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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/14 20060101AFI20240813BHJP
   F25D 23/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F25D21/14 A
F25D23/06 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019187549
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021063607
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 隆史
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019999(JP,A)
【文献】特開2001-017141(JP,A)
【文献】特開平02-298781(JP,A)
【文献】特開平08-082468(JP,A)
【文献】特開2001-141348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/14
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口された貯蔵室を有する箱状の貯蔵庫本体と、
床面上を移動可能な台車部と、前記台車部に支持されて貯蔵物を保持可能な貯蔵物保持部と、を含んで構成され、前記貯蔵室に対して前方から出し入れ可能なカートと、
前記貯蔵室を冷却する冷却ユニットと、
を備え、前記カートの前記貯蔵物保持部を前記貯蔵室内に収容した状態で、前記貯蔵物保持部が保持した貯蔵物を貯蔵するように構成された貯蔵庫であって、
前記貯蔵庫本体は、前記貯蔵室内に設けられて水を噴射することで前記貯蔵室内を洗浄する洗浄装置と、前記貯蔵室の底面に設けられて少なくとも前記洗浄装置による洗浄水を前記貯蔵室内から排出するための排水口と、を備え、
前記貯蔵室は、当該貯蔵庫の左右方向における一方の側の空間が、前記カートの前記貯蔵物保持部を収容する空間であるカート配置空間とされ、当該貯蔵庫の左右方向における他方の側の空間が、前記冷却ユニットが配される冷却ユニット配置空間とされ、
前記冷却ユニットは、前記カート配置空間に対して当該貯蔵庫の左右方向に並ぶとともに前記貯蔵室の底面との間に間隔を開けた状態で配され、
前記貯蔵室の底面は、前記左右方向における他方の側の端部を含んで水平に広がる平面部と、前記左右方向における一方の側の端部から前記平面部に向かうにつれて下降傾斜する第1傾斜面部と、前記貯蔵室の前方側の端部から前記平面部に向かうにつれて下降傾斜する第2傾斜面部と、前記貯蔵室の後方側の端部から前記平面部に向かうにつれて下降傾斜する第3傾斜面部と、を有し、
前記平坦部の上方に、前記冷却ユニットが配され、前記第1傾斜面部の上方に、前記貯蔵室内に収容された状態の前記貯蔵物保持部が配され、
前記排水口は、前記平面部に設けられて、前記冷却ユニットの下側で前記貯蔵室の底面の前後方向における中央に位置することで、前記貯蔵物保持部が前記貯蔵室内に収容された状態において、前記カートと上下方向に重ならない位置に配されており
前記冷却ユニットは、冷却器と、前記冷却器に対して前記左右方向における一方の側に設けられ、前記貯蔵室内の空気を吸引して前記冷却器が配された前記左右方向における他方に向かって送風することで、前記貯蔵室内の空気を循環させる循環ファンと、を備え、
前記循環ファンは、前記貯蔵室の前後方向における中央に配されて前記排水口の真上に位置する、貯蔵庫。
【請求項2】
当該貯蔵庫は、前記貯蔵室の底面を形成する底面パネルを備え、
前記底面パネルは、
前記排水口が設けられるとともに前記平面部を形成する矩形の平面パネル部材と、前記第1傾斜面部,前記第2傾斜面部,前記第3傾斜面部を形成する平面視コの字形状の部材であって、前記平面パネル部材の三方を囲んで前記平面パネル部材に向かって下降する傾斜状に形成された傾斜パネル部材と、からなり、
前記平面パネル部材の外周縁のうち前記傾斜パネル部材に接続される三辺から下方に突出するフランジが形成されるとともに、前記傾斜パネル部材の内周縁から下方に突出するフランジが形成され、
