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特許7536444球状疎水性シリカエアロゲル及びエステル油を含むW/O型エマルションの形態の化粧用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】球状疎水性シリカエアロゲル及びエステル油を含むW/O型エマルションの形態の化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240813BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240813BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/25
A61Q1/02
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019232886
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021102558
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】川本 真
(72)【発明者】
【氏名】大上 和則
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-177620(JP,A)
【文献】国際公開第2018/213903(WO,A1)
【文献】特表2015-509925(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093199(WO,A1)
【文献】特開2017-114773(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021202(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/161722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲル及び飽和の直鎖状C 5 ~C 15 脂肪族二酸と和の分枝状C 2 ~C 5 脂肪族一価アルコールとの液体エステルから選択される少なくとも1種のエステル油を含む、W/O型エマルションの形態の化粧用ファンデーション組成物であって、
前記球状疎水性シリカエアロゲルが、シリル化シリカの球状疎水性エアロゲルであって、BET法によって決定される比表面積が、200m 2 /g以上で800m 2 /g以下である球状疎水性エアロゲルである、化粧用ファンデーション組成物
【請求項2】
前記球状疎水性シリカエアロゲルの、画像解析法によって決定される平均真円度が、0.8以上1未満である、請求項1に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項3】
前記球状疎水性シリカエアロゲルの、湿潤点で測定される吸油能が、2ml/g以上12ml/g以下である、請求項1又は2に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項4】
前記球状疎水性シリカエアロゲルの、BJH法によって決定される細孔容積が、1ml/g以上10ml/g以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項5】
前記球状疎水性シリカエアロゲルの、BJH法によって決定されるピーク細孔半径が、5nm以上50nm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項6】
前記球状疎水性シリカエアロゲルの平均粒径が、0.5μm以上30μm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項7】
前記球状疎水性シリカエアロゲルが、前記組成物の総質量に対して、0.05質量%以上15質量%以下の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項8】
前記エステル油が、前記組成物の総質量に対して、0.05質量%以上15質量%以下の量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の化粧用ファンデーション組成物。
【請求項9】
W/O型エマルションの形態の化粧用ファンデーション組成物を調製する方法であって、
- 少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲル及び少なくとも1種のエステル油を含む油性成分を混合して油相を調製する工程であって、
前記少なくとも1種のエステル油が、飽和の直鎖状C 5 ~C15脂肪族二酸と和の分枝状C 2 ~C 5 脂肪族一価アルコールとの液体エステルから選択され、
前記球状疎水性シリカエアロゲルが、シリル化シリカの球状疎水性エアロゲルであって、BET法によって決定される比表面積が、200m 2 /g以上で800m 2 /g以下である球状疎水性エアロゲルである、工程と、
- 水相を調製する工程と、
- 前記油相を攪拌しながら、前記水相を前記油相に添加又は注入する工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
ラチン物質のための美容方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の化粧用ファンデーション組成物を前記ケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲル及び飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルから選択される少なくとも1種のエステル油を含む油中水型エマルションの形態の化粧用組成物であって、大量の球状疎水性シリカエアロゲルが組成物中に含まれる場合であっても長期間安定性である化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
長持ちする性質は、化粧用組成物、特にファンデーションにとって最も重要な要素の1つである。長持ちする性質を実現するために、MQ樹脂等の皮膜形成剤を特定の組み合わせのフィラーと併用する。しかしながら、化粧用組成物に使用されるほとんどのフィラーは、PMMA、ナイロン、及びポリウレタン等のマイクロプラスチックに分類される合成有機ポリマーである。マイクロプラスチックによって引き起こされる環境被害を誘発するリスクのため、合成有機ポリマーを、シリカ等の天然源に由来する、より環境に優しいフィラーに置き換える必要がある。
【0003】
したがって、現在では、Dow Corning社より販売されているVM-2270エアロゲル微粒子等のシリル化シリカエアロゲル粒子が化粧用組成物に使用されている。これらの粒子は、大量の皮脂を吸収することができ、ファンデーションに使用するのに適している。しかしながら、これらの粒子は決まった形状を持たない。この不規則な形状により、これらの粒子が大量に化粧用組成物に含まれると、質感が非常に悪くなる。
【0004】
球状シリル化シリカエアロゲル粒子は最近、開発され、これらの粒子は、高い吸油度を維持しながら、マット効果及び良好な滑らかさを化粧用組成物に付与することが示唆される(JP-A-2014-088307、JP-A-2014-218433、及びJP-A-2018-177620)。しかしながら、球状シリル化シリカエアロゲル粒子を大量に化粧用組成物に使用すると、組成物が不安定になるという欠点がある。
【0005】
これに応じて、長期間の安定性を実現することができる、シリル化シリカエアロゲル粒子等の球状エアロゲル粒子を含む化粧用組成物を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】JP-A-2014-088307
【文献】JP-A-2014-218433
【文献】JP-A-2018-177620
【非特許文献】
【0007】
【文献】Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、長期間安定である、球状疎水性シリカエアロゲルを含む化粧用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲル及び飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルから選択される少なくとも1種のエステル油を含む、W/O型エマルションの形態の化粧用組成物によって実現することができる。
