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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】複合表面処理無機粉体
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/08 20060101AFI20240813BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240813BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240813BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/34 20060101ALN20240813BHJP
   A61K 8/40 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
C09C3/08
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/27
A61K8/26
A61K8/19
A61Q1/02
C01B33/18 C
A61K8/34
A61K8/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023521012
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2022019687
(87)【国際公開番号】W WO2022239736
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021080422
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】大崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇夫
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-009211(JP,A)
【文献】特開2010-059272(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064821(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/230650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/08
A61K 8/25
A61K 8/29
A61K 8/27
A61K 8/26
A61K 8/19
A61Q 1/02
C01B 33/18
A61K 8/34
A61K 8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料を主体とする基材粉体が、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールで表面処理されている、複合表面処理無機粉体。
【請求項2】
乳化粘度比が3以上30以下である、請求項1に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項3】
前記カチオン界面活性剤は、炭素数8以上26以下の長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩である、請求項1に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項4】
前記カチオン界面活性剤は、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムである、請求項3に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項5】
前記高級脂肪族アルコールは、炭素数18以上26以下の長鎖アルキル基を有するアルコールである、請求項1に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項6】
前記基材粉体は、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ及び酸化鉄からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項7】
前記カチオン界面活性剤の表面処理量が、前記基材粉体100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下である、請求項1に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項8】
前記高級脂肪族アルコールの表面処理量が、前記基剤粉体100質量部に対して0.5質量部以上8.0質量部以下である、請求項1に記載の複合表面処理無機粉体。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の複合表面処理無機粉体を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料を主体とする基材粉体が表面処理されて得られる無機粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多くの化粧料には、柔らかさ、しっとり感やさらさら感といった感触を与えることにより、使用時の感触を向上させる目的で、ナイロンパウダーやシリコーンビーズなどの樹脂ビーズ(マイクロプラスチックの一種)が配合されている。しかしながら、近年、マイクロプラスチックによる海洋環境の汚染が問題視されるようになっていることから、マイクロプラスチックを含有しない化粧料が求められている。
【0003】
例えば、特開2008-291027号公報(特許文献1)では、優れた乳化安定性を有し、べたつき感がなく、低刺激性であるメーキャップ組成物に用いられる水中油型乳化組成物を提供することを目的として、水相に分散した油滴上に、カチオン性界面活性剤が吸着したシリカのような粉末粒子が吸着している水中油型乳化組成物が記載されている。
【0004】