前記平面パネル部材のフランジと前記傾斜パネル部材のフランジとが接合されて構成された請求項1に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、貯蔵庫として、貯蔵庫本体とカート(トロリー)とを備え、貯蔵物を保持したカートごと貯蔵庫本体内に収容した状態で貯蔵することが可能な構成のもの、いわゆるカートイン型(トロリー型)の急速冷却庫が記載されている。下記特許文献1に記載の貯蔵庫が備えるカートは、トレイを複数段に亘って載置可能とされており、貯蔵物として食品等の被冷却物を、それらのトレイに載せた状態で保持することが可能となっている。そして、そのカートが備える台車部が、貯蔵庫本体の外側(下側)に存在する状態で、貯蔵庫の扉を閉じることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-215019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の貯蔵庫においては、カートに保持された貯蔵物(例えば汁物等の食材)によって貯蔵庫本体内(庫内)が汚れる場合があるため、庫内を洗浄することが求められる。そして、庫内を洗浄するために、例えば水(洗浄水)を噴射することで庫内を洗浄する洗浄装置を庫内に設けることが考えられる。しかしながら、上記のような貯蔵庫は、カートの出し入れがあるため、例えば、そのカートの出し入れに支障をきたさないような、適切な排水経路を確保する必要がある。また例えば、上記のような貯蔵庫は、カートの一部が貯蔵庫本体の外側に存在する状態で貯蔵庫本体が密閉された状態となるため、貯蔵庫本体には、そのカートを挿入するための開口部が存在することになり、洗浄装置によって多量の洗浄水を庫内に流出させると、洗浄水がその開口部等から庫外に漏れる虞がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、貯蔵庫本体内にカートを収容可能な貯蔵庫において、洗浄装置の排水を庫外へ適切に排出させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の貯蔵庫は、
前方に開口された貯蔵室を有する箱状の貯蔵庫本体と、
床面上を移動可能な台車部と、前記台車部に支持されて貯蔵物を保持可能な貯蔵物保持部と、を含んで構成され、前記貯蔵室に対して前方から出し入れ可能なカートと、
を備え、前記カートの前記貯蔵物保持部を前記貯蔵室内に収容した状態で、前記貯蔵物保持部が保持した貯蔵物を貯蔵するように構成された貯蔵庫であって、
前記貯蔵庫本体は、前記貯蔵室内に設けられて水を噴射することで前記貯蔵室内を洗浄する洗浄装置と、前記貯蔵室の底面に設けられて少なくとも前記洗浄装置による洗浄水を前記貯蔵室内から排出するための排水口と、を備え、
前記排水口は、前記貯蔵物保持部が前記貯蔵室内に収容された状態において、前記カートと上下方向に重ならない位置に設けられたことを特徴とする。
【0007】
この構成の貯蔵庫は、貯蔵物を保持したカートを貯蔵庫本体に挿入した状態のまま、その貯蔵物を貯蔵可能な構成のもの、いわゆるカートイン型の貯蔵庫を前提とするとともに、貯蔵室内(庫内)を洗浄する洗浄装置を備えたものとなっている。そして、この構成の貯蔵庫は、その洗浄装置による洗浄水等の庫内排水を庫外へ排出させる排水口が、貯蔵室の底面において、貯蔵物保持部と干渉しないような位置に配されているため、カートの出し入れに支障をきたさないようになっている。なお、排水口から繋がる排水路は、排水口の下側に延び出すことになるが、排水口がカートからずれているため、カートに干渉しないように排水路を確保することが容易であり、換言すれば、排水路にカート(特に台車部)が接触するような事態を確実に回避することができる。つまり、この構成の貯蔵庫によれば、適切な排水経路を確保することができる。
【0008】
上記構成において、当該貯蔵庫は、前記貯蔵室を冷却する冷却ユニットを備え、前記冷却ユニットは、前記貯蔵室内における、前記カートの前記貯蔵物保持部を収容する空間であるカート配置空間に対して当該貯蔵庫の左右方向に並ぶとともに前記貯蔵室の底面との間に間隔を開けた状態で配され、前記排水口は、前記冷却ユニットの下側に設けられた構成とすることができる。
【0009】