【0010】
球状疎水性シリカエアロゲルは、シリル化シリカの球状疎水性エアロゲルであってもよい。
【0011】
球状疎水性シリカエアロゲルの、画像解析法によって決定される平均真円度は、0.8以上、好ましくは0.82以上、且つ1未満、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更により好ましくは0.97以下、更により好ましくは0.96以下、最も好ましくは0.95以下であってもよい。
【0012】
球状疎水性シリカエアロゲルの、湿潤点で測定される吸油能は、2ml/g以上、好ましくは3ml/g以上、より好ましくは4ml/g以上、最も好ましくは5ml/g以上、且つ12ml/g以下、好ましくは11ml/g以下、より好ましくは10ml/g以下、最も好ましくは8ml/g以下であってもよい。
【0013】
球状疎水性シリカゲルの、BET法によって決定される比表面積は、200m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上、且つ1200m2/g以下、好ましくは1000m2/g以下、より好ましくは800m2/g以下であってもよい。
【0014】
球状疎水性シリカゲルの、BJH法によって決定される細孔容積は、1ml/g以上、好ましくは2ml/g以上、より好ましくは3ml/g以上、且つ10ml/g以下、好ましくは8ml/g以下、より好ましくは7ml/g以下であってもよい。
【0015】
球状疎水性シリカゲルの、BJH法によって決定されるピーク細孔半径は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上、且つ50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下であってもよい。
【0016】
球状疎水性シリカゲルの平均粒径は、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、且つ30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下であってもよい。
【0017】
球状疎水性シリカエアロゲルは、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、最も好ましくは0.5質量%以上、且つ15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下の量で存在してもよい。
【0018】
エステル油は、飽和直鎖状C5~C15脂肪族二酸と飽和分枝状C2~C5脂肪族一価アルコールとの液体エステル、好ましくはセバシン酸ジイソプロピルであってもよい。
【0019】
エステル油は、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、且つ15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量で存在してもよい。
【0020】
本発明による化粧用組成物は、皮膚メーキャップ組成物、好ましくはファンデーションであってもよい。
【0021】
本発明はまた、
- 少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲル及び少なくとも1種のエステル油を含む油性成分を混合して油相を調製する工程であって、前記少なくとも1種のエステル油が、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルから選択される、工程と、
- 水相を調製する工程と、
- 油相を攪拌しながら、水相を油相に添加又は注入する工程と、
を含む、W/O型エマルションの形態の化粧用組成物を調製する方法にも関する。
【0022】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による化粧用組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
鋭意検討の結果、本発明者らは、球状疎水性シリカエアロゲル及び飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルから選択されるエステル油を組み合わせることによって、大量の球状疎水性シリカエアロゲルが化粧用組成物中に存在する場合であっても、W/O型エマルションの形態の組成物の安定性を改善することが可能であることを発見した。
【0024】
したがって、本発明の一態様は、少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲル及び飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルから選択される少なくとも1種のエステル油を含む、W/O型エマルションの形態の化粧用組成物である。
【0025】
以下で、本発明による組成物を、より詳細な方法で説明する。
【0026】
[球状疎水性シリカエアロゲル]
本発明による組成物は、少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲルを含む。
【0027】
エアロゲルは、多孔率が高い材料である。本明細書において、シリカエアロゲルは、一般的にシリカの固体網状構造を維持しながら湿潤シリカゲルを乾燥することによって湿潤シリカゲルに含まれる媒体を空気と置き換えて得られる多孔質構造を有する固体シリカを指す。多孔率は、材料の見掛け体積に含まれる空気の量を体積百分率で表したものである。本発明の球状疎水性シリカエアロゲルは、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の多孔率を有してもよい。
【0028】
本発明の疎水性シリカエアロゲルは、各粒子の形状が球状であることを特徴とする。この球状の形状により、疎水性シリカエアロゲルは、良好な滑らかさを持つ化粧用組成物を提供することができる。疎水性シリカエアロゲルの球面度は、平均真円度によって決定することができる。
【0029】
本発明の球状疎水性シリカエアロゲルは、0.8以上、好ましくは0.82以上の平均真円度を有してもよい。球状疎水性シリカエアロゲルは、1未満、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更により好ましくは0.97以下、更により好ましくは0.96以下、最も好ましくは0.95以下の平均真円度を有していてもよい。
【0030】
「平均真円度」は、画像解析法によって決定することができる。特に、「平均真円度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した二次電子検出によって1000倍率で観察された2000個以上のエアロゲル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析によって得られる真円度の算術平均であってもよい。
【0031】
各エアロゲル粒子の「真円度」は、以下の式によって決定される値である:
C=4πS/L2
[式中、Cは真円度を表し、Sは画像中のエアロゲル粒子の面積(投影面積)を表し、Lは画像中のエアロゲル粒子の周囲(外周)の長さを表す]。平均真円度が1に近づくと、各粒子の形状はより球状になる。
【0032】
本発明の球状疎水性シリカエアロゲルにおいて、用語「疎水性」は、シリカエアロゲル粒子が水中で分散しにくいことを意味する。より具体的には、この用語は、1gのシリカエアロゲル粒子と100gのイオン交換水を瓶に入れ、瓶を10秒以上かき混ぜ又は攪拌し、瓶を静置した後、エアロゲル相と水相が完全に分離することを意味する。したがって、本発明の特定の一実施形態において、球状疎水性シリカエアロゲルは吸水性を示さない。
【0033】
本発明に従って使用され得る球状疎水性シリカエアロゲルは、好ましくは、シリル化されたシリカのタイプ(INCI名:シリル化シリカ)である。最も好ましくは、球状疎水性シリカエアロゲルは、JP-A-2014-088307、JP-A-2014-218433、又はJP-A-2018-177620に記載されているものであってもよい。
【0034】
疎水性は、疎水化剤を、シリカの表面上に存在する以下の式で表されるシラノール基:
≡Si-OH
(式中、記号「≡」は、Si原子の残りの3の原子価を表す)
