IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 東洋モートン株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーカラー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層体の製造方法 図1
  • 特許-積層体の製造方法 図2
  • 特許-積層体の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/12 20060101AFI20240813BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20240813BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240813BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240813BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240813BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B37/12
B05D7/24 301P
B05D5/06 101D
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 121
B41J2/01 125
B41J2/01 129
B41J2/01 123
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020152459
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022046853
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】染田 忠
(72)【発明者】
【氏名】門田 昌久
(72)【発明者】
【氏名】砂押 和志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紀雄
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175621(WO,A1)
【文献】特開平08-011248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/12
B32B 37/12
B05D 7/24
B05D 5/06
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、透明基材1、印刷層、接着剤層、及び基材2をこの順で有する積層体の製造方法であって、
搬送される透明基材1に対し、下記工程1~3を連続して行う積層体の製造方法。
(工程1):透明基材1上に、オンデマンド印刷により印刷層を形成する工程(但し、上記印刷層は、樹脂(A)を含む水系インクを用いて形成される層であり、該樹脂(A)は、酸基を含むエチレン性不飽和単量体由来の構成単位、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が35~110℃である。)
(工程2):工程1で得られた印刷層上に、熱融着接着剤を付与して接着剤層を形成する工程(但し、上記熱融着接着剤は水系エマルジョンである。)
(工程3):工程2で得られた接着剤層上に、基材2を貼り合わせる工程
【請求項2】
上記印刷層が、液体電子写真方式又はインクジェット方式を用いて形成される層である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装材に好適に用いられる積層体の製造方法に関し、より詳細には、滞留時間なく簡便にエージングを必要としない積層体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、衣料品、化粧品、雑貨等の包装材としては、各種プラスチックフィルムを多層ラミネートして複合化した積層体が広く用いられている。このような積層体は一般的に、プラスチックフィルム上に印刷層を形成して印刷フィルムを作製した後、得られた印刷フィルムと別のプラスチックフィルムとを接着剤を用いてラミネートすることで製造できる。
上記印刷層は、グラビア印刷のほか、インクジェット印刷等のオンデマンド印刷により形成される。また、ラミネートに用いられる接着剤としては、ポリオール成分を主剤としポリイソシアネート成分を硬化剤とする2液反応型接着剤が主流であり、ウレタン接着剤層を形成する。
しかしながら、上記方法によって得られる積層体は、印刷フィルムの製造工程とラミネート工程とが独立しており、さらに、2液反応型接着剤は硬化にエージングを要するため、生産効率に劣るという問題があった。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを別々に印刷層上にインクジェット印刷することで、高い反応性を有するがポットライフの短い2液反応型接着剤を利用する技術が開示されている。さらに特許文献1には、インクジェット印刷による印刷層形成、インクジェット印刷によるポリオール成分とポリイソシアネート成分の付与、ラミネートの工程を連続して行うことが開示されている。
