(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】センサユニットおよび測定器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20240813BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240813BHJP
G01N 33/493 20060101ALI20240813BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01N27/28 301Z
G01N27/28 M
G01N27/416 336J
G01N27/416 336G
G01N27/416 341G
G01N33/493 B
G01N33/483 F
(21)【出願番号】P 2024016686
(22)【出願日】2024-02-06
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004947
【氏名又は名称】株式会社ファーストスクリーニング
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】浅井 開
(72)【発明者】
【氏名】金澤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】益子 淳
(72)【発明者】
【氏名】家田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 光雄
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-061312(JP,A)
【文献】特開2022-032926(JP,A)
【文献】特開2022-032479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 33/493
G01N 33/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学測定を行うための測定器に対して着脱が可能なように構成されたセンサユニットであって、
外部から供給された被検液を一時的に貯留する第1セルと、
センサ電極を内包する第2セルと、を備え、
前記第2セル内には、前記被検液と接触することにより作用面が変色するよう構成された検査シートが配置され、
前記第1セル内から第2セル内への被検液の供給が、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行われるように構成されている、センサユニット。
【請求項2】
前記センサユニットを前記測定器から脱装した状態で、前記センサユニットに対して前記被検液を供給すると、前記被検液が前記第2セル内へ流入することなく、前記第1セル内に滞留するように構成されている、
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記センサユニットを前記測定器に装着する際における、前記測定器の構成部品と前記センサユニットの構成部品との構造的干渉が、前記トリガとして機能するよう構成されている、
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記第2セルに設けられ、前記第2セル内の雰囲気を外部へ逃すためのベント管を備え、
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記ベント管が開放され、前記第2セル内への被検液の流入が開始されるように構成
されている、
請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記第1セル内と前記第2セル内とを連通させる流路が形成され、前記流路を介して前記第2セル内への被検液の流入が開始されるように構成されている、
請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記第1セルが圧縮され、前記第2セル内への前記被検液の圧送が開始されるように構成されている、
請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記第2セルが膨張され、前記第2セル内に生じた負圧によって前記第2セル内への前記被検液の吸引が開始されるように構成されている、
請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記第1セル内と前記第2セル内とを連通させる流路を備え、
前記流路は、前記第1セル内から前記第2セル内へ前記被検液を取り入れる際に毛細管現象を発現させるような形状を有する、
請求項4に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記測定器に装着した状態で前記センサユニットに対して前記被検液を供給すると、
前記第1セルから前記第2セル内へ前記被検液が流入するよう構成されている、
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項10】
請求項1に記載のセンサユニットに接続可能に構成され、電気化学測定を行うための測定手段を備えた測定器であって、
前記電気化学測定の開始を、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行うよう構成されている、測定器。
【請求項11】
請求項1に記載のセンサユニットに接続可能に構成され、電気化学測定を行うための測定手段を備えた測定器であって、
前記電気化学測定の開始を、前記測定器への前記センサユニットの装着後における所定の時間経過後に行うよう構成されている、測定器。
【請求項12】
請求項
1に記載のセンサユニットに接続可能に構成され、前記検査シートの前記作用面を撮影する撮影手段を備えた測定器であって、
前記検査シートの撮影を、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行うよう構成されている、測定器。
【請求項13】
請求項
1に記載のセンサユニットに接続可能に構成され、前記検査シートの前記作用面を撮影する撮影手段を備えた測定器であって、
前記検査シートの撮影を、前記測定器への前記センサユニットの装着後における所定の時間経過後に行うよう構成されている、測定器。
【請求項14】
前記被検液が尿であり、
前記測定器がトイレ内に設置されている、
請求項
10~13のいずれか1項に記載の測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニットおよび測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
