IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 塩入 洋輔の特許一覧

<>
  • 特許-枕 図1
  • 特許-枕 図2
  • 特許-枕 図3
  • 特許-枕 図4
  • 特許-枕 図5
  • 特許-枕 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
A47G9/10 A
A47G9/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023202402
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523453020
【氏名又は名称】塩入 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】塩入 洋輔
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3115580(JP,U)
【文献】実開昭59-130576(JP,U)
【文献】特開平11-046952(JP,A)
【文献】特開2018-157866(JP,A)
【文献】特開2015-008871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する厚さ方向と、長手方向及び幅方向とを有し、上方域と、下方域と、前記幅方向の寸法を2等分する縦断中心線とを備えた枕であって、
前記長手方向において対向する両端面と、前記幅方向において対向する両側面とをさらに備え、
前記上方域は、前記両側面間において前記両側面のうちの一方側面に沿って前記長手方向へ延び、かつ、互いに前記幅方向において対向位置し、上方へ凸となる第1及び第2支持部と、前記幅方向において第1支持部と第2支持部との間に位置する凹曲部とを有し、
前記下方域は、下方へ凸となる湾曲状を有し、前記下方域の前記長手方向における中央部分は前記縦断中心線と互いに交差していて、
前記第2支持部の高さ寸法は、前記第2支持部の高さ寸法よりも大きく、前記枕を静置した状態において、前記第2支持部は前記第1支持部よりも上方に突出していることを特徴とする前記枕。
【請求項2】
充填体をさらに有し、前記充填体は前記上方域に位置する上方充填体と前記下方域に位置する下方充填体とを含み、前記下方充填体が前記上方充填体よりも高い弾性反撥性を有する請求項に記載の枕。
【請求項3】
前記上方充填体は、前記下方充填体よりも高い剛性を有する請求項に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が就寝する際に使用者の頭及び首を支持する枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の頭部と頸部とを安定的に支持するための枕は、公知である。例えば、特許文献1には、使用者の頭部を支持する頭支持部と、頸部を支持する首支持部とを備えた枕が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3206814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6(a)を参照すると、特許文献1に開示された枕100によれば、頭支持部122の高さが首支持部121の高さよりも低いことから、首支持部121が使用者の頸部103にフィットされて、頭部102と頸部103とを安定的に支持することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の枕100では、使用者101が仰臥状態においては、首支持部121によって顎部が上方に押し上げられて、かえって頸部103を痛めるおそれがある。
【0006】
また、例えば、図6(b)に示すように、従来の全体的に平坦な形状を有する枕200の場合には、頭部102が頭頂部のみで支持された状態となり、首支持部221が頸部103に十分に当接されておらず不安定であって、リラックスした状態で就寝することができない。
【0007】
さらに、例えば、図6(c)のように、下面が平坦状であって、かつ、上面が上方へ凸曲した形状を有する従来の枕300の場合には、頭部102全体が斜め上方へ押し上げられた状態となり、頭部102から頸部103にかけて自然なS字カーブを描くことができないことから、リラックスした状態で就寝することができない。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の改良であって、頭部と首部とを安定的に支持することによって、リラックスした状態で就寝することのできる枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
技術的課題を解決するために、本発明は、互いに交差する厚さ方向と、長手方向及び幅方向とを有し、上方域と、下方域と、前記幅方向の寸法を2等分する縦断中心線とを備えた枕に関する。
【0010】
本発明に係る枕は、前記下方域は、下方へ凸となる湾曲状を有し、前記下方域の前記長手方向における中央部分は前記縦断中心線と互いに交差することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る枕の一つ以上の実施態様によれば、下方域は、下方へ凸となる湾曲状を有し、前記下方域の中央部分は前記縦断中心線と厚さ方向において互いに交差することから、前後に揺動しながらバランスの取れた状態で自然に静止し、頭頸部を安定的に支持することによって、使用者1はリラックスした状態で就寝することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、本発明に係る枕の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本発明に係る枕の斜視図。
