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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240813BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240813BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240813BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240813BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B15/00 V
G03B30/00
H04N23/57
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019232778
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101218
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】平間 浩之
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-222156(JP,A)
【文献】特開2014-026263(JP,A)
【文献】特開平11-344657(JP,A)
【文献】特開2002-187177(JP,A)
【文献】特開2014-151449(JP,A)
【文献】特開2019-117312(JP,A)
【文献】特開2007-052096(JP,A)
【文献】特開2009-048024(JP,A)
【文献】特開2017-053943(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102103242(CN,A)
【文献】特開2019-179075(JP,A)
【文献】特開2019-179076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 15/00
G03B 30/00
H04N 23/55
H04N 23/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを収容保持するための内側収容空間を形成する筒状の鏡筒と、前記鏡筒の前記内側収容空間内に組み込まれ、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群とを備えるレンズユニットであって、
前記鏡筒は、前記レンズを嵌合状態で保持するレンズ嵌合部位を内面に有し、
前記レンズ嵌合部位と嵌合する前記レンズは、前記レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が光軸に対して所定の角度を成して傾斜するテーパ面を成すテーパ嵌合レンズを含み、
前記テーパ嵌合レンズは、その嵌合状態で、前記鏡筒に対するその姿勢を自在に変えることができるように、前記テーパ面の物体側端縁が前記鏡筒の前記レンズ嵌合部位と接触することを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記テーパ嵌合レンズと前記鏡筒との間には、前記テーパ嵌合レンズを前記鏡筒に対して接着固定するための接着剤が充填される段差状の接着剤充填部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記鏡筒の内面の前記レンズ嵌合部位が光軸に対して所定の第1の角度を成して傾斜し、前記テーパ嵌合レンズの前記テーパ面が光軸に対して所定の第2の角度を成して傾斜し、前記第2の角度が前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズ群を構成する前記複数のレンズは、物体側から像側へと光軸に沿って配列され、前記テーパ嵌合レンズは、物体側から2番目に配列されるレンズであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の前記テーパ嵌合レンズを金型によって樹脂から形成する製造方法であって、
前記金型は、固定側金型部と可動側金型部とを有し、
前記固定側金型部と前記可動側金型部との分割面が前記テーパ面と交差せず且つ前記テーパ面の前記物体側端縁を通過しないように該物体側端縁が位置されるべく前記テーパ面を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項6】
レンズを収容保持するための内側収容空間を形成する筒状の鏡筒と、前記鏡筒の前記内側収容空間内に組み込まれ、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群とを備えるレンズユニットであって、
前記鏡筒は、前記レンズを嵌合状態で保持するレンズ嵌合部位を内面に有し、
前記レンズ嵌合部位と嵌合する前記レンズは、前記レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が前記光軸と直交する方向から見た断面において円弧状の曲面を成す曲面嵌合レンズを含み、
