(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電子回路装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240813BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20240813BHJP
H01C 1/01 20060101ALI20240813BHJP
H01C 1/084 20060101ALI20240813BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20240813BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240813BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/02 Q
G01R15/00 500
H01C1/01 Z
H01C1/084
H01C13/00 J
H02M7/48 Z
H05K1/11 L
(21)【出願番号】P 2019177579
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】榧野 茜
(72)【発明者】
【氏名】田中 三博
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】馬場 慎
【審判官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115834(JP,A)
【文献】特開2005-158792(JP,A)
【文献】特開2008-66468(JP,A)
【文献】特開2005-45060(JP,A)
【文献】特開平7-94840(JP,A)
【文献】特開平6-177307(JP,A)
【文献】特開平9-147940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(4)に流れる電流を検出するための電子回路装置(10)であって、
基板(12)と、
電極(11B)を備えたシャント抵抗(11)と、
前記基板(12)の一方の面であって前記基板(12)の前記シャント抵抗(11)と対向する面において、前記電極(11B)と面接触するように設けられた第1通電パターン(13)と、
前記第1通電パターンと同一サイズとなるように、前記基板(12)の他方の面に設けられた第2通電パターン(14)と、
前記基板(12)に実装される電子部品(31)を電気的に接続するための導電体(32)と、
前記基板(12)を貫通するように設けられた貫通導体(21)と、を有し、
前記導電体(32)は、前記基板(12)に設けられた貫通穴(33)に挿入されて、前記第1通電パターン(13)と前記第2通電パターン(14)とに接合され、
前記貫通導体(21)は、前記電極(11B)の位置から前記導電体(32)の位置までの前記第1通電パターン(13)の経路上において、前記第1通電パターン(13)と前記第2通電パターン(14)とを接続するように設けられ、
前記第1通電パターン(13)における、前記貫通導体(21)との接続部分の中心から前記導電体(32)の取付部の中心までの部分の配線抵抗をR1とし、前記第2通電パターン(14)における、前記貫通導体(21)との接続部分の中心から前記導電体(32)の取付部の中心までの部分の配線抵抗をR2とし、前記貫通導体(21)の配線抵抗をR3とし、前記第1通電パターン(13)における前記電極(11B)との電極接続部(17)の中心から前記貫通導体(21)の中心までの配線抵抗をR4としたときに、R3及びR4がそれぞれR1×1/10の値未満及びR2×1/10の値未満となるように形成されている
電子回路装置。
【請求項2】
2A以上の電流を検出し得るように構成された
請求項1記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記電極接続部(17)における、前記第1通電パターン(13)の電流方向と直角であって前記基板(12)表面に沿う方向の寸法を前記電極接続部(17)の幅寸法Wとし、
前記第1通電パターン(13)における前記基板(12)表面に垂直な方向の寸法を前記第1通電パターン(13)の厚みHとし、
さらに、前記貫通導体(21)に関し、前記基板(12)表面と平行な断面の断面積を前記貫通導体(21)の断面積Sとした場合において、
S>W×H×30
が成立するように形成されている
請求項1又は請求項2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記貫通導体(21)は、前記基板(12)表面に垂直な方向から見て、前記第1通電パターン(13)側の端面の少なくとも一部分が前記電極(11B)の位置と重なるように設けられている
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記貫通導体(21)は、前記基板(12)表面に垂直な方向から見て、前記第1通電パターン(13)側の端面の全体が前記電極(11B)の位置と重なるように設けられている
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記貫通導体(21)は、前記基板(12)、前記第1通電パターン(13)及び前記第2通電パターン(14)を貫通する貫通穴(22)に挿入される導体部(211)を備え、前記導体部(211)は前記第1通電パターン(13)及び前記第2通電パターン(14)にはんだ付けされている
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記貫通導体(21)は、前記導体部(211)における前記第1通電パターン(13)又は前記第2通電パターン(14)から突き出る両端部の一方に抜けとめのための突部(212)を備えている
請求項6に記載の電子回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャント抵抗が組み込まれた電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ装置などにおいて、平板状の面実装タイプのシャント抵抗が組み込まれた電流検出回路を備えた電子回路装置が用いられている。この電子回路装置では、インバータ装置の電流容量が大きくなるとシャント抵抗の発熱量が大きくなる。このため、大容量インバータの電流検出においては、シャント抵抗及びその周辺の通電パターンの温度上昇が問題になっている。シャント抵抗は、高発熱部品であると同時に放熱経路が限られている。シャント抵抗の放熱経路は、シャント抵抗自身から空気へ直接放熱する放熱経路と、シャント抵抗から通電パターンに伝熱され、通電パターンから空気へ放熱される放熱経路とである。