この構成の貯蔵庫は、貯蔵室内の構成が限定されるとともに、排水口の位置が限定されている。この構成の貯蔵庫は、貯蔵室内に、例えば、冷却器(蒸発器)と循環ファンとを含んで構成される冷却ユニットが配され、その右側あるいは左側にカート配置空間が形成されている。そして、この構成の貯蔵庫は、その冷却ユニットが貯蔵室の底面から浮いた状態で配されており、排水口が、貯蔵室の底面における冷却ユニットの下方に位置する部分に設けられている。この構成の貯蔵庫によれば、カートの排水路への干渉を確実に、防止することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記排水口は、前記貯蔵室の底面の前後方向における中央に設けられ、前記貯蔵室の底面は、前記排水口に向かって下降する傾斜状とされた構成とすることができる。
【0011】
例えば、排水口を貯蔵室の底面の前方側に設けた場合には、貯蔵室の前方の開口を塞ぐ扉との隙間、特にカートを挿入するための開口部から、水が漏れてしまう虞がある。一方で、排水口にはキャップやストレーナ等が取り付けられる場合があるが、庫内底面における後方側(奥側)に設けた場合には、それらの取り付けや取り外しが行いにくくなる。この構成の貯蔵庫によれば、キャップやストレーナの取り付けや取り外しの作業性の低下を抑えつつ、排水口へ向かう流れを作って排水性を高めることができる。なお、貯蔵室内に冷却ユニットが配された場合には、その冷却ユニットをも洗浄すべく循環ファンを作動させた状態で貯蔵室内の洗浄を行うことが望ましい。このような場合には、循環ファンが作動していることで、貯蔵室の底面に溜まった水にも流れが生じることになるが、この構成の貯蔵庫によれば、排水口に向かう傾斜状の底面によって、循環ファンによる水の流れの影響に関係なく、排水口に向かって効率的に水を流すことができる。したがって、この構成の貯蔵庫は、貯蔵室内に冷却ユニットを備えた貯蔵庫に、特に有効である。
【0012】
また、上記構成において、当該貯蔵庫は、前記貯蔵室の底面を形成する底面パネルを備え、前記底面パネルは、前記排水口が形成された平面状の平面パネル部材と、前記平面パネル部材を囲んで前記平面パネル部材に向かって下降する傾斜状に形成された傾斜パネル部材と、からなり、前記平面パネル部材の外周縁の少なくとも一部から下方に突出するフランジが形成されるとともに、前記傾斜パネル部材の内周縁の少なくとも一部から下方に突出するフランジが形成され、前記平面パネル部材のフランジと前記傾斜パネル部材のフランジとが接合されて構成されたものとすることができる。
【0013】
この構成の貯蔵庫は、貯蔵室の底面を形成する底面パネルが2つの部材からなり、それら2つの部材の境界部分が、各々に形成されたフランジを溶接等により接合させた構成とされており、比較的強度の高い底面パネルとなる。また、例えば、この構成の貯蔵庫が、冷却あるいは保温した状態で貯蔵物を貯蔵するものである場合、貯蔵庫本体は断熱材を用いて形成され、底面パネルの下面側にも断熱材が配される。そのような構成の貯蔵庫において、貯蔵室の底面を傾斜状とすると、排水口付近は、周囲に比較して断熱材が薄い箇所となり、強度的に周囲より弱い箇所となる。しかしながら、この構成の貯蔵庫によれば、排水口が形成された平面パネル部材の周囲に接合されたフランジが存在するため、断熱材が薄いことによる強度低下を担保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯蔵庫本体内にカートを収容可能な貯蔵庫において、洗浄装置の排水を庫外へ適切に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る急速冷却庫を示す正面図
図2】急速冷却庫を示す斜視図
図3】カート及び扉を省略した状態の冷却庫本体を示す斜視図
図4】カート配置空間を開放した状態の急速冷却庫を示す正面図(カート収容状態)
図5】扉12,17Aが開いた状態の急速冷却庫を示す斜視図(カート未収容状態)
図6】収容室内を正面側から視た図(冷却ユニットの内部構造を示す断面図)
図7】急速冷却庫を排気パイプに対応する箇所で切断した断面図
図8】収容室内及び収容空間内を正面側から視た図(カバー37Bを開けた状態)
図9】収容空間内を左側から視た図
図10】収容室内における天井壁部付近を示す図
図11】噴射部45を示す斜視図
図12】ケース本体の上部付近を拡大した図
図13】ケース本体の下部付近を拡大した図
図14】洗剤トレイを示す斜視図
図15】洗剤トレイを示す斜視図(トレイ本体が回転した状態)
図16】底面パネルの斜視図
