(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】試験体
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240813BHJP
G01N 15/08 20060101ALI20240813BHJP
G01N 3/12 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01N1/28 E
G01N15/08
G01N3/12
(21)【出願番号】P 2024103673
(22)【出願日】2024-06-27
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524244111
【氏名又は名称】東日工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131428
【氏名又は名称】若山 剛
(72)【発明者】
【氏名】二木 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】尾形 徳昭
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-349813(JP,A)
【文献】特開平7-198582(JP,A)
【文献】特開昭49-32685(JP,A)
【文献】特開2001-116747(JP,A)
【文献】特開2012-18015(JP,A)
【文献】特開2008-46086(JP,A)
【文献】特開2021-148702(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105181409(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00ー1/44
G01N15/00ー15/14
G01N3/00ー3/62
G01M9/00ー10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、及び、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験の少なくとも1つを行うために用いられる試験体であって、
立方体を構成し且つ前記立方体を所定の分割面に沿って分割することにより得られる形状を有する複数の構成体を備えるとともに、前記構成体間の距離が調整可能であるように構成される、試験体。
【請求項2】
請求項1に記載の試験体であって、
前記試験体は、前記立方体の1対の外壁面に直交する方向にて前記立方体を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成部を備え、
前記貫通孔は、前記1対の外壁面にてそれぞれ開口する1対の開口部と、前記1対の開口部を連通し且つ少なくとも前記開口部に連接する部分の断面積が前記開口部よりも小さい連通部と、を有し、
前記試験体は、前記連通部のうちの前記開口部に連接する部分よりも断面積が大きく且つ前記1対の開口部にそれぞれ収容される1対の頭部と、前記連通部に挿通されるとともに前記1対の頭部を連結する連結部と、を備えるとともに、前記頭部間の距離が変更可能であるように構成される、試験体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の試験体であって、
前記立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向のそれぞれに対して、前記構成体間の距離が調整可能であるように構成される、試験体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の試験体であって、
前記複数の構成体は、前記立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向のそれぞれにおいて、前記立方体をn個に等分割するとともに、前記分割面に沿って分割することにより得られる形状を有する、試験体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験体に関する。
【背景技術】
【0002】
水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、又は、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験を行うために用いられる試験体が知られている。例えば、特許文献1に記載の試験体は、岩盤から切り出された立方体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験において、同一の試験体が複数求められることがある。このため、例えば、樹脂からなる立方体を試験体として製造することが考えられる。しかしながら、この場合、岩盤が有する亀裂が模擬されないため、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における亀裂の影響を調べることができないという課題があった。
【0005】
