(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20240813BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A45D40/04 Z
B65D83/00 C
(21)【出願番号】P 2021089341
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-152215(JP,U)
【文献】特開2000-300335(JP,A)
【文献】特開2000-060637(JP,A)
【文献】特開2016-189977(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107224093(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1319462(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00~40/30
B65D 83/00~83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース筒と、
前記ケース筒内に設けられる中皿と、
ケース本体と、
前記ケース本体への前記ケース筒の取り付け時に前記ケース筒と前記ケース本体によって軸方向に挟み込まれ、それにより第1形態から径方向内側に膨張した第2形態に変形する環状弾性体と、
径方向に揺動可能であり且つ前記第2形態の前記環状弾性体によって径方向外側から支持される螺合片を備えるとともに、前記ケース筒に対して相対回転するように回転操作を受ける操作部材と、
前記環状弾性体が前記第2形態の時に前記回転操作により前記螺合片によって繰り出し方向である軸方向一方側にねじ送りされ、それにより前記中皿を前記ケース筒に対して前記軸方向一方側に相対移動させるねじ軸部材と、
を有
し、
前記螺合片が、前記環状弾性体が前記第1形態の時に前記ねじ軸部材に対する軸方向他方側への所定値以上の押圧力により前記ねじ軸部材に対するねじ結合が外れるまで前記径方向外側に揺動する繰り出し容器。
【請求項2】
前記ケース筒に対する前記操作部材の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部を有する、請求項1に記載の繰り出し容器。
【請求項3】
前記ケース筒と前記中皿を含む付け替え容器と、前記ケース本体と前記操作部材を含む本体容器と、を有する、請求項1又は2に記載の繰り出し容器。
【請求項4】
前記ケース筒が、前記中皿に対する前記軸方向一方側への第1所定値以上の押圧力によって嵌合が外れるまで前記中皿を初期位置に保持する嵌合部を有し
、
前記第1所定値が
、前記所定値である第2所定値よりも大きい、請求項1~3の何れか1項に記載の繰り出し容器。
【請求項5】
前記螺合片が、前記第1形態から前記第2形態への前記環状弾性体の変形により前記環状弾性体に押されて前記径方向内側に弾性変形し、それにより前記ねじ軸部材にねじ結合する、請求項1~3の何れか1項に記載の繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繰り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤又はスティック糊などの塗布可能な固形状の内容物を繰り出して使用できる繰り出し容器として、例えば特許文献1に記載されるように、回転操作を受ける操作部材と、操作部材によって繰り出し方向にねじ送りされるねじ軸部材と、を有する繰り出し容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような繰り出し容器では、操作部材に対してねじ軸部材をねじ送り前の初期位置に容易に配置できるのが望ましい。
【0005】
そこで本発明の目的は、操作部材に対するねじ軸部材の初期位置への容易な配置を実現し易い繰り出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繰り出し容器は、ケース筒と、前記ケース筒内に設けられる中皿と、ケース本体と、前記ケース本体への前記ケース筒の取り付け時に前記ケース筒と前記ケース本体によって軸方向に挟み込まれ、それにより第1形態から径方向内側に膨張した第2形態に変形する環状弾性体と、径方向に揺動可能であり且つ前記第2形態の前記環状弾性体によって径方向外側から支持される螺合片を備えるとともに、前記ケース筒に対して相対回転するように回転操作を受ける操作部材と、前記環状弾性体が前記第2形態の時に前記回転操作により前記螺合片によって繰り出し方向である軸方向一方側にねじ送りされ、それにより前記中皿を前記ケース筒に対して前記軸方向一方側に相対移動させるねじ軸部材と、を有し、前記螺合片が、前記環状弾性体が前記第1形態の時に前記ねじ軸部材に対する軸方向他方側への所定値以上の押圧力により前記ねじ軸部材に対するねじ結合が外れるまで前記径方向外側に揺動する繰り出し容器である。