体液などの被検液を接触させたセンサ電極に対して電圧掃引操作などを行って所定の反応を進行させ、液中に含まれる特定成分の濃度などを測定する測定システムが知られている。特に近年、利便性向上などを目的とし、センサ電極を備えるセンサユニットと、センサ電極に対して電圧印加(掃引など)を行う測定器と、が別体に構成されているシステムの研究開発が進められている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)
【0003】
この別体システムは、センサユニットが測定器に対して着脱可能に構成されることで取り回しに優れること、センサユニットの交換や使い捨てが容易となること、量産によるセンサユニットのコストダウンが期待できること、測定器を複数名で共用できること等、利用者にとって種々のメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-12056号公報
【文献】特開2022-32479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のシステムにおいては、センサユニットに被検液を接触させた後、測定機による測定がその直後に開始されるとは限らない。センサユニットに被検液を接触させた後、測定機による測定が行われる迄の間、例えば、数分から数時間もの間にわたってセンサユニットが放置される場合がある。このように、センサ電極に被検液が付着した状態で放置されると、被検液中の成分(例えばタンパク質等)がセンサ電極の作用面に付着し、センサ感度を大きく変動させることがある。また、この感度の変動量は、放置時間や環境条件等に応じて大きく異なる場合もある。これらのことから、上述の別体型の測定システムにおいて、センサ感度の安定化や、測定結果の再現性向上が、新たに顕在化した課題となっている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、センサ電極を備えるセンサユニットと、このセンサユニットに対して電気化学測定を行う測定器と、が別体に構成された測定システムにおいて、センサ感度を安定化させ、測定結果の再現性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
電気化学測定を行うための測定器に対して着脱が可能なように構成されたセンサユニットであって、
外部から供給された被検液を一時的に貯留する第1セルと、
センサ電極を内包する第2セルと、を備え、
前記第1セル内から第2セル内への被検液の供給が、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行われるように構成されている、センサユニット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センサユニットと、このセンサユニットに対して電気化学測定を行う測定器と、が別体に構成された測定システムにおいて、センサ感度を安定化させ、測定結果の再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる測定システムの構成を示す模式図であり、(b)は、センサユニットの着脱を説明するための模式図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の一実施形態にかかるセンサユニットの構成を示す上面視図であり、(b)は、その断面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)のセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図であり、(b)は、センサユニットを測定器へ装着したときを示す図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図であり、(b)は、測定器へ装着したときを示す図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図であり、(b)は、測定器へ装着したときを示す図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図であり、(b)は、測定器へ装着したときを示す図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図であり、(b)は、測定器へ装着したときを示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットに被検液を貯留したときを示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態にかかるセンサユニットの構成を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、測定システムをトイレに導入した場合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下、本実施形態の測定システム、センサユニットおよび測定器についてそれぞれ説明する。
【0011】
(1)システム構成
本実施形態の測定システム1は、例えば
図1(a)に示すように、センサユニット100と、測定器200と、判定支援装置300と、を備えている。測定システム1は、被験液中に含まれる種々の成分(特定物質、被験物質)の濃度等を測定し、その結果に基づいて、被験者の健康状態を示唆する判定結果データ等を出力することが可能なように構成されている。
【0012】
被検液としては、特に限定されないが、例えば尿、唾液、痰、鼻水、涙、汗、血液などの各種体液が挙げられる。被検液が尿である場合、特定物質としては、尿素、アンモニア、クレアチニン、尿酸、アミノ酸、アスコルビン酸、リン、シュウ酸、亜硝酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、タンパク質、尿糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、サイトカイン、コルチゾール、赤血球、白血球、血小板などが挙げられる。
【0013】
(センサユニット)
センサユニット100は、
図1(b)に示すように、被験者が手で持ち運び可能な可搬性を有し、測定器200とは着脱可能に構成される。センサユニット100は、後述するように、測定器200から脱装した状態で被検液をかけ流したときに、被検液を貯留しながらも、被検液とセンサ電極40とを隔離するように構成される。一方、センサユニット100は、測定器200へ装着されたとき、その装着をトリガとして、被検液とセンサ電極40とを接触させるように構成される。本明細書では、このセンサユニット100の測定器200への装着にともない被検液とセンサ電極40との接触が生じる構造をトリガ構造という。
【0014】
ここで、センサユニット100について
図2および
図3を用いて具体的に説明する。ここでは、センサユニット100がトリガ機構としてベント管60を備える場合を一例として説明する。
図2(a)は、一実施形態にかかるセンサユニットの概略構成を示す上面視図であり、