本発明の目的の一つは、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における亀裂の影響を高い精度にて調べることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面では、試験体は、水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、及び、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験の少なくとも1つを行うために用いられる。試験体は、立方体を構成し且つ当該立方体を所定の分割面に沿って分割することにより得られる形状を有する複数の構成体を備えるとともに、構成体間の距離が調整可能であるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における亀裂の影響を高い精度にて調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図10】第1実施形態の試験体の分解斜視図である。
【
図11】第1実施形態の試験体の分解斜視図である。
【
図12】第1実施形態の第1変形例の試験体の断面図である。
【
図13】第1実施形態の第2変形例の試験体の斜視図である。
【
図14】第1実施形態の第2変形例の試験体の斜視図である。
【
図15】第1実施形態の第3変形例の試験体の断面図である。
【
図16】第1実施形態の第3変形例の試験体の断面図である。
【
図17】第1実施形態の第3変形例の試験体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の試験体に関する各実施形態について
図1乃至
図26を参照しながら説明する。
【0010】
<第1実施形態>
(概要)
第1実施形態の試験体は、水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、及び、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験の少なくとも1つを行うために用いられる。
試験体は、立方体を構成し且つ当該立方体を所定の分割面に沿って分割することにより得られる形状を有する複数の構成体を備えるとともに、構成体間の距離が調整可能であるように構成される。
【0011】
これによれば、構成体間の距離が調整される。例えば、構成体間の距離の目標値に対応する厚さを有する薄板が、2つの構成体に挟まれた状態にて、構成体間の距離を短くすることにより、構成体間の距離を容易に目標値に調整することができる。これにより、岩盤が有する亀裂を高い精度にて模擬することができる。この結果、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における亀裂の影響を高い精度にて調べることができる。
次に、第1実施形態の試験体について、より詳細に説明する。
【0012】
(構成)
以下、
図1乃至
図11に表されるように、x軸、y軸、及び、z軸を有する右手系の直交座標系を用いて、第1実施形態の試験体1を説明する。なお、本明細書において、後述の
図12乃至
図26においても同様の座標系が用いられる。
【0013】
本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向は、試験体1の左右方向、試験体1の前後方向、及び、試験体1の上下方向とそれぞれ表されてもよい。また、本例では、x軸の正方向、x軸の負方向、y軸の正方向、y軸の負方向、z軸の正方向、及び、z軸の負方向は、試験体1の左方向、試験体1の右方向、試験体1の後方向、試験体1の前方向、試験体1の上方向、及び、試験体1の下方向とそれぞれ表されてもよい。
【0014】
図1は、試験体1の左方であり、試験体1の前方であり、且つ、試験体1の上方である位置から、試験体1を見た図(換言すると、左前上方斜視図)である。
図2は、試験体1の左方であり、試験体1の前方であり、且つ、試験体1の下方である位置から、試験体1を見た図(換言すると、左前下方斜視図)である。
【0015】
図3は、試験体1の上方から試験体1を見た図(換言すると、平面図)である。
図4は、試験体1の下方から試験体1を見た図(換言すると、底面図)である。
図5は、
図4のV-V線により表される平面により切断された試験体1の断面をx軸の正方向にて見た図である。
【0016】
図6は、試験体1の右方へ向かって試験体1を見た図(換言すると、右側面図)である。
図7は、
図6のVII-VII線により表される平面により切断された試験体1の断面をz軸の正方向にて見た図である。
【0017】
図8は、試験体1の前方から試験体1を見た図(換言すると、正面図)である。
図9は、
図8のIX-IX線により表される平面により切断された試験体1の断面をx軸の正方向にて見た図である。
【0018】
図10は、試験体1が分解された状態における、試験体1を構成する複数の構成体の左前上方斜視図である。
図11は、試験体1が分解された状態における、試験体1を構成する複数の構成体の右前下方斜視図である。
なお、
図10及び
図11において、後述のボルト及びナットは、図示が省略されている。
【0019】