【0004】
特許文献2には、アルキレンモノマーとアクリル酸又はメタクリル酸モノマーのコポリマー、アルキレンモノマーとアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートのコポリマー、ポリウレタン、アイオノマー、アルキレンモノマーのコポリマー、無水マレイン酸変性ポリアルキレン、及び酸変性ポリオレフィンから選択される熱活性化可能なポリマーを含有する熱活性化可能なラミネート材を用いて、印刷層を有する可撓性基材の当該印刷面と、別の可撓性基材とを貼り合わせることで、硬化を必要としない効率的な包装材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-098285号公報
【文献】特表2018-530454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、反応性が高くエージング時間の短い接着剤を使用するものの、エージング不要(以下「エージングレス」とも言う)には至っておらず、更なる効率化が課題である。
また特許文献2に記載の方法は、エージングレスな接着剤を用いているが、グラビア印刷やフレキソ印刷を用いて印刷層を形成しているため、オンデマンド印刷に対応しておらず、多品種・小ロット・短納期の要求に対応できない。
したがって本発明の目的は、エージングによる滞留時間を必要としないため生産効率に優れ、且つ多品種・小ロット・短納期の要求に対応可能な積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の実施形態は、少なくとも、透明基材1、印刷層、接着剤層、及び基材2をこの順で有する積層体の製造方法であって、搬送される透明基材1に対し、下記工程1~3を連続して行う積層体の製造方法に関する。
(工程1):透明基材1上に、オンデマンド印刷により印刷層を形成する工程
(工程2):工程1で得られた印刷層上に、熱融着接着剤を付与して接着剤層を形成する工程
(工程3):工程2で得られた接着剤層上に、基材2を貼り合わせる工程
【0009】
本発明の別の実施形態は、上記印刷層が、液体電子写真方式又はインクジェット方式を用いて形成される層である、上記積層体の製造方法に関する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、上記インクジェット方式に用いられるインクジェットインクが、水系インク又はUVインクである、上記積層体の製造方法に関する。
【0011】
本発明の別の実施形態は、上記熱融着接着剤が、水系エマルジョンである、上記積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、エージングによる滞留時間を必要としないため生産効率に優れ、且つ多品種・小ロット・短納期の要求に対応可能な積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1等で使用した、印刷・ラミネート装置の例を示す模式図である。
図2図2は、実施例9で使用した、印刷・ラミネート装置の例を示す模式図である。
図3図3は、実施例10で使用した、印刷・ラミネート装置の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、少なくとも、透明基材1、印刷層、接着剤層、及び基材2をこの順で有し、搬送される透明基材1に対し、下記工程1~3を連続して行うことを特徴とする。
(工程1):透明基材1上に、オンデマンド印刷により印刷層を形成する工程
(工程2):前記印刷層上に、熱融着接着剤を付与して接着剤層を形成する工程
(工程3):前記接着剤層上に、基材2を貼り合わせる工程
上記工程1~3が連続して行われることにより、エージングによる滞留時間を必要とせず、オンデマンドにより多品種・小ロット・短納期の要求に対応可能な積層体を製造することができる。さらに、上記工程1~3を独立して行う場合、各工程後に巻き取る工程が生じるため印刷層や接着剤層のブロッキングという課題が発生する。しかしながら、工程1~3を連続して行うことで上記巻取る工程は必要なくなり、ブロッキングの課題も解決することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
[透明基材1]
本発明に用いられる透明基材1としては特に制限されず、包装材に通常用いられるフィルム状又はシート状のプラスチック基材が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。なお透明基材1における「透明」とは、透明基材1側から印刷層を認識可能であることを意味する。
【0016】
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムが挙げられ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
【0017】