図2(b)は、その断面図である。
図3(a)は、脱装状態のセンサユニットに被検液をかけ流したときの図であり、
図3(b)は、センサユニットを測定器へ装着した状態の図である。
【0015】
図2(a)に示すように、センサユニット100は、主に、基材10と、基材10の一方の主面上に設けられる第1セル20と、第2セル30と、第2セル30に内包されるセンサ電極40と、第1セル20内と第2セル30内とを連通させる流路50と、第2セル30に接続され、トリガ構造として作用するベント管60と、を備えて構成される。なお、
図2(a)は、第1セル20や第2セル30、流路50、ベント管60等が同一の主面上に設けられる場合を示すが、異なる主面上に設けられてもよい。
【0016】
基材10は、2つの主面のうち、一方の主面上に第1セル20、第2セル30、センサ電極40、流路50およびベント管60を支持するように構成される。基材10は、シート状もしくは板状の部材で構成され、長手形状に形成される。
【0017】
基材10は、センサユニット100として使用することができる物理的(機械的)強度、例えば被検液(尿)が付着した場合であっても、折れ曲がったり、破損したりすることがない強度を有している。基材10は絶縁性材料により形成されている。絶縁性材料としては、プラスチック、ガラスエポキシ樹脂、セラミック、ガラス等を用いることができる。基材10としては、例えばリジット基板、フレキシブル基板を用いることができる。
【0018】
基材10の大きさは特に限定されないが、その長さは、例えば、20mm以上115mm以下とすることができる。また、その幅は、例えば、6mm以上30mm以下とすることができる。
【0019】
基材10の主面上には、その一端側に、被検液を貯留する第1セル20が設けられる。第1セル20は、例えばプラスチック等の耐水性、絶縁性を有する材料からなり、横断面視が矩形の中空筒状に構成される。第1セル20の内部空間が被検液を貯留する空間となる。第1セル20には、取り込み口21が設けられる。この取り込み口21は、被検液の取り込みに必要十分な大きさを有し、第1セル20に被検液をかけ流したときに、内部空間に被検液を取り込む口となる。
【0020】
基材10の主面上には、第1セル20から離間して第2セル30が設けられる。第2セル30には、センサ電極40が内包される。第2セル30は、測定器200から脱装された状態では被検液の流入が抑制される一方、測定器200へ装着した状態では被検液が流入するように構成される。第2セル30の内部空間は、第1セル20から流入する被検液を貯留し、センサ電極40と被検液との接触により電気化学反応を生じさせる空間となる。第2セル30は、第1セル20と同様に、例えばプラスチック等の耐水性、絶縁性を有する材料からなり、センサ電極40を内包できるように横断面視が矩形の中空筒状に構成される。
【0021】
第2セル30内にてセンサ電極40に被検液をより確実に接触させる観点からは、第2セル30の容積は第1セル20の容積よりも小さいことが好ましい。
【0022】
第1セル20と第2セル30との間には、これらの空間内を連通するような流路50が設けられる。流路50は、トリガ構造により第1セル20から第2セル30へと被検液を流入させるように構成される。流路50は、被検液を流せるものであれば特に限定されず、例えばプラスチック管などを用いることができる。流路50は、
図3(a)に示すように、第1セル20側の開口が第1セル20内に貯留する被検液Sに浸漬するように配置される。
【0023】
被検液Sを毛細管現象により第2セル30へ流入させる観点からは、流路50が毛細管現象を生じさせるような形状を有することが好ましい。例えば、流路50の内径は毛細管現象が生じるような細さであることが好ましく、具体的には1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、流路50の長さは、毛細管現象により第1セル20から第2セル30へと被検液を汲み上げられるような長さであることが好ましく、具体的には3mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0024】
センサ電極40は、被検液Sとの接触により電気化学反応を生じさせるものであり、第2セル30に内包されている。センサ電極40としては、例えば作用電極、対向電極、参照電極を用いることができる。作用電極の材料は、測定対象の特定成分の種類に応じて適宜選択することができる。作用電極としては、例えば、銀(Ag)、Au、白金(Pt)、Cuの金属で形成された電極、カーボン電極、ホウ素(B)をドープした導電性ダイヤモンド電極のうちいずれかを用いることができる。作用電極の表面には、電気化学反応を促す酵素または抗体を含む機能性膜が固定されていてもよい。対向電極としては、導電性を有する電極であれば特に限定されず、作用電極と同様の材料を用いることができる。参照電極としては、例えば銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極等を用いることができる。なお、センサ電極40は、
図2(a)に示す3電極式に限定されず、2電極式であってもよく、例えば作用電極と、参照電極を兼ねる対向電極とを備えて構成されてもよい。
【0025】
センサ電極40には配線41が接続される。配線41は、センサユニット100の第1セル20とは反対側に設けられる接続端子42に接続するように配置される。センサユニット100は、接続端子42の側を例えば測定器200の挿入口に挿入して電気的に接続することができる。
【0026】
配線41は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属を用いて形成することができる。配線41は、例えば、基材10上に予め貼られた銅膜のうち、レジストで覆われていない不要な部分をエッチングにより除去して必要な導体パターン形成する、サブトラクティブ法を用いて形成することができる。また、サブトラクティブ法を用いて形成されたこれらの導体パターンに、例えば、金(Au)めっきや銀(Ag)めっきを施してもよい。また例えば、配線41はスクリーン印刷により形成することもでき、この場合、銀または炭素系の配線を形成することができる。
【0027】
(測定器)
測定器200は、センサユニット100を接続可能に構成され、センサユニット100にてセンサ電極40と被検液Sとの接触にともなう電気化学反応を測定できるように構成される。例えば、測定器200は、センサ電極40に対して所定の電圧掃引走査等を行うことにより、被検液中に含まれる特定成分を電気分解等させ、その際に生じる反応の大きさから、特定成分の濃度等を測定することが可能なように構成されている。また例えば、測定器200は、センサ電極40の表面での電気化学反応により生じる電圧の変動量(起電力)もしくは電流の変動量から、特定成分の濃度等を測定することが可能なように構成されている。本実施形態では、
