(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240813BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240813BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240813BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240813BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20240813BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240813BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240813BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D3/00 D
B05D5/06 101A
B05D7/24 303B
B05D7/24 303J
C09D5/29
C09D7/62
C09D7/65
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2019566394
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048029
(87)【国際公開番号】W WO2019142639
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-09-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018004661
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 紘和
(72)【発明者】
【氏名】倉持 竜生
(72)【発明者】
【氏名】酒井 健次
(72)【発明者】
【氏名】成田 信彦
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221473(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111112(WO,A1)
【文献】特開2017-19146(JP,A)
【文献】特開2003-147274(JP,A)
【文献】特開2002-233815(JP,A)
【文献】特開2017-30322(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/36
B05D 3/00
B05D 5/06
B05D 7/24
C09D 5/29
C09D 7/62
C09D 7/65
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)~(3):
(1)被塗物上に、着色塗料(X)を塗装してL*a*b*表色系における明度L*値が5以下の範囲内となる着色塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成される塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、
着色塗料(X)が、ビヒクル形成樹脂及び黒色顔料を含み、前記黒色顔料の含有量が、前記ビヒクル形成樹脂の固形分100質量部に対し0.5質量部以上であり、前記黒色顔料がカーボンブラックであり、
光輝性顔料分散体(Y)が、水、粘性調整剤(A)及び鱗片状光輝性顔料(B)を含有する光輝性顔料分散体であって、鱗片状光輝性顔料(B)が透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光輝性顔料であり、且つ
前記光輝性顔料分散体(Y)の固形分含有率が0.1~15質量%であり、
前記鱗片状光輝性顔料(B)の含有量が、光輝性顔料分散体(Y)中の合計固形分100質量部に対し1~90質量部であり、
得られる複層塗膜が、塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に5度の角度で受光したときの分光反射率に基づくXYZ表色系における輝度を示すY値(Y5)が50以上で、かつ塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に25度の角度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*値(L*25)が25以下である
ことを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記鱗片状光輝性顔料(B)が黒色を呈する光輝性顔料を含む請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記光輝性顔料分散体(Y)が、さらに表面調整剤(C)を含有する請求項1
又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
クリヤー塗料(Z)が、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である請求項1~
3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漆黒性及び光輝性に優れた複層塗膜を形成できる複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の工業製品の外装色において、黒色は高級感が醸し出されるとして人気の高い色である。また、観察角度によって色の見え方が変化する塗色、すなわち、ハイライト(塗板に対して垂直に近い状態で見たとき)は高明度であり、ハイライトからシェード(塗板に対して斜め上から見たとき)への色変化が大きいメタリック塗色は、工業製品の形状を際立たせる効果があるため需要が多い。なかでも近年はフリップフロップ性があって粒子感のある黒光りした塗色が注目されている。
【0003】
特許文献1には金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料(A1)または金属酸化物被覆マイカ顔料(A2)から選ばれる光輝性顔料(A)、カーボンブラック顔料(B)、繊維素系樹脂(C)、および繊維素系樹脂以外の樹脂(D)を含有する塗料組成物であって、I.(A)/(B)=20/80~80/20(重量比)II.(C)/(D)=20/80~80/20(重量比)III.{(A)+(B)}/{(C)+(D)}=20/100~100/100(重量比)の条件を満たす光輝性塗料組成物が開示されている。しかしながら、上記光輝性塗料組成物によって得られる塗膜は漆黒性に欠ける場合がある。
【0004】
また特許文献2及び特許文献3には、ビヒクル形成樹脂(A)、アルミナフレーク顔料(B)、黒色顔料(C)を含む光輝性塗料組成物であって、アルミナフレーク顔料(B)が、平均粒子径が15~25μmで黒色であり、アルミナフレーク基材に金属酸化物が被覆されており、金属酸化物の少なくとも一部にチタン酸鉄(FeTiO3)を含むアルミナフレーク顔料である光輝性塗料組成物を用いることで、フリップフロップ性、粒子感及び漆黒性の高いメタリック塗膜が形成できることが開示されている。しかしながら、この塗膜では真珠光沢感で特徴的な、正反射光に対して入射方向に5度ずれた角度の輝度が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-119417号公報
【文献】特開2016-138231号公報
【文献】特開2016-221473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、漆黒性及び光輝性に優れた複層塗膜を形成できる複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、下記の工程(1)~(3):
(1)被塗物上に、着色塗料(X)を塗装してL*a*b*表色系における明度L*値が5以下の範囲内となる着色塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成される塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、
光輝性顔料分散体(Y)が、水、粘性調整剤(A)及び鱗片状光輝性顔料(B)を含有する光輝性顔料分散体であって、鱗片状光輝性顔料(B)が透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光輝性顔料であり、且つ固形分含有率が0.1~15質量%であり、