図2】枕の側面図。
図3】使用者が仰臥状態で枕を使用している状態を示す図。
図4】(a)使用者が仰臥状態で枕を使用している状態を示す図。(b)使用者が横臥状態で枕を使用している状態を示す図。(c)他の使用態様における、図3(a)と同様の図。
図5】(a)実施例の一例における枕の斜視図。(b)図5(a)におけるV(b)-V(b)線に沿う断面図。(c)枕の充填材の分解図。
図6】(a)特許文献1に開示の枕の使用状態を示す図。(b)従来の枕の使用状態を示す図。(c)他の従来の枕の使用状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照し、本発明に係る枕10の詳細を説明すると、以下のとおりである。また、以下の実施形態は、本発明の欠くことのできない要件を含む他に、選択的に採用することのできる要件及び適宜に組み合わせることのできる要件を含んでいる。
【0014】
図1図3を参照すると、本実施形態に係る枕10は、互いに交差する幅方向X、長手方向Y及び厚さ方向(上下方向)Zを有し、長手方向Yにおいて離間対向して位置する両端面10a,10bと、幅方向Xにおいて離間対向して位置する両側面10c,10dとを含む。
【0015】
枕10は、使用者1の頭部2に当接される当接面側に位置する上方域11と、布団等の枕10が配置される配置面側に位置する下方域12とを含む。
【0016】
枕10は、幅方向Xの寸法W1を2等分する縦断中心線Pと長さ方向Yの寸法L1を2等分する横断中心線Qとをさらに有する。枕10の幅方向Xの寸法(幅寸法)W1及び長手方向Yの寸法(長手寸法)L1とは、使用者の身体の大きさに合わせて適宜自由に設計し得るものであるが、例えば、幅寸法W1が40~70cm、長手寸法L1が60~90cmである。
【0017】
図2を参照すると、枕10の高さ寸法(厚さ寸法)H1は、頭部2の重量によって、2cm程度沈みこむことを想定して、5~12cm程度であることが好ましい。また、枕10において、上方域11の高さ寸法と下方域12の高さ寸法とはほぼ同じであって、それらの境界13は、枕10の高さ寸法H1のほぼ中央部分に位置している。ただし、下方域12の高さ寸法が上方域の高さ寸法よりも大きくてもよい。
【0018】
枕10は、好ましくはクッション性を有するものであって、例えば、全体が弾性反撥性のあるウレタン等の発泡体で一体的に形成されていてもよいし、布製又は合成樹脂製の外袋に、充填材を充填して形成したものであってもよい。充填材としては、ビソフトパイプ、ウレタンチップ、木材チップ、エラストマーパイプ、ウレタンフォーム、そば殻、綿等、枕として通常用いられる種々のものが挙げられ、それらを使用者の体型や好みに合わせて、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。なお、枕10は、縦断中心線Pに関して対称した形状ではないが、図2に示した位置に重心Gが位置するように、充填材の密度等が適宜調整される。
【0019】
枕10の上方域11は、長手方向Yへ延び、かつ、互いに幅方向Xへ対向して位置し、上方へ凸となる第1及び第2支持部21,22と、幅方向Xにおいて第1支持部21と第2支持部22との間に位置する凹曲部23とを含む。
【0020】
図2に示すとおり、第2支持部22の高さ寸法(境界13から第2支持部22の上端縁までの距離)H2は、第1支持部21の高さ寸法(境界13から第1支持部21の上端縁までの距離)H3よりも大きくなっている。すなわち、枕10を静置した状態において、第2支持部22は第1支持部21よりも上方へ突出している。
【0021】
枕10の使用状態において、第1支持部21を使用者の頸部3に当接させるように使用した場合には第1支持部21が頸部支持部として機能し、第2支持部22は使用者の頭部支持部として機能しうる。一方、第2支持部22を使用者の頸部3に当接させるように使用した場合には第2支持部22が頸部支持部として機能し、第1支持部21は使用者の頭部支持部として機能しうる。
【0022】
下方域12は、逆かまぼこ状、すなわち、下方へ凸となる湾曲状を有していて、下方域12の長手方向Yにおける中央部分14が縦断中心線Pと互いに交差して位置している。
【0023】
下方域12の形状についてさらに具体的に説明すると、枕10を平坦な載置面Tに載置した状態において、下方域12の下端縁を形成する仮想円弧Rの中心点Oから下方へ延びる垂線PL上に枕10の重心Gが位置している。載置面Tに静置された状態において、枕10は中央部分14の最下部14aが載置面Tに接した状態でバランスを保った状態を維持している。
【0024】
図4(a)を参照すると、枕10を敷き布団やマットレス等の載置面5上に載置して、使用者が仰臥状態で使用している場合において、第1支持部21が使用者の頸部に当接される一方、頭部2は凹曲部23に当接される。
【0025】
このとき、頭部2の重量によって、枕10の第2支持部22が浮き上がったような態様となり、枕10全体が身体側(前方側)へ傾いた状態となる。このように、枕10が前後に揺動しながらバランスの取れた状態で自然に静止することから、第1支持部21には抗力が作用して頸部3にフィットされるとともに、後頭部4全体が凹曲部23との間に隙間が形成されることはなく当接されることから、頭部2と頸部3とが安定的に支持されることによって、使用者1はリラックスした状態で就寝することができる。