より詳細には、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;セロハンフィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体;等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチック基材は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤を含有してもよく、シリカ、アルミナ等の蒸着層を備えていてもよい。
【0018】
透明基材1がプラスチック基材の積層体である場合、基材同士は接着剤層を介して積層されていることが好ましい。該接着剤層の形成方法は制限されず、公知の接着剤を用いて公知の方法で形成することができる。
透明基材1の厚みは、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。透明基材1の表面は、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
【0019】
<工程1>
工程1は、透明基材1上に、オンデマンド印刷により印刷層を形成する工程である。なお工程1はさらに、透明基材1上のトナーやインクを乾燥又は硬化する工程、及び/又は、印刷層を透明基材1上に定着させる工程を含んでもよい。以下に、工程1について詳細に説明する。
【0020】
[印刷層]
本発明に用いられる印刷層は、透明基材1上に、オンデマンド印刷により形成される層である。オンデマンド印刷とは、版を必要としない印刷を指し、具体的な方式としては、例えば、液体電子写真(LEP)方式、又はインクジェット(IJ)方式が挙げられる。いずれの方式においても、透明基材1上に、無版でデジタル印刷層がパターン形成される。
【0021】
(液体電子写真(LEP)方式)
電子写真印刷は、複写機をはじめ、店頭端末印刷機、ファクシミリ、少部数印刷機など様々な分野に適用されている。電子写真印刷に使用されるトナーは、乾式トナーと湿式トナーに大別され、この湿式トナーを用いたものが液体電子写真(LEP)方式と呼ばれている。湿式トナーは、乾式トナーと比べて、トナー粒子の飛散が少なく、トナー粒子が微細化できることから高精度の印刷に好適である。LEP方式のデジタル印刷装置としては、ヒューレット・パッカード社のIndigoが知られている。
【0022】
LEP方式を用いて印刷層を形成する場合、使用可能な湿式トナーとしては、例えば国際公開第2016/074716号に例示されているものが挙げられる。湿式トナーは、例えば、顔料又は染料等の着色剤、トナーを帯電させるためのイオン性化合物、アクリル樹脂等の樹脂組成物、溶剤、その他の添加物を含有してもよい。
【0023】
(インクジェット(IJ)方式)
インクジェット(IJ)方式は、被印刷物に直接IJインクを吐出してパターニングする方式である。IJ方式の印刷装置としては、例えばFUJIFILM社のインクジェットデジタルプレスが挙げられる。
IJインクとしては、例えば、水系インク、溶剤系インク、又はUVインクが挙げられ、用途に応じて適宜選択できる。中でも、材料選択性及び環境負荷低減性が高く、熱融着接着剤として好適に使用される水系エマルジョン(詳細は後述)の効果を高めることができる観点において水系インクが好ましい。また、生産効率が極めて高く、かつ省スペースでの印刷が可能である観点においてUVインクが好ましい。
【0024】
水系インクは、例えば、顔料及び/又は染料等の着色剤、有機溶剤、樹脂、界面活性剤、その他の添加剤(例えば、着色剤分散剤、防腐剤、キレート剤等)を含んでもよい。
特に、エージングレスであっても接着強度に優れた積層体が得られる観点から、構成単位として、酸基を含むエチレン性不飽和単量体由来の構造、及び、水酸基を含むエチレン性不飽和単量体由来の構造を含み、かつ、ガラス転移温度が35~110℃である樹脂(以下、「樹脂(A)」と呼ぶ)を含むことが好適である。
ここで、IJヘッドからの吐出安定性、生産効率(インクの乾燥性)、及び、積層体の接着強度を向上させるという観点から、樹脂(A)の酸価は、好ましくは10~60mgKOH/gであり、より好ましくは25~45mgKOH/gである。また同様の理由により、樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは1~50mgKOH/gであり、より好ましくは15~45mgKOH/gである。
【0025】
加えて、IJヘッドからの吐出安定性、及び、積層体の接着強度が向上できる観点から、樹脂(A)の形態は水溶性樹脂又はハイドロゾルであることが好ましい。なお「水溶性樹脂」とは、対象となる樹脂の、25℃・1質量%水混合液が、肉眼で見て透明であるものを指す。また「ハイドロゾル」とは、水溶性樹脂以外の樹脂であって、当該樹脂中に存在する酸性及び/又は塩基性の官能基を中和し、分散媒中に分散させた形態を指す。
【0026】
上記効果を好適に発現させるため、樹脂(A)はバインダー樹脂として使用されることが好ましい。なお「バインダー樹脂」とは、主として印刷層を透明基材1上に定着させるために使用される樹脂であり、着色剤をインク中に分散するために使用される着色剤分散樹脂とは、当該着色剤に対する吸着率によって区別される。具体的には、着色剤に対する吸着率が35質量%未満である樹脂をバインダー樹脂と判断する。
【0027】
また、樹脂(A)との相溶性が高いうえ、詳細は不明ながら、生産効率、及び、積層体の接着強度を向上させることもできるという観点から、更に、界面活性剤としてアセチレン系界面活性剤を含むことが好ましい。