図17】底面パネルの断面図(図16におけるA-A断面)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図1から図17によって説明する。本実施形態では、貯蔵庫として、カートインタイプの急速冷却庫10(ブラストチラー)を例示する。急速冷却庫10は、図1及び図2に示すように、縦長の冷却庫本体11(貯蔵庫本体)と、扉12と、扉17Aと、カート13と、を備える。冷却庫本体11は断熱箱体であり、図3に示すように、前方に開口された収容室(貯蔵室)15を有する箱状をなしている。冷却庫本体11の下面には、4つの脚部14が設けられている。冷却庫本体11は、4つの脚部14を介して、床面14A上に設置されており、冷却庫本体11の下面11Aと床面14Aとの間には隙間が設けられている。なお、以下の説明では、扉12側を前側、扉12とは反対側を後側として説明する。また、正面視(急速冷却庫10を前側から視た状態、図1の状態)における左右方向が急速冷却庫10の左右方向である。
【0017】
カート13(トロリー)は、図3に示すように、台車部19と、カート本体部20と、カート本体部20と台車部19とを接続する接続部21と、を備える。台車部19は、4つのキャスタ19A及び方形枠状の枠部材19Bを備え、床面14A上を移動可能な構成となっている。接続部21は、台車部19(より詳しくは枠部材19B)の前端部から上方に立ち上がる一対の柱体22,22と、一対の柱体22,22の後面に設けられた板部23と、を備える。カート本体部20は、板部23の後面から後方に延びる基盤24と、基盤24上に設けられた縦長の門型をなす前後一対のフレーム25,25と、一対のフレーム25,25間に亘って複数段に設けられたトレイ受け26と、を備える。トレイ受け26には、図4に示すように、トレイ26Aが載置され、そのトレイ26Aには被冷却物である食品が載置される。つまり、カート本体部20が、台車部19に支持されて貯蔵物である食品を保持可能な貯蔵物保持部として機能するものとなっている。
【0018】
基盤24は、図3に示すように、台車部19の上方に配されている。そして、枠部材19Bと基盤24との間には、冷却庫本体11の底壁部15F(収容室の底面を構成する底壁部)を後方から挿入することが可能な隙間S1が設けられている。カート本体部20は、収容室15(より詳しくは収容室15のうちカート配置空間15A)に対してその前方から挿入ないし抜出し可能に収容されている。つまり、カート13を冷却庫本体11の前方から後方に動かすことで、カート本体部20をカート配置空間15Aに対して前方から挿入することでカート配置空間15Aに収容することができる。また、カート本体部20がカート配置空間15Aに収容された状態でカート13を前方に動かすことで、カート配置空間15Aからカート本体部20を取り出す(抜き出す)ことができる。なお、カート本体部20を収容室15に収容した状態(カート収容状態)では、台車部19の枠部材19Bは、底壁部15Fの下方に配置されている。
【0019】
収容室15(庫内)は、図3に示すように、主にカート本体部20(ひいては被冷却物である食品)が配されるカート配置空間15Aと、冷却器35(図6参照)を含む冷却ユニット16が主に配される冷却ユニット配置空間15B(冷却器配置空間)と、を有している。カート配置空間15Aは、収容室15の右側の領域であり、冷却ユニット配置空間15Bは、収容室15の左側の領域である。つまり、カート配置空間15Aと冷却ユニット配置空間15Bとは急速冷却庫10の左右方向(貯蔵庫の左右方向)に並んでおり、カート配置空間15A及び冷却ユニット配置空間15Bはそれぞれ前方に開口されている。
【0020】
扉12は、収容室15のうちカート配置空間15Aを開閉可能な構成とされる。扉12は、図1に示すように、右側の側端部において、冷却庫本体11に対してヒンジ12Aを介して回動可能に取り付けられている。扉17A(冷却器側扉)は、左側の側端部において、冷却庫本体11に対して回動可能に取り付けられている。扉17Aは、収容室15のうち冷却ユニット配置空間15Bを開閉可能な構成とされる。扉12及び扉17Aは、閉状態では、左右方向に並んでいる。また、扉12及び扉17Aは、ロック機構52によって閉状態で固定される構成となっている。ロック機構52は、レバー53を備え、レバー53を操作することで、ロック機構52による扉12及び扉17Aの固定を解除することが可能となっている。
【0021】