と反応させ、それによってシラノール基を以下の式で表される基:
(≡Si-O-)(4-n)SiRn
(式中、nは1~3の整数であり、各Rは独立してヒドロカルビル基であり、2つ以上のRは互いに同一でも異なっていてもよく、ここでnは2以上である)
に変換することによって得ることができる。
【0035】
疎水化剤は、シリル化剤であってもよい。したがって、好ましい一実施形態によれば、球状疎水性シリカエアロゲルにおいて、シリカ粒子は、シリル化によって表面で修飾され得る。シリル化剤の例としては、以下の式(1)~(3)の1つを有する処理剤を挙げることができる:
【0036】
式(1):
RnSiX(4-n)
[式中、nは1~3の整数を表し、Rはヒドロカルビル基を表し、Xは、ヒドロキシル基を有する化合物との反応中にSi原子との結合を切断することによって分子から脱離することができる基(すなわち、脱離基)を表し、各Rは異なっていてもよく、ここでnは2以上であり、各Xは異なっていてもよく、ここでnは2以下である]
【0037】
式(2):
【0038】
【化1】
【0039】
[式中、R1はアルキレン基を表し、R2及びR3は独立してヒドロカルビル基を表し、R4及びR5は独立して水素原子又はヒドロカルビル基を表す]
【0040】
式(3):
【0041】
【化2】
【0042】
[式中、R6及びR7は独立してヒドロカルビル基を表し、mは3~6の整数を表し、R6が2つ以上存在する場合、各R6は異なっていてもよく、R7が2つ以上存在する場合、各R7は異なっていてもよい]。
【0043】
上式(1)中、Rは、ヒドロカルビル基、好ましくは1~10の炭素数を有するヒドロカルビル基、より好ましくは1~4の炭素数を有するヒドロカルビル基、特に好ましくはメチル基である。
【0044】
Xで表される脱離基の例としては、塩素及び臭素等のハロゲン原子、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、-NH-SiR3によって表される基(式中、Rの定義は、式(1)中のRの定義と同じである)を挙げることができる。
【0045】
上式(1)で表される疎水化剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0046】
最も好ましくは、好都合な反応性の観点から、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、及び/又はヘキサメチルジシラザンを使用してもよい。
【0047】
Si原子とシリカ骨格上のシラノール基との結合の数は、脱離基Xの数(4-n)に応じて変動する。例えば、nが2の場合、以下の結合が生じる:
(≡Si-O-)2SiR2
【0048】
nが3の場合、以下の結合が生じる:
≡Si-O-SiR3
【0049】
この方法で、シラノール基はシリル化され得、それによって疎水化が実行され得る。
【0050】
上式(2)中、R1は、アルキレン基、好ましくは2~8の炭素数を有するアルキレン基、特に好ましくは2~3の炭素数を有するアルキレン基であってもよい。
【0051】
上式(2)中、R2及びR3は独立してヒドロカルビル基であり、式(1)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。R4は、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、ヒドロカルビル基である場合、式(1)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。シリカゲルを式(2)で表される化合物(環状シラザン)で処理すると、シラノール基との反応によってSi-N結合の切断が生じ、したがってゲル中のシリカ骨格の表面上で以下の結合が生じる:
(≡Si-O-)2SiR2R3
【0052】
この方法で、上式(2)の環状シラザンによって、シラノール基をシリル化することもでき、それによって疎水化が実行され得る。
【0053】
上式(3)によって表される環状シラザンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシラザン及びオクタメチルシクロテトラシラザンが挙げられる。
【0054】
上式(3)中、R6及びR7は独立してヒドロカルビル基であり、式(2)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。mは、3~6の整数を表す。シリカゲルを式(3)で表される化合物(環状シロキサン)で処理すると、ゲル中のシリカ骨格の表面上で以下の結合が生じる:
(≡Si-O-)2SiR6R7
【0055】
この方法で、上式(3)の環状シロキサンによって、シラノール基をシリル化することもでき、それによって疎水化が実行され得る。
【0056】
上式(3)によって表される環状シロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0057】
球状疎水性シリカエアロゲルは、シリカゾルを生成し、ゾルをゲルに変え、ゲルをエージングし、エージングしたゲルを洗浄し、洗浄ゲル中の水を溶媒に置き換え、ゲルを疎水化剤で処理し、疎水化シリカを乾燥することによって調製することができる。
【0058】
球状疎水性シリカエアロゲルの、BET法によって決定される比表面積は、200m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上、且つ1200m2/g以下、好ましくは1000m2/g以下、より好ましくは800m2/g以下であってもよい。
【0059】
本発明において、「BET法によって決定される比表面積」は、1kPa以下の減圧下、200℃で3時間以上、測定用試料を乾燥した後、液体窒素温度で窒素吸着側のみの吸着等温線を測定し、BET法によって吸着等温線を分析することによって決定される値を意味する。分析に使用する圧力の範囲は、0.1~0.25の相対応力である。
【0060】
球状疎水性シリカエアロゲルの、BJH法によって決定される細孔容積は、1ml/g以上、好ましくは2ml/g以上、より好ましくは3ml/g以上、且つ10ml/g以下、好ましくは8ml/g以下、より好ましくは7ml/g以下であってもよい。球状疎水性シリカエアロゲルの、BJH法によって決定されるピーク細孔半径は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上、且つ50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下であってもよい。
【0061】
「BJH法によって決定される細孔容積」は、BJH法(Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951))により、上記の「BET法によって決定される比表面積」で説明したものと同じ方法で得られる窒素吸着側の吸着等温線を分析することによって得られる細孔半径が1nm~100nmの細孔から誘導される細孔容積を指す。「BJH法によって決定されるピーク細孔半径」は、BJH法により、上記と同じ方法で得られる窒素吸着側の吸着等温線を分析することによって得られる細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸とし、細孔半径を横軸としてプロットした細孔分布曲線(容積分布曲線)中のピークを生む細孔半径の値を指す。
【0062】
球状疎水性シリカエアロゲルの平均粒径は、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であってもよく、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下の画像解析法による平均粒径を有していてもよい。
【0063】
ここでの「平均粒径」は、画像解析法によって測定することができる。具体的には、「平均粒径」の値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した二次電子検出によって1000倍率で観察された2000個以上のエアロゲル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析によって得ることができる相当円径の算術平均である。各エアロゲル粒子の「相当円径」は、画像中のエアロゲル粒子の面積(投影面積)に等しい面積を有する円の直径である。
【0064】