【0028】
UVインクは、例えば、アクリレート化合物等の光重合性モノマー、光重合開始剤、顔料及び/又は染料等の着色剤、界面活性剤、その他の添加物(例えば、着色剤分散剤、重合禁止剤等)を含んでもよい。
特に、エージングレスであっても接着強度に優れた積層体が得られ、更に柔軟性にも優れた印刷層及び積層体が得られる観点から、上記光重合性モノマーの60質量%以上が、アクリロイル基を1個有するアクリレート化合物(以下、「単官能アクリレート」と呼ぶ)であることが好適である。また、上記効果が好適に発現されるうえ、生産効率、及び、印刷層の硬化性にも優れる観点から、ビニル基を有する単官能アクリレートと、芳香環を有する単官能アクリレートとを併用することが特に好適である。
【0029】
また詳細は不明ながら、上述した単官能アクリレートの重合反応を阻害することがなく、積層体の接着強度を向上させることもできるという観点から、更に、界面活性剤としてシロキサン系界面活性剤を含むことが好適である。
【0030】
[乾燥/硬化工程]
透明基材1に湿式トナーやIJインクを付与した後、かつ、工程2を実施する前に、当該透明基材1上のIJインクを乾燥又は硬化する工程(乾燥/硬化工程)を実施してもよい。なお、IJインクとして上述した水系インクを用いる場合、工程2で付与する熱融着接着剤との親和性が高まり、エージングせずとも接着強度に優れた積層体が得られる観点から、乾燥工程後の印刷層中に存在する揮発成分(水及び水溶性有機溶剤)の総量が、当該乾燥工程前の印刷層中に存在する揮発成分の総量に対して、10~90質量%であることが好ましい。
【0031】
[定着工程]
また必要に応じて、湿式トナーやIJインクからなる印刷層を透明基材1上に定着させる工程(定着工程)を実施してもよい。具体的には、ローラ、ドラム、コンベヤ、フィルム等を用いた加熱加圧方式;加圧ローラ等を用いた加圧方式;熱風、赤外線、マイクロ波等を用いた加熱方式;等を挙げることができる。なお、印刷層に対し、上述した乾燥/硬化工程と定着工程とを併用してもよい。また、IJインクとして上述した水系インクを用い、かつ、乾燥/硬化工程と定着工程とを併用する場合、エージングせずとも接着強度に優れ、かつ、画像品質にも優れた積層体が得られる観点から、乾燥/硬化工程を実施した後に、定着工程を実施することが好適である。
【0032】
[プライマー層]
透明基材1と印刷層との密着性を向上させるために、透明基材1と印刷層との間にプライマー層を形成してもよい。プライマー層は、パターニングされていてもよいし、ベタ(全面)に形成されていてもよい。プライマー層の厚みは、透明基材1側からの印刷層の視認性に影響を与えない範囲であればよく、好ましくは0.02~2μm程度である。プライマー層は、例えば、アクリルポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン系プライマー、ポリエチレンイミン系プライマー、ポリアミド系プライマーを用いて形成することができる。
【0033】
<工程2>
工程2は、工程1に連続して、工程1で形成される印刷層上に、熱融着接着剤を付与して接着剤層を形成する工程である。熱融着接着剤が水や溶剤を含む場合は、工程2はさらに、乾燥により水や溶剤を除去する工程を含んでもよい。以下に、工程2について詳細に説明する。
【0034】
[接着剤層]
本発明に用いられる接着剤層は、印刷層上に、熱融着接着剤を付与して形成される層である。接着剤層は、パターニングされていてもよいし、ベタ(全面)に形成されていてもよい。熱融着接着剤を付与する方法としては、特に制限されず、例えば、インクジェット(IJ)方式、又はローラ方式が挙げられる。
【0035】
インクジェット(IJ)方式であれば、印刷層上に、無版で接着剤層がオンデマンドでパターン形成される。「ローラ方式」は、回転するロールに熱融着接着剤を付与した後、基材に転写する方式を指し、例えば、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、フレキソコーター、ロールコーターを用いた印刷方式が挙げられる。
印刷層と同様にオンデマンドで接着剤層をパターニングできる点においてはインクジェット方式が好適に用いられる。装置の単純性、ベタ(全面)印刷における均一塗工性、経済性等の観点からは、ローラ方式が好適に用いられるが、これらに限定されない。
接着剤層の厚みは、好ましくは1~10μm程度である。
【0036】
熱融着接着剤は、熱融着性を有していればよく、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、又はオレフィン樹脂を用いることができる。熱融着接着剤は、環境負荷低減の観点において好ましくは水系エマルジョンである。
熱融着接着剤が水系エマルジョンである場合、エマルジョンの安定性に優れる観点から、好ましくは、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、又はオレフィン樹脂である。さらに、透明基材1や基材2が、結晶性ポリエチレン、ポリプロピレン等の難接着性非極性ポリオレフィン樹脂基材である場合、接着性が向上する観点から、オレフィン樹脂を用いることが好ましい。