【0007】
また、本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記ケース筒に対する前記操作部材の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部を有する繰り出し容器であるのが好ましい。
【0008】
また、本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記ケース筒と前記中皿を含む付け替え容器と、前記ケース本体と前記操作部材を含む本体容器と、を有する繰り出し容器であるのが好ましい。
【0009】
また、本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記ケース筒が、前記中皿に対する前記軸方向一方側への第1所定値以上の押圧力によって嵌合が外れるまで前記中皿を初期位置に保持する嵌合部を有し、前記第1所定値が、前記所定値である第2所定値よりも大きい繰り出し容器であるのが好ましい。
【0010】
また、本発明の繰り出し容器は、上記構成において、前記螺合片が、前記第1形態から前記第2形態への前記環状弾性体の変形により前記環状弾性体に押されて前記径方向内側に弾性変形し、それにより前記ねじ軸部材にねじ結合する繰り出し容器であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作部材に対するねじ軸部材の初期位置への容易な配置を実現し易い繰り出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の繰り出し容器における使用開始前の状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す状態から内容物を使い切った時の状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示す状態から付け替え容器を取り外した時の状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図3に示す状態から未使用の付け替え容器を取り付けている時の状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図4に示す状態から付け替え容器の取り付けを完了した時の状態を示す縦断面図である。
【
図6】
図5に示す状態から繰り出しを開始した時の状態を示す縦断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の繰り出し容器における内容物を使い切った時の状態を示す縦断面図である。
【
図11】
図10に示す状態から付け替え容器を取り外した時の状態を示す縦断面図である。
【
図12】
図11に示す状態から未使用の付け替え容器を取り付けた時の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の第1実施形態において繰り出し容器1は、ケース筒2、中皿3、ケース本体4、操作部材5、ねじ軸部材6、環状弾性体7及びオーバーキャップ8を有する。また本実施形態ではケース筒2と中皿3で付け替え容器9が構成され、その他の部材、すなわちケース本体4、操作部材5、ねじ軸部材6、環状弾性体7及びオーバーキャップ8で本体容器10が構成される。付け替え容器9はケース筒2内に中皿3によって繰り出し可能に固形状の内容物(不図示)を収容し、本体容器10に着脱可能である。したがって、内容物を使い切った後は、新たな付け替え容器9に付け替えることで本体容器10を使用し続けることができる。
【0015】
付け替え容器9は内容物を収容した状態で、本体容器10と共に流通させてもよいし、別々に流通させてもよい。
図4等に示すように、付け替え容器9はカバーキャップ11で繰り出し口2aを覆った状態で流通させるのが好ましい。付け替え容器9はカバーキャップ11を嵌めた状態でブリスターケースや紙箱などの包装容器に入れて流通させてもよいし、カバーキャップ11なしで包装容器に入れて流通させてもよい。
【0016】
ケース筒2、中皿3、ケース本体4、操作部材5、ねじ軸部材6及びオーバーキャップ8はそれぞれ、合成樹脂製の一体成形物である。なお、これらの部材は合成樹脂製に限らない。また、これらの部材はそれぞれ、複数の部品で構成してもよい。環状弾性体7は例えばゴム又はエラストマー製である。
【0017】
図1に示すように、ケース筒2、中皿3、ケース本体4、操作部材5、ねじ軸部材6、環状弾性体7及びオーバーキャップ8は、共通の中心軸線Oを有する。
【0018】
本実施形態では、中心軸線Oに沿う方向を軸方向又は上下方向といい、繰り出し方向を軸方向一方側又は上方といい、その反対方向を軸方向他方側又は下方といい、中心軸線Oと直交する直線に沿う方向を径方向といい、中心軸線Oを周回する方向を周方向といい、中心軸線Oを含む断面を縦断面という。