また、国際公開WO2006/064821号公報(特許文献2)には、紫外線散乱効果を有する二酸化珪素のような基粉体の表面を、オクチルトリエトキシシラン及びカチオン性界面活性剤により被覆して得られる、化粧料に配合される改質粉体が記載されている。
【0005】
また、特開2010-037328号公報(特許文献3)には、白雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、絹雲母から選ばれる一種または二種以上の層間に陽イオンを有するケイ酸塩鉱物を含む粉末成分がカチオン活性剤で表面処理され、乾燥されて得られた粉末化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-291027号公報
【文献】国際公開WO2006/064821号公報
【文献】特開2010-037328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に記載された化粧料配合用の粉体は、上述の樹脂ビーズに比べると、柔らかさ、しっとり感やさらさら感といった使用感において十分に満足のいくものではなく、特に、樹脂ビーズ特有の柔らかさと滑らかさを得られないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、樹脂ビーズと同等又はそれ以上の感触、特に、柔らかさと滑らかさを化粧料に付与することが可能な無機粉体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、樹脂ビーズの機能のうち、柔らかさと滑らかさを有し、水油相に配合できることに着目した。そして、無機材料を主体とする基材粉体をカチオン性界面活性剤と高級アルコールで表面処理することによって、柔らかさと滑らかさを付与し、水油相に配合することが可能な樹脂ビーズ代替品が得られることを見出した。
【0010】
以上の知見に基づいて、本発明は以下の構成を備える。本発明に従った複合表面処理無機粉体は、無機材料を主体とする基材粉体が、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールで表面処理されている。好ましくは、本発明に従った複合表面処理無機粉体は、無機材料を主体とする基材粉体が、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールの親水部と疎水部がそれぞれ並行に連なる層が交互に積み重なった多層構造で表面処理されている。
【0011】
このようにすることにより、樹脂ビーズと同等又はそれ以上の感触、特に、柔らかさと滑らかさを化粧料に付与することが可能な無機粉体を提供することができる。
【0012】
本発明に従った複合表面処理無機粉体は、乳化粘度比が3以上30以下であることが好ましい。本明細書において乳化粘度比は、無機粉体10gを水30gに加えて3000rpmで3分間、ディスパーで分散させて得られる水相の粘度に対する、この水相に水添ポリイソブテン10gを加えて5000rpmで5分間、ホモミキサーで乳化させて得られる乳化物の粘度の比で表される。乳化粘度比が3以上30以下であることによって、優れた肌への付着性と優れた感触を備える両親媒性の無機粉体を提供することができる。
【0013】
本発明に従った複合表面処理無機粉体においては、カチオン界面活性剤は、炭素数8以上26以下の長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0014】
本発明に従った複合表面処理無機粉体においては、カチオン界面活性剤は、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムであることが好ましい。
【0015】
本発明に従った複合表面処理無機粉体においては、高級脂肪族アルコールは、炭素数18以上26以下の長鎖アルキル基を有するアルコールであることが好ましい。
【0016】
本発明に従った複合表面処理無機粉体においては、基材粉体は、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ及び酸化鉄からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0017】
本発明に従った複合表面処理無機粉体においては、カチオン界面活性剤の表面処理量が、基材粉体100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に従った複合表面処理無機粉体においては、高級脂肪族アルコールの表面処理量が、前記基剤粉体100質量部に対して0.5質量部以上8.0質量部以下であることが好ましい。
【0019】
本発明に従った化粧料は、上記のいずれかの複合表面処理無機粉体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の複合表面処理無機粉体について具体例を交えながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0021】
本発明に従った複合表面処理無機粉体は、無機材料を主体とする基材粉体が、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールで表面処理されている。好ましくは、本発明に従った複合表面処理無機粉体は、無機材料を主体とする基材粉体が、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールの親水部と疎水部がそれぞれ並行に連なる層が交互に積み重なった多層構造で表面処理されている。
【0022】
<基材粉体>
基材粉体として使用される無機材料は特に制限されず、例えばシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナおよび酸化鉄からなる群から選択される一種以上を使用することができる。この中でも、特にシリカが好ましい。
【0023】
基材粉体は、レーザー回折光散乱法で測定される平均粒子径が、0.1μm以上50μm以下の範囲であるものが好ましく、0.3μm以上30μm以下の範囲のものがより好ましく、1μm以上15μm以下の範囲ものがさらに好ましい。平均粒子径が0.1μmより小さいと、粒子同士が凝集し易いことによって均一な表面処理がなされず、感触が向上し難い場合があり、50μmより大きいと物理的なざらつき感が強くなる場合がある。