熱融着接着剤は、必要に応じて更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、可塑剤、滑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0037】
<工程3>
工程3は、工程2に連続して、工程2で形成される接着剤層上に、基材2を貼り合わせる工程である。工程3により、少なくとも、透明基材1、印刷層、接着剤層、及び基材2をこの順に有する本発明の積層体を得ることができる。以下に、工程3について詳細に説明する。
【0038】
[基材2]
本発明に用いられる基材2としては、例えば、上述の透明基材1で挙げた基材のほか、シーラント基材が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。基材2として好ましくはシーラント基材であり、ポリオレフィンを含むものである。
基材2は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤を含有してもよく、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層を備えていてもよい。
【0039】
基材2の厚みは特に限定されず、包装容器への加工性又はヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10μm以上150μm以下であり、より好ましくは20μm以上70μm以下である。基材2は、数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与してもよい。基材2表面は、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
また、基材2の最外層には、シール剤層が設けられていてもよく、該シール剤層は、ヒートシール剤層又はコールドシール剤層のいずれであってもよい。
【0040】
基材2を貼り合わせる方法は特に制限されず、好ましくは、熱ニップロールにより、少なくとも透明基材1/印刷層/接着剤層からなる積層フィルムと、基材2とを貼り合わせる方法である。熱融着接着剤からなる接着剤層は熱ニップロールで溶融し、基材2と張り合わされた後、放冷により固化し、少なくとも透明基材1/印刷層/接着剤層からなる積層フィルムと、基材2とを接着する。
【0041】
このように、本発明は上記工程1~3を全て連続して行うことにより、効率的に、オンデマンドにより多品種・小ロット・短納期の要求に対応可能な積層体を製造することができ、包装材分野において有用である。
なお、工程1~3を連続して行う装置は特に制限されず、例えば、市販の溶剤型ラミネーター装置を改造してIJヘッドや乾燥オーブン等を搭載したものを使用することができる。該溶剤型ラミネーター装置としては、例えば、富士機械工業社製、岡崎機械工業社製、オリエント総業社製の溶剤型ラミネーター装置が挙げられる。
【実施例
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0043】
<IJインクの調製>
(水系インクセットP1)
(顔料分散液1C、1M、1Y、1Kの調製)
C.I.ピグメントブルー15:3を20部と、着色剤分散樹脂(構成単位としてスチレンとアクリル酸とステアリルメタクリレートを、25:40:35の質量比で含み、重量平均分子量が25,000、酸価が185mgKOH/gである水溶性樹脂)のワニス(固形分25%)を20部と、水を60部と、を混合容器内に投入したのち、撹拌機でよく混合(予備分散)した。次いで、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した容積0.6Lのダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製ビーズミル)を用いて本分散を行うことで、シアン色の顔料分散液(顔料分散液1Cとする)を得た。
また、顔料として、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー14、カーボンブラックをそれぞれ使用した以外は、上述した顔料分散液1Cと同様の材料及び方法により、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の顔料分散液(それぞれ、顔料分散液1M、顔料分散液1Y、顔料分散液1Kとする)を得た。
【0044】
(バインダー樹脂1の調製)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、2-ブタノン72.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱したのち、メタクリル酸(酸基を有するエチレン性不飽和単量体)4.5部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(水酸基を有するエチレン性不飽和単量体)5.0部と、メチルメタクリレート90.5部と、V-601(和光純薬社製重合開始剤)12部との混合物を、2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、V-601を0.6部添加し、さらに80℃で2時間反応を続け、ハイドロゾルであるバインダー樹脂1の溶液を得た。TSKgelカラム(東ソー社製)及びRI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)を用い、展開溶媒にTHFを用いて測定した上記バインダー樹脂1の重量平均分子量は約7,000であった。