図3(b)に示すように、測定器200は、センサユニット100の挿入口を有し、センサユニット100を挿入したときにベント管60を破断させるような位置に針状部材210を備える。
【0028】
好ましくは、測定器200は、電気化学測定を、測定器へのセンサユニットの装着をトリガとして開始するように構成されることが好ましい。これにより、第1セル20から第2セル30へ被検液Sが流入し始めた段階で、被検液Sとセンサ電極40との接触により生じる電気化学反応を速やかに測定することができる。この結果、センサ感度の変動を回避し、測定結果の再現性を向上させることができる。
【0029】
また好ましくは、測定器200は、電気化学測定を、センサユニット100を測定器200へ装着した後であって、所定時間が経過した後に開始するように構成されることが好ましい。センサユニット100の装着後、被検液Sが第2セル30内へ流入し始め、所定時間が経過することで、第2セル30内に所定量の被検液Sが満たされ、被検液Sの流れが定常状態となる。この状態で電気化学測定を行うことにより、測定結果の再現性をより向上させることができる。
【0030】
また、測定器200は、上述の測定によって得られた特定成分の濃度を示すデータを、無線通信手段や有線通信手段等を通じて、判定支援装置300に対して送信することが可能なように構成されている。
【0031】
(判定支援装置)
判定支援装置300は、CPU、RAM、ストレージ、出力機能、および、通信機能などを備えたコンピュータ(スマートフォン、タブレット、PC等)として構成されている。判定支援装置300は、所定のタイミングで受信した濃度データに基づいて、被験者の健康状態を示唆する判定結果データ等を、被験者や、他の情報処理装置へと出力することが可能なように構成されている。
【0032】
(2)測定方法
次に、上述の測定システム1での測定方法について
図12を用いて説明する。
図12は、トイレ内での被検液の測定システムを示す概略図である。
図12では、測定器200および判定支援装置300がトイレ400の壁400aに設置される場合を一例として図示する。
【0033】
まず、被験者はセンサユニット100を準備する。被験者は例えばセンサユニット100をトイレ400内に持ち込む、もしくはトイレ400内に備え付けられたセンサユニット100を手に取る。続いて、被験者は、便器410にて、例えば
図2(a)や
図2(b)に示すようにセンサユニット100の接続端子42側を把持し、第1セル20に向けて被検液S(例えば尿など)を流しかける。これにより、
図3(a)に示すように、被検液Sが第1セル20の取り込み口21から内部に流入する。この段階では、ベント管60が開放されず、第2セル30内は気密状態にある。そのため、被検液Sは第2セル30には流入せず、第1セル20に滞留することになる。被験者は、所定量の被検液Sが第1セル20内に貯留するまで、被検液Sを流しかける。
【0034】
続いて、所定量の被検液Sが第1セル20に貯留した後、被験者は、センサユニット100を、その接続端子42側を測定器200の挿入口に挿入し、測定器200に装着する。このとき、
図3(b)に示すように、センサユニット100と測定器200の針状部材210との構造的干渉により、ベント管60の一端が破れ開放される。これにより、ベント管60の気密状態が開放され、第2セル30内の雰囲気を外部へ逃がすことができる。この結果、第1セル20に貯留する被検液Sが毛細管現象により流路50を介して第2セル30内へと流入することになる。第2セル30内では、被検液Sとセンサ電極40とが接触し、電気化学反応が生じる。
【0035】
一方、測定器200では、センサ電極40に対して所定の電圧掃引走査等を行うことにより、被検液S中に含まれる特定成分を電気分解等させ、その際に生じる反応の大きさから、特定成分の濃度等を測定する。
【0036】
判定支援装置300では、測定器200での測定データに基づき、被験者の健康状態を示唆する判定結果データ等が出力されることになる。
【0037】
以上のように、被験者はトイレ400内でセンサユニット100を用いて測定結果を取得することができる。
【0038】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0039】
(a)本実施形態のセンサユニット100は、測定器200と別体に構成され、測定器200への装着前の段階では、被検液Sをかけ流したとき、第1セル20には被検液Sを流入させて貯留させるものの、センサ電極40を内包する第2セル30には被検液Sを流入させないように構成されている。これにより、採取した被検液Sとセンサ電極40との接触を一時的に抑制することができる。そのため、例えば被検液Sを採取してから測定に供するまでに時間が経過したとしても、被検液Sに含まれる成分がセンサ電極40に付着することによりセンサ感度が変動してしまうことを抑制できる。
また、センサユニット100は、第1セル20と第2セル30とを連通させる流路50と、第2セル30に接続され、第2セル30内の雰囲気を外部へ逃がすためのベント管60と、を備え、ベント管60はセンサユニット100の測定器200への装着にともなう、センサユニット100の構成部品と測定器200の構成部品との構造的干渉によって開放されるように構成されている。具体的には、センサユニット100を測定器200に装着したときに、センサユニット100の構成部品であるベント管60の端部が測定器200の構成部品である針状部材210により破断されることで、ベント管60が開放される。このベント管60の開放にともない、第1セル20に貯留する被検液Sを、毛細管現象により流路50を介して第2セル30へと流入させることができる。つまり、測定器200への装着をトリガとして第2セル30内への被検液Sの供給を行うことができる。この結果、第2セル30内にて被検液Sとセンサ電極40とを接触させ、電気化学反応を生じさせることが可能となる。
また、センサユニット100の測定器200への装着にともない、測定器200によりセンサ電極40に対して所定の電圧掃引走査等を行うことにより、被検液S中に含まれる特定成分を測定することができる。
このように本実施形態のセンサユニット100によれば、被検液Sを採取してから測定に供するまでの間に被検液Sとセンサ電極40との接触を抑制する一方、測定器200への装着をトリガとして被検液Sとセンサ電極40との接触を生じさせることで、高いセンサ感度での測定を実現することができる。しかも、測定精度のばらつきを低減できるので、測定結果の再現性を高く維持することができる。
【0040】
(b)本実施形態の測定システム1によれば、例えば測定器200をトイレ400の壁400a内に設置し、被験者がセンサユニット100を用いて測定を行うことができる。つまり、簡易に測定を行うことができ、高い利便性を実現することができる。また、1つの測定器200に対して、複数の被験者がそれぞれセンサユニット100を装着することで、測定器200を共用することが可能である。そのため、システムコストを低減することができる。
【0041】
