(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】基板保持ハンド及び基板移送ロボット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240813BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/08 P
(21)【出願番号】P 2020033815
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 怜
(72)【発明者】
【氏名】高氏 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】清水 一平
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-42112(JP,A)
【文献】特開2005-191464(JP,A)
【文献】特開2003-258076(JP,A)
【文献】特開2002-134586(JP,A)
【文献】特開2017-175072(JP,A)
【文献】特開2012-6143(JP,A)
【文献】特開2014-86472(JP,A)
【文献】特開2010-186850(JP,A)
【文献】特開2011-159738(JP,A)
【文献】特開2013-179308(JP,A)
【文献】特開2010-239087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の基準キャプチャレンジが規定された支持板と、
前記基準キャプチャレンジ内において前記支持板上に配置された複数のパッドと、
前記基準キャプチャレンジの外周円に沿って配置され、前記複数のパッドに支持された基板の前記基準キャプチャレンジの外周側への移動を規制する少なくとも1つの固定ストッパと、
前記固定ストッパと前記支持板からの高さが一致する部分を有する少なくとも1つの可動ストッパと、
前記可動ストッパを、前記基準キャプチャレンジの外周円上又は外側の退避位置から、前記退避位置よりも前記固定ストッパに近づいた進出位置まで移動させるように構成されたストッパアクチュエータとを備え、
前記進出位置にある前記可動ストッパと前記固定ストッパとにより円形の縮小キャプチャレンジが規定され、前記縮小キャプチャレンジの直径が前記基板の直径より大きく且つ前記基準キャプチャレンジの直径より小さ
く、
前記基板の側面を前記可動ストッパ及び前記固定ストッパで把持せずに、前記縮小キャプチャレンジに収めた前記基板を前記複数のパッドに載置された状態で前記支持板に保持する、
基板保持ハンド。
【請求項2】
前記ストッパアクチュエータを制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記複数のパッドに前記基板が載置された後の所定のタイミングで前記可動ストッパを前記退避位置から前記進出位置まで移動するように前記ストッパアクチュエータを動作させる、
請求項1に記載の基板保持ハンド。
【請求項3】
前記ストッパアクチュエータを制御する制御装置と、
前記複数のパッドに載置された前記基板の有無を検出するセンサとを更に備え、
前記制御装置は、前記センサによって前記複数のパッドに前記基板が載置されたことが検出された後の所定のタイミングで前記可動ストッパを前記退避位置から前記進出位置まで移動するように前記ストッパアクチュエータを動作させる、
請求項1に記載の基板保持ハンド。
【請求項4】
前記基準キャプチャレンジの外周円に沿って前記支持板の基端部に配置され、前記複数のパッドに支持された前記基板の基端側への移動を規制する少なくとも1つの後ストッパを、更に備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の基板保持ハンド。
【請求項5】
前記可動ストッパの先端側に設けられ、
前記基板の載置面となる上向きの面を有し、前記可動ストッパと一体的に動作する可動パッドを更に備え、
前記可動ストッパが前記退避位置にあるとき、前記可動ストッパは前記基準キャプチャレンジの外周円上に位置し且つ前記可動パッドが前記基準キャプチャレンジの内側に位置する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の基板保持ハンド。
【請求項6】
前記支持板に第1基準キャプチャレンジと当該第1基準キャプチャレンジから先端側へずれた第2基準キャプチャレンジとの複数の前記基準キャプチャレンジが規定され、
前記第1基準キャプチャレンジについて、前記複数のパッド、前記固定ストッパ、前記可動ストッパ、及び前記ストッパアクチュエータの組み合わせを含む一段目支持ユニットが設けられ、
前記第2基準キャプチャレンジについて、前記複数のパッド、前記固定ストッパ、前記可動ストッパ、及び前記ストッパアクチュエータの組み合わせを含み、前記一段目支持ユニットよりも前記支持板から高い位置で前記基板を支持する二段目支持ユニットが設けられている、
請求項1に記載の基板保持ハンド。
【請求項7】
アームと、
前記アームの先端部に装着された請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板保持ハンドとを備える、
基板移送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやガラス基板等の基板を保持するための基板保持ハンド、及びそれを備える基板移送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハやガラス基板等の基板を搬送する基板移送ロボットが知られている。基板移送ロボットは、一般に、マニピュレータと、その先端部に装着された基板保持ハンドとを備える。基板保持ハンドの基板の保持方式としては、把持式、吸着式、載置式などの複数の方式が知られている。そのうち載置式のものは、構造が単純なうえ、基板からのパーティクルの発生量を抑えられるという利点がある。特許文献1は、載置式の基板保持ハンドの一例を開示している。
【0003】
図13は、従来の載置方式の基板保持ハンド100の平面図である。
図13に示す従来の載置方式の基板保持ハンド100は、薄板状の支持板110と、支持板110上に分散して配置された複数のパッド120とを備える。支持板110に円形のキャプチャレンジR