本例では、試験体1は、水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、又は、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験を行うために用いられる。例えば、試験体1は、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向のうちの少なくとも1つの方向にて圧縮応力が加えられた状態において、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験を行うために用いられてよい。
【0020】
また、試験体1は、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験を行うための試験装置を評価するために用いられてもよい。また、試験体1は、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における試験結果を評価又は分析するために用いられてもよい。
【0021】
図1乃至
図9に表されるように、試験体1は、立方体である。本例では、試験体1の辺の長さは、300mmである。なお、試験体1の辺の長さは、100mm乃至600mmの長さであってもよい。本例では、試験体1の表面は、平滑である。なお、試験体1の表面は、岩盤又は岩石の表面を模擬するように、粗面であってもよい。
【0022】
本例では、試験体1は、14個の構成体10-1a,10-1b,10-2a,10-3a,10-4a,10-4b,10-5a,10-5b,10-6a,10-6b,10-7a,10-7b,10-8a,10-8b(以下、構成体10-1a~10-8bとも表される。)を備える。なお、試験体1が備える構成体の数は、2乃至13個であってもよいし、15個以上であってもよい。
【0023】
本例では、各構成体10-1a~10-8bは、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂からなる。なお、各構成体10-1a~10-8bは、ABS樹脂以外の樹脂(例えば、ウレタン樹脂、ASA(Acrylate Sthrene Acrylonitrile)樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、又は、ポリアミド樹脂等)からなっていてもよい。
【0024】
図1、
図2、
図10、及び、
図11に表されるように、14個の構成体10-1a~10-8bは、試験体1を構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向(本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)のそれぞれにおいて、当該立方体をn個に等分割するとともに、所定の分割面DPに沿って分割することにより得られる形状を有する。本例では、nは、2を表す。なお、nは、3以上の整数を表してもよい。本例では、分割面DPは、平面である。
【0025】
従って、14個の構成体10-1a~10-8bは、n3個(本例では、8個)の小立方体10-1,10-2,10-3,10-4,10-5,10-6,10-7,10-8(以下、小立方体10-1~10-8とも表される。)を構成する。各小立方体10-1~10-8は、試験体1を構成する立方体の辺の長さの1/nの長さの辺を有する立方体である。
【0026】
構成体10-1a、及び、構成体10-1bは、小立方体10-1を構成する。構成体10-2aは、小立方体10-2を構成する。構成体10-3aは、小立方体10-3を構成する。構成体10-4a、及び、構成体10-4bは、小立方体10-4を構成する。構成体10-5a、及び、構成体10-5bは、小立方体10-5を構成する。構成体10-6a、及び、構成体10-6bは、小立方体10-6を構成する。構成体10-7a、及び、構成体10-7bは、小立方体10-7を構成する。構成体10-8a、及び、構成体10-8bは、小立方体10-8を構成する。
【0027】
試験体1は、試験体1を構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向(本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)のそれぞれに対して、当該方向において、当該立方体を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成部11を複数(本例では、40個)備える。なお、試験体1が備える貫通孔形成部11の数は、1個乃至39個であってもよいし、41個以上であってもよい。
【0028】
試験体1が備える各貫通孔形成部11は、他の貫通孔形成部11と交差しない位置を有する。
図6及び
図7に表されるように、本例では、試験体1は、x軸方向に対する貫通孔形成部11を8個備える。なお、試験体1が備えるx軸方向に対する貫通孔形成部11の数は、1個乃至7個であってもよいし、9個以上であってもよい。
【0029】
x軸方向に対する8個の貫通孔形成部11は、4組のx軸方向小立方体群のそれぞれにおいて2個位置する。x軸方向小立方体群は、x軸方向にて並ぶ2個の小立方体からなる。例えば、x軸方向小立方体群は、小立方体10-1、及び、小立方体10-4からなる。各x軸方向小立方体群における2個の貫通孔形成部11は、当該x軸方向小立方体群の、x軸に直交する平面による断面において、z軸方向における中央部であるとともに、y軸方向における両端部に位置する。