【0003】
シャント抵抗から空気へ直接放熱する放熱経路を備えたものとしては例えば特許文献1が知られている。特許文献1は、シャント抵抗と通電パターンとの間に接続部材を設けてシャント抵抗を空中に浮かせるようにし、シャント抵抗自身から直接空気へ放熱するようにしている。シャント抵抗から通電パターンに伝熱し、通電パターンから空気へ放熱する放熱経路を備えたものとしては例えば特許文献2が知られている。特許文献2は、基板表面に通電パターンを形成し、通電パターンの所定領域に、基板及び通電パターンを貫通するスルーホールを設け、空気と接触する通電パターン及び基板の表面積を増加させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/41756号
【文献】特開2016-219755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電子回路装置では、追加の取付部材が必要になり製作工数が増加するという問題があった。特許文献2に記載の電子回路装置では、追加加工が必要な上基板の強度が弱くなるという問題があった。
【0006】
本開示は、シャント抵抗と基板の表裏両面に通電パターンを設けたものにおいて、シャント抵抗及び通電パターンの温度上昇を抑制した電子回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点に係る電子回路装置は、基板と、電極を備えたシャント抵抗と、前記基板の前記シャント抵抗と対向する面において、前記電極と面接触するように設けられた第1通電パターンと、前記基板の他方の面に設けられた第2通電パターンと、前記基板に実装される電子部品を電気的に接続するための導電体と、前記基板を貫通するように設けられた貫通導体と、を有し、前記導電体は、前記基板に設けられた貫通穴に挿入されて、前記第1通電パターンと前記第2通電パターンとに接合され、前記貫通導体は、前記電極の位置から前記導電体の位置までの前記第1通電パターン経路において、前記第1通電パターンと前記第2通電パターンとを接続するように設けられ、前記第1通電パターンにおける、前記貫通導体との接続部分の中心から前記導電体の取付部の中心までの部分の配線抵抗をR1とし、前記第2通電パターンにおける、前記貫通導体との接続部分の中心から前記導電体の取付部の中心までの部分の配線抵抗をR2とし、前記貫通導体の配線抵抗をR3とし、前記第1通電パターンにおける前記電極との電極接続部の中心から前記貫通導体の中心までの配線抵抗をR4としたときに、R3及びR4がそれぞれR1×1/10の値未満及びR2×1/10の値未満となるように形成されている。
【0008】
この構成によれば、シャント抵抗と第1通電パターン及び第2通電パターンとを接続する配線抵抗が、第1通電パターン及び第2通電パターンの配線抵抗以外は無視し得る程度となる。これにより、シャント抵抗で発生する発熱をシャント抵抗から第1通電パターン及び第2通電パターンへ良好に伝熱させることができる。また、第1通電パターンと第2通電パターンとに流れる電流及び伝熱量の均等化を図ることができ、両パターンにおける発熱量の均一化及び放熱量の均一化を向上させることができる。この結果、シャント抵抗、第1通電パターン、及び、第2通電パターンの温度上昇を抑制することができる。
【0009】
第2の観点に係る電子回路装置は、2A以上の電流を検出し得るように構成されている。
この構成によれば、空気調和機、冷凍冷蔵庫などの大容量機器の電源回路に適用することができる。
【0010】
第3の観点に係る電子回路装置によれば、前記電極接続部における、前記第1通電パターンにおける電流の流れ方向と直角であり、かつ、前記基板表面に沿う方向の寸法を前記電極接続部の幅寸法Wとし、前記第1通電パターンに関し、前記第1通電パターンにおける電流の流れ方向であり、かつ、前記基板表面に垂直な方向の寸法を前記第1通電パターンの厚みHとし、さらに、前記貫通導体に関し、前記基板表面と平行な断面の断面積を前記貫通導体の断面積Sとした場合においてS>W×H×30が成立するように形成されている。
【0011】
この構成によれば、Hは通常0.1mm程度であり、また、第1通電パターンと貫通導体とは材料の導電率や伝熱係数が通常同程度となる。また、第1通電パターンの幅寸法を拡大しても第1通電パターンの配線抵抗の減少は1/3程度にとどまる。したがって、R3がR1×1/10の値以下及びR2×1/10の値以下となることを実現するためには、S>W×H×30として構成すればよく、S>Wとしても管理することができる。このような管理により、シャント抵抗、第1通電パターン及び第2通電パターンの温度上昇を抑制することができる。
【0012】
第4の観点に係る電子回路装置によれば、前記貫通導体は、前記基板表面に垂直な方向から見て、前記第1通電パターン側の端面の少なくとも一部分が前記電極の位置と重なるように設けられている。
【0013】
この構成によれば、第1通電パターンと第2通電パターンとの組み合わせにおいて、電気等価回路上の配線抵抗R3及びR4を小さくすることができるとともに、シャント抵抗から第2通電パターンへの伝熱抵抗も小さくすることができる。
【0014】
第5の観点に係る電子回路装置によれば、前記貫通導体は、前記基板表面に垂直な方向から見て、前記第1通電パターン側の端面の全体が前記電極の位置と重なるように設けられている。
【0015】
この構成によれば、第1通電パターンと第2通電パターンとの組み合わせにおいて、電気等価回路上の配線抵抗R3及びR4をより小さくすることができるとともに、シャント抵抗から第2通電パターンへの伝熱抵抗もより小さくすることができる。
【0016】
第6の観点に係る電子回路装置によれば、前記貫通導体は、前記基板、前記第1通電パターン及び前記第2通電パターンを貫通する貫通穴に挿入される導体部を備え、前記導体部は前記第1通電パターン及び前記第2通電パターンにはんだ付けされている。
【0017】
第7の観点に係る電子回路装置によれば、前記貫通導体は、前記導体部における前記第1通電パターン又は前記第2通電パターンから突き出る端部の一方に抜けとめのための突部を備えている。
【0018】