0が規定され、キャプチャレンジR
0の外周円P
0に沿って複数のパッド120が並べられる。各パッド120は、基板Wを支持するパッドを有し、パッドはキャプチャレンジR
0の中心へ向かうにつれて下る傾きを有する。これにより、複数のパッド120に支持された基板Wは、キャプチャレンジR
0より外周側への水平方向の移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の載置方式の基板保持ハンド100では、キャプチャレンジR0の外周円P0の直径φP0は基板Wの直径φWよりも十分に大きい。よって、基板保持ハンド100で基板Wを受け取るときに、誤差などによってキャプチャレンジR0の中心と基板Wの中心とが一致しなくても、キャプチャレンジR0に基板Wを収めることができる。しかし、キャプチャレンジR0が基板Wよりも十分に大きいことから、基板保持ハンド100に対する基板Wの精密な位置決めをすることが難しい。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、載置式の基板保持ハンド及びそれを備える基板移送ロボットにおいて、基板保持ハンドに対する基板の位置決めの精度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る基板保持ハンドは、
円形の基準キャプチャレンジが規定された支持板と、
前記基準キャプチャレンジ内において前記支持板上に配置された複数のパッドと、
前記基準キャプチャレンジの外周円に沿って配置され、前記複数のパッドに支持された基板の前記基準キャプチャレンジの外周側への移動を規制する少なくとも1つの固定ストッパと、
前記固定ストッパと前記支持板からの高さが一致する部分を有する少なくとも1つの可動ストッパと、
前記可動ストッパを、前記基準キャプチャレンジの外周円上又は外側の退避位置から、前記退避位置よりも前記固定ストッパに近づいた進出位置まで移動させるように構成されたストッパアクチュエータとを備え、
前記進出位置にある前記可動ストッパと前記固定ストッパとにより円形の縮小キャプチャレンジが規定され、前記縮小キャプチャレンジの直径が前記基板の直径より大きく且つ前記基準キャプチャレンジの直径より小さく、
前記基板の側面を前記可動ストッパ及び前記固定ストッパで把持せずに、前記縮小キャプチャレンジに収めた前記基板を前記複数のパッドに載置された状態で前記支持板に保持することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る基板移送ロボットは、アームと、前記アームの先端部に装着された前記の基板保持ハンドとを備える。
【0009】
上記構成の基板保持ハンド及びそれを備える基板移送ロボットでは、基準キャプチャレンジ内に基板が載置されたあとで、可動ストッパを退避位置から進出位置まで前進させることで、基板の載置範囲(キャプチャレンジ)を縮小キャプチャレンジまで縮小することができる。
【0010】
基板の載置範囲が縮小キャプチャレンジまで縮小されることによって、ハンド上の基板の位置は縮小キャプチャレンジ内に特定される。つまり、ハンド上の基板の存在範囲が狭められる。このように、上記構成の基板保持ハンドは、基板の保持形式が載置式でありながら、基板がハンドに対してより厳密に位置決めされ得る。これにより、ハンドから治具等の移載対象に対して良好な位置精度で基板を移載することができる。
【0011】
更に、縮小キャプチャレンジに収まっている基板は、複数のパッドに載置されているが、可動ストッパ及び固定ストッパによって把持されてはいない。このように、基板はハンドに把持されないので、基板が把持される際にハンドと基板との摩擦によって生じる微粉による汚染が回避される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、載置式の基板保持ハンド及びそれを備える基板移送ロボットにおいて、基板保持ハンドに対する基板の位置決めの精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板保持ハンドを備える基板移送ロボットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、基板移送ロボットの制御系統の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、基板保持ハンドの概略側面図である。
【
図5】
図5は、二段目の基板支持部に基板が載置された様子を示す基板保持ハンドの平面図である。
【
図6】
図6は、二段目の基板支持部に基板が載置された様子を示す基板保持ハンドの概略側面図である。
【
図7】
図7は、制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、基板を移載する際の処理の流れ図である。
【
図9】
図9は、第1キャプチャレンジが縮小された様子を示す基板保持ハンドの平面図である。
【
図10】
図10は、第2キャプチャレンジが縮小された様子を示す基板保持ハンドの平面図である。
【
図11】
図11は、変形例1に係る基板保持ハンドの平面図である。
【
図12】
図12は、変形例2に係る基板保持ハンドの平面図である。
【
図13】
図13は、従来の載置式の基板保持ハンドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板保持ハンド(以下、単に「ハンド1」と称する)を備える基板移送ロボット2を示す斜視図である。
図1に示す基板移送ロボット2は、基板Wを移載するロボットであり、例えば、半導体処理設備に備えられている。基板Wは、半導体プロセス等において用いられる薄い板である。基板には、例えば、半導体ウエハ、ガラスウエハ、サファイヤ(単結晶アルミナ)ウエハ等が含まれる。半導体ウエハには、例えば、シリコンウエハ、シリコン以外の半導体単体のウエハ、化合物半導体のウエハ等が含まれる。ガラスウエハには、例えば、FPD(Flat Panel Display)用ガラス基板、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用ガラス基板等が含まれる。
【0015】
〔基板移送ロボット2の概略構成〕