上記バインダー樹脂1の溶液を50℃まで冷却した後、ジメチルアミノエタノールを4.7部添加し中和したのち、水を140部添加した。その後、反応容器内を78℃以上に加熱して、2-ブタノンを、水と共沸させて留去したのち、固形分が30%になるように水で調整することで、バインダー樹脂1のワニス(固形分30%)を得た。なお、樹脂の構成単位から算出したバインダー樹脂1の酸価及び水酸基価は、それぞれ29.3mgKOH/g、21.6mgKOH/gであった。また、DSC(PerkinElmer社製、DSC6000)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)は、103℃であった。
【0045】
(水系インクセットP1の調製)
上記顔料分散液1Cを20部と、上記バインダー樹脂1のワニス(固形分30%)を21部と、1,2-プロパンジオールを25部と、サーフィノール465(信越化学工業社製アセチレン系界面活性剤)を1部と、プロキセルGXL(LONZA社製防腐剤)を0.1部と、水を32.9部と、を混合容器内に順次投入した。次いで、当該混合容器内を50℃に加温したのち、撹拌機で1時間混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、シアン色の水系インク(インク1Cとする)を得た。
また、顔料分散液として、顔料分散液1M、顔料分散液1Y、顔料分散液1Kをそれぞれ使用した以外は、上述したインク1Cと同様の材料及び方法により、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の水性インク(それぞれ、インク1M、インク1Y、インク1Kとする)を得た。
このようにして調製した、インク1C、インク1M、インク1Y、インク1Kの4色のインクを、水系インクセットP1とした。
【0046】
(水系インクセットP2)
上記顔料分散液1Cを20部と、PE1126(星光PMC社製アクリルエマルジョンのワニス、酸価50mgKOH/g、ガラス転移温度-12℃、固形分41.5%)を12部と、1,2-プロパンジオールを30部と、サーフィノール465を1部と、プロキセルGXLを0.1部と、水を36.9部と、を混合容器内に順次投入し、撹拌機で1時間混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、シアン色の水系インク(インク2Cとする)を得た。
また、顔料分散液として、顔料分散液1M、顔料分散液1Y、顔料分散液1Kをそれぞれ使用した以外は、上述したインク2Cと同様の材料及び方法により、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の水性インク(それぞれ、インク2M、インク2Y、インク2Kとする)を得た。
このようにして調製した、インク2C、インク2M、インク2Y、インク2Kの4色のインクを、水系インクセットP2とした。
【0047】
なお上記「エマルジョン」とは、水溶性樹脂以外の樹脂であって、乳化剤を樹脂微粒子表面に吸着させ、分散媒中に分散させた形態を指し、ハイドロゾルとは異なるものである。
【0048】
(UVインクセットP3)
(顔料分散液3C、3M、3Y、3Kの調製)
C.I.ピグメントブルー15:4を20部と、ソルスパース32000(ルーブリゾール社製着色剤分散樹脂)を4部と、フェノキシエチルアクリレート(芳香環を有する単官能アクリレート)を75.5部と、ジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)を0.1部と、を混合容器内に投入したのち、撹拌機でよく混合(予備分散)した。次いで、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した容積0.6Lのダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製ビーズミル)を用いて本分散を行うことで、シアン色の顔料分散液(顔料分散液3Cとする)を得た。
また、顔料として、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー14、カーボンブラックをそれぞれ使用した以外は、上述した顔料分散液3Cと同様の材料及び方法により、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の顔料分散液(それぞれ、顔料分散液3M、顔料分散液3Y、顔料分散液3Kとする)を得た。
【0049】
(UVインクセットP3の調製)