この構成によれば、貫通導体は、通電パターンから突き出る端部の一方に抜けとめのための突部を備えているので、はんだ付け時における貫通導体の浮き上がりや落下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る電子回路装置を備えた電力変換装置の概略構成を示す回路図。
【
図2】同電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図4】
図2におけるシャント抵抗周りの、基板表面に垂直な方向から見た平面図。
【
図6】
図5の第1通電パターンの幅寸法を大きくしたときの第1通電パターンの配線抵抗の変化を示したグラフ。
【
図7】参考例に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図8】第1実施形態に係る電子回路装置の作用効果を参考例に係る電子回路装置との比較により示した説明図であって、(a)は通電パターンにおける発熱量比較図、(b)は通電パターンにおける最高温度比較図。
【
図9】第2実施形態に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図10】
図9を、基板表面に垂直な方向から見た平面図。
【
図11】第3実施形態に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図13】第4実施形態に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図15】第5実施形態に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図17】第6実施形態に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図19】第7実施形態に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【
図20】変形例に係る電子回路装置におけるシャント抵抗付近の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る電子回路装置について説明する。なお、本開示は、以下に記載する例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0021】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る電子回路装置10を備えた電力変換装置1の概略構成について説明する。
【0022】
電力変換装置1は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部2と、コンバータ部2で変換された直流電圧を三相交流電圧に変換するためのインバータ部3とを備えている。コンバータ部2は図示しない交流電源に、インバータ部3は負荷としてのモータ4に、それぞれ接続されている。モータ4は、埋込磁石同期モータであり、空気調和機、冷蔵庫等の圧縮機の駆動に用いられている。
【0023】
コンバータ部2は、整流回路であり、交流電源(図示しない)からの入力交流電圧を直流電圧に変換する。コンバータ部2は、第1配線L1及び第2配線L2によりインバータ部3と電気的に接続されている。特に図示しないが、コンバータ部2には複数のスイッチング素子が設けられていて、このスイッチング素子のスイッチング動作によって交流電圧から直流電圧への整流動作が行われるように構成されている。
【0024】
インバータ部3は、複数(6個)のスイッチング素子5を有していて、このスイッチング素子5のスイッチング動作によって、コンバータ部2から出力される直流電圧を三相交流電圧へ変換するように構成されている。
【0025】
インバータ部3は、具体的には、6個のスイッチング素子5を有していて、それらが三相ブリッジ結線されている。つまり、インバータ部3は、互いに直列に接続された2つのスイッチング素子5からなるスイッチングレグ7が並列に接続されていて、各スイッチングレグ7の中間点がモータ4の三相に接続されている。
【0026】
各スイッチング素子5は、例えば
図1に示すようなIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)によって構成されている。
スイッチング素子5は、スイッチング動作できるものであれば、ユニポーラ型トランジスタのMOSFETなどであってもよい。なお、上記各スイッチング素子5には、それぞれ、ダイオード6が逆並列に設けられている。
【0027】
電力変換装置1には、コンバータ部2とインバータ部3との接続部分である第1配線L1にシャント抵抗11を含む電子回路装置10が設けられている。
電子回路装置10は、シャント抵抗11を流れる電流を電流検出回路8によって検出し、その出力信号をコントローラ9に送ることにより、インバータ部3に接続されたモータ4に流れる電流を検出している。電子回路装置10は、空気調和装置、冷蔵庫等におけるインバータ式圧縮機の駆動回路に使用されるものであって、2A以上の電流を検出し得るように構成されている。
【0028】
コントローラ9は、電流検出回路8で検出された電流値に基づいて、インバータ部3の各スイッチング素子5の動作制御を行うための制御信号(PWM信号)を出力するように構成されている。
【0029】
次に、電子回路装置10の構成について説明する。
図2に示すように、電子回路装置10は、モータ4に流れる電流を検出するためのシャント抵抗11、シャント抵抗11を実装する基板12、シャント抵抗11を接続するための第1通電パターン13、第2通電パターン14、第1電流検出パターン15、第2電流検出パターン16等を有している。
【0030】
シャント抵抗11は、薄膜状に形成された抵抗体11Aと、第1通電パターン13に接続するための電極11Bとを有する。
抵抗体11Aは、例えばアルミナなどのセラミックス材料などの剛性の高い材料によって形成された抵抗基材により補強されている。電極11Bは、抵抗体11Aの下方両端部に設けられている。シャント抵抗11は、下方両端部の電極11Bが第1通電パターン13にはんだ付けされることにより、基板12に表面実装されている。
【0031】
基板12は、CEM-3(Composite epoxy material-3)と称されているガラス布ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂銅張積層板やFR-4(Flame retardant-4)と称されている耐熱性ガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板などの材料からなり、平板状に形成されている。