本実施形態に係る基板移送ロボット2は、基台3と、基台3に支持されたアーム4と、アーム4の先端部に装着されたハンド1と、制御装置8とを備える。本実施形態に係るアーム4は、水平多関節型ロボットアームであるが、アーム4の態様はこれに限定されない。
【0016】
アーム4は、基台3に設けられた昇降軸40と、第1リンク41と、第2リンク42とを備える。昇降軸40の上端に第1関節J1を介して第1リンク41の基端部が連結されている。第1リンク41の先端部に第2関節J2を介して第2リンク42の基端部が連結されている。第2リンク42の先端部に手首関節J3を介してハンド1の基端部が連結されている。
【0017】
図2は、基板移送ロボット2の制御系統の構成を示す図である。
図1及び
図2に示すように、昇降軸40は、昇降駆動装置51によって、基台3に対して昇降駆動される。昇降駆動装置51は、例えば、サーボモータと、サーボモータの出力軸の回転位置を検出する回転位置センサと、サーボモータの出力で動作する直動機構とを有する。第1関節J1は、第1リンク41を昇降軸40に対して垂直な第1軸線L1を中心として回動可能に連結する。第1関節J1は、第1関節駆動装置52によって駆動される。第1関節駆動装置52は、例えば、サーボモータと、サーボモータの出力軸の回転位置を検出する回転位置センサと、サーボモータの出力を第1関節J1へ伝達する動力伝達機構とを有する。第2関節J2は、第1リンク41に対して第2リンク42を垂直な第2軸線L2を中心として回動可能に連結する。第2関節J2は、第2関節駆動装置53によって駆動される。第2関節駆動装置53は、例えば、サーボモータと、サーボモータの出力軸の回転位置を検出する回転位置センサと、サーボモータの出力を第2関節J2に伝達する動力伝達機構とを有する。手首関節J3は、第2リンク42に対してハンド1を垂直な第3軸線L3を中心として回動可能に連結する。手首関節J3は、手首関節駆動装置54によって駆動される。手首関節駆動装置54は、例えば、サーボモータと、サーボモータの出力軸の回転位置を検出する回転位置センサと、サーボモータの出力を手首関節J3に伝達する動力伝達機構とを有する。
【0018】
〔ハンド1の構成〕
図3は、ハンド1の平面図である。
図1及び
図3に示すように、ハンド1には、ハンド1の基端と先端とを繋ぐ水平なハンド軸線L4が規定されている。ハンド1は、基端部分を形成する基部9と、先端部分を形成する支持板11とを備える。基部9は、第2リンク42に手首関節J3を介して接続されたケーシング90を備える。ケーシング90は、先端側を向いた側面に開口部90aを有する。ケーシング90に支持板11の基端部が固定され、支持板11はケーシング90の開口部90aからハンド先端側へ向かって突出している。
【0019】
支持板11は、先端側が二股に分かれた薄板状を呈する。但し、支持板11の形状はこれに限定されない。支持板11の先端部分には、少なくとも一対の前支持ブロック12が設けられている。本実施形態では一対の前支持ブロック12が、支持板11の二股に分かれた先端部分の各々に振り分けて配置されている。また、支持板11の基端部分には、少なくとも1つの第1後支持ブロック13が設けられている。本実施形態では一対の第1後支持ブロック13が支持板11の基端部分に配置されている。
【0020】
ケーシング90内には、一対の第2後支持ブロック14が設けられている。一対の第2後支持ブロック14は、ハンド軸線L4と平行に進退移動可能である。一対の第2後支持ブロック14は、最も後退した状態でケーシング90内にある。一対の第2後支持ブロック14は、開口部90aを通ってケーシング90の外側へ進出することができ、最も前進した状態で開口部9aよりも前方にある。
【0021】
一対の第2後支持ブロック14は、支持部材141に取り付けられている。支持部材141は先端部分が二股に分かれたチャンネル形の板状部材であって、二股に分かれた先端部分の各々に第2後支持ブロック14が設けられている。支持部材141は、ブロックアクチュエータ15によってハンド軸線L4と平行に進退駆動される。本実施形態に係るブロックアクチュエータ15は、エアシリンダ151及びその制御弁153を含む(
図2、参照)。エアシリンダ151のシリンダロッド152に、支持部材141が接続されている。
【0022】
平面視において、ケーシング90内に後退している一対の第2後支持ブロック14の間には、第1可動ストッパ23及び第2可動ストッパ24が設けられている。第1可動ストッパ23及び第2可動ストッパ24は、支持板11の主面に対し垂直な面を有する。第1可動ストッパ23及び第2可動ストッパ24は、ハンド軸線L4と平行に進退移動可能である。第1可動ストッパ23及び第2可動ストッパ24は、最も後退した状態でケーシング90内にある。第1可動ストッパ23及び第2可動ストッパ24は、開口部90aを通ってケーシング90の外側へ進出することができ、最も前進した状態で開口部9aよりも前方にある。
【0023】
第1可動ストッパ23は、第1ストッパアクチュエータ25によってハンド軸線L4と平行に進退移動(往復移動)される。本実施形態に係る第1ストッパアクチュエータ25は、エアシリンダ251及びその制御弁253を含む(
図2、参照)。エアシリンダ251のシリンダロッド252に、第1可動ストッパ23が接続されている。
【0024】
第2可動ストッパ24は、第2ストッパアクチュエータ26によってハンド軸線L4と平行に進退駆動される。本実施形態に係る第2ストッパアクチュエータ26は、エアシリンダ261及びその制御弁263を含む(
図2、参照)。エアシリンダ261のシリンダロッド262に、第2可動ストッパ24が接続されている。
【0025】
ケーシング90の開口部90aから前方へ進出した一対の第2後支持ブロック14、第1可動ストッパ23、及び第2可動ストッパ24と支持板11との干渉を避けるために、支持板11の基端部分に開口部11aが形成されている。
【0026】
図4は、ハンド1の概略側面図である。
図4に示すように、前支持ブロック12は側面視で少なくとも3段の階段状を呈する。前支持ブロック12は、下から一段目に第1前パッド12aが形成され、第1前パッド12aの上段に第2前パッド12bが形成されている。第1前パッド12a及び第2前パッド12bは、基板Wの載置面となる上向きの面を有する。支持板11から第2前パッド12bの高さは、支持板11から第1前パッド12aの高さよりも高い。なお、支持板11からの「高さ」は、支持板11の主面を高さ基準面として、高さ基準面から当該高さ基準面と垂直な方向の距離と規定される。