前記曲面嵌合レンズは、その嵌合状態で、前記鏡筒に対するその姿勢を自在に変えることができるように、前記円弧状の曲面の物体側端縁が前記鏡筒の前記レンズ嵌合部位と接触することを特徴とするレンズユニット。
【請求項7】
前記曲面嵌合レンズと前記鏡筒との間には、前記曲面嵌合レンズを前記鏡筒に対して接着固定するための接着剤が充填される段差状の接着剤充填部が設けられることを特徴とする請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記レンズ群を構成する前記複数のレンズは、物体側から像側へと光軸に沿って配列され、前記曲面嵌合レンズは、物体側から2番目に配列されるレンズであることを特徴とする請求項6または7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
請求項6に記載の前記曲面嵌合レンズを金型によって樹脂から形成する製造方法であって、
前記金型は、固定側金型部と可動側金型部とを有し、
前記固定側金型部と前記可動側金型部との分割面が前記円弧状の曲面と交差せず且つ前記円弧状の曲面の前記物体側端縁を通過しないように該物体側端縁が位置されるべく前記円弧状の曲面を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項1から4および請求項6から8のいずれか一項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットを通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えていることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンズユニットにおいては、一般に、図8に示されるように、レンズ群Lを構成する複数のレンズ101,102,103,104,105が、像側(図8中の下側)から物体側(図8中の上側)へ向けて順に積み上げられるように鏡筒123の内側収容空間S内に光軸Oに沿って組み込まれる。このようなレンズユニット、とりわけ、樹脂によって形成される鏡筒内に樹脂製のレンズを組み込んで成るレンズユニットでは、振動や衝撃等によってレンズがずれて解像性能劣化や光軸ずれが生じないように、レンズ群Lを構成するレンズが、鏡筒123の内面形状を利用して直接に鏡筒123の内面に所定の直径差を伴って軽圧入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鏡筒とレンズとのこのような軽圧入を伴う嵌合は、一般にある程度の嵌合幅をもってなされる。そのため、一例として、図8に示されるレンズ(ここでは、物体側から2番目に配列されるレンズ)102は、光軸O方向に沿って直線状に延びる鏡筒123の内面のレンズ嵌合部位123aに対して断面において線接触(物体側から像側にかけてある程度の長さを伴う線接触)状態で嵌合する直線領域102aをその外周側面に有する。したがって、鏡筒123内に組み付けられるレンズ102の姿勢は、鏡筒123の内面のレンズ嵌合部位123aの形状によって規定されることになる。
【0006】
しかしながら、レンズの姿勢がこのように鏡筒の内面のレンズ嵌合部位の形状によって規定されてしまうと、鏡筒のレンズ嵌合部位が光軸方向に沿って直線状に延在することなく傾いてしまっているような場合には、鏡筒に組み付けられるレンズの姿勢もそれに倣うように傾いてしまい、所望の光学性能が得られなくなる虞がある。
【0007】
そのような鏡筒のレンズ嵌合部位の傾きは、特に鏡筒の金型成形時に生じ得る。具体的には、例えば、金型内で温度差が生じて鏡筒成形樹脂の収縮量が部分的に異なると、図9およびその要部拡大図である図10に示されるように、レンズ102が嵌合される鏡筒123の内面のレンズ嵌合部位123a(123aa,123ab)が光軸O方向に沿って直線状に延在することなく傾いてしまう(図9および図10には、光軸と平行な断面において、左側の一方のレンズ嵌合部位123aaが光軸Oに対して所定の角度θ1だけ傾くように延び、右側の他方のレンズ嵌合部位123abが光軸Oに対して異なる所定の角度θ2だけ傾くように延びる、レンズ嵌合部位123aの倒れ現象が描かれている)。そのため、ある程度の嵌合幅でレンズ嵌合部位123aa,123abと線接触嵌合されるレンズ102も必然的にこれと像側で隣接するレンズ103に対して傾いてしまう。すなわち、この場合には、レンズ102は、それをレンズ群Lの光軸Oと同心的な所定の姿勢に位置決めするためのレンズ103の位置決め基準面103aに当接することなく浮き上がるように傾いてしまい、その結果、レンズ群L全体として所望の光学性能が得られなくなる。特に、鏡筒が多角形の内面を有する場合には、その形成形態にも起因して、鏡筒の内面のレンズ嵌合部位が傾き易くなる。
【0008】