好ましくは、球状疎水性シリカエアロゲルの、湿潤点で測定することができる吸油能は、2ml/g以上、好ましくは3ml/g以上、より好ましくは4ml/g以上、最も好ましくは5ml/g以上、且つ12ml/g以下、好ましくは11ml/g以下、より好ましくは10ml/g以下、最も好ましくは8ml/g以下であってもよい。
【0065】
Wpと記される湿潤点で測定される吸油能は、均質なペーストを得るために粒子100gに加える必要のある油の量に相当する。これは、湿潤点法、又は規格NF T 30-022に記載されている粉末の油取込み量を決定するための方法に従って測定することができる。油取込み量は、下に記載される、湿潤点の測定による、粉末の利用可能な表面上に吸着された及び/又は粉末によって吸収された油の量に相当したものでよい。
【0066】
m=2gの量の粉末をガラス板上に乗せ、次いで、油(エステル油、オレイン酸、又はシリコーン油等)を滴下で加える。4~5滴の油を粉末に添加した後、スパチュラを使用して混合し、油と粉末との集合体が形成されるまで、油の添加を継続する。この時点では、油を1滴ずつ添加し、次いで、混合物をスパチュラで磨りつぶす。堅く滑らかなペーストが得られたら、油の添加を中止する。このペーストは、ひび割れること又は塊を形成することなく、ガラス板上に広げることができなければならない。次いで、使用した油の体積Vs(mlで表される)が記される。油取込み量は、比Vs/mに相当する。
【0067】
別法では、吸油能は、JIS-K6217-4に従って測定することができる。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態において、(a)球状疎水性シリカエアロゲルは、JP-A-2014-088307、JP-A-2014-218433、又はJP-A-2018-177620に記載されているものである。
【0069】
球状疎水性シリカエアロゲルは、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、最も好ましくは0.5質量%以上の量、且つ15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは4質量%以下の量で存在してもよい。
【0070】
[エステル油]
本発明による組成物は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルから選択される少なくとも1種のエステル油を含む。
【0071】
本発明との関係においては、「油」という用語は、室温及び大気圧で液体形態である脂肪物質を意味する。
【0072】
本発明のエステル油は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液体エステルであり、エステルの炭素原子の合計数は、好ましくは10以上、及び好ましくは30以下である。
【0073】
C1~C26脂肪族一酸又はポリ酸の炭素数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26であってもよい。また、C1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールの炭素数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又は26であってもよい。
【0074】
好ましくは、エステル油は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C2~C20脂肪族ポリ酸と飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状C2~C20脂肪族一価アルコールとの液体エステルであってもよい。より好ましくは、エステル油は、飽和直鎖状C5~C15脂肪族二酸と飽和分枝状C2~C5脂肪族一価アルコールとの液体エステルであってもよい。
【0075】
エステル油はまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物からも選択することができる。
【0076】
モノエステルは、以下の式を有していてもよい:
R1-C(=O)-O-R2
(式中、R1は、任意選択により1つ又は複数のエチレン性二重結合を含み、任意選択により置換されている1~40個の炭素原子、好ましくは7~19個の炭素原子の直鎖状又は分枝状アルキル基を表し、R2は、任意選択により1つ又は複数のエチレン性二重結合を含み、任意選択により置換されている1~40個の炭素原子、好ましくは2~30個の炭素原子、更により好ましくは3~10個の炭素原子の直鎖状又は分枝状アルキル基を表す)。
【0077】
ジエステルは、以下の式を有していてもよい:
R4-O-C(=O)-R3-C(=O)-O-R4
(式中、R3は、任意選択により1つ又は複数のエチレン性二重結合を含み、任意選択により置換されている1~40個の炭素原子、好ましくは7~19個の炭素原子の直鎖状又は分枝状アルキレン基を表し、R4は、互いに独立して、任意選択により1つ又は複数のエチレン性二重結合を含み、任意選択により置換されている1~40個の炭素原子、好ましくは3~30個の炭素原子、更により好ましくは3~10個の炭素原子の直鎖状又は分枝状アルキル基を表す)。
【0078】
「任意選択により置換されている」という表現は、R1、R2、R3及び/又はR4が、例えばO、N及びSから選択される1個又は複数のヘテロ原子を含む基、例えばアミノ、アミン、アルコキシ、ヒドロキシルから選択される1つ又は複数の置換基を有し得ることを意味すると理解される。
【0079】
好ましくは、R1+R2又はR3+R4の炭素原子の合計数は、9以上、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、最も好ましくは20以上であってもよい。
【0080】
一酸及び一価アルコールのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0081】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用できる。
【0082】
特に挙げることができるのは以下:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル(isopropyl lauroyl sarcosinate)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールである。
【0083】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。「糖」という用語は、アルデヒド又はケトン官能基を有する又は有さない少なくとも4個の炭素原子を含む、いくつかのアルコール官能基を含む酸素含有炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖とすることができる。
【0084】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、とりわけアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0085】
脂肪酸の糖エステルは、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22の脂肪酸とのエステル又はエステル混合物を含む群から特に選択することができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0086】
スクロース、グルコース、又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用され得る。
【0087】
挙げることができる例は、Amerchol社によってGlucate(登録商標)DOの名称で販売されている製品であり、これは、ジオレイン酸メチルグルコースである。
【0088】
エステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えばとりわけオレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0089】
好ましいエステル油の例として、例えば、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、及びアジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0090】