【0030】
図8及び
図9に表されるように、本例では、試験体1は、y軸方向に対する貫通孔形成部11を16個備える。なお、試験体1が備えるy軸方向に対する貫通孔形成部11の数は、1個乃至15個であってもよいし、17個以上であってもよい。
【0031】
y軸方向に対する16個の貫通孔形成部11は、4組のy軸方向小立方体群のそれぞれにおいて4個位置する。y軸方向小立方体群は、y軸方向にて並ぶ2個の小立方体からなる。例えば、y軸方向小立方体群は、小立方体10-1、及び、小立方体10-2からなる。各y軸方向小立方体群における4個の貫通孔形成部11は、当該y軸方向小立方体群の、y軸に直交する平面による断面において、4個の隅部に位置する。
【0032】
図4及び
図5に表されるように、本例では、試験体1は、z軸方向に対する貫通孔形成部11を16個備える。なお、試験体1が備えるz軸方向に対する貫通孔形成部11の数は、1個乃至15個であってもよいし、17個以上であってもよい。
【0033】
z軸方向に対する16個の貫通孔形成部11は、4組のz軸方向小立方体群のそれぞれにおいて4個位置する。z軸方向小立方体群は、z軸方向にて並ぶ2個の小立方体からなる。例えば、z軸方向小立方体群は、小立方体10-1、及び、小立方体10-5からなる。各z軸方向小立方体群における4個の貫通孔形成部11は、当該z軸方向小立方体群の、z軸に直交する平面による断面において、y軸方向における両端部のそれぞれにて、x軸方向における両端部と中央部との間に位置する。
【0034】
図5、
図7、及び、
図9に表されるように、各貫通孔形成部11は、2対のザグリ孔形成部11aと、2個の連通孔形成部11bと、を備える。
2対のザグリ孔形成部11aは、x軸方向小立方体群、y軸方向小立方体群、又は、z軸方向小立方体群を構成する2個の小立方体がそれぞれ有する2対の外壁面にてそれぞれ開口する2対のザグリ孔をそれぞれ形成する。本例では、ザグリ孔は、円柱状である。
【0035】
2個の連通孔形成部11bは、2対のザグリ孔形成部11aをそれぞれ連通する2個の連通孔をそれぞれ形成する。各連通孔形成部11bにより形成される連通孔は、ザグリ孔形成部11aにより形成されるザグリ孔よりも断面積が小さい。本例では、連通孔は、円柱状である。従って、本例では、連通孔の直径は、ザグリ孔の直径よりも小さい。
【0036】
このような構成により、x軸方向小立方体群、y軸方向小立方体群、又は、z軸方向小立方体群を構成する2個の小立方体がそれぞれ有する2対の外壁面のうちの、小立方体同士が接しない2個の外壁面にそれぞれ位置する2個のザグリ孔形成部11aによりそれぞれ形成される2個のザグリ孔は、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの、試験体1を構成する立方体が有する1対の外壁面にてそれぞれ開口する1対の開口部に対応する。
【0037】
また、x軸方向小立方体群、y軸方向小立方体群、又は、z軸方向小立方体群を構成する2個の小立方体にそれぞれ位置する2個の連通孔形成部11bによりそれぞれ形成される2個の連通孔と、当該2個の小立方体がそれぞれ有する2対の外壁面のうちの、小立方体同士が接する2個の外壁面にそれぞれ位置する2個のザグリ孔形成部11aによりそれぞれ形成される2個のザグリ孔と、は、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの、1対の開口部を連通し且つ少なくとも開口部に連接する部分の断面積が開口部よりも小さい連通部に対応する。
【0038】
なお、x軸方向小立方体群、y軸方向小立方体群、又は、z軸方向小立方体群を構成する2個の小立方体がそれぞれ有する2対の外壁面のうちの、小立方体同士が接する2個の外壁面にそれぞれ位置する2個のザグリ孔形成部11aによりそれぞれ形成される2個のザグリ孔は、連通孔形成部11bにより形成される連通孔と同じ断面を有していてもよい。
【0039】
試験体1は、各貫通孔形成部11に対して、ボルト21と、ナット22と、を備える。
ボルト21は、頭部21aと、軸部21bと、を備える。
【0040】
頭部21aは、角柱状である。本例では、頭部21aは、六角柱状である。頭部21aは、連通孔形成部11bにより形成される連通孔の中心軸に直交する平面による断面において、当該連通孔よりも断面積が大きく、且つ、ザグリ孔形成部11aにより形成されるザグリ孔よりも断面積が小さい。
【0041】
軸部21bは、頭部21aから延出する棒状である。本例では、軸部21bは、円柱状である。軸部21bは、連通孔形成部11bにより形成される連通孔の中心軸に直交する平面による断面において、当該連通孔よりも断面積が小さい。
【0042】
ボルト21は、頭部21aが、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの1対の開口部の一方に収容されるとともに、軸部21bが当該貫通孔のうちの連通部に挿通される。
【0043】
なお、試験体1は、頭部21aと、ザグリ孔形成部11aの底面と、の間に座金を備えていてもよい。例えば、座金は、平座金、又は、バネ座金であってよい。
【0044】
