(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電池パック構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240813BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240813BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2020034665
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】高波 雄太
(72)【発明者】
【氏名】寺西 孝文
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109065789(CN,A)
【文献】特開2014-216298(JP,A)
【文献】特開2019-209793(JP,A)
【文献】特開2015-000593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池パックを収容する電池パック構造体であって、一対の前フレーム及び後フレームとをそれぞれ左右のサイドフレームにて連結した外枠体と、前記外枠体の底部側に配設した冷却部材とを備え、
前記冷却部材は、上部冷却層と下部冷却層とを重ね合せて内側に冷却流路を形成してあ
り、前記冷却部材は、前後及び左右の四辺のうち一辺が前記外枠体の外壁部よりも外側に延在した延出部を有し、前記延出部に冷媒の入口部と出口部を設けてあり、前記冷却部材の前記延出部を有する一辺は、前記上部冷却層に前記外枠体との接合部を有し、他の三辺は前記下部冷却層に前記外枠体との接合部を有していることを特徴とする電池パック構造体。
【請求項2】
前記上部冷却層と下部冷却層はそれぞれ一枚の圧延材からなり、
前記上部冷却層と前記下部冷却層のうち少なくとも一方の内面に前記冷却流路となる溝を形成し、相互に接合してあることを特徴とする請求項1に記載の電池パック構造体。
【請求項3】
前記前フレーム、後フレーム及び左右のサイドフレームのうち少なくとも1つは中空断面形状からなることを特徴とする請求項
1に記載の電池パック構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に駆動源用電池を搭載するための電池パック構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等には、駆動源として複数の電池セルを積層した二次電池からなる電池パックが用いられている。
近年、一回の充電による走行距離の長距離化の要求から電池パックの搭載数が増大している。
また、これに伴い充放電時の発熱量も多くなるため冷却機構が必要となるが、この場合に冷却水等から電池パックを保護する必要が生じる。
特許文献1には、冷却プレートの上に断熱層を挟んで電池ブロック(電池パック)を固定するバッテリシステムが開示されている。
しかし、同公報に開示する冷却プレートは、気化熱を利用したものであるため構造が複雑であるだけでなく電池パック毎の冷却機構となるので、いずれかの電池パックから冷媒が漏れると他の電池パックにも影響を与えることになり、複数の電池パックを収容した構造体としては冷媒からの保護が不充分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電池パックを複数収容した構造体のシール性の向上を図るのに有効な電池パック構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電池パック構造体は、複数の電池パックを収容する電池パック構造体であって、一対の前フレーム及び後フレームとをそれぞれ左右のサイドフレームにて連結した外枠体と、前記外枠体の底部側に配設した冷却部材とを備え、前記冷却部材は、上部冷却層と下部冷却層とを重ね合せて内側に冷却流路を形成してあることを特徴とする。
このように外枠体の底部側に冷却部材を配設すると、外枠体の内部を冷却水等の冷媒から完全に隔離することができる。
【0006】
本発明において、上部冷却層と下部冷却層はそれぞれ一枚の圧延材からなり、前記上部冷却層と前記下部冷却層のうち少なくとも一方の内面に前記冷却流路となる溝を形成し、相互に接合してあることが好ましい。
圧延材はプレス等による絞り加工が容易で、いろいろな形状の流路溝を形成することができるとともに、外枠体との溶接も容易である。
【0007】
本発明において、冷却部材は、前後及び左右の四辺のうち一辺が前記外枠体の外壁部よりも外側に延在した延出部を有し、前記延出部に冷媒の入口部と出口部を設けてあり、
前記冷却部材の前記延出部を有する一辺は、前記上部冷却層に前記外枠体との接合部を有し、他の三辺は前記下部冷却層に前記外枠体との接合部を有していてもよい。
このように延出部に冷媒の入口部と出口部を設けると、電池パック構造体内の冷却流路と、外部から冷媒を流入出する冷却機構とを連結するときに、外枠体が障害とならないので構造がコンパクトになる。
【0008】
本発明において、前記前フレーム、後フレーム及び左右のサイドフレームのうち少なくとも1つは中空断面形状からなることが好ましい。
このようにすると、外枠体の強度向上と軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電池パック構造体にあっては、外枠体の底部側に冷却部材を配設することで従来の電池パック毎に冷却機構を設けたものと比較して、簡単な構造で複数の電池パックを冷却水等から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明に係る電池パック構造体の例を示し、(b)は分解斜視図を示す。