【0019】
内容物としては、例えば、口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤またはスティック糊などの、塗布可能な固形状のものを採用することができる。本実施形態では内容物は口紅である。なお、固形状の内容物とは、形状を留めておける程度の堅さを有するものを意味し、例えば半練り状のものなど、ある程度の柔らかさのものを含む。
【0020】
図1に示すように、ケース筒2は中心軸線Oを中心とする円筒状をなし、上端に繰り出し口2aを有する。なお、繰り出し口2aは中心軸線Oに垂直な面に対して斜めに傾斜しているが、中心軸線Oに垂直であってもよい。
【0021】
ケース筒2の下部は、中心軸線Oを中心とする円筒状のケース本体4の上部に接続部12を介して取り外し可能に軸方向に取り付けられる。ケース本体4の上部の内周面は、下方に向けて段差状に縮径する環状段部4aを有し、環状段部4a上には中心軸線Oを中心とする円環状の環状弾性体7が配置され、保持される。ケース筒2をケース本体4に取り付けることで、環状弾性体7はケース筒2の下端面とケース本体4の環状段部4aとによって軸方向に挟み込まれ、環状弾性体7の径方向外側の外面がケース本体4の内周面によって支持され、径方向外側への膨張が規制されることにより、
図4に示す第1形態から径方向内側に膨張した
図5、
図1等に示す第2形態に変形する。
【0022】
接続部12は、ケース筒2に設けられる雄ねじ12aとケース本体4に設けられる雌ねじ12bとを含む。また接続部12は、弾性変形によって互いに周方向に乗り越え可能な凹凸形状で構成される周方向嵌合部12cを含む。
【0023】
なお、接続部12は周方向嵌合部12cを含まない構成としてもよい。また、接続部12は雄ねじ12aと雌ねじ12bを含む構成に限らず、例えば、雄ねじ12aと突起、或いは雌ねじ12bと突起などで構成される簡易ねじ部を含む構成としてもよいし、弾性変形によって互いに軸方向に乗り越え可能な凹凸形状で構成される軸方向嵌合部を含む構成としてもよい。いずれにしても接続部12は、ケース筒2をケース本体4に取り付けることで環状弾性体7を第2形態に保持できるように設けられる。また接続部12は、ケース本体4を一方の手で持ち、操作部材5をもう一方の手で持ってケース本体4に対して相対回転させた時にケース筒2が操作部材5と連れ回らないように設定される。
【0024】
オーバーキャップ8は中心軸線Oを中心とする有頂円筒状をなし、ケース筒2に着脱可能である。オーバーキャップ8はケース本体4に取り付けられた状態のケース筒2への取り付けにより、ケース筒2の露出部分の略全体を覆う。
【0025】
中皿3は、ケース筒2に対して回り止めされた状態で繰り出し方向に移動可能にケース筒2内に設けられる。また、中皿3は、ケース筒2内に収容される内容物の底部を支持する底壁3aと、底壁3aの外周縁から上方に延びる周壁3bと、を有する。ケース筒2は、中皿3に対する繰り出し方向への第1所定値以上の押圧力によって嵌合が外れるまで中皿3を初期位置に保持する嵌合部13を有する。
【0026】
ねじ軸部材6は、中心軸線Oを中心とする中空の軸体である。本実施形態ではねじ軸部材6は有頂円筒状の軸体であるが、これに限らず例えば有底円筒状や円筒状の軸体であってもよいし、中実の軸体であってもよい。ねじ軸部材6の外周面は、中心軸線Oを中心とするねじ山からなるねじ軸6aを有する。ねじ軸6aはねじ軸部材6の軸方向の略全長に亘って設けられる。
【0027】
ねじ軸部材6は初期位置において天面(上面)が中皿3の底面に接する。また、ねじ軸部材6は天面が中皿3の底面に接することで摩擦力により中皿3を介してケース筒2に対して回り止めされる。なお、ねじ軸部材6の天面を中皿3又はケース筒2に対して直接、回り止め可能に凹凸形状等を介して係止する構成としてもよい。
【0028】
ねじ軸部材6の外周面における下端部は空回り部6bを有する。空回り部6bは、螺合部5bと螺合する部分がない滑らかな表面からなり、螺合部5bに対して空回りすることができる。なお、空回り部6bを設けない構成としてもよい。
【0029】
ねじ軸6aの外周面における下端は抜け止め部6cを有する。抜け止め部6cは径方向外側に突出する円環状の凸部で形成され、この凸部の上面が螺合部5bの下端に設けられる段差面状の下面に当接することで、ねじ軸部材6が螺合片5aから上方に抜け出ることが規制される。なお、抜け止め部6cを設けない構成としてもよい。
【0030】
図1及び
図7~
図9に示すように、操作部材5は、中心軸線Oを中心とする略円筒状の周壁部5cと、周壁部5cの下端に連なるシート状の底部5dと、を有する。底部5dは例えば周壁部5cの下端に貼着されるシールである。周壁部5cの下端部は、ケース本体4よりも下方に設けられ、ケース筒2に対し操作部材5を周方向一方側に相対回転させる回転操作を受ける被操作部5eを構成する。