【0032】
第1通電パターン13及び第2通電パターン14は、シャント抵抗11をインバータ部3及びコンバータ部2に接続する、第1配線L1を構成する。第1通電パターン13及び第2通電パターン14は、銅、アルミニウム又はこれらの合金などの導電性材料からなる。また、第1電流検出パターン15及び第2電流検出パターン16は、シャント抵抗11の電流を検出するためのものであって、シャント抵抗11の電極11Bと電流検出回路8とを接続する回路を形成している。第1電流検出パターン15及び第2電流検出パターン16は、第1通電パターン13及び第2通電パターン14と同一の銅、アルミニウム又はこれらの合金などの導電性材料からなる。
【0033】
第1通電パターン13は、基板12の第1表面12aに設けられるパターンであり、第2通電パターン14は、基板12の第2表面12bに設けられるパターンである。この明細書において、基板12の第1表面12aはシャント抵抗11側の表面をいい、基板12の第2表面12bは基板12における第1表面12aの反対側の表面をいう。
【0034】
第1通電パターン13は、シャント抵抗11の両側に離隔した状態で設けられているものであって、第1通電パターン13は、インバータ部3側の(すなわち、図示右側の)第1通電パターン13aと、コンバータ部2側の(すなわち、図示左側の)第1通電パターン13bとから構成されている。第2通電パターン14は、基板12の図示下方の第2表面12bに形成されているものであって、インバータ部3側の(すなわち、図示右側の)第2通電パターン14aと、コンバータ部2側の(すなわち、図示左側の)第2通電パターン14bとから構成されている。
【0035】
この開示例における第1通電パターン13aと第2通電パターン14aとは、シャント抵抗11の図示右側において、基板12の第1表面12aと第2表面12bの両面において対称的に配置されたものであって、略同一サイズに形成されている。第1通電パターン13aと第2通電パターン14aとは、シャント抵抗11の電極11Bとインバータ部3との間に位置する第1配線L1(
図1参照)を構成している。
【0036】
同様に、この開示例における第1通電パターン13bと第2通電パターン14bとは、シャント抵抗11の図示左側において、基板12の第1表面12aと第2表面12bの両面において対称的に配置されたものであって、略同一サイズに形成されている。第1通電パターン13bと第2通電パターン14bとは、シャント抵抗11の電極11Bとコンバータ部2との間に位置する第1配線L1(
図1参照)を構成している。
【0037】
次に、シャント抵抗11周りの構造として、シャント抵抗11と第1通電パターン13及び第2通電パターン14との接続部分の構造について、さらに詳しく説明する。
なお、この説明においては、第1電流検出パターン15及び第2電流検出パターン16の構成を省略する。
【0038】
本開示の電子回路装置10において、シャント抵抗11周りの構造は、
図2に示すように基本的に、シャント抵抗11を挟んで左右両側が対称的に構成されている。したがって、第1実施形態におけるシャント抵抗11周りの説明、及び、第2実施形態以降におけるシャント抵抗11周りの説明は、特に断らない限り、左右両側それぞれの説明に代えて右側のみを代表例として説明するものとする。
【0039】
また、本明細書において、単に第1通電パターン13と称するときは、第1通電パターン13a,13bを区別せずに言うか又はこれらを総称するものとする。同様に、本明細書において、単に第2通電パターン14と称するときは、第2通電パターン14a,14bを区別せずに言うか又はこれらを総称するものとする。そこで、以下の図示右側の説明(第2実施形態以降の説明を含む)においては、第1通電パターン13a及び第2通電パターン14aについて称するときは、単に、第1通電パターン13及び第2通電パターン14と称するものとする。
【0040】
図2に示すように、第1通電パターン13と第2通電パターン14とは、シャント抵抗11の電極11Bの近傍の端部において、貫通導体21により接続されている。
貫通導体21は、第1通電パターン13と第2通電パターン14とを接続する導体である。貫通導体21は、配線抵抗を小さくしたものであって銅プラグにより形成されている。貫通導体21は、基板12に形成された貫通穴22に埋め込まれている。貫通導体21は、
図2においては1個のみ図示されているが、複数個から成るものとしてもよい。
【0041】
第1通電パターン13及び第2通電パターン14は、基板12に貫通導体21が埋め込まれた後に、貫通導体21の端面を覆うように、基板12の表面に対し蒸着により取り付けられている。これにより、貫通導体21と第1通電パターン13及び第2通電パターン14との接続部分の配線抵抗が小さくなっている。
【0042】
また、第1通電パターン13と第2通電パターン14とは、貫通導体21から離れた位置においては、電子部品31を電気的に接続するための導電体32により接続されている。
図2において、電子部品31を電気的に接続する導電体32は、この実施形態においては電子部品31の2本のリード端子である。
【0043】
図2に示すように、2本の導電体32は、それぞれ別個に貫通穴33に挿入されてはんだ付けされている。貫通穴33は、内面に銅メッキ層33aが施された所謂スルーホールと称されるものである。貫通穴33の銅メッキ層33aと導電体32との隙間は、はんだ付けされたときのはんだ34により埋め尽くされている。したがって、この導電体32における配線抵抗は、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の配線抵抗と比較すると無視し得る程度である。なお、本実施形態において、電子部品31を電気的に接続する導電体32は、リード端子に代えて電子部品31を電気的に接続する導線であってもよい。
【0044】
図3に、シャント抵抗11周りの電気等価回路を示す。
図3における配線抵抗R1~配線抵抗R4は、
図2において対象部とその部分の配線抵抗とが対比理解できるように図示されている。すなわち、配線抵抗R1は、第1通電パターン13における、貫通導体21との接続部分の中心から導電体32の取付部の中心までの部分の配線抵抗である。配線抵抗R2は、第2通電パターン14における、貫通導体21との接続部分の中心から導電体32の取付部の中心までの部分の配線抵抗である。配線抵抗R3は、貫通導体21の配線抵抗である。配線抵抗R4は、第1通電パターン13における電極11Bとの電極接続部17の中心から貫通導体21の中心までの配線抵抗である。この場合において、配線抵抗R1及び配線抵抗R2は、一般的に同一寸法、同一構造であり、同一材料とされるので略同一であると考えてよい。