ナット22は、貫通孔を有する角柱状である。本例では、ナット22は、貫通孔を有する六角柱状である。ナット22は、軸部21bの先端部に螺合により締結される。ナット22が軸部21bの先端部に締結された状態において、ナット22は、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの1対の開口部の他方に収容される。
【0045】
ナット22が軸部21bの先端部に締結された状態において、ナット22、及び、軸部21bの先端部は、連通孔形成部11bにより形成される連通孔の中心軸に直交する平面による断面において、当該連通孔よりも断面積が大きく、且つ、ザグリ孔形成部11aにより形成されるザグリ孔よりも断面積が小さい。
【0046】
なお、試験体1は、ナット22と、ザグリ孔形成部11aの底面と、の間に座金を備えていてもよい。例えば、座金は、平座金、又は、バネ座金であってよい。
【0047】
本例では、ナット22が軸部21bの先端部に締結された状態において、ナット22、及び、軸部21bの先端部と、頭部21aと、は、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの1対の開口部にそれぞれ収容される1対の頭部に対応する。また、ナット22が軸部21bの先端部に締結された状態において、軸部21bは、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの連通部に挿通されるとともに1対の頭部を連結する連結部に対応する。
【0048】
このような構成により、ボルト21、及び、ナット22を、螺子が締まるように相対的に回転させることにより、頭部21aとナット22との間の距離が短くなる。また、ボルト21、及び、ナット22を、螺子が緩むように相対的に回転させることにより、頭部21aとナット22との間の距離が長くなる。
このように、本例では、各貫通孔形成部11に対して、頭部21aとナット22との間の距離が変更可能である。
【0049】
このようにして、試験体1は、試験体1を構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向(本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)のそれぞれに対して、構成体間の距離が調整可能であるように構成される。
【0050】
なお、試験体1は、試験体1を構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向(本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)のうちの、1つの方向、又は、2つの方向のみに対して、構成体間の距離が調整可能であるように構成されていてもよい。
【0051】
例えば、試験体1は、x軸方向のみに対して、構成体間の距離が調整可能である場合、x軸方向に対する貫通孔形成部11のみを備えるとともに、y軸方向に対する貫通孔形成部11、及び、z軸方向に対する貫通孔形成部11を備えなくてよい。
また、例えば、試験体1は、x軸方向、及び、y軸方向のそれぞれに対して、構成体間の距離が調整可能である場合、x軸方向に対する貫通孔形成部11、及び、y軸方向に対する貫通孔形成部11を備えるとともに、z軸方向に対する貫通孔形成部11を備えなくてよい。
【0052】
本例では、構成体10-1a,10-1b,10-4a,10-4b,10-5a,10-5b,10-6a,10-6b,10-7a,10-7b,10-8a,10-8bの表面のうちの、分割面DPを構成する部分は、平滑である。なお、構成体10-1a,10-1b,10-4a,10-4b,10-5a,10-5b,10-6a,10-6b,10-7a,10-7b,10-8a,10-8bの表面のうちの、分割面DPを構成する部分は、岩盤又は岩石の亀裂面を模擬するように、粗面であってもよい。
【0053】
また、試験体1は、ボルト21、及び、ナット22に代えて、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの連通部に挿通される棒状体と、棒状体の両端部に螺合により締結される1対のナットと、を備えていてもよい。また、試験体1は、ボルト21に代えて、螺子を備えていてもよい。また、試験体1は、ボルト21、及び、ナット22に代えて、貫通孔形成部11により形成される貫通孔のうちの連通部に挿通されるとともに両端部に螺子孔を有する棒状体と、棒状体の両端部の螺子孔に螺合により締結される1対の螺子と、を備えていてもよい。
【0054】
(調整方法)
次に、第1実施形態の試験体1における構成体間の距離の調整方法について説明する。
先ず、複数の構成体10-1a~10-8bを、立方体を構成するように並べる。次いで、各貫通孔形成部11に対して、貫通孔形成部11により形成される貫通孔に、ボルト21の軸部21bを挿通するとともに、軸部21bの先端部にナット22を締結する。
【0055】
次いで、分割面DPを構成する構成体間に、構成体間の距離の目標値に対応する厚さを有する薄板を挟む。本例では、薄板は、分割面DPの一部の領域に亘って延在する。なお、薄板は、分割面DPの略全体に亘って延在してもよい。また、分割面DPを構成する構成体間に、複数の薄板が挟まれてもよい。また、薄板は、溶媒により溶融する材料からなっていてもよい。また、薄板は、金属、樹脂、又は、紙からなっていてよい。
【0056】