高性能化および低コスト化が要求される昨今にあっては、光学性能に対するレンズの傾きの影響が大きくなり、レンズ1枚に求められる感度が厳しくなってきていることから、鏡筒内面のレンズ嵌合部位の形状に依ることなくレンズの傾きを抑えることが早急の課題となっている。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、鏡筒内面のレンズ嵌合部位が光軸に対して傾いている場合であっても鏡筒内でレンズを傾かせることなく所望の位置に正確に位置決めできるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、レンズを収容保持するための内側収容空間を形成する筒状の鏡筒と、前記鏡筒の前記内側収容空間内に組み込まれ、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群とを備えるレンズユニットであって、
前記鏡筒は、前記レンズを嵌合状態で保持するレンズ嵌合部位を内面に有し、
前記レンズ嵌合部位と嵌合する前記レンズは、前記レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が光軸に対して所定の角度を成して傾斜するテーパ面を成すテーパ嵌合レンズを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の上記構成において、テーパ嵌合レンズは、鏡筒の内面のレンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が光軸に対して所定の角度を成して傾斜するテーパ面を成すため、テーパ嵌合レンズが嵌合する鏡筒のレンズ嵌合部位が光軸に対して傾いている場合であっても、鏡筒とテーパ嵌合レンズとの嵌合接触を断面において点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触にすることが可能となり、したがって、鏡筒に対するテーパ嵌合レンズの姿勢を自在に変えることができるようにして(テーパ嵌合レンズの姿勢変化による組み付け調整を可能にして)、テーパ嵌合レンズの姿勢を鏡筒のレンズ嵌合部位の形状によって規定されない(レンズ嵌合部位の傾きにテーパ嵌合レンズが倣わない)ようにすることができる。すなわち、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合するレンズとしてこのようなテーパ嵌合レンズを用いることにより、レンズ嵌合部位の形状(傾き)に依ることなくレンズの傾きを抑えてレンズを所望の位置に正確に位置決めできるようになる。
【0012】
また、本発明の上記構成において、テーパ嵌合レンズと鏡筒との間には、テーパ嵌合レンズを鏡筒に対して接着固定するための接着剤が充填される段差状の接着剤充填部が設けられることが好ましい。
【0013】
これは、テーパ嵌合レンズを鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合させる場合には、テーパ嵌合レンズの姿勢が不安定になり得る場合もあるからである。上記構成のように、テーパ嵌合レンズと鏡筒との間に設けられる段差状の接着剤充填部に充填される接着剤によってテーパ嵌合レンズを鏡筒に対して接着固定できるようにすれば、テーパ嵌合レンズの姿勢が不安定になる事態を回避でき、これにより、テーパ嵌合レンズをレンズ群Lの光軸Oと同心的な所定の姿勢に確実に位置決め保持することができる。つまり、テーパ面と接着剤充填部との協働により、レンズ嵌合部位の形状に依らず鏡筒内でレンズを傾かせることなく所望の位置に正確に位置決め固定できるようになる。
【0014】
また、上記構成において、段差状の接着剤充填部は、テーパ嵌合レンズと鏡筒との間に設けられていればよく、テーパ嵌合レンズ側のみに設けられてもよく、鏡筒側のみに設けられてもよく、あるいは、テーパ嵌合レンズおよび鏡筒の両方にわたって設けられていても構わない。
【0015】
なお、上記構成では、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合するテーパ嵌合レンズの外周側面の部位がテーパ面になっていればよく、テーパ嵌合レンズの外周側面の全体がテーパ面である必要はない(勿論、テーパ嵌合レンズの外周側面の全体がテーパ面であっても構わない)。また、上記構成では、レンズ群がテーパ嵌合レンズを含んでいればよく、また、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合する全てのレンズがテーパ嵌合レンズである必要もない。また、レンズ群を構成する全てのレンズが鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合している必要もない。また、上記構成において、鏡筒およびレンズの材質、レンズの組み込み形態、鏡筒の内面形状などは任意に設定できる。例えば、レンズを組み込んで支持する鏡筒の内面は、断面が円形であってもよく、あるいは、断面が多角形であってもよい。
【0016】