得られる複層塗膜が、塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に5度の角度で受光したときの分光反射率に基づくXYZ表色系における輝度を示すY値(Y5)が50以上で、かつ塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に25度の角度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*値(L*25)が25以下である
ことを特徴とする複層塗膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、漆黒性及び光輝性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
1.工程(1)
工程(1)は、被塗物上に、着色塗料(X)を塗装してL*a*b*表色系における明度L*値が5以下の範囲内となる着色塗膜を形成する工程である。
【0010】
被塗物
本発明の光輝性顔料分散体を適用し得る被塗物としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金などの金属材、及びこれらの金属による成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。該表面処理としては例えばリン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等が挙げられる。さらに、上記被塗物の素材が金属であれば、表面処理された金属素材の上にカチオン電着塗料等によって下塗り塗膜が形成されていることが好ましい。また、被塗物の素材がプラスチックである場合には、脱脂処理されたプラスチック素材の上にプライマー塗料によってプライマー塗膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
着色塗料(X)
上述の被塗物に着色塗料(X)を塗装して、着色塗膜を形成することができる。着色塗料(X)は、複層塗膜の漆黒性の観点から、それを塗装して得られた塗膜がL*a*b*表色系における明度L*値が5以下の範囲内となるものであれば特に制限なく用いることができる。
【0012】
なお、本発明において、着色塗料(X)のL*値は、多角度分光測色計を用いて、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光から45°の偏角を有する光)についてL*、a*、b*(JIS Z 8729(2004))を測定したときの値である。上記多角度分光測色計としては、例えば、「CM-512m3」(商品名、コニカミノルタ社製)、「MA-68II」(商品名、X-Rite社製)などを使用することができる。
【0013】
ここで、着色塗料(X)の上記L*値は以下の方法により測定することができる:まず、硬化電着塗膜上に着色塗料(X)を塗装する際に、ポリテトラフルオロエチレン板上にも、同様に、着色塗料(X)を塗装する。次いで、該ポリテトラフルオロエチレン板を、光輝性顔料分散体(Y)が塗装される前に回収し、該ポリテトラフルオロエチレン板上の着色塗膜を硬化せしめる。次いで、硬化した着色塗膜を剥離して回収し、予めグレー(マンセルチャートでN-6)の硬化塗膜を形成した塗板上に乗せる。次いで、「MA-68II」(商品名、X-Rite社製、多角度分光測色計)を使用し、塗膜について、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から標準の光D65を照射し、反射した光のうち測定対象面に垂直な方向の光(正反射光に対して45°の角度で受光した光)についてL*値を測定する。
【0014】
着色塗料(X)としては、具体的には、ビヒクル形成樹脂、顔料ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分として含有するそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。上記熱硬化性塗料としては、例えば中塗り塗料及びベース塗料等が挙げられる。着色塗料(X)としてベース塗料を用いる場合には被塗物面が電着塗膜面だけでなく中塗り塗膜面であっても良い。
【0015】
着色塗料(X)に使用されるビヒクル形成樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐薬品性、耐候性等の観点から、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ビヒクル形成樹脂としては基体樹脂と架橋剤を併用していることが好ましい。
【0016】
基体樹脂は、耐候性及び透明性等が良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0017】
上記アクリル樹脂としては、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0018】
ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸成分との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0019】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造される、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0020】
ウレタン樹脂としては、例えば、上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したものを挙げることができる。
【0021】
着色塗料(X)は、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。着色塗料(X)が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて好ましくは約10mgKOH/g以上、より好ましくは30~200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0022】
また、上記樹脂の水分散化は、上記モノマー成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0023】
前記架橋剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるための成分であり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化していないポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物を含む)、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びカルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素等とホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化する等によって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0025】
着色塗料(X)における上記各成分の比率は、任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性等の観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者を好ましくは60~90質量%、より好ましくは70~85質量%の範囲内とし、後者を好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~30質量%の範囲内とする。
【0026】
前記顔料は、着色塗料(X)により形成される着色塗膜の色相や明度を決定し、下地隠蔽性を与えるものである。
【0027】
該顔料としては例えば、メタリック顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、着色塗料(X)によって得られる塗膜のL*値が5以下範囲内となるように種類や配合量を調整することができる。なかでも黒色顔料を使用することが好ましい。黒色顔料としては例えば、インク用、塗料用及びプラスチック着色用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができる。例えば、複合金属酸化物顔料、黒色酸化鉄顔料、黒色酸化チタン顔料、ペリレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができるが、複層塗膜の色調の点から、カーボンブラックが好ましい。
【0028】
着色塗料(X)において黒色顔料を用いる場合には、隠蔽性、漆黒性等の観点から前記ビヒクル形成樹脂100質量部(固形分)を基準として黒色顔料を好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部、特に好ましくは1~4質量部含有することができる。