最も好ましくは、エステル油はセバシン酸ジイソプロピルであってもよい。
【0091】
エステル油は、組成物の総質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上の量、且つ15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量で存在してもよい。
【0092】
[組成物]
本発明による組成物は、W/O型エマルションの形態にある。
【0093】
「W/O型エマルション」又は「油中水型エマルション」という用語は、連続的脂肪相又は油相及び該脂肪相又は油相中に分散された液滴形態の水相又は水相(aqueous or water phases)を含む、任意の肉眼で均質な組成物を意味する。
【0094】
一実施形態において、本発明のW/O型エマルションの形態の組成物は、以下のプロトコルに従って製造され得る: (1)球状疎水性シリカエアロゲル及びエステル油を含む油性成分を混合して油相を調製し、(2)水相を調製し、(3)油相を攪拌しながら、水相を油相に添加又は注入する。
【0095】
I.油相
本発明の組成物は、エステル油に加えて少なくとも1種の追加の油を含んでもよい。
【0096】
本発明において、「油」という用語は、室温及び大気圧で液体形態である脂肪物質を意味する。
【0097】
本発明による組成物の調製に適している油相は、植物又は動物起源の油、合成油、炭化水素油、脂肪アルコール、及びシリコーン油、並びにそれらの混合物を含み得る。
【0098】
植物油の例としては、例えば、植物起源の炭化水素系油、例えばフィトステアリルエステル、例えばフィトステアリルオレイン酸エステル、フィトステアリルイソステアリン酸エステル及びラウロイル/オクチルドデシル/フィトステアリルグルタミン酸エステル(Ajinomoto社、Eldew PS203)、グリセロールの脂肪酸エステルから形成されるトリグリセリド、特に脂肪酸がC4からC36、とりわけC18からC36の範囲の鎖長を有し得るものを挙げることができ、これらの油は、場合により、直鎖状又は分枝状且つ飽和又は不飽和であり、これらの油は、とりわけ、ヘプタン酸又はオクタン酸トリグリセリド、シア油、アルファルファ油、ケシ油、冬カボチャ油、キビ油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、ククイ油、トケイソウ油、シアバター、アロエベラ油、スイートアーモンド油、モモ種子油、ラッカセイ油、アルガン油、アボカド油、バオバブ油、ボリジ油、ブロッコリー油、カレンデュラ油、カメリナ油、キャノーラ油、ニンジン油、サフラワー油、亜麻油、菜種油、綿実油、ヤシ油(ココヤシ油)、マロー種子油、コムギ胚芽油、ホホバ油、ユリ油、マカダミア油、コーン油、メドウフォーム油、セントジョーンズワート油、モノイ油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット種子油、ウォールナッツ油、オリーブ油、オエノテラビエニス(oenothera biennis(マツヨイグサ))油、パーム油、クロスグリ根茎油、キウイフルーツ種子油、ブドウ種子油、ピスタチオ油、冬カボチャ油、カボチャ油、キノア油、マスクローズ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油及びスイカ油並びにそれらの混合物、或いはカプリル/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社により販売されているもの、又は、Dynamit Nobel社によりMiglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)という名称で販売されているものであってよい。また、変性植物油、例えば、Biotropics社によってScalpro又はAcnaedの名称で販売されているもの等の活性化されたヤシ油も挙げることができる。
【0099】
動物油の例としては、例えば、スクワレン及びスクワランを挙げることができる。
【0100】
合成油の例として、アルカン油、例えばイソドデカン及びイソヘキサデカン、エーテル油、及び人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0101】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0102】
炭化水素油は、以下から選択してもよい:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状の、C6~C16低級アルカン。挙げることができる例としては、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカン、並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、液状ワセリン(petroleum jelly)、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクワラン。
【0103】
炭化水素油の例としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等、水添ポリイソブテン、イソエイコサン及びデセン/ブテンコポリマー、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0104】
脂肪アルコールにおける用語「脂肪」は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪アルコールの範囲内に包含される。脂肪アルコールは、飽和又は不飽和であってよい。脂肪アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0105】
脂肪アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状の基から選択される)を有してもよい。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル及びC12~C20アルケニル基から選択され得る。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基により置換されていてもいなくてもよい。
【0106】
脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、へキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0107】
そのため、脂肪アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択されうる。
【0108】
「飽和脂肪アルコール」という用語は、本明細書において、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪アルコールが、好ましくは使用されうる。いかなる直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪アルコールも、より好ましくは使用され得る。分枝状C16~C20脂肪アルコールが、更により好ましくは使用され得る。
【0109】
飽和脂肪アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、へキシルデカノール、及びそれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪アルコールとして使用することができる。
【0110】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコーン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0111】
エステル油以外の油は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更により好ましくは15質量%以上の含量で、且つ40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下の含量で、組成物中に存在してもよい。
【0112】
II.水相
本発明による組成物の水相は、少なくとも1種の水性媒体、即ち、水及び任意選択で水溶性溶媒を含む。
【0113】
本発明において、用語「水溶性溶媒」は、室温で液体であり、且つ水混和性(25℃及び大気圧で50質量%を超える水との混和性)である化合物を示す。