【0027】
前支持ブロック12の下から一段目と二段目の段差面には、第1前ストッパ12cが形成されている。また、前支持ブロック12の下から二段目と三段目の段差面には、第2前ストッパ12dが形成されている。前支持ブロック12において、第1前パッド12a、第1前ストッパ12c、第2前パッド12b、及び第2前ストッパ12dがこの順序でハンド先端へ向かって並ぶ。第1前ストッパ12c及び第2前ストッパ12dは、支持板11の主面に対し垂直な面を有する。第1可動ストッパ23は、一対の第1前ストッパ12cと支持板11からの高さが一致する部分を有し、一対の第1前ストッパ12cと間に第1キャプチャレンジR1(請求の範囲の「第1基準キャプチャレンジ」に相当)を挟んで対峙している。第2可動ストッパ24は、一対の第2前ストッパ12dと支持板11からの高さが一致する部分を有し、一対の第2前ストッパ12dと間に第2キャプチャレンジR2(請求の範囲の「第2基準キャプチャレンジ」に相当)を挟んで対峙している。一対の第1前ストッパ12c及び一対の第2前ストッパ12dは、支持板11との相対的な位置が固定された固定ストッパである。本実施形態に係るハンド1は一対の第1前ストッパ12cを備えるが、第1前ストッパ12cは少なくとも1つあればよい。同様に、本実施形態に係るハンド1は一対の第2前ストッパ12dを備えるが、第2前ストッパ12dは少なくとも1つあればよい。
【0028】
第1後支持ブロック13は、側面視で少なくとも2段の階段状を呈する。第1後支持ブロック13は、下から一段目に第1後パッド13aが形成されている。第1後パッド13aは、基板Wの載置面となる上向きの面を有する。第1後支持ブロック13の下から一段目と二段目の段差面に、第1後ストッパ13cが形成されている。第1後ストッパ13cは、支持板11の主面に対し垂直な面を有する。第1後ストッパ13cは、第1後パッド13aに対しハンド1の基端側にある。
【0029】
第2後支持ブロック14は、側面視で少なくとも2段の階段状を呈する。第2後支持ブロック14は、下から一段目に第2後パッド14aが形成されている。第2後パッド14aは、基板Wの載置面となる上向きの面を有する。支持板11から第2後パッド14aの高さは、支持板11から第1後パッド13aの高さよりも高い。第2後支持ブロック14の下から一段目と二段目の段差面に、第2後ストッパ14cが形成されている。第2後ストッパ14cは、支持板11の主面に対し垂直な面を有する。第2後ストッパ14cは、第2後パッド14aに対しハンド基端側にある。
【0030】
図3に示すように、ハンド1には所定の第1支持板中心C
1を中心とする円形の第1キャプチャレンジR
1が規定される。第1キャプチャレンジR
1の外周円P
1の直径φP
1は、基板Wの直径φWよりも若干(数mm程度)大きい。第1キャプチャレンジR
1の外周円P
1に沿って、一対の第1前ストッパ12c及び一対の第1後ストッパ13cが配置されている。これらのストッパ12c,13cの面は、概ね第1支持板中心C
1を向いている。
【0031】
図4に示すように、一対の第1前パッド12aと、一対の第1後パッド13aとにより、一段目の基板支持部が形成される。一対の第1前パッド12aと一対の第1後パッド13aとは、支持板11からほぼ同一高さにある。一対の第1前パッド12a及び一対の第1後パッド13aのうち少なくとも1つは、第1支持板中心C
1へ向かって下る傾きを有する面を有していてよい。或いは、一対の第1前パッド12a及び一対の第1後パッド13aのうち少なくとも1つは、支持板11の主面と平行な面を有していてよい。
【0032】
図2及び4に示すように、一段目の基板支持部に載置された基板Wのエッジ(周面)は、一対の第1前ストッパ12c及び一対の第1後ストッパ13cに当接又は対峙している。一段目の基板支持部に載置された基板Wは、一対の第1前ストッパ12cによってハンド先端側への移動が規制され、一対の第2前ストッパ12dによってハンド基端側への移動が規制される。
【0033】
図5は、二段目の基板支持部に基板Wが載置された様子を示すハンド1の平面図であり、
図6は、二段目の基板支持部に基板Wが載置された様子を示すハンド1の概略側面図である。
図5に示すように、ハンド1には所定の第2支持板中心C
2を中心とする円形の第2キャプチャレンジR
2が規定される。第2支持板中心C
2は第1支持板中心C
1よりもハンド先端側にあり、第2キャプチャレンジR
2は第1キャプチャレンジR
1からハンド先端側へずれた位置にある。第2キャプチャレンジR
2の外周円P
2の直径φP
2は、基板Wの直径φWよりも若干(数mm程度)大きい。第2キャプチャレンジR
2の直径φP
2は、第1キャプチャレンジR
1の直径φP
1と同一であってもよい。
【0034】
第2キャプチャレンジR2の外周円P2に沿って、一対の第2前ストッパ12dと、前進した位置にある一対の第2後支持ブロック14の第2後ストッパ14cとが配置される。ストッパ12d,14cは、概ね第2支持板中心C2へ向いた面を有する。
【0035】
図5及び
図6に示すように、一対の第2前パッド12bと、前進した位置にある一対の第2後パッド14aとにより、二段目の基板支持部が形成される。一対の第2前パッド12bと一対の第2後パッド14aとは、支持板11からほぼ同一高さにある。一対の第2前パッド12b及び一対の第2後パッド14aのうち少なくとも1つは、第2支持板中心C
2へ向かって下る傾きを有する面を有していてよい。或いは、一対の第2前パッド12b及び一対の第2後パッド14aのうち少なくとも1つは、支持板11の主面と平行な面を有していてよい。
【0036】
二段目の基板支持部に載置された基板Wのエッジは、一対の第2前ストッパ12d及び一対の第2後ストッパ14cに当接又は対峙している。二段目の基板支持部に載置された基板Wは、一対の第2前ストッパ12dによってハンド先端側への移動が規制され、一対の第2後パッド14aによってハンド基端側への移動が規制される。
【0037】
〔制御装置8〕