【0029】
着色塗料(X)には、任意選択で、黒色染料を配合することも可能である。
【0030】
着色塗料(X)には、任意選択で、有機溶剤を使用することもできる。具体的には、通常塗料に用いられているものを使用することができ、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル;ブタノール、プロパノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトンの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
上記のうち、エステル、エーテル、アルコール、ケトンの有機溶剤が溶解性の観点から好ましい。
【0032】
着色塗料(X)により得られる着色塗膜の硬化膜厚は、光線透過抑制及び下地の隠蔽性等の観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは8~40μm、さらに好ましくは10~35μmである。
【0033】
着色塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料(X)が水性塗料である場合には例えば、着色塗料(X)に脱イオン水、任意選択で増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を10~60質量%程度、粘度をB6値で200~5000cpsに調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、任意選択で静電印加を行うこともできる。
【0034】
着色塗料(X)は、色安定性等の観点から、白黒隠蔽膜厚が好ましくは20μm以下、より好ましくは5~20μm、さらに好ましくは10~20μmである。本明細書において、「白黒隠蔽膜厚」とは、JIS K5600-4-1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
【0035】
2.工程(2)
工程(2)は、工程(1)で形成される着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程である。
【0036】
上記着色塗膜は硬化塗膜であっても未硬化塗膜であってもよい。本明細書において、硬化塗膜とは、JIS K 5600-1-1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600-1-1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0037】
上記着色塗膜を硬化させる場合には、通常の加熱(焼付け)手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により硬化させることができる。
【0038】
上記加熱は、好ましくは80~180℃、より好ましくは100~170℃、そしてさらに好ましくは120~160℃の温度で、好ましくは10~60分間、そしてより好ましくは15~40分間実施される。
【0039】
上記着色塗膜を未硬化塗膜とする場合には、光輝性顔料分散体(Y)を塗装する前に、着色塗膜を塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことができる。
【0040】
上記プレヒートは、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、そしてさらに好ましくは60~80℃の温度で、好ましくは30秒間~15分間、より好ましくは1分間~10分間、そしてさらに好ましくは2分間~5分間加熱することにより実施される。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常常温(ambient temperature)の空気又は25~80℃の温度に加熱された空気を、30秒間~15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0041】
光輝性顔料分散体(Y)
光輝性顔料分散体(Y)は、水、粘性調整剤(A)及び鱗片状光輝性顔料(B)を含有する光輝性顔料分散体であって、鱗片状光輝性顔料(B)が、透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光輝性顔料であり、且つ、固形分含有率が0.1~15質量%である光輝性顔料分散体である。
【0042】
本明細書において、透明な基材とは、可視光線を少なくとも90%透過する基材を指す。半透明な基材とは、可視光線を少なくとも10%、90%未満透過する基材を指す。また、本明細書において、真珠光沢感とは、照射された光の多重反射光が強く、観察角度による輝度変化が大きく、粒子感が低い質感である。
【0043】
光輝性顔料分散体(Y)に使用される粘性調整剤(A)は既知のものであることができ、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤等を挙げることができる。なかでも真珠光沢感に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤を使用することが好ましく、特にセルロース系粘性調整剤を使用することが好ましい。これらの粘性調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0044】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0046】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE-60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価は、30~300mgKOH/g、好ましくは80~280mgKOH/gの範囲内である。
【0047】
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタル等を挙げることができ、なかでも、真珠光沢感に優れた塗膜を得る観点から、セルロースナノファイバーを使用することが好ましい。
【0048】
上記セルロースナノファイバーは、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、ナノセルロースクリスタルと称されることもある。
【0049】
上記セルロースナノファイバーは、真珠光沢感に優れた塗膜を得る観点から、数平均繊維径が、好ましくは1~500nm、より好ましくは1~250nm、さらに好ましくは1~150nmの範囲内である。また、数平均繊維長が、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.1~15μm、さらに好ましくは0.1~10μmの範囲内である。
【0050】
上記数平均繊維径及び数平均繊維長は、例えば、セルロースナノファイバーを水で希釈した試料を分散処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像から測定算出される。
【0051】
上記セルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊し、水中で安定化させたものを使用することができる。ここでセルロース原料は、セルロースを主体とした様々な形態の材料を意味し、具体的には例えば、パルプ(木材パルプ、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど);微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース;セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース;及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロース;などが挙げられる。
【0052】
上記セルロース原料の解繊方法としては、セルロース原料が繊維状態を保持している限り特に制限はないが、例えば、ホモジナイザーやグラインダー等を用いた機械的解繊処理、酸化触媒等を用いた化学的処理、微生物等を用いた生物的処理といった方法が挙げられる。
【0053】
また、上記セルロースナノファイバーとしては、アニオン変性セルロースナノファイバーを使用することもできる。アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシルメチル化セルロースナノファイバー、リン酸基含有セルロースナノファイバー等が挙げられる。上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、例えば、セルロース原料に、カルボキシル基、カルボキシルメチル基、リン酸基等の官能基を公知の方法により導入し、得られた変性セルロースを洗浄して変性セルロースの分散液を調製し、この分散液を解繊して得ることができる。上記カルボキシル化セルロースは酸化セルロースとも呼ばれる。