【0024】
基材粉体の粒子の形状は、通常化粧料に用いられるものであれば、球状、略球状、半球状、紡錘状、針状、板状、多面体状、星型状などいずれの形状でもよく、球状、略球状、半球状などの丸みのある形状が好ましい。また、基材粉体の粒子は、無孔質、多孔質のいずれでもよい。
【0025】
<カチオン界面活性剤>
カチオン界面活性剤の種類は特に限定されないが、炭素数が8から26の長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩を使用することが好ましい。この中でも、長鎖アルキル基を2つ有するものがより好ましい。
【0026】
カチオン界面活性剤の具体例として、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12-C18)ジメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられる。この中でも、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを使用することが特に好ましい。
【0027】
カチオン界面活性剤の表面処理量は、基材粉体100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましい。この範囲の処理量で表面処理を施すことによって、無機材料を主体とする基材粉体の表面上に、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールの親水部と疎水部がそれぞれ並行に連なる層が交互に積み重なった多層構造を形成するため、さらに使用時の感触が良好な複合表面処理無機粉体を得ることができる。表面処理量が少な過ぎる場合は、肌への付着性が良好でなく、塗布後の化粧料が落ちやすくなる場合がある。一方、表面処理量が多過ぎる場合は、肌に塗布した際にべたつく等、感触面での不都合を生じる場合がある。
【0028】
(高級脂肪族アルコール)
高級脂肪族アルコールとしては、限定ではなく、炭素数18以上26以下の長鎖アルキル基を有するアルコールを用いることが好ましく、ベヘニルアルコールまたはステアリルアルコールを用いることが特に好ましい。
【0029】
高級脂肪族アルコールの表面処理量は、基材粉体100質量部に対して0.5質量部以上8.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下であることがより好ましい。この範囲の処理量で表面処理を施すことによって、無機材料を主体とする基材粉体の表面上に、カチオン界面活性剤および高級脂肪族アルコールの親水部と疎水部がそれぞれ並行に連なる層が交互に積み重なった多層構造を形成するため、複合表面処理無機粉体の感触を非常に良好なものにすることができる。表面処理量が少な過ぎる場合は、肌への塗布時に基材である無機材料特有の固さを感じ易く、感触が劣る場合がある。一方、表面処理量が多過ぎる場合は、肌への塗布時にべたつきを感じるなど、やはり感触が劣る場合がある。
【0030】
<表面処理方法>
本発明の複合表面処理無機粉体を得るための表面処理方法は、基材粉体や表面処理剤の物性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、基材粉体を分散媒に分散させ、表面処理剤を添加して撹拌したのち、ろ過、乾燥する方法でもよいし、乾燥状態の粉体に表面処理剤を添加して混合する方法でもよく、これらに限定されない。なお、カチオン界面活性剤で表面処理を行う際には、水を含む分散媒を用いることが好ましい。
【0031】
<乳化粘度比>
上述のように表面処理して得られた複合表面処理無機粉体は、乳化粘度比が3以上30以下であることが好ましい。本明細書において乳化粘度比は、無機粉体10gを水30gに加えて3000rpmで3分間、ディスパーで分散させて得られる水相の粘度に対する、この水相に水添ポリイソブテン10gを加えて5000rpmで5分間、ホモミキサーで乳化させて得られる乳化物の粘度の比で表される。乳化粘度比が3以上30以下であることによって、優れた肌への付着性と優れた感触を備える無機粉体を提供することができる。
【0032】
<化粧料>
本発明の複合表面処理無機粉体をファンデーションなどの化粧料に配合することにより、使用時の感触、特に柔らかさと滑らかさに優れた化粧料を得ることができる。
【実施例
【0033】
本発明に係る複合表面処理無機粉体の具体的な製造例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0034】
<実施例1>
シリカ粉体(AGCエスアイテック社製:サンスフェアNP-30)をメタノールに添加し、1分間超音波照射して分散させたのち、粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製:マイクロトラックHRA)を用いて、平均粒子径を測定した。平均粒子径は5μmであった。以下の実施例と比較例でも基材粉体の平均粒子径は同様に測定した。
【0035】
このシリカ粉体100gをイオン交換水1000gに分散し、80℃に加熱後、濃度75質量%の塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(日光ケミカルズ社製:NIKKOL CA-3475V、濃度75質量%)を1.33g、ベヘニルアルコール(日光ケミカルズ社製:ベヘニルアルコール80)を基材粉体100質量部に対し4.0gをそれぞれ投入して60分間撹拌し、ろ過、水洗後、乾燥機に入れて85℃で20時間乾燥、粉砕して、実施例1の複合表面処理無機粉体を得た。
【0036】
<実施例2>
塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの投入量を0.13gにした以外は、実施例1と同様にして実施例2の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0037】
<実施例3>
塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの投入量を0.67gとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0038】