図7は、制御装置8の概略構成を示すブロック図である。基板移送ロボット2の制御装置8は、コンピュータ80を備える。コンピュータ80は、プロセッサ81、ROM及びRAMなどのメモリ82、入出力部83などを備える。メモリ82には、プロセッサ81が実行するプログラムが格納されている。プログラムには、オペレーティングプログラムやアプリケーションプログラムが含まれる。プロセッサ81がプログラムを読み出して実行することによって、制御装置8は当該プログラムに構成された機能を実現する。プロセッサ81は、入出力部83を介して入力装置86、出力装置87、記憶装置88、各種の計器やセンサ、及び制御対象と接続されている。本実施形態に係る制御対象は、ロボットコントローラ21、及び、制御弁153,253,263が含まれる。入力装置86は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの制御装置8への入力を受け付けるデバイスのうち少なくとも1を含む。出力装置87は、例えば、ディスプレイ、スピーカなどの制御装置8からの情報を出力するデバイスのうち少なくとも1を含む。記憶装置88には、制御装置8での処理に必要な各種の情報が格納されていてよい。
【0038】
制御装置8は、基板移送ロボット2のアーム4を動作させることにより、ハンド1の位置及び姿勢を制御する。より詳細には、
図2に示すように、制御装置8はロボットコントローラ21と接続されており、ロボットコントローラ21は昇降駆動装置51、第1関節駆動装置52、第2関節駆動装置53、及び手首関節駆動装置54と接続されている。制御装置8は、駆動装置51~54に含まれる回転位置センサの検出値に基づいてハンド1の現在位置及び現在姿勢を求め、予め記憶された教示データに基づいてハンド1の目標位置及び目標姿勢を求め、ハンド1が目標位置及び目標姿勢となるような位置指令をロボットコントローラ21へ伝達する。ロボットコントローラ21は、位置指令と駆動装置51~54に含まれる回転位置センサの検出値とに基づいて駆動装置51~54の動作を制御する。このようにしてアーム4の昇降軸40及び関節J1~J3が動くことにより、ハンド1が目標位置及び目標姿勢に到達する。
【0039】
制御装置8は、ブロックアクチュエータ15、第1ストッパアクチュエータ25、及び第2ストッパアクチュエータ26と接続されており、これらの動作を制御する。
【0040】
ブロックアクチュエータ15のエアシリンダ151には、コンプレッサ等のエア供給装置18が接続されている。エア供給装置18とエアシリンダ151との間には、制御装置8によって制御される制御弁153が設けられている。そして、制御装置8が、制御弁153を通過するエアの流量及び方向を切り替えることにより、シリンダロッド152が伸びて一対の第2後支持ブロック14が前進し、又は、シリンダロッド152が縮んで一対の第2後支持ブロック14が後退する。
【0041】
第1ストッパアクチュエータ25のエアシリンダ251には、エア供給装置18が接続されている。エア供給装置18とエアシリンダ251との間には、制御装置8によって制御される制御弁253が設けられている。そして、制御装置8が、制御弁253を通過するエアの流量及び方向を切り替えることにより、シリンダロッド252が伸びて第1可動ストッパ23が前進し、又は、シリンダロッド252が縮んで第1可動ストッパ23が後退する。
【0042】
第2ストッパアクチュエータ26のエアシリンダ261には、エア供給装置18が接続されている。エア供給装置18とエアシリンダ261との間には、制御装置8によって制御される制御弁263が設けられている。そして、制御装置8が、制御弁263を通過するエアの流量及び方向を切り替えることにより、シリンダロッド262が伸びて第2可動ストッパ24が前進し、又は、シリンダロッド262が縮んで第2可動ストッパ24が後退する。
【0043】
ハンド1には、第1在席センサ31と第2在席センサ32とが設けられている。第1在席センサ31は、一段目の基板支持部における基板Wの有無を検出する。第2在席センサ32は、二段目の基板支持部における基板Wの有無を検出する。但し、第1在席センサ31と第2在席センサ32とは一つのセンサであってもよい。第1在席センサ31及び第2在席センサ32は、制御装置8と接続されている。制御装置8は、第1在席センサ31及び第2在席センサ32の検出信号を取得して、基板支持部における基板Wの有無を検知する。
【0044】
〔ハンド1の制御方法〕
上記構成の基板移送ロボット2におけるハンド1の動作について説明する。なお、以下に説明するハンド1の移動は制御装置8の制御を受けたアーム4の昇降軸40及び関節J1~J3の駆動装置51~54の働きによって実現される。また、以下に説明する一対の第2後支持ブロック14の動作は制御装置8の制御を受けたブロックアクチュエータ15の働きによって実現され、第1可動ストッパ23の動作は制御装置8の制御を受けた第1ストッパアクチュエータ25の働きによって実現され、第2可動ストッパ24の動作は制御装置8の制御を受けた第2ストッパアクチュエータ26の働きによって実現される。
【0045】
以下では、
図8を参照しながら、第1治具(図示略)に保持されている基板Wを、第1治具から離れた位置にある第2治具(図示略)へ移載するときのハンド1の動作を例示する。
図8は、基板Wを移載する際の処理の流れ図である。
【0046】
(第1例)
第1例では、一段目の基板支持部を形成する複数のパッド12a,13a、前ストッパ12c、可動ストッパ23、及びストッパアクチュエータ25の組み合わせを含む一段目支持ユニットU1を用いる。まず、ハンド1は、所定の上昇待機位置へ移動する(ステップS1)。上昇待機位置にあるハンド1において、支持板11は第1治具に保持された基板Wの直ぐ下方に位置し、平面視において第1キャプチャレンジR1内に基板Wが収まっている。
【0047】
次に、ハンド1は、上昇待機位置から所定量だけ上方にある上昇位置へ移動する(ステップS2)。これにより、第1治具からハンド1へ基板Wが移載される。基板Wは、一段目の基板支持部(即ち、一対の第1前パッド12a及び一対の第1後パッド13a)に支持される。
【0048】