【0054】
上記酸化セルロースは、例えば、前記セルロース原料を、N-オキシル化合物、臭化物、及びヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することによって得ることができる。
【0055】
N-オキシル化合物の使用量は、セルロースをナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で適宜選択できる。
【0056】
上記酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。酸化セルロースにおけるカルボキシル基量は、該酸化セルロースの固形分質量に対して、0.2mmol/g以上となるように条件を設定することが好ましい。カルボキシル基量は、酸化反応時間の調整;酸化反応温度の調整;酸化反応時のpHの調整;N-オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、酸化剤等の添加量の調整などを行なうことにより調整できる。
【0057】
前記カルボキシメチル化セルロースは、例えば、前記セルロース原料と溶媒とを混合し、セルロース原料のグルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属をマーセル化剤として使用して、反応温度0~70℃、反応時間15分~8時間程度で、マーセル化処理を行い、その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10倍モル添加し、反応温度30~90℃で30分~10時間程度反応することによって得ることができる。
【0058】
上記セルロース原料にカルボキシメチル基を導入して得られた変性セルロースにおけるグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.02~0.5であることが好ましい。
【0059】
上記のようにして得られたアニオン変性セルロースは、水性溶媒中で分散液とすることができ、さらに該分散液を解繊することができる。解繊の方法は特に限定されないが、機械的処理によって行う場合、使用される装置は、高速せん断型、衝突型、ビーズミル型、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式のいずれのタイプのものも使用することができる。また、これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
【0060】
また、上記酸化セルロースを塩基性の中和剤により中和したセルロースも、セルロース系粘性調整剤として好適に使用することができる。かかる中和剤による中和は、セルロースナノファイバーをはじめとするセルロース系粘性調整剤の耐水付着性を向上させる。本明細書における酸化セルロースの中和剤は、水酸化ナトリウム等の無機金属塩基よりも嵩高い、有機塩基の中和剤である。好ましい中和剤の例としては、第四級アンモニウム塩、アミン(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン)等の有機塩基を挙げることができる。好ましい第四級アンモニウム塩は水酸化第四級アンモニウムである。アミンとしてはアルキルアミンおよびアルコールアミンを挙げることができ、アルキルアミンとしては、N-ブチルアミン、N-オクチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミンなどを挙げることができ、アルコールアミンとしては、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ジメチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0061】
中和剤の含有量は、酸化セルロースの一部または全部を中和できる量であれば特に限定されないが、含有する酸基に対する中和当量として、0.2~1当量が望ましい。
【0062】
前記セルロースナノファイバーの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のレオクリスタ(登録商標)などが挙げられる。
【0063】
光輝性顔料分散体(Y)における粘性調整剤(A)の含有量は、金属調光沢に優れた塗膜を得る点から、後述の鱗片状光輝性顔料(B)の含有量100質量部に基づいて、2~270質量部の範囲内であることが好ましく、好ましくは2~200質量部、特に好ましくは3~150質量部の範囲内である。また、粘性調整剤(A)はセルロース系粘性調整剤であることが好ましい。
【0064】
粘性調整剤(A)はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0065】
光輝性顔料分散体(Y)に使用される鱗片状光輝性顔料(B)は、複層塗膜に真珠光沢感を付与する点から、透明又は半透明な鱗片状基材を金属酸化物で被覆した光輝性顔料を含むことが好ましい。
【0066】
ここでいう透明または半透明な鱗片状基材とは、天然マイカ、人工マイカ、ガラス、酸化鉄、酸化アルミニウムや各種金属酸化物等の鱗片状基材のことである。光輝性顔料とは、該鱗片状基材とは屈折率が異なる金属酸化物が該鱗片状基材の表面に被覆された光輝性顔料である。上記金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄等を挙げることができ、該金属酸化物の厚さの違いによって、上記光輝性顔料は種々の異なる干渉色を発現することができる。
【0067】
特に本発明では鱗片状光輝性顔料として、黒色を呈する光輝性顔料を使用することができ、上記金属酸化物の例として、少なくとも一部に鉄(Fe)を含むものを好適に挙げることができ、さらに鉄(Fe)以外の金属の酸化物としてチタン、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、錫、クロム、ジルコニウム等から任意に選ばれる1または2種類以上の金属を含む金属酸化物を挙げることができる。
【0068】
またさらに、黒色を呈する光輝性顔料の例としては、酸化チタンおよび/または酸化鉄で表面を被覆したのち、さらに低酸素雰囲気下において、被覆された酸化チタンおよび/または酸化鉄の一部を還元することによって得られた、低明度光輝性顔料である低次酸化チタンおよび/または低次酸化鉄が挙げられる。還元工程において、還元剤の種類や焼成温度等を変動させることによって、茶褐色から黒色、青色の色域の低明度光輝性顔料を得ることができる。
【0069】
該鱗片状光輝性顔料としては具体的には、下記に示す金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料等を挙げることができる。
【0070】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、該基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材である。人工マイカとは、SiO2、MgO、Al2O3、K2SiF6、Na2SiF6等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。人工マイカの基材としては具体的には、フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F2)、カリウム四ケイ素雲母(KMg2.5AlSi4O10F2)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5AlSi4O10F2)、Naテニオライト(NaMg2LiSi4O10F2)、LiNaテニオライト(LiMg2LiSi4O10F2)等が知られている。
【0071】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。該アルミナフレークは酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。
【0072】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラスを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。該金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料は、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じる。
【0073】