【0114】
本発明の組成物に使用され得る水溶性溶媒は、揮発性であってもよい。
【0115】
本発明による組成物に使用され得る水溶性溶媒の中でも、とりわけ、アルコール、例えば1~5個の炭素原子を含有する低級一価アルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール、2~8個の炭素原子を含有するグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びジプロピレングリコール、C3及びC4ケトン、並びにC2~C4アルデヒドを挙げることができる。
【0116】
別の実施形態の変形によれば、本発明による組成物の水相は、少なくとも1種のC2~C32ポリオールを含み得る。
【0117】
本発明の目的に関して、「ポリオール」という用語は、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む任意の有機分子を意味すると理解されるべきである。好ましくは、本発明によるポリオールは、室温にて液体形態で存在する。
【0118】
本発明における使用に適しているポリオールは、アルキル鎖に少なくとも2個の-OH官能基、特に少なくとも3個の-OH官能基、より詳細には少なくとも4個の-OH官能基を保有する、直鎖状、分枝状又は環状の飽和又は不飽和アルキル型化合物であり得る。本発明による組成物の配合に有利に適しているポリオールは、特に2~32個の炭素原子、好ましくは3~16個の炭素原子を呈するものである。有利には、ポリオールは、例えば、エチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール(グリセリン)、ポリグリセロール、例えばグリセロールオリゴマー、例えばジグリセロール、及びポリエチレングリコール、並びにそれらの混合物から選択され得る。特定の一実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくともグリセロールを含み得る。
【0119】
水相(水及び任意選択の水混和性溶媒)は、組成物中に、前記組成物の総質量に対して5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上の含量で、且つ50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下の含量で存在してもよい。
【0120】
[複合シリカ粒子]
本発明による組成物は、少なくとも1種の複合シリカ粒子を含んでいてもよい。
【0121】
本発明との関係においては、「複合シリカ粒子」という用語は、官能性化合物、好ましくは金属酸化物が含まれるシリカ粒子を意味する。したがって、好ましくは、複合シリカ粒子は、「金属酸化物含有シリカ粒子」を指してもよい。最も好ましくは、金属酸化物は、シリカ粒子中で分散されている。
【0122】
金属酸化物は、好ましくは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、及び酸化ジルコニウム、又はこれらの混合物から、より特定すると二酸化チタン(TiO2)及び酸化亜鉛、並びにこれらの混合物から選択されてもよい。特に好ましくは、二酸化チタンを使用することができる。
【0123】
複合シリカ粒子は、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上の、且つ50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは12μm以下の画像解析法による平均粒径を有していてもよい。
【0124】
「平均粒径」は、以下の手順に従って決定することができる: 50個の粒子の粒径をSEM画像を使用して測定し、粒径の平均値を算出する。
【0125】
複合シリカ粒子は、多孔質であっても無孔質であってもよく、その吸油能は低くてもよい。
【0126】
複合シリカ粒子において、シリカの官能性化合物(好ましくは金属酸化物、最も好ましくは二酸化チタン)に対する質量比は、9:1~5:5、好ましくは4:1~3:2、より好ましくは7:3であってもよい。
【0127】
複合シリカ粒子は、疎水性となるように表面処理してもよい。例えば、複合シリカ粒子は、アルキルシランで表面処理してもよい。
【0128】
最も好ましくは、JGC Catalysts and Chemicals社によって販売されているCHIFFONSIL-5Tを複合シリカ粒子として使用してもよい。
【0129】
複合シリカ粒子は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上の量で存在していてもよい。複合シリカ粒子は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下の量で存在していてもよい。
【0130】
[界面活性剤]
本発明による組成物は、単体で若しくは混合物として使用される、両性、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含んでもよい。
【0131】
本発明の組成物中で使用することができるアニオン性界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンエタノールの硫酸エステル、α-オレフィンスルホン酸塩、βアルキルオキシアルケンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキル炭酸塩、スクシナメート、スルホスクシネート、サルコシネート、オクトキシノール又はノノキシノールリン酸塩、タウレート、脂肪タウリド、硫酸化モノグリセリド、脂肪酸アミノポリオキシエチレン硫酸塩、イセチオネート、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、及びポリオキシエチレンアルキルアミドエーテルカルボン酸、並びにこれらの塩を挙げることができる。
【0132】
本発明の組成物中で使用することができる非イオン性界面活性剤の例としては、ポリエトキシル化脂肪アルコール又はポリグリセロール化脂肪アルコール、例えばラウリルアルコールとのエチレンオキシド付加物、特に9~50個のオキシエチレン単位を含むもの(INCI名はラウレス-9からラウレス-50),具体的にはラウレス-9;例えば8~24個の炭素原子を含む飽和鎖又は不飽和鎖を有する、ポリオールと脂肪酸とのエステル及びそれらのオキシアルキレン化誘導体、即ちオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位を含むもの、例えばグリセロールとC8~C24脂肪酸とのエステル及びそれらのオキシアルキレン化誘導体、具体的にはポリオキシエチレン化ステアリン酸(モノ-、ジ-及び/又はトリステアリン酸)グリセリル、例えばPEG-30ジポリヒドロキシステアレート及びPEG-20トリイソステアリン酸グリセリル;糖とC8~C24脂肪酸とのエステル及びそれらのオキシアルキレン化誘導体、例えばC8~C24脂肪酸のポリエトキシル化ソルビトールエステル、具体的にはCroda社によって名称「TWEEN 80」で市販されている製品等のポリソルベート80;糖とC8~C24脂肪アルコールとのエーテル、例えばカプリリル/カプリルグルコシド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル;脂肪酸アルカノールアミド;アルキルアミンオキシド;アルキルポリグリコシド、並びにシリコーン界面活性剤、例えばオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含有するポリジメチルシロキサン、例えば、PEG-10ジメチコーン、ビス-PEG/PPG-14/14ジメチコーン、ビス-PEG/PPG-20/20ジメチコーン、及びPEG/PPG-20/6ジメチコーンを挙げることができる。
【0133】
本発明の組成物中で使用することができる両性界面活性剤の例としては、アルカノイルアミドプロピル-N,N-ジメチルグリシンベタイン、アルカノイルアミドプロピル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキル-N,N-ジメチルグリシンベタイン、アルカノイルアミドプロピル-N,N-ジメチル-プロピルスルホベタイン、ラウリル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、及びそれらの塩を挙げることができる。