第1在席センサ31で一段目の基板支持部への基板Wの在席が確認されると、ハンド1は、上昇位置から所定の降下待機位置への移動を開始する(ステップS3)。ハンド1の移動の間の所定のタイミングで、第1可動ストッパ23が所定の退避位置から所定の進出位置まで前進することにより、基板Wの載置範囲(キャプチャレンジ)が縮小する(ステップS4)。第1可動ストッパ23の退避位置は、ケーシング90内の後退位置に限られず、第1キャプチャレンジR1の外周円P1の円周上(第1キャプチャレンジR1の内側ではない)、又は、第1キャプチャレンジR1の外側であればよい。
【0049】
図9は、縮小第1キャプチャレンジR
1’を示すハンド1の平面図である。
図9に示すように、進出位置にある第1可動ストッパ23は、少なくともその一部分が第1キャプチャレンジR
1の外周円P
1の内側にある。進出位置にある第1可動ストッパ23と一対の第1前ストッパ12cとにより、円形の縮小第1キャプチャレンジR
1’が規定される。なお、第1可動ストッパ23が前進する過程で、第1可動ストッパ23と基板Wのエッジとが当接することがあるが、この場合には、基板Wは一対の第1前パッド12a及び一対の第1後パッド13aで支持された状態を維持しながらハンド先端へ向かって移動する。
【0050】
縮小第1キャプチャレンジR1’の外周円P1’の直径φP1’は、基板Wの直径φWよりも大きく且つ第1キャプチャレンジR1の外周円P1の直径φP1よりも小さい(基板Wの直径φW<φP1’<φP1)。従って、縮小第1キャプチャレンジR1’に収まっている基板Wは、一段目の基板支持部に支持されているが、第1可動ストッパ23及び一対の第1前ストッパ12cによって把持されてはいない。
【0051】
外周円P1の直径φP1及び外周円P1’の直径φP1’は、基板Wの直径φWに応じて決定される。基板Wの直径φWは複数種類あることが知られている。例えば、基板Wの直径φWが300mmである場合に、第1キャプチャレンジR1の外周円P1の直径φP1を304mmとし、縮小第1キャプチャレンジR1’の外周円P1’の直径φP1’を301mmとしてよい。この場合、直径φP1’は300mmより大きく304mm未満の値であればよいが、ハンド1に対する基板Wの位置決め精度を向上させる観点から、直径φP1’は小さい値であることが望ましい。一方で、直径φP1’が基板Wの直径φWに著しく近い値であれば、基板Wが第1可動ストッパ23及び一対の第1前ストッパ12cによって把持されてしまうおそれがあるので、基板Wの寸法誤差や第1可動ストッパ23のストローク誤差を考慮して直径φP1’が決定される。
【0052】
上記ステップS2において一段目の基板支持部で受け取った基板Wは第1キャプチャレンジR1内に在るものの、ハンド1に対する基板Wの厳密な位置は特定されていない。上記ステップS4において第1可動ストッパ23の前進によりキャプチャレンジが縮小第1キャプチャレンジR1’まで縮小されることによって、ハンド1上の基板Wの存在範囲が狭められる。これにより、ハンド1上の基板Wの位置は縮小第1キャプチャレンジR1’内に特定される。つまり、基板Wがハンド1に対してより厳密に位置決めされる。
【0053】
ハンド1が降下待機位置へ到達すると(ステップS5)、第1可動ストッパ23が退避位置(又は後退位置)まで後退することにより、キャプチャレンジが第1キャプチャレンジR1まで拡大する(ステップS6)。
【0054】
降下待機位置にあるハンド1において、支持板11は第2治具の直ぐ上方に位置し、平面視において基板Wと第2治具の保持位置とが対応している。ハンド1は、降下待機位置から所定量だけ下方にある降下位置へ降下する(ステップS7)。これにより、ハンド1から第2治具へ基板Wが移載される。
【0055】
上記のステップS6においてキャプチャレンジが拡大しても、ハンド1上の基板Wの位置は維持される。そのため、基板Wはハンド1に対してより厳密に位置決めされた状態で、ハンド1から第2治具へ移載される。よって、第2治具に対して基板Wが高い位置精度で移載される。
【0056】
(第2例)
第2例では、二段目の基板支持部を形成する複数のパッド12b,14a、前ストッパ12d、可動ストッパ24、及びストッパアクチュエータ26の組み合わせを含む二段目支持ユニットU2を用いる。ハンド1の一段目の基板支持部と二段目の基板支持部とは、保持する基板Wの清浄度に応じて使い分けられてよい。例えば、清浄度の高い基板Wは二段目の基板支持部を用いて保持され、汚染された基板Wは一段目の基板支持部を用いて保持される。
【0057】
ハンド1に第2キャプチャレンジR2及び二段目の基板支持部を用意するために、第2後支持ブロック14は予め所定の進出位置まで前進している。まず、ハンド1は、所定の上昇待機位置へ移動する(ステップS1)。上昇待機位置にあるハンド1において、支持板11は第1治具に保持された基板Wの直ぐ下方に位置し、平面視において第2キャプチャレンジR2内に基板Wが収まっている。
【0058】
次に、ハンド1は、上昇待機位置から所定量だけ上方にある上昇位置へ移動する(ステップS2)。これにより、第1治具からハンド1へ基板Wが移載される。基板Wは、二段目の基板支持部(即ち、一対の第2前パッド12b及び一対の第2後パッド14a)に支持される。
【0059】
第2在席センサ32で二段目の基板支持部への基板Wの在席が確認されると、ハンド1は、上昇位置から所定の降下待機位置への移動を開始する(ステップS3)。ハンド1の移動の間の所定のタイミングで第2可動ストッパ24が退避位置から所定の進出位置まで前進することにより、キャプチャレンジが縮小第2キャプチャレンジR2’へ縮小する(ステップS4)。
【0060】
図10は、縮小第2キャプチャレンジR
2’を示すハンド1の平面図である。
図10に示すように、進出位置にある第2可動ストッパ24は、少なくともその一部分が第2キャプチャレンジR
2の外周円P
2の内側にある。進出位置にある第2可動ストッパ24と一対の第2前ストッパ12dとにより、縮小第2キャプチャレンジR
2’が規定される。なお、第2可動ストッパ24が前進する過程で、第2可動ストッパ24と基板Wのエッジとが当接することがあるが、この場合には、基板Wは一対の第2前パッド12b及び一対の第2後パッド14aで支持された状態を維持しながらハンド先端へ向かって(即ち、一対の第2前ストッパ12dへ向かって)移動する。
【0061】
縮小第2キャプチャレンジR2’の外周円P2’の直径φP2’は、基板Wの直径φWよりも大きく且つ第2キャプチャレンジR2の外周円P2の直径φP2よりも小さい(基板Wの直径φW<φP2’<φP2)。