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを金属酸化物が被覆した顔料である。
【0074】
上記鱗片状光輝性顔料は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0075】
上記鱗片状光輝性顔料は、得られる塗膜の鮮映性及び真珠光沢感に優れる点から、平均粒子径が5~30μm、特に7~25μmの範囲内のものを使用することが好ましい。ここでいう粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
【0076】
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(B)の含有量は、得られる塗膜の鮮映性及び真珠光沢感に優れる点から、光輝性顔料分散体(Y)中の合計固形分100質量部に対し1~90質量部、特に3~80質量部、さらに好ましくは5~70質量部であることが好ましい。
【0077】
光輝性顔料分散体(Y)には、前記水、粘性調整剤(A)及び鱗片状光輝性顔料(B)に加えて、さらに任意選択で、表面調整剤(C)、有機溶剤、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜配合しても良い。
【0078】
表面調整剤(C)は、被塗物への光輝性顔料分散体(Y)の塗装時に、水に分散された前記鱗片状光輝性顔料(B)を被塗物上に一様に配向するのを支援するために使用される。
【0079】
表面調整剤(C)は、既知のものを制限なく使用することができ、例えばシリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素表面調整剤、アセチレンジオール系表面調整剤等の表面調整剤が挙げられる。上記表面調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0080】
表面調整剤(C)の市販品は例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エヴォニック社製のTegoシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。
【0081】
表面調整剤(C)としては、なかでも得られる塗膜の真珠光沢感及び耐水性等の観点から、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレンジオール系表面調整剤が好ましい。シリコーン系表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンやこれを変性した変性シリコーンが使用される。変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0082】
光輝性顔料分散体(Y)は、得られる塗膜の付着性や貯蔵安定性の観点から基体樹脂、架橋剤及び分散樹脂を含むことができる。
【0083】
上記基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0084】
上記架橋剤としては、メラミン樹脂、メラミン樹脂誘導体、尿素樹脂、(メタ)アクリルアミド、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ブロック化されていてもされていなくてもよいポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0085】
上記分散樹脂としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリカルボン酸樹脂系、ポリエステル系などの、既存の分散樹脂の使用が可能である。
【0086】
光輝性顔料分散体(Y)が基体樹脂、架橋剤及び分散樹脂等の樹脂成分を含む場合、その合計配合量は、鱗片状光輝性顔料の配合量100質量部を基準として、0.01~500質量部、好ましくは5~300質量部、さらに10~200質量部とすることが好ましい。
【0087】
光輝性顔料分散体(Y)は、鱗片状光輝性顔料(B)以外に、任意選択で、他の鱗片状光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等の顔料を含有することができる。
【0088】
鱗片状光輝性顔料(B)以外の鱗片状光輝性顔料としては、アルミニウムフレーク顔料、蒸着金属フレーク顔料等が挙げられる。
【0089】
着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、例えばチタンイエローなどの複合金属酸化物顔料や透明性酸化鉄顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料及びカーボンブラック顔料などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0091】
光輝性顔料分散体(Y)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。粒子感が低い真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、塗装時の固形分含有率を、光輝性顔料分散体(Y)に基づいて、0.1~15質量%、好ましくは0.2~5質量%に調整しておくことが好ましい。
【0092】
真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、光輝性顔料分散体(Y)中の各成分の配合割合(固形分質量)は、好ましくは下記の範囲とすることができる。
【0093】
光輝性顔料分散体(Y)に対して、
粘性調整剤(A):固形分として0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、
鱗片状光輝性顔料 (B):0.05~10質量%、好ましくは0.1~7質量%、より好ましくは0.2~5質量%、
表面調整剤(C):0~5質量%、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0.1~3質量%。
【0094】
光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が好ましくは50~900mPa・s、特には100~800mPa・sである。このとき、使用する粘度計は、デジタル式ビスメトロン粘度計VDA型(芝浦システム社製、B型粘度計)である。
【0095】
光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の複層塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
【0096】
光輝性顔料分散体(Y)が被塗物に付着してから30秒後の膜厚は、真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~80μm、さらに好ましくは5~60μmである。
【0097】
光輝性塗膜の乾燥膜厚は、真珠光沢感に優れる塗膜を得る観点から、好ましくは0.05~3μm、より好ましくは0.1~2.5μm、特に好ましくは0.2~2μmである。なお、本明細書において、「乾燥膜厚」は、熱硬化性の塗料または分散体を塗装して未硬化の塗膜を形成させた後、該未硬化の塗膜を焼付処理して形成される硬化した乾燥状態の塗膜の厚さを意味する。乾燥膜厚は、例えば、JIS K 5600-1-7(1999)にしたがって測定することができる。
【0098】
着色塗料(X)を塗装して得られた着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する。光輝性顔料分散体(Y)の塗装は、着色塗料を塗装後、乾燥または加熱硬化せしめた塗膜上に行うことができるが、複層塗膜の付着性や耐水性の観点から、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、形成される未硬化の塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成することが好ましい。
【0099】
また、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して形成される光輝性塗膜は、乾燥または加熱硬化させることができるが、複層塗膜の付着性や耐水性の観点から、未硬化の状態で後述するクリヤー塗料(Z)を塗装することが好ましい。
【0100】
3.工程(3)
工程(3)は、光輝性顔料分散体(Y)によって形成された光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装する工程である。
【0101】
クリヤー塗料(Z)