また、本発明の上記構成では、鏡筒の内面のレンズ嵌合部位が光軸に対して所定の第1の角度を成して傾斜し、テーパ嵌合レンズのテーパ面が光軸に対して所定の第2の角度を成して傾斜し、第2の角度が第1の角度よりも大きいことが好ましい。これによれば、光軸に対して傾いている鏡筒のレンズ嵌合部位に対してテーパ嵌合レンズを姿勢変化可能に(点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触の状態で)嵌合させることができ、したがって、テーパ嵌合レンズをレンズ嵌合部位の傾きに倣うように傾かせることなく所望の位置に正確に位置決め固定できる。なお、第2の角度は、第1の角度より大きければよく、例えば0.5°~2.0°に設定されることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、レンズ嵌合部位と嵌合するレンズは、レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が断面円弧状の曲面を成す曲面嵌合レンズを含んでいてもよい。このような曲面嵌合レンズによれば、レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が断面円弧状の曲面を成すため、曲面嵌合レンズが嵌合する鏡筒のレンズ嵌合部位が光軸に対して傾いている場合であっても、鏡筒と曲面嵌合レンズとの嵌合接触を断面において点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触にすることが可能となり、したがって、鏡筒に対する曲面嵌合レンズの姿勢を自在に変えることができるようにして(曲面嵌合レンズの姿勢変化による組み付け調整を可能にして)、曲面嵌合レンズの姿勢を鏡筒のレンズ嵌合部位の形状によって規定されない(レンズ嵌合部位の傾きに曲面嵌合レンズが倣わない)ようにすることができる。すなわち、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合するレンズとしてこのような曲面嵌合レンズを用いることにより、レンズ嵌合部位の形状(傾き)に依ることなくレンズの傾きを抑えてレンズを所望の位置に正確に位置決めできるようになる。
【0018】
また、この場合にも、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合する曲面嵌合レンズの外周側面の部位が断面円弧状の曲面になっていればよく、曲面嵌合レンズの外周側面の全体が断面円弧状の曲面である必要はない(勿論、曲面嵌合レンズの外周側面の全体が断面円弧状の曲面であっても構わない)。また、上記構成では、レンズ群が曲面嵌合レンズを含んでいればよく、また、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合する全てのレンズが曲面嵌合レンズである必要もない。例えば、一例として、テーパ嵌合レンズと曲面嵌合レンズとが混在して設けられていても構わない。
【0019】
また、このような曲面嵌合レンズを鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合させる場合にも、曲面嵌合レンズの姿勢が不安定になり得る場合もあるため、段差状の接着剤充填部が、前述したように鏡筒内でレンズを傾かせることなく所望の位置に正確に位置決め固定できるようにすることが好ましい。
【0020】
また、段差状の接着剤充填部は、曲面嵌合レンズと鏡筒との間に設けられていればよく、曲面嵌合レンズ側のみに設けられてもよく、鏡筒側のみに設けられてもよく、あるいは、曲面嵌合レンズおよび鏡筒の両方にわたって設けられていても構わない。
【0021】
また、本発明の上記構成において、テーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズは、テーパ面または断面円弧状の曲面で鏡筒のレンズ嵌合部位と(断面において)点接触することが好ましい。これによれば、テーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズの姿勢変化の自由度を高めることができ、テーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズをレンズ嵌合部位の傾きに倣うように傾かせることなく所望の位置に容易に位置決めすることができる。
【0022】
また、本発明の上記構成において、レンズ群を構成する複数のレンズは、物体側から像側へと光軸に沿って配列され、テーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズは、物体側から2番目に配列されるレンズであってもよい。これによれば、物体側から2番目に配列されるレンズが嵌合されるレンズ嵌合部位において生じ易い倒れ(光軸に対する傾き)に対応させてテーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズを配置でき、レンズ群全体の所望の光学特性を確実に確保できる。
【0023】