次いで、各貫通孔形成部11に対して、ボルト21、及び、ナット22を、螺子が締まるように相対的に回転させる。これにより、頭部21aとナット22との間の距離が短くなる。この結果、分割面DPを構成する構成体間の距離が目標値に調整される。
【0057】
以上、説明したように、第1実施形態の試験体1は、水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、及び、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験の少なくとも1つを行うために用いられる。試験体1は、立方体を構成し且つ立方体を所定の分割面DPに沿って分割することにより得られる形状を有する複数の構成体10-1a~10-8bを備えるとともに、構成体間の距離が調整可能であるように構成される。
【0058】
これによれば、構成体間の距離が調整される。例えば、構成体間の距離の目標値に対応する厚さを有する薄板が、2つの構成体に挟まれた状態にて、構成体間の距離を短くすることにより、構成体間の距離を容易に目標値に調整することができる。これにより、岩盤が有する亀裂を高い精度にて模擬することができる。この結果、水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における亀裂の影響を高い精度にて調べることができる。
【0059】
更に、第1実施形態の試験体1は、試験体1を構成する立方体の1対の外壁面に直交する方向にて当該立方体を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成部11を備える。貫通孔は、1対の外壁面にてそれぞれ開口する1対の開口部と、1対の開口部を連通し且つ少なくとも開口部に連接する部分の断面積が開口部よりも小さい連通部と、を有する。
【0060】
試験体1は、連通部のうちの開口部に連接する部分よりも断面積が大きく且つ1対の開口部にそれぞれ収容される1対の頭部(本例では、頭部21a、軸部21bの先端部、及び、ナット22)と、連通部に挿通されるとともに1対の頭部を連結する連結部(本例では、軸部21b)と、を備えるとともに、頭部間の距離が変更可能であるように構成される。
【0061】
これによれば、頭部間の距離が変更される。これにより、構成体間の距離を容易に調整することができる。
【0062】
更に、第1実施形態の試験体1は、試験体1を構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向のそれぞれに対して、構成体間の距離が調整可能であるように構成される。
【0063】
これによれば、分割面DPが平面である場合、分割面DPの法線方向がいずれの方向であっても、分割面DPを構成する構成体間の距離を高い精度にて調整できる。また、分割面DPが曲面である場合であっても、分割面DPを構成する構成体間の距離を高い精度にて調整できる。
【0064】
更に、第1実施形態の試験体1において、複数の構成体10-1a~10-8bは、試験体1を構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向のそれぞれにおいて、当該立方体をn個に等分割するとともに、分割面DPに沿って分割することにより得られる形状を有する。
【0065】
これによれば、試験体1を構成する構成体の数を変化させることによって、任意の大きさを有する試験体1を容易に製造することができる。
【0066】
なお、試験体1は、分割面DPを複数有していてもよい。この場合、複数の分割面DPは、互いに交差していてもよい。
【0067】
また、
図12に表されるように、第1実施形態の第1変形例の試験体1Dにおいて、試験体1Dは、頭部21aとザグリ孔形成部11aの底面との間、及び、ナット22とザグリ孔形成部11aの底面との間のそれぞれに圧縮バネ23を備える。圧縮バネ23は、構成体間の距離を短くする方向へ構成体を付勢する。
図12は、試験体1Dの断面図である。
【0068】
なお、試験体1Dは、頭部21aと圧縮バネ23との間、ナット22と圧縮バネ23との間、及び、圧縮バネ23とザグリ孔形成部11aの底面との間の少なくとも1つに座金を備えていてもよい。
また、試験体1Dは、頭部21aとザグリ孔形成部11aの底面との間、及び、ナット22とザグリ孔形成部11aの底面との間の一方のみに圧縮バネ23を備えていてもよい。
【0069】
また、
図13及び
図14に表されるように、第1実施形態の第2変形例の試験体1Aにおいて、分割面DPは、曲面である。
図13は、試験体1Aの左前上方斜視図である。
図14は、試験体1Aの右前下方斜視図)である。
【0070】
また、
図15乃至
図17に表されるように、第1実施形態の第3変形例の試験体1Bにおいて、試験体1Bは、各貫通孔形成部11のうちの、小立方体毎に、ボルト21と、ナット22と、を備える。この場合、試験体1Bは、各小立方体10-1~10-8が、他の小立方体から離れないように互いに接着されてもよい。また、この場合、試験体1Bは、各小立方体10-1~10-8が、他の小立方体から離れないように、ケース又はカバーに収容されてもよい。