クリヤー塗料(Z)には、公知の熱硬化性クリヤーコート塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤーコート塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0102】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0103】
クリヤー塗料(Z)の基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0104】
また、上記クリヤー塗料(Z)は、1液型塗料であってもよいし、2液型塗料等の多液型塗料であってもよい。いずれの塗料の場合も、上記の基体樹脂/硬化剤の組み合わせを使用することができる。
【0105】
なかでもクリヤー塗料(Z)として好ましくは、得られる塗膜の付着性の観点から下記の水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である。
【0106】
水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有するものであれば従来公知の樹脂が制限なく使用できる。該水酸基含有樹脂としては例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂を挙げることができ、特に好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂を挙げることができる。
【0107】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、塗膜の耐擦り傷性や耐水性の観点から、80~200mgKOH/gの範囲内であるのが好ましく、100~180mgKOH/gの範囲内であるのがさらに好ましい。
【0108】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、塗膜の耐酸性や平滑性の観点から、2500~40000の範囲内であるのが好ましく、5000~30000の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0109】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0110】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は-40℃~20℃、特に-30℃~10℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が-40℃以上であると塗膜硬度が十分であり、また、20℃以下であると塗膜の塗面平滑性が維持される。
【0111】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0112】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0113】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0114】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0115】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0116】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。該ポリイソシアネートの誘導体は、単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0117】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0118】
脂肪族ジイソシアネートのなかでもヘキサメチレンジイソシアネート系化合物、脂環族ジイソシアネートのなかでも4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を好適に使用することができる。その中でも特に、付着性、相溶性等の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体が最適である。
【0119】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0120】
また、ポリイソシアネート化合物として、上記ポリイソシアネート及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0121】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0122】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、任意選択で溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0123】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明において、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性等の観点から、水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(OH/NCO)は好ましくは0.5~2、さらに好ましくは0.8~1.5の範囲内である。
【0124】
クリヤー塗料(Z)として水酸基含有樹脂及びイソシアネート基含有化合物を含有する2液型クリヤー塗料を使用する場合は、貯蔵安定性から、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物とが分離した形態であることが好ましく、使用直前に両者を混合して調整される。
【0125】
クリヤー塗料(Z)には、さらに任意選択で、水又は有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0126】
上記クリヤー塗料(Z)には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、該クリヤー塗料(Z)中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以下、好ましくは0.01~10質量部である。
【0127】
クリヤー塗料(Z)の形態は特に制限されるものではないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤等が使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂等の調製時に用いたものをそのまま用いても良いし、更に適宜加えても良い。
【0128】
クリヤー塗料(Z)の固形分濃度は、30~70質量%程度であるのが好ましく、40~60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0129】
前記光輝性塗膜上に、前述のクリヤー塗料(Z)の塗装が行なわれる。クリヤー塗料(Z)の塗装は、特に限定されず前記着色塗料と同様の方法で行うことができ、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、任意選択で、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0130】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装にあたっては、クリヤー塗料(Z)の粘度を、塗装方法に適した粘度範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15~60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0131】
4.追加の工程及び複層塗膜の特性
本発明においては、上記着色塗料(X)を塗装することにより形成される未硬化の着色塗膜、上記光輝性顔料分散体(Y)を塗装することにより形成される未硬化の光輝性塗膜及び上記クリヤー塗料(Z)を塗装することにより形成される未硬化のクリヤー塗膜の3つの塗膜を加熱することによって、別々に硬化することもできるし、同時に硬化させることもできる。複層塗膜の付着性や耐水性の観点からは、未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜、及び未硬化のクリヤー塗膜のこれら3つの未硬化の塗膜を加熱することによって、同時に硬化させることが好ましい。
加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。加熱温度は、特に制限されるものではないが、好ましくは70~150℃、より好ましくは80~140℃の範囲内にある。加熱時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10~40分間、より好ましくは20~30分間の範囲内である。