【0031】
初期位置においてねじ軸部材6の底面は操作部材5の底部5dに当接する。つまり、ねじ軸部材6の初期位置は操作部材5に対する相対的な下降限界位置である。
【0032】
操作部材5とケース本体4は、ケース筒2に対する操作部材5の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部14を介して連結する。ラチェット機構部14は、操作部材5の周壁部5cに設けられるとともに径方向に弾性変形可能な2つの弾性片14aと、ケース本体4の内周面に設けられるとともにケース筒2に対する操作部材5の周方向一方側への相対回転により各々の弾性片14aを乗り越えさせる一方、ケース筒2に対する操作部材5の周方向他方側への相対回転により各々の弾性片14aを係止する凹凸部14bと、で構成される。なお、弾性片14aの数は2つに限らず適宜設定できる。
【0033】
また操作部材5はケース本体4に回転連結部15を介して連結する。回転連結部15は、操作部材5をケース本体4に軸方向の相対位置を規制しつつ中心軸線Oを中心に回転可能に凹凸形状を介して連結する。本実施形態では回転連結部15は軸方向におけるラチェット機構部14と被操作部5eとの間の部分に設けられるが、その配置はこれに限らない。
【0034】
操作部材5の上端部は周方向に並ぶ4つの螺合片5aを有する。なお、螺合片5aの数は適宜設定できる。各々の螺合片5aは上端を自由端として径方向に揺動可能であり、自由端の内周面が中心軸線Oを中心とする雌ねじ状の螺合部5bを有する。また各々の螺合片5aは、第2形態の環状弾性体7によって径方向外側から支持され、それにより螺合部5bとねじ軸6aとの螺合、つまりねじ結合を維持する。したがって、環状弾性体7が第2形態である時は、螺合片5aによってねじ軸部材6を繰り出し方向にねじ送りすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、螺合片5aは、環状弾性体7が第1形態の時にねじ軸部材6に対する下方への第2所定値以上の押圧力によりねじ軸部材6に対するねじ結合が外れるまで径方向外側に揺動する。したがって、環状弾性体7が第1形態である時は、ねじ軸部材6を下方に押すだけの簡単な操作でねじ軸部材6を操作部材5に対して下方に相対移動させることができる。したがって、操作部材5に対するねじ軸部材6の初期位置への容易な配置を実現することができる。
【0036】
また本実施形態では第2所定値は上述した第1所定値よりも小さい。したがって、嵌合部13が嵌合した初期位置にある中皿3の底面でねじ軸部材6の天面を下方に押し、ケース筒2をケース本体4に取り付けるだけで、ねじ軸部材6を初期位置に配置することができる。なお、中皿3の底面で押す代わりに、指などで押してもよい。
【0037】
付け替え容器9の付け替えは次の要領で行うことができる。内容物を使い切ると、まず、
図2~
図3に示すように接続部12の接続を外し、付け替え容器9を本体容器10から取り外す。これにより、環状弾性体7は第2状態から第1状態に復元変形する。この状態から、
図4~
図5に示すように新たな付け替え容器9の中皿3の底面で上昇限界位置にあるねじ軸部材6の天面を下方に押し、付け替え容器9を本体容器10に取り付けることで、ねじ軸部材6が初期位置に戻される。
【0038】
付け替え容器9を付け替えた後は、操作部材5を周方向一方側に回転操作することにより、
図6に示すように、螺合片5aによってねじ軸部材6を繰り出し方向にねじ送りし、ねじ軸部材6の天面で中皿3の底面を第1所定値以上の押圧力で繰り出し方向に押し、嵌合部13の嵌合を外して中皿3をケース筒2に対し繰り出し方向に相対移動させ、それにより内容物を繰り出し口2aから繰り出すことができる。
【0039】
また本実施形態ではラチェット機構部14により、操作部材5を周方向他方側に回転操作することが阻止される。したがって、内容物が比較的柔らかい口紅等である場合に、繰り入れによって内容物に形状の崩れや破断などの損傷が生じてしまうことを抑制することができる。
【0040】
以上に述べたように、本実施形態によれば、生産時の組み立て工程や付け替え容器9の付け替え時などにおいて、操作部材5に対するねじ軸部材6の初期位置への容易な配置を実現することができる。
【0041】
また、ラチェット機構部14を設けると操作部材5を周方向他方側に回転操作してねじ軸部材6を初期位置に戻すことができなくなるので、内容物の付け替えが可能なラチェット機構部14を有する繰り出し容器1を実現することは一般的に難しいが、本実施形態によれば、そのような繰り出し容器1を実現することができる。
【0042】
本実施形態では螺合片5aが、環状弾性体7が第1形態の時にねじ軸部材6に対する下方への第2所定値以上の押圧力によりねじ軸部材6に対するねじ結合が外れるまで径方向外側に揺動する構成としているが、これに限らず例えば、
図10~