【0071】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の試験体について説明する。第2実施形態の試験体は、第1実施形態の試験体に対して、複数の構成体が立方体を分割面に沿って分割することにより得られる形状を有する点において相違している。以下、相違点を中心として説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態にて使用した符号と同じ符号を付したものは、同一又は略同様のものである。
【0072】
(構成)
図18乃至
図26に表されるように、第2実施形態の試験体1Cは、2個の構成体10-1a,10-1bを備える。
【0073】
図18は、試験体1Cの左前上方斜視図である。
図19は、試験体1C右前下方斜視図である。
図20は、試験体1Cの平面図である。
図21は、試験体1Cの底面図である。
図22は、
図21のXXI-XXI線により表される平面により切断された試験体1Cの断面をx軸の正方向にて見た図である。
【0074】
図23は、試験体1Cの右側面図である。
図24は、
図23のXXIII-XXIII線により表される平面により切断された試験体1Cの断面をz軸の正方向にて見た図である。
図25は、試験体1Cの正面図である。
図26は、
図25のXXV-XXV線により表される平面により切断された試験体1Cの断面をx軸の正方向にて見た図である。
【0075】
図18及び
図19に表されるように、2個の構成体10-1a,10-1bは、試験体1Cを構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向(本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)のそれぞれにおいて、当該立方体を所定の分割面DPに沿って分割することにより得られる形状を有する。本例では、分割面DPは、平面である。
【0076】
試験体1Cは、試験体1Cを構成する立方体の3対の外壁面にそれぞれ直交する3つの方向(本例では、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)のそれぞれに対して、当該方向において、当該立方体を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成部11を複数(本例では、24個)備える。なお、試験体1Cが備える貫通孔形成部11の数は、1個乃至23個であってもよいし、25個以上であってもよい。
【0077】
試験体1Cが備える各貫通孔形成部11は、他の貫通孔形成部11と交差しない位置を有する。
図23及び
図24に表されるように、本例では、試験体1Cは、x軸方向に対する貫通孔形成部11を8個備える。なお、試験体1Cが備えるx軸方向に対する貫通孔形成部11の数は、1個乃至7個であってもよいし、9個以上であってもよい。
【0078】
x軸方向に対する8個の貫通孔形成部11は、試験体1Cの、x軸に直交する平面による断面において、z軸方向における両端部と中央部との間のそれぞれにて、y軸方向に沿って並ぶように4個位置する。
【0079】
図25及び
図26に表されるように、本例では、試験体1Cは、y軸方向に対する貫通孔形成部11を8個備える。なお、試験体1Cが備えるy軸方向に対する貫通孔形成部11の数は、1個乃至7個であってもよいし、9個以上であってもよい。
【0080】
y軸方向に対する8個の貫通孔形成部11は、試験体1Cの、y軸に直交する平面による断面において、z軸方向における両端部のそれぞれにて、x軸方向に沿って並ぶように4個位置する。
【0081】
図21及び
図22に表されるように、本例では、試験体1Cは、z軸方向に対する貫通孔形成部11を8個備える。なお、試験体1Cが備えるz軸方向に対する貫通孔形成部11の数は、1個乃至7個であってもよいし、9個以上であってもよい。
【0082】
z軸方向に対する8個の貫通孔形成部11は、試験体1Cの、z軸に直交する平面による断面において、y軸方向における両端部のそれぞれにて、x軸方向に沿って並ぶように4個位置する。
【0083】
第2実施形態の試験体1Cによっても、第1実施形態の試験体1と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0084】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において当業者が理解し得る様々な変更が加えられてよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B,1C,1D 試験体
10-1~10-8 小立方体
10-1a~10-8b 構成体
11 貫通孔形成部
11a ザグリ孔形成部
11b 連通孔形成部
21 ボルト
21a 頭部
21b 軸部
22 ナット
23 圧縮バネ
DP 分割面
【要約】
【課題】水理試験、透水試験、又は、水圧破砕試験における亀裂の影響を高い精度にて調べることが可能な試験体を提供すること。
【解決手段】試験体1は、水理特性を調べるための水理試験、透水係数を調べるための透水試験、及び、水圧による破壊特性を調べるための水圧破砕試験の少なくとも1つを行うために用いられる。試験体1は、立方体を構成し且つ当該立方体を所定の分割面DPに沿って分割することにより得られる形状を有する複数の構成体10-1a~10-8bを備えるとともに、構成体間の距離が調整可能であるように構成される。
【選択図】
図1