上記顔料分散液3Cを10部と、アクリル酸2?(2?ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、ビニル基を有する単官能アクリレート)を40部と、フェノキシエチルアクリレートを31.9部と、ジプロピレングリコールジアクリレートを1部と、OMNIRAD 819(IGM RESINS社製重合開始剤)を6部と、OMNIRAD TPO H(IGM RESINS社製重合開始剤)を6部と、KAYACURE DETX-S(日本化薬社製増感剤)4.9部と、BYK-UV3500(BYK社製シロキサン系界面活性剤)を0.1部と、ジブチルヒドロキシトルエンを0.1部と、を混合容器内に順次投入した。次いで、当該混合容器内を50℃に加温したのち、重合開始剤が溶解するまで撹拌機で混合した。そして、孔径1μmのデプスタイプフィルターを用いて濾過を行い、粗大粒子を除去することで、シアン色のUVインク(インク3Cとする)を得た。
また、顔料分散液として、顔料分散液3M、顔料分散液3Y、顔料分散液3Kをそれぞれ使用した以外は、上述したインク3Cと同様の材料及び方法により、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色のUVインク(それぞれ、インク3M、インク3Y、インク3Kとする)を得た。
このようにして調製した、インク3C、インク3M、インク3Y、インク3Kの4色のインクを、UVインクセットP3とした。
【0050】
<熱融着接着剤の調整>
(熱融着接着剤J1)
アローベースSB-1230N(ユニチカ社製、固形分27%)800部に、イソプロピルアルコール(IPA)62部、水218部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J1を得た。
【0051】
(熱融着接着剤J2)
ザイクセン-AC(住友精化社製、固形分30%)800部に、イソプロピルアルコール57部、水343部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J2を得た。
【0052】
(熱融着接着剤J3)
Plextol R100(Synthomer社製、固形分62%)400部に、イソプロピルアルコール185部、水655部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J3を得た。
【0053】
(熱融着接着剤J4)
スーパーフレックス210(第一工業製薬社製、固形分35%)800部に、イソプロピルアルコール132部、水468部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J4を得た。
【0054】
(熱融着接着剤J5)
スーパーフレックス860(第一工業製薬社製、固形分40%)600部に、イソプロピルアルコール132部、水468部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J5を得た。
【0055】
(熱融着接着剤J6)
スミカフレックス-401HQ(住友化学社製、固形分55%)400部に、イソプロピルアルコール154部、水546部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J6を得た。
【0056】
(熱融着接着剤J7)
アウローレンS-5297S(日本製紙社製、固形分100%)200部に、メチルシクロヘキサン640部、メチルエチルケトン160部を混合し、固形分20%の熱融着接着剤J7を得た。
【0057】
(熱融着接着剤J8)
アウローレンAE-301(日本製紙社製、固形分30%)333部に、プロピレングリコール200部、水467部を混合し、固形分10%の熱融着接着剤J8を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
<2液反応型接着剤の調整>
(2液反応型接着剤X1)
溶剤系エステルポリオールTM-569(東洋モートン社製、固形分62%)500部、脂肪族イソシアネートCAT-RT37(東洋モートン社製、固形分95%)24部、酢酸エチル85部を混合し、固形分30%の2液反応型接着剤X1を得た。
【0060】
<積層体の製造>
[実施例1]
(工程1)
印刷・ラミネート装置として、市販の溶剤型ラミネーターを改造したものを使用した。なお当該印刷・ラミネート装置の模式図は図1に示したとおりである。ただし図1、及び後述する図2~3は、装置構成を簡潔に図示した模式図であり、IJヘッドや乾燥ボックスの実際の大きさ等を表しているものではない。
工程1を実施する手段として、印刷フィルム(フタムラ化学社製FE2001、2軸延伸ポリエステル(PET)フィルム、厚み12μm)の巻出部と、後述する熱融着接着剤の塗工部との間に、京セラ社製ヘッド(KJ4B-1200モデル、設計解像度1200dpi)を4個と、内部で70℃の熱風が発生する機構を備えた乾燥ボックス(ボックス長100cm)を設置した。なお図1に示したように、上記ヘッドは印刷基材の搬送方向と平行になるように並べ、また、上記乾燥ボックスは、基材搬送方向に対して下流側(上記ヘッドと熱融着接着剤の塗工部との間)に設置した。次いで、基材搬送方向に対して上流側から、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの順にIJインクを充填した。
そして、上記巻出部から印刷フィルムを30m/分の速度で送出し、上記ヘッドの設置部を通過した際に、5cm×5cmの印字率100%ベタパッチが色ごとに隣接した画像を印刷した。印刷条件は、周波数20kHz、1200×1200dpi、ドロップボリューム2.5pLとした。そしてそのまま、70℃の熱風が発生している乾燥ボックス内を同速度で通過させ、印刷層を形成した。