図14に示す第2実施形態のように、螺合片5aが、第1形態から第2形態への環状弾性体7の変形により環状弾性体7に押されて径方向内側に弾性変形し、それによりねじ軸部材6にねじ結合する構成としてもよい。
【0043】
図13~
図14に示すように、第2実施形態では操作部材5は、成形時の状態で各々の螺合部5bがねじ軸6aにねじ結合する位置よりも径方向外側に位置するように形成される。なお、本実施形態では螺合片5aの数は8つであるが、その数は適宜設定できる。第2実施形態のその他の構成は第1実施形態の場合と同様である。
【0044】
このような第2実施形態によれば、
図10~
図11に示すように、付け替え容器9を本体容器10から取り外す(
図11中の太線矢印参照)ことにより、環状弾性体7が第2形態から第1形態に復元変形し、それにより螺合片5aが復元変形し、ねじ軸部材6に対するねじ結合が外れるまで径方向外側に揺動するので、ねじ軸部材6を初期位置まで自重で落下(
図11中の白抜き矢印参照)させることができる。したがって、付け替え容器9を本体容器10から取り外した後は、
図11~
図12に示すように、新たな付け替え容器9を本体容器10に取り付けるだけで付け替えを完了することができる。
【0045】
このように、第2実施形態によれば、生産時の組み立て工程や付け替え容器9の付け替え時などにおいて、操作部材5に対するねじ軸部材6の初期位置へのより一層容易な配置を実現することができる。
【0046】
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0047】
したがって、前述した実施形態の繰り出し容器1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0048】
前述した実施形態の繰り出し容器1は、ケース筒2と、ケース筒2内に設けられる中皿3と、ケース本体4と、ケース本体4へのケース筒2の取り付け時にケース筒2とケース本体4によって軸方向に挟み込まれ、それにより第1形態から径方向内側に膨張した第2形態に変形する環状弾性体7と、径方向に揺動可能であり且つ第2形態の環状弾性体7によって径方向外側から支持される螺合片5aを備えるとともに、ケース筒2に対して相対回転するように回転操作を受ける操作部材5と、環状弾性体7が第2形態の時に回転操作により螺合片5aによって繰り出し方向である軸方向一方側にねじ送りされ、それにより中皿3をケース筒2に対して軸方向一方側に相対移動させるねじ軸部材6と、を有する繰り出し容器1である限り、種々変更可能である。
【0049】
例えば、ラチェット機構部14を設けない構成としてもよい。また、付け替え容器9が環状弾性体7を含む構成としてもよい。また、付け替え容器9が中皿3と一体に形成されるねじ軸部材6を含む構成としてもよい。また、繰り出し容器1が内容物の付け替えができない構成としてもよい。また、オーバーキャップ8を設けない構成としてもよい。
【0050】
なお、前述した実施形態の繰り出し容器1は、上記構成において、ケース筒2に対する操作部材5の相対回転を周方向一方側に許容するとともに周方向他方側に阻止するラチェット機構部14を有する繰り出し容器1であるのが好ましい。
【0051】
また、前述した実施形態の繰り出し容器1は、上記構成において、ケース筒2と中皿3を含む付け替え容器9と、ケース本体4と操作部材5を含む本体容器10と、を有する繰り出し容器1であるのが好ましい。
【0052】
また、前述した実施形態の繰り出し容器1は、上記構成において、ケース筒2が、中皿3に対する軸方向一方側への第1所定値以上の押圧力によって嵌合が外れるまで中皿3を初期位置に保持する嵌合部13を有し、螺合片5aが、環状弾性体7が第1形態の時にねじ軸部材6に対する軸方向他方側への第2所定値以上の押圧力によりねじ軸部材6に対するねじ結合が外れるまで径方向外側に揺動し、第1所定値が第2所定値よりも大きい繰り出し容器1であるのが好ましい。
【0053】
また、前述した実施形態の繰り出し容器1は、上記構成において、螺合片5aが、第1形態から第2形態への環状弾性体7の変形により環状弾性体7に押されて径方向内側に弾性変形し、それによりねじ軸部材6にねじ結合する繰り出し容器1であるのが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 繰り出し容器
2 ケース筒
2a 繰り出し口
3 中皿
3a 底壁
3b 周壁
4 ケース本体
4a 環状段部
5 操作部材
5a 螺合片
5b 螺合部
5c 周壁部
5d 底部
5e 被操作部
6 ねじ軸部材
6a ねじ軸
6b 空回り部
6c 抜け止め部
7 環状弾性体
8 オーバーキャップ
9 付け替え容器
10 本体容器
11 カバーキャップ
12 接続部
12a 雄ねじ
12b 雌ねじ
12c 周方向嵌合部
13 嵌合部
14 ラチェット機構部
14a 弾性片
14b 凹凸部
15 回転連結部
O 中心軸線