【0132】
被塗物に、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し(工程(1))、形成される着色塗膜上に、本発明の光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し(工程(2))、形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する(工程(3))ことを含む複層塗膜形成方法において、得られる複層塗膜は、塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に5度の角度で受光したときの分光反射率に基づくXYZ表色系における輝度を示すY値(Y5)が50以上、好ましくは65以上であり、かつ塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に25度の角度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*値(L*25)が25以下、好ましくは22以下の範囲内である。
【0133】
Y5値は、塗膜に対して45度の角度で照射した光を、正反射光に対して入射光方向に5度の角度で受光したときの分光反射率に基づくXYZ表色系における輝度の値である。Y5値が50未満であると、複層塗膜の光輝性に乏しい。
【0134】
L*25値は、ハイライトの明度を指し、多角度分光光度計(「MA-68II」(商品名、X-Rite社製)を使用して、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から測定光を照射し、正反射角から測定光の方向に25°の角度で受光した光について測定したL*値である。L*25値が小さいほど、得られた複層塗膜の明度が低く、漆黒性に優れることを意味する。L*25値が25を超えると、複層塗膜の漆黒性が損なわれる。
【0135】
本発明は以下の構成を採用することもできる。
[1]下記の工程(1)~(3):
(1)被塗物上に、着色塗料(X)を塗装してL*a*b*表色系における明度L*値が5以下の範囲内となる着色塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成される塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成される光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、
を含む複層塗膜形成方法であって、
光輝性顔料分散体(Y)が、水、粘性調整剤(A)及び鱗片状光輝性顔料(B)を含有する光輝性顔料分散体であって、鱗片状光輝性顔料(B)が透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光輝性顔料であり、且つ固形分含有率が0.1~15質量%であり、
得られる複層塗膜が、塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に5度の角度で受光したときの分光反射率に基づくXYZ表色系における輝度を示すY値(Y5)が50以上で、かつ塗膜に対して45度の角度で照射した光を正反射光に対して入射光方向に25度の角度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*値(L*25)が25以下である
ことを特徴とする複層塗膜形成方法。
[2]前記鱗片状光輝性顔料(B)が黒色を呈する光輝性顔料を含む[1]に記載の複層塗膜形成方法。
[3]前記が黒色を呈する光輝性顔料が、鉄、チタン、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、錫、クロム、ジルコニウム等から任意に選ばれる1または2種類以上の金属の金属酸化物を含む[1]又は[2]に記載の複層塗膜形成方法。
[4]前記鱗片状光輝性顔料が、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、又は金属酸化物被覆シリカフレーク顔料である[1]~[3]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[5]前記鱗片状光輝性顔料(B)の含有量が、光輝性顔料分散体(Y)中の合計固形分100質量部に対し1~90質量部である[1]~[4]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[6]前記光輝性顔料分散体(Y)が、さらに表面調整剤(C)を含有する請求項[1]~[5]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[7]前記着色塗料(X)がアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はウレタン樹脂を含む[1]~[6]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[8]前記着色塗料(X)が黒色顔料を含む[1]~[7]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[9]着色塗料(X)が、ペリレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブを含有する[1]~[8]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[10]前記着色塗料(X)が、カーボンブラックを含有する[1]~[9]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[11]前記粘性調整剤(A)が、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、又はセルロース系粘性調整剤のうちの1種または2種以上を含む[1]~[10]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[12]粘性調整剤(A)の含有量が、鱗片状光輝性顔料(B)の含有量100質量部に基づいて、2~270質量部の範囲内である[1]~[11]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[13]光輝性塗膜の乾燥膜厚が0.05~3μmである[1]~[12]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[14]クリヤー塗料(Z)が、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である[1]~[13]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
[15]未硬化の前記着色塗膜、前記光輝性塗膜及び前記クリヤー塗膜の3つの塗膜を同時に硬化させる[1]~[14]のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【実施例】
【0136】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0137】
光輝性顔料分散体の調製
製造例1
粘性調整剤(A-1)(商品名:レオクリスタ、固形分2.0%、セルロースナノファイバーの水分散体,第一工業製薬社製)18.8部(固形分で0.38部)、蒸留水81.3部、Xirallic(登録商標)NXT M260-60 WNT Panthera Silver(商品名、チタン酸鉄(FeTiO3)を含む金属酸化物で被覆されたアルミナフレーク顔料、黒色、メルク社製、平均粒子径20μm)1.4部、アクリル樹脂水分散体(R-1)(注3)0.9部(固形分で0.27部)、表面調整剤(C-1)(注4)0.5部(固形分で0.5部)、ジメチルエタノールアミン0.005部、エチレングリコールモノブチルエーテル0.5部を配合して攪拌混合し、光輝性顔料分散体(Y-1)を得た。
【0138】
製造例2~17
表1に示す配合割合とする以外は製造例1と同様にして、光輝性顔料分散体(Y-2)~(Y-17)を得た。
【0139】
表1中の注記は以下の通りである。
(注1)粘性調整剤(A-2):TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルラジカル)触媒を用いた公知の酸化手法で処理された酸化パルプのスラリーを機械解繊して得られたセルロースナノファイバー水性分散液をイオン交換カラムに通しジブチルアミンで中和したものを使用した。固形分2質量%。
(注2)粘性調整剤(A-3):、固形分:28質量%、商品名「Acrysol ASE-60」、ポリアクリル酸系粘性調整剤、ダウケミカル社製
(注3)アクリル樹脂水分散体(R-1):下記のとおり製造した。