【0045】
電子部品31を電気的に接続するための導電体32により第1通電パターン13と第2通電パターン14とを接続する部分の配線抵抗は、従来から一般的に接合される構造であって、第1通電パターン13の配線抵抗R1及び配線抵抗R2に比較して微小であるので、
図3の電気等価回路においては無視されている。
【0046】
本開示の電子回路装置10は、このような構成において第1通電パターン13と第2通電パターン14とに略均一な電流を流すようにするために、配線抵抗R1及び配線抵抗R2に比較して配線抵抗R3及び配線抵抗R4を微小とするように設定している。すなわち本開示の電子回路装置10では、R3<R1/10、かつ、R4<R1/10と設定されている。また、本開示の電子回路装置10では、第1通電パターン13と第2通電パターン14とは、同一サイズであり、同一材料により形成されているので、R1とR2とは略同一である。
【0047】
図4及び
図5は、R3<R1/10を実現するための寸法を説明する図である。
図4及び
図5において、Wは、第1通電パターン13とシャント抵抗11の電極11Bとが面接続されている電極接続部17の幅寸法をいう。電極接続部17の幅寸法Wは、第1通電パターン13における電流の流れ方向D(
図1及び
図4参照)と直角であり、かつ、基板12表面に沿う方向の寸法である。この開示例において電極接続部17の幅寸法Wは、第1通電パターン13の幅寸法Wpとより小さい。
【0048】
ここで、第1通電パターン13は、第1通電パターン13における電流の流れ方向Dと直角方向の寸法すなわち幅寸法をWpとし、厚み寸法をHとする。一方の第2通電パターン14は、第1通電パターン13と同一サイズとして第1通電パターン13と対称的な位置に形成されている。したがって、第2通電パターン14における電流の流れ方向Dと直角方向の寸法、すなわち幅寸法はWpであり、厚み寸法はHである。
【0049】
電極接続部17の幅寸法W、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の幅寸法Wp及び厚み寸法Hは、それぞれmm単位で表される。貫通導体21の断面積Sは、平方mm単位で表される。
【0050】
ところで、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の厚み寸法Hは、通常0.1mmである。
また、第1通電パターン13の配線抵抗R1及び第2通電パターン14の配線抵抗R2は、電極接続部17の幅寸法Wに対し第1通電パターン13及び第2通電パターン14の幅寸法Wpを大きくすると、W=Wpの場合に対し1/3程度まで減少することが解析的に確認されている。
図6はこれを示すデータである。
図6において横軸はWp/Wであり、縦軸は抵抗比である。ここで抵抗比とは、W=Wpとした場合の第1通電パターン13の抵抗値を基準値1とし、Wp/Wを変化させた場合の第1通電パターン13の抵抗値を前記基準値1に対する抵抗比で示したものである。これから分かるように、電極接続部17の幅寸法Wに対し第1通電パターン13の幅寸法Wpを大きくしても、配線抵抗は1/3程度にしか減少しない。
図6は、第1通電パターンについて示しているが、言うまでもなく第2通電パターン14についても同様である。
【0051】
このようにHが一般的に0.1mmであり、Wpを大きくすればR1が1/3になることを考量し、S>W×H×30と設定している。こうすれば、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の幅寸法Wpが電極接続部17の幅寸法Wに対し十分に大きい場合であってもR3<R1/10を保持することができる。また、この場合において、前述のように第1通電パターン13及び第2通電パターン14の厚みHが0.1mmであり、通電パターンの幅寸法Wpを大きくして配線抵抗R1を1/3まで下げたとすれば、S>WとすることによりR3<R1/10を保持することができる。
【0052】
なお、上記の説明において導電体32の配線抵抗が、第1通電パターン13の配線抵抗R1及び第2通電パターン14の配線抵抗R2に比較すると微小であるため無視していることを具体的に説明する。例えば0.65mm角のリード端子2本の配線抵抗値は、4.0×10
-5Ω以下である。一方、電極接続部17の幅寸法Wを10mmとし、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の厚みHをそれぞれ50μmとし、さらに、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の幅寸法Wpをそれぞれ50mmとした場合、第1通電パターン13の配線抵抗R1及び第2通電パターン14の配線抵抗R2は、略1.7×10
-3Ωである。また、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の幅寸法Wpを大きくしても、配線抵抗R1及びR2は前述の
図6に示すように1/3程度にしか減少しない。したがって、導電体32の配線抵抗は、常に第1通電パターン13の配線抵抗R1及び第2通電パターン14の配線抵抗R2に比較して、一桁以上小さい。
【0053】
(第1実施形態の作用)
以下第1実施形態に係る電子回路装置10の作用について説明する。
本開示の電子回路装置10においては、配線抵抗R4及びR3が第1通電パターン13及び第2通電パターン14の配線抵抗R1及びR2と比較して無視し得るほど微小である。また、第1通電パターン13と第2通電パターン14とは同一仕様であるので、第1通電パターン13の配線抵抗R1と第2通電パターン14の配線抵抗R2とは略同一である。したがって、第1通電パターン13を流れる経路の配線抵抗R4+R1と第2通電パターン14を流れる経路の配線抵抗R4+R3+R2とは、略同一となる。
【0054】
この結果、第1通電パターン13に流れる電流と第2通電パターン14に流れる電流とは略同一になるので、第1通電パターン13及び第2通電パターン14における発熱量が同一となる。
【0055】
また、ウィーデマン・フランツの法則で知られるように、金属の電気伝導率と熱伝導率との間には比例関係がある。したがって、配線抵抗R3及び配線抵抗R4を小さくすれば電気伝導率が大きくなるとともに熱伝導性能が向上するので、シャント抵抗11から第1通電パターン13及び第2通電パターン14への熱伝導が良好になる。