【0026】
また、使用者が就寝中に頭部2を前後又は横に動かすことがあったとしても、枕10全体が前後に揺動して常にバランスを取った状態が維持されることから、頭が枕10の凹曲部23に落ち込んだり、顎が上がって喉を傷めたり、または、顎が下がって喉が押し潰されたりするおそれはない。
【0027】
図4(b)を参照すると、使用者が横臥状態の場合であっても、第2支持部22が僅かに浮き上がって枕10全体が僅かに前方側へ傾いた状態でバランスがとれた態様となる。かかる態様では、使用者の側頭部全体が凹曲部23に当接された状態が安定的に維持されることから、使用者1はリラックスした状態で就寝することができる。
【0028】
図4(c)を参照すると、図3(a),(b)と異なり、使用者が仰臥状態において、第2支持部22を使用者の頸部3に当接した態様で枕10を使用している。かかる使用態様であっても、枕10が前方側へ傾いた状態でバランスがとれた態様となり、頭部2と頸部3とが安定的に支持されることによって、使用者1はリラックスした状態で就寝することができる。第2支持部22は第1支持部21よりも高いことから、第1支持部21に比べて頸部3に強く押し当てられることになる。第1及び第2支持部21,22のどちらを首支持部として使用するかは使用者1の好みの問題であって、使用者1は使用態様を適宜自由に選択することができる。
【0029】
以上のとおり、本発明に係る枕10を使用することによって、使用者1はリラックスした状態で就寝することができ、頸部3の過度な緊張を防いで緊張型頭痛の予防が期待できる。また、顎が上がらないことで口が開け難くなるため、自然と鼻呼吸を促すことができ、自重によって舌が喉の方に落ちて気道を圧迫、閉鎖することを防ぐことが期待できる。
【0030】
なお、本実施形態においては、下方域12の長手方向Yにおける中央部分14が縦断中心線Pと重なるように位置することで、使用者が仰臥及び横臥した状態において枕が揺動して傾いた状態でバランスがとれて安定的に後頭部4と頸部3とにフィットしうるが、中央部分14が第1支持部21又は第2支持部22側へ偏倚して位置する場合、すなわち、中央部分14が縦断中心線Pと交差していない態様の場合には、枕10が大きく傾いてバランスを崩し、不安定な状態となるおそれがある。
【0031】
図5(a)を参照すると、枕10は、全体を覆う外袋30と、外袋30に全体が被覆(カバー)された充填体40とを含む。外袋30はファスナー31を有し、ファスナー31を開閉することで、充填材40は、取り出し可能に外袋30に収容されている。
【0032】
外袋30は、布製又は合成繊維製であって、充填材40は、上方域11に位置する上層充填体41と、下方域12に位置する下層充填体42との2層構造を有している。上層充填体41は、羽毛、羊毛、木綿、蕎麦殻等の天然素材、ポリエステル綿、アクリル綿、ビーズ、パイプ等の人工素材等から形成される。一方、下層充填体42は、軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム、テンピュール等から形成される。上下層充填体41,42は、それらの構成材料を圧縮成形したものであってもよいし、肉薄の内袋に被包されたものであってもよい。
【0033】
下層充填体42は、上層充填体41に比べて高い弾性反撥性を有し、一方、上層充填体41は下層充填体42に比べて高い剛性を有する。下層充填体42が上層充填体41よりも高い弾性反撥性を有することから、使用者1の就寝時において、下層充填体41が頭部2の重みで潰されることなく、揺動しながら傾いた状態を維持してバランスを取って後頭部4と頸部3との安定的なフィット感を維持することができる。また、上層充填体41が下層充填体42に比べて高い剛性を有することから、上層充填体41が頭部2の重みで沈み込むことはなく、頭頸部の前後方向のS字形状に合わせて僅かに変形した状態で頭頸部にフィットすることができる。
【0034】
このように、上方域11と下方域12とが、それぞれ異なる特性を有する上下層充填体41,42から形成されることによって、同一の材料及び特性からなる充填体40のみから構成される場合に比べて、より高いフィット感を発揮することができる。
【0035】
上記本発明に係るは、少なくとも下記実施形態を含むことができる。実施形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
)充填体をさらに有し、前記充填体は前記上方域に位置する上方充填体と前記下方域に位置する下方充填体とを含み、前記下方充填体が前記上方充填体よりも高い弾性反撥性を有する。
)前記上方充填体は、前記下方充填体よりも高い剛性を有する。
【符号の説明】
【0036】
1 使用者
2 頭部
3 頸部
4 後頭部
10 枕
11 上方域
12 下方域
14 下方域の中央部分
21 第1支持部
40 充填体
41 上層充填体
42 下層充填体
X 幅方向
Y 長手方向

【要約】
【課題】従来技術の改良であって、頭部と首部とを安定的に支持することによって、リラックスした状態で就寝することのできる枕の提供。
【解決手段】枕10は、互いに交差する長手方向Y及び幅方向Xを有し、上方域11と下方域12と、幅方向Xの寸法を2等分する縦断中心線Pとを備え、下方域12は、下方へ凸となる湾曲状を有し、下方域12の中央部分14は縦断中心線Pと厚さ方向Zにおいて互いに交差する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6