また、本発明の上記構成では、テーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズが樹脂によって金型から形成され、金型が固定側金型部と可動側金型部とを有し、固定側金型部と可動側金型部との分割面がテーパ面または断面円弧状の曲面と交差せず且つテーパ面の端縁または断面円弧状の曲面の端縁を通過しないことが好ましい。これによれば、固定側金型部と可動側金型部との分割面の存在に起因して生じ得る金型成形時のバリをテーパ面または断面円弧状の曲面にその端縁も含めて生じさせないようにすることができ、したがって、バリの存在に伴うレンズの傾きを防止できる(テーパ面または断面円弧状の曲面によりレンズの傾きを抑えているにもかかわらず、バリの存在によってレンズが傾くといった、利点が欠点により相殺されるという不都合を回避できる)。
【0024】
また、本発明に係るカメラモジュールは、前記レンズユニットを備えていることを特徴とする。
このような構成によれば、前述のレンズユニットの作用効果をカメラモジュールで得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、鏡筒のレンズ嵌合部位と嵌合するレンズは、レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が光軸に対して所定の角度を成して傾斜するテーパ面を成すテーパ嵌合レンズ、または、レンズ嵌合部位と嵌合するその外周側面の部位が断面円弧状の曲面を成す曲面嵌合レンズを含むため、レンズ嵌合部位が光軸に対して傾いている場合であっても、鏡筒とテーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズとの嵌合接触を断面において点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触にすることが可能となり、したがって、鏡筒に対するテーパ嵌合レンズの姿勢を自在に変えることができるようにして、テーパ嵌合レンズの姿勢を鏡筒のレンズ嵌合部位の形状によって規定されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図(光軸と平行な面に沿う縦断面図)である。
図2図1のX部(円形枠内)の要部拡大断面図である。
図3図1のY部(円形枠内)の要部拡大断面図である。
図4】(a)は、図1のレンズユニットのテーパ嵌合レンズを成形するための金型分割面の一般的な位置を明示するための要部拡大断面図、(b)は、テーパ面部位でのバリの発生を防止するべく改善された金型分割面の位置を明示するための要部拡大断面図である。
図5図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図(光軸と平行な面に沿う縦断面図)である。
図7図6のZ部(円形枠内)の要部拡大断面図である。
図8】従来のレンズユニットの一例の概略断面図(光軸と平行な縦断面図)である。
図9】鏡筒のレンズ嵌合部位に傾きを伴う従来のレンズユニットの一例の概略断面図(光軸と平行な縦断面図)である。
図10】傾きを伴う鏡筒のレンズ嵌合部位と物体側から2番目に配列されるレンズとの嵌合状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、図1図10においてレンズについてはハッチングを省略している。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製(金属製であっても構わない)の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の段付きの内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16および第5のレンズ17から成る5つのレンズと、絞り部材22とを備えている。絞り部材22は、本実施の形態では、第3のレンズ15と第4のレンズ16との間に介挿されており、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。なお、本実施の形態では、光軸Oと直交する断面において、鏡筒12の内面が多角形状を成し、レンズ13-17外周側面が円形状を成しているが、そうである必要はない。
【0029】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側に凸面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,15,16,17は樹脂レンズであるが、これに限定されない(例えば、第1のレンズ13が樹脂レンズであってもよい)。また、これらのレンズ13,14,15,16,17の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。なお、本実施の形態において、像側に位置される2つの第4および第5のレンズ16,17は接合レンズ(貼り合わせレンズ)40を構成している。
【0030】
また、本実施の形態において、最も物体側に位置される第1のレンズ13と鏡筒12との間にはシール部材としてのOリング26が介挿され、鏡筒12の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、第1のレンズ13の外周側面13cに、該レンズ13の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部13dが設けられ、この縮径部13dにOリング26が装着されて、第1のレンズ13の外周側面13cと鏡筒12の内周面との間でOリング26が径方向で圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部が封止された状態となっている。