【0134】
本発明の組成物中で使用することができるカチオン性界面活性剤の例としては、C8~C24長鎖のジアルキルジメチルアンモニウム塩、長鎖のモノアルキルモノベンジルジメチルアンモニウム塩、及び長鎖のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩を挙げることができ、これらの全てが、その中にアミド結合又はエステル結合を有することができ、且つ対イオンは、好ましくは、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、硫酸塩、並びにアルキル基含有硫酸残基、例えばメチル硫酸及びエチル硫酸、並びにそれらの塩である。アミンタイプのカチオン性界面活性剤としては、アミド結合又はエステル結合をその中に有してもよい長鎖のC8~C24アルキル基を有する、長鎖のジアルキルモノメチルアミン塩、好ましくは塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩の形態を取るもの、並びにそれらの塩が挙げられる。
【0135】
界面活性剤は、組成物中に、組成物の総質量に対して0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上の含量で、且つ15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の含量で存在してもよい。
【0136】
[UVフィルター]
本発明による組成物は、少なくとも1種のUVフィルターを含んでもよい。
【0137】
UVフィルターは、固体又は液体、好ましくは液体であってもよい。「固体」及び「液体」という用語は、それぞれ、1atm下、25℃での固体及び液体を意味する。UVフィルターは、少なくとも1種の有機又は無機材料、好ましくは少なくとも1種の有機材料で作られていてもよい。したがって、UVフィルターは、好ましくは有機UVフィルターである。
【0138】
有機UVフィルターは、アントラニル酸誘導体;ジベンゾイルメタン誘導体;ケイ皮酸誘導体;ホモサラート(サリチル酸ホモメンチル)及びサリチル酸エチルヘキシル等のサリチル酸誘導体;カンフル誘導体;ベンゾフェノン誘導体;β,β-ジフェニルアクリレート誘導体;トリアジン誘導体;ベンゾトリアゾール誘導体;ベンザルマロネート誘導体;ベンゾイミダゾール誘導体;イミダゾリン誘導体;ビス-ベンゾアゾリル誘導体;p-アミノ安息香酸(PABA)及びその誘導体;ベンゾオキサゾール誘導体;遮蔽性ポリマー及び遮蔽性シリコーン;α-アルキルスチレン由来のダイマー;4,4-ジアリールブタジエン;オクトクリレン及びその誘導体、グアイアズレン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、フラボノイド、ビフラボノイド、オリザノール及びその誘導体、キナ酸及びその誘導体、フェノール、レチノール、システイン、芳香族アミノ酸、芳香族アミノ酸残基を有するペプチド、並びにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0139】
UVフィルターは、組成物中に、組成物の総質量に対して1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上の含量で、且つ15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下の含量で存在してもよい。
【0140】
[着色料又は顔料]
本発明による組成物は、所望の色又は効果を付与するために少なくとも1種の着色料又は顔料を含んでもよい。
【0141】
着色料又は顔料の例としては、無機顔料、有機顔料、及び/又はレーキを挙げることができる。
【0142】
無機顔料の例としては、金属酸化物及び金属水酸化物、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化鉄(α-Fe2O3、γ-Fe2O3、Fe3O4、FeO)、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、水酸化鉄、二酸化チタン、低級酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、水酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化セリウム、酸化ニッケル及び酸化亜鉛、並びにチタン酸鉄、チタン酸コバルト及びアルミン酸コバルト等の複合酸化物及び複合水酸化物を挙げることができる。好適な無機顔料には、非金属酸化物、例えばアルミナ及びシリカ、ウルトラマリンブルー(すなわち、硫黄含有ケイ酸アルミニウムナトリウム)、プルシアンブルー、マンガンバイオレット、オキシ塩化ビスマス、タルク、マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、チタンマイカ、酸化鉄チタンマイカ、オキシ塩化ビスマス等も挙げられる。
【0143】
有機顔料の例としては、カーボンブラック、カルミン、フタロシアニン青及び緑色素、ジアリライド黄及び橙色素、並びにアゾ型赤及び黄色素(トルイジン赤、リゾール赤(litho red)、ナフトール赤及び茶色素等)、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0144】
「レーキ」は、一般的に、不溶性の反応性又は吸着性基体又は希釈分に堆積された水溶性有機染料(例えば、D&C又はFD&C)から調製される着色料を指す。用語「D&C」は、本明細書で用いられる場合、FDAによる薬物及び化粧品への使用が認定された薬物及び化粧用着色料を意味する。用語「FD&C」は、本明細書で用いられる場合、FDAによる食品、薬物、及び化粧品への使用が認定された食品、薬物、及び化粧用着色料を意味する。レーキの形成に適した基体としては、これらに限定されないが、マイカ、オキシ塩化ビスマス、セリサイト、アルミナ、アルミニウム、銅、青銅、銀、カルシウム、ジルコニウム、バリウム、及びストロンチウム、チタンマイカ、ヒュームド・シリカ、球状シリカ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、微粉化テフロン、窒化ホウ素、アクリレートコポリマー、ケイ酸アルミニウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、セルロース、チョーク、コーンスターチ、珪藻土、フーラー土、グリセリルデンプン、ヘクトライト、水和シリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、マルトデキストリン、モンモリロナイト、微結晶性セルロース、コメデンプン、シリカ、タルク、マイカ、二酸化チタン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ロジン酸亜鉛、アルミナ、アタパルジャイト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、デキストラン、ナイロン、シリル化シリカ、シルクパルダー、セリサイト、大豆粉、酸化スズ、水酸化チタン、リン酸トリマグネシウム、テウチグルミ殻粒、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0145】
着色料又は顔料は、例えば、より疎水性にするか、又はビヒクル中でより分散性にするために、表面処理してもよい。表面処理化合物には、例えば、アルキル、アリール、アリル、ビニル、アルキル-アリール、アリール-アルキル、オルガノシリコーン、ジ-オルガノシリコーン、ジメチコーン、メチコーン、ポリウレタン、シリコーン-ポリウレタン、及びこれらのフルオロ又はペルフルオロ誘導体から選択される疎水性部分が含まれ得る。その他の疎水性調整剤には、ラウロイルリジン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(ITT)、ITT及びジメチコーン(ITT/ジメチコーン)クロスポリマー、ITT及びアミノ酸、ITT/トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、ワックス(例えば、カルナウバ)、脂肪酸(例えば、ステアレート)、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、PEG-8メチルエーテルトリエトキシシラン、アロエ、ホホバエステル、レシチン、リン酸ペルフルオロアルコール、及びミリスチン酸マグネシウム(MM)が含まれ得る。