【
図3】(a)は
図2のA-A線断面図を示し、(b)はB-B線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電池パック構造体の例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1(a)は、本発明に係る電池パック構造体1の外観図を示し、(b)はこの電池パック構造体1の分解斜視図を示す。
また、
図2は電池パック構造体1を底面から視た図を示し、
図3(a)は
図2のA-A線断面図を、(b)はB-B線断面図を示す。
電池パック構造体1に収容する複数の電池パックの構造は特に限定されないが、電池パック構造体1に固定するために取付ブラケット等を有することが好ましい。
また、電池パックは保持パネル等、例えば、熱伝導率の高いアルミニウムを材質とする保持パネルに保持されていてもよい。
【0013】
本実施例における電池パック構造体1は、一対の前フレーム11及び後フレーム12とをそれぞれ左右のサイドフレーム13に連結して外枠体14を形成し、外枠体14の底部側に冷却部材15を配設してある。
本実施例においては、外枠体14を形成する各フレーム11、12、13は、電池パックの収容側の内壁部11b、12b、13bと、外壁部11c、12c、13cとの間で、それぞれ複数リブにて仕切られた中空部11d、12d、13dを有する。
フレーム11、12、13の少なくとも1つは、強度に優れる中空断面形状からなることが好ましいが、必ずしも中空断面形状からなる必要はない。
また、これら中空断面形状からなる各フレーム11、12、13は材質に制限はないが、アルミニウムやアルミニウム合金の押出材を用いると製作が容易であり、軽量で所定の強度を確保できる。
図1(a)に示すように、前フレーム11の中空端面11aは、サイドフレーム13の内壁部13bに突き当てるように連結してあり、また、後フレーム12の中空端面12aも、サイドフレーム13の内壁部13bに突き当てるように連結してある。
サイドフレーム13は、内壁部13bの内側に、複数の電池パックの端部を固定するための固定フランジ13eを有し、また、外壁部13cの外側に、車両フロア等に電池パック構造体1を締結するための締結フランジ13fを有する。
各フレーム11、12、13の連結方法としては、例えば、溶接が挙げられるが、シール性を確保できれば特に連結方法に制限はない。
また、固定フランジ13eや締結フランジ13fは必ずしもサイドフレーム13にある必要はなく、前フレーム11や後フレーム12にあってもよい。
【0014】
本実施例における冷却部材15は、それぞれ一枚の圧延材からなる上部冷却層16と下部冷却層17とを含み、下部冷却層17の上部冷却層16と重なる内面に、
図1(b)、
図2に示すような冷却流路20となる溝を形成し、冷却流路20の周囲の平面部23にて下部冷却層17と上部冷却層16とが接合してある。
なお、冷却流路20となる溝は上部冷却層16に形成されていてもよい。
上部冷却層16及び下部冷却層17の材質は特に限定されないが、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等を材質とすると、熱伝導率が高く電池パックの冷却効率に優れる。
また、接合方法も特に限定されないが、これら冷却層16,17が溶接性に優れる圧延材であれば、溶接が好ましい。
冷却流路20の形成方法は、例えば、絞り加工等により容易に形成できる。
本実施例においては、冷却部材15(下部冷却層17)の前側の一辺である前端部17aに冷媒の入口部21及び出口部22を設けた。
入口部21及び出口部22は、冷却部材15の前後及び左右の四辺のうち一辺に設けてあればよく、後側の一辺である後端部17b、左右一方側の一辺であるサイド端部17cのいずれかに設けてあってもよい。
本実施例においては、
図2に示すように、前端部17aから始まる蛇行状の溝20aが後端部17b側まで続き、その後サイド端部17cに平行となる溝20bが前端部17aに戻ってくるように冷却流路20を形成してある。
なお、冷却流路20の溝の形状は特に限定されない。
【0015】
本実施例における冷却部材15は、
図1(a)、
図3(a)に示すように、外枠体14を形成している前フレーム11の外壁部11cよりも外側に延在した延出部15aを有し、延出部15aは前端部17aに含まれる。
すなわち、延出部15aを有する前端部17aに入口部21及び出口部22が設けてある。
この延出部15aは、上部冷却層16が前フレーム11と接合部bで接合されることによって形成される。
一方、冷却部材15の後端部17b及び左右のサイド端部17cの三辺は、それぞれ後フレーム12及び左右のサイドフレーム13と下部冷却層17にて接合部aを有して接合される。
なお、接合部a、bは、溶接等によって形成できる。
延出部15aを有する前端部17aの入口部21及び出口部22は、電池パック構造体1内部の冷却流路20と、外部から冷媒を流入出する冷却機構との連結部となる。
前端部17aに設ける入口部21及び出口部22は、溝20a、20bとともに形成でき、低コストで製作できる。
また、延出部15a(前端部17a)に設けることで、電池パック構造体1の上下方向のサイズをコンパクトにすることができ、車両に搭載するスペースを確保しやすい。
【符号の説明】
【0016】
1 電池パック構造体
11 前フレーム
12 後フレーム
13 サイドフレーム
15 冷却部材
15a 延出部
16 上部冷却層
17 下部冷却層
a 接合部
b 接合部