冷却ユニット配置空間15Bには、図6に示すように、冷却ユニット16が配置されている。冷却ユニット16は、2基の冷却器35(蒸発器)と、3基の庫内ファン36と、冷却器35及び庫内ファン36が収容されたケース37と、を備える。冷却器35は、収容室15を冷却するためのもので、庫内ファン36に対して左側に配されている。冷却器35は、冷媒配管を介して、外部に設けられた冷凍装置(圧縮機、凝縮器及び凝縮器ファン、図示せず)の圧縮機及び凝縮器と循環接続されることで冷凍サイクルを構成するものとされる。なお、このような冷凍装置は、急速冷却庫10の内部に設けられていてもよい。また、冷却器35及び庫内ファン36の個数は適宜変更可能である。
【0022】
ケース37は、図5に示すように、右側に開口された開口部37Dを有する箱状をなすケース本体37Aと、ケース本体37Aに対して回動可能に取り付けられたカバー37Bと、を備える。カバー37Bは、後側の端部において、ケース本体37Aに対して回動可能に取り付けられており、開口部37Dを開閉可能な構成となっている。カバー37Bを開けた状態(図5及び図8の状態)では、冷却器35が開口部37Dを通じて右側に露出する構成となっている。なお、庫内ファン36は、カバー37Bに対して取り付けられている。
【0023】
収容室15を冷却する冷却運転において、冷凍装置と庫内ファン36とが運転されると、収容室15の空気(主にカート配置空間15Aの空気)がケース37内に吸引され、冷却器35を通過する際に冷やされることで冷気となり、ケース37から左側に吹き出された冷気が、収容室15を構成する左側の側壁部15D(図6参照)に当たった後、ケース37を回り込むようにしてカート配置空間15Aに送り込まれる。このような空気の循環が連続的に行われることで収容室15(ひいてはトレイ26Aに載置された被冷却物)が冷却される。また、冷却器35の右側面には、ヒータ39が設けられている。ヒータ39は、庫内を乾燥させる乾燥運転(後述)を行う際に用いられる。このような乾燥運転は、例えば収容室15内を洗浄するための洗浄運転(後述)を行った後に実行される。
【0024】
急速冷却庫10は、収容室15内を洗浄するための洗浄装置40を備える。洗浄装置40は、タンク41(図9参照)と、洗剤トレイ42(図14参照)と、収容室15に設けられ、水を噴射することが可能な噴射部45(図10参照)と、ケース37内に設けられ、冷却器35及び庫内ファン36に水を噴射することが可能な冷却ユニット側噴射部46(図5参照)と、噴射部45及び冷却ユニット側噴射部46の各々にタンク41内の水を供給するポンプ43(図8参照)と、を備える。
【0025】
冷却庫本体11は、収容室15の底面を構成する底壁部15Fを備えており、タンク41は、図9に示すように、底壁部15Fの下面11Aに設けられている。底壁部15Fには、図3に示すように、排水口15Gが貫通形成されており、タンク41は排水口15Gと接続されている。つまり、タンク41の内部空間と排水口15Gとは連通されており、底壁部15F上の水は排水口15Gを通じてタンク41に流れる構成となっている。
【0026】
また、図8に示すように、天井壁部15Eの上方には、給水バルブ49が設けられている。給水バルブ49は、水道管等の水源と接続されている。また、給水バルブ49は、天井壁部15Eに貫通形成された給水用の孔(図示せず)と接続されている。これにより、給水バルブ49を開くことで、給水用の孔から収容室15内に水源からの水が供給され、収容室15内に供給された水は、底壁部15Fの排水口15Gを通じて、タンク41に溜められる。
【0027】
急速冷却庫10は、収容室15の左側に配された収容空間18を有しており、ポンプ43は、収容空間18における下部に設けられている。ポンプ43とタンク41は、図9に示すように、配管47を介して接続されており、ポンプ43と噴射部45は配管48を介して接続されている。また、ポンプ43は、図示しない配管を介して冷却ユニット側噴射部46とも接続されている。なお、洗浄装置40を構成する各機器は、例えば、収容空間18に設けられたコントロールボックス40A内に収容された制御部によって制御される。
【0028】
冷却庫本体11は、図10に示すように、収容室15を構成する天井壁部15Eを備え、噴射部45は、天井壁部15Eの下面15K(収容室の天井面)に設けられている。噴射部45は、回転しながら洗浄水を噴射可能な金属製のパドルであって、図10及び図11に示すように、円筒部45Aと、円筒部45Aから突出するノズル管45Bと、円筒部45Aからノズル管45Bとは反対側に突出するノズル管45Cと、ノズル管45Cの中間部から下方に突出するノズル管45Dと、を備える。円筒部45Aは、天井壁部15Eから下方に突出する円筒状の突起部45E及び軸受け45Fを介して天井壁部15Eに対して回転可能に取り付けられている。これにより、噴射部45は、突起部45E(上下方向に延びる軸)を回転中心として回転可能となっている。