(c)センサユニット100において、流路50は、毛細管現象が発現するような形状を有することが好ましい。これにより、第1セル20に貯留する被検液Sを第2セル30へより確実に流入させることができる。
【0042】
(d)センサユニット100において、第2セル30の容積は第1セル20の容積よりも小さいことが好ましい。これにより、第2セル30から第1セル20へ供給する被検液Sの量が少ない場合であっても、第2セル30内にて、被検液Sとセンサ電極40とをより確実に接触させることができる。
【0043】
(e)測定システム1において、測定器200は、電気化学測定の開始を、測定器200へのセンサユニット100の装着をトリガとして行うように構成されることが好ましい。これにより、被検液Sを第2セル30へ供給する同時に、被検液Sをセンサ電極40と接触させて電気化学測定を行うことができる。この結果、センサ感度の変動を回避し、測定結果の再現性を向上させることができる。
【0044】
(f)測定システム1において、測定器200は、電気化学測定を、測定器200へのセンサユニット100の装着後における所定の時間経過後に開始するよう構成されていることが好ましい。これにより、第2セル30内で被検液Sの流れを定常状態として測定を行うことができる。この結果、測定結果の再現性をより向上させることができる。
【0045】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0046】
上述の実施形態では、被験者がセンサユニット100に被検液Sを採取し、その直後に測定器200へ装着する場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。センサユニット100によれば、測定器200へ装着するまでの間、被検液Sとセンサ電極40との接触を抑制できるので、被検液Sを採取し、所定時間が経過した後、測定器200へ装着して測定を行ってもよい。例えば複数の被験者の被検液を採取した後、一定時間が経過してから各センサユニット100を測定器200へ装着し測定してもよい。
【0047】
上述の実施形態では、第1セル20から第2セル30内への流路50を介した被検液Sの供給が、測定器200へセンサユニット100を装着したときの構成部品同士の構造的干渉によりベント管60が開放される場合を例として説明したが、本発明はこれに限定されない。以下、構造的干渉によるトリガ構造の変形例について説明する。
【0048】
上述の実施形態では、ベント管60が針状部材210により破断されて開放される場合を説明したが、ベント管60の開放はこれに限定されない。例えばベント管60は、測定器200側の端部に開閉可能な弁(図示略)を備え、センサユニット100を測定器200の挿入口に挿入したときに、これらの構造的干渉により弁が開放されるように構成されてもよい。弁の開放により第2セル30内の雰囲気を外部へ逃がすことができる。このようにセンサユニット100を測定器200へ装着したときに、弁が開放されることをトリガとして第2セル30へ被検液Sが流入することになる。なお、弁は、センサユニット100を測定器200へ装着したときに物理的にもしくは電気的に開閉するように構成されればよく、特に限定されない。
【0049】
また例えば、
図4(a)に示すように、センサユニット100において、ベント管60の一端を含む領域(図中の破線領域)に切り欠き領域62を形成してもよい。この場合、
図4(b)に示すように、センサユニット100を測定器200の挿入口に挿入したときに、構造的干渉により、センサユニット100で切り欠き領域62が除去されることになる。これにより、ベント管60の端部が除去される。これによりベント管60が開放され、第2セル30内の雰囲気を外部へ逃がすことができる。この結果、第1セル20から流路50を介して第2セル30へと被検液Sを流入させることができる。このようにセンサユニット100を測定器200へ装着したときに、切り欠き領域62が除去されることをトリガとして第2セル30へ被検液Sが流入することになる。
【0050】
また例えば、第1セル20から第2セル30への被検液Sの供給は、ベント管60の開放の代わりに、構造的干渉によって流路50が形成されて開始されるように構成されてもよい。具体的には、
図5(a)に示すように、第1セル20と第2セル30とを接続する流路50の一部に閉塞箇所51(図中の破線領域)を設ける。閉塞箇所51は、例えば流路50を可撓性を有する部材で構成し、その流れ方向の一部に撓みや折り曲げを施すことにより設けることができる。第1セル20に取り込まれた被検液Sは、閉塞箇所51により第2セル30へ流入せず、滞留することになる。この場合、
図5(b)に示すように、センサユニット100の測定器200への装着の際、測定器200とセンサユニット100との構造的干渉により流路50が直線状となるように変形させて、流路50を開放させるとよい。これにより、例えば毛細管現象により第1セル20から第2セル30へと流路50を介して被検液Sが流れ込むことになる。なお、
図5(a)では、第2セル30は、雰囲気内の空気を外部に逃がす孔(図示略)を備え、第2セル30内に被検液が流入したときに、第2セル30内の雰囲気が外部へ逃げるように構成される。
【0051】
また、流路50に閉塞箇所51を設ける代わりに、流路50を物理的に塞ぐ栓(図示略)を設けてもよい。この栓を構造的干渉により開閉させたり、破壊させたりすることで、流路50が開放されるように構成してもよい。この栓としては、樹脂やプラスチックなどから形成することができる。これらの栓であれば、例えば、センサユニット100を測定器200に挿入した際に流路50に熱や振動、衝撃を付与することで、その栓を破壊し、流路50を開放させることができる。また、栓は、例えは磁性材料で形成しても良く、この場合、構造的干渉として磁性により栓の開閉を行うことができる。
【0052】
また例えば
図6(a)に示すように、第1セル20を、構造的干渉により圧縮可能なように構成してもよい。第1セル20は、例えば可撓性を有する部材(例えば樹脂やプラスチック等)で形成することができる。また、第1セル20は、取り込み口から被検液Sを取り込みしつつ、圧縮した際には取り込み口から被検液Sが流出しないように構成するとよい。例えば、第1セル20の取り込み口に逆止弁を設けるとよい。一方、第2セル30には、雰囲気内の空気を外部に逃がす孔(図示略)が設けられるとよい。流路50は毛細管現象により被検液Sを汲み上げないような太さを有するとよい。この場合、被検液Sは、第1セル20に取り込まれるものの、第2セル30へは流入せずに滞留することになる。そして、
図6(b)に示すように、第1セル20の圧縮により、流路50を介して第2セル30へ被検液Sを圧送することになる。ここでは、センサユニット100を測定器200に装着した際の第1セル20の圧縮をトリガとして、第2セル30への被検液Sの供給を行うことができる。
【0053】
また例えば