図2における破線は熱伝導の流れ方向を示している。また同時に、配線抵抗R3及び配線抵抗R4を小さくすることにより、シャント抵抗11から第1通電パターン13及び第2通電パターン14への伝熱抵抗が略均一化されるので、シャント抵抗11から第1通電パターン13及び第2通電パターン14への伝熱量が均一化される。
【0056】
図8は、第1通電パターン13及び第2通電パターン14における発熱量及び最高温度に関し、本開示の電子回路装置10と参考例との比較を示す。ここでいう参考例とは、
図7に示すように、本開示における貫通導体21を、電子部品の端子を挿入しない穴として一般的に用いられているビア41に置き換えたものである。
図7の参考例は、ビア41以外は本開示のものと同一であり、本開示と同一の部分には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0057】
第1実施形態に係る電子回路装置10は、前述の説明から分かるように、シャント抵抗11から第1通電パターン13及び第2通電パターン14へ接続する回路の配線抵抗及び伝熱抵抗が小さくなる。これにより、第1通電パターン13及び第2通電パターン14に流れる電流値の均等化が行われる。また、シャント抵抗11から第1通電パターン13及び第2通電パターン14への伝熱性能が向上するとともに、両通電パターンへの伝熱量の均等化が行われる。この結果、
図8(a)に示すように、両通電パターンにおける発熱量は、参考品では第1通電パターン13の発熱量が第2通電パターン14の発熱量より大きかったが、本開示のものでは、両通電パターンの発熱量が均一化される。また、両通電パターンにおけるトータル発熱量も減少している。さらに、
図8(b)に示すように、両通電パターンにおける最高温度が等しくなるとともに低温化されている。同時に、シャント抵抗11における最高温度も低温化されている。
【0058】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の電子回路装置10は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
【0059】
(1-1)配線抵抗R1~配線抵抗R4に関し、R1とR2を略同一とし、R3<R1/10でありかつ、R4<R1/10が成立するようにしている。したがって、第1通電パターン13及び第2通電パターン14に流れる電流値の均一化が行われ、シャント抵抗11から第1通電パターン13及び第2通電パターン14への伝熱が良好になるとともに均等化される。これにより、シャント抵抗11、第1通電パターン13、及び、第2通電パターン14の温度上昇を抑制することができる。
【0060】
(1-2)貫通導体21の断面積S、電極接続部17の幅寸法W、第1通電パターン13及び第2通電パターン14の厚みHとした場合において、S>W×H×30が成立するように形成すればよく、S>Wとしても管理することができる。
【0061】
(1-3)電子回路装置10は、2A以上の電流を検出し得るように構成されているので、空気調和機、冷凍冷蔵庫などの大容量機器の電源回路に適用することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電子回路装置10について
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0062】
第2実施形態に係る電子回路装置10は、第1実施形態において貫通導体21の位置を変更したものである。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0063】
図9及び
図10から分かるように、第2実施形態における貫通導体21は、基板12の第1表面12aに垂直な方向から見て、貫通導体21の第1通電パターン13側の端面の約半分がシャント抵抗11の電極11Bの位置と重なるように設けられているものである。なお、貫通導体21及び貫通穴22等の他の構成は第1実施形態と同一である。
【0064】
第2実施形態に係る電子回路装置10は、以上のように構成されるので、第1実施形態に係る(1-1)~(1-3)と同様の効果を奏することができるとともに、次の効果を奏することもできる。
【0065】
(2-1)第1通電パターン13と第2通電パターン14との組み合わせにおいて、電気等価回路上の配線抵抗R3及び配線抵抗R4を小さくすることができるとともに、シャント抵抗11から第2通電パターン14への伝熱抵抗も小さくすることができる。これにより、シャント抵抗11、第1通電パターン13、及び、第2通電パターン14の温度上昇をより抑制することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電子回路装置10について
図11及び
図12に基づいて説明する。
【0067】
第3実施形態に係る電子回路装置10は、第2実施形態において貫通導体21を複数個の分割貫通導体21aからなるように形成したものである。なお、第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0068】
図12から分かるように、貫通導体21は、第2実施形態においては1個であったが、第3実施形態においては3個の分割貫通導体21aからなる。すなわち、第3実施形態における貫通導体21は、電極接続部17の幅寸法Wの方向に一直線に並べられた3個の分割貫通導体21aよりなる。各分割貫通導体21aは、それぞれ第2実施形態における貫通導体21と同様の構造により基板12に埋め込まれるものであって、第1通電パターン13側の各端面の約半分がシャント抵抗11の電極11Bの位置と重なるように設けられている。
【0069】
第3実施形態における電極接続部17の幅寸法Wは、第2実施形態と比較し略同一とされているので、第3実施形態における各分割貫通導体21aの断面積Saは、第2実施形態の貫通導体21の断面積Sより小さい。しかしながら、3個の分割貫通導体21aの合計断面積、すなわち第3実施形態における貫通導体21の断面積Sは、第2実施形態における貫通導体21の断面積Sより大きくなっている。
【0070】
第3実施形態に係る電子回路装置10は、以上のように構成されるので、第1実施形態に係る(1-1)~(1-3)、並びに、第2実施形態に係る(2-1)と同様の効果を奏することができる。加えて、第3実施形態に係る電子回路装置10は、次の効果を奏することもできる。
【0071】