【0029】
突起部45E、円筒部45A、ノズル管45B,45C,45Dの各内部空間は連通されている。ノズル管45B,45C,45Dの先端には、図11に示すように、水を扇状に噴射可能なノズル45Gが設けられている。これにより、ポンプ43から供給されたタンク41の水は、突起部45Eの内部を通って各ノズル管45B,45C,45Dのノズル45Gから噴射される。ノズル管45Cの先端は、平面視(上方から視た状態)において基端に対して折り曲げられた形状をなしている。これにより、噴射部45は、ノズル管45Cのノズル45Gからの水の噴射を推進力として、ノズル管45Cの折り曲げ方向と逆方向に回転する。このため、噴射部45は上下方向に延びる軸(突起部45E)を中心として回転しながら、回転方向における全周(360度)に亘って水を噴射することが可能となっている。つまり、噴射部45は少なくとも前方に向けて水を噴射することが可能な構成となっている。
【0030】
冷却ユニット側噴射部46は、冷却器35を右側から覆う形で配されており、図5図12図13に示すように、蛇行状をなす形で延びるパイプ46A(噴射部本体)と、複数のノズル46Dと、ノズル46Fと、を備える。ノズル46Dは、図12に示すように、例えば、パイプ46Aが有する4つの前後方向に延びる延設部のうち、最上段の延設部46Bに設けられており、延設部46Bの延設方向に沿って並ぶ形で複数(例えば4つ、図12では2つのみ図示)設けられている。
【0031】
ノズル46Fは、図13に示すように、パイプ46Aが有する4つの前後方向に延びる延設部のうち最下段の延設部46Eに設けられている。ノズル46Dは、冷却器35に向けて水を噴射することが可能となっており、ノズル46Fは、後述する洗剤トレイ42のトレイ本体42Bに向けて水を噴射することが可能となっている。また、パイプ46Aの右側の表面には、図12及び図13に示すように、庫内ファン36に向けて水を噴射することが可能な噴射孔46Gが複数形成されている。
【0032】
洗剤トレイ42は、図14に示すように、カバー37Bの表面37B1(右側を向く面)に取り付けられた枠部材42Aと、枠部材42Aの内部に配されたトレイ本体42Bと、を備える。トレイ本体42Bは、上方に開口された箱状をなしており、作業者はトレイ本体42Bの内部に洗剤を入れることができる。トレイ本体42Bは、枠部材42Aに対して軸部42Cを介して回転可能に取り付けられている。トレイ本体42Bはカバー37Bの表面37B1と対向する対向壁部42Dを有しており、対向壁部42Dは、カバー37Bに形成された貫通孔37Cを覆う構成となっている。上述したノズル46Fは、貫通孔37Cと対向配置されている。
【0033】
これにより、図15に示すように、ノズル46Fから噴射された水(矢線L1)が貫通孔37Cを通じて対向壁部42Dに当たることで、トレイ本体42Bが軸部42Cを回転中心として回転し、トレイ本体42B内に入っている洗剤が底壁部15F上に落下する構成となっている。なお、底壁部15F上に落下した洗剤は、底壁部15F上の水(噴射部45や冷却ユニット側噴射部46から噴射された水)と混ざり、排水口15Gを通じてタンク41に溜まる。これにより、ポンプ43を作動させることで、洗剤が混入した水をタンク41と噴射部45(又は冷却ユニット側噴射部46)との間で循環させることができる。
【0034】
また、図8及び図9に示すように、収容空間18には、吸気用のファン50と、吸気用のバルブ51が設けられている。ファン50は、配管54によって、タンク41と接続されている。バルブ51を開いた状態で、ファン50を動作させると収容空間18の空気がタンク41及び排水口15Gを経由して収容室15に送られる。なお、収容空間18は、図2に示すように、扉17Aの左側に配された前壁部18Aと、前壁部18Aの左側端部から後方に延びる側壁部18Bによって囲まれた空間であり、上方及び後方に開口されている。このため、収容空間18内のファン50を動作させることで、外気(急速冷却庫10の外部の空気)を収容室15に送る(吸気する)ことができる。
【0035】