図7(a)に示すように、第2セル30を、構造的干渉により膨張可能なように構成してもよい。第2セル30は、例えば可撓性を有する部材(樹脂やプラスチック等)で形成するとよい。また、第2セル30は、その内部が気密状となるように構成されるとよい。この場合、被検液Sは、第1セル20に取り込まれるものの、第2セル30が気密状態であるため、第2セル30へは流入せずに第1セル20に滞留することになる。そして、
図7(b)に示すように、構造的干渉により第2セル30を膨張させ、第2セル30内に生じた負圧によって、第1セル20から流路50を介して第2セル30へと被検液Sを吸引することになる。ここでは、構造的干渉による第2セル30の膨張をトリガとして、第2セル30への被検液Sの供給を行うことができる。
【0054】
上述の実施形態では、第1セル20から第2セル30への被検液Sを流入させるトリガとして、センサユニット100を測定器200へ装着することによる構造的干渉を例として説明したが、本発明はこれに限定されない。トリガとしては、センサユニット100の測定器200への装着に限定されず、人手や治具などの外的な操作によりセンサユニット100の構成部品に対して構造的干渉を行い、第1セル20から第2セル30への被検液の供給を行ってもよい。例えば、被検液Sを貯留させたセンサユニット100に対して、外的な操作によりベント管60の端部を破断させたり、切り欠き領域62を除去したりすることで、第2セル30へ被検液Sを流入させてから、センサユニット100を測定器200へ装着してもよい。またトリガとしては、例えば磁石などにより非接触での構造的干渉を行い、第2セル30への被検液の供給を行ってもよい。例えば、磁石などにより弁を開放したり、栓を除去したりすることで、第2セル30へ被検液Sを流入させてから、センサユニット100を測定器200へ装着してもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、センサユニット100が流路50を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図8に示すように、第1セル20と第2セル30とは隔壁52でそれぞれの空間が仕切られるように構成されてもよい。この場合、センサユニット100を測定器200へ装着した時に、隔壁52を破断させるとよい。隔壁52の裂け目は流路として第1セル20から第2セル30への被検液Sの供給を行うことができる。
【0056】
上述の実施形態では、センサ電極40を用いて、被検液Sとの接触で生じる電気化学反応を測定する場合を例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被検液Sに含まれる特定成分と反応して変色する検査シートをセンサ電極40と併用してもよい。この場合、例えば
図9に示すように、第2セル30内にセンサ電極40とともに検査シート70を内包させるとよい。
【0057】
検査シート70は、被検液Sとの接触により作用面が変色するように構成される。検査シート70によれば、センサ電極40とは異なる形式で成分を測定することが可能となる。そのため、センサ電極40と検査シート70とを併用することにより、例えばセンサ電極40では測定しにくい成分を、検査シート70で測定することが可能となる。つまり、被検液Sに含まれる複数の成分を同時に測定することが可能となる。検査シート70としては、特定の成分との接触により変色を呈するものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
【0058】
検査シート70を用いる場合、センサ電極40と同様の課題が生じることがある。検査シート70に被検液Sが接触した状態で放置されると、被検液S中の特定の成分(例えばタンパク質など)が作用面に沈着し、変色の度合いを変化させることがある。また、この度合いの変化量は、接触している時間や環境条件に応じて、大きくばらつくことがある。この点、
図9に示す形態とすることにより、検査シート70への被検液Sの供給を、センサ電極40への供給と同じタイミングに調整することができる。この結果、測定結果の再現性をより向上させることができる。
【0059】
また、検査シート70を設ける場合、測定器200は、検査シート70の作用面を撮影する撮影手段をさらに備え、検査シート70の撮影を、センサユニット100の測定器200への装着をトリガとして行うように構成されることが好ましい。これにより、センサ電極40での電気化学反応の測定とともに、検査シート70の変色を測定することができる。もしくは、測定器200は、検査シート70の撮影を、センサユニット100の測定器200への装着後であって、所定の時間が経過した後に開始するように構成されることが好ましい。これにより、第2セル30内へ被検液Sの流入が完了し、第2セル30内が定常状態となった後に検査シート70の変色を撮影することができる。この結果、測定結果の再現性をより向上させることができる。なお、電気化学測定を行うための測定手段と撮影手段とは、同一の装置として構成してもよく、別々の装置として構成してもよい。
【0060】
また
図9において、検査シート70の代わりに匂いセンサを用いてもよく、センサ電極40、検査シート70および匂いセンサを併用してもよい。匂いも時間の経過で変化するためセンサ電極40と同様の課題が生じ得るが、第2セル30に内包させることで、上記課題を解決することができる。
【0061】
また
図9では、センサ電極40と検査シート70を併用する場合を示すが、検査シート70のみ配置することもできる。上述したように検査シート70の場合でも被検液Sとの接触による時間経過により測定精度にばらつきが生じることがある。この点、上述した実施形態の構成を採用することにより、検査シート70での測定精度のばらつきを低減し、測定結果の再現性を高く維持することができる。なお、測定器200としては、検査シート70の作用面を撮影する撮影手段を備えるものを使用するとよい。
【0062】
また例えば
図10に示すように、第1セル20と第2セル30との間に設けられる流路50上に、被検液Sを一時的に貯留させる第3セル80を設けてもよい。第3セル80は、被検液Sが第1セル20から第2セル30へ流入するまでの時間を調整する流量調整部、もしくは、所定の試薬を内包させて被検液Sを反応させる反応部として機能させることができる。反応部として機能させる場合、第3セル80には、例えば被検液Sに含まれる成分と反応する試薬81などを内包させるとよい。被検液Sに含まれる成分によっては、そのまま電気化学反応を測定しにくい場合がある。この点、被検液Sを、第1セル20から、試薬などを内包する第3セル80を経由して、第2セル30へと供給することが可能となる。これにより、被検液Sを反応させた後、電気化学測定に供することができる。
【0063】
上述の実施形態では、第2セル30を1つの場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図11に示すように、1つの第1セル20に対して、複数の第2セル30のそれぞれを流路50を介して連通できるように構成してもよい。この場合、各第2セル30にベント管60をそれぞれ接続し、構造的干渉によりベント管60が開放されるように構成するとよい。このような構成によれば、複数の第2セル30に内包するセンサ電極40での測定条件を変更することにより、被検液Sに含まれる複数の成分を並行して測定することができる。なお、