【0140】
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、及び「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0141】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂水分散体(R-1)を得た。得られたアクリル樹脂水分散体は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0142】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn-ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0143】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
(注4)表面調整剤(C-1):固形分100質量%。商品名「BYK348」、BYK社製、シリコーン系表面調整剤。
(注5)表面調整剤(C-2):固形分48質量%。商品名「ポリフローWS-314」、共栄社化学社製、アクリル系表面調整剤
(注6)アクリル樹脂溶液(R-2):下記のとおり製造した。
【0144】
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル35部及びプロピレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、内容物を加熱しながら撹拌して、110℃に保持した。反応容器に、「NFバイソマーS20W」(第一工業製薬社製、商品名、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート)15部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、メチルメタクリレート30部、n-ブチルアクリレート15部、スチレン5部、イソボルニルアクリレート20部、アクリル酸5部、アゾビスイソブチロニトリル1部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、内容物を110℃で30分間熟成し、次いで反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。次いで、内容物を110℃で1時間熟成した後に冷却し、固形分50%のアクリル樹脂溶液(R-2)を得た。
(注7)アルミニウムペースト:固形分20%、商品名、「STAPA IL HYDROLANS1500」、Eckart社製
(注8)カーボンペースト:カーボンブラック(商品名、「RAVEN 5000」、BIRLA CARBON社製)を3級アミノ基含有顔料分散樹脂溶液で固形分30:70となるように配合し、中和剤、脱イオン水を加えて分散処理を行い、固形分15%のペーストとした。
(注9)紫外線吸収剤:固形分40%、商品名「TINUVIN 479-DW(N)」、BASF社製
(注10)光安定剤:固形分50%、商品名「TINUVIN 123-DW(N)」、BASF社製
【0145】
【0146】
試験塗板の作成
実施例1
脱脂及びリン酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント社製、アミン変性エポキシ樹脂系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて被塗物1を得た。
【0147】
被塗物1上に、着色塗料(X-1)「WP-522H」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、カーボンブラック配合により得られる塗膜のL*:2)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30μmになるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートし、さらにその上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(Y-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.5μmとなるように塗装した。
【0148】
その後、室温にて3分間放置後に、熱風循環式乾燥路にて80℃で3分間加熱し、ついで、クリヤー塗料(Z-1)「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥させて試験板とした。
【0149】
ここで、光輝性顔料分散体について、乾燥塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=(sc*10000)/(S*sg)
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
S:塗着固形分の評価面積[cm2]
sg:塗膜比重[g/cm3]。
【0150】
実施例2~19及び比較例1~2
実施例1において着色塗料種ならびに光輝性顔料分散体種及び膜厚を表2に記載の構成とする以外は全て実施例1と同様にして、実施例2~19及び比較例1~2の試験塗板を得た。
【0151】
なお、表2中のベース塗料(X-2)~(X-3)は以下の通りである。
(X-2):「WP-522H」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、カーボンブラック配合により得られる得られる塗膜のL*値:5)。
(X-3):「WP-522H」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、カーボンブラック配合により得られる得られる塗膜のL*値:10)。
【0152】
実施例20
脱脂及びリン酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめた。得られた上記鋼板の電着塗面に、「TP-65 No.8110」(商品名:関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤系中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:20)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚20μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗り塗膜を形成せしめ被塗物2を得た。
【0153】
被塗物2上に、着色塗料(X-4)として「WBC-713T #202」(商品名、関西ペイント社製、アクリル-メラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、得られる塗膜のL*値:2)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚10μmになるように静電塗装し、3分間放置後、さらにその上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(Y-1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.5μmとなるように塗装した。
【0154】
その後、室温にて3分間放置後に、熱風循環式乾燥路にて80℃で3分間加熱し、ついで、クリヤー塗料(Z-1)「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥させて試験板とした。
【0155】
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験塗板を下記の項目について評価した。表2にその結果を併せて示す。
【0156】
輝度を示すY値:
照射された光の多重反射光の強さは、XYZ表色系において輝度を表すY値によって表される。特に本明細書では、真珠光沢感で特徴的な、正反射光に対して入射方向に5度ずれた角度の輝度、すなわちY5値をもって評価する。
Y5:塗膜に45度の角度で照射した光を、正反射光に対して入射光方向に5度の角度で受光したときの分光反射率に基づいて、XYZ表色系における輝度Y値(Y5)を計算した。測定及び計算には、村上色彩研究所製の測色計「ゴニオメーターGCMS-4(商品名)」を用いた。
L*25: L*25値は多角度分光光度計(「MA-68II」(商品名、X-Rite社製)を使用して、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から測定光を照射し、正反射角から測定光の方向に25°の角度で受光した光について測定した。
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