また、図7に示すように、冷却庫本体11には、収容室15内の空気を庫外(冷却庫本体11の外部)に排出するための排気パイプ55が設けられている。排気パイプ55は、ケース37の内部から上方に延び、天井壁部15Eを貫通する形で設けられている。これにより、排気パイプ55の上端は、天井壁部15Eの上方に配されている。排気パイプ55にはバルブ55Aが設けられ、バルブ55Aを開閉することで、排気パイプ55による排気路を開閉することができる。また、排気パイプ55は、庫内ファン36の下流側(左側)に配されている。
【0036】
乾燥運転では、バルブ51及びバルブ55Aを開いた状態でファン50、庫内ファン36及びヒータ39を動作させる。これにより、ファン50が動作することで、タンク41及び排水口15Gを経由して外気が収容室15に送られる。また、庫内ファン36が動作することでケース37内に吸い込まれた空気は、ヒータ39によって加熱されることで、温風となり、収容室15内に吹き出されることで、収容室15内の温度が上昇し、収容室15内の水分が徐々に水蒸気に変化する。また、収容室15内の水蒸気及び空気は、排気パイプ55から排気される。これにより、収容室15の内部を乾燥させることができる。また、乾燥運転では、外気がタンク41及び排水口15Gを経由して収容室15に送られることから、タンク41内を乾燥させることができる。なお、洗浄運転や乾燥運転は、カート本体部20が収容室15に収容されていない状態(カート未収容状態)で実行される。
【0037】
本実施形態の急速冷却庫10は、底壁部15Fの構造に特徴を有するものであるため、以下に、底壁部15Fについて、図16および図17をも参照しつつ詳しく説明する。なお、本急速冷却庫10においては、図6に示すように、冷却ユニット16が、収容室15内に配されているものの、側壁部15Dに固定されたブラケット15D1と天井壁部15Eに固定されたブラケット15E1とを用いて保持されて、底壁部15Fから浮いた状態、つまり、収容室15の底面との間に間隔を開けた状態で配されている。
【0038】
そして、底壁部15Fは、その上面(収容室15の底面)が、図16に示す底面パネル60によって覆われている。なお、底壁部15Fは、図17に示すように、その底面パネル60と、底壁部15Fの下面側(庫外側)のパネルである庫外側パネル61と、それら底面パネル60と庫外側パネル61との間に配された硬質ポリウレタンなどの発泡樹脂(ウレタンフォーム)からなる断熱材62と、を主体として構成される。
【0039】
底面パネル60は、図16に示すように、第1パネル部材70と第2パネル部材71とが接合されたものとなっている。第1パネル部材70は、概して長方形で平面状の部材とされている。ただし、長辺方向の一端部(短辺の一方側の部分)70Aは、底面パネル60の外周縁の一部を形成するものとなっている。また、第1パネル部材70には、円形状の開口70Bが成形されており、排水口15Gを形成するものとなっている。また、第1パネル部材70には、底面パネル60の外周縁の一部を形成する長辺方向の一端部70Aを除く外周縁から、下方に突出するフランジ70Cが形成されている。
【0040】
一方、第2パネル部材71は、底面パネル60の大部分を占める部材であり、第1パネル部材70が嵌り合う長方形状の切欠71Aが形成されて、第1パネル部材70の三方を囲む概してコの字状の部材となっている。また、第2パネル部材71は、第1パネル部材70に向かって下降する傾斜状に形成されている。詳しく言えば、第2パネル部材71は、収容室15の右側の端部(外周縁部)から左側に向かうにつれて下降する第1傾斜面部71Bと、収容室15の前方側の端部から後方(前後方向における中央)に向かうにつれて下降する第2傾斜面部71Cと、収容室15の後方側の端部から前方(前後方向における中央)に向かうにつれて下降する第3傾斜面部71Dと、を有するものとなっている。また、第2パネル部材71は、長方形状の切欠71Aの内周縁(3辺すべて)から、下方に突出するフランジ71Eが形成されている。
【0041】
そして、平面パネル部材としての第1パネル部材70と、傾斜パネル部材としての第2パネル部材71とは、フランジ70Cとフランジ71Eとが溶接によって接合されることで、底面パネル60が形成されている。このような構成から底面パネル60は、比較的強度の高いものとなっている。さらに言えば、先に説明したように、底面パネル60の下側には断熱材62が配されているため、第1パネル部材70の下側は、その周囲より、つまり、第2パネル部材71の下側より、断熱材が薄く強度的に弱くなるが、断熱材が薄くなる部分に第1パネル部材70と第2パネル部材71との接合箇所が存在するため、その強度低下を補うことができる。また、底面パネル60を2部材に分割したことで、第1パネル部材70および第2パネル部材71を、ブレーキ曲げ加工のみで成型することができ、高価な金型等を必要とせず、安価に製造することが可能である。