図11は、3つの接続端子42に対応して、3つの第2セル30のそれぞれにセンサ電極40を、1つの第2セル30に検査シート70を内包させる場合を示す。また、複数の第2セル30の配置は特に限定されず、例えば、第1セル20を中央に配置し、その周囲に放射状に複数の第2セル30を配置することができる。また、
図11は第2セル30の数が4の場合を示すが、その数は特に限定されない。また、
図11では、ベント管60の開放をトリガとして被検液Sが流入する場合を示すが、上述した第1セル20の圧縮や第2セル30の膨張などをトリガとしてもよい。
【0064】
また、複数の第2セル30を設ける場合、それぞれに接続される流路50の長さは同一としてもよく、異なるようにしてもよい。流路50の長さを同一とする場合、各第2セル30に被検液Sが流入するタイミングを同時とすることができる。一方、流路50の長さを異なるように構成する場合、各第2セル30までに被検液Sが流入するまでの時間を意図的にずらすことができる。
【0065】
また、複数の第2セル30を設ける場合、複数の流路50のうち、少なくとも1つには、第1セル20と第2セル30との間に第3セルが設けられてもよい。これにより、第2セル30へ被検液Sを流入させる時間について、第3セルを経由する系を比較的長く、経由させない系を比較的短く調整することができる。もしくは、第3セルを経由させる系では、第3セルに内包させた試薬により被検液Sを反応させた後に第2セル30へ流入させる一方、第3セルを経由させない系では、被検液Sをそのまま第2セル30へ流入させることができる。
【0066】
また、
図9では、1つの第2セル30にセンサ電極40および検査シート70を内包する場合を説明したが、複数の第2セル30を設ける場合、センサ電極40と検査シート70とをそれぞれ別々の第2セル30に内包させてもよい。センサ電極40と検査シート70とが同じ空間内に存在すると、それぞれの測定に干渉を及ぼすことがあるが、別々の第2セル30に分離することで、その干渉を低減することができる。
【0067】
また、上述の実施形態では、センサユニット100を測定器200へ装着する前にセンサユニット100へ被検液Sをかけ流す場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。センサユニット100は測定器200に装着した状態で第1セル20に被検液Sをかけ流してもよい。この場合、第1セル20に被検液Sが貯留されると同時に、流路50を介して第2セル30へと被検液Sが流入することになる。つまり、センサユニット100は測定器200に装着した状態では被検液Sを自動的に第2セル30内へと流入させることができる。
【0068】
また、上述の実施形態では、第1セル20が取り込み口21を備え、取り込み口21から被検液Sを取り込み、その内部空間に被検液Sを貯留するように構成される場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1セル20は、取り込み口21の代わりに、例えば毛細管現象により外部から被検液Sを取り込むことが可能な管が接続されて構成されてもよい。また例えば、第1セル20は、吸湿可能な部材から形成され、かけ流される被検液Sを保液して貯留させるように構成されてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、測定システム1がセンサユニット100、測定器200および判定支援装置300を備える場合を説明したが、判定支援装置300は必要に応じて具備すればよく、省略することもできる。
【0070】
また、好ましい形態としては、被験者の尿を測定する測定システムであって、測定システムは、可搬性を有し、電気化学測定を行うための測定器に対して着脱可能であって、被験者の尿をかけ流したときに貯留できるように構成されたセンサユニットと、トイレの内壁に設置され、センサユニットに接続可能かつ電気化学測定を行うように構成された測定器と、測定器での測定結果を出力可能に構成される判定支援装置と、を備えて構成される。
【0071】
このような測定システムによれば、測定器をトイレの壁内に設置する一方、センサユニットを被験者により可搬可能としているため、被験者がトイレ内で尿を採取し、その尿を測定器に簡易な操作で供することができる。また、1つの測定器で、複数の被験者がそれぞれ尿の測定を行うことができるので、システムコストを低減することができる。また、判定支援装置によれば、例えば被験者の個別IDを登録した後、測定結果とIDとを関連付けることができ、複数の被験者が使用した場合であっても、特定の被験者の測定結果を出力することができる。
【0072】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
【0073】
(付記1)
電気化学測定を行うための測定器に対して着脱が可能なように構成されたセンサユニットであって、
外部から供給された被検液を一時的に貯留する第1セルと、
センサ電極を内包する第2セルと、を備え、
前記第1セル内から第2セル内への被検液の供給が、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行われるように構成されている、センサユニット。
【0074】
(付記2)
前記センサユニットを前記測定器から脱装した状態で、前記センサユニットに対して前記被検液を供給すると、前記被検液が前記第2セル内へ流入することなく、前記第1セル内に滞留するように構成されている、
付記1に記載のセンサユニット。
【0075】
(付記3)
前記センサユニットを前記測定器に装着する際における、前記測定器の構成部品と前記センサユニットの構成部品との構造的干渉が、前記トリガとして機能するよう構成されている、
付記1又は付記2に記載のセンサユニット。
【0076】
(付記4)
前記第2セルに設けられ、前記第2セル内の雰囲気を外部へ逃すためのベント管を備え、
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記ベント管が開放され、前記第2セル内への被検液の流入が開始されるように構成されている、
付記3に記載のセンサユニット。
【0077】
(付記5)
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記第1セル内と前記第2セル内とを連通させる流路が形成され、前記流路を介して前記第2セル内への被検液の流入が開始されるように構成されている、
付記3に記載のセンサユニット。
【0078】
(付記6)
前記第1セルと前記第2セルとは隔壁で区分けされて構成され、
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記隔壁が破断し、前記隔壁に形成された裂け目が前記流路となる、