【0062】
ハンド1が降下待機位置へ到達すると(ステップS5)、第2可動ストッパ24がケーシング90内の後退位置まで後退することにより、キャプチャレンジが第2キャプチャレンジR2まで拡大する(ステップS6)。
【0063】
降下待機位置にあるハンド1において、支持板11は第2治具の直ぐ上方に位置し、平面視において基板Wと第2治具の保持位置とが対応している。ハンド1は、降下待機位置から所定量だけ下方にある降下位置へ降下する(ステップS7)。これにより、ハンド1から第2治具へ基板Wが移載される。
【0064】
なお、上記の第1,2例に係る基板Wを移載工程のうちステップS6(キャプチャレンジの拡大)は省略されてもよい。但し、基板Wがハンド1から治具へ(又はその逆へ)移載する際に、キャプチャレンジが拡大されていると、基板Wがストッパ12c,13c,14cや可動ストッパ23,24と擦れる可能性が低減する。
【0065】
また、上記の第1,2例に係る基板Wを移載工程のうちステップS4(キャプチャレンジの縮小)は、ハンド1に基板Wが移載されてから降下待機位置への移動を開始する前、或いは、ハンド1が降下待機位置へ到達してからキャプチャレンジが拡大する前のタイミングで行われてもよい。但し、キャプチャレンジが縮小されていると、ハンド1の移動中に基板Wがハンド1上で動いたり振動したりすることを抑制できることから、基板Wがハンド1に移載されてから比較的早いタイミングでキャプチャレンジの縮小が行われることが望ましい。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態に係る基板移送ロボット2は、アーム4と、アーム4の先端部に装着されたハンド1とを備える。
【0067】
そして、本実施形態に係るハンド1は、円形の基準キャプチャレンジ(R1;R2)が規定された支持板11と、基準キャプチャレンジ(R1;R2)内において支持板11上に配置された複数のパッド(12a,13a;12b)と、基準キャプチャレンジ(R1;R2)の外周円(P1;P2)に沿って配置され、複数のパッド(12a,12b;12b)に支持された基板Wの基準キャプチャレンジ(R1;R2)の外周側への移動を規制する少なくとも1つの固定ストッパ(12c;12d)と、固定ストッパ(12c;12d)と支持板11からの高さが一致する部分を有する少なくとも1つの可動ストッパ(23;24)と、可動ストッパ(23;24)を基準キャプチャレンジ(R1;R2)の外周円(P1;P2)上又は外側の退避位置から当該退避位置よりも固定ストッパ(12c;12d)に近づいた進出位置まで移動させるように構成されたストッパアクチュエータ(25;26)とを備える。進出位置にある可動ストッパ(23;24)と固定ストッパ(12c;12d)とにより円形の縮小キャプチャレンジ(R1’;R2’)が規定される。この縮小キャプチャレンジ(R1’;R2’)の直径(φR1’;φR2’)は、基板Wの直径φWより大きく且つ基準キャプチャレンジ(R1;R2)の直径(φR1;φR2)より小さい。
【0068】
なお、上記実施形態に係るハンド1において、固定ストッパ12c,12dは支持板11の先端部に設けられているが、これに限られず、固定ストッパ12c,12dは基準キャプチャレンジR1,R2の外周円P1,P2に沿って配置されていればよい。可動ストッパ23,24は、基板Wを間に挟んで固定ストッパ12c,12dと対峙するように、固定ストッパ12c,12dの位置に応じて配置される。また、上記実施形態に係るハンド1では、複数のパッド12a,12b,12bは平らな上向きの面を有するが、複数のパッド12a,12b,12bは点又は線で基板Wと接触する突起であってもよい。
【0069】
また、本実施形態に係るハンド1は、ストッパアクチュエータ(25;26)を制御する制御装置8を更に備える。制御装置8は、複数のパッド(12a,12b;12b)に基板Wが載置された後の所定のタイミングで可動ストッパ(23;24)を退避位置から進出位置まで移動するようにストッパアクチュエータ(25;26)を動作させる。ここで、ハンド1は、複数のパッド(12a,12b;12b)に載置された基板Wの有無を検出するセンサ(31;32)を更に備えてもよい。この場合、制御装置8は、センサ(31;32)によって複数のパッド(12a,12b;12b)に基板Wが載置されたことが検出された後の所定のタイミングで可動ストッパ(23;24)を退避位置から進出位置まで移動するようにストッパアクチュエータ(25;26)を動作させる。
【0070】
上記構成のハンド1及びそれを備える基板移送ロボット2では、基準キャプチャレンジ(R1;R2)内に基板Wが載置されたあとで、可動ストッパ(23;24)を退避位置から進出位置まで前進させることで、基板の載置範囲を縮小キャプチャレンジ(R1’;R2’)まで縮小することができる。
【0071】
基板の載置範囲が縮小キャプチャレンジ(R1’;R2’)まで縮小されることによって、ハンド1上の基板Wの位置は縮小キャプチャレンジ(R1’;R2’)内に特定される。つまり、ハンド1上の基板Wの存在範囲が狭められる。このように、本実施形態に係るハンド1は、基板Wの保持形式が載置式でありながら、基板Wがハンド1に対してより厳密に位置決めされる。これにより、ハンド1から治具等の移載対象に対して良好な位置精度で基板Wを移載することができる。
【0072】
縮小キャプチャレンジ(R1’;R2’)に収まっている基板Wは、複数のパッド(12a,12b;12b)に載置されているが、可動ストッパ(23;24)及び固定ストッパ(12c;12d)によって把持されてはいない。このように、基板Wはハンド1に把持されないので、基板Wが把持される際にハンド1と基板Wとの摩擦によって生じる微粉による汚染が回避される。
【0073】
本実施形態に係るハンド1は、基準キャプチャレンジR1の外周円P1に沿って支持板11の基端部に配置され、複数のパッド12a,13aに支持された基板Wのハンド基端側への移動を規制する少なくとも1つの後ストッパ13cを備えている。更に、本実施形態に係るハンド1は、後ストッパ13cのハンド先端側に設けられた後パッド13aを備えている。後ストッパ13cは必須ではないが、後ストッパ13cによって基準キャプチャレンジR1へ載置される基板Wが案内され、また、基準キャプチャレンジR1にある基板Wのハンド基端側への移動が規制されるという利点が付加される。