【0042】
上述のように形成された底面パネル60を収容室15内に組み付けると、第1パネル部材70は、詳しく言えば、排水口15Gを形成する開口70Bは、図3および図5に示すように、冷却ユニット16の下側に位置することになる。つまり、排水口15Gは、カート収容状態において、そのカート13と上下方向に重ならないようになっているのである。したがって、本急速冷却庫10は、カート13の出し入れに支障をきたさないようになっている。詳しく言えば、排水口15Gから繋がる排水路(本急速冷却庫10においてはタンク41への流路)は、排水口15Gの下側に延び出すことになるが、排水口15Gがカート13からずれているため、カート13に干渉しないように排水路を確保すること、つまり、タンク41を容易に設けることができる。換言すれば、タンク41に、カート13の台車部19が接触するような事態を確実に回避することができる。
【0043】
また、図16に示したように、排水口15G(第1パネル部材70の開口70B)は、前後方向における中央に配されている。例えば、排水口15Gを収容室15の底面の前方側に設けた場合には、収容室15の前方の開口を塞ぐ扉12,17Aとの隙間、特にカート13を挿入するための開口部33(図3,5,8参照)から、水が漏れてしまう虞がある。一方で、排水口15Gにはストレーナが取り付けられるが、収容室15の底面における後方側(奥側)に設けた場合には、その取り付けや取り外しが行いにくくなる。本急速冷却庫10によれば、ストレーナの取り付けや取り外しの作業性の低下を抑えつつ、図16に矢印で示すような排水口15Gへ向かう流れを、第2パネル部材71の傾斜面部71B,71C,71Dによって作ることができ、排水性を高めることができる。
【0044】
なお、本急速冷却庫10においては、冷却ユニット16も洗浄すべく、庫内ファン36を作動させた状態で収容室15内の洗浄が行われる。そのため、庫内ファン36が作動していることで、収容室15内には、先に説明したように、収容室15の空気(主にカート配置空間15Aの空気)がケース37内に吸引される空気の流れが生じる。そして、収容室15の底面、つまり、底面パネル60上に溜まった水にも、その空気の流れの影響を受けて流れが生じることになるが、庫内ファン36が排水口15Gの上方に位置しているため、庫内ファン36に吸引される空気によって、図16に矢印で示したような排水口15Gに向かう水の流れが生じることになる。つまり、本急速冷却庫10は、排水口15Gの上方に庫内ファン36が配されていることで、その庫内ファン36に起因する水の流れをも利用して、排水口15Gに向かって効率的に水を流すことができるようになっている。
【0045】
上記実施形態では、排水口15Gが冷却ユニット16の下側に設けられていたが、それに限定されず、排水口15Gは、カート13と上下方向において重ならない位置に設けることができる。また、底面パネル60の分割形状も、排水口15Gの位置に応じて、適宜変更可能である。さらに、上記実施形態では、貯蔵庫として急速冷却庫を例示したが、これに限定されない。本発明は、カートを収容可能な貯蔵庫に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…急速冷却庫〔貯蔵庫〕、11…冷却庫本体〔貯蔵庫本体〕、12…扉、13…カート、14…脚部、14A…床面、15…収容室〔貯蔵室〕、15A…カート配置空間、15B…冷却ユニット配置空間、 15F…底壁部、15G…排水口、16…冷却ユニット、19…台車部、20…カート本体部〔貯蔵物保持部〕、21…接続部、26…トレイ受け、26A…トレイ、33…開口部、35…冷却器、36…庫内ファン、37…ケース、40…洗浄装置、45…噴射部、46…冷却ユニット側噴射部、60…底面パネル、62…断熱材、70…第1パネル部材〔平面パネル部材〕、70B…開口〔排水口〕、70C…フランジ、71…第2パネル部材〔傾斜パネル部材〕、71B…第1傾斜面部、71C…第2傾斜面部、71D…第3傾斜面部、71E…フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
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図17