【0146】
干渉顔料又はパール顔料が、本発明による組成物中に含まれていてもよい。干渉顔料又はパール顔料は、典型的には、約50~300nmのTiO2、Fe2O3、又はCr2O3等の膜で積層されたマイカで形成され得る。干渉顔料又はパール顔料には、酸化チタンで又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ等の白色真珠光沢材料、及び、酸化鉄を有するチタンマイカ、フェリックブルー若しくは酸化クロムを有するチタンマイカ、上述のタイプの有機顔料を有するチタンマイカ等の有色真珠光沢材料が含まれ得る。
【0147】
好ましくは、本発明による組成物は、「二酸化チタン(及び)アルミナ(及び)トリイソステアリン酸イソプロピルチタン」、「酸化鉄(及び)トリイソステアリン酸イソプロピルチタン」、並びに/又は「二酸化チタン(及び)水酸化アルミニウム(及び)ジメチコーン(及び)ハイドロゲンジメチコーン」を含んでいてもよい。
【0148】
着色料又は顔料は、組成物中に、組成物の総質量に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上の含量で、且つ25質量%以下、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%以下の含量で存在してもよい。
【0149】
[添加剤]
本発明による組成物は、化粧品の分野で通常使用され、例えば、硫酸マグネシウム等のフィラー、染料、樹脂、分散剤、抗酸化剤、フェノキシエタノール等の保存剤、香料、中和剤、pH調整剤、消毒剤、その他の化粧品活性剤、例えばビタミン、保湿剤、エモリエント剤又はコラーゲン保護剤、並びにそれらの混合物から選択される他の任意の任意選択による添加剤も含み得る。
【0150】
特に、本発明による組成物は、皮膜形成シリコーン樹脂、例えばトリメチルシロキシシリケート等の皮膜形成剤を含んでもよい。また、本発明による組成物は、親水性増粘剤等の増粘剤、例えばC10~C22脂肪酸塩化アンモニウムで修飾されたヘクトライト、特に塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで修飾されたヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)を含んでもよい。
【0151】
更に、球状疎水性シリカエアロゲルに加えて、本発明による組成物は、追加の吸油性粒子を含んでもよい。吸油性粒子の例としては、セルロース、シリカ、シリケート、パーライト、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、疎水性シリカ、例えばケイ酸シリカ、カオリン、タルク、ポリアミド(特にナイロン-6)粉末、アクリルポリマー粉末、特にポリメチルメタクリレート粉末、ポリメチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート粉末、ポリアリルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート粉末、エチレングリコールジメタクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマー粉末、シリコーン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0152】
これらの添加剤及びそれらの濃縮物は、本発明の組成物に望ましい性質を改変しないようにすべきである。
【0153】
[方法及び使用]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図される。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、例えば皮膚、頭皮、毛髪、粘膜、例えば口唇及び爪、特に皮膚、例えば顔の皮膚への適用が意図され得る。
【0154】
本発明による組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくは皮膚メーキャップ組成物、より好ましくはファンデーションとして使用してもよい。
【0155】
本発明による組成物は、ケラチン物質、例えば皮膚、頭皮、毛髪、粘膜、例えば口唇及び爪、特に皮膚、例えば顔の皮膚をメーキャップする美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法に使用され得る。
【0156】
本発明はまた、組成物を安定化させるための、少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲルを含むW/O型エマルションの形態の化粧用組成物中の少なくとも1種のエステル油の使用にも関する。
【0157】
本発明の別の態様は、少なくとも1種の球状疎水性シリカエアロゲルを含むW/O型エマルションの形態の化粧用組成物の安定性を高める上で使用するエステル油である。
【実施例
【0158】
本発明を、実施例によって、より詳細な方法で説明する。しかしながら、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものとは解釈すべきでない。
【0159】
(実施例1から実施例4及び比較例1)
本発明及び比較例のファンデーション組成物の調製方法
Table 1(表1)に記載の相(A1)の成分を45℃で完全に混合した。相(A2)の成分を相(A1)に添加し、完全に溶解した。相(A3)の成分を添加し、3500rpmでMoritzホモジナイザーを使用して、45℃で5分間混合した。相(B)、(C1)及び(C2)の成分を添加し、3500rpmで10分間混合した。相(D)の成分の混合物を添加し、3500rpmで45℃にて10分間混合した。結果として得られたファンデーション組成物を25℃まで冷却した。最後に、相(E)の成分を添加し、3000rpmで5分間混合して、W/O型エマルションタイプのファンデーション組成物を得た。
【0160】
相(C2)中の球状シリル化シリカエアロゲルは、10μmの平均一次粒径、0.88の平均真円度、592m2/gのBET比表面積、BJH法によって決定された4.0ml/gの細孔容積、JIS-K6217-4に従って測定された6.8mL/gの吸油能、及びBJH法によって決定された20nmのピーク細孔半径を有していた。
【0161】
【表1A】
【0162】
【表1B】
【0163】
Table 1(表1)では、すべての成分は、活性原料として「質量%」に基づく。
【0164】
評価
[安定性]
本発明及び比較例それぞれのW/O型エマルションタイプのファンデーション組成物を45℃で静置した。外観の変化、特に水相と油相の分離から安定性を評価した。基準は以下の通りであった:「非常に良好」は、エマルションが2カ月間安定性だったことを意味し、「良好」は、エマルションが1カ月間安定性だったが、2カ月後に油相が若干分離したことを意味し、「普通」は、エマルションが1週間安定性だったが、1カ月後に油相が若干分離したことを意味し、「不良」は、1日後に水相と油相が分離したことを意味する。
【0165】
[皮膜の可撓性]
本発明及び比較例それぞれのW/O型エマルションタイプのファンデーション組成物を、1.5mg/cm2の速度で人工皮膚(Idemitsu Techno Fine Ltd.社によって販売されている人工皮革[モデル名:SUPPLALE(登録商標)])に均一に適用した。皮膚を30分間静置し、ファンデーション組成物から誘導された皮膜を人工皮膚上に形成した。皮膚を、10秒間、手で強制的に収縮及び拡大させた。この「収縮」及び「拡大」プロセスを10秒間に3回行い、亀裂が入るかを観察して評価した。基準は以下の通りであった:「非常に良好」は、亀裂が入らなかったことを意味し、「良好」は、少量の軽い亀裂が入ったことを意味し、「不良」は、多数の亀裂が入ったことを意味する。
【0166】
結果をTable 1(表1)に示す。
【0167】
上のTable 1(表1)に示すように、本発明の球状疎水性シリカエアロゲルとエステル油との組み合わせのみが、高い安定性を有していただけでなく、高い可撓性も有していた。一方、エステル油を使用しなかった場合、安定性は非常に低く、多数の亀裂が入った。したがって、本発明のエステル油が、大量の球状疎水性シリカエアロゲルを含む組成物の安定性を改善することができることが実証された。