【0074】
本実施形態に係るハンド1は、支持板11に第1基準キャプチャレンジR1と当該第1基準キャプチャレンジR1からハンド先端側へずれた第2基準キャプチャレンジR2との複数の基準キャプチャレンジが規定されている。第1基準キャプチャレンジR1について、複数のパッド12a,13a、固定ストッパ12c、可動ストッパ23、及びストッパアクチュエータ25の組み合わせを含む一段目支持ユニットU1が設けられている。第2基準キャプチャレンジR2についても同様に、複数のパッド12b,14a、固定ストッパ12d、可動ストッパ24、及びストッパアクチュエータ26の組み合わせを含む二段目支持ユニットU2が設けられている。二段目支持ユニットU2は、一段目支持ユニットU1よりも支持板11から高い位置で基板Wを支持する。
【0075】
このように1つのハンド1に二段の支持ユニットU1,U2が設けられているので、二段の支持ユニットU1,U2を保持する基板Wの清浄度に応じて使い分けることができる。
【0076】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0077】
(変形例1)
例えば、上記実施形態に係るハンド1は、多段の基板支持部を有するものであるが、基板支持部は単段であってもよい。
図11は、変形例1に係る基板保持ハンド1Aの平面図である。なお、変形例1の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し説明を省略する。
図11に示すハンド1Aは、上記実施形態に係るハンド1から二段目支持ユニットU
2を構成する第2後支持ブロック14及びそのアクチュエータ15、第2可動ストッパ24及びストッパアクチュエータ26などが省略されている。また、前ブロック12Aは、第2前パッド12b及び第2前ストッパ12dが省略されて、第1前パッド12a及び第1前ストッパ12cを有する。換言すれば、変形例1に係るハンド1Aは、支持板11と、支持板11上に配置された複数のパッド12a,13aと、支持板11の先端部分に設けられた一対の前ストッパ12cと、可動ストッパ23及びそれを駆動するストッパアクチュエータ25とを備える。変形例1に係るハンド1A及びこれを備える基板移送ロボット2の動作は、前述の第1例と同様であるから説明を省略する。
【0078】
(変形例2)
変形例1に係る基板保持ハンド1Aでは、支持板11に固定された第1後支持ブロック13が設けられているが、第1後支持ブロック13は省略されてもよい。
図12は、変形例2に係る基板保持ハンド1Bの平面図である。
図12に示す基板保持ハンド1Bは、変形例1に係る基板保持ハンド1Aの第1後支持ブロック13及び第1可動ストッパ23に代えて、これらの機能を併せ備えた可動支持ブロック17を備える。
【0079】
一対の可動支持ブロック17は、支持部材171に取り付けられている。支持部材171は先端部が二股に分かれたチャンネル状の部材であって、二股に分かれた先端部分の各々に可動支持ブロック17が設けられている。支持部材171は、ストッパアクチュエータ16によってハンド軸線L4と平行に進退駆動される。ストッパアクチュエータ16は、例えば、エアシリンダ161であって、エアシリンダ161のシリンダロッド162の出力端に、支持部材171が接続されている。各可動支持ブロック17は、可動パッド17aと可動ストッパ17cとを有する。可動パッド17aは、基板Wの載置面となる上向きの面を有する。可動ストッパ17cは、支持板11の主面と垂直な面を有する。
【0080】
ハンド1には所定の第3支持板中心C3を中心とする円形の第3キャプチャレンジR3が規定される。第3キャプチャレンジR3の外周円P3の直径φP3は、基板Wの直径φWよりも若干(数mm程度)大きい。第3キャプチャレンジR3の外周円P3に沿って、一対の第1前ストッパ12c及び一対の可動ストッパ17cが配置されている。可動パッド17aは、第3キャプチャレンジR3の内側に位置する。各ストッパ12c,17cは、概ね第3支持板中心C3へ向いている。
【0081】
ストッパアクチュエータ16の動作によって一対の可動ストッパ17cがハンド先端へ向けて所定の進出位置まで移動すると、第3キャプチャレンジR3が縮小第3キャプチャレンジR3’へ縮小される。縮小第3キャプチャレンジR3’は、第3キャプチャレンジR3と同様に、一対の第1前ストッパ12c及び一対の可動ストッパ17cによって形成される。縮小第3キャプチャレンジR3’の外周円P3’の直径φP3’は、基板Wの直径φWよりも大きく且つ第3キャプチャレンジR3の外周円P3の直径φP3よりも小さい(基板Wの直径φW<φP3’<φP3)。
【0082】
上記のように変形例2に係るハンド1Bでは、可動ストッパ17cに可動パッド17aが設けられている。この可動パッド17aは、可動ストッパ17cのハンド先端側に設けられ、可動ストッパ17c一体的に動作する。可動ストッパ17cが退避位置にあるとき、可動ストッパ17cはキャプチャレンジR3の外周円P3上に位置し且つ可動パッド17aがキャプチャレンジR3の内側に位置する。可動ストッパ17cが進出位置にあるとき、可動ストッパ17cの少なくとも一部はキャプチャレンジR3の内側に位置し且つ可動パッド17aがキャプチャレンジR3の内側に位置する。このように、変形例2に係るハンド1Bでは、第3キャプチャレンジR3のハンド基端側部分を規定する部材と、縮小第3キャプチャレンジR3’のハンド基端側部分を規定する部材とが同一の可動ストッパ17cによって実現されている。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B:基板保持ハンド
2 :基板移送ロボット
4 :アーム
8 :制御装置
11 :支持板
12a,12b:前パッド
12c,12d:前ストッパ(固定ストッパ)
13a,14a,17a:後パッド
13c,14c :後ストッパ
16,25,26:ストッパアクチュエータ
17c,23,24:可動ストッパ
31,32:在席センサ
R1,R2,R3:基準キャプチャレンジ
R1’,R2’,R3’:縮小キャプチャレンジ
U1,U2,:支持ユニット
W :基板