【0031】
また、鏡筒12は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13をこのカシメ部23で鏡筒12の物体側端部に固定する。なお、第1のレンズ13の固定は、カシメ部23に限ることなく、鏡筒12にレンズ13,14,15,16,17を収容した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられる固定部によって行なわれてもよい。また、第1のレンズ13が鏡筒12と接着によって固定されてもよい。
【0032】
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第5のレンズ17よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17と絞り部材22とが光軸方向で保持固定されている。
【0033】
また、本実施の形態において、鏡筒12は、レンズを嵌合状態で保持するレンズ嵌合部位を内面12aに有する。具体的には、例えば本実施の形態において、鏡筒12は、第2のレンズ14の外周側面14aと嵌合する第1のレンズ嵌合部位12aaと、第3のレンズ15の外周側面15aと嵌合する第2のレンズ嵌合部位12abと、第5のレンズ17の外周側面17aと嵌合する第3のレンズ嵌合部位12acとを有する。なお、本実施の形態では、樹脂レンズにおいて鏡筒12と嵌合しないのは第4のレンズ15だけであり、第4のレンズ15が位置される鏡筒12の対応する内面12aの部位はレンズ嵌合部位となっていないが、第4のレンズ15が鏡筒と嵌合されてもよく、また、その他のレンズが鏡筒12と嵌合されていなくてもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、例えば鏡筒12の金型成形の形態に起因して、物体側から2番目に配列される第2のレンズ14と嵌合する鏡筒12の内面12aの第1のレンズ嵌合部位12aaが(光軸Oと平行な断面において)光軸Oに対して傾斜している。この場合、その傾斜度合いは周方向の各所で同じであるとは限らず、例えば、図1には、第1のレンズ嵌合部位12aaの左側の部位12aaaが光軸O(光軸Oと平行な軸O’)に対して所定の角度θ1だけ傾くように延び、第1のレンズ嵌合部位12aaの右側の部位12aabが光軸O(光軸Oと平行な軸O’)に対して異なる所定の角度θ2だけ傾くように延びる、第1のレンズ嵌合部位12aaの倒れ現象が描かれている。そして、本実施の形態において、この傾いた第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合する第2のレンズ14は、嵌合するその外周側面14aの部位が(光軸Oと平行な断面において)光軸Oに対して所定の角度を成して傾斜するテーパ面14bを成すテーパ嵌合レンズ14として形成されている。なお、本実施の形態では、第1のレンズ嵌合部位12aaのみが光軸Oに対して傾斜しているが、無論、その他のレンズ嵌合部位が光軸に対して傾いている場合には、それらの傾いているレンズ嵌合部位にもテーパ嵌合レンズが嵌め付けられる。
【0035】
具体的には、第2のレンズ14のテーパ面14bの傾斜角度は、第1のレンズ嵌合部位12aaと断面において点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触をするように、第1のレンズ嵌合部位12aaの対応する嵌合部分の傾斜角度に応じて設定される。なお、この線接触は、例えば圧入による樹脂レンズの変形により引き起こされる。
例えば、第1のレンズ嵌合部位12aaの傾斜角度が周方向の各所で異なる図1に示される本実施の形態では、光軸Oに対して所定の角度(第1の角度)θ1だけ傾くように延びる第1のレンズ嵌合部位12aaの右側の部位12aaaと嵌合する第2のレンズ(テーパ嵌合レンズ)14のテーパ面14baは、図2に拡大して示されるように、(光軸Oと平行な断面において)角度θ1よりも大きい傾斜角度(第2の角度)θ3を光軸O(光軸Oと平行な軸O’)に対して成している。この場合、光軸Oと平行な断面において、テーパ面14baの傾きは負であるのに対し、第1のレンズ嵌合部位12aaの右側の部位12aaaの傾きは正となっている。一方、光軸Oに対して所定の角度(第1の角度)θ2だけ傾くように延びる第1のレンズ嵌合部位12aaの左側の部位12aabと嵌合する第2のレンズ(テーパ嵌合レンズ)14のテーパ面14bbは、図3に拡大して示されるように、(光軸Oと平行な断面において)角度θ2よりも大きい傾斜角度(第2の角度)θ4を光軸O(光軸Oと平行な軸O’)に対して成している。この場合、光軸Oと平行な断面において、テーパ面14baの傾きおよび第1のレンズ嵌合部位12aaの右側の部位12aabの傾きは共に正となっている。また、一般に、第2のレンズ14のテーパ面14bの傾斜角度θ3,θ4は0.5°~2.0°に設定される。
【0036】