<実施例4>
塩化ジステアリルジメチルアンモニウムの投入量を2.67gとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0039】
<実施例5>
ベヘニルアルコールをステアリルアルコールに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0040】
<実施例6>
ベヘニルアルコールの投入量を1.0gとした以外は、実施例1と同様にして実施例6の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0041】
<実施例7>
ベヘニルアルコールの投入量を2.0gとした以外は、実施例1と同様にして実施例7の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0042】
<実施例8>
ベヘニルアルコールの投入量を8.0gとした以外は、実施例1と同様にして実施例8の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0043】
<実施例9>
平均粒子径が1μmであるシリカ粉体(テイカ社製:TMS-01)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例9の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0044】
<実施例10>
平均粒子径が15μmであるシリカ粉体(テイカ社製:TMS-15)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例10の複合表面処理無機粉体を作製した。
【0045】
<比較例1>
実施例1の複合表面処理無機粉体の基材であるシリカ粉体(AGCエスアイテック社製:サンスフェアNP-30)を、表面処理せず、比較例1の粉体とした。
【0046】
<比較例2>
実施例1の基材粉体であるシリカ粉体100gをイオン交換水1000gに分散し、80℃に加熱後、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(日光ケミカルズ社製:NIKKOL CA-3475V、濃度75質量%)1.0gを投入して60分間撹拌し、ろ過、水洗後、乾燥機に入れて85℃で20時間乾燥させ、比較例2の粉体を得た。
【0047】
<比較例3>
実施例1の基材粉体であるシリカ粉体100gを卓上ブレンダーに入れ、ベヘニルアルコール(日光ケミカルズ社製:NIKKOL ベヘニルアルコール80)を基材粉体100質量部に対し4.0g投入して20分間撹拌し、乾燥機に入れて120℃で3時間乾燥したのち、粉砕して、比較例3の粉体を得た。
【0048】
<比較例4>
80℃に加熱した水30gに対して、80℃で溶解させたベヘニルアルコール0.4g、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム0.13gを投入し、ディスパーにて10分撹拌したのち、実施例1の基剤粉体であるシリカ粉体10gを投入し、再度ディスパーで分散させ、比較例4の水相を作製した。
【0049】
<比較例5>
実施例1のベヘニルアルコールをオクチルシラン(モメンティブ社製:SILQUEST A-137 SILANE)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例5の粉体を得た。
【0050】
<比較例6>
実施例1のベヘニルアルコールをトリエチルヘキサノイン(日清オイリオ社製:T.I.O)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例6の粉体を得た。
【0051】
<参考例>
シリコーン樹脂ビーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製:トスパール(登録商標)145A)を、参考例の粉体とした。
【0052】
<乳化粘度比の測定>
105℃で2時間乾燥し恒量とした各実施例、比較例および参考例の粉体10gを150mLのポリ容器に入った水30gに加えて3000rpmで3分間、ディスパー(プライミクス株式会社製、ホモディスパー2.5型、分散羽根φ30mm)で分散させて得られる水相の粘度と、この水相に水添ポリイソブテン10gを加えて5000rpmで5分間、ホモミキサー(プライミクス株式会社製、ホモミクサーMARK22.5型)で乳化させて得られる乳化物の粘度をそれぞれ測定し、(乳化後の粘度mPa・s)/(水相の粘度mPa・s)の計算式から乳化粘度比を求めた。粘度の測定は、B型粘度計(英弘精機社製、Brookfield回転粘度計LVDV-I+)を用い、スピンドルLV-4にて12rpmで1分間回転させ測定を行った。なお、乳化物および水相の温度を25℃に調整して、粘度測定を行った。
【0053】
<乳化後の分離の有無>
乳化粘度比の測定時に調製した乳化物を大気圧25℃、1時間の条件で静置した後、目視で判定した。
【0054】
<各粉体の肌への付着性及び感触の評価>
実施例、比較例、参考例の各粉体について、モニター5人の官能試験によって、肌への付着性及び感触の評価を行った。具体的には、各粉体を少量取って手の甲に指で塗布した際の、肌への付着性及び感触を、以下の基準で評価してもらい、その平均値を算出することにより行った。
<評価点の基準>
5点:非常に優れている
4点:優れている
3点:普通
2点:劣る
1点:非常に劣る
【0055】
実施例、比較例、参考例の各粉体の評価結果(乳化粘度比、肌への付着性、感触)を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、実施例1~10の複合表面処理無機粉体は、樹脂ビーズである参考例1の粉体(シリコーン樹脂)と同等又はそれ以上の肌への付着性と、使用時の肌への優れた感触を得ることができた。さらに、参考例の粉体は乳化後に分離したが、実施例1~10の複合表面処理無機粉体では乳化後の分離は見られなかった。一方、比較例1~6の粉体は、少なくとも肌への付着性又は感触のいずれかが参考例よりも劣る結果であった。また、比較例の粉体は、乳化後に分離した。
【0058】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。