(3-1)分割貫通導体21aの断面積Saを合算した断面積である貫通導体21の断面積Sは第2実施形態における貫通導体21の断面積Sより大きくっている。したがって、第3実施形態は、第1通電パターン13と第2通電パターン14との組み合わせにおいて、電気等価回路上の配線抵抗R3及び配線抵抗R4、及び、シャント抵抗11から第2通電パターン14への伝熱抵抗を小さくすることができる。これにより、第3実施形態に係る電子回路装置10は、シャント抵抗11、第1通電パターン13、及び、第2通電パターン14の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る電子回路装置10について
図13及び
図14に基づいて説明する。
【0073】
第4実施形態に係る電子回路装置10は、第3実施形態において貫通導体21の位置を変更したものである。なお、第3実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0074】
図13及び
図14から分かるように、第4実施形態における貫通導体21は、第3実施形態における貫通導体21と同様3個の分割貫通導体21aからなる。しかし、3個の分割貫通導体21aは、基板12の第1表面12aに垂直な方向から見て、3個全ての分割貫通導体21aの第1通電パターン13側の端面全体が電極11Bの位置と重なる位置に設けられている。なお、分割貫通導体21aの位置以外の他の構成は第3実施形態と同一である。
【0075】
第4実施形態に係る電子回路装置10は、以上のように構成されるので、第1実施形態に係る(1-1)~(1-3)の効果、第2実施形態に係る(2-1)の効果、並びに、第3実施形態に係る(3-1)の効果を奏することができる。加えて、次の効果を奏することもできる。
【0076】
(4-1)3個全ての分割貫通導体21aの第1通電パターン13側の端面全体がシャント抵抗11の電極11Bの位置と重なるように設けられるので、電気等価回路上の配線抵抗R4が小さくなる。これにより、シャント抵抗11から第2通電パターン14への伝熱抵抗もより一層小さくなり、シャント抵抗11、第1通電パターン13、及び、第2通電パターン14の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0077】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る電子回路装置10について
図15及び
図16に基づいて説明する。
【0078】
第5実施形態に係る電子回路装置10は、第4実施形態において貫通導体21の個数及び形状を変更したものである。なお、第4実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0079】
図15及び
図16から分かるように、第4実施形態における貫通導体21は、第3実施形態のものとは異なり1個の貫通導体21からなる。また、第4実施形態における貫通導体21は、第1~第4実施形態のものと異なり、電極接続部17の幅寸法Wの方向に長い直方体形状に形成されている。したがって、この貫通導体21を埋め込む貫通穴22の断面形状も矩形に形成されている。また、第5実施形態における貫通導体21は、第4実施形態のものと同様に、基板12の第1表面12aに垂直な方向から見て、貫通導体21の第1通電パターン13側の端面全体が電極11Bの位置と重なる位置に設けられている。また、第5実施形態における貫通導体21は、貫通導体21の断面積Sが第4実施形態の場合より大きく形成されている。
【0080】
第5実施形態に係る電子回路装置10は、以上のように構成されるので、第1実施形態に係る(1-1)~(1-3)の効果、第2実施形態に係る(2-1)の効果、並びに、第4実施形態に係る(4-1)の効果を奏することができる。加えて、次の効果を奏することもできる。
【0081】
(5-1)貫通導体21の断面積Sが第4実施形態におけるものより大きく形成されているので、電気等価回路上の配線抵抗R3が小さくなる。これにより、シャント抵抗11から第2通電パターン14への伝熱抵抗もより一層小さくなり、シャント抵抗11、第1通電パターン13、及び、第2通電パターン14の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0082】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る電子回路装置10について
図17及び
図18に基づいて説明する。
【0083】
第6実施形態に係る電子回路装置10は、第1実施形態において貫通導体21の構造及び取付構造を変更したものである。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0084】
図17及び
図18から分かるように、第6実施形態における貫通導体21は、板状の導体部211を備えている。導体部211は、両端が第1通電パターン13及び第2通電パターンから突き出る大きさに形成されている。導体部211の第1通電パターン13側の端部には、第1通電パターン13の長手方向に張り出す平坦状の突部212が形成されている。板状の導体部211及び平坦状の突部212は、
図18に示すように、基板12の第1表面12aに垂直な方向から見て長方形に形成されている。このような貫通導体21は、通称ピン形状と称されている。
【0085】
第6実施形態における貫通導体21は、このような形状のものが1個であって、シャント抵抗11の近傍に電極11Bと重ならないように取り付けられている。貫通導体21は、このような形状をしているので、その断面積Sは、第1実施形態のものより大きく形成されている。
【0086】
貫通導体21の取り付けは、基板12、第1通電パターン13及び第2通電パターン14を貫通する断面長方形の貫通穴22に板状の導体部211が挿入され、その後はんだ付けされる。貫通穴22は、基板12、第1通電パターン13及び第2通電パターン14を貫通する穴の内面に銅メッキ層22aが施されたものである。はんだ付けは、貫通穴22の内面、すなわち銅メッキ層22aの内面と導体部211の外表面との隙間をはんだ23で埋め尽くすように行われている。なお、貫通導体21及び貫通穴22以外の構成は第1実施形態と同一である。
【0087】
第6実施形態に係る電子回路装置10は、以上のように構成されるので、第1実施形態に係る(1-1)~(1-3)と同様の効果を奏することができるとともに、次の効果を奏することもできる。
【0088】
(6-1)貫通導体21は、板状の導体部211を備え、その第1通電パターン13側の端部に突部212を形成したものであるので、はんだ付け時の浮き上がりや落下を防止することが容易である。
