の搬送を停止する際にローラ本体14に与えられるトルクが高くなることを防止することができる。したがって、駆動源3からローラ本体14に与えられるトルク(設定値)を小さくしなくても、物品の搬送を停止する際にストッパから物品に衝撃が加わることを防止することができる。言い換えると、駆動源3からローラ本体14に十分なトルクを付与しつつ、搬送ローラ10をアキュムレーティングローラとして適切に機能させることができる。これにより、搬送ローラ10の再駆動時にトルクが不足することを防止でき、物品を円滑に搬送することができる。
【0046】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、搬送ローラ10が3つの永久磁石18を備える場合について説明したが、搬送ローラ10が備える永久磁石18の数は、2以下であってもよく、4以上であってもよい。また、ヒステリシス材20は永久磁石18に対向するように設けられるので、ヒステリシス材20の数も、永久磁石18と同様に、2以下であってもよく、4以上であってもよい。
【0047】
図1においては、5つの搬送ローラ10が示されているが、アキュムレーティングコンベヤ1が備える搬送ローラ10の数(アキュムレーティングローラとして機能する搬送ローラの数)は、4以下であってもよく、6以上であってもよい。例えば、アキュムレーティングコンベヤ1が備える複数のローラのうちの1つのローラのみが、アキュムレーティングローラとして機能してもよい。この場合、他のローラは、例えば、フリーローラであってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、ヒステリシス材20は、固定部材22を介してローラ本体14に固定されているが、ヒステリシス材20がローラ本体14に直接固定されてもよい。
【0049】
上述の実施形態では、永久磁石18が回転部材16の支持部62の外周面に固定され、ヒステリシス材20がローラ本体14の内周面に固定される場合について説明したが、永久磁石がローラ本体14の内周面に固定され、ヒステリシス材が支持部62の外周面に固定されてもよい。
【0050】
上述の実施形態では、永久磁石またはヒステリシス材が支持部62の外周面に固定される場合について説明したが、支持部62の代わりに、円筒状の永久磁石またはヒステリシス材を設けてもよい。この場合、永久磁石またはヒステリシス材に対向するように、ローラ本体14にヒステリシス材または永久磁石を固定すればよい。
【0051】
上述の実施形態では、回転部材16に対するローラ本体14の位置を調整するに際して、カラー40bによって軸受34を押しているが、図4に示すように、カラー40bと軸受34との間に、リングばね等の弾性部材44を設け、弾性部材44によって軸受34を押してもよい。この場合、複数の溝64a、カラー40b、締結部材42および弾性部材44が、回転部材16に対するローラ本体14の軸方向における位置を調整する調整機構として機能する。
【0052】
また、上述の実施形態では、係止部材38を嵌める溝64aの位置を変えることによって、回転部材16に対するローラ本体14の位置を調整する場合について説明したが、ローラ本体14の位置の調整手段は上述の例に限定されず、公知の種々の手段を利用することができる。例えば、調整部64の複数の溝64aおよび係止部材38の代わりに、調整部64に第1固定部材(例えば、公知のセットカラー)を取り付け、カラー40bおよび締結部材42の代わりに軸部材12に第2固定部材(例えば、公知のセットカラー)を取り付けてもよい。第1固定部材は、軸方向における任意の位置で調整部64に固定でき、第2固定部材は、軸方向における任意の位置で軸部材12に固定できるように構成される。この場合、軸受32,34を軸方向における両側から挟むように第1固定部材および第2固定部材を設けるとともに、第1固定部材および第2固定部材の軸方向における位置を調整することによって、ローラ本体14の位置を調整することができる。
【0053】
上述の実施形態では、伝達部材4としてローラチェーンを用いる場合について説明したが、伝達部材4はローラチェーンに限定されない。例えば、伝達部材4として、種々のベルトを用いてもよい。この場合、被駆動部として、スプロケット部60の代わりに、プーリ部を設ければよい。
【0054】
上述の実施形態では、一つの伝達部材4によって、複数の搬送ローラ10の回転部材16を回転駆動する場合について説明したが、複数の伝達部材を用いて複数の搬送ローラ10の回転部材16を回転駆動してもよい。例えば、一つの伝達部材によって、駆動源3から任意の一つの搬送ローラ10の回転部材16を回転駆動し、その回転部材16の回転を、他の伝達部材を用いて他の搬送ローラ10の回転部材16に伝達してもよい。
【0055】
また、詳細な説明は省略するが、磁気的な引力あるいは反発力を利用して複数の回転部材を回転できるように、駆動源および複数の回転部材を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、アキュムレーティングローラとして機能することができる長寿命の搬送ローラが得られる。
【符号の説明】
【0057】
1 アキュムレーティングコンベヤ
10 搬送ローラ
12 軸部材
14 ローラ本体
16 回転部材
18 永久磁石
20 ヒステリシス材
30,32,34,36 軸受
60 スプロケット部
62 支持部
図1
図2
図3
図4