なお、本実施の形態では、テーパ嵌合レンズである第2のレンズ14の外周側面14aの全体がテーパ面14bとなっているが、第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合する第2のレンズ14の外周側面14aの部位がテーパ面14bになっていればよく、それ以外の外周側面14aの部位がテーパ面14bになっていなくてもよい。
【0037】
また、本実施の形態において、テーパ嵌合レンズである第2のレンズ14と鏡筒12との間には、第2のレンズ14を鏡筒12に対して接着固定するための接着剤(図示せず)が充填される段差状の接着剤充填部14cが設けられる。特に、本実施の形態において、段差状の接着剤充填部14cは、第2のレンズ14側のみに(具体的には、第2のレンズ14の物体側の表面上に)設けられているが、接着剤充填部14cは、第2のレンズ14と鏡筒12との間に設けられていればよく、鏡筒12側のみに設けられてもよく、あるいは、第2のレンズ14および鏡筒12の両方にわたって設けられていても構わない。
【0038】
また、本実施の形態において、樹脂により形成されるテーパ嵌合レンズである第2のレンズ14は、例えば図4に示されるような金型90を用いて成形される。この場合、金型90は固定側金型部90Aと可動側金型部90Bとを有するが、図4の(a)に示されるように、固定側金型部90Aと可動側金型部90Bとの分割面95が第2のレンズ14の例えばテーパ面14bの端縁19を通るように(接着剤充填部14cの底面14caの延長線上に)位置されると、離型時に分割面95に伴うバリが第2のレンズ14のテーパ面14bの端縁19に発生してしまう。そのため、本実施の形態では、図4の(b)に示されるように固定側金型部90Aと可動側金型部90Bとの分割面95が第2のレンズ14のテーパ面14bと交差せず且つテーパ面14bの端縁19を通過しないように設定され、それにより、分割面95の存在に起因して生じ得る金型成形時のバリをテーパ面14bにその端縁19も含めて生じさせないようにしている。
【0039】
また、図5は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ100が装着された図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0040】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0041】
上ケース301は、鏡筒12の外周面12bに鍔状に設けられるフランジ部25に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12bとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0042】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、外側に透明カバーを有し、その内部にCCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、テーパ嵌合レンズとしての第2のレンズ14は、鏡筒12の内面12aの第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合するその外周側面14aの部位が光軸Oに対して所定の角度を成して傾斜するテーパ面14b(14ba,14bb)を成すため、本実施の形態のように第1のレンズ嵌合部位12aaが光軸Oに対して傾いている場合であっても、鏡筒12と第2のレンズ14との嵌合接触を断面において点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触にすることが可能となり、したがって、鏡筒12に対する第2のレンズ14の姿勢を自在に変えることができるようにして(第2のレンズ14の姿勢変化による組み付け調整を可能にして)、第2のレンズ14の姿勢を鏡筒12の第1のレンズ嵌合部位12aaの形状によって規定されない(第1のレンズ嵌合部位12aaの傾きに第2のレンズ14が倣わない)ようにすることができる。すなわち、鏡筒12の第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合する第2のレンズ14としてこのようなテーパ嵌合レンズを用いることにより、第1のレンズ嵌合部位12aaの形状(傾き)に依ることなく第2のレンズ14の傾きを抑えて、すなわち、第2のレンズ14をレンズ群Lの光軸Oと同心的な所定の姿勢に位置決めするための第3のレンズ15の位置決め基準面15bから浮き上がらせることなくこの位置決め基準面15bに当接状態で安定的に着座させて、第2のレンズ14を所望の位置に正確に位置決め保持できるようになる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、接着剤が充填される段差状の接着剤充填部14cを第2のレンズ14と鏡筒12との間で第2のレンズ14の物体側表面上に設けて接着剤により第2のレンズ14を鏡筒12に対して接着固定できるようにしているため、テーパ面14bに起因して第2のレンズ14の姿勢が不安定になり得る場合であっても、第2のレンズ14をレンズ群Lの光軸Oと同心的な所定の姿勢に確実に位置決め保持することができる。つまり、本実施の形態では、テーパ面14b(14ba,14bb)と接着剤充填部14cとの協働により、第1のレンズ嵌合部位12aaの形状に依らず鏡筒12内で第2のレンズ14を傾かせることなく所望の位置に正確に位置決め固定できる。