(工程2)
工程1に連続して、印刷フィルムを30m/分で搬送し、印刷層上に、熱融着接着剤J1を塗工した。塗工後、印刷フィルムを乾燥オーブン(温度80℃)に同速度で通過させ、接着剤層を形成した。接着剤層の乾燥後塗布量は3.0g/mであった。
(工程3)
工程2に連続して、印刷フィルムを30m/分で搬送し、接着剤層上に、厚み25μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(フタムラ化学社製「FHK2」)を100℃のニップロールにて圧接して、PET/印刷層/熱融着接着剤層/CPPの構成である積層体を得た。
【0061】
[実施例2~8]
実施例1において、熱融着接着剤の種類を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0062】
[実施例9]
印刷・ラミネート装置として、市販の溶剤型ラミネーターを改造したものを使用した。お当該印刷・ラミネート装置の模式図は図2に示したとおりであり、IJヘッドとして京セラ社製ヘッド(KJ4A-RHモデル、設計解像度600dpi)を使用し、また、乾燥ボックスの代わりに、紫外線露光装置(GEW社製240W/cmメタルハライドランプ)を設置した以外は、実施例1で使用したものと同様である。そして、実施例1における工程1を以下に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
(工程1)
上記巻出部から印刷フィルムを30m/分の速度で送出し、上記ヘッドの設置部を通過した際に、5cm×5cmの印字率100%ベタパッチが色ごとに隣接した画像を印刷した。印刷条件は、周波数20kHz、600×600dpi、ドロップボリューム11pLとした。そしてそのまま、露光装置の下部を同速度で通過させ、その際に積算光量が200mJ/cmとなるように紫外線を露光することで、印刷層を形成した。
【0063】
[実施例10]
印刷・ラミネート装置として、市販の溶剤型ラミネーターを改造したものを使用した。お当該印刷・ラミネート装置の模式図は図3に示したとおりであり、熱融着接着剤塗工部の代わりに、京セラ社製ヘッド(KJ4B-QAモデル、設計解像度600dpi)を4個、印刷基材の搬送方向と平行になるように設置した以外は、実施例1で使用したものと同様である。そして、上記4個のヘッドの全てに熱融着接着剤J8を充填し、実施例1における工程2を以下に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
(工程2)
工程1に連続して、印刷フィルムを30m/分で搬送し、印刷層全面に、4個のヘッドから熱融着接着剤をインクジェット吐出した。吐出条件は、それぞれ、周波数20kHz、600×600dpi、ドロップボリューム12pLとした。吐出後、印刷フィルムを乾燥オーブン(温度80℃)に同速度で通過させ、接着剤層を形成した。接着剤層の乾燥後付与量は2.7g/mであった。
【0064】
[実施例11~15、比較例1]
実施例1において、透明基材1及び基材2を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0065】
<積層体の評価>
得られた積層体について、エージングを行わずに作製後すぐに接着強度を評価した。結果を表2に示す。
【0066】
[接着強度]
積層体を幅15mm、長さ300mmに切り取り試験片とした。
JIS K6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、透明基材1と基材2との間のT型剥離強度[N/15mm]を測定した。測定は5回行いその平均値を接着強度とした。得られた接着強度を用いて下記基準で評価を行った。
S:接着強度が1.5N/15mm以上(非常に良好)
A:接着強度が1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満(良好)
B:接着強度が0.6N/15mm以上、1.0N/15mm未満(使用可能)
C:接着強度が0.6N/15mm未満
【0067】
【表2】
【0068】
表2中の略称を以下に示す。
PET:フタムラ化学社製 2軸延伸ポリエステルフィルム「FE2001」、厚み12μm
CPP:フタムラ化学社製 無延伸ポリプロピレンフィルム「FHK2」、厚み25μm
VMCPP:東レ社製 アルミ蒸着ポリプロピレンフィルム「2203」、厚み25μm
OPP:フタムラ化学社製 2軸延伸ポリプロピレンフィルム「FOR#20」、厚み20μm
LLDPE:三井化学東セロ社製 直鎖状低密度ポリエチレンフィルム「TUX-FC-D」、厚み40μm
NY:ユニチカ社製 2軸延伸ナイロンフィルム「エンブレムON-RT」、厚み15μm
【符号の説明】
【0069】
1 透明基材1巻出部
2 IJヘッド(IJインク印刷用)
3 乾燥ボックス
4 熱融着接着剤塗工部
5 熱融着接着剤
6 乾燥オーブン
7 基材2巻出部
8a ラミネートロール
8b ニップロール
9 積層体巻取部
10 紫外線露光装置
11 IJヘッド(熱融着接着剤吐出用)
図1
図2
図3