付記5に記載のセンサユニット。
【0079】
(付記7)
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記第1セルが圧縮され、前記第2セル内への前記被検液の圧送が開始されるように構成されている、
付記3に記載のセンサユニット。
【0080】
(付記8)
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記第2セルが膨張され、前記第2セル内に生じた負圧によって前記第2セル内への前記被検液の吸引が開始されるように構成されている、
付記3に記載のセンサユニット。
【0081】
(付記9)
前記第1セル内と前記第2セル内とを連通させる流路を備え、
前記流路は、前記第1セル内から前記第2セル内へ前記被検液を取り入れる際に毛細管現象を発現させるような形状を有する、
付記4~付記8のいずれか1つに記載のセンサユニット。
【0082】
(付記10)
前記測定器に装着した状態で前記センサユニットに対して前記被検液を供給すると、
前記第1セルから前記第2セル内へ被検液が流入するよう構成されている、
付記1~9のいずれか1つに記載のセンサユニット。
【0083】
(付記11)
前記第2セルの容積が前記第1セルの容積よりも小さい、
付記1~10のいずれか1つに記載のセンサユニット。
【0084】
(付記12)
前記第1セル内と前記第2セル内とを連通させる流路と、
前記流路上に、前記被検液を一時的に貯留させる第3セルと、を備え、
前記第2セル内への被検液の流入が、前記流路を介して前記第3セルを経由して行われるように構成されている、
付記4~7に記載のセンサユニット。
【0085】
(付記13)
前記第3セル内には、前記被検液中の特定成分と反応可能な反応試薬が内包されている、
付記14に記載のセンサユニット。
【0086】
(付記14)
1つの第1セルに対して複数の第2セルと、
前記複数の第2セルのそれぞれに設けられ、各第2セル内の雰囲気を外部へ逃すためのベント管と、を備え、
前記センサユニットを前記測定器に装着した際における前記構成部品の構造的干渉によって前記ベント管が開放され、前記複数の第2セル内への被検液の流入が開始されるように構成されている、
付記3に記載のセンサユニット。
【0087】
(付記15)
前記第1セル内と前記複数の第2セル内のそれぞれとを連通させる複数の流路を備え、
前記複数の流路は、それぞれの長さが同一、または異なるように構成される、
付記14に記載のセンサユニット。
【0088】
(付記16)
前記複数の流路のうちの少なくとも1つには、前記被検液を一時的に貯留させる第3セルを備え、
前記第1セルから前記第2セル内への被検液の流入が、前記流路を介して前記第3セルを経由して行われるように構成されている、
付記15に記載のセンサユニット。
【0089】
(付記17)
前記第2セル内には、前記被検液と接触することにより作用面が変色するよう構成された検査シートが配置されている、
付記1~16のいずれか1つに記載のセンサユニット。
【0090】
(付記18)
付記1~付記17のいずれか1つに記載のセンサユニットに接続可能に構成され、電気化学測定を行うための測定手段を備えた測定器であって、
前記電気化学測定の開始を、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行うよう構成されている、測定器。
【0091】
(付記19)
付記1~付記17のいずれか1つに記載のセンサユニットに接続可能に構成され、電気化学測定を行うための測定手段を備えた測定器であって、
前記電気化学測定の開始を、前記測定器への前記センサユニットの装着後における所定の時間経過後に行うよう構成されている、測定器。
【0092】
(付記20)
付記17に記載のセンサユニットに接続可能に構成され、前記検査シートの前記作用面を撮影する撮影手段を備えた測定器であって、
前記検査シートの撮影を、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行うよう構成されている、測定器。
【0093】
(付記21)
付記17に記載のセンサユニットに接続可能に構成され、前記検査シートの前記作用面を撮影する撮影手段を備えた測定器であって、
前記検査シートの撮影を、前記測定器への前記センサユニットの装着後における所定の時間経過後に行うよう構成されている、測定器。
【0094】
(付記22)
前記被検液が尿であり、
前記測定器がトイレ内に設置されている、
付記18~付記21のいずれか1つに記載の測定器。
【0095】
(付記23)
測定器に対して着脱が可能なように構成されたセンサユニットであって、
外部から供給された被検液を一時的に貯留する第1セルと、
前記被検液との接触することにより作用面が変色するように構成される検査シートを内包する第2セルと、を備え、
前記第1セル内から第2セル内への前記被検液の供給が、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行われるように構成されている、センサユニット。
【0096】
(付記24)
被験者の尿を測定する測定システムであって、
可搬性を有し、電気化学測定を行うための測定器に対して着脱可能であって、前記被験者の尿をかけ流したときに貯留できるように構成されたセンサユニットと、
前記センサユニットに接続可能かつ電気化学測定を行うように構成された測定器と、を備え、
前記測定器は、トイレの内壁に設置される、
尿測定システム。
【0097】
(付記25)
前記センサユニットは、
前記被験者の尿を一時的に貯留する第1セルと、
センサ電極を内包する第2セルと、を備え、
前記第1セル内から第2セル内への被検液の供給が、前記測定器への前記センサユニットの装着をトリガとして行われるように構成され、
前記測定器は、前記電気化学測定の開始を、前記センサユニットの前記測定器への装着をトリガとして行うよう構成されている、
付記24に記載の尿測定システム。
【符号の説明】
【0098】
1 測定システム
100 センサユニット
200 測定器
300 判定支援装置
400 便器
10 基材
20 第1セル
21 取り込み口
30 第2セル
40 センサ電極
41 配線
42 接続端子
50 流路
51 閉塞箇所
60 ベント管
61 弁
62 切り欠き領域
70 検査シート
80 第3セル
81 試薬
S 被検液
【要約】
【課題】センサユニットと測定器とが別体に構成された測定システムにおいて、センサ感度を安定化させ、測定結果の再現性を向上させる。
【解決手段】電気化学測定を行うための測定器に対して着脱が可能なように構成されたセンサユニットであって、外部から供給された被検液を一時的に貯留する第1セルと、センサ電極を内包する第2セルと、を備え、第1セル内から第2セル内への被検液の供給が、測定器へのセンサユニットの装着をトリガとして行われるように構成されている、センサユニットである。
【選択図】
図1