【0045】
図6および図7は本発明の第2の実施の形態に係るレンズユニット11Aを示している。本実施の形態のレンズユニット11Aでは、光軸Oに対して傾斜している鏡筒12の内面12aの第1のレンズ嵌合部位12aaに嵌合される第2のレンズ14として、第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合するその外周側面14aの部位が断面円弧状の曲面14dを成す曲面嵌合レンズが使用される。曲面嵌合レンズである第2のレンズ14と鏡筒12との間には、第2のレンズ14を鏡筒12に対して接着固定するための接着剤が充填される段差状の接着剤充填部14cが第2のレンズ14の物体側表面上に設けられる。また、図4の(b)に関連して第1の実施の形態で説明したように、本実施の形態においても、固定側金型部90Aと可動側金型部90Bとの分割面95が第2のレンズ14の断面円弧状の曲面14dと交差せず且つ断面円弧状の曲面14dの端縁19’を通過しないように設定され、それにより、分割面95の存在に起因して生じ得る金型成形時のバリを断面円弧状の曲面14dにその端縁19’も含めて生じさせないようにすることが好ましい。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、曲面嵌合レンズとしての第2のレンズ14は、鏡筒12の内面12aの第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合するその外周側面14aの部位が断面円弧状の曲面14dを成すため、本実施の形態のように第1のレンズ嵌合部位12aaが光軸Oに対して傾いている場合であっても、鏡筒12と第2のレンズ14との嵌合接触を点接触または点接触に近い極めて短い長さの線接触にすることが可能となり、したがって、鏡筒12に対する第2のレンズ14の姿勢を自在に変えることができるようにして、第2のレンズ14の姿勢を鏡筒12の第1のレンズ嵌合部位12aaの形状によって規定されないようにすることができる。すなわち、鏡筒12の第1のレンズ嵌合部位12aaと嵌合する第2のレンズ14としてこのような曲面嵌合レンズを用いることにより、第1のレンズ嵌合部位12aaの形状(傾き)に依ることなく第2のレンズ14の傾きを抑えて、すなわち、第2のレンズ14をレンズ群Lの光軸Oと同心的な所定の姿勢に位置決めするための第3のレンズ15の位置決め基準面15bから浮き上がらせることなくこの位置決め基準面15bに当接状態で安定的に着座させて、第2のレンズ14を所望の位置に正確に位置決め保持できるようになる。
なお、本実施の形態において、第2のレンズ14の側面の物体側に偏らせて断面円弧状の曲面14dを形成しているが、第2のレンズ14の側面の中央部が最も径方向において凸となるような断面円弧状の曲面14dを形成するものであってもよい。
【0047】
また、本実施の形態によれば、接着剤が充填される段差状の接着剤充填部14cを第2のレンズ14と鏡筒12との間で第2のレンズ14の物体側表面上に設けて接着剤により第2のレンズ14を鏡筒12に対して接着固定できるようにしているため、断面円弧状の曲面14dに起因して第2のレンズ14の姿勢が不安定になり得る場合であっても、第2のレンズ14をレンズ群Lの光軸Oと同心的な所定の姿勢に確実に位置決め保持することができる。
【0048】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズや鏡筒などの形状は、前述した実施の形態に限定されない。また、前述した実施の形態では、第2のレンズがテーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズであったが、鏡筒のレンズ嵌合部位に嵌合される他のレンズがテーパ嵌合レンズまたは曲面嵌合レンズであってもよい。また、前述の実施の形態では、レンズの側面が1つのテーパ面または円弧状に形成されている例について説明したが、本発明では、レンズの側面と鏡筒の内周面とが点で接触すればよいため、例えば、レンズの側面を逆テーパの2つのテーパ面によって形成し、これらのテーパ面の交点であるレンズの側面の略中心にある頂点でレンズが鏡筒と接触してもよい。
【符号の説明】
【0049】
11,11A レンズユニット
12 鏡筒
12a 内面
12aa,12ab,12ac レンズ嵌合部位
13,14,15,16,17 レンズ
14a,15a,17a 外周側面
14b,14ba,14bb テーパ面
14c 接着剤充填部
14d 断面円弧状の曲面
19,19’ 端縁
90 金型
90A 固定側金型部
90B 可動側金型部
95 分割面
300 カメラモジュール
O 光軸
S 内側収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10