【0089】
(6-2)貫通導体21は、板状の導体部211を備え、その断面積Sを第1実施形態より大きくしているので、第1通電パターン13と第2通電パターン14との組み合わせにおいて、電気等価回路上の配線抵抗R3、及び、シャント抵抗11から第2通電パターン14への伝熱抵抗を小さくすることができる。これにより、シャント抵抗11、第1通電パターン13、及び、第2通電パターン14の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0090】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係る電子回路装置10について
図19に基づいて説明する。
第7実施形態に係る電子回路装置10は、第6実施形態において貫通導体21の構造を変更したものである。なお、第6実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0091】
図19に示すように、第7実施形態における貫通導体21は、第6実施形態と同様に板状の導体部211を備えたものであって、導体部211の第1通電パターン13側の端部付近において第1通電パターン13の長手方向に張り出させた突部212の形状を異ならせたものである。この実施形態における突部212は、
図19に示すように、貫通穴22の貫通方向に縦断した突部212の断面において、略三角形状に張り出すものである。このような貫通導体21は、通称抜け止め構造を持つピン形状と称されている。なお、貫通導体21及び貫通穴22等の他の構成は第6実施形態と同一である。
【0092】
第7実施形態に係る電子回路装置10は、以上のように構成されるので、第1実施形態に係る(1-1)~(1-3)の効果及び第6実施形態に係る(6-1)及び(6-2)に効果を奏することができるとともに、次の効果を奏することもできる。
【0093】
(変形例)
前記実施形態に関する説明は、本開示に従う電子回路装置10が取り得る形態の例示であり、その形態に制限されるものではない。本開示に従う電子回路装置10は、前記実施形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0094】
・各実施形態における電子回路装置10は、シャント抵抗11を挟んで左右両側が対称的に構成されているものとしているが、左右両側の一方のみを本開示の内容としてもよい。また、シャント抵抗11を挟んで左右両側が完全に対称的である必要はない。要するに本開示の趣旨を損なわないように構成されていることが望ましく、例えば、右側の第1通電パターン13aと左側の第1通電パターン13bの各部の寸法が異なってもよい。また、左右の貫通導体21の個数、形状等が相違してもよい。
【0095】
・第2実施形態及び第3実施形態において、貫通導体21は、基板12の第1表面12aに垂直な方向から見て、第1通電パターン13側の端面の約半分が電極11Bの位置と重なるように設けられているが、約半分に限られるものではなく、半分より多くすることもできるし、少なくすることもできる。
【0096】
・第3実施形態において、3個の分割貫通導体21aは、全数同じように端面の約半分が電極11Bの位置と重なるように設けられているが、分割貫通導体21a毎に重なる面積を異ならせるようにしてもよい。
【0097】
・第2実施形態及び第3実施形態において、貫通導体21は、3個の分割貫通導体21aにより形成されていたが、分割貫通導体21aの個数を2個以上の任意の個数に変更してもよい。
【0098】
・貫通導体21の断面積Sについては、R4<R1/10が成立する範囲内において任意に変更することもできる。
・各実施形態において、貫通導体21の断面形状を他の形状にしてもよい。例えば第1~第4実施形態において、貫通導体21又は分割貫通導体21aは、断面形状が円形の柱状であったが、この断面形状を楕円形、四角形、三角形等の適宜の柱状としてもよい。
【0099】
・第3実施形態及び第4実施形態において、3個の分割貫通導体21aは、全て同一形状であったが、異なる形状の組み合わせとしてもよい。
・第6実施形態及び第7実施形態において、突部212を省略した形状としてもよい。
図20はこれを図示する。
図20に示すように、板状の導体部211は、端部が第1通電パターン13及び第2通電パターン14の外側に延びたものであって、両端部の付近には通電パターンの長手方向に張り出す突部212が形成されていない。
【0100】
・第6実施形態及び第7実施形態において、突部212は第1通電パターン13側の端部付近に設けられていたが、これに限るものではなく、第2通電パターン14側の端部付近に設けたものとしてもよい。
【0101】
・第6実施形態及び第7実施形態において、導体部211は、特に板状に拘るものではない。すなわち、導体部211は、基板12の表面に平行な断面形状が矩形、正方形、円形等の形状とすることができる。
【0102】
・前記各実施形態においては、空気調和機や冷凍冷蔵庫の圧縮機用の駆動回路に適用されるものであったが、このような用途に限らない。例えば、家庭用発電装置、電動工具などにおけるフィードバック制御などの種々の用途において適用可能である。
【0103】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0104】
D 電流の流れ方向
L1 第1配線
L2 第2配線
H (第1通電パターン13の)厚み寸法
S (貫通導体の)断面積
Sa (分割貫通導体の)断面積
W (電極接続部の)幅寸法
Wp (第1通電パターンの)幅寸法
1 電力変換装置
2 コンバータ部
3 インバータ部
4 モータ
5 スイッチング素子
6 ダイオード
7 スイッチングレグ
8 電流検出回路
9 コントローラ
10 電子回路装置
11 シャント抵抗
11A 抵抗体
11B 電極
12 基板
12a 第1表面
12b 第2表面
13 第1通電パターン
13a (インバータ部側の)第1通電パターン
13b (コンバータ部側の)第1通電パターン
14 第2通電パターン
14a (インバータ部側の)第2通電パターン
14b (コンバータ部側の)第2通電パターン
15 第1電流検出パターン
16 第2電流検出パターン
17 電極接続部
21 貫通導体
21a 分割貫通導体
22 貫通穴
22a 銅メッキ層
23 はんだ
31 電子部品
32 導電体
33 貫通穴
33a 銅メッキ層
34 はんだ
41 ビア
211 導体部
212 突部